株式投資

ハピネス・アンド・ディ(3174) 輸入ブランドの値札をそのまま掛けて記念日の贈り物を売ってきたモールの店が、棚を値札を自分で書ける金と中古品に入れ替えている会社 年末の3か月でしか稼げない店は、黒字の年までお金と資本が持つのか?【2026年10月発表・2026年8月期決算】

本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 2026年8月期は営業損失2億44百万円で、赤字は前期から1億60百万円縮みました。ただし縮んだ分を分解すると、**粗利率の改善は+16百万円にすぎず、ほぼ全部が店を閉めたことによる販管費の減少(+3億80百万円)**です
  • この会社が利益を出せるのは12〜2月(年末商戦)の3か月だけで、これは3年連続で同じ形です。上期予想は3年続けて「12〜2月にこれだけ稼ぐ」と置き、3年続けて届いていません(置いた額2.7〜3.2億円に対し、実際は0.6〜2.3億円)
  • 2027年8月期の会社予想(営業利益54百万円の黒字)が上期に置いた営業利益1億57百万円は、9〜11月が例年並みの赤字なら、12〜2月に約3億円を稼ぐ前提です。過去3年の12〜2月の最高は2億29百万円でした。一方、9月の既存店売上は前年比84.3%でした
  • 店の棚の在庫(約34億円)は、銀行からの借入(約40億円)とほぼ同じ大きさです。在庫の大半は銀行の担保に入り、借入の約8割は「1年以内に返す」区分に置かれたまま、返済条件の変更を続けてもらっています。**自己資本は約2.2億円、自己資本比率3.9%**です
  • 1年で2回の新株予約権(行使価額が株価に合わせて動くタイプ)を使い切り、発行済株式数は約1年(2025年8月末から2026年10月7日まで)で46%増えました。資本金と資本剰余金は合計4億82百万円増えましたが、現金で入ったのは1億90百万円で、残りは先に借りていた社債の返済に充てられています
  • 配当は2期続けて無配、株主優待は2月末のポイントと8月末の優待券の2本立てです。100株の名目の優待利回りは約9%ですが、その意味は後で詳しく扱います

1. どんな会社か:モールの「記念日の贈り物屋」

ハピネス・アンド・ディの出発点は、1946年に千葉県の小見川町(現・香取市)で開いた時計の販売・修理店です。2000年にイオンモール成田へ出店してから、全国のショッピングセンターの中に「Happiness」の店を広げてきました。2026年8月末のグループ店舗数は55店です。

店のコンセプトは「アニバーサリー(記念日)コンセプトショップ」で、誕生日・結婚記念日・クリスマスに誰かへ贈る品を選ぶ場所として、輸入ブランドのバッグや財布、時計、ジュエリーを並べてきました。

この会社を理解するために、次の一文を軸に置きます。

輸入ブランドの値札をそのまま掛けて記念日の贈り物を売ってきたモールの店が、棚を「値札を自分で書ける金と中古品」に入れ替えている会社。そしてその棚は、銀行からの借金で並んでいる。

有価証券報告書には、輸入ブランド品は「商社等から円建てで仕入れて」いると書かれています。円建てで仕入れるので為替の損を直接かぶるわけではありませんが、値段を決めるのはブランド側です。円安でブランドが日本の値札を上げれば、店の棚の値札もそのまま上がり、客は買わなくなります。会社自身が「継続企業の前提に関する重要事象等」の中で、2022年8月期以降の急激な円安でインポートブランド品の販売が落ち込んだことを、赤字が続く理由の最初に挙げています。

そこで会社は、棚の中身を入れ替えています。

区分棚の中身値札を決めるのは2026年8月期の粗利率
宝飾品自社企画のジュエリー、金・プラチナの地金商品自社(ただし金の相場の影響を受ける)55.5%
時計輸入ブランド・国内ブランドの時計ブランド32.1%
バッグ・小物輸入ブランドのバッグ・財布、ヴィンテージ(中古品)、カジュアル新品はブランド、中古品は自社30.8%

この表のポイントは2つです。1つ目は、宝飾品の粗利率が他の2区分の約1.7倍あることです。会社が「高額ブランド商品から粗利率の高い宝飾・地金商品へ」と言い続けている理由がこれです。2つ目は、ヴィンテージ(中古ブランド品)が新品のブランド品と同じ「バッグ・小物」に入っていることです。2026年8月に開かれた機関投資家向けミーティングの要旨(会社開示)では、ヴィンテージの粗利率は30%台前半、新品の並行輸入品は10%台前半と説明されています。

軸の後半、「その棚は借金で並んでいる」は第4章で数字を見ます。先に結論だけ書くと、2026年8月末の棚卸資産(商品・原材料等)は34億49百万円、銀行からの借入は39億92百万円で、在庫は借入の86%に当たります。

子会社2社

会社内容
株式会社AbHeri(アベリ)自社工房でデザインから製作するジュエリーブランド。卸と都市型の直営店3店、EC。2022年12月に100%子会社化
株式会社No.(ナンバードット)2023年10月に設立したジュエリーの新ブランド。催事・ポップアップ・ECで販売

決算短信では「宝飾品、時計及びバッグ・小物等の製造・販売業」の単一セグメントで、子会社ごとの損益は出ていません。ただし今回の決算では、親会社の個別決算でNo.への貸付金に7,160万円の貸倒引当金を積んでいます(連結では消去されるので連結の利益には影響しません)。設立3年目の子会社への貸付金を、親会社自身が回収できない可能性があると判断した、という事実です。

用語メモ:貸倒引当金は、貸したお金や売掛金が返ってこない可能性に備えて、先に費用として計上しておくものです。子会社への貸付金は連結決算では社内の貸し借りとして消えるので、連結の損益には出てきません。親会社単体の決算でだけ損失になります。

業績の推移(連結)

決算期売上高営業利益経常利益純利益EPS自己資本比率年間配当
2023年8月期127.43億円△2.17億円△2.44億円△6.68億円△263.44円15.9%15.0円
2024年8月期107.81億円△1.58億円△1.87億円△4.59億円△180.39円13.7%15.0円
2025年8月期88.41億円△4.04億円△4.36億円△8.09億円△317.59円2.7%7.5円
2026年8月期82.57億円△2.44億円△2.89億円△4.07億円△135.72円3.9%0円
2027年8月期(予想)86.76億円0.54億円△0.07億円△0.51億円△14.27円—0円

億円は四捨五入。連結決算は2023年8月期から(それ以前は単体)。

この表のポイントは2つです。売上は3年で35%減っています。店を閉め続けたからです(2024年8月期に17店、2025年8月期に14店、2026年8月期に5店)。そして最終損益は4期連続の赤字で、来期予想も赤字です。会社予想どおりなら5期連続になります。自己資本比率は15.9%から3.9%まで下がり、その間に配当は15円から0円になりました。

