株式投資

ヒト・コミュニケーションズHD(4433) 売り場に人を送り込んできた会社が、空港では人と機材を先に揃えて飛行機を待つようになった会社 営業利益11.5億円は、なぜ株主の手元で1.7億円になったのか?【2026年10月発表・通期決算】

本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 2026年8月期は売上高621億円(前期比2.3%減)、営業利益11.5億円(同53.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1.67億円(同80.3%減)。7月の下方修正の数字に、営業利益はぴったり、純利益は少し上で着地した
  • 営業利益の減少13.5億円は「売上が減ったから」ではなく、販管費の増加(約8億円)が半分以上を占める。空港の地上業務(グランドハンドリング)は、便が減っても人と機材の費用が先に出ている
  • 営業利益11.5億円から純利益1.67億円までの道のりで、税金の負担率は68.1%、非支配株主(子会社の少数株主)への取り分は当期純利益の49.1%。儲かる子会社は83.5%保有、赤字の空港子会社は100%保有という持ち方がそのまま効いている
  • 2027年8月期の会社予想は営業利益17.25億円(49.9%増)。ただし上期は前期並みで、増益はほぼすべて下期(前年下期比136%増)に置かれている。過去3期、期初予想が置いた下期の達成率は12.1%・95.1%・22.2%
  • 配当は「累進配当(減配しない)」と「配当性向30%を目指す」の2つの方針を同時に掲げている。2026年8月期の配当性向は398.4%、2027年8月期の予想は125.8%で、2つの方針がどちらを優先しているかが数字に出ている
  • 株主優待(デジタルギフト)は2026年8月期分から、500株以上の区分に「1年以上保有」の条件が付いた。100株と499株で1株当たり優待額は5倍違う

1. どんな会社か:売り場に人を送り込んできた会社が、空港で飛行機を待つようになった

1-1. 「人を送り込む」が本業

家電量販店の携帯電話売り場に、メーカーや通信会社の名札をつけた販売員が立っているのを見たことがあると思います。あの販売員の多くは、通信会社やメーカーの社員ではなく、販売を請け負った会社が雇い、研修し、売り場に送り込んだ人です。ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス(以下ヒトコムHD)の祖業はこの仕事です。1998年に人材派遣会社として設立され、2005年にMBO(経営陣による買収)で親会社から独立しました(有価証券報告書の沿革)。

この会社の強みは、「どこかの現場に、必要な人数を、必要な日に、研修を済ませた状態で立たせる」仕組みを持っていることです。売り場の販売員から始まり、ホテル、イベント会場、プロスポーツの運営、そして空港へと、人を送り込む現場を広げてきました。2026年9〜10月のアジア競技大会では約800名の常勤スタッフで会場運営を支えたと説明資料に書かれています。

1-2. 空港では「人と機材を先に揃えて待つ」仕事になった

2023年7月、子会社のヒト・コミュニケーションズが成田空港の地上業務会社FMGを買収しました。グランドハンドリングとは、飛行機が着陸してから次に飛び立つまでの地上作業(旅客の搭乗手続き、手荷物の積み下ろし、機体の誘導、整備など)です。

売り場の販売員とは、ひとつ大きな違いがあります。売り場なら、仕事がない日は人を送らなければ費用は出ません。空港では、航空会社から便の受託が決まる前に、人を採用して半年かけて育て、トーイングトラクターやプッシュバックトラクター(航空機を押す車両)などの地上支援機材(GSE)を買っておく必要があります。そして便の数は、航空会社と国際情勢が決めます。

会社自身が2026年8月期第3四半期の説明資料で、空港の収益構造を「一定の受託便数までは原価は一定、便数が損益分岐を超えると利益率が高まる」と図解しています。人件費とGSEの償却費が固定で、便が1日8便なら利益が出て、2便なら赤字になる、という絵です。

これがこの記事の軸です。

  • 強み:人を集め、育て、現場に配置する網。売り場から空港まで同じ仕組みで広げられる
  • 弱み①(今の数字):空港では人と機材を先に抱えるので、便が減ると売上だけが減り、費用は残る
  • 弱み②(利益の流れ方):赤字の事業は100%自分で抱え、利益の出る事業は一部を他の株主と分け合っている。営業利益が株主の手元に届くまでに、思った以上に削られる

1-3. 事業の地図

決算短信上のセグメントは4つですが、会社は説明資料で「中核4社グループ」という別の切り方も示しています。こちらのほうが事業の実態が見えます。

中核グループ主な事業2026年8月期 売上高営業利益前期の営業利益ヒトコムHDの持分
ヒト・コミュニケーションズG販売支援・人材派遣・イベント・インバウンド31,140百万円763百万円1,082百万円100%
ビービーエフGECサイト運営受託・テレビ通販支援9,324百万円328百万円351百万円83.5%
ブランチ・アウトGIPライセンスを使った衣料・グッズの企画製造卸15,639百万円654百万円983百万円83.5%(ビービーエフ経由)
FMG G空港グランドハンドリング6,021百万円△481百万円206百万円100%(ヒト・コミュニケーションズ経由)
4グループ合計—62,124百万円1,264百万円2,622百万円—
連結—62,124百万円1,150百万円2,495百万円—

出典:グループ別の数字は2026年10月16日公表の決算説明資料、持分は2025年8月期有価証券報告書「関係会社の状況」。前期の営業利益は、説明資料の前年同期比の増減額から筆者が逆算した値。

この表のポイントは2つです。

1つ目は、前期との差13.5億円のうち、FMGの悪化が6.9億円、ブランチ・アウトの悪化が3.3億円、ヒト・コミュニケーションズGの悪化が3.2億円で、空港だけが原因ではないことです。

