本記事は2026年8月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事でわかること
- 売上13.7%減・最終利益36.5%減という4〜6月期の数字を、会社が「計画通り」と説明できる理由
- 不動産デベロッパーの決算を読むときの基本の型(「進捗率」と「契約進捗率」の使い分け)
- 通期予想に対する進捗率18%が、過去4年と比べてどの位置にあるのか
- 決算資料の隅にある「完成在庫845戸」という数字が示していること
- 株主優待がない銘柄の株主還元をどう評価するか(配当・自己株式・含み益・政策保有株)
- 金利上昇局面で、この会社の借入がどう動いたか
- 強気・弱気それぞれの見方と、次に確認すべきKPI
1. 前提知識:売上が立つのは「売れた日」ではなく「引き渡した日」
野村不動産ホールディングスは、分譲マンション「プラウド」や中規模オフィス「PMO」で知られる総合不動産会社です。2026年3月期の売上高は9,425億円、事業利益は1,473億円でした。
事業内容の一覧を眺めるだけでは、決算書がなぜあの形になるのかは見えてきません。この会社を読むうえで最初に押さえるべきなのは、お金が動くタイミングと、売上が計上されるタイミングが大きくずれるという点です。
分譲マンションの場合、流れはこうなります。
| 段階 | 何が起きるか | 決算書への表れ方 |
|---|---|---|
| 用地取得 | 土地を仕入れる(数年前) | 棚卸資産に計上。売上にはならない |
| 販売開始・契約 | モデルルームで販売、買主と契約(竣工の1〜2年前) | 売上にはならない。手付金は前受金 |
| 竣工・引渡し | 鍵を渡す | この日に売上と利益がまとめて計上される |
つまり、ある四半期の売上高は「その3か月にどれだけ売れたか」ではなく、**「その3か月にどれだけ引き渡したか」**を表しています。売上が減ったとき、それは契約が取れていないのかもしれないし、単にその3か月に竣工した物件が少なかっただけかもしれません。この区別ができるかどうかが、デベロッパーの決算を読めるかどうかの分かれ目です。今回の記事は、ほぼこの一点をめぐる話になります。
事業構造(2026年3月期実績)
会社は6つのセグメントを、性格の違う2つの分野に分けています。
| 分野 | セグメント | 売上高 | 事業利益 | 何をしている部門か |
|---|---|---|---|---|
| デベロップメント | 住宅 | 4,334億円 | 617億円 | プラウド等の分譲、賃貸住宅・ホテル・シニア住宅の開発運営 |
| デベロップメント | 都市開発 | 3,247億円 | 539億円 | オフィス・物流施設・商業施設の開発、賃貸、売却 |
| デベロップメント | 海外 | 37億円 | 27億円 | 東南アジアの住宅分譲、英米の賃貸物件 |
| サービス・マネジメント | 資産運用 | 163億円 | 105億円 | REIT・私募ファンドの運用 |
| サービス・マネジメント | 仲介・CRE | 643億円 | 189億円 | 個人〜法人向けの不動産売買仲介 |
| サービス・マネジメント | 運営管理 | 1,298億円 | 135億円 | マンション・ビル等の管理、修繕工事 |
デベロップメント分野の3つは「作って売る/貸す」ビジネスで、利益は大きいが四半期ごとの振れも大きい。サービス・マネジメント分野の3つは「毎月入ってくる」ビジネスで、金額は小さいが安定しています。2026年3月期の事業利益のうち73%(住宅38%+都市開発33%+海外2%)が、振れの大きいデベロップメント分野でした。この構成比が、今回の決算の読み方を決めます。
用語メモ:事業利益 この会社が主に使っている独自の利益指標です。「営業利益+持分法投資損益+企業買収に伴い発生する無形固定資産の償却費+海外セグメントにおけるプロジェクト会社の持分売却損益」と定義されています。海外事業は出資という形で参加している案件が多く、その儲けが営業利益の外側(営業外損益)に出てしまうため、それを足し戻して実力を見よう、という趣旨です。会社が目標を語るときはこの数字を使うので、この記事でも併記します。
直近3期の業績推移
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期(会社予想) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,347億円 | 7,576億円 | 9,425億円 | 10,800億円 |
| 営業利益 | 1,121億円 | 1,190億円 | 1,382億円 | 1,400億円 |
| 事業利益 | 1,136億円 | 1,251億円 | 1,473億円 | 1,500億円 |
| 経常利益 | 982億円 | 1,067億円 | 1,248億円 | 1,250億円 |
| 純利益 | 681億円 | 748億円 | 828億円 | 860億円 |
| EPS(1株利益) | 78.46円 | 86.77円 | 96.69円 | 100.48円 |
| ROE | 10.1% | 10.4% | 10.7% | — |
| 自己資本比率 | 30.7% | 27.9% | 28.5% | — |
| 有利子負債 | 11,927億円 | 15,453億円 | 15,993億円 | — |
| 1株配当 | 28.00円 | 34.00円 | 40.00円 | 44.00円 |
(注)EPSと1株配当は、2025年4月1日に実施した株式分割(1株→5株)を踏まえ、過去分も分割後ベースに調整した数値です。