株主優待はあります(2月末のポイント、8月末の優待券。第7章)。


2. 決算ハイライト:赤字は縮んだが、縮み方が下期で止まった

2026年10月15日15時40分に、決算短信、特別損失と業績予想との差異の開示、期末無配の開示が同時に出ました。

項目2025年8月期2026年8月期増減
売上高8,841百万円8,257百万円△6.6%
売上総利益3,586百万円3,366百万円△6.1%
売上総利益率40.6%40.8%+0.2pt
販管費3,990百万円3,610百万円△9.5%
営業利益△404百万円△244百万円赤字縮小
経常利益△435百万円△289百万円赤字縮小
特別損失282百万円81百万円—
税金等調整前利益△717百万円△361百万円—
法人税等90百万円45百万円—
親会社株主に帰属する当期純利益△808百万円△406百万円赤字縮小

百万円未満切り捨て(短信の表示)。

赤字は営業・経常・最終のすべてで縮みました。8月18日に下方修正した予想(売上8,083百万円、営業利益△268百万円)に対しては、売上・営業利益とも少し上回っています。

修正の経緯

この期の予想は、決算期末の2週間前に一度だけ修正されています。会社は修正理由を次のように書いています(原文、2026年8月18日の開示から抜粋)。

主力となって牽引してきた地金商品の販売が、金価格の一旦のピークアウトにより足踏み傾向がみられていること、ヴィンテージ(リユース)商品の販売や買取事業の拡大が順調に推移しているものの、雑貨部門を中心に物価上昇による節約志向の影響が顕著になっていることから、当初の計画を下回る見通しです。

粗利率としては計画を上回る見込みですが、売上減の影響をカバーするまでには至らない見込みです。

同じ数字が2つある:前回予想の純利益

10月15日の差異の開示は、前回予想(8月18日)の純利益を**△385百万円と書いています。しかし8月18日の開示そのものは△335百万円**です。8月18日の開示では、増減額が「△283百万円」(=△335−△52)、予想EPSが△98.82円(△335百万円÷約339万株)と、どちらも△335百万円と整合します。本記事は8月18日の開示の△335百万円を使い、実績△406百万円は前回予想を71百万円下回ったと読みます(10月の開示の表記どおりなら下回った額は21百万円)。どちらが正しいかの説明は開示されていません。

用語メモ:業績予想の修正の開示には、前回予想・今回予想・増減額・前期実績が並びます。同じ数字が2つの書類で食い違うときは、計算が合うほう(増減額やEPSと整合するほう)を使い、食い違いがあったこと自体を書いておくと、読者が自分で確かめられます。

特別損失の中身

項目金額内容
減損損失67百万円店舗の設備。うち第4四半期に56百万円
社債償還損13百万円新株予約権の行使代金と相殺して社債を繰り上げ返済したときの差額
その他1百万円店舗閉鎖損失など
合計81百万円—

減損損失は2024年8月期263百万円、2025年8月期218百万円に続いて3期連続です。

赤字なのに税金が4,570万円

税金等調整前当期純利益は△361百万円の赤字ですが、法人税等は45百万円(法人税、住民税及び事業税が47百万円)かかっています。赤字の会社でも、店舗ごとにかかる住民税の均等割や、利益の出ている子会社の税金は出ていきます。単体は赤字でも連結の中に黒字の会社があれば、その会社の税金は相殺されません(どの会社の税金かは短信では分かりません)。

この「利益に比例しない税金」は、来期の予想を読むときに効いてきます(第3章の最後)。

財政状態とキャッシュ・フロー

項目2025年8月末2026年8月末
現金及び預金689百万円905百万円
売掛金723百万円413百万円
商品及び製品3,014百万円3,147百万円
原材料及び貯蔵品153百万円290百万円
短期借入金104百万円300百万円
1年内返済予定の長期借入金2,851百万円3,168百万円
長期借入金803百万円523百万円
純資産198百万円263百万円
自己資本155百万円221百万円
自己資本比率2.7%3.9%
キャッシュ・フロー2025年8月期2026年8月期
営業CF+170百万円△378百万円
投資CF△113百万円△17百万円
財務CF△348百万円+611百万円

営業CFがマイナスに転じた主な理由は、棚卸資産が270百万円増えたことと、仕入債務(買掛金・電子記録債務)が228百万円減ったことです。在庫が増える一方で、仕入先への未払いの残高は減りました(仕入額の減少でも残高は減るので、支払いを早めたかどうかは開示からは分かりません)。その不足を、新株予約権と社債と短期借入で埋めています(財務CF+611百万円)。

用語メモ:前期(2025年8月期)の営業CFがプラスだったのは、棚卸資産が717百万円減ったからです。店を14店閉めて在庫を売り減らした年は、赤字でも現金が入ってきます。今期はその逆で、ヴィンテージや地金の品ぞろえのために在庫を積み増したので、赤字の分に加えて在庫の分だけ現金が出ていきました。


3. 深掘り①:この店が稼げるのは、年末の3か月だけ

ここから3つの章で、1つの問いを順に追います。「年末の3か月でしか稼げない店は、黒字の年までお金と資本が持つのか」。この章では、損益の側から「黒字の年」がどのくらい遠いかを測ります。

12四半期を並べる

この会社は四半期ごとの数字を累計でしか開示しないので、四半期の数字は筆者が累計から引き算して出しました(筆者の差し引き)。8月決算なので、第1四半期は9〜11月、第2四半期は12〜2月、第3四半期は3〜5月、第4四半期は6〜8月です。

決算期3か月売上高粗利率販管費営業利益営業利益率
2024年8月期9〜11月24.43億円37.3%10.95億円△1.85億円△7.6%
2024年8月期12〜2月35.32億円36.9%10.74億円2.29億円6.5%
2024年8月期3〜5月24.09億円39.4%10.52億円△1.02億円△4.2%
2024年8月期6〜8月23.97億円39.7%10.52億円△1.00億円△4.2%
2025年8月期9〜11月19.58億円41.1%9.48億円△1.43億円△7.3%
2025年8月期12〜2月27.69億円39.3%10.26億円0.61億円2.2%
2025年8月期3〜5月19.81億円42.1%9.99億円△1.65億円△8.3%
2025年8月期6〜8月21.34億円40.3%10.18億円△1.57億円△7.4%
2026年8月期9〜11月18.15億円43.0%9.20億円△1.39億円△7.6%
2026年8月期12〜2月25.72億円40.8%9.06億円1.43億円5.6%
2026年8月期3〜5月19.45億円40.2%9.02億円△1.19億円△6.1%
2026年8月期6〜8月19.25億円39.1%8.83億円△1.30億円△6.7%

