本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。**執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。**特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事でわかること
- 上半期(2026年4〜9月)は売上高が7.0%減、営業利益が33.1%減。ただし**売上総利益(粗利)はほぼ前年並み(△0.1%)**で、減益のほぼ全額は販管費の増加(+131百万円)で説明できること。そのうち61百万円は、事務所の原状回復費用の見積り直しによる一度きりの費用だったこと
- 7〜9月の3か月だけを取り出すと、粗利715百万円は筆者が並べた14四半期で最高、一度きりの費用を足し戻した営業利益は190百万円で前年同期(187百万円)並みだったこと
- 粗利率は14四半期で29.9%から38.4%へ上がり続けている一方、**折込広告の売上は上半期で△39.0%**と、「チラシの束からスマホへの持ち替え」が売上を縮めながら進んでいること
- 通期予想(営業利益800百万円)は据え置かれ、下期に置かれた営業利益は534百万円=前年下期(276百万円)の約1.9倍。営業利益率12.3%は、過去10四半期のどの3か月より高い水準であること。過去3期の「上期決算時点で予想が置いていた下期」の達成率は15.5%・178.7%・78.4%と大きく振れていること
- 配当は「DOE6%」と「配当性向50%」の高い方を目安にしており、予想25円は利益が前年下期並みにとどまっても純資産側の下限(約21円)に支えられる形であること。上期の自己株式取得418,700株のうち86%に当たる360,000株は、同じ時期に役員への譲渡制限付株式として再び外に出ていること
1. ゲンダイエージェンシーはどんな会社か
パチンコ店の「呼び込み係」を外から務めてきた会社
パチンコ店が新台を入れる日を想像してみてください。前の週から新聞の折込チラシを撒き、店頭にのぼりを立て、当日は業界のタレントを呼んで来店イベントを打つ。最近はチラシの代わりに、店の近くにいる人のスマホに広告を出す――。店にお客を呼ぶための、こうした一連の段取りを、店の外から請け負ってきたのがゲンダイエージェンシーです。
会社のセグメントは「広告事業」と「不動産事業」の2つですが、上半期の売上高3,645百万円のうち3,606百万円(98.9%)が広告事業です。有価証券報告書の「事業等のリスク」には、売上高が「特定業種であるパチンコホール業界の広告需要に大きく依存」していると会社自身が書いています。
本記事では、この会社を**「パチンコ店の呼び込み係を外から務め、チラシの束をスマホの広告に持ち替えている会社」**として読んでいきます。この一文から、強みと弱みが同じように出てきます。
| 軸の一文の部分 | 何を表すか | 決算書のどこに出るか |
|---|---|---|
| 呼び込み係を外から務める | 店の集客の段取りを一式で請け負える(強み) | インターネット広告・来店イベント等の伸び、粗利率 |
| 呼び込み係の仕事量は店が決める | 業界の広告予算と自主規制で仕事量が変わる(弱み①) | 有報の「事業等のリスク」、業種別取扱高 |
| チラシの束を持ち替えている途中 | 束が細る速さは自分で決められない(弱み②の一) | 折込広告の売上、営業利益の「数量効果」 |
| 呼び込み係は人がやる | 束が細っても営業担当の人件費は減らない(弱み②の二) | 販管費、従業員数 |
この表のポイントは2つです。1つは、売上の大きい仕事(チラシ)ほど利幅が薄く、利幅の厚い仕事(スマホ広告・イベント企画)ほど売上が小さいので、持ち替えが進むほど売上は縮み、粗利率は上がること。もう1つは、そのとき人の費用だけは縮まないことです。今回の上半期の減益は、この最後の行でほぼ説明がつきます(第3章)。
事業構造と業績の推移
| 区分 | 上半期売上高 | 構成比 | 上半期セグメント利益 |
|---|---|---|---|
| 広告事業 | 3,606百万円 | 98.9% | 393百万円 |
| 不動産事業 | 38百万円 | 1.1% | 17百万円 |
| 全社費用(調整額) | — | — | △143百万円 |
| 連結 | 3,645百万円 | 100.0% | 266百万円(営業利益) |
不動産事業は、子会社のランドサポートが持つ千葉県柏市の土地の賃貸収入と、賃貸物件等の仲介手数料です。規模は小さいものの、仲介の大型案件が入った期と入らない期で利益が数十百万円単位で動くので、今期の下期予想を読むうえでは無視できない存在です(第5章)。
| 期(3月決算) | 売上高 | 売上総利益 | 粗利率 | 営業利益 | 営業利益率 | 純利益 | EPS | 年間配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 7,419 | 2,192 | 29.5% | 249 | 3.4% | 125 | 10.17円 | 18円 |
| 2025年3月期 | 7,679 | 2,420 | 31.5% | 418 | 5.4% | 358 | 29.16円 | 20円 |
| 2026年3月期 | 7,531 | 2,702 | 35.9% | 674 | 8.9% | 473 | 42.24円 | 24円 |
| 2027年3月期(会社予想) | 8,000 | — | — | 800 | 10.0% | 520 | 47.27円 | 25円 |
(単位:百万円。決算短信・有価証券報告書より。粗利率・営業利益率は筆者の計算)
売上高は3期ほぼ横ばいですが、粗利率は29.5%→35.9%と6.4ポイント上がり、営業利益は2.7倍になりました。前期のROEは11.7%、自己資本比率は71.9%です。なお、有価証券報告書の5期表を遡ると、2014年3月期の連結売上高は16,949百万円ありました。2022年3月期からは収益認識の会計基準の適用で代理人取引を純額で計上するようになっているため、売上高を長期で直接比べることはできません。
用語メモ:総取扱高と売上高 広告会社は、媒体の枠を仲介するだけの「代理人取引」では、お客から受け取る金額全体ではなく手数料部分だけを売上高にします。会社は説明資料で、代理人取引を総額で数えた「総取扱高」も開示しています。上半期の広告事業の総取扱高は3,845百万円、売上高は3,606百万円で、差の239百万円が代理人取引の総額と純額の差に当たります。
会社予想の達成履歴:上にも下にも大きく外れてきた予想