2つ目は、持分の列です。黒字のビービーエフとブランチ・アウトは83.5%保有で、赤字のFMGは100%保有です。これが第4章の「純利益が1.67億円しか残らなかった」理由のひとつになります。

なお、4グループ合計と連結の差(△114百万円、前期△127百万円)は持株会社の費用に当たると読めます。説明資料はこの点を明記していません。

用語メモ:非支配株主持分 子会社の株式を100%持っていない場合、子会社の利益のうち他の株主の持分に当たる部分は「非支配株主に帰属する当期純利益」として差し引かれ、親会社の株主のものにはなりません。逆に100%子会社の損失は、全額が親会社の株主の負担になります。

1-4. 業績の推移

決算期売上高営業利益営業利益率親会社株主に帰属する当期純利益EPSROE年間配当
2022年8月期64,130百万円——3,227百万円180.88円20.8%30.00円
2023年8月期63,980百万円4,198百万円6.6%1,885百万円105.70円10.8%31.00円
2024年8月期58,547百万円1,568百万円2.7%△43百万円△2.44円△0.2%35.00円
2025年8月期63,596百万円2,495百万円3.9%853百万円47.86円4.9%37.00円
2026年8月期62,124百万円1,150百万円1.9%167百万円9.41円1.0%37.50円
2027年8月期(会社予想)65,544百万円1,725百万円2.6%532百万円29.82円—37.50円

出典:2022〜2025年8月期は2025年8月期有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」(2022年8月期の営業利益は同表に記載がないため空欄)、2023・2024年8月期の営業利益は各期の決算短信、2026年8月期と予想は2026年8月期決算短信。

FMGを買収した2023年8月期以降、営業利益率は6.6%から2〜4%の帯に下がり、その中で上下しています。一方で配当は毎年増えるか据え置きで、一度も減っていません。

株主優待:制度あり(第7章)。

1-5. 会社予想の達成履歴

この会社の予想を読む前提として、過去3期の予想がどう動いたかを並べます。

決算期期初予想(営業利益)期中の修正(開示日)実績期初予想比期初予想の前期実績比
2024年8月期4,350百万円(2023年10月12日)2,450百万円(2024年4月15日、下方)1,568百万円(期末後に差異開示)△64.0%+3.6%
2025年8月期2,000百万円(2024年10月15日)2,200百万円(2025年4月14日、上方)2,495百万円+24.8%+27.6%
2026年8月期2,800百万円(2025年10月14日)1,150百万円(2026年7月15日、下方)1,150百万円△58.9%+12.2%
2027年8月期1,725百万円(2026年10月14日)———+50.0%

期初予想の前期実績比は、百万円単位の金額どうしで計算した筆者の値(2027年8月期は短信の表記では+49.9%)。

この表のポイントは、3期のうち2期で期初予想から6割前後下に着地し、1期は25%上に着地していることです。上にも下にも大きく動く会社の予想だ、という前提でこの先を読んでください。

上期予想も同じで、2024年8月期は予想比△33.7%、2025年8月期は+77.5%(途中で上方修正した予想からも+22.9%)、2026年8月期は△19.0%でした。

もうひとつ、期初予想が下期にいくら置いていたかを並べます。通期予想から上期予想を引いた値です。

決算期期初予想が置いた下期の営業利益実際の下期達成率
2024年8月期2,427百万円294百万円12.1%
2025年8月期1,280百万円1,217百万円95.1%
2026年8月期1,900百万円421百万円22.2%
2027年8月期995百万円——

2027年8月期の予想が置いた下期995百万円は、過去3期の期初予想の中で最も小さく、2025年8月期の実際の下期(1,217百万円)も下回ります。この数字の読み方は第5章で扱います。

2. 決算ハイライト

2-1. 損益

項目2025年8月期2026年8月期増減7月15日の修正予想修正予想比
売上高63,596百万円62,124百万円△2.3%62,260百万円△136百万円
売上総利益12,912百万円12,366百万円△4.2%——
粗利率20.3%19.9%△0.4pt——
販管費10,416百万円11,215百万円+7.7%——
営業利益2,495百万円1,150百万円△53.9%1,150百万円±0
経常利益2,504百万円1,031百万円△58.8%1,065百万円△34百万円
親会社株主に帰属する当期純利益853百万円167百万円△80.3%152百万円+15百万円

出典:2026年8月期決算短信(2026年10月14日15時30分発表)、2026年8月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ(2026年7月15日)。

7月の修正予想が残り3か月(6〜8月)に置いていた営業利益は1,150−1,102=48百万円で、実際も48百万円でした。純利益は、修正予想が置いた残り3か月△109百万円に対し、実際は△94百万円です。

7月15日の修正理由を、会社は次のように書いています(原文)。

当社グループの注力事業である「エアポートセクター」の「空港グランドハンドリング事業」において、日中関係の悪化に起因して昨年11月以降中国からの国際線の減便が継続していること並びに中東情勢の悪化に伴う航空燃料の価格高騰等の影響でASEANを中心とした国際線の減便により、顧客企業からの受託収入が減少するとともにスタッフの稼働率低下により収益性の悪化が見込まれております。また、IPライセンスを活用した「ホールセールセクター」においても、円安の急速な進行に伴う海外での生産コストの上昇や物流コストの高止まり等により、収益性の悪化が見込まれることから、従来の通期連結業績予想を上記のとおり修正いたしました。

2-2. 営業利益の減少を3つに分ける

「売上は2.3%しか減っていないのに、営業利益はなぜ半分以下なのか」を、数量効果・率効果・販管費の3つに分けます。

要因計算営業利益への影響
数量効果(売上が減った分)売上の減少△1,471百万円×前期の粗利率20.3%△299百万円
率効果(粗利率が下がった分)粗利率の低下×当期の売上△247百万円
販管費の増加11,215−10,416△799百万円
合計—△1,345百万円(実際の減少と一致)