筆者の差し引き。億円は四捨五入。各期とも4四半期の合計が通期の開示値と千円単位で一致することを確認済み。

この表のポイントは3つです。

  1. 営業黒字の3か月は、3年とも12〜2月だけです。残りの9か月は3年とも毎四半期1〜2億円の赤字です。3年続けて同じ形なので、これは季節性と言えます。会社自身も短信に、年末年始商戦が最繁忙期で第2四半期の比重が高いと書いています
  2. 12〜2月の稼ぎは安定していません。2億29百万円→61百万円→1億43百万円と、年によって4倍近く振れます
  3. 2026年8月期は、粗利率が四半期ごとに下がっています。43.0%→40.8%→40.2%→39.1%で、6〜8月の39.1%は直近7四半期で最も低い水準です

販管費は店を閉めるたびに下がり、四半期あたり10億円台から8億円台になりました。それでも12〜2月以外の3か月は黒字になっていません。年に一度の稼ぎ時で、残り9か月の赤字(3.9〜4.7億円)を埋められるかどうかがこの会社の損益の形そのものです。

上期予想は「12〜2月にこれだけ稼ぐ」と置いてきた

この会社は期初に上期(9〜2月)の予想を出します。9〜11月は毎年赤字なので、上期予想から9〜11月の実績を引くと、会社が12〜2月の3か月に置いていた営業利益が逆算できます。

決算期上期の営業利益予想9〜11月の実績予想が12〜2月に置いた営業利益実際の12〜2月
2024年8月期1.19億円△1.85億円3.04億円2.29億円
2025年8月期1.73億円△1.43億円3.16億円0.61億円
2026年8月期1.35億円△1.39億円2.74億円1.43億円
2027年8月期1.57億円?9〜11月が過去3年並み(△1.39〜△1.85億円)なら2.96〜3.42億円?

筆者の差し引き。上期予想は各期の前期の通期決算短信の「第2四半期(累計)」欄。2024年8月期の上期予想は2024年2月13日に13百万円へ下方修正済み。

この表のポイントは1つです。会社の上期予想は、3年続けて「12〜2月に2.7〜3.2億円を稼ぐ」前提で作られ、3年続けて届いていません。そして2027年8月期の上期予想も、9〜11月が例年並みの赤字なら、12〜2月に約3億円を求める形です。過去3年でいちばん良かった12〜2月(2024年8月期)でも2億29百万円でした。

会社予想を否定する根拠にはなりません。今期は店舗数が減ったぶん販管費も軽く、ヴィンテージと買取の店も増やしています。ただ、「上期予想に届くかどうか」は12〜2月の3か月の出来でほぼ決まり、その3か月に求められている数字は過去のどの年より大きい、ということは数字から言えます。

達成履歴:期中に何度も下げてきた予想

決算期期初予想(営業利益)修正(開示日→営業利益)実績期初予想との差
2024年8月期△0.95億円2024/2/13→△2.03億円、7/18→△0.93億円、8/20→△1.45億円△1.58億円△0.63億円
2025年8月期1.78億円2025/4/14→△3.46億円、7/15→△4.38億円△4.04億円△5.82億円
2026年8月期0.30億円2026/8/18→△2.68億円△2.44億円△2.74億円
2027年8月期0.54億円———

売上高の期初予想に対する達成率は、93.8%→85.7%→97.4%です。

この表のポイントは2つです。1つ目は、3年とも期初予想を下回って着地していることです。2つ目は、2026年8月期は上期の営業利益が予想1億35百万円に対して4百万円だったのに、4月の中間決算でも7月の第3四半期決算でも通期予想を据え置き、決算期末の2週間前(8月18日)に初めて下方修正したことです。この会社の「据え置き」は、期中の見通しが予想どおりであることを意味してきませんでした。

用語メモ:業績予想の修正の開示は、売上10%・利益30%(または一定の金額)の基準に届かなければ出さなくてよいルールです。開示が出ていないことは「予想どおり」を意味しません。この会社の場合、営業利益の予想が数千万円の黒字なので、数千万円ずれるだけで基準に届きます。

2027年8月期の予想を、上期と下期に分ける

区分上期(9〜2月)下期(3〜8月)通期
売上高予想46.74億円(前年比+6.5%)40.02億円(前年比+3.4%)86.76億円(+5.1%)
営業利益予想1.57億円△1.03億円0.54億円
営業利益率3.4%△2.6%0.6%
過去の下期(3〜8月)売上高営業利益営業利益率
2024年8月期48.06億円△2.02億円△4.2%
2025年8月期41.15億円△3.22億円△7.8%
2026年8月期38.70億円△2.49億円△6.4%
2027年8月期(予想が置いた下期)40.02億円△1.03億円△2.6%

筆者の差し引き(予想の下期=通期予想−上期予想)。

予想は下期にも、過去3年のどの年より小さい赤字(△1.03億円)を置いています。上期・下期とも「過去最高の出来」を少しずつ求める形で、通期の54百万円の黒字ができています。

もう1つ、予想の前提になる売上の足元を見ておきます。会社が毎月出している「月次売上高前年比(速報)」(単体・既存店・総額ベース)は次のとおりです。

月既存店売上高既存店粗利売上個数客単価
2026年6月95.2%97.7%88.9%106.9%
2026年7月87.8%88.2%89.4%97.0%
2026年8月90.0%92.7%90.3%98.5%
2026年9月84.3%87.2%116.0%92.2%

いずれも前年同月比。会社の月次速報(収益認識基準の適用前の総額ベース、未監査)。2026年8月は休業中の熊本店を既存店から除外。

上期(2025年9月〜2026年2月)の既存店売上は、6か月中3か月で前年を上回っていました(98.7%、109.6%、98.5%、94.5%、104.7%、102.1%)。それが6月以降は4か月続けて前年を下回り、**2027年8月期の最初の月である9月は84.3%**です。9月は売上個数が116.0%と増えた一方、客単価が92.2%に下がっています(9月はヴィンテージの売上高が前年比179.1%で、これにはホールセール=業者向けの卸が含まれると注記されています)。

機関投資家向けミーティングの要旨(2026年8月開催分)で会社は、2026年6月に既存店の粗利が初めて前年を下回ったこと、来期は黒字化を想定し、金相場は1トロイオンス4,000ドル程度を前提にしていることを説明しています。

