本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。**執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。**特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事でわかること
- 2026年3〜8月の上半期は、売上高1億96百万円・営業損失3億18百万円。純資産は△5億47百万円(債務超過)まで広がり、手元の現金は33百万円
- 通期予想(営業利益48百万円)を据え置いた結果、下期(9〜2月)には「売上11億35百万円(上半期の5.8倍)・営業利益3億66百万円」が置かれている。会社の中期経営計画の表で分けると、下期の販管費は上半期の約半分という計算になる
- 上場維持基準:2027年2月末に純資産がプラス、かつ流通株式比率25%以上でなければ、会社の開示では2027年9月1日に上場廃止となる。期末に純資産をプラスにするのに必要な増資額を、下期の損益3通り×株価3通りの表で示す
- EVO FUND向けの行使価額修正条項付き新株予約権(いわゆるMSワラント)2,800万株(発行済株式の24.4%)の仕組み。行使価額は直前5日の終値の最安値、下限は58円、期限つきの行使約束(コミット)が2段ある
- 年10%の借入、10月31日に返済期限が来る借入3億円、行使代金がまず社債の償還に回る順番
- 筆頭株主の取締役が2,700万株を貸株していること、主要株主の入れ替わり、2025年の調査委員会・臨時株主総会・決算延期からの経緯
1. 前提知識:お見合いの仕組みを貸す「連盟本部」
1-1. 何をしている会社か
アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(以下ASJ)の本業は、注文住宅を建てたい人(施主)と建築家を引き合わせる仕組みです。
これは、結婚相談所の「連盟」に近い形です。結婚相談所の連盟では、本部がお見合いの仕組み(会員名簿・イベント・ルール)を持ち、各地の相談所がそこに加盟して自分の会員を連れてきます。ASJでは、各地の工務店が「スタジオ」として加盟し、ASJの看板と仕組み(建築家展などのイベント、登録建築家との引き合わせ、プランづくりの手順)を使って施主を集め、実際の家を建てます。ASJは加盟料(ロイヤリティ)や工事請負・設計監理に関わる売上を受け取ります。
この例えには、強みと弱みが同じ形で入っています。
- 強み:本部は家を建てない。建てるのは加盟した工務店なので、本部自身は工場も職人も抱えず、粗利率が高い(上半期の売上総利益率は81.9%)
- 弱み①:加盟する工務店が減れば、本部の収入も減る。半期報告書によると、スタジオ数は2014年の201か所をピークに67か所まで減っている
- 弱み②:会員が減っても、本部の事務所・人件費・イベントの費用はすぐには縮まない。さらに今のASJは、本部の財布から新しい事業(環境関連・AI)の立ち上げ費用も出している
この記事では、弱み②が「本部の家計」としてどこまで来ているか、そしてその穴を誰が埋めようとしているかを追います。
1-2. 事業の構成(2026年3〜8月)
今期から、セグメント(事業区分)が「建築家提案事業」「環境関連事業」「海外・IT事業」の3つに変わりました。前期の区分(住まい関連・暮らし関連・投資関連)で作り直した数字は「実務上困難」として開示されていません。
| 区分 | 中身(会社の説明) | 売上高 | セグメント損益 |
|---|---|---|---|
| 建築家提案事業 | 工事請負・設計監理、スタジオからのロイヤリティ、マーケティング | 177百万円 | △1百万円 |
| 環境関連事業 | ALIN(亜臨界水の技術)関連の紹介手数料が中心。コルゲート建築、窓・床のコーティングなど | 17百万円 | △70百万円 |
| 海外・IT事業 | カナダのPERMITS AI INC.、ニュージーランドでの事業など。会社は「当面は業績貢献は見込んでいない」 | 1百万円 | △141百万円 |
| セグメント計 | 196百万円 | △213百万円 | |
| 全社費用(調整額) | どのセグメントにも配分しない本部の費用 | — | △104百万円 |
| 連結営業損益 | 196百万円 | △318百万円 |
(百万円未満切り捨て。出所:2027年2月期中間決算短信・半期報告書)
この表のポイントは2つです。
- お見合いの仕組みそのもの(建築家提案事業)は、上半期でほぼ収支トントンです。赤字の大半は、新しい2事業(△2億12百万円)と本部の費用(△1億04百万円)から出ています
- 売上の9割(1億77百万円)を稼ぐのは建築家提案事業ですが、会社の今期計画では、売上の半分以上を環境関連事業で立てることになっています(3章)
1-3. 業績の推移
ASJは2025年に決算期を3月から2月に変えました(2025年5月29日決議)。そのため前期(2026年2月期)は2025年4月〜2026年2月の11か月決算で、今期の上半期(2026年3〜8月)と前期の上半期(2025年4〜9月)は対象の月がずれています。会社も前年同期との比較をしていません。
| 項目 | 2025年3月期(12か月) | 2026年2月期(11か月) | 2027年2月期 上半期(6か月) | 2027年2月期 会社予想 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 897百万円 | 658百万円 | 196百万円 | 1,332百万円 |
| 営業利益 | △96百万円 | △559百万円 | △318百万円 | 48百万円 |
| 経常利益 | △92百万円 | △550百万円 | △321百万円 | 38百万円 |
| 親会社株主に帰属する純利益 | △79百万円 | △600百万円 | △323百万円 | 38百万円 |
| 純資産(期末) | 235百万円 | △223百万円 | △547百万円 | — |
| 配当 | 0円 | 0円 | 0円(中間) | 0円 |
(百万円未満切り捨て。2026年2月期の純資産は2026年5月8日の訂正後の値)
2年前は純資産2億35百万円、営業赤字は1億円弱でした。前期の11か月で営業赤字が5億円台に広がり、期末に債務超過になり、今期の上半期でさらに3億円以上赤字を重ねています。
用語メモ:債務超過は、負債の合計が資産の合計を上回り、純資産がマイナスになっている状態です。会社を清算して資産をすべて売っても借金を返しきれない計算になります。東証グロース市場には「純資産の額が正であること」という上場維持基準があります。
1-4. 会社予想の達成履歴
ASJの業績予想は、ここ2期、期初から大きく外れてきました。
| 期 | 予想(開示日) | 売上高 | 営業利益 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 差異開示が比較対象とした予想(2024年5月13日公表、8月9日に修正あり) | 1,826百万円 | 134百万円 |
| 2025年3月期 | 実績(2025年5月15日) | 897百万円(予想比49.1%) | △96百万円 |