筆者の計算。各項目は四捨五入。

この表のポイントは、減益の6割近くが販管費の増加だということです。販管費が増えた理由を短信は内訳で説明していませんが、第3四半期の説明資料は「全国一括受託に向けた先行投資(人員・機材)」と「地方創生事業の開業コスト先行」を挙げています。軸に戻ると、空港で人と機材を先に揃えた費用が、便の減少で売上に結びつかなかった、という形です。

2-3. 財政状態とキャッシュ・フロー

項目2025年8月末2026年8月末増減
現金及び預金12,133百万円11,612百万円△521百万円
短期借入金100百万円2,634百万円+2,534百万円
長期借入金(1年内返済分を含む)8,054百万円7,656百万円△398百万円
機械装置及び運搬具(純額)1,270百万円1,988百万円+718百万円
のれん6,106百万円5,399百万円△707百万円
純資産18,907百万円18,528百万円△379百万円
自己資本比率42.6%42.5%△0.1pt
キャッシュ・フロー2025年8月期2026年8月期
営業活動3,406百万円△284百万円
投資活動△3,600百万円△2,115百万円
財務活動△2,033百万円1,539百万円
期末現金及び現金同等物11,681百万円11,099百万円

この2つの表のポイントは3つです。

  • 営業キャッシュ・フローがマイナス(△284百万円)になりました。主な内訳は、法人税等の支払△1,189百万円、前受金の減少△1,009百万円(前期は+1,412百万円)、その他△1,118百万円です。前期に前受金が大きく増えた分が、今期に戻った形に見えます。前受金の中身は短信に書かれていません
  • 機材(機械装置及び運搬具)が7億円増えたのは、空港のGSEの取得と読めます。有形固定資産の取得による支出は1,769百万円でした
  • 短期借入金が25億円増えた。配当の支払い(親会社株主へ662百万円、非支配株主へ44百万円)と設備投資を、営業キャッシュ・フローでは賄えず、借入で埋めた形です。現金から借入金(リース債務を含む)を引いたネット現金は、前期末の約39億円から約11億円に縮みました(筆者の計算)

用語メモ:グランドハンドリングとGSE グランドハンドリングは、空港で航空会社から受託する地上業務の総称です。旅客業務(カウンター・搭乗案内)、ランプ業務(手荷物の積み下ろし・機体の誘導)、整備などがあります。GSE(Ground Support Equipment)はランプ業務で使う車両や機材で、FMGは買収時点では保有せず全て外注に再委託していたと会社は説明しています。

3. 深掘り①:営業利益はどこで消えたのか

ここから3つの章で、ひとつの問いを3段階で追います。「営業利益11.5億円は、なぜ株主の手元で1.67億円になったのか」。この章は1段目として、営業利益そのものがどこで、いつ消えたのかを見ます。

3-1. 12四半期を並べる

この会社の決算短信は、四半期ごとではなく期首からの累計で数字を出します。単独の3か月の数字は、累計どうしを引き算して自分で出すしかありません。2024年8月期から12四半期を並べました。

四半期(月)売上高営業利益営業利益率親会社株主に帰属する純利益
2024年8月期 第1四半期(9〜11月)15,826百万円927百万円5.9%448百万円
2024年8月期 第2四半期(12〜2月)13,984百万円347百万円2.5%95百万円
2024年8月期 第3四半期(3〜5月)14,727百万円190百万円1.3%△127百万円
2024年8月期 第4四半期(6〜8月)14,010百万円104百万円0.7%△459百万円
2025年8月期 第1四半期(9〜11月)16,428百万円737百万円4.5%274百万円
2025年8月期 第2四半期(12〜2月)14,499百万円541百万円3.7%291百万円
2025年8月期 第3四半期(3〜5月)16,764百万円589百万円3.5%276百万円
2025年8月期 第4四半期(6〜8月)15,905百万円628百万円3.9%12百万円
2026年8月期 第1四半期(9〜11月)16,211百万円341百万円2.1%71百万円
2026年8月期 第2四半期(12〜2月)14,891百万円388百万円2.6%109百万円
2026年8月期 第3四半期(3〜5月)16,429百万円373百万円2.3%81百万円
2026年8月期 第4四半期(6〜8月)14,593百万円48百万円0.3%△94百万円

筆者の差し引き。各期の4四半期の合計は、売上高・営業利益・純利益とも通期の開示値と一致することを確認済み。2026年8月期の第1四半期から、新たに4社を連結の範囲に含めている。

この表のポイントは2つです。

1つ目は、「6〜8月は毎年弱い」とは言えないことです。2024年8月期と2026年8月期の第4四半期は12四半期の中で最低と2番目に低い水準ですが、2025年8月期の第4四半期は628百万円で、その年で2番目に高い四半期でした。3年のうち1年で形が違うので、季節性とは書けません。2024年8月期の第4四半期の弱さも、2026年8月期と同じ理由とは限りません。

2つ目は、2026年8月期は第1〜第3四半期がずっと3億円台で横ばい、最後の3か月で48百万円に落ちたことです。2025年8月期の第4四半期と比べると、営業利益は580百万円減りました。3分解すると、数量効果△280百万円、率効果△236百万円、販管費△64百万円です(筆者の計算)。通期では販管費が主因でしたが、最後の3か月は売上と粗利率の落ち込みが主因で、顔が違います。