来期予想が置いていない「税金と特別損失」

来期予想の経常利益は△7百万円、純利益は△51百万円で、差は44百万円です。今期の法人税等は45百万円でした。つまり来期予想は、経常段階からの下がり幅を、今期並みの「利益に比例しない税金」でほぼ使い切っており、特別損失をほとんど置いていない計算になります。減損損失は過去3期とも67〜263百万円出ています。来期に減損が出れば、純損失は予想より膨らむ方向です。逆に、営業外費用は今期△45百万円に対し来期予想は△61百万円(営業利益54百万円−経常△7百万円)で、借入金利の上昇(2025年11月以降の当座貸越の実行は年3.0〜3.25%)を織り込んでいるように見えます(筆者の推測で、会社は内訳を開示していません)。


4. 深掘り②:赤字を縮めたのは「店を閉めたこと」だった

前章で、黒字の年までの距離は「年末の3か月の稼ぎ」と「残り9か月の赤字」の綱引きで決まることを見ました。この章では、今期の赤字縮小(+1億60百万円)がどちらの綱から来たのかを分けます。

営業利益の増減を3つに分ける

区間数量効果(売上の増減)率効果(粗利率の変化)販管費の減少合計=営業利益の増減
通期△2.37億円+0.16億円+3.80億円+1.60億円
上期(9〜2月)△1.36億円+0.74億円+1.48億円+0.86億円
9〜11月△0.59億円+0.35億円+0.28億円+0.04億円
12〜2月△0.77億円+0.40億円+1.20億円+0.82億円
3〜5月△0.15億円△0.36億円+0.97億円+0.46億円
6〜8月△0.84億円△0.24億円+1.35億円+0.27億円

筆者の計算。数量効果=(当期売上−前期売上)×前期粗利率、率効果=当期売上×(当期粗利率−前期粗利率)、販管費=前期販管費−当期販管費。各項目は四捨五入。丸め前の3項目の合計は各行とも実際の営業利益の増減と一致し、丸めたあとの合計は通期で0.01億円少なく、12〜2月で0.01億円多くなる。

この表のポイントは3つです。

  1. 通期の改善1億60百万円は、販管費の減少3億80百万円がすべてで、売上の減少(△2億37百万円)をそれで埋めた残りです。粗利率の改善は通期では+16百万円にとどまります
  2. 粗利率の改善は上期だけでした(+74百万円)。下期は3〜5月・6〜8月ともマイナスです。会社が修正理由に書いた「金価格の一旦のピークアウトによる地金商品の足踏み」と時期が合います
  3. 販管費の減少は、前期に閉めた14店(2025年8月期中の閉店)の効果が大きいとみられます。会社は短信で、販管費の減少を「前期14店舗の閉店効果及び人件費を中心とした抑制」と説明しています

軸に戻ると、こうなります。値札を自分で書ける棚(宝飾・地金・中古品)への入れ替えは、上期には粗利率の改善として出ていたが、下期には金の相場が落ち着いて止まった。赤字を縮めたのは、棚の入れ替えではなく、店そのものを減らしたことだった。

商品区分で見る:宝飾品も下期は前年割れ

区分上期の売上前年比下期の売上前年比上期の粗利率下期の粗利率
宝飾品+3.7%△1.6%57.2%53.6%
時計△30.5%△26.8%32.1%32.2%
バッグ・小物△9.2%△4.4%31.4%30.0%

筆者の差し引き(下期=通期−上期)。前年下期の粗利率は宝飾54.4%、時計31.5%、バッグ・小物33.3%。

宝飾品は上期に売上・粗利率とも伸びましたが、下期は売上が前年を下回り、粗利率も上期から3.6pt下がりました。バッグ・小物の下期の粗利率30.0%は前年下期の33.3%を3.3pt下回っています。ヴィンテージの粗利率は30%台前半と説明されているので、ヴィンテージの構成比が上がっても、バッグ・小物全体の粗利率を押し上げる効果は限られます(新品の値下げなど他の要因もありえますが、短信では分かりません)。

宝飾品の粗利が粗利全体に占める割合は、50.3%(2025年8月期)から54.4%(2026年8月期)に上がりました。棚の入れ替えは進んでいます。そのぶん、会社の利益は金の相場に以前より強く結びついたとも読めます。有価証券報告書の「事業等のリスク」には、貴金属の価格変動を「速やかに販売価格へ反映させることが困難」と書かれています。

来期の打ち手:買取店を50店に

会社は来期について、買取の取扱店舗を「30店舗から50店舗水準」に広げ、ヴィンテージ(中古品)の販売を拡大すると書いています。あわせて「粗利率はやや低下する見込み」とも書いています(原文、決算短信の今後の見通しから)。

買取取扱い店舗を30店舗から50店舗水準にまで拡大させ、ヴィンテージ(リユース)商品の販売を拡大してまいります。これにより粗利率はやや低下する見込みですが、買取り商品の販売を含めた商品戦略に再構築していくことで、売上規模の拡大による業績の回復を図っていく考えです。

つまり来期は、今期の改善の主役だった「販管費の削減」から、「売上を増やす」に主役を交代させる計画です。今期の閉店は5店で前期の14店より少なく、閉店効果による販管費の減少は来期は小さくなるとみられます(筆者の推測)。そのうえで売上+5.1%、営業利益+2億98百万円を置いています。9月の既存店売上84.3%は、その出発点です。


5. 深掘り③:その棚は、誰のお金で並んでいるのか

前の2章で、黒字の年は「来期に予想どおり進めば」来るが、その予想は過去のどの年よりも良い12〜2月と下期を求めている、ことを見ました。最後の章では、黒字の年が1年遅れたときに、お金と資本が持つのかを見ます。

在庫と借入はほぼ同じ大きさ

項目(2026年8月末)金額
棚卸資産(商品・仕掛品・原材料等)34.49億円
銀行借入(短期+1年内返済予定の長期+長期)39.92億円
うち1年内返済予定の長期借入金31.69億円
現金及び預金9.05億円
銀行借入−現金30.87億円
自己資本2.22億円
総資産56.39億円

筆者の集計(銀行借入にはリース債務・長期未払金を含めない)。億円は四捨五入。

在庫は銀行借入の86%に当たります。そして前期の有価証券報告書(2025年8月末)によると、商品28億06百万円、売掛金4億57百万円、現預金2億38百万円の合計35億01百万円が担保に入っています。前期末の有利子負債(会社の定義、長期未払金等を含む)は39億66百万円で、会社は「事業等のリスク」に総資産に対する比率70.2%と書いています。軸の後半、「棚は銀行からの借金で並んでいる」は比喩ではなく、担保の明細そのものです。

