株式投資

【2026年8月発表・第1四半期決算】原田工業(6904)は、最初の3か月だけで通期予想の2倍の最終利益を出した。それでも会社が予想を動かさなかったのはなぜか

本記事は2026年9月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の売上高は前年同期比12.5%増、営業利益は79.7%増。売上総利益率は30.50%で、筆者が並べた直近9四半期のなかで最も高い水準だった
  • ところが会社の通期予想は据え置きで、親会社株主に帰属する当期純利益の予想は6億円。第1四半期だけで12億52百万円が出ているので、残り9か月で6億52百万円の最終赤字を見込んでいる計算になる
  • この「ねじれ」の正体は2つある。ひとつは第4四半期が2期連続で営業赤字であること、もうひとつは税金で、2026年3月期の税負担率は75.2%だった
  • 連結子会社10社のうち9社は12月決算で、12月31日時点の財務諸表をそのまま連結している。つまり「第1四半期」の中身は、日本が4〜6月、海外が1〜3月である
  • 議決権の54.97%を支配株主(原田章二氏と合算対象分)が握り、その受け皿である非上場の資産管理会社の決算内容まで開示されている。この会社は自分で借入をして株を持っている
  • 会社は過去2期とも期初予想を大きく上回って着地し、上方修正は中間決算・第3四半期決算と同じ日に出してきた。一方で最終利益の予想だけは「法人税等の影響」を理由に据え置き続けており、その読みはほぼ当たっていた
  • 株主優待(クオカード)は2023年11月の適時開示で現在の内容に変わった制度で、継続保有1年以上が条件。これから買う場合、最初の優待が届くのは2028年6月ごろで、初回受領に効く締切は2027年3月29日
  • ただし2026年6月提出の有価証券報告書の「株主に対する特典」欄は「該当事項はありません」で、適時開示・会社IRサイトの記載と食い違っている
  • 株価は決算発表前日の452円から9月30日の954円まで2.1倍になった。この間に会社から業績に関する新たな開示は出ていない

1. この会社を一言でいうと何をしているのか

原田工業は、車載アンテナのメーカーです。1958年設立、東証スタンダード市場、2026年3月期の売上高は421億92百万円、連結の従業員は4,000名です。

ただ「アンテナを作っている会社」と言われても、いまの車の屋根を見てもアンテナらしいアンテナは見当たりません。昔のように金属の棒が立っているわけではなく、屋根の後ろのほうに小さなコブがあるだけです。あの中に、ラジオも、カーナビの位置情報も、通信回線も、ETCも入っています。

この記事では、この会社を次のように捉えて読み進めます。

設計だけを日本に残して、作る場所と売る場所を世界中に散らした会社

もう少し具体的な像にすると、こうなります。東京・大森の本社にいる246名が図面を描き、中国(大連)・ベトナム・フィリピン・メキシコにある工場で3,700名あまりが作り、アメリカ・イギリス・タイの販売会社が自動車メーカーの組立ラインの横まで届ける。会社は10社の連結子会社を持っていますが、そのすべてが海外法人です。国内の生産子会社も、国内の販売子会社もありません。

この「散らした」という一語が、この会社の強みと弱みの両方を説明します。

  • 強みの側:設計が日本の1か所に集まっているので、作る場所は入れ替えられます。実際、2026年3月期には中国子会社の機能再編を実行し、原価率を大きく下げました
  • 弱みの側:利益がどの国に落ちるかを会社が自由には決められません。グループ内の値付け(移転価格)は税務当局の見方ひとつで否認されうるもので、実際に中国当局との争いが起きています
  • そして決算の見え方:作る場所も売る場所も海外なので、決算期そのものが日本と違います

最後の点は後で詳しく扱いますが、ここで一度書いておきます。

用語メモ:連結子会社の決算日 親会社と子会社で決算日が違う場合、原則は子会社側が連結決算日に合わせた仮決算を組みます。ただし決算日の差が3か月以内であれば、子会社の決算をそのまま使い、間に生じた重要な取引だけを調整することが認められています。原田工業は後者で、有価証券報告書に「HARADA INDUSTRY OF AMERICA,INC.、(中略)の決算日は12月31日」「12月31日現在の財務諸表を使用しており」と明記されています。連結子会社10社のうち9社がこれに該当します。

直近の業績はどういう形か

招集通知の事業報告と有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」から、5期分を並べます。

決算期売上高(百万円)経常利益(百万円)親会社株主帰属利益(百万円)1株利益(円)自己資本比率(%)ROE(%)
2022年3月期35,811△951△1,105△50.8331.18△9.70
2023年3月期42,105△899△1,531△70.4027.82△13.69
2024年3月期46,99351888540.7231.697.67
2025年3月期44,8171,3281667.6734.371.31
2026年3月期42,1922,31143320.5138.253.20

この表のポイントは2つです。

第一に、売上は2024年3月期の469億円をピークに2期続けて減っているのに、経常利益は3期続けて増えています。2026年3月期の経常利益23億11百万円は、5期のなかで断トツです。売上が減りながら利益が増える、という形になっています。

第二に、経常利益が増えているのに、最終利益がそれについていっていません。2025年3月期は経常13億28百万円に対して最終166百万円、2026年3月期は経常23億11百万円に対して最終433百万円です。ROEは3.2%にとどまります。ここが本記事の中心テーマになります。

中期経営計画の数値目標はない

この会社は、数値目標を掲げた中期経営計画を公表していません。有価証券報告書の「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」には、次のように書かれているだけです。

成長性及び収益性改善のため、営業利益率等の利益指標の向上に努めるとともに、経営の安全性を高めるため財務体質を改善すべく、有利子負債の削減、棚卸資産の圧縮、自己資本の充実等に取り組んでまいります。

会社が掲げている旗は「収益構造改革」という3本柱で、(1) CASEへの対応等による、トップラインの拡大、(2) コスト構造改革による、コスト体質の強靭化、(3) B/Sのスリム化による収益改善・財務体質改善、です。いずれも数値目標は付いていません。

したがって本記事では、「中計の目標に対してどこまで来たか」という読み方はできません。代わりに、会社が毎年出している通期予想と、実際の着地との距離を物差しにします。後述しますが、この会社の場合、その物差しがいちばん雄弁です。

2. 2027年3月期第1四半期の数字

2026年8月13日に発表された第1四半期決算(2026年4月1日〜6月30日。ただし海外子会社は2026年1月1日〜3月31日)の内容です。

項目2026年4〜6月2025年4〜6月増減率
売上高11,387百万円10,124百万円+12.5%
売上原価7,914百万円7,520百万円+5.2%
売上総利益3,472百万円2,604百万円+33.3%
売上総利益率30.50%25.72%+4.78pt
販売費及び一般管理費1,838百万円1,694百万円+8.5%
営業利益1,634百万円909百万円+79.7%
営業利益率14.36%8.99%+5.37pt
経常利益1,611百万円924百万円+74.2%
税金等調整前四半期純利益1,609百万円924百万円+74.1%
法人税等合計356百万円252百万円+41.2%
親会社株主帰属四半期純利益1,252百万円671百万円+86.5%
1株当たり四半期純利益59.22円31.75円+86.5%

この表のポイントは3つです。

1つ目は、増益の主因が売上ではなく粗利率であることです。売上総利益の増加額868百万円を分解すると、次のようになります(筆者の概算)。

数量効果 = 売上増加額1,262百万円 × 前年の粗利率25.72% = 324百万円
率効果  = 当期売上11,387百万円 × 粗利率差+4.78pt   = 543百万円
合計                           = 868百万円
実際の売上総利益の増加 3,472百万円 − 2,604百万円    = 868百万円(一致)

売上が1割強伸びたことによる貢献が324百万円、粗利率が4.78pt上がったことによる貢献が543百万円です。増益の6割以上は「同じ物を売っても残る金が増えた」ことから来ています。

2つ目は、販管費がほとんど増えていないことです。売上が12.5%伸びるなかで販管費は8.5%増にとどまり、売上に対する比率は16.74%から16.14%へ下がりました。

3つ目は、法人税等の負担率が22.2%と軽いことです(356百万円÷1,609百万円)。日本の法定実効税率は30.6%なので、それより軽くなっています。ここは後で重要になるので、数字だけ覚えておいてください。