| 2026年2月期 | 決算期変更前に「2026年3月期」として出していた予想(2025年7月4日の修正開示に記載) | 3,001百万円 | 386百万円 |
| 2026年2月期 | 修正①(2025年7月4日。11か月の2月期として) | 2,533百万円 | 191百万円 |
| 2026年2月期 | 修正②(2026年1月13日、中間決算と同日) | 735百万円 | △260百万円 |
| 2026年2月期 | 修正③(2026年2月16日、第3四半期決算と同日) | 695百万円 | △510百万円 |
| 2026年2月期 | 実績(2026年4月17日) | 658百万円(当初予想比22.0%) | △559百万円 |
| 2027年2月期 | 期初予想(2026年4月17日) | 1,332百万円 | 48百万円 |
| 2027年2月期 | 第1四半期(7月15日)・中間(10月16日)とも据え置き | — | — |
この表のポイントは、前期は期中に3回、いずれも下方に修正し、着地は当初予想の売上の約2割だったことです。修正のたびに予想と実績の距離は縮みましたが、最後の修正(2月16日)からも営業損失がさらに49百万円広がりました。
今期の予想は、前期実績の約2倍の売上と、営業黒字への転換を置いています。会社は半期報告書で、受注の遅れは「当期中に十分挽回できる数量」と判断し、業績予想は「達成できるものと考えております」と書いています。ここで言えるのは、予想の達成可能性ではなく、予想が下期に何を置いているかだけです。それを3章で計算します。
2. 決算ハイライト(2026年3〜8月)
2-1. 損益
決算短信の表紙は「決算補足説明資料作成の有無:無」「決算説明会開催の有無:無」です。当四半期について、会社の説明は短信の定性的情報と半期報告書の経営者による分析だけです。
| 項目 | 第1四半期(3〜5月) | 第2四半期(6〜8月)※ | 上半期(3〜8月) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 80百万円 | 115百万円 | 196百万円 |
| 売上総利益 | 61百万円 | 99百万円 | 160百万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 241百万円 | 237百万円 | 479百万円 |
| 営業損益 | △179百万円 | △138百万円 | △318百万円 |
| 経常損益 | △178百万円 | △142百万円 | △321百万円 |
| 親会社株主に帰属する純損益 | △179百万円 | △144百万円 | △323百万円 |
(百万円未満切り捨て。※第2四半期は上半期累計から第1四半期累計を差し引いた筆者の差し引き)
この表のポイントは、販管費が四半期あたり約2億4千万円でほとんど動いていないことです。売上が80百万円から1億15百万円に増えても、販管費の規模に比べて売上総利益が小さく、四半期ごとに1億円以上の営業赤字が出る構造は変わっていません。
上半期の1株当たり中間純損失は△3.33円と開示されています。ただ、これは期中平均株式数97,324,454株で割った値で、第1四半期の期中平均株式数(114,740,760株)より少なく、その間に株数の大きな変化はありません。期末の株数(自己株式を除く114,740,760株)で割ると△2.82円です。食い違いの理由は開示されていません(6章)。
2-2. 6四半期の並び
決算期変更のため、前期は「4〜6月・7〜9月・10〜12月・1〜2月(2か月)」、今期は「3〜5月・6〜8月」と区切りがずれています。季節性を判断できる並びではないので、規模感をつかむためだけに並べます。
| 期間 | 売上高 | 売上総利益 | 販管費 | 営業損益 | 純損益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年4〜6月 | 218百万円 | 83百万円 | 283百万円 | △200百万円 | △130百万円 |
| 2025年7〜9月 | 196百万円 | 134百万円 | 212百万円 | △77百万円 | △121百万円 |
| 2025年10〜12月 | 141百万円 | 59百万円 | 256百万円 | △197百万円 | △131百万円 |
| 2026年1〜2月(2か月) | 103百万円 | 61百万円 | 145百万円 | △83百万円 | △217百万円 |
| 2026年3〜5月 | 80百万円 | 61百万円 | 241百万円 | △179百万円 | △179百万円 |
| 2026年6〜8月 | 115百万円 | 99百万円 | 237百万円 | △138百万円 | △144百万円 |
(百万円未満切り捨て。筆者の差し引き。前期の4四半期の合計は通期開示値と一致することを確認。前期中に子会社4社を売却しているため、連結の範囲は期をまたいで同じではない)
6四半期すべてが営業赤字で、販管費が四半期2億円を下回ったことは一度もありません(2か月の1〜2月を除く)。
2-3. 財政状態とキャッシュ・フロー
| 項目 | 2025年3月末 | 2025年12月末 | 2026年2月末 | 2026年5月末 | 2026年8月末 |
|---|---|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 211百万円 | 64百万円 | 89百万円 | 74百万円 | 33百万円 |
| 短期借入金 | 25百万円 | 68百万円 | 227百万円 | 352百万円 | 402百万円 |
| 純資産 | 235百万円 | 55百万円 | △223百万円 | △402百万円 | △547百万円 |
(百万円未満切り捨て。2025年12月末は前期の第3四半期短信の値)
この表のポイントは3つです。
- 純資産は2025年12月末にはまだプラス(55百万円)でした。 債務超過になったのは前期の最後の2か月(2026年1〜2月)で、この2か月の純損失2億17百万円には、子会社売却に伴う関係会社株式売却損(前期通期で1億26百万円)が含まれます
- 8月末の負債は合計8億39百万円。借入金は短期4億02百万円、1年以内に返す長期35百万円、長期1億29百万円で、合計5億66百万円です
- 現金は半年で89百万円から33百万円に減り、その間に短期借入金が1億75百万円増えています
上半期のキャッシュ・フローは、営業活動△2億22百万円、投資活動+8百万円(差入保証金の回収40百万円、PERMITS AI INC.の取得31百万円など)、財務活動+1億57百万円(短期借入金の純増1億75百万円、長期借入金の返済17百万円)でした。営業キャッシュ・フローの内訳には「その他」として60,000千円のプラスがありますが、中身は開示されていません。
支払利息は上半期で18百万円でしたが、利息の支払額は2百万円です。後で見るとおり、主な借入先の一つとは「利息は返済期日に元本と併せて支払う」契約になっており、利息の多くはまだ払われずに積み上がっていると読めます。