この表のポイントは2つあります。
1つ目は、売上高が2026年3月期に一気に24.4%伸びたこと。これは物件の売却が積み上がった年で、後述するとおりその大半が1〜3月に集中しました。
2つ目は、自己資本比率が2025年3月期に30.7%→27.9%へ落ち、有利子負債が1兆1,927億円から1兆5,453億円へ3,500億円以上増えたこと。会社は財務指針として「自己資本比率30%水準」を掲げていますが、直近3期はこれを下回っています。積極的に土地を仕込んだ結果であり、成長投資でもありリスクでもある、という両面の数字です。
中期経営計画に対する位置
会社は2025年4月に3か年計画(2026年3月期〜2028年3月期)を発表しています。
- 2028年3月期の事業利益目標:1,600億円
- 財務指針:ROA5%以上/ROE10%以上/事業利益の年平均成長率8%水準/自己資本比率30%水準/総還元性向40〜50%/DOE4%下限
2026年3月期の実績1,473億円は、計画策定時の想定を上回るペースでした(会社も「計画を上回る進捗」と説明しています)。ここから逆算すると:
- 2027年3月期予想1,500億円 → 2028年3月期1,600億円まで、残り6.7%の成長が必要
- 2026年3月期実績1,473億円から2年で1,600億円なら、年平均4.2%
つまり、最初の1年で貯金を作った結果、残り2年に必要な成長率は「年8%」から「年4.2%」へ下がっているというのが現在地です。これは会社にとって追い風の材料ですが、裏を返せば「今期の1,500億円は、去年から見ればほぼ横ばい(+1.8%)」ということでもあります。
株主優待について
野村不動産ホールディングスに株主優待制度はありません。 会社IRサイトの「よくあるご質問」で、株主優待の有無を問う項目に対して「現在のところ設けておりません」という趣旨の回答が明記されています。「調べたけど見つからなかった」ではなく、会社が制度の不存在を明言しているという点は、優待狙いで銘柄を探している方には重要な情報だと思います。
そのぶん株主還元は配当と自己株式に集約されており、この記事では第6章で独立して扱います。
2. 決算ハイライト(2026年4〜6月期)
2026年7月30日に発表された第1四半期(2026年4月1日〜6月30日)の連結業績です。
損益計算書
| 項目 | 2025年4〜6月期 | 2026年4〜6月期 | 増減率 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,214億円 | 1,910億円 | △13.7% | 10,800億円 | 17.7% |
| 営業利益 | 368億円 | 255億円 | △30.6% | 1,400億円 | 18.2% |
| 事業利益 | 386億円 | 271億円 | △29.8% | 1,500億円 | 18.1% |
| 経常利益 | 339億円 | 216億円 | △36.2% | 1,250億円 | 17.3% |
| 純利益 | 231億円 | 147億円 | △36.5% | 860億円 | 17.1% |
| EPS | 26.99円 | 17.23円 | △36.2% | 100.48円 | — |
(決算短信の百万円単位の数値を億円に丸めています。正確には売上高191,064百万円、営業利益25,540百万円、事業利益27,161百万円、経常利益21,648百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益14,728百万円)
この表のポイントは3つあります。
1つ目:減益の幅が、下に行くほど大きくなっています。 売上13.7%減 → 営業利益30.6%減 → 経常利益36.2%減。売上が減ったのに販売費及び一般管理費は357億円から379億円へ増えており(+6.2%)、さらに営業外の支払利息が42.2億円から49.5億円へ増えているためです。売上が減っても固定費と金利は減らない、という当たり前のことが素直に出ています。
2つ目:通期予想は据え置きです。 2026年4月24日に公表した予想から変更ありません。会社は説明資料で「通期業績予想に対しては計画通りに進捗」としています。
3つ目:進捗率がおおむね17〜18%です。 単純に4倍しても通期予想に届きません。この数字の読み方が本記事の中心テーマなので、第3章で丁寧に扱います。
用語メモ:進捗率 通期の会社予想に対して、その時点までの実績が何%まで来ているかを示す数字です。「4四半期あるから25%が目安」と考えたくなりますが、季節性のある業種ではこの見方は通用しません。単独の進捗率には意味がなく、必ず前年同期の進捗率と並べて初めて情報になります。
財政状態
| 項目 | 2026年3月末 | 2026年6月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 総資産 | 2兆8,119億円 | 2兆8,368億円 | +249億円 |
| うち販売用不動産 | 6,615億円 | 6,516億円 | △99億円 |
| うち仕掛販売用不動産 | 3,766億円 | 3,730億円 | △36億円 |
| うち開発用不動産 | 2,728億円 | 2,790億円 | +62億円 |
| うち投資有価証券 | 2,462億円 | 2,486億円 | +23億円 |
| 総負債 | 2兆0,092億円 | 2兆0,346億円 | +253億円 |