財政状態

項目2026年6月末2026年3月末増減
現金及び預金7,751百万円6,982百万円+768百万円
棚卸資産(商品製品・仕掛品・原材料)12,171百万円12,046百万円+125百万円
総資産36,237百万円35,843百万円+394百万円
短期借入金13,226百万円14,067百万円△840百万円
負債合計21,063百万円22,133百万円△1,070百万円
純資産15,174百万円13,709百万円+1,464百万円
自己資本比率41.9%38.2%+3.7pt
1株当たり純資産717.41円648.15円+69.26円

3か月で自己資本比率が3.7pt上がっています。内訳は、利益剰余金が1,093百万円増え、為替換算調整勘定が327百万円増えたことによるものです(前者は最終利益1,252百万円から配当158百万円を引いた金額とほぼ一致します)。

なお、第1四半期はキャッシュ・フロー計算書が作成されていません。短信の注記には減価償却費306百万円(前年同期322百万円)だけが記載されています。

3. この決算の「わかりにくくて大事なところ」

ここからが本記事の中心です。問いは1つだけです。

第1四半期だけで最終利益が12億52百万円出た。会社の通期予想は6億円。なのに会社は予想を1円も動かさなかった。なぜか。

会社予想の数字を並べます。

項目2027年3月期 通期予想第1四半期実績進捗率残り9か月の含み
売上高39,000百万円11,387百万円29.2%27,612百万円
営業利益2,000百万円1,634百万円81.7%365百万円
経常利益1,700百万円1,611百万円94.8%88百万円
親会社株主帰属利益600百万円1,252百万円208.8%△652百万円

残り9か月の含みを、前年の同じ9か月(2025年7月〜2026年3月)の実績と比べます。

項目今期の残り9か月の含み前年同期間の実績比率
売上高27,612百万円32,067百万円86.1%
営業利益365百万円1,488百万円24.5%
経常利益88百万円1,386百万円6.4%
親会社株主帰属利益△652百万円△237百万円―

売上は前年の86%を置いているのに、営業利益は24.5%、経常利益に至っては6.4%しか置いていません。そして最終利益は、残り9か月で6億52百万円の赤字を見込んでいることになります。

ここで多くの人が「会社が保守的すぎるだけだ」と結論を出したくなります。けれども、前年の同じ9か月の最終利益も**△2億37百万円の赤字**でした。つまり、この会社は実際に「下期に最終赤字を出す会社」なのです。

なぜそうなるのか。理由は2つあり、順に見ていきます。

3-1. 第4四半期が2期連続で営業赤字になっている

この会社は四半期ごとの損益を開示していません。累計しか出ないので、累計から前の四半期の累計を引いて、筆者が単独四半期を作ります。

用語メモ:なぜ引き算が必要なのか 四半期の決算短信に載っているのは「期初からの累計」です。第3四半期決算短信の営業利益は4月から12月までの9か月分であって、10〜12月の3か月分ではありません。10〜12月だけを見たいときは、9か月の累計から6か月の累計を引きます。この引き算は誰でもできますが、やらないと「通期は増益だった」という情報だけで期が終わってしまいます。

2025年3月期と2026年3月期の8四半期に、2027年3月期第1四半期を加えた9四半期を並べます。単位は百万円、△は赤字です。

四半期売上高売上総利益粗利率販管費販管費率営業利益営業利益率
2024年4〜6月11,1792,44721.89%1,76315.78%6836.11%
2024年7〜9月11,9962,64322.03%1,81915.17%8236.86%
2024年10〜12月10,6632,48623.31%1,90417.86%5815.45%
2025年1〜3月10,9771,65815.10%2,01618.37%△358△3.27%
2025年4〜6月10,1242,60425.72%1,69416.74%9098.99%
2025年7〜9月10,2062,52024.70%1,69016.57%8298.13%
2025年10〜12月10,6882,65324.83%1,77216.58%8808.24%
2026年1〜3月11,1721,75615.72%1,97817.71%△222△1.99%
2026年4〜6月11,3873,47230.50%1,83816.14%1,63414.36%

**この表は筆者が累計の差し引きで作ったものです。**念のため、8科目(売上高・売上原価・売上総利益・販管費・営業利益・経常利益・税金等調整前利益・最終利益)すべてについて、4四半期の合計が通期の開示値と一致することを確認しました。両期とも1円単位で一致しています。

この表からわかることは決定的です。

**第4四半期(連結上は日本の1〜3月+海外子会社の10〜12月)の粗利率が、2期連続で15%台に落ちています。**他の四半期は22〜30%ですから、7〜15pt低い。そして販管費はむしろ第4四半期に増えます。結果として営業利益は2期連続でマイナスになります。

  • 2025年1〜3月:粗利率15.10%、営業損失△358百万円
  • 2026年1〜3月:粗利率15.72%、営業損失△222百万円

2026年3月期は通期の営業利益が23億98百万円で前期比38.7%増でしたが、**その好決算の中に営業赤字の四半期が埋まっていました。**通期の数字だけを見ている限り、これは絶対に見えません。

地域別(報告セグメント)にも同じ引き算をかけると、赤字の出どころが見えます。単位は百万円です。

四半期日本アジア北中米欧州調整額連結営業利益
2024年4〜6月44594334△25△165683
2024年7〜9月498△12327△37+47823
2024年10〜12月350312△6△54△20581
2025年1〜3月50△11△350△30△16△358
2025年4〜6月3326174871△159909
2025年7〜9月2792757593+106829
2025年10〜12月1316198464△18880
2026年1〜3月△299406△20086△215△222
2026年4〜6月364854263319△1681,634

※セグメント利益の合計と連結営業利益の差は調整額(セグメント間取引消去)です。差し引きの過程で生じる丸め誤差のため、内訳の和と開示の「計」が±2千円ずれる四半期があります。

第4四半期に沈んでいるのは、北中米と日本です。2025年1〜3月は北中米が△350百万円、2026年1〜3月は日本が△299百万円、北中米が△200百万円でした。一方、アジアは2026年1〜3月も406百万円の黒字を確保しています。

なぜ第4四半期に落ちるのか。**会社は説明していません。**四半期の説明資料も作成しておらず(2027年3月期第1四半期の短信表紙は「決算補足資料作成の有無:無」「決算説明会開催の有無:無」)、短信の定性的情報にも第4四半期に固有の説明はありません。

一般に、期末に集中しやすい費用としては、棚卸資産の評価損、在庫の実地棚卸に伴う調整、年度末の引当の洗い替え、原価差異の期末一括処理などが考えられますが、**これは筆者の一般論であって、会社の開示に基づくものではありません。**読者としては、「理由はわからないが、2期連続で同じ形が出ている」という事実のところで止めておくのが正確です。

ここで先ほどの「連結子会社の決算日」の話が効いてきます。**連結上の第4四半期は、日本の1〜3月と海外子会社の10〜12月の寄せ集めです。**日本と海外で、期末に向けた事情が重なる時期がずれています。四半期の数字を「日本の1〜3月に何があったか」だけで読もうとすると間違えます。

3-2. 経常利益23億円が、最終利益4億円になる

もう1つの理由は税金です。2026年3月期の損益を、経常利益から下に降ろします。

項目2026年3月期2025年3月期
経常利益2,311百万円1,328百万円
特別利益(固定資産売却益)2百万円1百万円
特別損失568百万円21百万円
(うち事業構造改善費用)562百万円―
税金等調整前当期純利益1,745百万円1,308百万円
法人税、住民税及び事業税752百万円1,277百万円
法人税等調整額558百万円△134百万円
法人税等合計1,311百万円1,142百万円
税負担率75.2%87.3%
親会社株主帰属当期純利益433百万円166百万円

経常利益が983百万円増えたのに、最終利益は267百万円しか増えていません。差を作っているのは、特別損失562百万円と、税金1,311百万円です。

特別損失のほうは中身がはっきりしています。2026年2月12日と3月31日の適時開示によれば、中国の連結子会社2社(大連原田工業有限公司、上海原田新汽車天線有限公司)で早期退職を実施し、大連178名・上海9名の人員最適化に伴う特別退職金・経済補償金として約5億59百万円を計上したものです。これは一過性の費用です。

問題は税金のほうです。**税引前1,745百万円に対して税金が1,311百万円、負担率75.2%。**日本の法定実効税率は30.6%ですから、2.5倍近い負担です。前期はさらに重く87.3%でした。