3-2. セグメントで見ると、6〜8月に何が起きたか

セグメント(営業利益)2025年8月期 第4四半期2026年8月期 第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期
アウトソーシング(販売支援・空港)170百万円△180百万円△13百万円△131百万円△88百万円
人材派遣178百万円176百万円51百万円142百万円152百万円
EC・TC支援△24百万円124百万円156百万円86百万円△26百万円
ホールセール(IP衣料)308百万円261百万円152百万円276百万円△35百万円
その他・調整額△4百万円△40百万円41百万円1百万円44百万円
連結営業利益628百万円341百万円388百万円373百万円48百万円

筆者の差し引き。セグメント利益の内訳合計と連結営業利益の差は、百万円未満切り捨てにより±2百万円の範囲でずれる。

この表のポイントは、6〜8月にホールセールが赤字(△35百万円)になったことです。ホールセールは2024年8月期からそれまでの11四半期すべて黒字で、赤字はこの3か月が初めてです。会社は決算説明資料で、円安によるコスト上昇分を大手小売に転嫁できず、期の後半から小売業態向けの卸売りを抑えたと説明しています。前期の6〜8月に308百万円稼いでいたセグメントが△35百万円になったので、前年同期比で343百万円の悪化です。第4四半期の減益580百万円の6割近くがここから来ています。

一方、空港を含むアウトソーシングは、2026年8月期の4四半期すべて赤字でしたが、6〜8月の赤字(△88百万円)は第1四半期・第3四半期より小さくなっています。

用語メモ:決算期変更の影響 FMGは2025年8月期に決算期を変更し、その期は13か月分の売上を計上しました。会社によると影響額は売上で△411百万円です。会社が「決算期変更除外」とする比較では、空港事業の売上は前期比+3.4%(説明資料)。本記事の表は短信の数字のままで、この調整はしていません。

3-3. 空港事業の数字を、会社自身の説明で読む

決算説明資料には、FMGグループの減便の影響を会社自身が数字にした表があります。

項目会社の開示
中国の航空会社の減便(2025年11月7日の首相発言に端を発したもの)2,636便、業績への影響△643百万円
中東問題(航空燃料の高騰)による減便777便、業績への影響△329百万円
人員効率の悪化に伴う影響(想定)延べ510人、△178百万円
合計3,413便、△1,150百万円
FMGグループの営業利益(2026年8月期)△481百万円(前期比△687百万円)

出典:2026年10月16日の決算説明資料。△1,150百万円の内訳の合計は筆者が検算して一致を確認。

軸に戻ると、これが「便の数は他人が決める」の中身です。会社の試算では、減便がなければFMGグループは約6.7億円の営業黒字だった計算になります(△481百万円+1,150百万円。会社の試算を足し合わせた筆者の計算で、会社がこの数字を示しているわけではない)。

4. 深掘り②:営業利益から純利益までの道のり

第3章で営業利益が半分以下になった場所を見ました。2段目として、残った営業利益11.5億円が、株主の手元に来るまでにどこで削られたかを見ます。

4-1. 1本の線で並べる

段階2026年8月期2025年8月期
営業利益1,150百万円2,495百万円
営業外損益(支払利息・為替差損など)△119百万円+9百万円
経常利益1,031百万円2,504百万円
特別損益+4百万円△433百万円
税金等調整前当期純利益1,036百万円2,070百万円
法人税等合計△705百万円△1,011百万円
税負担率68.1%48.8%
当期純利益330百万円1,059百万円
非支配株主に帰属する当期純利益△162百万円△205百万円
当期純利益に占める非支配株主の割合49.1%19.4%
親会社株主に帰属する当期純利益167百万円853百万円

出典:各期の決算短信。各段階の差は百万円未満切り捨ての数字どうしの引き算のため、合計が1〜2百万円ずれる箇所がある。

この表のポイントは2つです。税金で3分の2、残りの半分が少数株主へ。営業利益が半分になった以上に、純利益が5分の1になったのはこの2つのためです。

4-2. 税金:利益が減っても減らない税金

税負担率68.1%は、法定実効税率(約30.6%)の2倍以上です。理由は短信には書かれていませんが、前期の有価証券報告書の「税率差異」の注記が手がかりになります。前期の負担率48.8%のうち、のれん償却額で11.9ポイント、住民税均等割で3.2ポイント、連結子会社との税率差異で4.5ポイント押し上げられていました。

のれん償却は、会社を買ったときの「上乗せ分」を毎年費用にするものですが、税務上は損金になりません。ヒトコムHDののれん償却額は2026年8月期に795百万円で、前期(807百万円)とほぼ同額です。税金等調整前当期純利益が1,036百万円しかない年に795百万円の損金にならない費用があると、それだけで負担率を約23.5ポイント押し上げる計算です(795×30.6%÷1,036。筆者の概算)。前期の11.9ポイントから倍になったのは、のれん償却が増えたからではなく、分母の利益が半分になったからです。

もうひとつ、日本の法人税は会社ごとに計算されます。FMGの赤字は、ブランチ・アウトやビービーエフの黒字と相殺されません。黒字の子会社は税金を払い、赤字の子会社の赤字は(繰延税金資産として計上されなければ)税金を減らしません。今期の負担率の内訳は、11月26日に提出予定の有価証券報告書で確認できます。

用語メモ:税負担率 税金等調整前当期純利益に対する法人税等の割合。法人税・住民税・事業税の法定の合計(法定実効税率)は約30%ですが、損金にならない費用(のれん償却、交際費など)や、利益に関係なくかかる税金(住民税均等割)があると、利益が小さい年ほど負担率は高く出ます。