| うちコマーシャル・ペーパー | 760億円 | 1,480億円 | +720億円 |
| うち短期借入金 | 1,426億円 | 1,750億円 | +324億円 |
| うち長期借入金 | 1兆2,137億円 | 1兆2,064億円 | △72億円 |
| 純資産 | 8,027億円 | 8,022億円 | △4億円 |
| 自己資本比率 | 28.5% | 28.3% | △0.2P |
この貸借対照表で一番目を引くのは、コマーシャル・ペーパーが3か月で倍増していることです。 720億円の増加は、この四半期の有利子負債増加額(約972億円)の大半を占めます。
用語メモ:コマーシャル・ペーパー(CP) 企業が短期の資金を集めるために発行する、満期が1年未満(実務上は数か月)の約束手形のようなものです。銀行借入より手続きが早く、金利も低めに設定できるのが利点ですが、満期が来るたびに借り換える必要があります。金利が上がっている局面では、借り換えのたびに調達コストが上がっていくことになります。
会社は財務基盤の説明で「長期借入比率91.3%、固定金利比率83.9%」(2026年3月期末)と、長期・固定を基本にする方針を示しています。その方針自体は変わっていないと思われますが、この四半期に限っては短期調達で資金を回した形になっています。第1四半期は法人税等の支払い(未払法人税等が205億円から19億円へ減少)や賞与の支払い(賞与引当金が174億円から77億円へ減少)が重なる時期でもあり、季節的な資金繰りの要素も含まれます。
キャッシュ・フローについて(今期から見えなくなった数字)
ひとつ注記しておくと、この会社は2027年3月期から、第1四半期と第3四半期のキャッシュ・フロー計算書の作成を取りやめました。 決算短信にも「当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」と明記されています。中間期(第2四半期)と通期は従来どおり開示される予定です。
昨年までは1Q時点の営業キャッシュ・フローが見えていました(2026年3月期1Qは△69億円)。デベロッパーは土地の仕込みで先にお金が出ていく業種なので、営業CFがマイナスになること自体は珍しくないのですが、その動きを四半期単位で追えなくなった、という事実は押さえておいてよいと思います。次に営業CFが見えるのは中間決算(10月下旬〜11月上旬の見込み)です。
3. 深掘り:進捗率18%は「遅れ」なのか
ここが今回の決算の一番わかりにくく、一番大事な論点です。
まず、進捗率だけを見ても何もわからない
事業利益の進捗率は18.1%です。4で割れば25%が「平均」なので、7ポイント足りない——と読みたくなります。しかしこの読み方は、季節性のある業種では機能しません。
ルールはシンプルで、進捗率は必ず過去の同じ四半期と並べる。並べるとこうなります。
| 第1四半期の事業利益 | 通期 | 1Qが通期に占める割合 | |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 386億円 | 1,136億円(実績) | 34.0% |
| 2025年3月期 | 384億円 | 1,251億円(実績) | 30.7% |
| 2026年3月期 | 387億円 | 1,473億円(実績) | 26.2% |
| 2027年3月期 | 272億円 | 1,500億円(予想) | 18.1% |
面白いのは、2024年3月期から2026年3月期まで、第1四半期の事業利益は384〜387億円でほぼ完全に横ばいだということです。にもかかわらず割合が34.0%→30.7%→26.2%と下がってきたのは、通期の利益が増えた分がすべて第2四半期以降、とりわけ第4四半期に乗ってきたからです。
2026年3月期を分解すると、これがはっきり見えます。
- 通期事業利益 1,473億円 − 第3四半期累計 863億円 = 第4四半期単独 611億円
- 611億円 ÷ 1,473億円 = 通期の41.5%が1〜3月の3か月に集中
売上高でも同じで、通期9,425億円のうち第4四半期単独が3,609億円(38.3%)です。
用語メモ:なぜ1〜3月に集中するのか 分譲マンションの売上は引渡日に計上されます。日本の分譲マンションは3月竣工・3月引渡しの物件が圧倒的に多く(新年度に合わせて入居したい買主が多いため)、その結果デベロッパーの売上は1〜3月に偏ります。加えて収益不動産(オフィスや物流施設)の売却も、決算期に合わせて期末に決済されることが多い。この業種で「1Qを4倍する」計算は、ほぼ確実に間違った答えを出します。
とはいえ、18.1%は過去3年の26〜34%と比べても明確に低い。ここは会社の「計画通り」という表現とのあいだにギャップがある部分です。年々4Qへの依存が高まっており、今期はその傾向が一段と強まる前提の計画になっている、と読むのが素直だと思います。裏を返せば、今期の会社予想の達成可否は、1〜3月の3か月にこれまで以上に懸かっているということです。
では、いま実際に売れているのか
第1章で確認したとおり、売上が立つのは引渡日です。したがって四半期の売上高は「今どれだけ売れているか」を教えてくれません。今どれだけ売れているかを見るための数字は別にあり、それが「契約進捗率」です。
会社は住宅分譲について、この数字を四半期ごとに開示しています。
用語メモ:契約進捗率 その期に計上を予定している分譲売上高のうち、すでに買主との契約が成立している割合です。計算式は「契約済み金額 ÷ 通期の分譲売上予想額」。契約から引渡しまでは通常1〜2年あるため、売上高が過去の販売活動の結果であるのに対し、契約進捗率は現在の販売の勢いをそのまま映します。