| 期 | 期初予想(営業利益) | 期中の修正(開示日) | 実績 | 期初予想比 | 最終予想比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 500 | 280(2024年1月19日・第3四半期決算と同日) | 249 | △50.2% | △11.1% |
| 2025年3月期 | 300 | 400(2025年1月24日・第3四半期決算と同日) | 418 | +39.3% | +4.5% |
| 2026年3月期 | 550 | 750(2025年10月17日・上半期決算と同日) | 674 | +22.5% | △10.1% |
| 2027年3月期 | 800 | 据え置き(2026年10月16日時点) | — | — | — |
(単位:百万円。決算短信・業績予想の修正に関するお知らせ・決算説明資料より)
この表のポイントは、同じ会社の予想が、下に半分外れた年も、上に4割外れた年もあることです。前期(2026年3月期)は上半期決算で750百万円へ引き上げ、第3四半期決算では「計画どおり推移」と書いたうえで、実績は674百万円と最終予想を10.1%下回りました。この差は業績予想の修正を開示する基準(利益で30%)に届かないため、期中の下方修正の開示は出ていません。
用語メモ:業績予想の修正の開示基準 上場会社は、売上高で10%、利益で30%以上の差が見込まれるときに修正を開示します。基準に届かない差は開示されないので、「修正が出ていない=予想どおり」とは限りません。今期でいえば、通期の営業利益が560百万円(800百万円×0.7)を下回る見込みになった時点で修正の開示が必要になります。
2. 上半期決算のハイライト(2026年10月16日 15時30分発表)
損益
| 科目 | 前上半期 | 当上半期 | 増減額 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,921 | 3,645 | △276 | △7.0% |
| 売上原価 | 2,535 | 2,260 | △275 | △10.8% |
| 売上総利益 | 1,385 | 1,384 | △0 | △0.1% |
| 販売費及び一般管理費 | 987 | 1,118 | +131 | +13.3% |
| 営業利益 | 398 | 266 | △132 | △33.1% |
| 経常利益 | 398 | 267 | △130 | △32.7% |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 261 | 154 | △107 | △41.2% |
(単位:百万円。中間決算短信より。増減率は会社開示の値)
この表のポイントは、売上高の減少額(276百万円)と売上原価の減少額(275百万円)がほぼ同じことです。売上は減っても、減った売上はほとんど原価を伴う仕事(主に折込チラシ)だったので、粗利は1百万円も減っていません。営業利益の減少132百万円は、販管費の増加131百万円とほぼ同額です。
会社は販管費の増加理由として、人的資本への投資(人件費・採用関連費用)と、資産除去債務の見積りの見直しを挙げています。短信の注記は次のとおりです(原文)。
当中間連結会計期間において、当社の不動産賃貸借契約に伴う原状回復義務となる資産除去債務について、新たな情報の入手に伴い、原状回復費用に関して見積りの変更を行いました。この見積りの変更による増減額61百万円を変更前の資産除去債務残高に加算しております。なお、当該見積りの変更により、当中間連結会計期間の営業利益、経常利益及び税金等調整前中間純利益は61百万円減少しております。
用語メモ:資産除去債務 借りている事務所を退去するときに元の状態に戻す費用(原状回復費用)を、あらかじめ負債として計上しておくものです。見積りが増えると負債を積み増し、対応する費用が出ます。会社はこの61百万円を「減価償却費として一括計上」したと説明しています。現金がこの期に出ていったわけではありませんが、将来の退去時に支払う見込み額が増えたことを意味します。
第1四半期の短信では「会計上の見積りの変更:無」、資産除去債務の残高は51百万円のままだったので、61百万円は7〜9月の3か月に計上されたものです(9月末の残高は112百万円)。
純利益の減少率(△41.2%)が営業利益(△33.1%)より大きいのは、税負担率が前上半期の34.5%から42.3%に上がったためです(法人税等113百万円÷税引前利益267百万円)。短信の注記では「中間連結財務諸表の作成に特有の会計処理の適用:無」となっており、見積実効税率で税金を按分する方式ではないため、上半期の負担率がそのまま通期の見込みを表すわけではありません。
セグメント
| セグメント | 前上半期 売上 | 当上半期 売上 | 前上半期 利益 | 当上半期 利益 | 利益増減 |
|---|---|---|---|---|---|
| 広告事業 | 3,851 | 3,606 | 501 | 393 | △108 |
| 不動産事業 | 70 | 38 | 36 | 17 | △19 |
| 全社費用 | — | — | △140 | △143 | △3 |
| 連結 | 3,921 | 3,645 | 398 | 266 | △132 |
(単位:百万円。セグメント利益の合計と連結営業利益は、百万円未満切捨てのため±1百万円ずれます)
不動産事業の減益は、前年の第1四半期に大型の仲介手数料案件があった反動です。会社はこの点を明記しています。
財政状態とキャッシュ・フロー
| 項目 | 2026年3月末 | 2026年9月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 3,226 | 2,603 | △622 |
| 有価証券 | — | 500 | +500 |
| 借入金(1年内返済を含む) | 587 | 612 | +25 |
| 資産除去債務 | 51 | 112 | +61 |
| 純資産 | 3,891 | 3,884 | △6 |
| 自己資本比率 | 71.9% | 71.8% | △0.1pt |
(単位:百万円)
現預金が622百万円減った主な理由は、手元資金の運用として有価証券500百万円を買ったことです(会社の説明)。現預金と有価証券を合わせると3,103百万円で、借入金612百万円を差し引いても2,491百万円の現金超過です。
| キャッシュ・フロー | 前上半期 | 当上半期 |
|---|---|---|
| 営業活動 | 289 | 216 |
| 投資活動 | △129 | △537 |
| 財務活動 | △730 | △300 |
(単位:百万円)
営業CFが前年より減ったのは、税引前利益の減少に加え、法人税等の支払額が59百万円→197百万円に増えたためです(前期の利益増に対応する納税)。財務CFの主な中身は、自己株式の取得193百万円と期末配当132百万円です。