4-3. 非支配株主:儲かる子会社は分け合い、赤字の子会社は全部抱える

第1章の表をもう一度見ます。

  • 黒字のビービーエフG(営業利益328百万円)とブランチ・アウトG(同654百万円)は、ヒトコムHDの持分が83.5%です。利益の16.5%は他の株主のものです
  • 赤字のFMG G(同△481百万円)は、子会社を通じて100%保有です。赤字は全額がヒトコムHDの株主の負担になります

このため、連結の利益が減った年ほど、非支配株主の取り分の割合が膨らみます。非支配株主に帰属する利益は前期205百万円から162百万円へ2割しか減っていないのに、当期純利益に占める割合は19.4%から49.1%に上がりました。分子はあまり動かず、分母(当期純利益)が3分の1になったためです。

ひとつ注意があります。非支配株主はビービーエフの株主だけではありません。たとえば子会社のジャッツは65%保有です(有価証券報告書)。非支配株主に帰属する利益162百万円のうち、どの子会社の分がいくらかは開示されていないので、「すべてビービーエフ系列から」とは言えません。

4-4. 1株利益で見ると

指標2025年8月期2026年8月期2027年8月期予想
営業利益2,495百万円1,150百万円1,725百万円
親会社株主に帰属する当期純利益÷経常利益34.1%16.2%33.6%
EPS47.86円9.41円29.82円

2027年8月期の会社予想は、純利益÷経常利益が33.6%と、前期(2025年8月期)並みの残り方に戻る前提です。経常利益が1,585百万円に増えれば、のれん償却の比重が下がり、税負担率も自然に下がる方向です。逆に経常利益が予想に届かなければ、純利益は経常利益以上に届かない構造が残ります。

株数は自己株式(実質133株)と株式給付信託(BBT)の56,800株を除いた17,842,400株で、2年間変わっていません。潜在株式もありません(短信の注記)。EPSの増減は純利益の増減とそのまま一致します。

5. 深掘り③:2027年8月期の予想と配当は、どちらが優先されているか

3段目です。第3章と第4章で、営業利益が消えた場所と、営業利益から純利益までの距離を見ました。その上で、来期の予想はどこに増益を置き、配当はそれとどう関係しているかを見ます。

5-1. 増益は下期に、そして空港に置かれている

期間2026年8月期 実績2027年8月期 会社予想前年比
上期 売上高31,102百万円31,132百万円+0.1%
上期 営業利益729百万円730百万円+0.1%
下期 売上高31,022百万円34,412百万円+10.9%
下期 営業利益421百万円995百万円+136.3%
通期 営業利益1,150百万円1,725百万円+49.9%(会社開示)

下期は通期予想から上期予想を引いた筆者の計算。通期の増減率は短信の表記(百万円未満を切り捨てた金額どうしで計算すると+50.0%)。

上期は前期とほぼ同額で、増益575百万円はほぼすべて下期に置かれています。下期の必要な伸びは、前年下期比で営業利益+136.3%、売上+10.9%です。

ただし比べる相手を変えると見え方が変わります。2027年8月期の下期995百万円(営業利益率2.89%)は、2025年8月期の下期1,217百万円(同3.73%)より小さく、第1章で見た過去の期初予想(2,427・1,280・1,900百万円)よりも控えめです。

  • 強気の読み:前期の下期が減便と円安の底だった。2年前の下期より低い水準を置いているので、無理な前提ではない
  • 弱気の読み:過去3期のうち2期で、期初予想が置いた下期の達成率は1〜2割だった。下期に重心を置く予想は、この会社では外れやすい形でもある

次に、中核グループ別の計画です。

中核グループ2026年8月期 営業利益2027年8月期 計画増減
ヒト・コミュニケーションズG763百万円1,015百万円+252百万円
ビービーエフG328百万円471百万円+143百万円
ブランチ・アウトG654百万円371百万円△283百万円
FMG G△481百万円43百万円+524百万円
4グループ合計1,264百万円1,900百万円+636百万円
連結1,150百万円1,725百万円+575百万円

出典:2026年10月16日の決算説明資料。増減は筆者の計算。

この表のポイントは2つです。

1つ目は、ブランチ・アウト(IP衣料)は今期もさらに4割強の減益を計画していることです。会社の前提は「円安は継続。価格転嫁は徐々に進む」(想定レート1ドル159円)で、為替予約によるヘッジを新たに導入し、商社経由の仕入れを直接貿易に切り替えるとしています。

2つ目は、**増益の柱は空港(+524百万円)**だということです。第3章で見た会社自身の試算では、復便と新規受託による改善余地は+1,627百万円とされています。計画の+524百万円はその約3分の1です(筆者の計算)。

  • 強気の読み:会社が示した改善余地の3分の1しか計画に入れていない。セブ・パシフィック航空の全国一括受託(年間3,328便から、2030年12月に5,304便とする計画)など、すでに配置済みの人員と機材の上に便が乗れば、利益率は上がる構造(軸の強み側)
  • 弱気の読み:計画の前提は「日中関係改善せずも燃料価格安定し外航離発着増加」。中国便は戻らない前提だが、燃料価格と外国航空会社の増便は会社が決められない(軸の弱み側)

なお、説明資料には中国便について「復便率69.4%」とする試算(現時点の予測)と、計画の前提として「中国便は戻らずも」とする記載が並んでいます。両者の関係は資料からは読み取れません。また、グループ別計画の注記は、ページによって「持株会社が負担する費用を含みません」と「持株会社費用を含んだ数値」の2通りの書き方になっています。4グループ合計(1,900百万円)と連結(1,725百万円)の差は175百万円で、前者の注記と整合します。

用語メモ:「残り期間の含み」 通期予想から、すでに出た実績(または上期予想)を引いた値。予想がどの期間にどれだけの利益を置いているかが分かります。会社が「下期に赤字を予想する」と発表したわけではなく、あくまで引き算の結果です。