2027年3月期第1四半期末の契約進捗率は**71.8%**でした。過去と並べます。
| 第1四半期末の契約進捗率 | 通期の分譲売上(予想/実績) | |
|---|---|---|
| 2024年3月期 | 85.5% | 2,829億円 |
| 2025年3月期 | 83.5% | 2,842億円 |
| 2026年3月期 | 79.4% | 3,111億円 |
| 2027年3月期 | 71.8% | 3,500億円(予想) |
これも4年連続で低下しています。しかし——ここが今回いちばん誤解を生みやすい箇所です——進捗率は割合であって、金額ではありません。 分母(その期に売る予定の金額)が大きくなれば、同じ金額を契約していても進捗率は下がります。
そこで、割合を金額に戻してみます。読者の方も電卓で追える計算です。
契約済み金額(概算)= 通期の分譲売上 × 契約進捗率
- 2024年3月期:2,829億円 × 85.5% = 約2,419億円
- 2025年3月期:2,842億円 × 83.5% = 約2,373億円
- 2026年3月期:3,111億円 × 79.4% = 約2,470億円
- 2027年3月期:3,500億円 × 71.8% = 約2,513億円
契約済み金額はほぼ横ばい、むしろ微増しています。 つまり71.8%という数字の低下は、「売れなくなった」ことよりも「今期の目標を3,111億円から3,500億円へ12.5%引き上げた」ことの反映と読むほうが自然です。
ただし、この計算には注意点があります。契約進捗率の分母は本来「その時点での通期予想額」であり、過去の年について私は通期実績で代用しています(当時の期初予想が手元にないため)。したがって過去3年の金額は筆者の概算であり、実際の数字とは数十億円単位でずれる可能性があります。 傾向を見るための目安として読んでください。
この論点の裏側:残り28.2%をどう埋めるか
契約済みが約2,513億円だとすると、通期3,500億円の残り約987億円は、今後9か月で契約を取る必要があるということになります。過去の第2四半期末の契約進捗率は91.2%(2026年3月期)、92.9%(2025年3月期)、93.9%(2024年3月期)でした。次の中間決算でこの数字が90%前後に乗るかどうかが、今期予想の信頼性を測るいちばん素直な物差しになります。
4. 決算資料の隅にある数字:完成在庫845戸
もうひとつ、経営成績の説明文には出てこないけれど、参考資料の表には載っている数字を拾っておきます。
住宅セグメントの**「分譲期末完成在庫数」**です。
| 販売中 | 未販売 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 2025年6月末(前年同期) | 186戸 | 129戸 | 315戸 |
| 2026年3月末(前期末) | 225戸 | 495戸 | 720戸 |
| 2026年6月末(今回) | 418戸 | 427戸 | 845戸 |
1年前の2.68倍です。「販売中」(完成済みで売り出し中)が186戸から418戸へ、「未販売」(完成済みだがまだ販売開始していない)を含めた合計が315戸から845戸へ増えています。今期の計上予定戸数3,800戸に対して22.2%に相当する規模です。
完成在庫とは、建物が出来上がったのに買い手が決まっていない住戸のことです。分譲マンションは完成後も固定資産税や管理費がかかり続け、売れ残りが長引けば値引きを迫られて粗利率も落ちます。完成在庫の増加は、デベロッパーにとって最も基本的な警戒シグナルのひとつです。
もっとも、この数字の解釈には幅があります。
- 弱気に読むなら:需要の鈍化。首都圏マンション価格は上がり続けており(2025年の首都圏新築マンション平均販売価格は9,182万円)、住宅ローン金利も上昇局面にあります。会社の資料によれば、大手金融機関の変動金利型の適用金利は2024年の0.625%から2026年7月時点で1.275%へ、10年固定は1.80%から3.50%へ上がっています。買える人が減っている可能性は十分あります。
- 強気に読むなら:意図的な在庫。「未販売」427戸は、まだ売り出していない物件です。価格が上がっている市場では、あえて販売開始を遅らせて高く売る戦略も成立します。実際、今回の分譲粗利率は26.9%と前年同期の25.9%から1.0ポイント改善しており、値引き販売に追い込まれている様子は今のところ見えません。
現時点でどちらとも断定はできません。ただ、次の四半期でこの845戸が減るのか増えるのかは、契約進捗率と並んで最優先で確認すべき数字だと個人的には考えています。
5. セグメント別の中身
住宅(売上1,011億円/事業利益157億円)
| 項目 | 2025年4〜6月期 | 2026年4〜6月期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 分譲売上高 | 864億円 | 698億円 | △166億円 |
| 分譲計上戸数 | 861戸 | 699戸 | △162戸 |
| 分譲平均価格 | 10,038万円 | 9,981万円 | △56万円 |
| 分譲粗利率 | 25.9% | 26.9% | +1.0P |
| うち23区・計上戸数 | 331戸 | 159戸 | △172戸 |
| うち23区・平均価格 | 15,821万円 | 18,985万円 | +3,164万円 |