「1年以内に返す」に置かれたままの31億円

1年内返済予定の長期借入金は31億69百万円で、銀行借入の約8割です。会社は継続企業の前提に関する重要事象等の中で、取引金融機関に借入金の元本返済の条件変更を申し入れ、各金融機関の同意を得て、「すべての取引金融機関と継続して協議する協調体制」を作っていると書いています(メインバンクは千葉銀行)。

用語メモ:「1年内返済予定」に区分されているのは、契約上1年以内に返す期日が来るからです。この会社の場合、元本の返済条件を銀行と協議しながら変更してもらっている期間なので、実際に1年以内に31億円を返すという意味ではありません。ただし、銀行の支援が続くことが事業継続の前提になっている、という意味ではあります。会社自身が「事業等のリスク」に「金融機関の支援が得られない場合に資金繰りが逼迫」と書いています。

短期の資金は、千葉銀行の当座貸越枠(極度額4億円、売掛債権の信託受益権が担保)で回しています。開示された実行は、2025年11月26日に4億円(年3%)、2026年5月29日に1億円(年3.25%)、8月28日に2億円(年3.25%、返済期日9月16日)です。前期の有報に載っている長期借入金の平均利率は1.25%なので、新しい短期借入の金利はその2倍以上です。今期の支払利息は48百万円で、前期の36百万円から35%増えました。

継続企業の前提に関する「重要事象等」

決算短信には「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載があり、前期の有報の「事業等のリスク」にも同じ項目があります。会社は、営業損失・経常損失・最終損失が2023年8月期から続いていること、借入金の条件変更の支援を受けている期間であることを挙げて、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在すると認識しています。そのうえで、資金繰りと資金調達(後述の新株予約権)を理由に、**「継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められない」**と判断しています。財務諸表の注記としての「継続企業の前提に関する注記」は「該当事項はありません」です。

用語メモ:「継続企業の前提に関する重要事象等」は、事業の継続に疑いを生じさせる事象があることを経営者が記載するものです。「継続企業の前提に関する注記」は、それに加えて重要な不確実性が認められる場合に財務諸表に付けるもので、別物です。この会社は前者の記載だけがあり、後者はありません。記載が外れるかどうかは、毎期の有価証券報告書で確認できます。

新株予約権で入ったお金:資本は4.82億円、現金は1.90億円

自己資本は1年で155百万円から221百万円に増えました。最終損失406百万円を出しても増えたのは、新株予約権の行使で資本金と資本剰余金が合計4億82百万円増えたからです。

ただし、キャッシュ・フロー計算書の「新株予約権の行使による株式の発行による収入」は1億90百万円です。差の約2億92百万円は、現金ではなく社債の返済に充てられました。この会社は新株予約権と同時に、利息のない社債(額面の95%で発行)を割当先に引き受けてもらい、先にまとまった現金を受け取っています。その後、新株予約権が行使されるたびに、行使代金と社債の返済を相殺しています。

資金の流れ(2026年8月期)金額
社債の発行で入った現金(第1回 額面1.40億円、第2回 額面1.50億円、いずれも額面の95%)2.76億円
新株予約権の行使で入った現金1.90億円
現金の入金計4.66億円
資本金+資本剰余金の増加4.82億円

筆者の整理。社債の発行収入と行使による収入はキャッシュ・フロー計算書、資本の増加は株主資本等変動計算書から。差額は社債の割引分(額面の5%)等に対応するとみられます(筆者の推測)。

つまり、社債で先に現金を受け取り、株を渡して返した形です。期末の貸借対照表に社債の残高は載っていません。社債償還損13百万円は、繰り上げ返済で割引分を一度に費用にしたことによるものです。

回次発行(割当日)株数当初行使価額下限行使価額行使完了1株あたりの資本増加
第13回2025年11月4日60万株631円351円2026年2月4日約542円
第14回2026年6月25日60万株462円257円2026年10月7日約364円(8月末まで)、約306円(10月7日)

1株あたりの資本増加は筆者の計算(資本金と資本準備金の増加額÷株数。新株予約権の振替額を含む)。割当先はいずれも Long Corridor Alpha Opportunities Master Fund、MAP246 Segregated Portfolio、BEMAP Master Fund Ltd.。

行使価額は「行使請求の前の週の最終取引日の終値の90%」に毎週修正される仕組みで、株価が下がれば行使価額も下がり、同じ株数でも入るお金は減ります。1株あたりの資本増加は、第13回の約542円から、第14回の最後の行使(10月7日、行使価額305.1円)では約306円まで下がりました。

用語メモ:行使価額修正条項付新株予約権(いわゆるMSワラント)は、株価に合わせて行使価額が動くので、株価が下がっても行使が止まりにくく、会社は資金を確実に集めやすい仕組みです。その代わり、割当先は行使で受け取った株を市場で売ることが多く、株価には下向きの圧力がかかりやすい、という両面があります。この会社の資料は割当先の売却の有無を書いていないので、本記事では株価の動きとの因果は書きません。

株数は約1年で46%増えた

時点発行済株式数前期末比
2025年8月末2,591,600株—
2026年2月末(第13回行使完了)3,191,600株+23.2%
2026年8月末3,621,600株+39.7%
2026年10月7日(第14回行使完了)3,791,600株+46.3%

1株あたりの損益で見ると、同じ赤字額でも株数が増えたぶん1株あたりの赤字は小さく見えます。今期のEPS△135.72円の分母は期中平均の2,998,057株、来期の予想EPS△14.27円の分母は2026年8月末の株数(自己株式を除く3,573,978株)で、10月7日に行使された17万株は来期予想EPSの分母に入っていません(予想純利益÷予想EPSで逆算)。

黒字の年が1年遅れたら

自己資本は2026年8月末で約2.2億円(221百万円)、10月の行使分(約52百万円)を足すと約2億74百万円です(筆者の概算)。来期の会社予想どおり純損失51百万円なら、自己資本は2億円台を保ちます。

しかし過去3年の純損失は4〜8億円でした。仮に来期の純損失が今期並みの約4億円になれば、自己資本は追加の資金調達なしでは賄えない計算です。第14回の行使は10月7日で完了し、手元に未行使の新株予約権は残っていません(会社の開示による)。機関投資家向けミーティングの要旨では、追加のエクイティ調達は「適宜検討」と書かれています。

まとめると、この章の答えはこうです。黒字の年が予想どおり来年来るなら、お金と資本はぎりぎり持つ計算です。来年来なければ、銀行の支援の継続と、新しい株式の発行(=既存株主の持分の希薄化)の両方が必要になる可能性が高い(筆者の整理)。そして前章までに見たとおり、来年来るかどうかは、過去3年のどの年よりも良い12〜2月にかかっています。

