株式投資

【2026年8月発表・第1四半期決算】エン(4849)は「無料の入口」を他社に渡した。減収なのに最終利益が4.5倍になった決算を、どこまで実力と読めるか

本記事は2026年9月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • エン(4849)が2026年4月1日に手放した「engage」がどういう事業で、いくらで、誰に売られたのか
  • 売上が11.2%減ったのに営業利益が10.5%増え、最終利益が4.5倍になった仕組み
  • 第1四半期の営業利益が通期予想の52.4%に達しているのに、会社が予想を据え置いている理由と、その裏にある「残り3四半期の見込み」
  • 配当が32.70円から68.30円へ2倍以上に増える一方、その配当性向50%という数字がどの利益を分母にしているのか
  • 発行済株式の24%が自己株式という株主構成と、2026年4月に筆頭株主となった投資ファンド(オアシス)がその後も買い増しを続け、上場の廃止や過半数の取得などに関する事項について会社に提案していると届け出ている事実
  • この会社の業績予想が過去にどう着地してきたか(期中に修正せず期末に41.5%上回った年と、期中に下方修正した年)
  • 株主優待がないこと(有価証券報告書で「該当事項はありません」と明記)と、その代わりに見るべき資本政策

1. この会社を一言でいうと

エン(証券コード4849)は、求人サイト「エン転職」、人材紹介の「エンエージェント」「enworld」、適性テストや研修といった入社後のサービスまでを手がける人材サービスの会社です。2026年3月期の売上高は590億円、東証プライム上場、3月決算です。

この会社を理解する軸を一つ立てます。

エンは、同じ屋根の下に「お金を取らない入口」と「お金を取る出口」を並べて持っていた会社です。そして2026年4月1日、その入口のほうを他人に渡しました。

「お金を取らない入口」が engage(エンゲージ)です。中小企業が自分で求人原稿を作り、無料で掲載できる採用支援ツールでした。いっぽう「お金を取る出口」がエン転職です。こちらは1社1社に取材して原稿を作り、掲載料をもらう有料の求人広告です。

無料のサービスは、それ自体では儲かりません。求職者を集めるための広告費と、サービスを作り続けるための人件費が出ていくだけです。それでも会社が持ち続けていたのは、無料で企業と求職者を集めれば、いずれ有料サービスに繋がるという設計だったからです。街でいえば、人通りを作るために無料の広場を自前で維持し、その広場に面した場所で有料の店を開いていたようなものです。

2026年4月1日、エンはこの広場を株式会社カカクコムに渡しました。正確には、engage事業を新しく作った子会社(株式会社エンゲージ)に移し、その株式の85.1%を51億49百万円で譲渡しています。手元に残ったのは14.9%の持分です。

この記事は、その直後の四半期決算を読むものです。広場の維持費が消えたぶん利益は増えました。では、広場を失った後の本業はどうなっているのか。そして、広場を売って得たお金は、どこへ行くのか。 この2点を軸に進めます。

直近4期の業績推移

まず、どういうペースで動いてきた会社かを先に渡しておきます。以下は2026年定時株主総会の招集通知(事業報告)に載っている4期分です。

決算期売上高経常利益親会社株主に帰属する当期純利益1株当たり当期純利益総資産純資産1株当たり純資産ROE
2023年3月期677億16百万円40億72百万円26億95百万円60.98円519億67百万円351億25百万円816.84円7.2%
2024年3月期676億61百万円53億69百万円41億96百万円102.38円489億74百万円321億61百万円777.70円12.6%
2025年3月期656億78百万円59億43百万円76億28百万円186.76円569億42百万円376億18百万円905.56円22.2%
2026年3月期590億93百万円41億91百万円26億16百万円66.42円497億08百万円318億24百万円830.17円7.7%

この表のポイントは2つです。

1つ目は、売上高が3年で677億円から591億円へ、12.7%減っていることです。人材不足が社会問題になっている時期に、人材サービス会社の売上が減り続けています。

2つ目は、最終利益とROEが年によって大きく跳ねていることです。2025年3月期のROE22.2%と、2026年3月期の7.7%。この差は本業の急変ではありません。2025年3月期には株式会社タイミーの株式を売却した投資有価証券売却益54億56百万円が特別利益に入っていました。翌2026年3月期にはそれがなかった、というだけです。

そして2027年3月期には、engageの売却益48億84百万円が入ります。この会社の最終利益は、「その年に売るものがあったかどうか」でほぼ決まっています。 本記事の後半、配当の話でこの点がもう一度出てきます。

用語メモ:ROE(自己資本利益率) 株主が出したお金(自己資本)に対して、1年でどれだけの最終利益を生んだかの比率です。「純利益 ÷ 自己資本」で計算します。一般に8%が一つの目安とされますが、分子の純利益に一過性の売却益が入っていると簡単に跳ね上がります。高いROEを見たら、まず分子の中身を確認するのが安全です。

会社予想はどう着地してきたか

この会社の業績予想が過去にどう動き、どこに着地してきたかも先に渡しておきます。後の章で今期の予想を読むときの物差しになります。営業利益について、直近3期の予想の変遷を修正の開示日つきで並べます。

決算期期初予想(開示日)期中の修正(開示日)実績(開示日)期初予想比最終予想比
2025年3月期8,100百万円(2024年5月9日)8,100百万円のまま(2024年7月18日、タイミー株式の売却に伴い経常利益と純利益のみ修正)→ 5,200百万円(2025年2月13日)5,892百万円(2025年5月14日)△27.3%+13.3%
2026年3月期2,800百万円(2025年5月14日)修正なし3,962百万円(2026年5月14日)+41.5%+41.5%
2027年3月期2,800百万円(2026年5月14日)第1四半期決算(2026年8月6日)時点で修正なし———

この表のポイントは2つです。

1つ目は、2026年3月期は期中に一度も予想を修正せず、期末に予想を41.5%上回ったことです。その差は、決算発表と同じ日(2026年5月14日)に出た「連結業績予想と実績値との差異」の開示で示されました。会社は差異の理由を「構造改革の一環としておこなったコスト削減により広告宣伝費や人件費などの販売管理費の削減が進み」と説明しています。そして2027年3月期の期初予想は、前期と同じ2,800百万円です。

2つ目は、その前の2025年3月期は逆向きだったことです。期初予想8,100百万円に対し、2025年2月に5,200百万円へ下方修正し、実績は5,892百万円。期初予想比では27.3%下回りました。修正の理由として会社は、大規模な組織統合で「営業戦略の再構築およびオペレーション業務の統合や調整などに想定以上の時間を要しており」、主にengageとエン転職が計画を下回ったと説明しています。

つまりこの会社の予想は、上にも下にも大きく外れてきたということです。今期の予想も、この前提で読む必要があります。

事業の骨格

2026年3月期の事業別売上高は、決算短信に管理会計ベースで開示されています。

区分サービス2025年3月期2026年3月期増減率
国内・メディアエン転職173億91百万円153億06百万円△12.0%
国内・メディアengage97億53百万円70億57百万円△27.6%
国内・メディアその他(ミドルの転職・エン派遣等)156億18百万円153億43百万円△1.8%
国内・採用サービスエージェント99億15百万円108億52百万円+9.4%
国内・採用サービスその他(ゼクウ・backcheck等)17億95百万円25億33百万円+41.1%
国内教育・評価サービス16億87百万円17億52百万円+3.8%
海外メディア・エージェント25億92百万円27億22百万円+5.0%
海外ITエンジニア派遣34億16百万円37億42百万円+9.5%
非HR国内・営業代行サービス19億83百万円17億84百万円△10.0%