用語メモ:継続企業の前提に関する注記は、会社が「事業を続けられるかに重要な疑いを生じさせる状況があり、その解消策にも重要な不確実性がある」と認めたときに財務諸表に付ける注記です。ASJは前期末から付けており、今回の中間短信・半期報告書にも付いています。これと似た言葉に、有価証券報告書の「事業等のリスク」に書く「継続企業の前提に関する重要事象等」がありますが、こちらは不確実性が「重要」とまでは判断していない段階でも書かれるもので、注記とは別物です。ASJは両方に記載しています。
会社が注記に挙げた対応策は、①収益構造の改善(スタジオ数の回復、環境関連製品の導入提案など)、②販管費の削減(営業人員の再配置、Web活用、管理可能経費の削減)、③事業シナジーのある企業との資本・業務提携の模索、の3つです。
3. 深掘り①:下期に置かれた「売上5.8倍、販管費は半分」
この記事の問いは1つです。2027年2月末に、ASJの純資産はプラスに戻るのか。 戻る道は、事業で稼ぐか、株主から資本を入れてもらうかの2つしかありません。まず1つ目の道、つまり会社予想が下期の事業に何を置いているかを見ます。
3-1. 残り期間の含み
通期予想から上半期の実績を引くと、予想が下期(2026年9月〜2027年2月)に置いている数字が出ます。
| 項目 | 上半期実績(3〜8月) | 通期予想 | 予想が下期に置いた分(9〜2月) | 前期の下期(10〜2月、5か月) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 196百万円 | 1,332百万円 | 1,135百万円 | 244百万円 |
| 営業損益 | △318百万円 | 48百万円 | 366百万円 | △281百万円 |
| 経常損益 | △321百万円 | 38百万円 | 359百万円 | △278百万円 |
| 純損益 | △323百万円 | 38百万円 | 361百万円 | △348百万円 |
(百万円未満切り捨て。下期の値は筆者の差し引き。前期の下期は決算期変更のため5か月分)
この表のポイントは2つです。
- 下期の売上は上半期の5.8倍です。上半期の進捗率は14.7%にとどまります
- 営業損益は、上半期の3億18百万円の赤字から、下期は3億66百万円の黒字へ、半年で6億84百万円の振れ幅を置いています。前期の下期は2億81百万円の赤字でした
用語メモ:「予想が下期に置いた分」は、通期予想を据え置いたまま上半期の実績を差し引いた計算上の数字です。会社が下期の予想として別に発表したものではありません。会社は上期・下期に分けた予想を開示していません。
3-2. 中期経営計画の表で分けると
会社は2026年6月5日の「事業計画及び成長可能性に関する事項(中期経営計画フェニックス)」で、今期の計画を事業別の売上・粗利と、販管費まで分けて示しています。この計画値から上半期の実績を差し引くと、下期の中身が見えます。
| 項目 | 上半期実績 | 中計資料の今期計画 | 下期に残る分 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 196.2百万円 | 1,334百万円 | 1,137.7百万円 |
| 売上総利益 | 160.7百万円 | 758百万円 | 597.2百万円 |
| 販管費 | 479.0百万円 | 710百万円 | 230.9百万円 |
| 営業利益 | △318.2百万円 | 48百万円 | 366.2百万円 |
(上半期実績と下期の分は百万円の小数第1位未満を切り捨て。中計資料の計画表から筆者が差し引いた試算。中計資料の売上合計は1,334百万円で、決算短信の通期予想1,332百万円と2百万円ずれている)
この表から分かるのは、次の2つです。
- 下期の売上総利益は上半期の約3.7倍を置いています
- **下期の販管費は約2億31百万円、上半期(4億79百万円)の48.2%**です。四半期に直すと約1億15百万円で、直近の第2四半期(2億37百万円)の半分以下、3か月の四半期では過去6四半期で最も少なかった2025年7〜9月(2億12百万円)と比べても約半分です
つまり、計画どおりに着地するには、売上を大きく増やすことと、本部の費用を半分にすることが同時に必要になります。
ただし注意点があります。この計画は上半期の結果が出る前(6月)に作られたものです。会社は販管費の計画を期中に見直したかどうかを開示していません。上半期の時点で、通期の販管費計画7億10百万円の67.5%をすでに使っており、「下期の販管費が半分」は会社の新しい見通しではなく、計画を据え置いたまま差し引いた計算上の結果です。
3-3. 売上は何で立てる計画か
中計資料の今期計画では、売上1,334百万円のうち754百万円が環境関連事業です。
| 区分(中計資料の計画表) | 売上計画 | 粗利計画 |
|---|---|---|
| 環境関連:コルゲートarchitecture | 303百万円 | 45百万円 |
| 環境関連:新技術(床・窓のコーティング) | 351百万円 | 103百万円 |
| 環境関連:ALIN | 100百万円 | 100百万円 |
| 海外・IT事業 | 50百万円 | 50百万円 |
| 上記以外(建築家提案事業側) | 530百万円 | 460百万円 |
| 合計 | 1,334百万円 | 758百万円 |
(中計資料の計画表から筆者が読み取った。「上記以外」は合計から環境関連と海外・ITを引いた残りで、表の区分名の対応は筆者の読み取り)
上半期の実績と並べると、環境関連事業は計画754百万円に対して17百万円(2.3%)、海外・IT事業は50百万円に対して1百万円です。建築家提案事業側は530百万円に対して177百万円(33.5%)でした。
お見合いの仕組み(建築家提案事業)だけで計画を達成しても、下期に必要な売上の3割程度しか埋まりません。 下期の売上の大半は、上半期にほぼ売上が立っていない環境関連事業の、コルゲート建築とコーティングの販売に置かれています。会社は半期報告書で、富士山富士宮口五合目の来訪者施設の整備事業での採用決定や、大手運送会社の荷捌き施設の商談を挙げています。ただ、これらの受注金額や売上計上の時期は開示されていません。
粗利の面では、コルゲート建築(粗利率約15%)とコーティング(約29%)は、お見合いの仕組み(上半期の粗利率81.9%)よりずっと粗利率の低い商材です。連盟本部が加盟料ではなく、自分で建材を売って稼ぐ計画になっている、とも言えます。
3-4. ここまでのまとめ
1つ目の道(事業で稼ぐ)について、会社予想は下期に営業利益3億66百万円・純利益3億61百万円を置いています。予想どおりなら、期末の純資産は△5億47百万円+3億61百万円=△1億85百万円です。
会社予想が当たったとしても、事業の稼ぎだけでは債務超過は解消しません。 これは会社自身も認めています。2026年5月29日の上場維持基準の計画で、会社は今期の経常利益の見込み38百万円では2027年2月末までに債務超過を解消できないとし、資本・業務提携を進めると書いています。
そこで2つ目の道、株主から資本を入れてもらう道を見ます。
4. 深掘り②:MSワラントで、何株がいくらで売れればいいのか
前章で、事業の稼ぎだけでは足りないことが分かりました。ここでは、9月28日に決議した新株予約権がどれだけ穴を埋められるかを、株価と株数の掛け算で示します。