有価証券報告書の税率差異の注記に、内訳がそのまま書かれています。

項目2026年3月期(%)2025年3月期(%)
法定実効税率30.630.6
海外子会社の留保利益に係る税効果+37.1+3.1
役員賞与等永久に損金算入されない項目+27.6+14.1
移転価格税制関連+17.0―
外国源泉税+2.6+1.8
海外子会社との実効税率差異△14.9△3.5
受取配当金等永久に益金に算入されない項目△15.1△0.1
税額控除△4.3△3.7
評価性引当額△4.2+21.8
留保金課税―+19.0
その他△1.2+4.2
税効果会計適用後の負担率75.287.3

上から順に足すと75.2になります(筆者の検算で一致)。

最大の押し上げ要因は「海外子会社の留保利益に係る税効果」の+37.1ptです。

用語メモ:海外子会社の留保利益に係る税効果 海外子会社が稼いだ利益を日本の親会社に配当で持ってくると、外国源泉税や日本側の課税が発生します。将来その配当が行われる見込みが立つと、連結財務諸表上は、その将来の税金をあらかじめ「繰延税金負債」として積む必要があります。現金はまだ1円も動いていないのに、連結の損益計算書には税金費用が載るのがこの処理の特徴です。

貸借対照表側でも裏が取れます。繰延税金負債のうち「海外子会社留保利益」は、107百万円(2025年3月末)から**754百万円(2026年3月末)へ646百万円増えています。**税率差異の+37.1pt(税引前1,745百万円に対して約648百万円)と、ほぼ同じ金額です。2経路で同じ答えに着地します。

次に大きいのが「移転価格税制関連」の+17.0ptです。この会社は中国当局から移転価格税制に係る調査を受け、日本と中国の税務当局に相互協議を申し立て、日本側で減額更正・中国側は調整なし、という内容で合意しています(2025年8月28日開示)。この対応として、親会社から大連原田工業有限公司へ、2024年3月に約10億45百万円、2025年8月に追加で約10億14百万円を返還しました。連結財務諸表上は子会社側の営業外収益と相殺されるため損益への影響はないと会社は説明していますが、税率差異の欄には+17.0ptとして残っています。

「役員賞与等永久に損金算入されない項目」が+27.6ptというのも目を引きます。役員賞与引当金そのものは24百万円(招集通知の事業報告に記載された取締役7名分の業績連動報酬の総額と一致)ですから、27.6pt(金額にして約482百万円相当)の大半は役員賞与以外の「等」の部分です。会社はその内訳を開示していません。

そして「受取配当金等永久に益金に算入されない項目」が△15.1ptで効いています。海外子会社から実際に配当を受け取った部分は益金不算入になるためです。押し上げと押し下げが同時に起きているのがこの会社の税金の特徴で、要するに**「作る国と売る国が散らばっている」ことの代償**が、そのまま税負担率という形で出ています。

この税金の構造は、海外子会社から親会社への配当とつながっています。会社は2025年10月10日に、連結子会社4社から計12億84百万円の配当を受領したと開示しました(受領日は2025年7月10日・7月14日・8月5日・9月30日の4回)。そして2026年9月30日にも、連結子会社1社から2百万米ドル(約3億17百万円、1米ドル=158.74円換算)の配当を2026年10月に受領する予定であると開示しています。どちらの開示にも「連結子会社からの配当であるため、連結業績に与える影響はありません」と書かれています。

連結の売上や利益には影響しませんが、税金の行には影響し得ます。海外子会社から実際に配当を受け取れば、外国源泉税が発生し、受取配当金の益金不算入が効き、将来の配当見込みに対して積んでいた繰延税金負債も動きます。**ただし、今回の配当が2027年3月期の税負担率をどちらに動かすかは、会社が説明しておらず、開示からは計算できません。**配当と税負担率の関係についての記述は筆者の推測の範囲であり、中間決算の税負担率で確認するしかありません。

3-3. 2つを重ねると、通期予想600百万円の意味が見えてくる

第4四半期の営業赤字(3-1)と、重い税負担(3-2)を重ねます。上期と下期に分けた実績がこうなります。

期上期営業利益下期営業利益上期最終利益下期最終利益
2025年3月期1,506百万円222百万円618百万円△452百万円
2026年3月期1,739百万円658百万円1,300百万円△866百万円

**2期連続で、上期に最終黒字を出し、下期に最終赤字を出しています。**2026年3月期でいえば、上期の税引前1,766百万円に対して下期の税引前は△21百万円(ほぼゼロ)、ところが下期の税金は845百万円でした。営業赤字の四半期と、税金の一括計上が、下期に重なるからです。

この形を前提に、2027年3月期の会社予想を見直します。残り9か月の最終損益の含みは△652百万円でした。前期の同じ9か月が△237百万円、前々期の同じ9か月が2025年3月期の数字から計算すると△169百万円です。

つまり、**会社の通期予想は「奇妙に保守的な数字」ではなく、「この2期間で実際に起きたことをそのまま置いた数字」**だと読めます。第1四半期がどれだけ好調でも、下期に営業赤字の四半期と重い税金が来る、という自社の実績をそのまま延長しているわけです。

会社が税金の重さを予想の段階で織り込んでいることは、過去の予想からも確認できます。経常利益予想から最終利益予想までの目減り率(1−最終利益÷経常利益。特別損益を含むので、税負担率そのものではありません)を、予想の時点ごとに並べます。

時点経常利益予想最終利益予想予想の目減り率実績の目減り率
2025年3月期 期初(2024年5月13日)200百万円100百万円50.0%87.5%
2025年3月期 2回目の修正(2025年2月10日)900百万円100百万円88.9%87.5%
2026年3月期 期初(2025年5月13日)500百万円200百万円60.0%81.2%
2026年3月期 修正(2025年11月12日)1,300百万円200百万円84.6%81.2%
2027年3月期 期初(2026年5月14日)1,700百万円600百万円64.7%―

2025年3月期の2回目の修正で、会社は経常利益予想を900百万円に引き上げながら、最終利益予想は100百万円のまま動かしませんでした。修正の開示には「親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、法人税等の影響を見込んでおり、前回発表予想値から修正はございません」と書かれています。目減り率に直すと88.9%で、実績は87.5%でした。会社は、税金がどれだけ利益を削るかをほぼ正確に読んでいたことになります。

一方、2027年3月期の期初予想の目減り率は64.7%で、過去2期の着地(87.5%・81.2%)より軽い前提です。今期の予想は、過去2期より軽い税金を置いたうえで、なお残り9か月の最終赤字を見込んでいるということになります。

もっとも、ここは両論で書く必要があります。

強気の見方:2027年3月期第1四半期の営業利益率14.36%は、直近9四半期で突出しています。中国子会社の機能再編は2026年2〜3月に実行されたばかりで、その効果が通年で効くのはむしろこれからです。北中米と欧州のセグメント利益も、第1四半期時点でそれぞれ263百万円・319百万円と前年同期の5.5倍・4.5倍に伸びています。前期と同じ下期の落ち込み方をする理由は、少なくとも第1四半期の数字からは見当たりません。加えて、通期予想の税負担率は64.7%(経常1,700百万円を税引前とみなした場合)ですが、第1四半期の実績は22.2%です。仮に法定実効税率30.6%が通年で通るなら、経常1,700百万円でも最終利益は1,179百万円、1株利益は55.78円になります。

弱気の見方:売上の前提が弱いことは見落とせません。通期予想の売上高390億円は前期比7.6%減で、残り9か月の含みは前年同期間の86.1%です。会社は短信で「米国の通商政策による影響」「地政学リスクに伴うコスト上昇圧力による需要下押し懸念」を挙げています。粗利率30.50%という水準が9四半期で最高だったという事実は、裏返せばこの水準が続く保証がどこにもないということでもあります。そして税金の押し上げ要因である「海外子会社の留保利益に係る税効果」は、海外に利益が貯まるほど積み増しが必要になる性質のもので、稼ぐほど効いてきます。

**どちらに転ぶかは、第2四半期(2026年7〜9月。海外子会社は4〜6月)の決算で最初の答え合わせができます。**具体的には、(a) 単独四半期の粗利率が25%以上を維持しているか、(b) 上期累計の税負担率が30%前後にとどまっているか、(c) 会社が通期予想を修正するかどうか、の3点です。