※各事業の売上高合算と連結売上高は、事業間調整・連結調整等により一致しません(会社注記)。

減っているのは国内メディア、つまりエン転職とengageです。増えているのは人材紹介(エージェント)、リファレンスチェックなどの採用サービス、海外です。減っている2つが売上の大きいほうで、増えている3つが小さいほう、という構図でした。

なお、会計上のセグメントは「人材サービス事業」の単一セグメントです。上の区分は会社が説明のために使っている管理会計上の区分であり、決算短信のセグメント情報には利益の内訳が載りません。四半期ごとの利益を知るには、累計値から自分で引き算するしかない構造です。 この点は第4章で実際にやります。


2. 決算ハイライト(2027年3月期 第1四半期)

2026年8月6日に発表された、2026年4月1日から6月30日までの3か月の実績です。

項目2026年3月期 1Q2027年3月期 1Q増減増減率
売上高149億91百万円133億14百万円△16億76百万円△11.2%
営業利益13億28百万円14億68百万円+1億40百万円+10.5%
経常利益13億84百万円16億06百万円+2億21百万円+16.0%
親会社株主に帰属する四半期純利益9億48百万円42億46百万円+32億97百万円+347.6%
1株当たり四半期純利益23.31円112.44円——

売上は11.2%減り、営業利益は10.5%増え、最終利益は4.5倍になりました。3つの数字が別々の方向を向いています。理由は明快で、どれも同じ一つの出来事から来ています。

  • 売上が減った:engage事業が4月1日付で連結から外れたため
  • 営業利益が増えた:engageが使っていた人件費と広告宣伝費が消えたため
  • 最終利益が4.5倍になった:engageの株式を売った益48億84百万円が特別利益に入ったため

損益計算書で費用の動きを見ると、こうなります。

項目2026年3月期 1Q2027年3月期 1Q増減増減率
売上高14,991百万円13,314百万円△1,676△11.2%
売上原価2,277百万円2,291百万円+14+0.6%
売上総利益12,713百万円11,022百万円△1,691△13.3%
販管費・人件費4,710百万円3,838百万円△871△18.5%
販管費・広告費および販売促進費3,560百万円2,760百万円△799△22.5%
販管費・その他3,113百万円2,953百万円△160△5.1%
販管費合計11,384百万円9,553百万円△1,832△16.1%
営業利益1,328百万円1,468百万円+140+10.5%

この表のポイントは2つです。

1つ目は、販管費の人件費が18.5%、広告費が22.5%減っていることです。金額にして合わせて16億70百万円。売上の減少16億76百万円とほぼ同額です。人も広告費も、事業と一緒に出ていきました。連結従業員数は1年で718名減り、2026年6月末で2,907名です。

2つ目は、売上原価はほとんど変わっていないことです。+0.6%。原価の中身は海外のITエンジニア派遣の労務費・業務委託費が中心で、engageの費用は原価ではなく販管費に入っていたことがわかります。

特別損益と税金

項目2026年3月期 1Q2027年3月期 1Q
経常利益1,384百万円1,606百万円
特別利益・関係会社株式売却益—4,884百万円
特別利益・投資有価証券売却益11百万円—
特別損失・投資有価証券評価損—184百万円
税金等調整前四半期純利益1,396百万円6,305百万円
法人税等合計447百万円2,057百万円
親会社株主に帰属する四半期純利益948百万円4,246百万円

売却益48億84百万円に対して、税金も2,057百万円が計上されています。税引前6,305百万円に対する負担率は32.6%です。この売却益は税金を払ったうえで手元に残る利益であり、税引後でおよそ33億円程度と読むのが妥当です(筆者の概算。四半期の税金費用は見積実効税率を使う簡便法で計算されている旨が短信に注記されているため、通期の確定値とは一致しない可能性があります)。

なお、特別損失に投資有価証券評価損184百万円が立っています。金額は大きくありませんが、本業と関係のない運用損益が損益計算書に現れ始めた点は、次の四半期以降も見ておく箇所です。

財政状態

項目2026年3月末2026年6月末増減
現金及び預金18,524百万円22,556百万円+4,032
ソフトウエア8,271百万円6,803百万円△1,468
のれん2,376百万円2,239百万円△137
総資産49,708百万円52,162百万円+2,454
未払法人税等751百万円2,258百万円+1,507
負債合計17,884百万円17,548百万円△336
純資産31,824百万円34,614百万円+2,790
自己資本比率63.1%65.7%+2.6pt

現預金が40億32百万円増えました。engage株式の譲渡代金が入ったためです。いっぽうソフトウエアが14億68百万円減っています。会社の説明では、engage事業の譲渡に伴ってソフトウエア17億01百万円とソフトウエア仮勘定86百万円を移管したとされています。engageは、貸借対照表の上では「17億円のソフトウエアの塊」でした。

未払法人税等が15億07百万円増えているのは、売却益にかかる税金の計上によるものです。実際の現金流出は次の四半期以降になります。

用語メモ:第1四半期にキャッシュ・フロー計算書がない理由 上場企業は、第1四半期と第3四半期についてはキャッシュ・フロー計算書の作成を省略できます。エンもこの四半期はCF計算書を作っていません(短信に注記あり)。現金の動きを追いたい場合は、貸借対照表の現預金の増減と、損益計算書の利益を見比べることになります。


3. engageを手放すという取引の中身

この決算の中心はここです。一次情報から時系列で並べます。

日付出来事
2025年12月17日吸収分割及び株式譲渡(子会社の異動)による事業承継に向けた基本合意書の締結を開示
2026年1月23日(開示事項の経過)吸収分割及び株式譲渡に関するお知らせ。株式会社エンゲージの設立を取締役会で決議
2026年2月4日法定事前開示書類(会社分割)を開示
2026年4月1日吸収分割の効力発生。同日、株式会社エンゲージの株式851株(85.1%)を株式会社カカクコムへ譲渡
2026年4月1日特別利益(関係会社株式売却益)44億49百万円の計上見込みを開示
2026年4月21日法定事後開示書類(会社分割)を開示
2026年7月22日価格調整条項に基づく最終譲渡価額の確定により、売却益を48億84百万円へ変更(+4億35百万円)
2026年8月6日第1四半期決算短信で売却益48億84百万円を計上

取引の数字は次の通りです。

項目金額・数値
売却した株式数851株(発行済株式総数1,000株の85.1%)
売却価額51億49百万円
売却損益48億84百万円(特別利益)
売却後の持分比率14.9%
譲渡先株式会社カカクコム
譲渡日2026年4月1日

ここから2つのことが読み取れます。

1つ目は、engageの帳簿価額がほとんどなかったことです。

売却価額51億49百万円から売却益48億84百万円を引くと、売った85.1%分の簿価は2億65百万円です。100%換算で3億11百万円(筆者の概算)。17億円のソフトウエアを移管した事業なのに、株式の簿価が3億円しかないのは、負債(前受金など)も一緒に新会社へ移したためと考えられます。ただし会社は新会社に承継した資産・負債の内訳を開示していないため、ここは筆者の推測であり、会社の開示に基づくものではありません。次の中間決算や有価証券報告書で確認すべき箇所です。

2つ目は、売値の水準です。

100%換算した売却価額は60億51百万円(筆者の概算)。engageの2026年3月期の売上高は70億57百万円でしたから、年間売上の0.86倍で売れたことになります。利益が出ていない事業としては、悪い値ではありません。

では、engageは本当に利益が出ていなかったのか。決算説明資料に手がかりがあります。2027年3月期第1四半期の説明資料によると、前年同期(2025年4月〜6月)のengageの売上高は21億10百万円、営業利益は0億50百万円でした。営業利益率2.4%です。同じ資料に、前年同期のengageの販管人件費が7億35百万円、広告費・販促費が7億49百万円だったことも書かれています。