5-2. 中期経営計画との距離

2025年10月の決算説明資料に載っている中期経営計画(2025-2029)の経営目標は、2029年8月期に売上高710億円、営業利益40億円、ROE10%以上です。2027年8月期の予想(営業利益17.25億円)から2年で40億円に届くには、年率約52%の増益が必要です(筆者の計算)。空港事業の売上目標は2029年8月期に128億円でした。

今回の決算短信と説明資料は、中期経営計画の見直しについて触れていません。

5-3. 2つの配当方針

2025年8月期の有価証券報告書は、配当政策を次のように書いています(原文)。

配当による株主様への利益還元は減配はせず増配維持(累進配当)を基本方針といたします。なお、配当性向につきましては安定的に30%を目指します。

「減配しない」と「配当性向30%」は、利益が伸びている間は両立します。利益が落ちた年に、どちらかを手放すことになります。

決算期年間配当配当性向(連結)配当の決め方(会社の表現)
2021年8月期24.50円15.8%本記事では未確認
2022年8月期30.00円16.6%本記事では未確認
2023年8月期31.00円29.3%本記事では未確認
2024年8月期35.00円—(純損失)本記事では未確認
2025年8月期37.00円77.3%累進配当・配当性向30%を目指す
2026年8月期37.50円398.4%同上
2027年8月期(予想)37.50円125.8%同上

出典:配当額は2025年8月期有価証券報告書と各期の決算短信。配当性向は2021〜2023年8月期が有価証券報告書の1株配当÷連結EPSによる筆者の計算、2025年8月期以降は決算短信の開示値。方針の列は2025年8月期有価証券報告書の配当政策の記載で、それ以前の期の方針の文言は本記事では確認していない。

この表のポイントは、2024年8月期以降、配当性向30%は一度も実現しておらず、配当を決めているのは「減配しない」のほうだということです。2026年8月期は1株当たり利益9.41円に対して37.50円を払いました。配当総額671百万円は、親会社株主に帰属する当期純利益167百万円の約4倍です。

配当性向30%で37.50円を払うには、EPS125円(純利益約22億円)が必要です。2027年8月期予想のEPS29.82円の30%は8.95円です(いずれも筆者の計算)。

会社の表現にも小さな変化があります。2025年10月の説明資料は2026年8月期予想を「7期連続増配」「15期連続増配」と書いていました。今回の説明資料は2027年8月期予想を「前期から据え置き」「16期連続累進配当を継続」と書いています。2027年8月期の予想は中間18.50円・期末19.00円で、中間は0.5円増、期末は0.5円減、年間は37.50円で前期と同額です。

  • 強気の読み:利益が4分の1になった年も配当を下げなかった。自己資本は169億円あり、配当総額の約25年分。累進配当は言葉どおり守られている
  • 弱気の読み:配当は利益ではなく、手元資金と借入で払われている。2026年8月期は営業キャッシュ・フローがマイナスで、短期借入金が25億円増えた。配当を払うたびに利益剰余金が減っていく(2026年8月期は△531百万円)。「配当性向30%を目指す」は実際の配当の決め方になっていない

用語メモ:累進配当 1株当たり配当を前期より下げない(維持か増配する)方針。業績が落ちた年でも配当が下がらない代わりに、配当性向は大きく跳ね上がります。

6. 決算書の隅にある数字:のれんの「主要な仮定」は便数

第4章で見たのれん償却とは別に、のれんそのものの残高にも注目点があります。

2025年8月期の有価証券報告書は、「重要な会計上の見積り」にFMG関連ののれん(2025年8月末で4,134百万円)を挙げ、その評価の主要な仮定を次のように書いています(原文)。

のれんの評価における重要な会計上の見積りに用いた主要な仮定は、当社が承認した事業計画を基礎とした将来予測における売上高の構成要素である便数であります。

そのうえで、2025年8月期時点では「事業計画と実績との間に著しい乖離がなく」減損の兆候はないと判断しています。

その主要な仮定である便数が、2026年8月期に会社自身の集計で3,413便減りました。FMGグループは△481百万円の営業赤字です。今回の決算短信の特別損失に減損損失はありません。

この点について本記事が言えるのは、会社自身が「ここが変われば減損があり得る」と挙げた仮定が、その翌年に大きく動いたという事実までです。減損の兆候があったかどうか、あったとしてどう判定したかは、11月26日に提出予定の2026年8月期有価証券報告書の「重要な会計上の見積り」で確認できます。減損の有無や金額をここで推測することはしません。

参考までに、FMG関連ののれんは2024年8月末4,415百万円から2025年8月末4,134百万円へ、1年で281百万円減っています(償却による減少と読めます)。2026年8月末の残高は短信では分かりません(アウトソーシング事業全体ののれん残高は4,454百万円)。

用語メモ:減損の「兆候」 のれんや設備は、まず「回収できないかもしれない兆候」があるかを確かめ、兆候があれば将来のキャッシュ・フローを見積もって減損するかどうかを判定します。兆候がある=減損する、ではありません。減損しても現金は出ていきませんが、純資産は減ります。

7. 資本政策と株主還元

7-1. 配当の権利

配当基準日権利付き最終日2027年8月期予想
中間配当2027年2月28日(日)2027年2月24日(水)18.50円
期末配当2027年8月31日(火)2027年8月27日(金)19.00円