なお、営業CFの中に「預り敷金及び保証金の増減額」+78百万円、貸借対照表で固定負債の「その他」が25百万円→103百万円、投資その他の資産が527百万円→645百万円と、それぞれ動いています。短信・説明資料にはこれらの理由の説明がないため、本記事では金額の事実の記載にとどめます。
3. 深掘り①:売上7%減・粗利横ばい・営業利益33%減を3つに分ける
ここからの3章は、「下期に前年の約2倍の営業利益を置いた予想は、どれくらい重いのか」という1つの問いを3段階で追います。まず、上期の減益の中身を分けます。
営業利益の減少132百万円を、数量・率・販管費に分ける
| 要因 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 数量効果(売上が減った分) | 売上の増減△276 × 前上半期の粗利率35.32% | △97 |
| 率効果(粗利率が上がった分) | 当上半期の売上3,645 × 粗利率の差(37.97%−35.32%) | +97 |
| 販管費の増加 | 1,118 − 987 | △131 |
| 合計 | △132 |
(単位:百万円。筆者の計算。各項目は四捨五入、合計は実際の営業利益の増減△132百万円と一致)
この表のポイントは、数量効果と率効果がほぼ同額で打ち消し合っていることです。チラシの束が細って失った粗利(△97)を、利幅の厚い仕事への持ち替え(+97)でちょうど埋めた。軸の一文でいえば、「束が細る」と「持ち替え」がこの上半期は引き分けで、勝敗を分けたのは「人の費用は縮まない」の行(△131)でした。
販管費の増加131百万円のうち61百万円は資産除去債務の見積り変更による一度きりの費用です。これを除くと販管費の増加は70百万円(+7.1%)、営業利益は327百万円で前年比△17.8%になります。会社が挙げた人件費・採用関連費用の増加が、この70百万円の主な中身です。広告事業の人員は208人で前期末から横ばいなので、増えたのは人数ではなく1人あたりの費用(賃上げ等)と採用費です。
用語メモ:一度きりの費用を「除いて」見る意味 資産除去債務の見積り変更は、毎期繰り返す費用ではありません。除いた数字は会計上の利益ではありませんが、「来期以降も続く稼ぐ力」を前年と比べるための参考値になります。逆に、事務所を借りている限り、退去時に払う見込み額が増えたことは事実として残ります。
7〜9月の3か月だけを取り出す
短信は4〜9月の累計しか出さないので、第1四半期(4〜6月)の短信の数字を引くと、7〜9月の3か月が出ます。
| 項目 | 前年7〜9月 | 今年7〜9月 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,927 | 1,861 | △3.4% |
| 売上総利益 | 682 | 715 | +4.8% |
| 粗利率 | 35.4% | 38.4% | +3.0pt |
| 販管費 | 495 | 586 | +18.4% |
| 営業利益 | 187 | 129 | △31.0% |
| 一度きりの費用61を足し戻した営業利益 | 187 | 190 | +1.6% |
(単位:百万円。筆者の差し引き。販管費は売上総利益−営業利益で算出しており、会社の説明資料の値と±1百万円ずれることがあります)
この表のポイントは2つです。
1つ目に、7〜9月の粗利715百万円は、筆者が並べた2024年3月期以降の14四半期で最も大きい値です。会社も説明資料で「前期の各四半期を超える水準」と書いています。
2つ目に、一度きりの費用を足し戻すと、7〜9月の営業利益は前年並みです。4〜6月の営業利益が前年比△34.9%だったのに比べると、落ち込みは3か月で縮みました。ただし前年の4〜6月には不動産の大型仲介案件が入っていたので、4〜6月の落ち込みのうち一部は反動です。
減益をセグメント別にも分ける
| 要因 | 上半期の増減 | うち7〜9月 |
|---|---|---|
| 広告事業 | △108 | △60 |
| 不動産事業 | △19 | +4 |
| 全社費用 | △3 | +1 |
| 合計 | △130 | △55 |
(単位:百万円。筆者の差し引き。合計は連結営業利益の増減△132と、百万円未満切捨てのため2百万円ずれます)
7〜9月の広告事業のセグメント利益は195百万円で、前年同期(255百万円)から60百万円減りました。この60百万円は、資産除去債務の61百万円とほぼ同額です。全社費用は7〜9月で76百万円と前年(77百万円)並みなので、61百万円は広告事業のセグメント利益に入っている可能性が高いと筆者は見ていますが、短信・説明資料に配分先の記載はなく、これは筆者の推測です。半期報告書(10月30日提出予定)のセグメント注記で確かめられる可能性があります。
4. 深掘り②:14四半期で見る「チラシの束からスマホへの持ち替え」
前章で「数量効果と率効果が引き分けた」と書きました。では、その持ち替えはどこまで進み、どれくらいの速さで続いているのか。下期の予想を読む前に、四半期の並びで確かめます。
粗利率は14四半期でほぼ一方向に上がっている
| 四半期 | 売上高 | 売上総利益 | 粗利率 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年4〜6月 | 1,963 | 587 | 29.9% | 99 | 5.0% |
| 2023年7〜9月 | 1,950 | 586 | 30.1% | 104 | 5.3% |
| 2023年10〜12月 | 1,797 | 521 | 29.0% | 41 | 2.3% |
| 2024年1〜3月 | 1,709 | 498 | 29.1% | 5 | 0.3% |
| 2024年4〜6月 | 1,889 | 566 | 30.0% | 64 | 3.4% |
| 2024年7〜9月 | 1,940 | 580 | 29.9% | 86 | 4.4% |
| 2024年10〜12月 | 1,990 | 648 | 32.6% | 172 | 8.6% |
| 2025年1〜3月 | 1,860 | 626 | 33.7% | 96 | 5.2% |
| 2025年4〜6月 | 1,994 | 703 | 35.3% | 211 | 10.6% |
| 2025年7〜9月 | 1,927 | 682 | 35.4% | 187 | 9.7% |
| 2025年10〜12月 | 1,901 | 679 | 35.7% | 168 | 8.8% |
| 2026年1〜3月 | 1,709 | 638 | 37.3% | 108 | 6.3% |
| 2026年4〜6月 | 1,784 | 669 | 37.5% | 137 | 7.7% |