3つの深掘りを1本につなぐ

  • 稼げるのは年末の3か月だけで、そこに求められている数字は過去最高を上回る(第3章)
  • 今期の改善は店を閉めた効果で、棚の入れ替えによる粗利率の改善は下期に止まった(第4章)
  • その棚は銀行の借金で並び、資本は新株予約権で継ぎ足してきた(第5章)

軸の一文で言い直すと、値札を自分で書ける棚に入れ替えるまでの時間を、銀行と株主から借りている会社です。


6. 子会社・イベント

日付出来事内容
2025年10月15日監査人の異動ESネクスト有限責任監査法人から監査法人Bloomへ(2025年11月29日の定時株主総会で交代)。理由は任期満了で、退任する監査法人から経営資源の投下先の再検討を理由に契約終了の打診があったと開示
2025年11月26日純金ジュエリー事業の譲受株式会社RAINから純金ジュエリー事業を譲受(事業譲受による支出3,000万円、のれん増加)
2025年11月26日上場維持基準の改善期間入り流通株式時価総額が基準10億円に対し8.13億円(2025年8月末)
2026年3月19日上場維持基準への適合2026年2月末基準で流通株式時価総額11.03億円など4項目すべて適合
2026年7月30日熊本地震イオンモール熊本内の熊本店が被災。従業員は全員無事。業績への影響は「精査中」
2026年8月18日中期経営方針の策定経営ヴィジョン「ラグジュアリー・ジュエリーのファミリーレストラン」。売上・利益の数値目標はなし
2026年9月28日熊本店の閉店決定業績への影響は「精査中」

熊本店の閉店に伴う損失額は開示されておらず、本記事では推測しません。2026年8月期の特別損失に熊本店の分が含まれているかどうかも、開示からは分かりません。

中期経営方針には数値目標がありません。前の中期経営計画の数値は2025年4月14日に、計画数値の達成が困難と判断したとして取り下げられています。中期経営方針の振り返りの頁には、店舗数88→54、宝飾の粗利構成比36%→48%、時計在庫7億円→3億円、ヴィンテージの粗利構成比0%→11%といった数字が並んでいます(達成目標か実績かは資料に明記されていません)。


7. 資本政策と株主還元

この会社は無配・赤字が続いているので、この章は「還元」より、株数の増え方と、株主構成の変化と、上場を続けるための基準の話が中心になります。優待はあるので最後に扱います。

配当:方針は「15円を最低額としておりました」と過去形に

決算期中間期末年間配当の決め方(有報の方針)
2023年8月期7.5円7.5円15.0円配当性向30%程度、年15円を最低額
2024年8月期7.5円7.5円15.0円同上
2025年8月期7.5円0円7.5円「15円を最低額としておりました」(過去形)
2026年8月期0円0円0円—
2027年8月期(予想)0円0円0円—

2025年8月期の有価証券報告書は、配当方針を「継続的な安定配当を基本方針」としたうえで、配当性向30%程度・年15円を最低額と「しておりました」と過去形で書いています。2025年8月期の中間配当では、創業家と役員が受け取りを辞退しています(辞退額8,721千円)。

今期末の無配の理由は、10月15日の開示に「親会社株主に帰属する当期純損失を計上し、大変厳しい結果となりましたことから」と書かれています。来期の配当予想も0円です。上場維持基準の改善計画(2025年11月)には取り組みの1つとして早期に復配できるよう努めるとの記載がありますが、時期は示されていません。

権利付き最終日:期末配当の基準日は2027年8月31日(火)で、権利付き最終日は**2027年8月27日(金)**です。配当予想は0円なので、この日に意味があるのは議決権と(下で見る)8月末の優待です。

株式分割・自己株式

株式分割・併合はありません(調整不要)。自己株式は47,622株(発行済の1.3%)で、取得の枠はありません。

株数の増減の原因

株数の増加はすべて新株予約権の行使によるものです(第5章の表)。潜在株式は、第14回の行使完了で残りがなくなっています(短信の後発事象と10月7日の開示による。譲渡制限付株式報酬などの細目は今期の有報で確認が必要)。

創業家の持株比率と「支配株主」の判定

時点田 篤史(取締役)田 泰夫(代表取締役)創業家の合算(会社開示)
2025年8月末23.08%21.93%54.14〜54.31%(「支配株主等に関する事項」)
2025年12月18日——47.90%(支配株主に当たらなくなった)
2026年7月16日17.51%(2位)19.45%(1位)—
2026年10月7日(筆者の試算)約15.8%約17.6%約36.4%

2025年8月末は有報の大株主表(自己株式を除く発行済株式に対する割合)。2025年12月と2026年7月は会社の適時開示(議決権に対する割合)。2026年10月7日は、2025年12月時点の合算議決権13,627個(1,362,700株)と各人の株数が変わっていないと仮定し、自己株式を除く3,743,978株で割った筆者の試算。

経緯を時系列で並べます。

  • 2025年8月末時点、会社の開示では田篤史氏・田泰夫氏それぞれの合算(近親者等を含む)が議決権の54%台で、2人は「支配株主」に当たっていました
  • 2025年12月18日、第13回の行使で新株15万株が発行され、合算が47.90%になって支配株主に当たらなくなったと会社が開示しました
  • 2026年7月16日、田泰夫氏の資産管理会社である有限会社DENが解散し、保有株式の全部を田泰夫氏に名義振替したため、筆頭株主が田篤史氏から田泰夫氏に代わりました。会社は「本異動に伴う当社の経営体制及び業績等への影響はございません」と書いています
  • その後も新株予約権の行使が続き、合算の比率は下がり続けています

機関投資家向けミーティングの要旨で会社は、創業家の持株比率は3分の1から過半数の間にあり、以前の67%は「上場基準ぎりぎり」だったと説明しています。筆者の試算の約36%はこの説明と矛盾しません。3分の1を超えている限り、創業家の合算は株主総会の特別決議(定款変更や合併など)を単独で否決できる水準です。

用語メモ:議決権の3分の1超は、特別決議(出席議決権の3分の2以上の賛成が必要)を単独で否決できる水準です。過半数は普通決議(取締役の選任など)を単独で決められる水準です。

上場維持基準:2026年8月末の判定はまだ開示されていない

この会社は東証スタンダード市場に上場していて、流通株式時価総額(10億円以上)の基準に2025年8月末で届かず、改善期間に入りました。その後、2026年2月末基準で4項目すべてに適合しています。

基準日流通株式時価総額流通株式数株主数流通株式比率
2025年8月末8.13億円(不適合)11,443単位5,204人44.1%
2026年2月末11.03億円(適合)17,479単位5,467人54.7%