4-1. 第5回新株予約権の仕組み
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 割当先 | EVO FUND(提案者はEVOLUTION JAPAN証券) |
| 発行数 | 280,000個(1個100株、潜在株式2,800万株) |
| 発行済株式に対する比率 | 24.38%(発行済114,860,220株) |
| 発行価額 | 1個15円(総額4,200,000円)。10月14日払込 |
| 当初行使価額 | 115円(決議日の直前取引日9月25日の終値と同額) |
| 行使価額の修正 | 毎取引日。修正日に先立つ5連続取引日の終値のうち最も低い値の100% |
| 下限行使価額 | 58円(115円の50%を切り上げ)。下回る場合は58円 |
| 上限行使価額 | なし |
| 行使期間 | 2026年10月15日〜2027年5月17日 |
| 部分コミット① | 2026年12月25日までに35,000個(350万株)以上を行使 |
| 部分コミット② | 2027年2月10日までに112,000個(1,120万株)以上を行使 |
| 想定調達額 | 全部を当初行使価額で行使した場合3,224,200,000円(差引手取概算3,215,921,000円)。下限行使価額で全部行使された場合1,628,200,000円 |
| 同時発行の社債 | 第1回無担保社債1億円(利率0.0%、9月29日払込、2027年5月17日償還)。行使代金の累計が250万円に達するごとに、その分を繰り上げて償還する |
(出所:2026年9月28日の適時開示・有価証券届出書)
用語メモ:**行使価額修正条項付き新株予約権(MSワラント)**は、引受先が株を受け取るときに払う価格(行使価額)が、その時々の株価に合わせて動く新株予約権です。株価が下がれば行使価額も下がり、同じ金額を集めるのに必要な株数が増えます。引受先は受け取った株を市場で売ることを前提にしていることが多く、ASJの開示でもEVO FUNDの保有目的は「短期保有」、取得した株式は売却する前提とされています。部分コミットは、引受先が期限までに一定数以上を行使すると約束したものです。ただし、株価が下限行使価額以下で終わった日などは期限が延び(①は最大5取引日、②は最大10取引日)、延長の上限を超えると約束は消えます。
2点を補足します。
- 行使価額は「直前5日の最安値」なので、10月20日時点では10月14〜20日の終値(96円・92円・90円・87円・84円)のうち最も低い84円が目安になります(筆者の計算)
- コミット②の112,000個は発行数の40%です。届出書の文言から、筆者は「2月10日までに累計で112,000個」と読んでいます
4-2. 純資産をプラスにするのに必要な行使額
期末(2027年2月末)の純資産は、次の足し算で決まります。
期末の純資産 = 8月末の純資産(△547百万円)+ 下期の純損益 + 新株予約権の行使額 + 新株予約権の発行価額(4.2百万円)
下期の純損益を3通り置くと、プラスにするのに必要な行使額と株数は次のとおりです。
| 下期の純損益の置き方 | 必要な行使額 | 行使価額58円なら | 84円なら | 115円なら |
|---|---|---|---|---|
| 会社予想どおり(+362百万円) | 181百万円 | 312万株 | 215万株 | 157万株 |
| 下期は損益ゼロ | 543百万円 | 936万株 | 646万株 | 472万株 |
| 上半期並みの赤字(△324百万円) | 867百万円 | 1,494万株 | 1,032万株 | 754万株 |
(筆者の試算で、将来の見通しではない。行使額は行使価額×株数。発行諸費用は考慮していない。四捨五入のため、3章で切り捨てで3億61百万円とした下期の純利益は+362百万円と表示)
この表のポイントは2つです。
- 会社予想どおりなら、コミット①(350万株)の範囲で足ります。 下期が損益ゼロなら、株価84円で646万株、つまりコミット①を超えてコミット②(1,120万株)までの途中の量が必要です
- 下期も上半期並みの赤字なら、株価84円でも1,032万株、ほぼコミット②の全量が必要です。下限の58円まで株価が下がっていれば、コミット②の量(1,120万株)でも届きません
4-3. 期末の純資産の感応度表
同じ足し算を、行使される株数と行使価額の組み合わせで並べます。
| 下期の純損益 | 行使される株数 | 行使価額58円 | 84円 | 115円 |
|---|---|---|---|---|
| 会社予想どおり(+362百万円) | 350万株(コミット①) | 22百万円 | 113百万円 | 222百万円 |
| 会社予想どおり(+362百万円) | 1,120万株(コミット②) | 469百万円 | 760百万円 | 1,107百万円 |
| 会社予想どおり(+362百万円) | 2,800万株(全部) | 1,443百万円 | 2,171百万円 | 3,039百万円 |
| 下期は損益ゼロ | 350万株 | △340百万円 | △249百万円 | △140百万円 |
| 下期は損益ゼロ | 1,120万株 | 107百万円 | 398百万円 | 745百万円 |
| 下期は損益ゼロ | 2,800万株 | 1,081百万円 | 1,809百万円 | 2,677百万円 |
| 上半期並みの赤字(△324百万円) | 350万株 | △664百万円 | △573百万円 | △464百万円 |
| 上半期並みの赤字(△324百万円) | 1,120万株 | △217百万円 | 74百万円 | 421百万円 |
| 上半期並みの赤字(△324百万円) | 2,800万株 | 757百万円 | 1,485百万円 | 2,353百万円 |
(筆者の試算で、将来の見通しではない。期末の純資産=△547百万円+下期の純損益+行使額+4.2百万円。行使はすべて期末までに行われると仮定。発行諸費用・行使にかかる費用は考慮していない。四捨五入)
表の読み方は1つです。マイナスのマスに着地すると、上場維持基準の純資産の基準を満たせません。 マイナスのマスは、「行使が350万株にとどまる」か「下期が赤字で、しかも株価が低い」組み合わせに集中しています。
ここで、行使価額の決まり方がもう一つの論点になります。行使価額は株価に連動し、株価が下がれば行使価額も下がります。そして株価が下限の58円を下回ると、EVO FUNDは市場より高い58円で株を受け取ることになるので、行使は事実上止まります(コミットも期限延長の事由に当たり、延長の上限を超えれば消える)。10月20日の終値84円から58円までの距離は△31%です。
4-4. 流通株式比率への効果
上場維持基準のもう一つの未達項目、流通株式比率(基準25%以上)は、2026年2月末時点で16.2%でした。
用語メモ:流通株式比率は、上場株式のうち、役員や10%以上を持つ大株主(主要株主)などが持つ株を除いた「市場で売り買いされうる株」の割合です。