権利付き最終日は基準日の2営業日前。2027年2月28日は日曜のため、直前の営業日(2月26日・金)から2営業日さかのぼった(筆者の計算)。

期末配当は株主総会、中間配当は取締役会で決めます(有価証券報告書)。2026年8月期の期末配当19.50円は、11月27日の定時株主総会を経て11月30日から支払われる予定です(短信)。配当総額671百万円は、37.50円×(発行済株式17,899,333株−実質の自己株式133株)=671.2百万円で再現できます(BBTの保有分にも配当が払われる計算。筆者の検算)。

7-2. 株主構成

株主持株比率備考
新井隆二氏が信託した4つの信託口の合計50.90%有価証券報告書の注記で、議決権は委託者兼受益者の指図により行使されると明記
株式会社ダッチパートナーズ11.84%—
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL5.50%—
安井豊明氏(代表取締役社長)1.18%—
個人・その他(所有者別)19.85%株主数15,751名(個人)

出典:2025年8月期有価証券報告書(2025年8月31日現在)。信託口4つ(5,535,000株・1,748,000株・1,428,400株・400,000株)の合算は、同報告書の注記に基づく筆者の合算。持株比率の分母はBBTの保有分を含む発行済株式(自己株式を除く)。

議決権の過半数を、ひとりの委託者が信託を通じて持っている会社です。経営の一貫性という面と、市場で取引される株が少ないという面の両方があります。直近の出来高は1日1万5千〜5万株程度です(Yahoo!ファイナンスの株価時系列、報道ベース)。

ダッチパートナーズと他の株主の関係を示す開示は確認できなかったので、持株比率は合算していません。また有価証券報告書には、ゴーディアン・キャピタル・シンガポールが2025年1月時点で6.37%を保有する旨の大量保有報告書が注記されています。その後の変更報告書は本記事では確認していません。

7-3. 株数と自己株式

2年間、発行済株式数・自己株式数とも変わっておらず、新株予約権もありません。自己株式56,933株のうち56,800株は役員向け株式給付信託(BBT)の保有分です。自己株式の取得は直近2期とも行っていません。

7-4. 財務

短期借入金は2,634百万円、長期借入金は7,656百万円(1年内返済予定分を含む)、合計で約103億円です(リース債務を除く)。支払利息は前期69百万円から122百万円に増えました。現金及び預金は116億円あり、財務余力そのものは残っていますが、ネット現金は約11億円まで縮んでいます(筆者の計算)。

7-5. 株主優待

ヒトコムHDには株主優待があります。2025年7月22日の開示で内容が拡充され、2025年8月期有価証券報告書の「株主に対する特典」欄も同じ内容です(両者の内容は一致している)。

保有株数優待(毎年8月末基準)保有期間の条件(2026年8月期以降)1株当たり優待額優待だけの利回り(840円)
100〜499株デジタルギフト1,000円分なし100株で10.0円、499株で2.0円100株で1.19%
500〜999株デジタルギフト6,000円分1年以上500株で12.0円、999株で6.0円500株で1.43%
1,000株以上デジタルギフト12,000円分1年以上1,000株で12.0円1,000株で1.43%

筆者の計算。利回りは2026年10月20日終値840円で計算した名目値。

デジタルギフトは、Amazonギフトカード、QUOカードPay、PayPayマネーライトなどから選べる電子ギフトです(開示に記載の交換先。変更の可能性あり)。換金性の高い交換先が選べるので、名目と実質の差は小さいほうです。

この表のポイントは3つです。

  • 100株と499株では、1株当たり優待額が5倍違う。100株を超えて499株まで買い増しても優待は増えません
  • 500株以上は2026年8月期から「1年以上保有」が条件になりました。保有期間の判定方法(どの名簿を何回確認するか)は、開示と有報からは読み取れませんでした。会社IRへの確認をおすすめします
  • 100株保有で配当(予想37.50円×100株=3,750円)と優待(1,000円)を合わせると、名目利回りは約5.65%です(840円で計算)

優待の基準日(8月末)と中間配当の基準日(2月末)は違います。2月末に株主でも優待はもらえず、8月末の基準日には期末配当と優待の両方の権利が確定します。

優待の費用は開示されていません。2025年8月末の株主数15,965名が全員100株区分だとしても約16百万円、上位区分の株主がいればそれ以上になります(筆者の概算)。会社は優待費用を販管費に計上する見込みと説明しています。純利益167百万円の年に、優待費用は無視できない規模になり得ます。株主数が増えるほど費用が増える設計です。

8. 株価の見方

8-1. 株価の基準点

株価は2026年10月20日(火)終値840円を基準にします(Yahoo!ファイナンスの株価時系列。報道ベース)。年初来高値は1,072円(2026年1月13日)、年初来安値は813円(2026年6月3日)で、高値から約22%下にあります。

決算は2026年10月14日(水)の15時30分、取引終了と同時刻に発表されました。発表当日の終値845円は決算発表前の取引です。最初の反応が出た10月15日(木)は終値835円(前日比△1.18%)、出来高46,200株で、前後の日のおよそ2倍でした。決算以外の材料もあり得るので、因果は書きません。

指標値計算
時価総額約150億円840円×17,842,400株(自己株式・BBTを除く)
PER(実績)89.3倍840円÷9.41円
PER(会社予想)28.2倍840円÷29.82円
PBR0.89倍840円÷946.49円
配当利回り(会社予想)4.46%37.50円÷840円

筆者の計算。

前期の有価証券報告書によると、2020年8月末を起点とした5年間(2025年8月期まで)の株主総利回り(配当込み)は115.8%で、比較指標の配当込みTOPIX(214.3%)を大きく下回っています。