| 2026年7〜9月 | 1,861 | 715 | 38.4% | 129 | 6.9% |
(単位:百万円。各四半期の決算短信の累計値から筆者が差し引き。各年度の4四半期の合計が通期の開示値と一致することを確認済み。2025年4〜6月は会社の説明資料のグラフとも一致)
この表のポイントは2つです。
1つ目は、粗利率が29.9%から38.4%まで、ほぼ毎四半期上がり続けていることです。前年同期と比べられる10四半期のうち、前年同期を下回ったのは2024年7〜9月(△0.2ポイント)の1度だけです。会社が説明する「高付加価値サービス(DSP広告、自社運営サイト『パチ7』のオリジナルサービス、来店プロモーション企画)への持ち替え」が、数字でも続いています。
2つ目は、営業利益の形には毎年同じ季節の型がないことです。2024年3月期は下期に落ち込み、2025年3月期は10〜12月が最も高く、2026年3月期は4〜6月が最も高い。3年のうち同じ形が出ていないので、「この会社は下期に稼ぐ」とは書けません。この点は、下期に大きな利益を置く予想を読むときに効いてきます(第5章)。
用語メモ:累計しか開示されない会社の四半期 この会社の短信は「4〜6月」「4〜9月」「4〜12月」「4〜3月」の累計で数字を出します。3か月ごとの数字は、隣り合う累計の引き算で筆者が出したものです。百万円未満切捨ての数字どうしの引き算なので、±1百万円の幅があります。
何が減り、何が増えたか:品目別の売上
| 品目(広告事業) | 前上半期 | 当上半期 | 増減額 | 増減率 | 当上半期の構成比 |
|---|---|---|---|---|---|
| インターネット | 1,649 | 1,770 | +120 | +7.3% | 49.1% |
| 折込広告 | 937 | 572 | △365 | △39.0% | 15.9% |
| 販促物 | 436 | 457 | +21 | +5.0% | 12.7% |
| クリエイティブ | 315 | 293 | △21 | △6.9% | 8.1% |
| 媒体 | 87 | 81 | △5 | △6.8% | 2.3% |
| その他 | 424 | 430 | +6 | +1.5% | 11.9% |
| 合計 | 3,851 | 3,606 | △244 | △6.4% | 100.0% |
(単位:百万円。中間決算短信・説明資料より。増減額・増減率・構成比は会社開示の値)
広告事業の減収244百万円のうち、折込広告が365百万円を占め、インターネットの増加120百万円では埋まりきりませんでした。折込広告の上半期の売上は、2025年3月期の1,131百万円から937百万円、572百万円と2年で半分になり、広告事業に占める割合は29.8%から15.9%に下がりました。
| 折込広告の3か月ごとの売上 | 4〜6月 | 7〜9月 | 10〜12月 | 1〜3月 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 492 | 445 | 394 | 312 |
| 2027年3月期 | 276 | 296 | — | — |
| 前年同期比 | △43.9% | △33.5% | — | — |
| インターネットの3か月ごとの売上 | 4〜6月 | 7〜9月 | 10〜12月 | 1〜3月 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 810 | 839 | 834 | 855 |
| 2027年3月期 | 863 | 907 | — | — |
| 前年同期比 | +6.5% | +8.1% | — | — |
(単位:百万円。各四半期の短信の累計から筆者が差し引き)
この2つの表のポイントは、**7〜9月の折込広告は前の3か月(276百万円)より増えた(296百万円)**ことです。前年比の減少率も△43.9%から△33.5%に縮みました。会社も総取扱高について「足元では下げ止まりの傾向」と書いています。
ただ、この1四半期だけで「下げ止まった」と決めるのは早いと筆者は考えます。前期の折込広告は10〜12月・1〜3月と下期にかけて減り続け、会社自身が「第3四半期以降の紙媒体広告の想定を超える急減」を前期の下期の利益が伸び悩んだ理由に挙げています。下期の折込広告が7〜9月と同じ前年比△33.5%で減ると、下期の折込広告は約469百万円(前年下期706百万円)で、約237百万円の減収になる計算です(筆者の試算。折込広告の粗利率は開示されていないので、粗利への影響額は計算していません)。
業種別:減ったのは「パチンコ以外」
| 業種(総取扱高) | 前上半期 | 当上半期 | 増減率 | 当上半期の構成比 |
|---|---|---|---|---|
| パチンコホール広告分野 | 2,204 | 2,172 | △1.5% | 56.5% |
| パチンコホール以外の広告分野 | 1,891 | 1,672 | △11.6% | 43.5% |
| 合計 | 4,095 | 3,845 | △6.1% | 100.0% |
(単位:百万円。説明資料より)
意外なことに、上半期に大きく減ったのはパチンコホール向けではなく、**パチンコ以外の分野(△11.6%)**でした。会社は、住宅関連の広告主が「ナフサ不足等によるクライアントの塗料調達の不安定化」で広告出稿を減らしたことを理由に挙げています。フィットネス施設や買取業の開拓は進めているものの、全体では減収でした。
軸でいえば、呼び込み係の仕事量を決めるのはお客の側(弱み①)で、それはパチンコ店に限りません。有価証券報告書で会社は「フィットネス施設運営企業をはじめとした、他の業種の顧客開拓を進めることにより、特定業界への依存度を低下させていく計画」と書いていますが、今期の上半期に限ると、パチンコ分野の構成比は53.8%から56.5%へ上がっています。方針と逆方向の数字が出た理由は住宅関連の一時的な事情だと会社は説明しており、下期に戻るかどうかが確認点です。
5. 深掘り③:下期に置かれた534百万円は、どれくらい重いのか
前章までで、上半期は「持ち替えは進んだが、人の費用と一度きりの費用で減益」だったことを見ました。では、通期予想を据え置いたことで、下期にはどれだけの利益が求められているのか。
会社の説明(原文)
会社は中間決算短信で次のように書いています(原文)。
当中間連結会計期間の業績は、上述のとおり紙媒体広告の減少影響や住宅関連広告分野における広告出稿需要の減退、資産除去債務の見積りの見直しに伴う費用の計上等により、当初計画に対して遅れが生じる結果となりましたが、下期における不動産事業の大型案件の獲得や年末商戦に向けた広告需要の取り込み、高付加価値サービスのさらなる拡販や営業活動の強化等により、通期計画の達成を目指してまいります。