4. 会社予想は当てにできるのか — 達成履歴

この会社の通期予想が実際どう動いてきたかを、直近2期分並べます。修正がいつ出たか(期中か、決算期が終わってからか)も合わせて見ます。単位は百万円です。

決算期時点開示日開示のタイミング売上高営業利益経常利益最終利益
2025年3月期期初予想2024年5月13日前期の通期決算と同日42,000500200100
2025年3月期修正①2024年11月8日中間決算と同日42,000700500100
2025年3月期修正②2025年2月10日第3四半期決算と同日43,0001,200900100
2025年3月期実績2025年5月13日通期決算44,8171,7291,328166
2026年3月期期初予想2025年5月13日前期の通期決算と同日39,000800500200
2026年3月期修正2025年11月12日中間決算と同日40,0001,6001,300200
2026年3月期実績2026年5月14日通期決算42,1922,3982,311433
2027年3月期期初予想2026年5月14日前期の通期決算と同日39,0002,0001,700600

期初予想に対する着地は次のとおりです。

決算期売上高営業利益経常利益最終利益
2025年3月期+6.7%+245.8%+564.0%+66.0%
2026年3月期+8.2%+199.8%+362.2%+116.5%

この表のポイントは3つです。

1つ目は、2期連続で期初予想を大幅に上回っていることです。営業利益は期初予想の3.5倍(2025年3月期)、3.0倍(2026年3月期)で着地しました。

2つ目は、上方修正が期中に出ていることです。2025年3月期は中間決算と第3四半期決算の2回、2026年3月期は中間決算の1回で、どちらの年も最初の修正は中間決算と同じ日でした。決算期が終わってから実績に合わせて直す会社ではなく、決算発表のたびに見直している会社です。第1四半期決算で予想を据え置いたこと自体は、この会社にとって例年どおりの動きで、それだけで強気・弱気のどちらの材料にもなりません。

3つ目は、最終利益の予想だけは、修正のたびに据え置かれてきたことです。営業利益・経常利益を上げても最終利益は動かさず、その理由を「法人税等の影響」と説明してきました。3-3で見たとおり、その読みはほぼ当たっています。

そして2027年3月期の期初予想の売上高は、2026年3月期の期初予想とまったく同じ390億円です。

この履歴の読み方も両論があります。

  • 「この会社の予想は下に置かれている」と読む:2期連続で期初予想を大きく上回っており、今期の第1四半期の進捗(経常94.8%)もその延長線上にある
  • 「たまたま2期続けて外れただけ」と読む:2022年・2023年3月期には経常赤字を出しており、この会社の業績は上にも下にも大きく振れる。予想が保守的なのではなく、単に予想が難しい事業である可能性がある

前年の進捗率と並べておきます。進捗率は単独では意味を持たないので、前年の分母が何だったかまで含めて並べる必要があります。

分母売上高営業利益経常利益最終利益
今期第1四半期 ÷ 今期予想29.2%81.7%94.8%208.8%
前年第1四半期 ÷ 前年期初予想26.0%113.7%185.0%335.8%
前年第1四半期 ÷ 前年修正後予想25.3%56.9%71.1%335.8%
前年第1四半期 ÷ 前年実績24.0%37.9%40.0%154.8%

前年も、第1四半期だけで期初予想の経常利益の185.0%、最終利益の335.8%に達していました。「第1四半期で通期予想を超える」のは、この会社では去年もあったことです。そして去年は、11月の中間決算と同じ日に上方修正が入りました。

5. 地域別(報告セグメント)の構造

報告セグメントは「日本」「アジア」「北中米」「欧州」の4つで、製品別のセグメントはありません。有価証券報告書の関連情報でも「単一の製品・サービスの区分の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため、記載を省略」とされています。つまり事実上の単一事業です。

2026年3月期の実績を並べます。単位は百万円です。

セグメント外部売上高内部売上高計セグメント利益従業員数
日本18,5371,75220,289443246名
アジア6,84518,50725,3521,9182,472名
北中米12,3436512,40871,256名
欧州4,4668145,28031626名
調整額―△21,138△21,138△287―
連結42,192―42,1922,3984,000名

この表のポイントは2つです。

1つ目は、アジアの姿です。外部売上は68億円しかないのに、内部売上が185億円あります。合計253億円は4セグメントのなかで最大です。つまりアジア(中国・ベトナム・フィリピンの工場群)は外部に売る事業ではなく、グループ内の工場です。そのアジアのセグメント利益が19億18百万円と、連結営業利益23億98百万円の8割を占めています。

ここに構造的な注意点があります。**内部売上から生まれる利益は、グループ内の値付け次第で大きく動きます。**アジアの利益が前期の3億82百万円から19億18百万円へ5倍になった背景を会社は「中国子会社の機能再編効果による原価率の低下等」と説明していますが、同時にこの会社は移転価格税制で中国当局と争った経緯があり、税率差異の注記には移転価格税制関連が+17.0ptとして残っています。利益がどの国に立つかという問題は、この会社にとって税務の問題でもあります。

2つ目は、従業員と利益の関係です。

  • 日本:246名でセグメント利益443百万円(1人あたり1.80百万円)
  • アジア:2,472名で1,918百万円(1人あたり0.78百万円)
  • 北中米:1,256名で7百万円(1人あたり0.006百万円)
  • 欧州:26名で316百万円(1人あたり12.17百万円)

欧州は販売会社だけなので26名で316百万円を稼ぎ、北中米は工場(メキシコ)を抱えているため1,256名で7百万円にとどまります。**北中米が実質的に収支トントンであることは、この会社の最大の弱点です。**外部売上123億円はアジアの2倍近い規模なのに、利益はほぼゼロです。

2027年3月期第1四半期では、この北中米が263百万円(前年同期48百万円の5.5倍)、欧州が319百万円(同71百万円の4.5倍)と大きく改善しました。第1四半期の連結営業利益16億34百万円のうち、この2地域の改善分だけで4億63百万円を占めます。

顧客の所在地別の売上高(有価証券報告書の関連情報)も並べておきます。

地域2026年3月期2025年3月期増減率
日本18,508百万円18,123百万円+2.1%
アジア6,895百万円7,289百万円△5.4%
米国8,309百万円10,304百万円△19.4%
その他8,479百万円9,099百万円△6.8%

売上減少の大半は米国向けです。主要な顧客としては、トヨタ自動車株式会社への売上高3,450百万円(前期3,653百万円)が開示されています。売上全体の8.2%で、特定1社への依存度が極端に高い会社ではありません。

6. 資本政策と株主還元

この会社には株主優待があります。あわせて、議決権の過半を握る支配株主がいます。その2つを順に見ます。

6-1. 配当

項目内容
基本方針年1回の配当。期末配当の決定機関は株主総会
基準日3月31日
中間配当定款上は「取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる」。ただし実施実績は直近5期でゼロ
2026年3月期1株7円50銭(普通配当7円50銭)、配当金総額158,639千円、効力発生日2026年6月29日
2027年3月期予想1株10円00銭(普通配当10円00銭)、前期比2円50銭の増配
配当性向(会社予想ベース)35.3%

**定款上の制度と実施実績は分けて読む必要があります。**有価証券報告書の「剰余金の配当の基準日」には9月30日と3月31日の両方が載っていますが、実際に配当が出るのは年1回、3月末基準だけです。

配当の推移も並べておきます(会社IRサイトの配当金の推移より)。

決算期中間期末年間
2023年3月期0円5円00銭5円00銭
2024年3月期0円15円00銭15円00銭
2025年3月期0円7円50銭7円50銭
2026年3月期0円7円50銭7円50銭
2027年3月期(予想)0円10円00銭10円00銭

2024年3月期の15円から2025年3月期の7円50銭へ、**半減しています。**この期は最終利益が885百万円から166百万円へ落ちた期で、配当性向は97.8%まで上がっていました。株式分割はこの間行われておらず、調整は不要です(潜在株式もありません)。「安定した配当を維持する」と方針には書かれていますが、実績としては業績に応じて上下しています。