つまり、四半期あたり21億円を売り上げて、14億84百万円の人件費と広告費を投じて、残ったのは0億50百万円という事業でした。決算短信で会社は「engage事業を単独で計画どおり成長させることは困難であると判断した」と書いています。数字はその判断と整合しています。

用語メモ:吸収分割と株式譲渡を組み合わせる理由 事業をまるごと他社に売る方法はいくつかあります。事業譲渡(資産と契約を個別に移す)、会社分割(事業を包括的に移す)などです。エンが取ったのは、まず100%子会社を新設してそこに事業を移し(吸収分割)、その子会社の株式を売る、という2段構えでした。この形だと、売り手側の損益計算書には「事業譲渡益」ではなく「関係会社株式売却益」が立ちます。また、85.1%だけ売って14.9%を残すといった調整もしやすくなります。

14.9%を残した意味

エンは engage の14.9%を保有し続けています。第1四半期末の貸借対照表では関係会社株式が7億60百万円から7億79百万円へ増えており、持分法による投資利益が前年同期の41百万円から71百万円へ増えています。ただし、この増加分のうちどれだけがエンゲージ由来かは開示されていません。

14.9%を残すという設計は、「完全に手放したわけではない」というメッセージでもあります。カカクコムが求人メディア領域に本腰を入れるなら、その成長の一部はエンにも返ってきます。逆に、うまくいかなければ、この7億円台の株式に評価の問題が出てきます。


4. 深掘り:engageを抜いた後の「実力」はどこにあるか

ここが本記事でいちばん時間をかける部分です。

売上11.2%減・営業利益10.5%増という数字は、engageが入っている期間と入っていない期間を比べたものです。比較としては成立していません。では実力はどう読むのか。3つの角度から詰めます。

4-1. engageを除いた比較

会社は決算説明資料で、engageの影響を除いた比較を出しています。

項目金額
2027年3月期1Q 売上高(A)133億14百万円
2026年3月期1Q 売上高(B)149億91百万円
2026年3月期1Q 売上高からengageを除いた額(C)128億70百万円
(A)−(C)+4億44百万円

engageを除いたベースでは、+4億44百万円の増収、率にして+3.4%(筆者の計算。128億70百万円に対する133億14百万円の比)です。会社資料には「+4.4億円増収」と記載されています。

(B)−(C)=21億21百万円が、前年1Qのengageの売上ということになります。同じ資料の別ページに記載されている前年1Qのengage売上21億10百万円とは11百万円の差がありますが、これは億円単位への丸めによるものと考えられます。

engageを除けば3.4%の増収。これがこの四半期の実力に最も近い数字だと筆者は考えています。中身は、人材紹介(エージェント)が+10.7%、リファレンスチェックのbackcheckを含む採用サービスその他が+74.2%、海外が+2.6%。いっぽう主力のメディアは、engageを除いても△4.3%でした。

4-2. 四半期の差し引き:会社が開示しない単独四半期を作る

エンは累計でしか損益を開示しません。単一セグメントなのでセグメント利益も出ません。そこで、各四半期の決算短信の累計値から前の四半期の累計値を引いて、単独四半期の数字を作ります。

以下は筆者の差し引きです。前々期(2025年3月期)から9四半期を並べ、各期とも4四半期の合計が通期の開示値と一致することを検算で確認しています。

期間売上高営業利益営業利益率経常利益純利益
2025年3月期 1Q(4〜6月)16,246百万円1,693百万円10.4%1,841百万円1,206百万円
2025年3月期 2Q(7〜9月)16,266百万円687百万円4.2%298百万円3,988百万円
2025年3月期 3Q(10〜12月)15,913百万円1,402百万円8.8%1,552百万円1,070百万円
2025年3月期 4Q(1〜3月)17,253百万円2,110百万円12.2%2,252百万円1,364百万円
2025年3月期 合計65,678百万円5,892百万円9.0%5,943百万円7,628百万円
2026年3月期 1Q(4〜6月)14,991百万円1,328百万円8.9%1,384百万円948百万円
2026年3月期 2Q(7〜9月)14,627百万円1,039百万円7.1%996百万円804百万円
2026年3月期 3Q(10〜12月)14,108百万円742百万円5.3%861百万円560百万円
2026年3月期 4Q(1〜3月)15,367百万円853百万円5.6%950百万円304百万円
2026年3月期 合計59,093百万円3,962百万円6.7%4,191百万円2,616百万円
2027年3月期 1Q(4〜6月)13,314百万円1,468百万円11.0%1,606百万円4,246百万円

通期開示値は、2025年3月期が売上65,678百万円・営業利益5,892百万円・経常利益5,943百万円・純利益7,628百万円、2026年3月期が売上59,093百万円・営業利益3,962百万円・経常利益4,191百万円・純利益2,616百万円。すべて一致しています。

なお、2025年3月期2Qの経常利益が298百万円と小さく、純利益が3,988百万円と大きいのは、タイミー株式の売出しに伴う支払手数料333百万円(営業外費用)と投資有価証券売却益(特別利益)がこの四半期に入っているためです。

この表からわかることが3つあります。

1つ目は、前期の営業利益率が期を追って落ちていたことです。 8.9% → 7.1% → 5.3% → 5.6%。通期の6.7%という数字だけを見ていると、この下降は見えません。

2つ目は、その下降が毎年の季節性とは言い切れないことです。 前々期は2Qが4.2%で最も低く、4Qが12.2%で最も高い形でした。前期とは形がまるで違います。「エンは1Qに稼いで後半に落ちる会社」とは、9四半期を並べる限り言えません。

3つ目は、当期1Qの営業利益率11.0%が、前期のどの四半期よりも高いことです。 前期で最も良かった1Qの8.9%を2.1ポイント上回っています。engageという赤字寄りの事業が抜けたのですから、当然ではあります。ただ、利益率が上がったこと自体は「儲かるようになった」ではなく「儲からない部分を外に出した」の結果である点は、押さえておく必要があります。

用語メモ:なぜ自分で引き算する必要があるのか 四半期決算短信に載る損益計算書は「累計」です。第3四半期の短信に書いてあるのは4月から12月までの9か月分であり、10月から12月の3か月分ではありません。季節性のある会社や、期の途中で構造が変わった会社を読むときは、累計から前の累計を引いて3か月ごとの姿を出す必要があります。この作業は他の銘柄でも同じように使えます。引き算した4つの数字の合計が、必ず通期の開示値と一致することを確認するのがコツです。

4-3. 通期予想の残りに何が入っているか

ここが、この決算でいちばん見落とされやすい箇所です。

2027年3月期の通期予想(2026年5月14日公表、8月6日時点で据え置き)と、1Qの進捗を並べます。

項目1Q実績通期予想進捗率残り3四半期の含み
売上高13,314百万円50,000百万円26.6%36,686百万円
営業利益1,468百万円2,800百万円52.4%1,332百万円
経常利益1,606百万円3,406百万円47.2%1,800百万円
親会社株主に帰属する当期純利益4,246百万円5,464百万円77.7%1,218百万円

会社の決算説明資料には、過去3年の同期進捗率が参考として載っています。売上23.0%、営業利益28.3%、純利益28.2%。今期の営業利益進捗52.4%は、例年の倍近い水準です(会社資料には52.5%と記載されています。筆者の計算では1,468 ÷ 2,800 = 52.4%で、端数処理による差です)。

では、残り3四半期に何が入っているのか。計算するとこうなります。

  • 残り3四半期の売上:366億86百万円(四半期平均122億29百万円)
  • 残り3四半期の営業利益:13億32百万円(四半期平均4億44百万円)
  • 残り3四半期の営業利益率:3.6%

1Qの営業利益率が11.0%で、残り3四半期の含みが3.6%です。前期の2Q〜4Qの営業利益の実績合計は26億34百万円でしたから、会社は前期の同じ期間の半分の利益しか見込んでいないことになります。engageという赤字寄りの事業がもう連結にいないにもかかわらず、です。