前年の同じ時期の書類と並べると、言い回しの違いがわかります。
(2025年3月期の中間決算短信)当中間連結会計期間の業績は、概ね当初計画通りに進捗しております。よって、現時点における通期連結業績予想の修正はありません。
(2026年3月期の第3四半期決算短信)当第3四半期連結会計期間の業績は、2025年10月17日公表の計画どおり推移しております。よって、現時点における通期連結業績予想の修正はありません。
今回は、会社自身が「当初計画に対して遅れ」と書き、下期の挽回策として不動産事業の大型案件と年末商戦の需要を名前で挙げています。言い回しの意味を筆者が解釈することはしませんが、「計画どおり」と書いた過去2回とは書き方が違う、という事実は押さえておきたいところです。
予想が置いた下期と、過去3期の実際
| 期 | 上期決算時点の通期予想 | 上期実績 | 予想が置いた下期 | 前年下期比 | 下期の営業利益率 | 実際の下期 | 達成率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 500 | 203 | 297 | — | 7.3% | 46 | 15.5% |
| 2025年3月期 | 300 | 150 | 150 | +226.1% | 4.1% | 268 | 178.7% |
| 2026年3月期 | 750 | 398 | 352 | +31.3% | 9.1% | 276 | 78.4% |
| 2027年3月期 | 800 | 266 | 534 | +93.5% | 12.3% | — | — |
(単位:百万円。営業利益。予想が置いた下期=上期決算時点の通期予想−上期実績。筆者の計算。2026年3月期の750は上期決算と同日の上方修正後の値)
売上高でも同じ計算をします。
| 期 | 予想が置いた下期の売上高 | 前年下期比 | 実際の下期 | 達成率 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 4,087 | — | 3,506 | 85.8% |
| 2025年3月期 | 3,671 | +4.7% | 3,850 | 104.9% |
| 2026年3月期 | 3,879 | +0.8% | 3,610 | 93.1% |
| 2027年3月期 | 4,355 | +20.6% | — | — |
(単位:百万円。筆者の計算)
この2つの表のポイントは3つです。
- 今期の下期は、売上高で前年比+20.6%、営業利益で+93.5%を求めている。過去3期の「予想が置いた下期」の売上の伸びは+0.8%〜+4.7%で、今期の置き方は一段強い。上半期の売上高が△7.0%だった会社に、下期+20.6%を求める形です。
- 下期の営業利益率12.3%は、過去10四半期(2024年4〜6月以降)のどの3か月より高い。最高は2025年4〜6月の10.6%で、一度きりの費用を足し戻した今年7〜9月でも10.2%です。
- 達成率は15.5%・178.7%・78.4%と、上にも下にも大きく外れてきた。2025年3月期のように控えめな予想を大きく上回った年もあれば、2024年3月期のように下期がほぼゼロになった年もあります。「据え置きだから大丈夫」とも「据え置きだから下方修正が近い」とも、過去の形からは決められません。
用語メモ:予想が置いた下期 会社は通期の予想しか出していないので、〈通期予想−上期実績〉を計算すると、会社の予想が下期にどれだけの利益を見込んでいるかがわかります。会社が「下期に534百万円」と発表したわけではなく、据え置きの結果として計算上そうなる、という数字です。
下期の粗利と販管費に分けると
下期の営業利益534百万円を、粗利と販管費に分けて考えます。7〜9月の販管費は一度きりの費用を除いて525百万円でした。これが下期も続くと、下期の販管費は約1,050百万円(前期下期の実績1,040百万円とほぼ同じ)です。すると下期に必要な粗利は約1,584百万円、3か月あたり約792百万円で、過去最高だった今年7〜9月の715百万円を約11%上回り続ける必要があります。前期下期の粗利(1,317百万円)と比べると+20.3%です。
| 下期の3か月あたりの粗利 \ 下期の3か月あたりの販管費 | 525 | 540 | 555 |
|---|---|---|---|
| 659(前期下期の平均並み) | 534 | 504 | 474 |
| 715(今年7〜9月並み) | 646 | 616 | 586 |
| 760 | 736 | 706 | 676 |
| 800 | 816 | 786 | 756 |
(表の中の数字は通期の営業利益。単位:百万円。上期実績266百万円+(粗利−販管費)×2で計算。販管費525は今年7〜9月から一度きりの費用61を除いた値、540・555は人件費等がさらに増えた場合。筆者の試算で、将来の見通しではありません)
この表のポイントは、会社予想の800百万円に届くのは、3か月あたりの粗利が過去最高をさらに大きく上回り、かつ販管費が今年7〜9月並みにとどまる右上の一角だけだということです。今年7〜9月の粗利と販管費がそのまま続く場合(2行目の左端)、通期は646百万円で、予想まで約154百万円足りません。
その差を埋めるものとして会社が挙げたのが、不動産事業の大型案件と年末商戦です。ただし、大型案件の規模も時期も開示されていません。参考までに、前期の第1四半期に入った大型仲介案件のときの不動産事業のセグメント利益は、3か月で29百万円でした(今期第1四半期は6百万円)。前期と同規模の案件であれば、差の154百万円を埋めるには足りない計算です。今期の案件が前期よりはるかに大きい可能性もあり、ここは会社の開示を待つしかありません。
「修正の開示」が必要になる水準との距離
| 下期の営業利益 | 通期の営業利益 | 予想比 | 修正の開示が必要か(利益30%基準) |
|---|---|---|---|
| 534(予想どおり) | 800 | 0% | — |
| 380(今年7〜9月並みが続く) | 646 | △19.3% | 基準に届かない |
| 294 | 560 | △30.0% | 境目 |
| 276(前年下期並み) | 542 | △32.3% | 基準を超える |
(単位:百万円。筆者の計算)
下期が前年下期と同じ営業利益にとどまると、通期は542百万円で、修正の開示基準(560百万円)を下回ります。逆に、今年7〜9月並みの実力が続けば646百万円で、予想を2割近く下回っても修正の開示は不要な範囲です。前期と同じく「開示なしで1〜2割下回って着地する」可能性も、数字のうえでは残っています。
純利益予想の側:税負担率の置き方