減収の主因は計上戸数が162戸減ったことで、そのほとんど(172戸)が23区の減少です。一方で23区の平均価格は1億5,821万円から1億8,985万円へ3,164万円(20.0%)上がっています。 都心の物件価格は依然として強い、というのがこの表から読み取れることです。
粗利率が26.9%へ改善したのも同じ流れです。ただし数を減らして単価を上げた結果でもあるので、この改善が「値上げ力の強さ」なのか「単に高い物件から先に引き渡した」だけなのかは、通期を見ないと判断できません。会社は通期粗利率を「26%台」と見込んでいます。
用地取得は4〜6月期で390億円(180戸分)でした。過去の通期実績は5,270億円(2023年3月期)→3,350億円(2024年3月期)→4,510億円(2025年3月期)→2,060億円(2026年3月期)と推移しており、四半期単独の数字なので単純比較はできませんが、仕込みのペースが速いとは言えない水準です。用地取得は2〜3年後の売上を決める先行指標にあたります。
一方、すでに確保済みの分譲用地ストックは**2兆5,600億円(1万7,100戸)**あり、うち23区が1兆7,100億円(6,800戸)。今後数年分の供給余力はすでに押さえてあり、当面の売上の下支えにはなります。
都市開発(売上487億円/事業利益55億円)
事業利益が111億円から55億円へ50.6%減と、6セグメントで最大の落ち込みです。理由は明快で、収益不動産の売却が365億円から202億円へ減ったためです(粗利益は104億円→51億円)。
物件の売却は「いつ売るか」で四半期の利益が大きく動きます。会社の通期予想は売却売上2,183億円(2026年3月期実績)から増加する前提なので、この部分も後半に集中する計画です。
賃貸のほうは193億円と前年並みですが、注目すべき数字が2つあります。
1つ目:空室率が13.7%(2026年3月末)から7.1%(2026年6月末)へ大幅改善しました。 これは2025年2月に竣工した大型物件「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」が空室率の算定対象に入ったことで一時的に跳ね上がっていたもので、会社によれば同物件は全館成約済み、2026年9月に満床稼働の予定です。BLUE FRONT SHIBAURAを除いたベースでは5.0%とされています。1年前の3.8%と比べればまだ高い水準で、9月以降に数字が落ち着くかを見る必要があります。
2つ目:賃貸可能床面積が1年で21.6%減りました。 76.6万㎡(2025年6月末)→60.0万㎡(2026年6月末)です。会社は「棚卸資産への振替えや建替計画の推進等による減少」と説明しています。これは資産を売る(あるいは売る準備をする)動きであり、会社が掲げる「資産入れ替えによる含み益の実現」の実行そのものです。利益は出るが、賃料という安定収入は減るというトレードオフがある点は押さえておきたいところです。
海外(売上7.6億円/事業損失16.6億円)
前年同期の事業利益1.3億円から損失に転落しました。会社は「計上済プロジェクトのイグジットに伴う清算費用等」と説明しています。通期予想も、前期の27億円の利益に対して0億円(つまりトントン)と見込んでおり、今期は地政学リスクを踏まえて物件の供給を絞る方針です。
海外は総事業費ベースで約8,200億円(当社持分)の案件を確保しており、うち貸借対照表上の残高が約3,200億円あります。規模としては小さくない一方、利益への貢献はまだ安定していません。
資産運用(売上42億円/事業利益28.8億円)
運用資産残高は2兆3,639億円で、前期末の2兆3,862億円から微減しました。上場REIT(野村不動産マスターファンド)1兆1,266億円、私募REIT 5,680億円、私募ファンド等6,594億円という内訳です。通期は売上163億円→250億円と大幅増を見込んでいますが、これはファンドの物件売却収入が乗る前提で、こちらも後半偏重の計画です。
仲介・CRE(売上150億円/事業利益44.4億円)
唯一の増収セグメントのひとつです。売買仲介の取扱高は3,373億円(前年3,357億円)、取扱件数2,590件(同2,560件)と微増、手数料率は4.2%→4.3%へ改善しました。それでも事業利益は52.5億円から44.4億円へ15.5%減っており、会社は広告宣伝費等の経費増と説明しています。通期の事業利益予想は190億円で前期比横ばい、広告宣伝費とDX費を戦略的に使う方針です。
運営管理(売上274億円/事業利益12.0億円)
住宅管理戸数は20万2,274戸と着実に増え、受注工事も89億円(前年83億円)と伸びています。しかし事業利益は18.2億円から12.0億円へ34.4%減。DX費や人件費の増加が理由です。
このセグメントで見落とせないのは通期予想です。 2026年3月期の事業利益135億円に対し、2027年3月期予想は95億円(△40億円)。増収を見込みながら、利益を4割近く減らす計画をあらかじめ置いています。管理事業は本来この会社の安定収益源であり、その部門で意図的に40億円の減益を織り込んでいる。全社の事業利益予想が前期比+26億円(+1.8%)にとどまっている理由の大部分が、ここにあります。
6. 資本政策と株主還元
株主優待制度がない銘柄なので、還元は配当と自己株式に集約されます。ここは丁寧に見ていきます。
配当
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 2027年3月期予想 | 年間44.00円(中間22.00円+期末22.00円) |
| 2026年3月期実績 | 年間40.00円(中間18.00円+期末22.00円) |