増配の理由について、会社は決算短信で「当社が継続して取り組んできた収益構造改革の成果により、収益体質の改善が進んでいることを踏まえたもの」と説明しています。

DOE(純資産配当率)を計算すると、配当総額211百万円(10円×自己株控除後21,151,932株)÷ 期首純資産13,709百万円 = 1.54%です。会社はDOEを方針として掲げていないので、これは筆者の計算値です。

6-2. 株主優待 — ただし、有価証券報告書の記載と食い違っている

先に、この記事でいちばん注意して読んでほしい点を書きます。

この会社の株主優待は、2023年11月10日の適時開示「業績予想及び配当予想の修正、並びに株主優待制度の一部変更に関するお知らせ」で現在の内容に変更された制度で、会社IRサイト(株主還元ページ)にも現行制度として掲載されています。筆者が確認できた2024年以降の適時開示に、廃止や変更の開示はありません。

一方、2026年6月25日に提出された第69期有価証券報告書の「第6 提出会社の株式事務の概要」の「株主に対する特典」欄には、「該当事項はありません」と記載されています。

適時開示と会社IRサイトの2つが制度の存在を示し、有価証券報告書だけが「該当事項なし」としている、という食い違いです。筆者はこの理由を特定できていません。**優待の有無は投資判断に直結するため、購入を検討する場合は必ず会社IR(総合企画部)に直接確認してください。**以下は適時開示と会社IRサイトの記載に基づいて書きます。

項目内容
対象毎年3月31日現在の株主名簿に記載された、100株(1単元)以上を保有し、かつ継続保有期間1年以上の株主
内容クオカード(年1回)
継続保有1年以上100株以上1,000円/1,000株以上5,000円/10,000株以上10,000円
継続保有5年以上100株以上1,500円/1,000株以上5,500円/10,000株以上10,500円
「1年以上」の定義同一株主番号で3月31日および9月30日の株主名簿に連続して3回以上記録され、かつ保有株式数が継続して100株以上であること
「5年以上」の定義同じく連続して11回以上記録されていること
贈呈時期毎年6月開催の定時株主総会終了後に送付する株式関係書類に同封

2023年の変更で何が変わったかも押さえておきます。

区分変更前(2023年3月末基準まで)変更後(2024年3月末基準から)
100株以上・継続保有1年未満3,000円対象外
100株以上・継続保有1年以上4,000円1,000円
1,000株以上区分なし5,000円(5年以上は5,500円)
10,000株以上区分なし10,000円(5年以上は10,500円)

100株保有者への優待は4,000円から1,000円へ、4分の1になりました。会社は変更理由を「株主の皆様に対する利益還元の公平性、及び株主配当と株主優待とのバランス等の観点を踏まえ」と説明しています。同じ開示で、2024年3月期の配当予想は普通配当7円50銭に特別配当7円50銭を加えた15円に引き上げられました。優待を縮め、配当に寄せたという順序です。その配当は、翌2025年3月期に7円50銭へ戻っています(6-1)。

名目の利回りを計算します(2026年9月30日終値954円ベース)。

保有株数投資額年間配当(予想)配当利回り優待(1年以上)1株当たり優待額優待利回り合計利回り
100株95,400円1,000円1.05%1,000円10.0円1.05%2.10%
1,000株954,000円10,000円1.05%5,000円5.0円0.52%1.57%
10,000株9,540,000円100,000円1.05%10,000円1.0円0.10%1.15%

この表のポイントは2つです。

1つ目は、100株保有なら、1株当たりの優待額(10円)が1株当たりの予想配当(10円)と同額だということです。100株の株主にとって、優待は配当と同じ重さを持っています。

2つ目は、100株から先は、買い増すほど1株当たりの優待額が下がることです。1,000株区分では5円、10,000株区分では1円です。区分の境目で見ると、たとえば100株を200株に増やしても優待は1,000円のままで、1株当たりは10円から5円に半減します。100株を超えて999株までの区間は、優待の面では買い増しても何も増えない区間です。

株価の上昇は、そのまま利回りを下げています。9月18日終値680円で計算すると100株の合計利回りは2.94%でしたが、9月30日終値954円では2.10%です。

名目と実質のギャップについても触れておきます。クオカードは額面どおり使える点で換金性が高く、額面と実質価値のギャップは小さい部類です。ただし、

  • 継続保有1年以上という条件があるため、買ってすぐには届きません
  • 100株を持っている間に株価が1円動けば、評価額は100円動きます。優待1,000円は、株価10円分の値動きで消える金額です。9月29日の1日の値幅(高値1,243円・安値935円)は308円でした

継続保有条件から、初回受領の時期を逆算します。

条件は「3月31日および9月30日の株主名簿に連続して3回以上記録」で、判定は毎年3月31日です。2026年9月30日基準の権利付き最終日(9月28日)はすでに過ぎているので、これから買う場合の最初の記録は2027年3月31日です。

2027年3月31日 … 1回目(2027年3月29日までの購入が必要)
2027年9月30日 … 2回目
2028年3月31日 … 3回目 ← 条件充足。2028年6月の総会後に初回のクオカードが届く

これから買った場合に最初の優待が届くのは、2028年6月ごろです。

ここで1つ、見落としやすい点があります。**仮に9月28日までに買って2026年9月30日の名簿に載っていたとしても、初回の受領時期は同じ2028年6月です。**2026年9月30日(1回目)と2027年3月31日(2回目)の時点ではまだ2回しかなく、2027年3月末基準の優待は対象外になるからです。**初回受領に効く締切は、2027年3月29日(2027年3月31日基準の権利付き最終日)です。**それまでに買えば、いつ買っても初回は2028年6月になり、2027年3月30日以降に買うと2029年6月にずれます。

これは筆者が制度の条件から逆算したもので、会社が明示している日程ではありません。判定方法の細部(株主番号が変わる取引の扱いなど)は開示されていないため、実際の判定については会社IRへの確認が必要です。

権利付き最終日も計算しておきます。国内株式の決済はT+2なので、基準日の2営業日前が権利付き最終日です。

基準日曜日権利付き最終日曜日意味
2027年3月31日水2027年3月29日月期末配当10円・優待の判定・継続保有の記録
2027年9月30日木2027年9月28日火継続保有の記録のみ(中間配当の実績なし)

用語メモ:権利付き最終日 株主名簿に載るには、基準日の時点で株主として記録されている必要があります。株式の売買は約定から2営業日後に決済される(T+2)ため、基準日に株主名簿へ載るには、その2営業日前までに買っておく必要があります。この日を権利付き最終日と呼びます。休業日の位置によって日付は動くので、その都度計算してください。

**優待コストはいくらか。**貸借対照表に「株主優待引当金」の科目はありません。したがって会社は優待コストを引当計上していない(または重要性がない)ということになります。参考として、有価証券報告書の株主数30,506名(2026年3月31日現在。招集通知では33,716名)の全員が100株区分1,000円の優待を受け取ると仮定すると約30百万円で、配当総額158百万円の19%程度です。これは筆者の概算であり、実際の対象株主数(継続保有条件を満たす株主の数)は開示されていません。

**継続性について。**会社は優待制度の継続期間や終了条件を明示していません。2023年に一度、100株の優待額を4分の1に縮めた実績があることも踏まえると、内容は今後も変わり得ます。**継続は未確定です。**前述した有価証券報告書の記載との食い違いもあり、この点は通常以上に確認が必要です。

6-3. 支配株主 — 議決権の54.97%

この会社には支配株主がいます。2026年6月26日付の「支配株主等に関する事項について」に、こう書かれています。

名称属性直接所有分合算対象分計
原田 章二支配株主(親会社を除く)11.14%43.83%54.97%
株式会社エスジェーエスその他の関係会社39.74%―39.74%

原田章二氏は原田工業の代表取締役会長であり、同時に株式会社エスジェーエスの代表取締役社長です。

用語メモ:議決権比率の閾値 議決権の3分の1超を握ると、定款変更・合併・自己株式の取得枠設定などの特別決議を単独で否決できます(拒否権)。過半数を握ると、取締役の選任・剰余金の配当などの普通決議を単独で可決できます。54.97%という数字は、後者に届いているということです。

大株主の状況(2026年3月31日現在、自己株式を除く)は次のとおりです。

株主名持株数持株比率
株式会社エスジェーエス8,401千株39.72%
原田 章二2,354千株11.13%
原田 恵吾996千株4.71%
原田 恭子612千株2.90%
株式会社りそな銀行600千株2.84%
日本生命保険相互会社310千株1.47%
株式会社三菱UFJ銀行300千株1.42%
原田 悠吾201千株0.95%
株式会社みずほ銀行200千株0.95%
原田工業従業員持株会171千株0.81%