2月末に流通株式比率が低かった背景には、株主名簿の上で10%以上を持つ株主が3者いたことがあります(後述)。8月31日の株主名簿ではそのうち2者が主要株主ではなくなり、会社は9月28日の開示で、流通株式比率は「現状約60%」としています。新株予約権の開示では、EVO FUNDが取得した株を売却すれば流通株式比率がさらに上がる(コミット①で2.96%、コミット②で8.88%)と試算しています。
つまり、上場維持基準の2つの未達項目のうち、残っている難所は純資産のほうです。流通株式比率の正式な判定は期末(2027年2月末)の株主名簿で行われます。
5. 深掘り③:時間の問題——10月31日の返済期限と、行使代金の使い道の順番
前章で「何株がいくらで売れれば期末に間に合うか」を見ました。ただ、期末までの4か月の間にも現金は出ていきます。ここでは、その時間の順番を見ます。
5-1. 借入先と期限
会社の開示で借入先が分かっているものを並べます。
| 借入先 | 金額 | 利率 | 期限 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| エクスプレスウェイ・エンタープライゼス・リミテッド(香港、投資業) | 60百万円(2026年2月20日)+120百万円(4月14日) | 年10% | 当初6月30日→9月30日に延長。有価証券届出書では10月31日 | 4月14日・8月14日の開示、届出書 |
| 同上 | 50百万円(8月14日) | 年10% | 2027年2月28日 | 8月14日の開示 |
| 大通投資株式会社 | 60百万円 | 開示なし | 2026年10月31日 | 届出書 |
| TREASURE LINK ENTERPRISES LIMITED | 60百万円 | 開示なし | 2026年10月31日 | 届出書 |
エクスプレスウェイ社について、会社は「当社の筆頭株主であり取締役であるベーア・ディミトリー・フィリップ氏の紹介先」と開示しています。担保・保証はなく、利息は返済期日に元本と併せて支払う契約です。
有価証券届出書には、10月31日に返済期限が来る借入が合計3億円ある旨が書かれています(エクスプレスウェイ社180百万円、大通投資60百万円、TREASURE LINK 60百万円。届出書の記載では個別の内訳が読み取りにくい箇所がある)。会社は届出書で、借入金の借換えが従前の条件で成立するかは不確実だと書いています。なお、2026年10月31日は土曜日です。
5-2. 行使代金の使い道の順番
会社は資金使途に優先順位を付けています。
| 順位 | 使途 | 金額 |
|---|---|---|
| ① | 社債の償還 | 100百万円 |
| ② | 返済期限が来る借入金の返済 | 579百万円 |
| ③ | 建築家提案事業の強化(スタジオ募集の営業・設備、人材、事務所の移転・閉鎖、DX) | 341百万円 |
| ④ | 環境関連事業(ALINの共同施設等700百万円、研究開発、コルゲート、フィルム、コーティング) | 1,161百万円 |
| ⑤ | 海外・IT事業(AI都市設計プラットフォーム等の開発) | 380百万円 |
| ⑥ | 運転資金 | 653百万円 |
(出所:9月29日の補足説明資料。合計は3,214百万円で、届出書の差引手取概算3,215百万円とほぼ一致。各使途の実施時期は記載されていない)
この表のポイントは、最初の6億79百万円(①+②)は、すでにある負債の返済に回ることです。②の5億79百万円は、8月末の借入金合計5億66百万円を上回る額で、差の内訳は開示されていません。
時間の順番に直すと、次のようになります(筆者の整理)。
- 8月末の現金は33百万円。9月29日に社債で1億円が入った
- 上半期の営業キャッシュ・フローは△2億22百万円で、月あたり約37百万円が出ていった
- 行使代金の最初の1億円は、社債の繰上償還に回る
- そのあとの行使代金が、10月31日期限の3億円を含む借入の返済に回る
株価84円で計算すると、社債の償還(1億円)と10月31日期限の3億円を行使代金だけで賄うには、累計4億円・約476万株の行使が必要です(筆者の試算)。これは10月15日〜30日の12取引日で、コミット①(12月25日までに350万株)より多い量です。10月31日の返済が、行使代金で行われるのか、期限の延長・借換えで行われるのかは、11月上旬に出る行使状況の開示や、借入に関する開示で分かります。
5-3. 3つの深掘りをつなぐ
ここまでの3つは、1本の線でつながっています。
- 事業の稼ぎ(3章):会社予想どおりでも、期末の純資産は△1億85百万円。下期に売上5.8倍・販管費半分を置いた予想
- 株主の資本(4章):不足分を埋めるのは、株価に連動するMSワラント。下期が赤字なら、株価84円でコミット②の量がほぼ必要
- 時間(5章):行使代金はまず社債と借入の返済に回り、事業への投資(③〜⑤)はその後
連盟本部の例えに戻ると、加盟店の会費(お見合いの仕組み)は上半期にほぼ収支トントンでした。赤字は、本部の費用と、本部が始めた新しい事業から出ています。そして本部の家計の穴は、加盟店ではなく、市場で株を買う投資家が埋める形になっています。
6. セグメントとイベントの補足
6-1. セグメント別の四半期
| セグメント | 第1四半期(3〜5月)売上 | 同 損益 | 第2四半期(6〜8月)売上 | 同 損益 |
|---|---|---|---|---|
| 建築家提案事業 | 68百万円 | △29百万円 | 108百万円 | 28百万円 |
| 環境関連事業 | 11百万円 | △23百万円 | 5百万円 | △46百万円 |
| 海外・IT事業 | 0百万円 | △72百万円 | 0百万円 | △68百万円 |
| 全社費用(調整額) | — | △52百万円 | — | △51百万円 |
(百万円未満切り捨て。第2四半期は筆者の差し引き。海外・IT事業の売上は第1四半期787千円、第2四半期925千円)
建築家提案事業は第2四半期に黒字(28百万円)へ転じました。会社は、工事請負・設計監理で契約のずれ込みがあったこと、退会スタジオの影響でロイヤリティが減ったことを挙げています。一方、環境関連事業は売上が減って赤字が広がり、海外・IT事業は四半期約70百万円の赤字が続いています。
前期の区分では、前期(11か月)のセグメント利益合計は1億59百万円の黒字で、全社費用(調整額)が△7億18百万円でした。前々期の全社費用は△2億46百万円です。今期上半期の全社費用は△1億04百万円で、会社は新区分の説明で「各事業単位の事業収支の明確化」を挙げています。区分が変わったため、全社費用の縮小がどこまで本当の削減かは、前期と同じ物差しでは確かめられません。
6-2. 連結範囲の変化
- PERMITS AI INC.(カナダ・トロント):2026年3月31日に全株式(750,000株)を325,000米ドル(51,886,250円)で取得し、完全子会社化。のれん31百万円(5年均等償却)。取得時点で休眠状態で、売上・損益の計上項目はないと開示されています。会社は半期報告書で、ベーア氏のネットワークを背景にした買収と書いています。損益は2026年6月1日〜8月31日分を連結しています