| 配当回数 | 年2回 |
| 権利確定日 | 中間:9月30日/期末:3月31日 |
| 連続増配 | 15期連続(会社予想ベース) |
| 配当性向(予想) | 43.8%(44.00円 ÷ EPS 100.48円) |
| DOE(筆者の概算) | 約4.7% |
| 配当利回り(株価915円の場合) | 約4.81% |
中間配当が18円から22円へ引き上げられている点は、今期から中間と期末が同額になったということで、地味ですが方針の変化です。
用語メモ:権利付最終日 配当や株主優待を受け取るには、権利確定日(この会社なら9月30日と3月31日)の時点で株主名簿に載っている必要があります。株を買っても名義が書き換わるまでに2営業日かかるため、実際に買っておくべき最終日は権利確定日の2営業日前です。2026年9月30日は水曜日なので、中間配当の権利付最終日は9月28日(月)になると見込まれます(筆者の概算です。祝日等の関係で変わる可能性があるので、必ず証券会社の情報でご確認ください)。
用語メモ:DOE(株主資本配当率) 配当総額を自己資本で割った比率です。「利益の何%を配るか」を示す配当性向と違い、DOEは「株主から預かっているお金に対して何%配るか」を示します。利益は年によって振れますが自己資本はあまり振れないので、DOEを下限に設定している会社は、利益が落ちた年でも配当を維持しやすいという性質があります。この会社は「DOE4%下限」を財務指針に掲げています。
株式分割の影響(見え方が変わっている数字)
2025年4月1日に、1株を5株に分割しています。 このため、分割前の記事やデータを見ると数字がまったく違って見えます。
| 分割前の表記 | 分割後(現在)の表記 | |
|---|---|---|
| 2025年3月期の配当 | 170円 | 34円 |
| 2026年3月期の配当 | 200円 | 40円 |
| 2027年3月期の配当予想 | (220円相当) | 44円 |
| 2026年3月期のEPS | 483.45円相当 | 96.69円 |
配当が170円から40円に「減った」わけではありません。株数が5倍になり、1株あたりの金額が5分の1になっただけです。会社の資料や本記事の表は分割後ベースに統一していますが、ネット上には分割前の数字が残っている記事も多いので、古い情報と比べる際は注意が必要です。
株数の増減と希薄化
| 項目 | 2026年3月末 | 2026年6月末 |
|---|---|---|
| 発行済株式数(自己株式含む) | 917,927,685株 | 917,942,685株 |
| 自己株式数 | 63,725,878株 | 61,545,182株 |
| うち役員報酬BIP信託・株式付与ESOP信託 | 19,062,378株 | 16,876,654株 |
発行済株式数は3か月で15,000株しか増えていません(増加率0.002%)。貸借対照表の新株予約権が6百万円からゼロになっていることから、既存の新株予約権が行使された分と考えられます。
つまり、この会社にはいま実質的な希薄化がありません。 これは地味ですが重要な性質で、利益成長率がそのままEPS成長率になるということです。
用語メモ:希薄化とEPS EPS(1株あたり利益)= 純利益 ÷ 株数 なので、 EPS成長率 = 利益成長率 ÷ 株数成長率 という関係が成り立ちます。株数が増える会社では、利益が10%増えても株数が5%増えればEPSは約4.8%しか増えません。この会社の株数成長率は0.002%なので、この割り算はほぼ影響を与えません。実際、2027年3月期の純利益予想は前期比+3.8%、EPS予想は96.69円→100.48円で+3.9%と、ほぼ一致します。
自己株式は3か月で2,180,696株減りましたが、そのうち2,185,724株は信託(役員報酬BIP信託・株式付与ESOP信託)が保有する株式の減少です。つまり自己株式の減少はほぼ全額が役職員への株式交付によるもので、市場での売却ではありません。
自己株式は依然として6,154万株、発行済株式数の**6.7%**を保有しています。
自己株式取得の状況
会社は財務指針で「総還元性向40〜50%」を掲げ、「自己株式取得は株価水準と財務健全性を見て機動的に対応」としています。ここで注意したいのは、2026年3月期は総還元性向41.4%=配当性向41.4%だったという事実です。両者が一致するということは、その期に自己株式の取得を行っていないことを意味します。
過去には総還元性向が配当性向を上回る年(2018年3月期50.8%対29.1%、2021年3月期45.0%対35.5%など)があり、自己株式取得を実施してきた実績はあります。今期に自己株式取得を発表するかどうかは、株価が純資産を下回っている現状(後述)を踏まえると、注目度の高い論点だと思います。
含み益と保有有価証券
不動産会社を見るうえで欠かせないのが、簿価と時価の差です。
| 項目 | 2026年3月末 |
|---|---|
| 賃貸等不動産の含み益 | 3,172億円 |
| 総資産に対する比率 | 11.3% |
| 1株あたり含み益(税引前・筆者の概算) | 約371円 |
| 1株あたり純資産 | 938円 |
| 1株あたりNAV | 1,193円 |
用語メモ:NAV(Net Asset Value) 「純資産+含み益(税引後)」で計算する、不動産会社の実質的な純資産です。不動産は取得したときの値段(簿価)で帳簿に載り続けるので、値上がりしていても貸借対照表には現れません。その隠れた価値を足し戻したのがNAVです。