上位10名で66.89%、うち原田家および資産管理会社の関係分で**約59.4%**です。2026年6月26日の定時株主総会(議案は剰余金処分の件のみ)では、賛成173,455個・反対1,236個で賛成割合99.28%でした。総株主の議決権211,404個に対し、賛成票だけで82.0%です。

このエスジェーエスという会社の中身まで開示されているのが、この銘柄の珍しいところです。非上場の親会社等にあたるため、毎年「非上場の親会社等の決算に関するお知らせ」が出ます。2026年8月26日開示分(2026年6月期)から、貸借対照表と損益計算書を引きます。

科目金額
流動資産124,869千円
関係会社株式(原田工業株式)2,369,326千円
資産合計2,494,640千円
短期借入金1,240,000千円
長期借入金410,000千円
負債合計1,652,798千円
純資産合計841,841千円
損益項目金額
売上高―
販売費及び一般管理費224千円
受取配当金63,010千円
支払利息29,666千円
当期純利益32,975千円

読み取れることを書きます。

エスジェーエスは事業を持たない資産管理会社で、資産のほぼ全部(95%)が原田工業株式です。そして16億5,000万円の借入を抱えています。収益は原田工業からの受取配当金63,010千円のみで、これは原田工業の配当総額158,639千円の39.72%にあたり、同社の持株比率と一致します。この配当収入から支払利息29,666千円を払い、当期純利益は32,975千円です。

**つまり、この会社の筆頭株主は、借入の利息を原田工業の配当でまかなっている構造です。**配当が半減した2025年3月期(15円→7円50銭)に、この構造がどう効いたかは開示されていません。ただ、**増配(7円50銭→10円00銭)が誰にとって意味を持つかという点は、事実として記録しておく価値があります。**以下は筆者の推測であり、会社の開示に基づくものではありませんが、配当政策を読むうえでこの構造は無視できません。

エスジェーエス自身の株主も開示されています。原田恵吾氏28.54%、原田悠吾氏21.29%、原田和枝氏15.13%ほか、原田家7名で100%です。原田章二氏自身の持分は5.60%にとどまります。議決権の受け皿としては、すでに次の世代に重心が移っています。

6-4. 自己株式の取得は、支配株主からの買い取りだった

2025年3月期に、会社は299,998千円の自己株式を取得しています。相手先が開示されています。

有価証券報告書の関連当事者情報に、こうあります。

主要株主(その他の関係会社)株式会社エスジェーエス(中略)自己株式の取得 299,998千円 (注)自己株式の取得は、東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)により取得しており、取引価格は2025年2月18日の終値によるものであります。

つまり、この自己株式取得は市場から買い集めたものではなく、支配株主の資産管理会社から直接買い取ったものです。

取得の経緯は適時開示で追えます。会社は2025年2月18日の取締役会で、同日終値501円による立会外買付を決議し、取得上限を658,600株(発行済株式総数(自己株式を除く)の3.03%)・329,958,600円としました。翌2月19日の取得結果は598,800株・299,998,800円(501円×598,800株)で、上限株数に対する消化率は90.9%です。

用語メモ:ToSTNeT-3(自己株式立会外買付取引) 取引所の立会時間外で行う自己株式の買付です。前日終値などの固定価格で、朝の短い時間に売り注文を受け付けます。市場での継続的な買い付けと違い、**通常の売買時間中の需給には直接効きません。**特定の株主がまとまった株数を手放したいときの受け皿として使われることがあります。

自己株式の取得は一般に「需給の改善」「1株あたり利益の押し上げ」として好意的に受け取られますが、**相手が支配株主で、立会外の1回限りの取引である場合、市場の需給に与える影響は限定的です。**1株あたり利益の押し上げ効果はもちろん残ります(期中平均株式数は2024年3月期の21,683千株から2025年3月期の21,151千株へ532千株、2.5%減りました)。

なお、2026年3月期の自己株式の取得はありません(有価証券報告書「取締役会決議による取得の状況:該当事項はありません」)。保有自己株式数は606,068株(発行済株式総数の2.79%)で変動していません。

6-5. 株数・借入・政策保有株式

**潜在株式はゼロです。**招集通知の「新株予約権等の状況:該当事項はありません」と、決算短信の「潜在株式調整後1株当たり当期純利益:潜在株式が存在しないため記載しておりません」の2つで裏が取れます。証券情報サイトに出ているEPSやPERをそのまま使える、数少ないタイプの銘柄です。

株式数の項目2026年6月末2026年3月末
発行済株式総数(自己株式含む)21,758,000株21,758,000株
自己株式606,068株606,068株
自己株式控除後21,151,932株21,151,932株
期中平均株式数21,151,932株21,151,932株

借入の状況を有価証券報告書の借入金等明細表から引きます。

区分当期首残高当期末残高平均利率
短期借入金16,534,101千円14,067,329千円1.7%
長期借入金―――
リース債務・リース負債(1年内)379,674千円347,980千円1.9〜2.8%
リース債務・リース負債(1年超)879,532千円519,158千円2.2〜5.7%
合計17,793,309千円14,934,469千円―

**長期借入金がゼロで、有利子負債のほぼ全額が短期借入金です。**主要な借入先は、りそな銀行6,190百万円、横浜銀行3,007百万円、みずほ銀行2,829百万円です(2026年3月31日現在、招集通知)。

ここで目を引く数字があります。2026年3月期のキャッシュ・フロー計算書によれば、短期借入れによる収入が1,055億72百万円、短期借入金の返済による支出が1,081億53百万円です。期末残高140億円に対して年間の借入・返済が1,000億円規模ということは、短期の借り換えを年に7回以上回している計算になります。売上高421億円の会社が、その2.5倍の金額を1年で借りては返しているわけです。これ自体は短期運転資金の借り換えとして珍しいものではありませんが、金利が上がる局面では、借り換えのたびにコストが乗る構造であることは押さえておく必要があります。

支払利息は410百万円(2025年3月期)から300百万円(2026年3月期)へ、110百万円減りました。残高が24億円減ったことによるものです。2027年3月期第1四半期も60百万円(前年同期72百万円)と減少が続いています。

手元資金と借入の関係も見ておきます。

時点短期借入金現金及び預金ネット有利子負債
2026年3月末14,067百万円6,982百万円7,084百万円
2026年6月末13,226百万円7,751百万円5,475百万円

3か月でネット有利子負債が16億円減りました。純資産151億円に対するネットD/Eレシオは0.36倍です。会社は「有利子負債の削減」を収益構造改革の柱に掲げており、その通りに進んでいます。

政策保有株式は3銘柄・323,291千円です。

銘柄当期株式数当期簿価前期簿価
りそなホールディングス97,100株167,254千円124,967千円
三菱UFJフィナンシャル・グループ55,800株145,080千円112,213千円
みずほフィナンシャルグループ1,800株10,956千円7,291千円

3銘柄とも取引銀行です。総資産358億円の0.9%にすぎないので、単独の論点にはなりません。株式数は3銘柄とも前期から変わっていないため、簿価の増加78,820千円は買い増しではなく時価上昇によるものです。検算すると、その他有価証券評価差額金の増加53,974千円÷(1−30.6%)=77,772千円で、差は1,048千円です。「買ったのか、値上がりしたのか」は、この計算で区別できます。

6-6. 設備投資は減価償却を大きく下回っている

「B/Sのスリム化」という旗の実像を、数字で見ておきます。

決算期設備投資額減価償却費差額設備投資÷減価償却
2025年3月期798百万円1,350百万円△552百万円59%
2026年3月期605百万円1,238百万円△632百万円49%

**2期連続で、設備投資が減価償却費の半分程度にとどまっています。**有形固定資産は63億40百万円(2025年3月末)から56億13百万円(2026年3月末)へ7億26百万円減りました。

これは強気にも弱気にも読めます。強気側では、工場の稼働率を上げて既存設備から利益を絞り出せているということであり、実際に営業CFは855百万円から4,168百万円へ大きく改善しました。弱気側では、投資を絞ることでも利益とキャッシュは出るので、**現在の利益改善のうちどこまでが構造改革で、どこまでが投資の先送りなのかは、この開示だけでは切り分けられません。**研究開発費は925百万円(2025年3月期)から876百万円(2026年3月期)へ、こちらも減っています。