- ESJ株式会社(電気設備工事):2026年6月1日に1円で売却。譲渡先は当社と資本・人的関係のないコンサルティング会社(当社が業務委託をしていた先)。6月1日の開示では、関係会社株式売却損を連結54百万円・単体42百万円計上する見込みとしていました。中間短信では単体の売却損42百万円が書かれていますが、中間連結損益計算書の特別損失はゼロです。連結で損失が出なかった理由は開示されていません
- 前期中には、MED、トルネードジャパン、SUPASPACE(シンガポール)の子会社3社と持分法適用関連会社のチャミ・コーポレーションを手放しています。会社は、事業シナジーが得られず資金流出が懸念されたためと説明しています
6-3. 開示の中で数字が合わない箇所
批判ではなく、読者が書類を照合するときの手がかりとして並べます。
| 項目 | 書類Aの値 | 書類Bの値 |
|---|---|---|
| 中間の1株当たり純損失 | △3.33円(期中平均97,324,454株で計算) | 期末株数114,740,760株なら△2.82円(第1四半期の期中平均は114,740,760株) |
| 通期の予想EPS(純利益予想38百万円) | 第1四半期短信:0.66円 | 通期短信・中間短信:0.33円(38百万円÷114,740,760株=0.331円で再現) |
| 第1四半期の建築家提案事業の売上 | 外部顧客への売上高:68,595千円 | 同じ表の「計」:65,595千円(3セグメントの合計80,826千円は前者で成立) |
| ESJ売却の連結特別損失 | 6月1日の開示:54百万円の見込み | 中間連結損益計算書:特別損失ゼロ |
| スタジオ数 | 通期短信:63か所(ピーク210か所) | 半期報告書:67か所(ピーク201か所) |
| 今期の売上計画 | 中計資料:1,334百万円 | 決算短信の予想:1,332百万円 |
0.66円は、どの株数で割っても純利益予想38百万円と結びつかないため、本記事では使っていません。予想EPSは0.33円を使います。
7. 資本政策と株主還元
ASJは無配で、ここ数年は資本の出入りが業績以上に会社の形を変えています。このセクションは「還元」ではなく、希薄化と需給の管理情報として読んでください。
7-1. 配当・優待・権利付き最終日
- 配当:2025年3月期・2026年2月期とも0円、2027年2月期の予想も0円(中間0円・期末0円)。通期短信に配当方針の文章はありません
- 株主優待:Yahoo!ファイナンスの優待ページには「株主優待情報はありません」と表示されています。有価証券報告書の「株主に対する特典」欄と会社IRサイトは本記事では確認していないため、「制度がない」とまでは書きません
- 権利付き最終日:期末日の2027年2月28日は日曜日です。基準日が期末日であれば、直前の営業日2月26日(金)から2営業日さかのぼった**2月24日(水)**が権利付き最終日です(2月23日は祝日)。無配のため、意味があるのは議決権だけです
7-2. 株数の推移
| 時点 | 出来事 | 発行済株式数 |
|---|---|---|
| 2024年3月28日 | 第三者割当による新株55万株、第4回新株予約権8,000個の発行 | — |
| 2025年3〜5月 | 第4回新株予約権の行使(行使の開示が複数回) | — |
| 2025年4月 | 1株を3株に分割 | — |
| 2026年2月末 | — | 11,486,022株(自己株式11,946株) |
| 2026年4月24日 | 1株を10株に分割 | 114,860,220株 |
| 2026年8月末 | — | 114,860,220株(自己株式119,460株) |
| 2026年10月15日〜 | 第5回新株予約権の行使期間(最大2,800万株) | 全部行使なら142,860,220株 |
2026年2月末の連結貸借対照表に新株予約権の計上はありません。第4回新株予約権が残っていれば計上されるはずなので、筆者は残りはないと読んでいます。現在の潜在株式は、第5回新株予約権の2,800万株です。
用語メモ:株式分割は1株を複数に分けるだけなので、会社の価値も株主の持分割合も変わりません。この記事の株価と1株当たりの数字は、すべて2026年4月の10分割後の株数に直しています。
7-3. 大株主の状況と貸株
2026年8月31日の株主名簿に基づく半期報告書の大株主(上位3名)は次のとおりです。
| 株主 | 所有株式数 | 比率(自己株式を除く発行済に対する) |
|---|---|---|
| CORE PACIFIC-YAMAICHI INTERNATIONAL (H.K.) LIMITED A/C CLIENT | 16,298,200株 | 14.20% |
| 丸山 雄平(代表取締役社長) | 11,208,000株 | 9.77% |
| 魚落 美栄子 | 2,552,200株 | 2.22% |
半期報告書の注記には、次の内容が書かれています(要旨)。
- 2026年8月21日に縦覧された大量保有報告書の変更報告書では、BEHR DIMITRI PHILIP氏(取締役、東京都港区)が27,113,470株(株券等保有割合23.61%)を保有している
- 同氏は株券貸借契約により、ピークユナイテッドマネジメントリミテッドに27,000,000株を貸している
- 会社は8月24日と9月25日に、同氏から「売却はしておらず、実質的所有者は引き続き同氏である」との説明を口頭で受けたが、8月31日時点の同氏の実質所有株式数は書面で確認できないため、大株主の状況は株主名簿どおりに記載した
9月25日の主要株主の異動の開示では、会社はCORE PACIFIC社を株主名簿上の第1位としつつ、同氏が実質的所有者だと認識しているとしています。CORE PACIFIC社の名義の株と、貸し出された2,700万株の関係について、会社はそれ以上の説明をしていません。本記事でもそれ以上は結びつけません。
株主名簿で10%以上を持つ株主の顔ぶれは、この1年で大きく入れ替わりました。
| 基準日 | 10%以上の株主(株主名簿・会社開示ベース) |
|---|---|
| 2025年2月26日 | アパマンネットワークとケイアイホールディングスから、ベーア氏が807,149株(分割前)を1株950円で相対取得し、筆頭株主に(会社は、取得価格は譲渡日の株価の217.39%と開示) |
| 2025年9月30日 | SIX SIS LTD. 21.18%(第1位)、ベーア氏 21.10%、SAXO BANK A/S 13.51% |
| 2025年12月5日 | ベーア氏が変更報告書で23.63%となり第1位に |
| 2026年2月28日 | SAXO BANK 22.89%(第2位)、SIX SIS 21.83%(第3位) |
| 2026年8月31日 | SAXO BANKとSIX SISは主要株主でなくなり、CORE PACIFIC 14.21%が新たに主要株主に |
(比率は各開示の分母による。SAXO BANKとSIX SISは大量保有報告書を提出しておらず、詳細は不明と会社は開示している)
ベーア氏の取得価格950円は、2回の分割(3分割・10分割)を合わせると現在の株数で約31.7円に当たります(筆者の換算)。
用語メモ:**大量保有報告書の「株券等保有割合」**は自己株式を含む発行済株式総数が分母、大株主表の比率は自己株式を除いた株数が分母です。ASJは自己株式が少ないので差は小さいですが、同じ株主でも書類によって比率がわずかに違います。