純利益予想520百万円と経常利益予想800百万円から逆算すると、予想が置いている税負担率は35.0%です。前期の実績(35.9%)とほぼ同じですが、上半期の実績は42.3%でした。
| 税負担率の置き方 | 経常利益800百万円のときの純利益 |
|---|---|
| 上半期の実績 42.3% | 約462 |
| 前期の実績 35.9% | 約513 |
| 予想が置いている 35.0% | 520 |
(単位:百万円。特別損益をゼロとした筆者の試算)
利益が小さい半期ほど、利益に比例しない税金(住民税の均等割や交際費の損金不算入など)の比重が大きくなり、負担率は高く出やすくなります。下期に利益が積み上がれば通期の負担率は下がる方向ですが、営業利益が予想に届かなければ、純利益は営業利益以上に届きにくい、という関係は押さえておきたいところです。
6. 不動産事業とパチンコ業界の環境
不動産事業の上半期は、売上高38百万円(△44.7%)、セグメント利益17百万円(△53.5%)でした。7〜9月だけで見ると売上高21百万円・利益11百万円で、前年同期(18百万円・7百万円)を上回っています。上半期の減益は、前年4〜6月の大型案件の反動だけで説明できます。
パチンコ業界について、会社は短信で「スマート遊技機の普及に加え、新たな遊技性を備えた機械の登場などにより、業界活性化への期待が続いており、外部環境は総じて安定的に推移」と書いています。また前期の短信では、2025年5月に業界4団体が出した「広告宣伝ガイドライン第三版」によって、広告手法や集客支援サービスで「実施可能な範囲がより明確化」され、突発的な広告自主規制のリスクは軽減したと説明しています。
一方で、有価証券報告書の「事業等のリスク」では、パチンコホールの広告需要は「各種規制の強化やパチンコ遊技人口や遊技単価の減少にあわせて今後も減少または低調に推移するものと予測」していると、会社自身が書いています。インターネット広告についても、広告メディアの自主規制の強化、競合の類似サービス、生成AIによる検索行動の変化を収益性悪化のリスクとして挙げています。過去には2023年10月のステルスマーケティング規制の施行で、パチンコホールがインフルエンサーを使ったインターネット広告を見合わせ、2024年3月期の業績予想を大きく引き下げた経緯があります(2024年1月19日の修正開示)。呼び込み係の仕事の中身は、店と規制の側が決める――軸の弱み①は、過去の数字にも表れています。
7. 資本政策・株主還元
配当の方針と、今期の25円を支えているもの
株主優待制度はありません(会社IRサイトのFAQで「現在、株主優待制度はございません」と明言)。
配当の方針は、有価証券報告書に次のように書かれています(原文)。
中期的には、DOE(株主資本配当率)6%程度と配当性向50%で算定される金額のうち、いずれか高い方を一定の目安として実施できるよう努めてまいります。
中間配当・期末配当とも、決定機関は取締役会です(定款に会社法459条の規定あり)。
| 期 | 1株配当 | EPS | 配当性向(連結) | DOE | 配当の決め方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 15円 | 27.85円 | 53.9% | — | 配当性向50%を目安 |
| 2024年3月期 | 18円 | 10.17円 | 177.0% | 5.2% | 配当性向50%を目安(この期の有報でDOE6%を目安に追加) |
| 2025年3月期 | 20円 | 29.16円 | 68.6% | 5.9% | DOE6%と配当性向50%の高い方 |
| 2026年3月期 | 24円 | 42.24円 | 56.8% | 6.9% | 同上 |
| 2027年3月期(予想) | 25円 | 47.27円 | 52.9% | 約6.4%(会社開示) | 同上 |
(決算短信・有価証券報告書・説明資料より。2023年3月期の配当性向は筆者の計算)
この表のポイントは、DOE(純資産に対する配当の割合)を目安に加えてから、利益が大きく落ちた2024年3月期にも配当が下がっていないことです。2024年3月期の配当性向177.0%は、利益側(配当性向)ではなく純資産側の物差しで配当が決まった結果です。
今期の予想25円を、2つの物差しで1株あたりに直すと次のとおりです。
| 物差し | 計算 | 1株配当 |
|---|---|---|
| 配当性向50% | 会社予想EPS 47.27円 × 50% | 約23.6円 |
| DOE6% | 9月末の1株純資産 約355.0円 × 6% | 約21.3円 |
| 会社予想 | — | 25円 |
(筆者の計算。1株純資産は9月末の純資産3,884百万円÷自己株式を除く株式数10,941,300株)
予想の25円は、どちらの下限も上回っています。では、下期の利益が前年下期並みにとどまった場合はどうなるか。純利益は上期154百万円+前年下期212百万円=366百万円、EPSは約33.5円になり、配当性向50%の下限は約16.7円まで下がります。このときはDOE6%の約21.3円が下限になり、25円を維持すれば配当性向は約75%です(いずれも筆者の試算)。
用語メモ:DOE(株主資本配当率) 1株配当÷1株純資産で、純資産に対して何%を配当に回したかを表します。利益が一時的に落ちても純資産は急には減らないので、配当が下がりにくい物差しです。前期のDOE6.9%は、24円÷前期末と前々期末の1株純資産の平均(約347.7円)で再現できます。今期の「約6.4%」は、同じ定義では筆者は再現できませんでした(25円÷9月末の1株純資産では約7.0%)。会社がどの分母を想定しているかは開示されていません。
強気の読みは、配当が利益の振れに対して守られやすい設計だということです。弱気の読みは、同じ設計が「利益が届かなくても配当は払う」ことを意味し、その分だけ内部留保(純資産)が減り、翌期のDOE下限の計算の分母も小さくなっていくことです。同じ数字が両方の読み方を支えています。
期末配当の基準日は2027年3月31日(水)で、権利付き最終日は2営業日前の**2027年3月29日(月)**です。中間配当12円は2026年12月7日(月)から支払われます。
自己株式の取得:上期に買った株の86%は、役員への株式報酬で外に出ている
今期の資本政策を時系列で並べます。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2026年4月17日 | 譲渡制限付株式報酬制度の導入を決議 |
| 2026年6月26日 | 取締役3名・執行役員6名に自己株式360,000株を処分すると決議(処分価額447円=6月25日終値) |
| 2026年7月17日 | 自己株式の取得枠を決議(上限700,000株・350百万円、2027年3月24日まで)。同日、自己株式940,000株の消却も決議 |