会社の説明は決算説明資料にあります。「第2四半期以降の構造改革における投資等を鑑み、通期業績予想は現時点で据え置き」。つまり、下期に費用を積む前提です。

第1章で見たとおり、この会社の予想は過去に上にも下にも大きく外れています。そのうえで、第1四半期の営業利益が通期予想に対してどこまで進んでいたかを並べます(筆者の計算)。

決算期第1四半期の営業利益期初予想に対する進捗実績に対する進捗
2025年3月期1,693百万円20.9%28.7%
2026年3月期1,328百万円47.4%33.5%
2027年3月期1,468百万円52.4%—

この表のポイントは1つです。2026年3月期は、第1四半期で期初予想の47.4%に達していたのに、期中に一度も予想を修正せず、期末に41.5%上回って着地しました。 今期の52.4%はそれとよく似た出だしです。直近1期は「第1四半期で予想の半分近くまで進んでも期中は据え置き、期末に大きく上回る」という形だったことになります。ただしそれは1期分の実績であり、その前の期は期中に下方修正しています。今期も同じになるとは限りません。

ここは両論で読むべき箇所です。

  • 保守的な予想と読む見方:構造改革の途中であり、投資の金額もタイミングも固まっていない。1Qが想定を上回ったからといって、期の初めに置いた予想を8月に動かすのは早い。実際、会社は「1Qは想定を上回るスタート」と書いています。前期も第1四半期の進捗47.4%から、期中の修正なしで予想を41.5%上回って着地しました。この見方に立てば、通期の営業利益は2,800百万円を上回る可能性があります。
  • 下期の費用増を本当に見込んでいると読む見方:前期の2Q以降、営業利益率は7.1% → 5.3% → 5.6%と下がっていました。季節性とは言い切れない(前々期は4Qが最も高かった)ものの、前期の後半に利益率が落ちたこと自体は事実です。加えて、エン転職への投資再開を会社が明言しており、広告宣伝費は今後増えます。前々期のように期中に大きく下方修正した年もあります。この見方に立てば、残りの3.6%という利益率は、投資を織り込んだそれなりに現実的な数字ということになります。

筆者はどちらとも断定できないと考えています。 ただし、判断材料として押さえておくべきことが一つあります。前期の四半期別の営業利益率の低下(8.9% → 7.1% → 5.3% → 5.6%)は、engageを含んだ数字です。engageの費用が期の後半に集中していたなら、engageが抜けた今期は同じ形にならないはずです。この論点は、例年11月中旬に出る中間決算(前期は2025年11月13日)で一段進みます。 中間決算で「7〜9月の単独四半期の営業利益」を引き算すれば、下期の3.6%という前提がどの程度の余裕を持っていたのかが見えてきます。ただし、前期のように期中は予想を動かさず期末にまとめて差異を示す可能性もあるため、中間決算で予想が据え置かれても、それ自体は強気・弱気どちらの材料にもなりません。


5. サービス区分別に見る

会社は管理会計ベースで区分別の数字を出しています。以下は2027年3月期1Qの実績です(会社の決算説明資料および決算短信より)。

区分売上高前年同期比営業利益前年同期比
メディア73億66百万円△4.3%17億93百万円△16.7%
エージェント30億32百万円+10.7%6億10百万円+22.6%
採用サービスその他8億33百万円+74.2%3億02百万円+105.3%
教育・評価サービス4億68百万円+0.8%1億30百万円△1.9%
海外16億05百万円+2.6%2億38百万円△1.9%

※メディアの前年同期比はengage事業承継の影響を除いたもの(会社注記)。各区分の営業利益は間接部門費用の配賦前です。

この表のポイントは1つです。売上の55%を占めるメディアの営業利益が、engageを除いたベースでも16.7%減っていることです。

メディアの中心はエン転職です。会社の説明によれば、エン転職の減収率は前年同期比△2.0%で、前期第4四半期の△6.3%からは改善しています。ただし依然として減収です。会社自身が決算説明資料に「エン転職の強みを取り戻すには想定より時間を要する見通し」と書いています。

KPIを見ると、エン転職の利用企業数は10,681社で前年同期比△3.2%、求職者会員数は1,284万人で+5.1%。企業側が減り、求職者側が増えている状態です。求人メディアは企業からお金をもらう商売ですから、企業側の減少が売上に直結します。

いっぽう伸びているのは、

  • エージェント:エンエージェントとenworld(エンワールド・ジャパン)。コンサルタントの生産性向上で+10.7%の増収、+22.6%の増益。高年収帯での決定が増えたと説明されています。
  • 採用サービスその他:2025年10月に連結子会社化したbackcheck(リファレンスチェック)が牽引し+74.2%。派遣会社向け採用管理システムのゼクウも増益。

backcheckは2025年9月30日付で全株式を取得した会社で、取得価格は19億42百万円、のれん11億15百万円、無形資産12億30百万円が計上されています。売上は前年同期比+34%(会社説明)。日本のリファレンスチェック市場は120〜160億円規模と会社は見込んでおり、この四半期時点では成長投資の一つとして機能しています。

「エン転職の四半期別売上」について(読み取りの限界)

決算説明資料には、エン転職の四半期別売上高の棒グラフが載っています。テキストとして抽出できた数値は、2025年3月期と2026年3月期の8四半期分で、4,609/4,339/4,240/4,202/3,937/3,870/3,796/3,702(単位:百万円)でした。前の4つの合計は17,390、後の4つの合計は15,305で、決算短信の管理会計ベースの年間売上(17,391/15,306)と1百万円の差で一致します。

ただし、どの数値がどの四半期に対応するかは、図の並び順からは確定できませんでした。 さらに、第1四半期の決算説明資料の「新セグメント別」の表には2026年3月期1Qのエン転職売上が37.2億円と記載されており、上の8つの数値のいずれとも一致しません。区分の定義が見直された可能性がありますが、会社は対応関係を開示していません。

したがって本記事では、エン転職の四半期別売上の推移は数値として載せません。 確実に言えるのは、年間で2025年3月期173億91百万円 → 2026年3月期153億06百万円(△12.0%)という減少と、会社が説明している当期1Qの減収率△2.0%(前期4Qは△6.3%)だけです。


6. 資本政策と株主還元

エンに株主優待はありません。2026年6月22日提出の有価証券報告書「第6 提出会社の株式事務の概要」の「株主に対する特典」欄に、**「該当事項はありません」**と明記されています。会社IRサイトのFAQにも優待に関する項目はなく、株価情報サイトの優待ページにも「株主優待情報はありません」と表示されます。優待を探して検索してきた方は、ここで判断がつきます。

その代わり、この会社は資本政策のほうに見どころが集中しています。

6-1. 配当:2倍への増配と、その分母

決算期1株当たり年間配当配当総額配当性向(会社開示)
2024年3月期70.10円30億23百万円68.5%
2025年3月期70.10円30億23百万円37.5%
2026年3月期32.70円13億07百万円49.2%
2027年3月期(予想)68.30円—50.0%

この表のポイントは1つです。2025年3月期までは、利益が変わっても配当は70.10円で同じでした。 配当性向が68.5%から37.5%まで動いているのは、分母の利益が動いて配当が動かなかったからです。2026年3月期の予想(2025年5月14日の決算短信で初めて示された1株24円)から、配当性向50%を基準に配当額を決める形に変わりました。32.70円は、純利益が期初計画を上回ったため、決算発表の日(2026年5月14日)に24円から増額された結果です。

配当は年1回、期末のみです。定款上は9月30日を基準日とする中間配当ができる旨が定められていますが(有価証券報告書に記載)、実施実績はありません。制度としてはあるが、使っていないという状態です。