6-7. 上場維持基準について

会社は上場維持基準への不適合や改善期間入りを開示していません。東証スタンダード市場の基準は流通株式比率25%以上ですが、**流通株式数・流通株式比率の実数は、筆者が取得できた開示のなかには見当たりませんでした。**コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年7月10日提出)はテキスト情報を抽出できないPDFであったため、本記事では確認できていません。

参考として、所有者別状況(2026年3月31日現在)を並べます。

区分所有株式数の割合株主数
金融機関7.08%7名
金融商品取引業者0.66%18名
その他の法人38.89%127名
外国法人等0.61%52名
個人その他52.76%30,302名

※自己株式606,068株は「個人その他」に含まれています。

**個人株主が3万名を超えています。**時価総額208億円(2026年9月30日終値ベース)の会社としてはかなり多く、株主優待制度がある会社の典型的な姿です。一方で、その他の法人38.89%(大半がエスジェーエス)と原田家個人の持分を除くと、市場で動いている株式は限られます。

7. 株価の見方

以下の株価関連の記述は、すべて2026年9月30日終値954円を基準としています。この銘柄は直近1週間で1日の値幅が300円を超える日があり、公開・閲覧時点の株価は大きく異なっている可能性があります。必ず証券会社のツールでご確認ください。

指標値
株価(2026年9月30日終値)954円
時価総額(発行済株式数ベース)20,757百万円
時価総額(自己株式控除後)20,179百万円
1株当たり純資産(2026年6月末)717.41円
PBR1.33倍
年初来高値1,243円(2026年9月29日)
年初来安値440円(2026年6月8日)
信用買残441,500株(2026年9月25日)
信用売残300株(同)

**1株当たり利益は3本並べる必要があります。**この会社は潜在株式がゼロなので株数による違いは生じませんが、分子(どの期間の利益を使うか)で数字が大きく変わります。

基準親会社株主帰属利益1株当たり利益PER
会社予想(2027年3月期)600百万円28.37円33.63倍
前期実績(2026年3月期)433百万円20.51円46.51倍
直近12か月(2025年7月〜2026年6月)1,014百万円47.97円19.89倍

※直近12か月は、2026年3月期実績433百万円から2026年3月期第1四半期671百万円を引き、2027年3月期第1四半期1,252百万円を足した筆者の計算値です。

33.63倍と19.89倍では、見える景色がまったく違います。**どちらを主表示にするかで結論が変わってしまうので、本記事では両方を出します。**会社予想ベースの33.63倍は、前述のとおり「下期に最終赤字を出す」という前提が入った分母です。直近12か月ベースの19.89倍は、第1四半期の好調を年換算に近い形で含んでいます。**実態はこの2つの間のどこかにあると考えるのが妥当ですが、いずれにしても決算発表前(452円)と比べて、株価の置かれている水準は大きく変わりました。**PBR(2026年6月末の1株当たり純資産717.41円で計算)も、決算発表前日の452円では0.63倍でしたが、954円では1.33倍になり、純資産を下回る水準ではなくなっています。

一次情報から拾える株価の基準点

株価情報サイトの時系列とは別に、開示書類から過去の株価を拾えます。

時点株価出所
2024年3月末約728円有価証券報告書のPER17.88倍×1株利益40.72円(筆者の逆算)
2025年2月18日501円自己株式の立会外買付の取得価格(同日終値)
2025年3月末約492円有価証券報告書のPER64.18倍×1株利益7.67円(筆者の逆算)
2026年3月末約460円有価証券報告書のPER22.43倍×1株利益20.51円(筆者の逆算)
2026年9月30日954円Yahoo!ファイナンスの時系列

2年半ほど400円台〜700円台にあった株価が、決算発表から1か月半で950円台に来ています。

株価の推移(事実)

決算発表前後の値動きを並べます。

日付終値出来高できごと
2026年6月8日――年初来安値440円
2026年8月12日452円3,300株決算発表前日
2026年8月13日460円16,700株第1四半期決算発表(15時30分)
2026年8月14日540円87,700株前日比+17.4%
2026年8月17日562円360,400株―
2026年9月2日553円37,700株―
2026年9月3日631円441,500株前日比+14.1%
2026年9月18日680円55,400株―
2026年9月24日749円250,100株前営業日比+10.1%
2026年9月25日885円730,200株前日比+18.2%(高値899円)
2026年9月28日1,035円425,400株前営業日比+16.9%、値幅制限の上限で終了
2026年9月29日1,004円4,067,700株高値1,243円・安値935円(年初来高値)
2026年9月30日954円1,823,900株同日15時30分に連結子会社からの配当金受領の開示

**8月12日の452円から9月30日の954円まで、株価は2.1倍(+111.1%)になりました。**上昇の大きな部分は9月24日以降の5営業日で起きており、9月18日の680円からでも+40.3%です。

この間、会社から業績予想の修正や新たな事業の開示は出ていません(8月26日の「非上場の親会社等の決算に関するお知らせ」の次の開示は、9月30日15時30分の「連結子会社からの配当金受領に関するお知らせ」で、連結業績への影響はないとされています)。株価情報サイトでは、9月25日の値上がり理由を「不明」としたうえで「自動運転関連」と分類しています。株探の9月24日付記事の見出しも自動運転時代に触れていますが、筆者は記事本文を確認できていません。いずれも報道・情報サイトによる分類であり、会社の開示に基づくものではありません。

なお9月28日は、9月30日基準日(配当はなく、優待の継続保有の記録だけに意味がある日)の権利付き最終日でした。値動きとの関係は分かりません。

9月29日の出来高4,067,700株は、発行済株式総数の18.7%にあたります。原田家と資産管理会社の持分(約59.4%)を除いた株式は約859万株なので、その47%に相当する出来高が1日で出たことになります(筆者の計算。同じ株が1日に何度も売買されるので、「半分の株主が入れ替わった」という意味ではありません)。流通している株式が少ない銘柄で、これだけの出来高と値幅が出ているという事実は押さえておく必要があります。

信用買残は441,500株(9月25日時点)で、9月11日時点の406,200株から増えています。信用売残はほぼゼロ(300株)で、信用倍率は1,471倍です。株価上昇局面で積み上がった信用買いは、将来の売り圧力にもなります。

強気に見る材料

  • 2027年3月期第1四半期の営業利益率14.36%は直近9四半期で最高。粗利率30.50%も同じく最高で、中国子会社の機能再編の効果がこれから通年で効く
  • 収支トントンだった北中米が263百万円、欧州が319百万円へと大幅改善。連結営業利益の増加額725百万円のうち、この2地域で463百万円を占める
  • 通期予想の進捗は経常利益で94.8%。会社は2期連続で期初予想を大きく上回り、どちらの年も中間決算と同じ日に上方修正を出している
  • 今期の予想は過去2期より軽い税負担を前提にしているが、第1四半期の実績税負担率(22.2%)はそれよりさらに軽い
  • 直近12か月ベースのPERは19.89倍。ネット有利子負債は3か月で16億円減り、自己資本比率は41.9%まで回復
  • 潜在株式ゼロ、長期借入ゼロで、希薄化や返済期限の論点が存在しない

弱気に見る材料

  • 第4四半期が2期連続で営業赤字。この形が今期も繰り返されるなら、通期の着地は第1四半期の延長線上にはならない
  • 税負担率が2期連続で75〜87%。押し上げ要因の「海外子会社の留保利益に係る税効果」は、海外子会社が稼ぐほど積み増しが必要になる性質のもので、業績改善と同じ方向には働かない
  • 通期予想の売上高は前期比7.6%減。会社自身が「米国の通商政策による影響」「需要下押し懸念」を挙げており、増益は原価率の改善に依存している。粗利率30.50%が9四半期で最高だったということは、この水準が続く保証がないということでもある
  • 設備投資が減価償却費の半分、研究開発費も減少。利益改善のどこまでが構造改革で、どこまでが投資の先送りかを切り分ける材料がない
  • 会社予想ベースのPERは33.63倍、前期実績ベースでは46.51倍。株価は決算発表前の2.1倍になり、PBRも1倍を超えた。この1か月半の上昇に、会社の新たな開示は伴っていない
  • 9月29日には1日で高値1,243円・安値935円と300円以上動き、出来高は発行済株式総数の18.7%に達した。信用買残は441,500株に増え、信用売残はほぼゼロ
  • 議決権の54.97%を支配株主が握る。少数株主が経営方針に影響を与える余地は構造的に小さい。過去の自己株式取得も相手は支配株主の資産管理会社だった
  • 会社は四半期の決算説明資料を作成しておらず、決算説明会も開催していない。開示は短信のみで、四半期ごとの追加説明がない