| 2026年7月21日 | ToSTNeT-3で326,000株を取得(取得価額149,960,000円、1株460円=7月17日終値) |
| 2026年7月24日 | 譲渡制限付株式360,000株の払込完了、自己株式940,000株を消却(発行済株式総数12,300,000株→11,360,000株) |
| 2026年9月30日 | 取得枠の累計418,700株・193,331,900円 |
月ごとの取得実績は次のとおりです。
| 期間 | 株数 | 取得額 | 1株あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 7月21日(ToSTNeT-3) | 326,000 | 149,960,000円 | 460.0円 |
| 7月22〜31日(市場買付) | 21,200 | 9,836,500円 | 約464円 |
| 8月 | 30,300 | 14,148,100円 | 約467円 |
| 9月 | 41,200 | 19,387,300円 | 約471円 |
| 累計 | 418,700 | 193,331,900円 | 約462円 |
(自己株式の取得状況に関するお知らせより。7月22〜31日の行は、8月末・9月末の累計と各月の開示から筆者が差し引いた値)
この表と時系列のポイントは、自己株式を418,700株買った同じ時期に、役員向けに360,000株を外に出していることです。3月末の自己株式を除く株式数は11,000,000株、9月末は10,941,300株で、上半期に減った株式数は58,700株(0.5%)にとどまります。株数で見ると、取得した株の86.0%が株式報酬で再び外に出た計算です。
強気の読みは、役員の報酬の一部を株で渡し、株主と同じ立場に立たせるための設計で、譲渡制限は退任・退職まで続き、2031年の定時株主総会まで在任することが解除の条件になっていることです。弱気の読みは、自己株式取得のうち株数削減(1株利益の押し上げ)として効いた部分は小さいことです。会社は株式報酬について「5事業年度にわたる職務執行の対価に相当する額を一括して支給する場合を想定」し、1年あたりでは40百万円以内・80,000株以内に相当すると説明しているので、今回の360,000株は5年分前後をまとめて渡した形です。
取得枠の残りは281,300株・156,668,100円です。残りの金額を残りの株数で割ると約557円で、10月20日終値(456円)より高いので、このままの株価なら株数の上限が先に効き、金額の上限まで使われない計算です(456円で全株取得した場合の累計は約322百万円)。期限の2027年3月24日(水)までの営業日は約103日で、1日あたり約2,700株の取得が必要です。市場で自己株式を買う場合は、1日の買付数量を直近の平均売買高の25%以内に抑える目安があり、7月30日〜8月27日の売買高の中央値(1日約6,600株、Yahoo!ファイナンスの時系列から筆者が計算)を基準にすると目安は約1,600株です。今後もToSTNeT-3のような立会外での取得を組み合わせる可能性がありますが、会社は取得の方法やペースについて説明しておらず、これは筆者の推測です。
大株主と現金の厚み
| 大株主(2026年3月末、有価証券報告書) | 所有株式数 | 議決権比率 |
|---|---|---|
| GAキャピタル株式会社 | 3,624,000株 | 32.95% |
| 梅田 美智子 | 359,400株 | 3.27% |
| 内藤 征吾 | 286,300株 | 2.60% |
| 完山 敏錫 | 183,000株 | 1.66% |
| 鎌倉 吉成 | 173,300株 | 1.58% |
(議決権比率の分母は自己株式を除く発行済株式数。この時点の自己株式は1,300,000株)
筆頭株主のGAキャピタルは、1年前(2025年3月末)の4,524,000株(36.78%)から900,000株減っています。同じ期間に会社は自己株式を1,300,000株取得していますが、取得の相手先は開示されておらず、本記事では両者を結びつけません。2026年7月21日のToSTNeT-3による取得の後の大株主の状況は、10月30日提出予定の半期報告書で確認できます。
現預金と有価証券の合計3,103百万円から借入金612百万円を差し引いた2,491百万円は、10月20日終値ベースの時価総額(自己株式を除く株式数で約4,989百万円)の約50%に当たります。これは手元資金を株主に返す場合に限って意味を持つ計算で、会社は事業投資や資本業務提携(説明資料の「対処すべき課題」に記載)にも資金を使う方針です。なお、手元資金が厚い一方で、上半期にも長期借入200百万円を新たに実行しています(返済175百万円)。借入の理由について、会社は説明していません。
8. 株価の見方
決算への反応(株価の基準日:2026年10月20日終値)
決算は10月16日(金)の15時30分、取引終了と同時刻に発表されたので、16日の終値462円には決算の反応は含まれていません。最初に反応が出た営業日は10月19日(月)です。
| 日付 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | 出来高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10月16日(金・発表日) | 463 | 472 | 458 | 462 | 143,400株 |
| 10月19日(月) | 446 | 462 | 445 | 458 | 81,800株 |
| 10月20日(火) | 456 | 458 | 454 | 456 | 9,700株 |
(Yahoo!ファイナンスの時系列より)
10月19日は発表日の終値比△3.5%で寄り付いたあと戻し、終値は△0.9%でした。発表当日の夜間取引(PTS)では447円(20時37分時点、報道ベース)が付いていました。なお、16日の出来高143,400株は普段の10倍前後ですが、これは発表前の取引です。年初来高値は514円(1月23日)、年初来安値は438円(6月5日)です(Yahoo!ファイナンス、報道ベース)。
指標(10月20日終値456円)
| 指標 | 値 | 計算 |
|---|---|---|
| 予想PER(会社予想ベース) | 約9.6倍 | 456円÷会社予想EPS 47.27円 |
| 予想PER(下期が前年下期並みの場合) | 約13.6倍 | 456円÷筆者試算EPS 約33.5円 |
| PBR | 約1.28倍 | 456円÷9月末1株純資産 約355.0円 |
| 予想配当利回り | 約5.5% | 25円÷456円 |