現在の配当方針は明快で、「配当性向50%」です。有価証券報告書の配当政策、会社IRサイトのFAQ、決算説明資料のいずれにも同じ数字が書かれています。なお、エンは連結配当規制適用会社で、配当の原資は親会社単体の分配可能額です。2026年6月には連結子会社2社から計19億30百万円の配当を受け取っており(臨時報告書)、単体の営業外収益に入りますが、連結業績には影響しません。

ここで、この50%がどの利益に対する50%なのかを確認します。決算短信には注記があります。

※配当性向は「親会社株主に帰属する当期純利益」を算定根拠としております。

つまり、**特別利益を含んだ最終利益の50%**です。会社が隠しているわけではなく、はっきり書いてあります。問題は、その意味が読者に伝わりにくいことです。

計算してみます。2027年3月期の通期予想を分解すると、次のようになります。

項目金額備考
経常利益(予想)3,406百万円会社予想
特別利益(関係会社株式売却益)4,884百万円1Qに計上済み
特別損失(投資有価証券評価損)184百万円1Qに計上済み
税引前当期純利益(筆者の逆算)8,106百万円上記の合計
法人税等(筆者の逆算)2,642百万円税引前 − 純利益予想
実効税率(筆者の逆算)32.6%—
親会社株主に帰属する当期純利益(予想)5,464百万円会社予想

ここから、特別損益がなかった場合の最終利益を試算します。経常利益3,406百万円から特別損失184百万円を引いた3,222百万円に、同じ32.6%の税率を当てると、21億72百万円(筆者の試算)。

配当総額はいくらになるか。1株68.30円に、配当を受け取る株式数を掛けます。ここに一つ注意点があります。

用語メモ:自己株式なのに配当が出る株 エンの自己株式には、株式給付信託(J-ESOP)が保有する株式2,229,900株が含まれています。会計上は自己株式として扱われますが、この信託が持つ株式には実際に配当が支払われます。決算短信にもその旨の注記があります。したがって配当総額を計算するときは「発行済株式数 − 自己株式数」ではなく、そこに信託分を足し戻す必要があります。

検算します。2026年3月期の配当は1株32.70円、開示された配当総額は13億07百万円でした。 (発行済49,716,000株 − 自己株式11,958,507株 + 信託分2,229,900株)× 32.70円 = 13億08百万円。開示値と1百万円差で一致します(端数処理による差)。

同じ方法で2027年3月期を試算すると、第1四半期末の株数ベースで配当総額は約27億33百万円(筆者の試算)。純利益予想5,464百万円で割ると50.0%。会社の言う配当性向50%と一致しました。

そのうえで、特別利益を除いた最終利益21億72百万円と比べます。

27億33百万円 ÷ 21億72百万円 = 125.8%

つまり、特別利益を除いた利益に対しては、配当は125.8%にあたります。 今期の配当は、本業で稼いだ利益の範囲内に収まっていません。engageを売った代金から出ている部分がある、というのが実態です。

これは批判ではありません。事業を売って得た現金を株主に返すのは、資本政策として筋が通った選択です。ただ、「配当性向50%だから余裕がある」と読むのは間違いであり、来期以降に同じ規模の売却がなければ、同じ配当額は維持できない、ということです。参考までに、配当性向50%の方針で大きな特別利益がなかった2026年3月期は、1株32.70円でした。

決算期配当の決め方大きな特別利益1株当たり配当
2024年3月期利益にかかわらず同額—(純利益41億96百万円)70.10円
2025年3月期利益にかかわらず同額タイミー株式の売却益54億56百万円70.10円
2026年3月期配当性向50%なし32.70円
2027年3月期予想配当性向50%engageの売却益48億84百万円68.30円

配当性向50%に切り替わってから、配当は最終利益にそのまま連動するようになりました。最終利益は「売るものがあった年かどうか」で大きく動く会社なので、配当も同じように動きます。 2027年3月期は、この方針のもとで大きな売却益が入る最初の年です。第1章で立てた軸——持っているものを売った年に利益が出る会社——が、そのまま配当の形で出ています。

6-2. 自己株式:発行済の24%

項目株数・金額
発行済株式総数(自己株式を含む)49,716,000株
自己株式(2026年6月末)11,934,507株
自己株式比率24.0%
自己株式を除く株式数37,781,493株
株主数(2026年3月31日現在)5,115名

発行済株式の24%が自己株式です。この数字は時価総額の見え方に直接効きます。

2026年9月30日終値1,747円で計算すると、

  • 発行済株式ベースの時価総額:869億円(株価情報サイトの表示はこちら)
  • 自己株式を除いた時価総額:660億円

その差は209億円です。どちらが正しいということではありませんが、同じ会社を見ているのに200億円の差が出ることは知っておく必要があります。

2025年5月14日の取締役会書面決議に基づく自己株式取得は、2026年2月10日をもって終了しました。

項目内容
決議内容(上限)7,800,000株 / 50億円
実際の取得3,171,700株 / 49億99百万円
平均取得単価(筆者の計算)1,576.4円
株数ベースの消化率40.7%
金額ベースの消化率100.0%

株数の上限は4割しか使っていないのに、金額の上限は使い切っています。 取得枠が「株数」と「金額」の両方で設定されている場合、株価が上がれば金額のほうが先に効きます。2026年9月30日終値1,747円で50億円を使うと約286万株で、7,800,000株の36.7%にしかなりません。自己株式取得の「上限株数」は、約束ではなく枠です。

有価証券報告書には、この決議の残存が4,628,300株・価額0百万円、未行使割合59.3%と記載されています。株数は残っていても金額が残っていないため、この決議枠での追加取得はできません。次の取得があるとすれば新しい決議が必要です。

6-3. 株主構成:筆頭株主の交代と、その後の買い増し・提案

この章でいちばん動いている論点です。2026年4月に筆頭株主が入れ替わり、その後も新しい筆頭株主は株を買い増し続け、保有目的の欄に会社への提案の内容を書き加えています。

(1) 筆頭株主の交代

2026年5月15日、会社は「主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」を開示しました。

株主異動前(2025年5月21日現在)異動後(2026年4月28日現在)
オアシス マネジメント カンパニー リミテッド3,941,942株 / 9.14% / 第3位4,940,939株 / 12.35% / 第1位
越智通勝(代表取締役会長兼社長)4,383,900株 / 10.16% / 第1位4,383,900株 / 10.96% / 第2位

※比率は総株主の議決権に対する割合(会社開示)。

創業者に代わって、ケイマン諸島に本店を置く投資運用会社、オアシス マネジメント カンパニー リミテッド(以下オアシス)が筆頭株主になりました。

越智氏の株数は変わっていません。比率が上がったのは、自己株式取得によって議決権のある株式の総数が減ったためです(会社注記によれば、総株主の議決権は431,168個から399,761個へ減少)。オアシスは実際に買い増しています。

(2) その後の買い増しと、保有目的の書き換え

会社の開示はここで止まっていますが、オアシスはその後も金融庁のEDINETに変更報告書を出し続けています。株券等保有割合が1%以上増えるたびに提出される報告書です。一覧にすると次のようになります。

報告義務発生日提出日保有株数株券等保有割合(発行済株式総数比)議決権比(筆者の概算)提出事由
2026年4月28日2026年5月11日4,940,939株9.94%12.35%(会社開示)保有割合の1%以上の増加
2026年7月2日2026年7月9日5,131,539株10.32%12.8%保有目的の変更
2026年7月28日2026年8月4日5,666,539株11.40%14.2%保有割合の1%以上の増加
2026年8月14日2026年8月21日6,170,539株12.41%15.4%1%以上の増加、保有目的の変更、重要提案行為等の変更
2026年8月31日2026年9月7日6,687,539株13.45%16.7%保有割合の1%以上の増加
2026年9月14日2026年9月24日7,229,539株14.54%18.1%保有割合の1%以上の増加