会社の開示による。流通株式時価総額は基準日以前3か月間の終値の平均×流通株式数で計算される。

流通株式数が半年で5割増えたのは、新株予約権で発行された株が流通株式に入ったからとみられます(筆者の推測)。2026年2月末の11.03億円を流通株式数で割ると、3か月平均の株価は約631円です。

次の判定基準日は2026年8月末で、会社はまだ結果を開示していません(前年は11月26日に開示)。参考として、2026年6〜8月の終値の平均は約428円(筆者の計算、64営業日)で、流通株式数を「2026年2月末の流通株式数+8月末までに増えた43万株」と置くと、流通株式時価総額は約9.3億円になります。この試算は流通株式数の置き方に強く依存し、取引所の判定の細部(流通株式の範囲など)を規則原文で確認したものではありません。 会社の開示を待つ必要があります。仮に再び不適合になった場合の扱い(改善期間の長さなど)も、会社の開示と取引所の規則で確認が必要です。

株主優待:2月末のポイントと8月末の優待券

基準日内容出典
毎年2月末「ハピネス・アンド・ディ・プレミアム優待倶楽部」のポイント(1ポイント≒1円、繰越不可)。5,000種類以上の商品から選ぶ、または共通株主優待コイン「WILLsCoin」に交換前期の有報の「株主に対する特典」欄、会社IRサイト
毎年8月末1,000円・2,000円の優待券と10%割引券。ハピネス・アンド・ディの店舗等で利用(会社IRサイトの優待ページによるとAbHeriでは使えない)2026年2月17日の「株主優待制度の追加変更」、会社IRサイト

8月末の優待券は、2025年11月の制度変更でいったん廃止され、2026年2月に「株主優待券へのご要望も多くいただきましたことから」として追加で復活しました。そのため前期の有報の特典欄には2月末のポイントだけが載っています。8月末の優待券は有報の特典欄にはまだ載っておらず、会社の適時開示とIRサイトでの確認です(今期の有報は2026年11月25日提出予定)。2月末のポイントの内容は、有報とIRサイトで一致しています。

保有株数2月末ポイント8月末優待券合計(名目)1株あたり名目利回り(333円)
100株2,0001,000円3,000円30.0円9.0%
199株2,0001,000円3,000円15.1円4.5%
300株5,0004,000円9,000円30.0円9.0%
400株10,0004,000円14,000円35.0円10.5%
600株10,0008,000円18,000円30.0円9.0%
900株30,0008,000円38,000円42.2円12.7%
1,000株50,00016,000円66,000円66.0円19.8%
1,999株50,00016,000円66,000円33.0円9.9%
2,000株50,00040,000円90,000円45.0円13.5%

筆者の計算。10%割引券は金額に含めていない。ポイントは1ポイント=1円で換算。

この表のポイントは3つです。

  1. 区分の境目のすぐ手前は1株あたりが下がります。100株と199株は同じ3,000円なので、199株の1株あたりは15.1円です。1,000株と1,999株も同じで、1,999株では33.0円に半減します
  2. 名目の利回りは高いが、意味のある数字かは使い方次第です。2月末のポイントは5,000種類以上の商品から選べますが、繰越できません。8月末の優待券はハピネス・アンド・ディの店舗等でしか使えず、店舗は全国55店で、そのほとんどがショッピングセンターの中です。近くに店がなく、ネットでも使わない株主にとって、優待券の価値はほぼゼロです
  3. 配当0円の会社の優待は、赤字の中から出ています。前期末の株主数5,204人がすべて100株以上で2月末のポイント2,000ポイントを受け取ったとすると、それだけで約1,040万円です(筆者の概算。単元未満の株主を除けば小さくなり、自社商品を選ぶ株主の分は原価ベースで会社の負担はより小さい)。株主数は1年で5,204人→5,467人(2026年2月末)と増えていて、株主が増えるほど費用が増える設計です

継続保有の条件は、有報・会社IRサイトとも記載がありません。優待制度は2025年11月、2026年2月と続けて変更されています。制度の継続は会社IRで確認するのが確実です。

権利付き最終日:

基準日権利権利付き最終日
2027年2月28日(日)2月末のポイント2027年2月24日(水)
2027年8月31日(火)8月末の優待券(・期末配当、予想0円)2027年8月27日(金)

2027年2月28日は日曜日なので、直前の営業日2月26日(金)を起点に2営業日さかのぼります。

優待だけを目当てにするかどうかの判断軸は、(1) 近くに店があるか(優待券の実質価値)、(2) ポイントの商品で欲しいものがあるか、(3) 第5章で見た希薄化と株価の下落のリスクを、年3,000〜数万円の優待で受け入れられるか、の3つです。


8. 株価の見方

株価の基準点

項目値
終値(2026年10月16日)333円(前日比0円、出来高7,900株)
年初来高値730円(2026年2月6日)
年初来安値332円(2026年10月14日)
時価総額(発行済3,791,600株、自己株式除く)約12.5億円
PBR(2026年8月末のBPS 62.01円)約5.4倍
PBR(10月の行使分を足した概算BPS 約73円)約4.6倍
予想PER来期も最終赤字予想のため計算できない
配当利回り0%

株価はYahoo!ファイナンスの時系列(報道ベース)。決算発表は10月15日15時40分で、同日の終値333円は発表前の取引です。最初に反応が出る10月16日(金)の終値も333円で、出来高は7,900株でした。

月末の終値で見ると、株価は2025年10月まで700円前後でしたが、第13回の新株予約権を発行した2025年11月以降に下がり、2026年2月末570円、6月末405円、8月末400円、9月末361円と推移して、10月16日に333円です(Yahoo!ファイナンスの月次時系列)。前期の有報の株主総利回りは89.1%(配当込みTOPIXは214.2%)でした。

強気側の読み方

  • 販管費は確実に軽くなっている。四半期の販管費は10億円台から8億円台に下がり、店を閉めた効果は数字に出ています。12〜2月の稼ぎが過去の平均並みでも、残り9か月の赤字が小さくなれば、通期の赤字は縮み続けます
  • 棚の入れ替えは進んでいる。宝飾品の粗利構成比は50%から54%に上がり、ヴィンテージと買取の店も増えています。中古品は仕入値を自社で決められるので、軸で言う「値札を自分で書ける棚」がもう1本増えます
  • 会社予想は黒字を置いている。来期の営業利益は54百万円の黒字予想で、会社は機関投資家向けにも来期の黒字化を想定していると説明しています
  • 資本は継ぎ足されている。自己資本は2.2億円まで増え、未行使の新株予約権は残っていません。株数の増加はいったん止まっています
  • PBRは「純資産が小さいから高い」。純資産が小さい会社では、わずかな黒字や増資でBPSが大きく動き、PBRも大きく動きます