7-4. 流通株式比率と株価の動き(事実の並置)
貸株の変更報告書が縦覧された8月21日を含む8月21〜28日の6取引日の出来高は合計1億6,844万株(1日平均約2,807万株)で、8月3〜14日の1日平均(約214万株)の10倍以上でした。株価は8月20日の100円から8月26日に235円まで上がり、その後9月25日には115円まで下がっています(いずれも東証終値)。これは日付と数字を並べただけで、貸株・名簿の変化と値動きの因果関係は分かりません。
7-5. 上場維持基準の3点表
2026年5月29日の開示による、グロース市場の上場維持基準への適合状況です。
| 基準(基準値) | 2025年3月末 | 2026年2月末 |
|---|---|---|
| 株主数(150人) | 1,059人(適合) | 1,862人(適合) |
| 流通株式数(1,000単位) | 26,479単位(適合) | 18,609単位(適合) |
| 流通株式時価総額(5億円) | 12.9億円(適合) | 11.1億円(適合) |
| 流通株式比率(25%) | 69.2%(適合) | 16.2%(不適合) |
| 時価総額(40億円) | 18.7億円(不適合) | 69億円(適合) |
| 純資産の額(正) | 2.3億円(適合) | ▲2.2億円(不適合) |
| 期限の種類 | 日付 |
|---|---|
| 改善期間の期限(流通株式比率・純資産) | 2027年2月末 |
| 期限に満たせない場合 | 監理銘柄→整理銘柄に指定 |
| 上場廃止日(会社の開示) | 2027年9月1日 |
会社は10月16日の進捗の開示で、新株予約権の行使が進めば資本増強により純資産の回復が見込まれるが株価に左右される、行使が進まない場合は新たな財務改善策を検討する、と書いています。今後は四半期ごとに進捗を報告する予定です。
もう一つ、グロース市場には、2030年3月1日以後に到来する基準日から、上場5年を経過した会社に時価総額100億円以上を求める基準があります。2014年上場のASJも対象で、10月20日終値84円での時価総額は約96.5億円です。100億円に必要な株価は、現在の株数で約87.1円、新株予約権がすべて行使された後の株数で約70.0円です(筆者の試算。判定は事業年度末以前3か月の終値平均×上場株式数で行われる。最初の判定時期などの細部はJPXの規則原文で確認してください)。
7-6. 2025年からの経緯
資本の動きの背景にある出来事を、日付順に並べます。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年5月29日 | 決算期を3月から2月に変更する決議。会計監査人を桜橋監査法人から永和監査法人に交代(任期満了。監査工数の増加を理由とし、退任する監査法人は特段の意見なし) |
| 2025年7月25日 | 「元代表取締役で現取締役である者」の不正行為等に関する調査委員会を設置 |
| 2025年7〜10月 | 株主による臨時株主総会の招集請求が続く |
| 2025年8月12日 | 第1四半期決算の開示が四半期末から45日を超える旨を開示 |
| 2025年11月5日 | 臨時株主総会で取締役5名を解任、ベーア氏ら5名を選任 |
| 2025年11月13日 | 中間決算の発表を延期(調査結果の反映が必要として、半期報告書の提出期限の延長を申請) |
| 2025年12月29日 | 調査委員会の事実調査報告書を受領 |
| 2026年1月13日 | 中間決算を発表し、通期予想を大幅に下方修正。1月15日に訂正半期報告書を提出 |
| 2026年2月16日 | 第3四半期決算と通期予想の再度の下方修正 |
| 2026年3月4日 | 再発防止策を公表 |
| 2026年5月8日 | 通期決算短信を訂正(単元未満株式の買取による自己株式の増加12,390円の反映漏れ) |
| 2026年7月9〜10日 | 訂正有価証券報告書(株式の保有状況の明細の追加)、訂正内部統制報告書(評価範囲の記載)を提出 |
3月4日の再発防止策の開示によると、調査委員会は、交際費・会議費として精算された経費のうち819,299円を、現在の代表取締役社長(当時は元代表取締役で取締役)が不正に流用したと認定しました。それ以外の違法行為は認定されていません。現代表は2026年2月に全額を弁済し、ガバナンス委員会は代表取締役の留任に異議なしとの結論に至った、と会社は開示しています。再発防止策として、取締役の経費精算を監査等委員が承認すること、重要な契約を顧問弁護士が事前に確認することなどが挙げられています。
前期(11か月)の監査報酬は53,830千円で、前々期(25,500千円)の約2.1倍でした。2026年2月16日の予想修正では、管理部門の人員の大半が退社し、中間決算の取りまとめを外部に委託して支払手数料等が増えたことが修正理由の一つに挙げられています。
8. 株価の見方
8-1. 株価の基準点
| 日付 | 東証終値(10分割後) | メモ |
|---|---|---|
| 2025年10月6日 | 26.1円 | 1年前 |
| 2026年4月28日 | 640円 | 過去1年の最高終値 |
| 2026年8月14日 | 77円 | 8月の安値圏 |
| 2026年8月26日 | 235円 | 貸株の変更報告書の縦覧(8月21日)後の高値 |
| 2026年9月25日 | 115円 | 第5回新株予約権の当初行使価額と同額 |
| 2026年10月16日 | 90円 | 中間決算の発表日 |
| 2026年10月20日 | 84円 | 本記事の基準 |
(10月21日の11時30分時点の場中の値は82円)
10月20日終値84円で、時価総額は約96.5億円(発行済114,860,220株)です。新株予約権がすべて行使されると株数は1億4,286万株になります。
- 予想PER:予想EPS0.33円に対して約255倍(四捨五入)。純利益予想が損益分岐点の近くにあるため、指標としてほとんど意味を持ちません
- PBR:1株当たり純資産が△4.77円(8月末)のため計算できません
- 過去1年の値動き:1年前(26.1円)の約3.2倍、最高終値(640円)からは△86.9%
8-2. 決算発表への反応
半期報告書はEDINETで10月16日9時01分に提出され、中間決算短信と上場維持基準の進捗の開示は同日10時00分に公表されました。いずれも取引時間中です。10月16日は始値91円・高値94円・安値90円・終値90円(前日比△2.2%)、出来高は約205万株でした。高値・安値を付けたのが公表の前か後かは、日足では確認できません。
新株予約権の決議(9月28日16時30分、取引終了後)への最初の反応日は9月29日で、終値は101円(前日比△6.5%)、出来高は約694万株でした。
8-3. 強気の材料
- 流通株式比率の問題はほぼ片づいている:会社は「現状約60%」とし、基準の25%を大きく上回る見込み。残る難所は純資産の1つに絞られた
- 会社予想どおりなら、必要な増資は約1.8億円:株価84円で215万株、コミット①(350万株)の範囲に収まる