※株券等保有割合は、自己株式を含む発行済株式総数49,716,000株に対する比率(変更報告書の記載)。議決権比は、2026年3月31日現在の総株主の議決権399,761個を分母にした筆者の概算で、その後の自己株式数の変動は反映していません。

用語メモ:同じ株数なのに比率が2つある理由 大量保有報告書の「株券等保有割合」は、自己株式を含む発行済株式総数を分母にします。会社が開示する「総株主の議決権に対する割合」は、議決権のない自己株式を除いた数を分母にします。エンは発行済の約2割が議決権のない自己株式なので、同じ4,940,939株が9.94%とも12.35%とも表示されます。株主総会で効くのは後者です。

この表のポイントは2つです。

1つ目は、4月28日から9月14日までの約4か月半で、オアシスの保有は2,288,600株増えたことです。自己株式を含む発行済株式総数の4.6%にあたります。9月14日の報告書に載っている直近60日間の取得は、すべて市場内の買付でした。9月8日から14日は1日6万株前後を買っており、同じ日の出来高(株価情報サイトの時系列)に対して1割強から2割強にあたります(筆者の計算)。

2つ目は、議決権ベースでは18%前後(筆者の概算)まで来ていることです。創業家とその関係先とみられる持分(越智通勝氏、越智明之氏、有限会社えん企画、一般財団法人エン人材教育財団の合計11,103,900株)は同じ分母で約27.8%です(筆者の合算。えん企画と財団の議決権行使の実態について会社は開示していません)。

(3) 保有目的欄に書かれていること

2026年7月2日を報告義務発生日とする変更報告書から、保有目的の欄が大きく書き換えられました。2026年9月14日の最新の報告書では、次の内容が書かれています(要旨。原文は法令の条文番号を引いた長い文章です)。

  • 会社との間で、中長期的な企業価値に資する事項について対話を行っている
  • 次の事項について、会社に対して提案を行っている:上場の廃止、資本政策に関する重要な変更、会社以外の者による株式の取得で取得後にその者の議決権が過半数を超えることとなるもの
  • 今後12か月の間に、次の事項について提案を行う予定である:重要な財産の処分、多額の借財、代表取締役の解職、特定の者の役員への選任、役員構成の重要な変更、事業の一部の譲渡・休止・廃止、配当に関する方針の重要な変更、上場の廃止、資本政策に関する重要な変更、過半数を超える議決権の取得
  • 報告義務の発生日から3か月以内に、保有割合を5%を超えて増やす行為を予定している(市場価格が割安と判断される水準にあることなどの条件つきで、時期が延びる可能性もあると記載)

それ以前、2026年4月28日の報告書の保有目的は「ポートフォリオ投資および重要提案行為」、重要提案行為等の欄は「株主価値を守るため、重要提案行為を行うことがある」という短い記載でした。

用語メモ:「重要提案行為」とは 大量保有報告書の制度では、株主が会社の経営に重要な変更を加えることを提案する行為を「重要提案行為」と呼び、その対象となる事項が法令で列挙されています(重要な財産の処分、代表取締役の解職、配当方針の重要な変更、上場廃止など)。保有目的の欄にこれらの項目が書かれているということは、その項目について提案している(またはする予定である)ことを、株主自身が公に届け出ているという意味です。提案の具体的な中身まで書かれるわけではありません。

ここで注意すべきことが3つあります。

  • 提案の具体的な中身は、報告書には書かれていません。 「上場の廃止」や「過半数の取得」に関する事項について提案している、とあるだけで、それが誰によるどのような取引なのか、会社がどう応じているのかは分かりません。
  • 会社はこの件について何も開示していません。 2026年9月30日時点で、会社IRサイトのIRニュース一覧の最新は2026年8月6日の第1四半期決算短信であり、提案に触れた開示は見当たりません。
  • 提案している事項と、実際に起きることは別です。 報告書に列挙された項目が実現するかどうかは、会社の判断と、ほかの株主を含む株主総会の判断に委ねられます。

(4) 株主総会の結果

2026年6月23日の定時株主総会の結果は、臨時報告書で開示されています。すべての議案が可決されましたが、取締役選任議案の賛成率には差がありました。

候補者賛成数反対数賛成割合
越智通勝(代表取締役会長兼社長)242,849個80,671個75.01%
中島純300,158個23,362個92.71%
林有里306,914個16,607個94.80%
大西利佳子322,229個1,292個99.53%

越智氏への反対は80,671個で、総株主の議決権の約2割にあたります。4月28日時点のオアシスの保有議決権(49,409個)を上回る規模です。誰が反対したかは開示されていないため、本記事では特定しません。 剰余金処分(1株32.70円の配当)の議案は賛成99.65%でした。

(5) 大株主表

参考までに、2026年3月31日現在の大株主は次の通りです(有価証券報告書より。自己株式を除いた発行済株式数に対する比率)。この基準日の後にオアシスが大きく買い増しているため、この表は現在の株主構成を表していません。

順位株主名所有株式数比率
1越智通勝4,383,900株11.61%
2日本マスタートラスト信託銀行(信託口)3,836,800株10.16%
3一般財団法人エン人材教育財団3,060,000株8.10%
4日本カストディ銀行(信託口)2,665,600株7.06%
5有限会社えん企画2,184,800株5.79%
6JP JPMSE LUX RE UBS AG LONDON BRANCH EQ CO1,625,876株4.31%
7越智明之1,475,200株3.91%
8THE BANK OF NEW YORK MELLON 1400441,100,500株2.91%
9BNP PARIBAS LONDON BRANCH1,090,138株2.89%
10BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC)1,038,482株2.75%

有価証券報告書の注記によれば、オアシスは2025年5月21日現在で3,941,942株(7.93%)を保有する旨の変更報告書を出していましたが、会社として3月31日時点の実質所有株式数を確認できないため、表には含めていないとされています。オアシスの持分は、名義上は上の表の外国金融機関名義などに含まれている可能性がありますが、どの名義かは開示されていません。

用語メモ:議決権比率の意味する水準 株主総会の決議には2種類あります。普通決議(取締役の選解任、配当の決定など)は出席株主の議決権の過半数で成立します。特別決議(定款変更、合併など)は3分の2以上が必要です。したがって、3分の1超を持つ株主は特別決議を単独で止められます。過半数を持つ株主は普通決議を単独で通せます。エンの場合、単独でこれらの水準に達している株主はいません。

(6) 読み方

大株主が会社への提案を公に届け出ている会社で、事業売却と増配と自己株式取得が同時期に起きている。 これらの事実は開示から確認できます。ただし、それらの因果関係について会社は何も説明しておらず、両者を結びつけて読むのは筆者の推測であり、会社の開示に基づくものではありません。 反対方向の材料もあります。構造改革は2026年3月期からの2年間と会社が位置づけており、engage譲渡の基本合意(2025年12月17日)も、オアシスが保有目的を書き換えた2026年7月より前です。

事実として一点だけ付け加えます。オアシスは、engageの譲渡先であるカカクコムの株式についても変更報告書を提出しており、2026年5月12日提出分以降の報告書で保有割合は19.52%と記載されています。この2つを結びつける開示はなく、本記事はその関係について推測を置きません。

6-4. 新株予約権:行使価額が実質ゼロ

エンには潜在株式があります。2026年3月期の潜在株式による普通株式増加数は789,729株で、自己株式を除く発行済株式数の約2.1%にあたります。

招集通知に載っている役員向けの新株予約権の条件を見ると、次のようになっています。

決議行使価額1個あたり株式数実質的な1株あたり行使価額保有者数対象株式数
2015年5月29日 取締役会決議1個につき200円200株1円2名22,400株
2022年6月28日 取締役会決議1個につき100円100株1円4名88,985株