検算してみます。1株NAV 1,193円 − 1株純資産 938円 = 255円。これが税引後の1株あたり含み益です。税引前の371円と比べると255 ÷ 371 = 0.688、つまり約31%が税金として控除されている計算になり、法定実効税率の水準とおおむね一致します。数字は整合しています。
なお、含み益を実現するには物件を売る必要があり、売却益は一過性の利益です。 売れば含み益は減り、賃料収入もなくなります。前述した賃貸可能床面積の21.6%減は、まさにこの含み益の実現が進んでいることの表れでもあります。
政策保有株
会社は資料のなかで、**「2026年3月末時点で、純投資目的以外の上場株式の保有銘柄はございません」**と明記しています。政策保有株ゼロです。
貸借対照表の投資有価証券2,486億円は、REITへの出資や不動産SPCへの出資などが中心と考えられます(内訳の詳細は有価証券報告書で確認が必要です)。「投資有価証券が2,486億円もある=政策保有株が多い」という誤読をしないよう、この区別は押さえておきたいところです。
親会社の存在
野村ホールディングス(8604)が2026年3月31日時点で議決権の**37.08%**を保有しています。会社は「NHIとの間でコーポレート・ガバナンスに影響を及ぼしうる合意・契約は存在しない」「十分な独立性が確保されている」と説明していますが、実質的な親子上場の状態にあることは事実です。少数株主にとっての論点として認識しておく価値はあります。
7. 株価の見方
以下は2026年8月20日前後の情報サイト・報道ベースの数値です(筆者が証券ツールで確定していない概算値なので、実際の投資判断の際は必ずご自身でご確認ください)。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 株価 | 900円台前半(8月17日終値915.3円、8月18日910.3円) |
| 時価総額 | 約8,400〜8,500億円 |
| PER(会社予想EPS 100.48円ベース) | 約9.1倍 |
| PBR(2026年6月末自己資本ベース) | 約0.98倍 |
| P/NAV(2026年3月末NAV 1,193円ベース) | 約0.77倍 |
| 配当利回り(予想44円ベース) | 約4.8% |
| 年初来高値 | 1,166.0円(2026年2月27日) |
| 年初来安値 | 884.4円(2026年6月4日) |
1株純資産の検算:自己資本8,016億6,500万円 ÷ 自己株控除後株式数856,397,503株 = 936.1円。株価915円ならPBRは0.98倍です。
強気に見る材料
- PBRが1倍割れ、P/NAVは0.77倍。 含み益を加味した実質的な純資産に対して、株価は4分の3以下の評価です。会社自身が「資本コストは約8%」と認識し、PBR・P/NAVを意識した経営を掲げています。
- 配当利回り約4.8%、15期連続増配予想、DOE4%下限。 利益が落ちた年でも配当が維持されやすい設計になっています。
- 分譲粗利率26.9%への改善と、23区平均価格の20%上昇。 都心の値上げ力は健在です。
- 分譲用地ストック2兆5,600億円(1万7,100戸)、収益不動産ストック1兆900億円。 数年分の供給余力は確保済みです。
- BLUE FRONT SHIBAURAが全館成約済み、2026年9月満床稼働予定。 空室率悪化の主因が解消に向かいます。
- 株数がほぼ増えていない。 利益成長がそのままEPS成長になります。
- 政策保有株ゼロ、ROE10.7%(2026年3月期)と財務指針を上回る実績。
- 自己株式取得の余地。 株価が純資産を下回るなか、総還元性向40〜50%のレンジには配当だけでは達していない年があります。
弱気に見る材料
- 第1四半期の構成比が18.1%まで低下。 過去3年の26〜34%と比べても低く、通期予想の達成が1〜3月の3か月にこれまで以上に依存する構図です。前提が崩れたときの下方修正リスクは、四半期均等に稼ぐ会社より大きくなります。
- 完成在庫845戸、前年同期の2.68倍。 需要鈍化なのか意図的な出し惜しみなのか、現時点では判断できません。
- 金利上昇の影響が出始めている。 支払利息は四半期で42.2億円→49.5億円(+17.3%)。単純に4倍すると年間198億円で、2026年3月期実績188億円を上回る計算です。会社は「支払利息の増加<利益の成長」を目指すとしていますが、今期の事業利益予想の伸びは+1.8%(+26億円)にとどまります。
- 自己資本比率28.3%で、財務指針の30%を下回った状態が3期続いている。
- コマーシャル・ペーパーが3か月で760億円→1,480億円へ倍増。 短期調達が増えており、金利上昇局面では借り換えのたびにコストが乗ります。
- 運営管理セグメントの通期事業利益予想が135億円→95億円(△40億円)。 安定収益部門で意図的な減益を織り込んでいます。
- 海外セグメントが事業損失、通期予想も0億円。
- 中期計画に対する成長の鈍化。 2028年3月期1,600億円まで年平均4.2%と、当初の「年8%水準」からは緩んでいます。貯金があるとも言えますが、成長の勢い自体は落ちています。
- 賃貸可能床面積が1年で21.6%減。 含み益の実現は利益を生みますが、安定的な賃料収入は減ります。
- 住宅ローン金利の上昇。 10年固定は2024年1.80%→2026年7月3.50%、変動は0.625%→1.275%(いずれも会社資料掲載の大手金融機関適用金利)。買い手の購買力に効いてくる論点です。