8. 今後のカレンダーと、見るべきKPI

時期できごと
2026年10月連結子会社からの配当(2百万米ドル、約3億17百万円)の受領予定。個別決算の営業外収益で、連結業績への影響はないと会社は説明
2026年11月中旬(見込み)2027年3月期第2四半期(中間期)決算発表。前期は11月12日、前々期は11月8日で、どちらも同日に通期予想の上方修正が出た
2027年2月中旬(見込み)2027年3月期第3四半期決算発表。前期は2月12日、前々期は2月10日
2027年3月29日(月)2027年3月31日基準日の権利付き最終日(期末配当10円00銭・優待の判定)。これから買う場合に、2028年6月の初回優待に間に合う締切
2027年5月中旬(見込み)2027年3月期通期決算発表。前期は5月14日
2027年6月下旬(見込み)定時株主総会・有価証券報告書提出(「株主に対する特典」欄の記載を確認)

※次回決算発表日は会社から公表されていません(2026年9月30日時点)。上記は過去の実績日程からの推定です。

見るべきKPI(筆者が重視する順)

  1. 単独四半期の売上総利益率:中間決算で、7〜9月(海外子会社は4〜6月)の粗利率が25%以上を維持しているか。累計からの差し引きが必要です
  2. 上期累計の税負担率:30%前後で収まるのか、前期のように下期に一括で重くなるのか。中間期の税金等調整前利益と法人税等合計を割るだけで出ます。10月の子会社配当の受領が税金の行にどう出るかも、ここで間接的に見えます
  3. 通期予想の修正の有無と、最終利益予想が動くかどうか:過去2期は中間決算と同じ日に営業・経常の予想を上げ、最終利益は据え置いてきました。今期は第1四半期で最終利益が予想の2倍に達しているので、最終利益予想まで動くかどうかが焦点です
  4. 北中米セグメントの利益:2026年3月期通期で7百万円だったセグメントが、第1四半期に263百万円。これが続くか
  5. アジアの内部売上と利益:セグメント利益の大半をアジアが稼いでいる構造が続くか。ここが動くと税務の論点にも跳ね返ります
  6. 設備投資額:減価償却費を下回り続けるのか、それとも投資に転じるのか
  7. 短期借入金の残高と支払利息:ネット有利子負債の減少が続くか

9. 3行まとめ

  • 2027年3月期第1四半期は、粗利率30.50%・営業利益率14.36%と直近9四半期で最高の内容だったが、会社は通期予想を据え置き、残り9か月で6億52百万円の最終赤字を見込む形になっている
  • そのねじれの正体は、(1) 第4四半期が2期連続で営業赤字であること、(2) 税負担率が2期連続で75〜87%と重いこと、の2つであり、会社予想は自社の直近2期の形をそのまま置いた数字だと読める。会社は過去2期とも中間決算と同じ日に上方修正を出しており、最終利益への税金の効き方もほぼ正確に読んできた
  • 株価は決算発表前日の452円から9月30日の954円まで2.1倍になったが、この間に会社の新たな業績開示はない。議決権の54.97%を支配株主が握り、株主優待は適時開示と会社IRサイトでは現行制度だが有価証券報告書では「該当事項なし」となっており、購入前の確認が必要

10. 要確認箇所(公開前・投資判断前に必ず確認してください)

  1. 株価・時価総額・PER・PBR・利回り。本記事はすべて2026年9月30日終値954円を基準にしています。直近は1日の値幅が300円を超える日があり、閲覧時点の水準とは大きく異なる可能性があります
  2. 株主優待制度の有無と内容。2023年11月10日の適時開示と会社IRサイトは現行制度として記載していますが、2026年6月25日提出の有価証券報告書の「株主に対する特典」欄は「該当事項はありません」です。会社IRへの直接確認が必要です
  3. 優待の継続保有条件の判定方法(株主番号が変わる取引の扱いなど)は開示されていません。初回受領時期の逆算は筆者によるものです
  4. 次回決算発表日。会社は未公表で、本記事の日程は過去の実績からの推定です
  5. 流通株式比率・流通株式時価総額。本記事では確認できていません

免責事項

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、原田工業株式会社の2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月13日)、2026年3月期決算短信(2026年5月14日)、2026年3月期第3四半期・第2四半期・第1四半期決算短信、第69期有価証券報告書(2026年6月25日提出、EDINET書類番号S100YJHN)、第69期定時株主総会招集ご通知(2026年6月4日)、臨時報告書(2026年6月29日)、各適時開示(業績予想及び配当予想の修正、並びに株主優待制度の一部変更に関するお知らせ2023年11月10日/2025年3月期第2四半期(中間期)業績予想と実績値との差異及び通期業績予想の修正に関するお知らせ2024年11月8日/通期業績予想の修正に関するお知らせ2025年2月10日・2025年11月12日/自己株式の取得及び自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の買付けに関するお知らせ2025年2月18日/同 取得結果及び取得終了に関するお知らせ2025年2月19日/2025年3月期通期連結業績予想値と実績値との差異に関するお知らせ2025年5月13日/個別決算における特別損失の計上に関するお知らせ2025年8月28日/連結子会社からの配当金受領に関するお知らせ2025年10月10日・2026年9月30日/収益構造改革の推進に伴う中国の当社連結子会社における人員の最適化に関するお知らせ2026年2月12日/同 取組みの実施結果及び特別損失の計上に関するお知らせ2026年3月31日/2026年3月期通期連結業績予想値と実績値との差異に関するお知らせ2026年5月14日/剰余金の配当に関するお知らせ2026年5月25日/支配株主等に関する事項について2025年6月27日・2026年6月26日/非上場の親会社等の決算に関するお知らせ2026年8月26日)、2026年3月期決算説明資料(2026年6月26日)、および会社IRサイトの記載です。株価・出来高・信用残高はYahoo!ファイナンスの時系列データによります。9月下旬の株価上昇の理由に関する記述は、株価情報サイトの分類と株探の記事見出しによる報道ベースであり、筆者は株探の記事本文を確認していません。

本記事における以下の記述は筆者が算出・推測したものであり、会社の開示に基づくものではありません。(a) 単独四半期の売上高・売上総利益・粗利率・販管費・営業利益・セグメント利益は、累計の開示値からの差し引きによる筆者の算出値です(4四半期の合計が通期開示値と一致することは確認済みですが、丸めの関係で内訳の和と開示の「計」が±2千円ずれる箇所があります)。(b) 第4四半期の粗利率低下の原因についての一般論は筆者の推測であり、会社は理由を開示していません。(c) 株主優待の初回受領時期の逆算、優待コストの概算、DOE、直近12か月の1株当たり利益とPER、有価証券報告書のPERからの株価の逆算、予想の目減り率、9月29日の出来高と原田家以外の持株との比較は筆者の計算値です。(d) 支配株主の資産管理会社の借入構造と配当政策の関係、および海外子会社からの配当と税負担率の関係についての記述は筆者の推測であり、会社の開示に基づくものではありません。

本記事は、2027年3月期第1四半期について会社が決算補足説明資料を作成せず(短信表紙「決算補足資料作成の有無:無」)、決算説明会も開催していない(同「決算説明会開催の有無:無」)段階で執筆しています。本文中の会社説明は、決算短信の定性的情報、適時開示、および2026年3月期決算説明資料(2026年6月26日公表)に基づくもので、**第1四半期についての会社の追加説明・質疑応答は一切反映していません。**また、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2026年7月10日提出)はテキスト情報を抽出できないPDFであったため、流通株式比率等の内容を本記事に反映できていません。決算説明資料の売上高推移グラフ・為替レート推移グラフから読み取れる数値についても、短信の開示値との突き合わせが取れなかったため、本記事には記載していません。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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