1株あたりの行使価額は1円です。 いわゆる株式報酬型ストックオプションで、株価がいくらであろうと行使したほうが得になる設計です。行使価額が株価を大きく上回っていて事実上行使されないタイプのストックオプションとは、性質が正反対です。

これは希薄化が確実に起こることを意味しますが、規模は約2.1%であり、EPSへの影響は限定的です。会社の潜在株式調整後1株当たり四半期純利益は109.69円(1Qの実績EPS112.44円に対して2.4%の希薄化)と開示されています。

役員報酬については、招集通知に業績連動報酬の指標が記載されています。賞与とストックオプションの両方で、連結売上高・連結営業利益・親会社株主に帰属する当期純利益の3指標を使うとされています。2026年3月期の実績は売上59,093百万円、営業利益3,962百万円、純利益2,616百万円で、取締役(監査等委員を除く)の報酬総額は123百万円、うち賞与21百万円、株式報酬は△2百万円(費用の戻入)でした。業績連動報酬の指標に「純利益」が入っている以上、特別利益は役員報酬にも効きます。 社内の目標値は開示されていません。

6-5. 借入と政策保有株式

招集通知の事業報告「主要な借入先の状況」は**「該当事項はありません」**です。実質無借金の会社です。

政策保有株式は、有価証券報告書によれば非上場株式15銘柄・5億20百万円のみで、特定投資株式・みなし保有株式はいずれも「該当事項はありません」。政策保有株式は論点になりません。

ただし連結ベースでは投資有価証券が44億72百万円あり(2026年3月末)、第1四半期には投資有価証券評価損184百万円が特別損失に計上されています。連結子会社が保有する投資や投資事業組合が含まれているとみられますが、内訳は開示されていません。

6-6. 権利付き最終日

2027年3月期の配当を受け取るには、基準日である2027年3月31日(水)時点で株主名簿に載っている必要があります。

国内株式の決済は約定日から2営業日後(T+2)なので、権利付き最終日は基準日の2営業日前です。2027年3月31日が水曜日であることから逆算すると、**2027年3月29日(月)**になります(筆者の計算。取引所の休業日によって変わる可能性があるため、時期が近づいたら証券会社の案内で確認してください)。


7. 株価の見方

以下の株価関連の数値は、2026年9月30日終値1,747円を基準としています。株価は日々動くため、実際の投資判断の際はご自身で最新の値に置き換えてください。この章の数値はすべてこの基準日に依存します。

指標数値算出根拠
株価(2026年9月30日終値)1,747円株価情報サイト(報道ベース)
時価総額(発行済株式ベース)869億円49,716,000株 × 1,747円
時価総額(自己株式除く)660億円37,781,493株 × 1,747円
会社予想EPS138.72円会社開示
会社予想EPSベースPER12.6倍筆者の計算
実株数ベースEPS144.62円5,464百万円 ÷ 37,781,493株(筆者の計算)
実株数ベースPER12.1倍筆者の計算
特別利益を除いたEPS57.5円筆者の試算(21億72百万円 ÷ 37,781,493株)
特別利益を除いたPER30.4倍筆者の試算
PBR1.93倍1,747円 ÷ 907.5円(1Q末自己資本 ÷ 自己株式除く株数、筆者の計算)
配当利回り3.91%68.30円 ÷ 1,747円
年初来高値1,770円(2026年9月28日)株価情報サイト(報道ベース)
年初来安値1,064円(2026年3月30日)株価情報サイト(報道ベース)

まず、EPSが3通りあることを整理します。

会社が開示する予想EPS 138.72円は、純利益予想5,464百万円を2026年3月期の期中平均株式数39,390,312株で割った値です(筆者の逆算で確認)。いっぽう、第1四半期末の実際の株数(自己株式を除く37,781,493株)で割ると144.62円になります。自己株式取得が進んだぶん、実株数ベースのほうが大きく出ます。株価情報サイトの予想EPS表示(144.69円)は、後者に近い数値を使っているようです。

そして3つ目が、特別利益を除いたEPS 57.5円です。PERは12倍にも30倍にもなります。 どちらが正しいという問題ではなく、「今期の利益の大半は事業を売って得たものである」という事実を、どう織り込むかという問題です。

ROEにも同じことが起きます。会社は決算説明資料で2027年3月期の計画ROEを16%(前期7.7%)とし、財務方針として「直近3期平均14%程度」の維持を掲げています。しかし直近3期(2024年3月期12.6%、2025年3月期22.2%、2026年3月期7.7%)の平均14.2%は、タイミー株式の売却益が入った22.2%に引き上げられた数字です。今期の16%も、分子の最終利益の大半が売却益です。期首の自己資本31,345百万円で割る簡易計算では、売却益込みで17.4%、特別利益を除くと6.9%になります(筆者の概算。会社の16%の算出方法は開示されておらず、同じ値にはなりません)。

株価は2026年3月30日の1,064円から9月28日の1,770円まで、およそ66%上昇しています。この間に起きたことは、engageの譲渡完了と売却益の確定、配当の2倍への増額、筆頭株主の交代、そしてその筆頭株主による継続的な買い増しと、保有目的欄への提案事項の記載です。

強気に読める材料

  • engageという赤字寄りの事業が外れ、連結の営業利益率が改善した。 1Qの営業利益率11.0%は前期のどの四半期よりも高い。
  • engageを除いたベースでは3.4%の増収。 人材紹介が+10.7%、backcheckを含む採用サービスその他が+74.2%と、伸びている事業がある。
  • 実質無借金で、自己資本比率65.7%。 engage売却で現預金は225億円まで積み上がった。決算説明資料のキャッシュ・アロケーションでは、成長投資・構造改革に100億円+α、設備投資(IT投資)に40億円を配分するとされている。
  • 通期予想の営業利益進捗が52.4%と、例年(過去3年平均28.3%)を大きく上回っている。 前期も第1四半期の進捗47.4%から期中の修正なしで予想を41.5%上回っており、予想が保守的である可能性がある。
  • 自己株式が24%あり、配当性向50%を方針として明示している。 株主還元への意識は高い。
  • 大株主が会社への提案を公に届け出て、市場で買い増しを続けている。 オアシスの保有は9月14日時点で発行済株式総数の14.54%。保有目的欄には資本政策・配当方針・上場の廃止・過半数の取得といった項目が並ぶ。株主価値の向上を求める圧力が働いていると読むこともでき、市場での継続的な買いは需給の面でも下支えになってきた。

弱気に読める材料

  • 主力のエン転職が減収を続けている。 当期1Qで△2.0%。会社自身が「強みを取り戻すには想定より時間を要する見通し」と書いている。利用企業数は前年同期比△3.2%。
  • メディア区分の営業利益は、engageを除いても16.7%減。 売上の55%を占める区分が縮んでいる。
  • 今期の最終利益の大半は事業売却益である。 特別利益を除いた最終利益は21億72百万円(筆者の試算)にとどまり、配当総額27億33百万円はこれを上回る。
  • 会社は残り3四半期の営業利益率を3.6%と見込んでいる。 1Qの11.0%との落差が大きく、下期に相応の費用増を織り込んでいる。
  • 中期経営計画が事実上いったん止まっている。 2027年3月期を最終年度とする中期経営計画について、会社は「事業環境の急速な変化を踏まえ、経営方針及び事業戦略の抜本的な見直し(構造改革)を進めております」と記載しており、新しい中期計画は2028年3月期に策定予定とされている。現時点で、数値目標を持った中期計画は存在しない。
  • 株価の上昇の一部は、特定の大株主の買いと重なっている。 9月8日から14日のオアシスの買付は、1日の出来高の1割強から2割強にあたる(筆者の計算)。報告書には「市場価格が割安と判断される水準にあること」が買い増しの条件として書かれており、買いが止まった場合の需給は読めない。
  • 提案の中身も、会社の対応も開示されていない。 上場の廃止や過半数の取得といった項目は、実現すれば既存株主の選択肢を大きく変える。一方で、何も実現しない可能性もある。現時点では、どちらの方向にも材料として確定していない。
  • 入口を渡したことの影響は、まだ数字に出ていない。 engageは無料で企業と求職者を集める入口だった。それが他社のものになった以上、そこからエン転職やエージェントへ流れていた導線は、今後カカクコムの判断に左右される。この影響が出るとすれば、今期ではなく来期以降である。