| 時価総額 | 約4,989百万円 | 456円×自己株式を除く株式数10,941,300株 |
会社予想EPS 47.27円は、純利益予想520百万円を11,000,000株(期初の想定株数)で割った値です。9月末の株式数で割ると約47.5円で、ほぼ変わりません。
強気・弱気の材料
強気の材料
- 粗利は前年並みを守り、7〜9月の粗利715百万円は14四半期で最高。粗利率は前年同期と比べられる10四半期のうち9四半期で前年を上回り、上がり続けている(呼び込み係の持ち替えは進んでいる)
- 減益の61百万円分は一度きりの費用で、除くと7〜9月の営業利益は前年並み
- 折込広告の減少率は△43.9%→△33.5%に縮み、7〜9月は前の3か月より増えた
- 配当はDOE6%の下限(約21円)に支えられやすく、予想利回りは約5.5%
- 現預金と有価証券から借入を引いた金額が時価総額の約半分。自己株式取得の枠も残っている
- 2025年3月期のように、控えめな予想を大きく上回った年もある
弱気の材料
- 下期に置かれた営業利益534百万円は前年下期の約1.9倍、営業利益率12.3%は過去10四半期のどの3か月より高い。今年7〜9月の実力が続いた場合の通期は約646百万円の計算
- 挽回策として会社が挙げた不動産の大型案件は、規模も時期も開示されていない
- 前期は上期決算で上方修正したあと、開示なしで最終予想を10.1%下回って着地した
- 人の費用は束が細っても縮まない。販管費は一度きりの費用を除いても前年比+7.1%
- パチンコ以外の分野(住宅関連)が減り、パチンコ業界への依存度は今期上がった
- 上期の自己株式取得の86%(株数)は株式報酬で相殺され、1株利益の押し上げは小さい
- 下期が前年並みにとどまると、配当性向は約75%に上がり、配当は純資産を取り崩す形に近づく
個人的には、この決算の読みどころは「上期の3割減益」そのものより、持ち替えで守った粗利と、縮まない人の費用の差が、下期にどこまで開くかにあると考えています。軸の一文でいえば、呼び込み係の腕(粗利率)は上がり続けている。問題は、束が細る速さ(数量)と、係の人件費(販管費)のほうです。下期に予想どおり534百万円を出すには、腕がもう一段上がるか、不動産の大型案件という別の財布が開くかのどちらかが必要で、その答えは1月の第3四半期決算で半分見えてきます。
9. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 見るポイント |
|---|---|---|
| 2026年10月30日(金) | 半期報告書の提出予定日 | セグメント注記(資産除去債務の61百万円の配分先)、9月末の大株主の状況(7月のToSTNeT-3後) |
| 2026年11月〜2027年3月 | 自己株式の取得状況(毎月上旬の開示) | 残り281,300株の消化ペース、立会外での取得の有無 |
| 2026年12月7日(月) | 中間配当12円の支払開始 | — |
| 2027年1月下旬(前期は1月23日) | 第3四半期決算 | 10〜12月の粗利が715百万円を超えるか、不動産の大型案件の計上、通期予想の修正の有無 |
| 2027年3月24日(水) | 自己株式取得枠の期限 | 上限700,000株に届いたか |
| 2027年3月29日(月) | 期末配当の権利付き最終日 | 予想13円(年間25円) |
| 2027年4月中旬(前期は4月17日) | 通期決算・来期予想 | 下期の着地、来期の配当予想とDOE |
見るべきKPI
- 3か月ごとの売上総利益:下期に予想どおりの営業利益を出すには、3か月あたり約792百万円(過去最高715百万円)が必要
- 3か月ごとの販管費:一度きりの費用を除いた525百万円から、どこまで増えるか
- 折込広告の3か月ごとの売上:7〜9月の296百万円が下げ止まりなのか、前期のように下期に減り続けるのか
- パチンコ以外の分野の総取扱高:住宅関連の減少(△11.6%)が戻るか
- 不動産事業のセグメント利益:会社が挙げた大型案件の規模と時期
10. 3行まとめ
- 上半期は売上△7.0%・営業利益△33.1%だったが、粗利は前年並み(△0.1%)で、減益のほぼ全額は販管費の増加。うち61百万円は事務所の原状回復費用の見積り直しによる一度きりの費用で、除くと7〜9月の営業利益は前年並み、7〜9月の粗利715百万円は14四半期で最高
- それでも通期予想(営業利益800百万円)の据え置きは、下期に前年の約1.9倍(534百万円)・営業利益率12.3%を置く形で、今年7〜9月の実力が続いた場合の通期は約646百万円の計算。会社は不動産の大型案件と年末商戦で挽回を目指すとしているが、案件の規模は開示されていない
- 配当25円はDOE6%の下限(約21円)に支えられ、利益が前年並みでも維持しやすい設計。一方、上期の自己株式取得の86%(株数)は役員への株式報酬で相殺されている
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、ゲンダイエージェンシーの決算短信(2024年3月期〜2027年3月期第2四半期)、決算説明資料、業績予想の修正に関するお知らせ、自己株式の取得・処分・消却に関する各お知らせ、有価証券報告書(第29期〜第31期)、臨時報告書、会社IRサイトのFAQです。株価・出来高・年初来高値安値はYahoo!ファイナンスの時系列(報道ベース)を使い、夜間取引(PTS)の価格は報道ベースの目安で、取引量が小さく翌営業日の値動きと一致するとは限りません。四半期の数値は累計値から筆者が差し引いたもので、百万円未満切捨てのため±1百万円の幅があります。2024年3月期の第1・第3四半期の単独値は、データ提供サービスで取得した四半期の数値を、同期の中間決算短信・有価証券報告書の開示値との合計一致で確認したものです。感応度表・下期の試算・配当の下限・税負担率の試算は筆者の試算で、将来の見通しではありません。資産除去債務の見積り変更による61百万円が広告事業のセグメント利益に含まれているという記述は筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません(半期報告書で確認できる可能性があります)。自己株式取得の今後のペースに関する記述も筆者の推測です。決算説明会は開催されていますが、本記事は説明会の質疑応答を一切反映していません。会社が「下期における不動産事業の大型案件」と書いた案件の内容・規模・時期は開示されておらず、筆者も把握していません。大株主の持株の増減と自己株式取得の相手先は結びつけていません。配当予想のDOE「約6.4%」は、筆者が前期の定義では再現できなかった値です。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。