弱気側の読み方

  • 上期予想の前提は過去最高を上回る。12〜2月に約3億円が必要で、過去3年の最高は2億29百万円です。そして上期予想は3年続けて届いていません
  • 売上の足元が弱い。既存店売上は6月から4か月続けて前年割れで、9月は84.3%です。来期予想は売上+5.1%を置いています
  • 改善の主役が交代する。今期の改善は閉店による販管費の減少でした。来期は売上の増加が主役で、粗利率は「やや低下する見込み」と会社自身が書いています。金の相場(1トロイオンス4,000ドル程度の前提)が崩れれば、宝飾品の粗利も崩れます
  • 借入の8割は銀行の協議次第。31.7億円が「1年内返済予定」に置かれ、新しい短期借入の金利は3%台です。自己資本比率は3.9%で、会社自身が継続企業の前提に関する重要事象等を記載しています
  • 来期予想は特別損失をほぼ置いていない。減損損失は3期連続で出ています
  • 再び資金が要れば、また希薄化する可能性。会社は追加のエクイティ調達を「適宜検討」としています
  • 流動性が小さい。直近の出来高は1日数千〜数万株です

同じ数字が両側に置ける

「自己資本比率3.9%」は、弱気側から見れば「わずかな赤字で資本が消える会社」ですが、強気側から見れば「わずかな黒字でBPSが大きく増える会社」です。数字は同じで、どちらの読みになるかは来期の12〜2月の結果で決まります。


9. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るポイント
毎月上旬月次売上高前年比(速報)既存店売上と粗利。特に11〜2月。9月の84.3%から戻るか
2026年10月末ごろ8月末基準の優待券の発送—
2026年11月25日(水)有価証券報告書継続企業の前提に関する重要事象等の記載、借入金等明細表、担保、重要な会計上の見積り、大株主、株主に対する特典欄(8月末の優待券が載るか)
2026年11月下旬ごろ(前年は11月26日)上場維持基準の適合状況(2026年8月末基準)流通株式時価総額が10億円以上か
2026年11月28日(土)定時株主総会—
2027年1月中旬(前年は1月14日)第1四半期決算(9〜11月)9〜11月の営業損失が過去3年(△1.39〜△1.85億円)より小さいか。上期予想に必要な12〜2月の額がいくらになるか
2027年2月24日(水)2月末のポイントの権利付き最終日—
2027年4月中旬(前年は4月14日)中間決算12〜2月の営業利益(予想の前提は約3億円)。通期予想の据え置きか修正か
随時熊本店の閉店に伴う損失会社は「精査中」
随時資金調達・借入の開示新株予約権・社債・当座貸越の実行

見るべきKPIは3つに絞れます。

  1. 月次の既存店売上(11〜2月):年に一度の稼ぎ時の出来がそのまま上期予想の達成を決めます
  2. 四半期の粗利率:2026年8月期は43.0%→39.1%と下がり続けました。金の相場と、ヴィンテージ・買取の構成比で動きます
  3. 自己資本と1年内返済予定の借入:黒字の年が遅れたときの余裕の大きさです

10. 3行まとめ

  • 2026年8月期は赤字が1億60百万円縮んだが、ほぼ全部が店を閉めた効果で、金の相場が落ち着いた下期は粗利率の改善も止まり、9月の既存店売上は前年比84.3%だった
  • 稼げるのは年末の12〜2月だけで、来期の黒字予想はその3か月に過去最高を上回る約3億円の営業利益を求めている。上期予想は3年続けて届いていない
  • 棚の在庫は銀行の借金で並び、自己資本は2.2億円(比率3.9%)。黒字の年が遅れれば、銀行の支援の継続と新たな希薄化の両方が必要になる可能性が高い

免責事項

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、決算短信(2024年8月期〜2026年8月期の各四半期)、適時開示(業績予想の修正・差異、特別損失、配当、新株予約権の発行・行使状況、借入、上場維持基準、主要株主・支配株主の異動、株主優待制度の変更、熊本地震、監査人の異動、中期経営方針、機関投資家向けミーティングの要旨、月次売上高前年比)、有価証券報告書(2025年8月期)、半期報告書(2026年8月期)、臨時報告書(2026年10月15日)、会社IRサイトです。株価・年初来高値・安値はYahoo!ファイナンスの時系列(報道ベース)です。以下の点にご注意ください。

  • 四半期の数値、営業利益の3分解、上期・下期の数値、予想が置いた期間の数値は、累計の開示値から筆者が差し引いて算出したものです
  • 決算短信の表紙では決算補足説明資料「有」・決算説明会「有(機関投資家・アナリスト向け)」ですが、執筆時点(2026年10月18日)で2026年8月期の説明資料は会社IRサイトに掲載されておらず、本記事は説明資料の内容と説明会の質疑応答を一切反映していません
  • 機関投資家向けミーティングの記述は、会社が開示した要旨(2026年8月21日)に基づくもので、質疑の全文ではありません
  • 2026年10月15日の差異の開示に記載された前回予想の純利益(△385百万円)は、2026年8月18日の修正開示(△335百万円)と一致しないため、本記事は8月18日の開示の値を使っています
  • 「2025年8月期決算短信」の訂正(2026年8月13日、数値データ訂正)の開示は文字情報を読み取れず、訂正の内容を確認していません。本記事の2025年8月期の数値は、2026年8月期の決算短信の前期欄と会社IRサイト掲載の訂正後の短信によります
  • 月次売上高前年比は会社の速報値(収益認識基準の適用前の総額ベース、未監査)です
  • 上場維持基準(2026年8月末基準)の流通株式時価総額の試算は、流通株式数の置き方に依存する筆者の試算で、取引所の規則原文(流通株式の範囲・判定方法)は確認していません。会社は2026年8月末基準の適合状況をまだ開示していません
  • 来期予想の営業外費用が金利上昇を織り込んでいるとの記述、閉店効果による販管費の減少が来期は小さくなるとの記述、流通株式数の増加の理由、資金の流れの表の差額の理由は、筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません
  • 創業家の持株比率(2026年10月7日時点)は、2025年12月時点の会社開示の合算議決権と株数が変わっていないと仮定した筆者の試算です
  • 熊本店の被災・閉店に伴う業績への影響は会社が「精査中」としており、本記事では金額を推測していません
  • 株主優待の8月末の優待券は、2025年8月期の有価証券報告書の「株主に対する特典」欄には記載がなく、会社の適時開示とIRサイトで確認したものです。2026年8月期の有価証券報告書は未提出で確認していません。優待の利回りは名目値で、10%割引券は金額に含めていません
  • 第13回・第14回の新株予約権の割当先による株式の売却の有無は開示されておらず、本記事では株価の動きとの因果を書いていません

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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