- お見合いの仕組みは黒字化した:建築家提案事業は第2四半期に28百万円の黒字。中計はスタジオ数を67か所から150か所(2030年2月期末)に戻す計画で、加盟店1軒あたりの収入が戻れば、元の粗利率の高い構造が戻る
- 行使の約束がある:EVO FUNDはコミット②で2月10日までに1,120万株の行使を約束している。株価84円なら約9.4億円で、下期が上半期並みの赤字でも純資産がプラスに届く計算
- 具体的な案件名が出ている:環境関連事業で、富士山五合目の施設整備事業での採用決定、大手運送会社の荷捌き施設の商談が開示されている
8-4. 弱気の材料
- 予想の作り方:前期は期中に3回下方修正し、着地は当初予想の売上の約2割。今期の予想は、下期に売上5.8倍・販管費半分(中計の計画値ベース)を置いている
- 希薄化と売り圧力:2,800万株は発行済の24.4%。MSワラントの引受先は取得した株を売却する前提で、株価が下がるほど同じ金額に必要な株数が増える。株価が下限58円を下回れば行使が止まり、純資産の回復も止まる
- 行使代金は、まず負債の返済に回る:最初の6億79百万円は社債と借入の返済。事業への投資に回るのはその後
- 10月31日の返済期限:3億円の返済期限が近く、手元の現金は8月末で33百万円。借換えが従前の条件で成立するかは不確実と会社自身が書いている
- 年10%の借入:筆頭株主の取締役の紹介先から、無担保・年10%で借りている。上半期の支払利息は18百万円
- 株主構成が読みにくい:筆頭株主の2,700万株は貸し出されており、会社自身が実質所有株式数を書面で確認できていない
- 継続企業の前提に関する注記:会社は「重要な不確実性が認められる」としている
同じ数字が両側に置ける点にも注意が要ります。「コミット②の1,120万株」は、強気側では「下期が赤字でも純資産がプラスに届く量」ですが、弱気側では「市場で売られうる発行済の9.75%分の株」です。
9. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 見るポイント |
|---|---|---|
| 2026年10月31日(土) | 借入3億円の返済期限(届出書の記載) | 返済されたか、延長・借換えされたか |
| 2026年11月上旬 | 10月の新株予約権の行使状況の開示 | 行使株数と平均行使価額。社債の繰上償還の進み具合 |
| 2026年12月25日(金) | 部分コミット①の期限(350万株) | 期限どおり達成されたか、延長されたか |
| 2027年1月 | 第3四半期決算(9〜11月)※前期の実績から筆者が推定した時期 | 下期の売上・販管費が予想の置いた形に近づいているか。純資産の残高 |
| 2027年2月10日(水) | 部分コミット②の期限(累計1,120万株) | 期限どおり達成されたか |
| 2027年2月28日(日) | 期末。上場維持基準の判定日(純資産・流通株式比率) | 純資産がプラスか。権利付き最終日は2月24日(水) |
| 2027年2月28日 | エクスプレスウェイ社からの50百万円の返済期限 | — |
| 2027年4月 | 通期決算 | 純資産、継続企業の前提に関する注記の有無、来期予想 |
| 2027年5月17日(月) | 新株予約権の行使期間の末日・社債の償還期日 | 残った新株予約権の扱い |
| 2027年9月1日(水) | 基準を満たせなかった場合の上場廃止日(会社の開示) | — |
見るべきKPIは5つです。
- 新株予約権の累計行使株数と平均行使価額(毎月の開示)
- 株価と下限行使価額58円との距離
- 四半期の販管費(下期の計画値ベースで四半期約1億15百万円)
- 環境関連事業の売上(今期計画754百万円、上半期17百万円)
- スタジオ数(67か所→2030年2月期末150か所の計画)
10. 3行まとめ
- 上半期は売上1億96百万円・営業赤字3億18百万円で、純資産は△5億47百万円。会社予想どおり下期に3億61百万円の純利益を出しても、期末の純資産は△1億85百万円にとどまる
- 残りはMSワラントの行使で埋める形で、必要な行使額は下期の損益次第で約1.8億〜8.7億円。株価84円なら215万〜1,032万株に当たり、株価が下限58円を下回れば行使は止まる
- 加盟店の会費で回るお見合いの仕組みは第2四半期に黒字化したが、本部の費用と新事業の赤字、10%金利の借入の返済が先に来る。11月上旬の行使状況と10月31日の返済の行方が、最初の確認点になる
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘や投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、アーキテクツ・スタジオ・ジャパンの決算短信(2027年2月期中間・第1四半期、2026年2月期通期・第3四半期)と同訂正、半期報告書(2027年2月期)、有価証券報告書(2026年2月期)と同訂正、訂正内部統制報告書、適時開示(新株予約権・社債の発行と補足説明資料、上場維持基準の計画と進捗、主要株主の異動、資金の借入、子会社の異動、株式分割、業績予想の修正、業績予想と実績との差異、公認会計士等の異動、再発防止策、臨時株主総会決議結果ほか)、有価証券届出書(2026年9月28日)、中期経営計画「フェニックス」の資料(事業計画及び成長可能性に関する事項)です。株価は東証の日次終値で、10月21日の値は場中の値です(報道ベース)。年初来高値・安値はYahoo!ファイナンスの表示を参照しました。「筆者の差し引き」「筆者の試算」「筆者の整理」「筆者の換算」と書いた数値は一次情報からの算出で、感応度表は将来の見通しではありません。 当四半期について決算補足説明資料・決算説明会はなく、会社の説明は短信の定性的情報と半期報告書の記載に基づきます。当四半期についての会社の追加説明・質疑応答は一切反映していません。中計資料の計画表は、事業区分の対応を筆者が表のレイアウトから読み取っています。決算発表は取引時間中(10時00分)で、当日の値動きが発表の前後どちらで生じたかは確認できません。有価証券届出書・補足説明資料は全文を通読できておらず、借入の個別の内訳や割当先の詳細など、本文で「開示なし」「読み取りにくい」と書いた項目は、筆者が確認できなかった範囲を含みます。株主優待の不在は、有価証券報告書の「株主に対する特典」欄と会社IRサイトでは確認していません。大量保有報告書の変更報告書は、半期報告書と会社の開示に引用された2026年8月21日縦覧分までを前提にしており、公開までに新たな変更報告書が出ている可能性があります。上場維持基準(時価総額100億円基準を含む)の細部は、JPXの規則原文で確認していません。調査委員会の事実調査報告書は本文を読んでおらず、再発防止策の開示の記載に基づいています。第3四半期決算の時期、10月31日の返済の扱い、新株予約権の行使の進み方は、いずれも本記事の執筆時点では分からず、筆者は推測していません。開示の中で数字が合わない箇所(6-3)は、理由を推測せず、0.66円の予想EPSは使っていません。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。