- 親子上場(野村HD 37.08%保有)。
過去の数字と、未来の数字を分けて見る
第1章で確認した「タイミングのずれ」を、株価を考えるときにも当てはめてみます。
四半期の売上高と利益は、数年前に取得した用地で、1〜2年前に契約した住戸を、この3か月に何戸引き渡したかの結果です。 その意味では、今回の36.5%減益は今の会社の実力を測る数字ではない、という見方が成り立ちます。
一方で、未来を測る数字も同じ資料のなかに載っています。
- 契約の状況(契約進捗率71.8%、契約済み金額は約2,513億円で前年並み)は悪くない
- 用地取得(4〜6月期390億円)は控えめ
- 完成在庫845戸が、1年前の2.68倍に増えている
この3つのうち、最初の1つは追い風、あとの2つは向かい風です。どちらが勝つかは、次の中間決算(10月下旬〜11月上旬の見込み)で契約進捗率と完成在庫がどう動くかを見てから判断しても遅くない、というのが個人的な現在地です。株価がPBR1倍・P/NAV0.77倍という水準にあることは、市場も同じことを迷っている証拠なのかもしれません。
8. 今後のカレンダーと見るべきKPI
カレンダー
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年9月28日(月)ごろ | 中間配当の権利付最終日(筆者の概算・要確認) |
| 2026年9月30日(水) | 中間配当の権利確定日 |
| 2026年9月 | BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S 満床稼働予定 |
| 2026年10月下旬〜11月上旬 | 2027年3月期 中間決算発表(キャッシュ・フロー計算書も開示) |
| 2027年1月下旬〜2月上旬 | 第3四半期決算発表 |
| 2027年3月31日(水) | 期末配当の権利確定日 |
| 2027年4月下旬 | 通期決算発表(3か年計画の最終年度・2028年3月期の予想が出る) |
(決算発表日は過去の実績からの推定です。確定日程は会社IRサイトのIRカレンダーでご確認ください)
見るべきKPI(優先順位順)
- 住宅分譲の契約進捗率(中間決算)— 過去3年の2Q末は91.2%/92.9%/93.9%。90%前後に乗るかどうかが今期予想の信頼性を測る一番の物差しです。
- 分譲完成在庫(販売中+未販売) — 845戸が減るのか、さらに増えるのか。
- 支払利息の四半期推移 — 49.5億円からさらに増えるペースかどうか。
- コマーシャル・ペーパー残高と自己資本比率 — 1,480億円が減って自己資本比率が30%に向かうか。
- 都市開発の空室率(BLUE FRONT SHIBAURA除きベース) — 9月の満床稼働後にどこまで下がるか。
- 収益不動産の売却進捗 — 都市開発の通期計画は後半集中の前提です。
- 用地取得額 — 2〜3年後の売上を決める先行指標。通期でどこまで積むか。
- 運営管理セグメントの事業利益 — 通期95億円計画に対する実際の経費の出方。
- 海外セグメント — 通期0億円の計画から黒字方向に振れるか。
- 自己株式取得の発表の有無 — 総還元性向40〜50%のレンジと株価水準を踏まえた経営判断。
- 中間決算の営業キャッシュ・フロー — 1Q・3Qは非開示になったため、中間期が次の確認機会です。
9. 3行まとめ
- 4〜6月期は最終利益36.5%減。ただし分譲マンションの売上は引渡日に立つため、この業種の利益は1〜3月に集中する(2026年3月期は通期事業利益の41.5%が第4四半期)。四半期の数字を4倍する読み方は成立しない。
- とはいえ第1四半期の構成比18.1%は過去3年の26〜34%より明確に低く、今期は例年以上に1〜3月への依存が高い計画。一方、販売の勢いを直接示す契約済み分譲金額は約2,513億円と前年並みで、契約進捗率71.8%への低下は主に目標を12.5%引き上げたことの反映と読める。
- 株主優待はなく、還元は配当(年44円・15期連続増配予想・利回り約4.8%・DOE4%下限)と自己株式。PBR約0.98倍・P/NAV約0.77倍と資産価値に対しては割安な一方、完成在庫845戸(前年同期の2.68倍)、支払利息+17.3%、自己資本比率28.3%が向かい風。次の中間決算で契約進捗率と完成在庫を確認したい。
免責事項
本記事は、野村不動産ホールディングス株式会社(証券コード3231)が2026年7月30日に開示した「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」および「2027年3月期 第1四半期決算説明資料」、同社IRサイトの公開情報、ならびに報道・株式情報サイトの情報に基づいて作成した、個人の分析メモです。投資勧誘・投資助言を目的とするものではありません。数値は原則として一次情報(決算短信・決算説明資料)からの転記であり、比率・進捗率・1株あたり金額など筆者が計算した数値には「概算」と明記しています。株価・時価総額・PER・PBR・配当利回り等は情報サイト・報道ベースの参考値であり、確定値ではありません。また、本記事では紙幅の都合により、投資有価証券2,486億円の内訳、セグメント別の詳細な資産効率、役員報酬BIP信託・株式付与ESOP信託の設計、海外プロジェクトの個別収支、関連当事者取引などには踏み込んでいません。これらについては有価証券報告書等の一次資料でご確認ください。
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