8-2. 強気の読み

  • 空港は「人と機材を揃え終えた」段階にある。会社は全国主要空港での人員と機材の確保が完了したと説明しています。軸の強み側で、固定費の上に便が乗れば利益率は上がる構造です。来期計画の空港の改善(+524百万円)は、会社自身が示した改善余地(+1,627百万円)の約3分の1にとどまります
  • 営業利益が戻れば、純利益はそれ以上に戻る。のれん償却795百万円は毎年ほぼ一定なので、利益が増えるほど税負担率は下がります(第4章の逆回転)
  • PBRは1倍を下回り、配当利回りは4%台。会社は累進配当を利益が4分の1になった年も守りました
  • ホールセールの悪化は円安という外部要因が中心で、会社は価格転嫁、直接貿易、為替予約で対処するとしています

8-3. 弱気の読み

  • 予想の外れ方が大きい会社。過去3期のうち2期で期初予想から6割前後下に着地し、期初予想が置いた下期の達成率は12.1%と22.2%でした。来期も増益は下期に置かれています
  • 便の数は他人が決める(軸の弱み①)。来期計画は燃料価格の安定と外国航空会社の増便を前提にしています。減便が続けば、固定費はそのまま残ります
  • のれんの主要な仮定(便数)が動いた。FMG関連ののれん(2025年8月末で4,134百万円)の評価が、11月の有価証券報告書でどう書かれるかは確認が必要です
  • 利益は株主の手元に届きにくい(軸の弱み②)。黒字の子会社は83.5%保有、赤字の空港は100%保有。営業利益が減る年ほど、税と少数株主に削られる割合が大きくなります
  • 配当は利益ではなく手元資金と借入から払われている。配当性向は398.4%(実績)、125.8%(予想)。「配当性向30%を目指す」とは大きく離れています
  • ブランチ・アウトは来期も減益計画で、連結の増益は空港の改善にかかっています

個人的には、この決算は「空港で人と機材を先に揃えた費用が、便の減少でそのまま利益を食った年」と読むのが素直だと考えています。来期の予想をどう評価するかは、セブ・パシフィック航空の受託便数と、冬ダイヤ(10月末〜3月)の新規受託がどれだけ利益に変わるかで決まりそうです。

9. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るポイント
2026年11月26日(木)予定2026年8月期有価証券報告書FMG関連ののれんの「重要な会計上の見積り」(減損の兆候の判断)、税率差異の内訳、大株主の状況、優待の記載
2026年11月27日(金)予定定時株主総会期末配当19.50円の決議。配当議案の賛成率(臨時報告書)
2026年11月30日(月)予定期末配当の支払開始—
2027年1月中旬(前年は1月14日)第1四半期決算空港事業の採算(冬ダイヤの新規受託の寄与)、ホールセールの粗利(為替予約の効果)
2027年2月24日(水)中間配当(予想18.50円)の権利付き最終日優待の権利は付かない
2027年4月中旬(前年は4月14日)中間決算上期予想(営業利益730百万円)との差。差異開示の有無
2027年8月27日(金)期末配当(予想19.00円)・株主優待の権利付き最終日500株以上は1年以上保有の条件

見るべきKPI

  • FMGグループの営業利益(2026年8月期△481百万円→計画43百万円)と、セブ・パシフィック航空の取扱便数(年間3,328便、2030年12月の計画は5,304便)
  • ブランチ・アウトGの営業利益(654百万円→計画371百万円)と、想定レート1ドル159円との距離
  • 単独四半期の営業利益(2026年8月期は341・388・373・48百万円)。予想は下期に重心があるので、上期の時点では判断材料が少ない
  • 非支配株主に帰属する利益と税負担率(純利益÷経常利益:16.2%→予想33.6%)
  • 短期借入金(100百万円→2,634百万円)と営業キャッシュ・フロー
  • 中期経営計画(2029年8月期に営業利益40億円)の見直しの有無

10. 3行まとめ

  • 営業利益は11.5億円(53.9%減)で7月の修正予想どおり。減益の6割近くは販管費の増加で、空港で人と機材を先に揃えた費用が、減便で売上に結びつかなかった
  • 営業利益から純利益までに、税金で3分の2、残りの半分が少数株主へ。黒字の子会社は83.5%保有、赤字の空港は100%保有という持ち方が、利益が減った年に効いた
  • 来期予想は営業利益49.9%増だが、増益は下期と空港に集中。配当は累進配当で37.50円を維持し、配当性向は125.8%の予想。「配当性向30%」より「減配しない」が優先されている

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘や投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスの決算短信(2024年8月期〜2026年8月期の各四半期・通期)、業績予想の修正・差異に関する適時開示、配当予想の修正・株主優待に関する適時開示、決算説明資料(2025年8月期通期、2026年8月期第3四半期、2026年8月期通期)、2025年8月期有価証券報告書(EDINET)です。四半期の数字は累計からの筆者の差し引き、中核グループ別の前期の営業利益は説明資料の増減額からの筆者の逆算です。株価・出来高・年初来高値安値はYahoo!ファイナンスの株価時系列(報道ベース)で、2026年10月20日終値を基準にしています。決算は10月14日15時30分の発表で、同日の終値には反応が含まれていません。決算説明会は開催されていますが、書き起こし・質疑応答は確認しておらず、本記事に反映していません。説明資料はテキスト層の抽出で読み、グラフ内の数値は使っていません(中核グループ別の数字は表形式の記載から転記)。グループ別計画の注記で持株会社費用の扱いが2通りに書かれている点、中国便の復便率の試算と計画の前提の関係は、資料のとおり記載し解釈していません。のれんの減損の有無・金額については推測していません。2026年8月期の有価証券報告書は執筆時点で未提出で、税率差異・大株主・優待の記載は前期の有価証券報告書に基づきます。大量保有報告書・変更報告書は確認していません。株主優待の費用は開示されておらず、本文の金額は筆者の概算です。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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