最後の点が、第1章で立てた軸の裏側にあたります。広場の維持費が消えたから今期の利益は増えた。しかし、広場に面した店の売上が今後どうなるかは、広場を持っていない側からは決められない。 これは会社のせいでも競合のせいでもなく、事業を切り出すという選択に元々含まれていたトレードオフです。


8. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るべきポイント
2026年11月中旬(例年。前期は11月13日)2027年3月期 中間決算7〜9月の単独四半期の営業利益(累計から1Qを引く)。下期の営業利益率3.6%という前提にどの程度の余裕があったか
同上同上売却益に対する税金の計上額と、通期予想の修正の有無(前期は期中に修正せず期末に差異を開示)
2026年12月14日頃までオアシスが「報告義務発生日(9月14日)から3か月以内」に予定するとした5%超の買い増しの期間変更報告書の提出の有無。報告書には時期が延びる可能性も書かれている
2027年2月頃第3四半期決算エン転職の減収率が△2.0%からさらに改善しているか
2027年3月29日(月)期末配当の権利付き最終日(筆者の計算)1株68.30円
2027年5月頃通期決算および新しい中期経営計画中期計画の数値目標。engage売却後の「平常時の利益水準」が初めて通年で見える
2027年6月頃定時株主総会(前回は2026年6月23日)議案の内容と賛成率。前回、代表取締役会長兼社長の選任議案の賛成率は75.01%
随時オアシスの変更報告書(保有割合が1%以上動くたびに提出)保有比率と、保有目的・重要提案行為等の欄の書き換え
随時会社側の開示提案への対応、資本政策に関する新たな決議(自己株式取得を含む。前回の枠は金額を使い切って終了済み)

継続的に見るべきKPIは次の4つです。

  1. エン転職の利用企業数(2026年6月末10,681社、前年同期比△3.2%)。求人メディアの売上は企業数×単価で決まります。会員数ではなく企業数を見てください。
  2. engageを除いたベースの売上成長率(当期1Qは+3.4%)。比較可能な形での実力値です。ただし来期以降は前年もengageなしになるため、通常の前年同期比に戻ります。
  3. 単独四半期の営業利益率(当期1Qは11.0%)。累計から引き算して出します。
  4. backcheckとエンPeopleXの売上。成長戦略の中核とされている2つです。backcheckは前年同期比+34%、エンPeopleXは計画対比+26%と会社は説明しています。

9. 3行まとめ

  • エンは2026年4月1日、無料の採用支援ツール「engage」を新設子会社ごとカカクコムに85.1%譲渡し、48億84百万円の売却益を計上した。売上は11.2%減ったが、engageが使っていた人件費と広告費が消えたため営業利益は10.5%増え、最終利益は4.5倍になった。
  • engageを除いたベースでは3.4%の増収で、人材紹介と採用サービスは伸びている。ただし主力のエン転職は減収が続き、メディア区分の営業利益はengageを除いても16.7%減。会社は残り3四半期の営業利益率を3.6%(1Qは11.0%)と見込んでいる。
  • 配当は32.70円から68.30円へ2倍以上に増えるが、配当性向50%の分母は売却益を含んだ最終利益であり、売却益を除いた利益に対しては125.8%(筆者の試算)にあたる。発行済株式の24%が自己株式で、2026年4月に筆頭株主となったオアシスはその後も買い増し(9月14日時点で発行済の14.54%)、上場の廃止や過半数の取得などに関する事項について会社に提案していると変更報告書に記載している。会社はこの件について開示していない。

免責事項

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は特定の有価証券の売買を推奨するものではなく、投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。

本記事で用いた数値の出典は次の通りです。一次情報:2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月6日)、2026年3月期決算短信(2026年5月14日)、2026年3月期第2四半期(中間期)決算短信(2025年11月13日)、2026年3月期第3四半期決算短信(2026年2月12日)、第26期有価証券報告書(2026年6月22日提出)、2026年定時株主総会招集通知(2026年6月1日)、特別利益(関係会社株式売却益)の計上に関するお知らせ(2026年4月1日)、同計上額変更に関するお知らせ(2026年7月22日)、剰余金の配当に関するお知らせ(2026年5月14日)、連結業績予想と実績値との差異及び個別業績と前期実績値との差異に関するお知らせ(2026年5月14日)、業績予想の修正に関するお知らせ(2024年7月18日、2025年2月13日)、2024年3月期・2025年3月期決算短信、2026年3月期第1四半期決算短信(2025年8月7日)、主要株主及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ(2026年5月15日)、自己株式の取得状況および取得終了に関するお知らせ(2026年2月12日)、臨時報告書(2026年5月19日・6月24日提出の2通)、会社IRサイトのFAQおよびIRニュース一覧(2026年9月30日確認)。第三者が提出した一次情報:オアシス マネジメント カンパニー リミテッドがEDINETに提出した変更報告書(エン株式会社を発行者とする2026年5月11日・7月9日・8月4日・8月21日・9月7日・9月24日提出分、およびカカクコムを発行者とする2026年5月12日提出分以降)。会社作成の説明資料:2027年3月期第1四半期決算説明資料、2026年3月期通期決算説明資料。報道ベース:株価、出来高、時価総額、年初来高値・安値(株価情報サイト、2026年9月30日終値時点の表示)。

本記事には、筆者が算出・逆算した数値が含まれます。「筆者の計算」「筆者の差し引き」「筆者の試算」「筆者の概算」と明記した箇所がこれにあたり、会社が開示した数値ではありません。特に、特別利益を除いた最終利益21億72百万円と、それに対する配当性向125.8%は筆者の試算であり、会社の開示に基づくものではありません。実効税率32.6%を一律に当てた単純な試算であり、実際の税負担は異なる可能性があります。また、engage事業の株式簿価に関する記述(負債も併せて承継したとみられる点)は筆者の推測であり、会社は承継した資産・負債の内訳を開示していません。構造改革・増配・自己株式取得と筆頭株主の異動・提案との関係についても、会社は何も説明しておらず、両者を結びつける記述は筆者の推測です。オアシスの変更報告書に記載された提案事項は項目の列挙であり、提案の具体的な内容と会社の対応は、2026年9月30日時点でいずれも開示されていません。本記事は、株主総会で反対票を投じた株主を特定していません。また、オアシスの議決権比率(約18%)は2026年3月31日現在の総株主の議決権を分母にした筆者の概算であり、その後の自己株式数の変動は反映していません。いずれも、会社IRへの問い合わせまたは次回以降の開示でご確認ください。

本記事は決算説明資料の図(棒グラフ)から抽出した数値の一部を扱っていますが、四半期ごとの対応関係が確定できなかったエン転職の四半期別売上については、数値の記載を見送りました。同様に、メディア区分の四半期別営業利益、engageの四半期別営業利益(前年同期を除く)についても、整合が取れなかったため記載していません。

本記事は、2026年8月6日の決算発表に関する決算説明会の質疑応答を反映していません。また、第1四半期の決算説明資料に記載のない事項について、会社への取材は行っていません。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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