本記事は2026年9月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事でわかること
- 上半期は減収減益なのに、会社が「計画を上回った」と説明できる理由
- 四半期を差し引くと、5〜7月の3か月だけ営業利益がほぼ消えていること
- この会社の四半期利益が毎回大きく振れる構造的な理由(前期の11〜1月は営業赤字)
- 現金が事業ではなく投資信託と保険積立金に移っている貸借対照表の読み方
- 名証メイン市場を目指して実施した立会外分売と、創業家で7割を超える株主構成
- 株主優待がない会社の資本政策と、今後見るべきカレンダー・KPI
この会社は何をしているのか
アップコン(5075、名古屋証券取引所ネクスト市場)は、川崎市に本社を置く従業員49名の会社です。決算期は1月末で、2026年9月14日に2027年1月期の中間決算(2026年2月1日〜7月31日)を発表しました。
事業を一言でいうと、昔ならコンクリート床を壊して打ち直すしかなかった工事を、床に小さな穴を開けて樹脂を流し込むだけに置き換えた会社です。
工場や倉庫の床は、地盤が不均一に沈むと傾きます。フォークリフトが段差で走れない、機械が振動して不良品が増える、棚が傾いて荷物が積めない。従来の直し方は、床のコンクリートを壊して撤去し、新しく打ち直すというものでした。そのためには機械を止め、荷物をどかし、場合によっては操業を数週間止める必要があります。工事費そのものより、操業を止めている間の損失のほうが大きい、というのがこの工事の本質的なコストでした。
アップコンの「アップコン工法」は、床に直径十数ミリの穴を開け、そこから硬質発泡ウレタン樹脂を注入します。樹脂は床下で膨らみ、空洞を埋めながら床を持ち上げる。機械も荷物も動かさず、営業や操業を止めずに、短期間で床の傾きを直せます。会社は従来工法と比べて工期が10分の1になると説明しています。
用語メモ:不同沈下(ふどうちんか) 建物の下の地盤が場所によって違う量だけ沈み、床や基礎が傾いてしまう現象のことです。地盤が均一に沈むだけなら建物は水平のまま下がりますが、片側だけ沈むと段差や傾きが生じます。日本は軟弱地盤が多く、埋立地や造成地でとくに起きやすい現象です。
対象は民間工事と公共工事の2つに分かれます。前期(2026年1月期)の売上内訳は民間事業964,703千円(69.5%)、公共事業422,811千円(30.5%)でした。民間は工場・倉庫・店舗・住宅、公共は道路・港湾・空港・農業用水路トンネル・防衛施設などです。会計上は「沈下修正事業」の単一セグメントであり、短信ではセグメント別の開示は行われていません。
この軸で、強みも弱みも説明できる
強み側。操業を止めずに直せるということは、顧客が払っているのは工事代金ではなく「止めずに済んだこと」の対価です。だから価格が通ります。前期の売上総利益率は65.7%で、これは工事会社としてはかなり高い水準です。しかも設備をほとんど持ちません。前期末の有形固定資産262,917千円のうち228,462千円は昨年末に取得した土地で、実際に施工に使う機械・運搬具は4,804千円しか残っていません。在庫も工場も持たず、樹脂と小型機械と人で稼ぐ商売です。
弱み側。同じ軸が、そのまま天井の説明になります。この会社の売上は「持ち上げた現場の数×1件あたりの単価」でしかありません。工場を建てて生産量を増やす、という増やし方ができない。会社自身が新中期経営計画のなかで、従業員は最大60名、施工稼働数は最大10台と書いています。これは目標ではなく、現在の事業モデルの上限を会社が自分で示した数字です。だから1件2億円の大型案件が期内に入るか入らないかで、四半期の顔つきが変わってしまう。この記事の深掘りパートは、まさにその話になります。
資本政策側。現場を増やす以外に金の使い道がない会社は、稼いだ現金の置き場所に困ります。後述しますが、この上半期に会社は投資有価証券を1億2,504万円、保険積立金を9,982万円積み増しました。事業への再投資先が限られていることの裏返しでもあります。
直近4期の推移
招集通知の事業報告に載っている4期分の数字です。
| 単位:千円 | 第20期 2023年1月 | 第21期 2024年1月 | 第22期 2025年1月 | 第23期 2026年1月 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 917,223 | 852,483 | 1,194,781 | 1,387,514 |
| 経常利益 | 178,139 | 94,139 | 337,649 | 428,983 |
| 当期純利益 | 116,228 | 67,590 | 244,521 | 304,490 |
| 1株当たり当期純利益 | 29.59円 | 16.06円 | 58.04円 | 72.01円 |
| 純資産額 | 1,230,899 | 1,289,212 | 1,539,065 | 1,858,822 |
| 自己資本比率 | 88.4% | 96.6% | 85.8% | 80.0% |
この表のポイントは2つあります。
1つ目。一本調子で伸びてきた会社ではありません。 第21期は減収で、経常利益が前期のほぼ半分に落ちています。第22期・第23期の急回復は大型案件の獲得によるもので、会社は決算短信でも繰り返し「大型案件の受注」を増益理由に挙げています。年によって大きく振れる会社だ、という前提をまず持っておくと、今回の決算が読みやすくなります。
2つ目。1株当たり利益は株式分割後の数値に調整されています。 2025年10月1日付で1株を3株に分割しているため、分割前の期の1株指標は当時の3分の1の株数で計算されています。2025年9月30日以前の1株当たり数値を過去記事などで見る場合は、3で割って比較してください。
中期経営計画と「100億宣言」
会社は2026年2月16日に新中期経営計画ローリングを開示しています。数値目標は次のとおりです。
| 単位:千円 | 第23期 2026年1月(実績) | 第24期 2027年1月 | 第25期 2028年1月 | 第26期 2029年1月 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,387,514 | 1,300,000 | 1,300,000 | 1,500,000 |
| 営業利益 | 420,606 | 322,000 | 300,000 | 360,000 |
| 販売管理費 | 490,416 | 468,000 | 435,000 | 490,000 |
今期も来期も、会社は減益計画を置いています。 前期が大型案件で膨らんだ反動という説明が成り立ちますが、2029年1月期の売上15億円は、前期実績13.88億円から年率2.6%の成長にすぎません。会社は同時に、中小企業庁が運営するサイトで「100億宣言」を公表し、2040年までに売上高100億円を目指す方針を掲げています(この宣言は決算説明の書き起こしベースです)。2029年の15億円から2040年の100億円に届くには、11年間で年率18.8%の成長が必要になります。中期計画の年率2.6%と、宣言の年率18.8%。この2つの数字の間にある距離を、読者は自分で埋めて解釈する必要があります。
上半期決算のハイライト
まず開示された累計値です。
| 単位:千円 | 2026年1月期 中間期 | 2027年1月期 中間期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 673,699 | 594,773 | △11.7% |
| 売上総利益 | 476,064 | 392,434 | △17.6% |
| 販売費及び一般管理費 | 214,073 | 220,048 | +2.8% |
| 営業利益 | 261,991 | 172,386 | △34.2% |
| 経常利益 | 265,283 | 173,201 | △34.7% |
| 中間純利益 | 189,757 | 122,298 | △35.6% |
| 1株当たり中間純利益 | 44.97円 | 28.85円 | △35.8% |
減収減益です。ここで目に留めておきたいのは、売上が11.7%減っているのに販管費は2.8%増えているという組み合わせです。前期の販管費490,416千円のうち、役員報酬・従業員給料手当・法定福利費の合計が308,623千円で、販管費全体の62.9%を占めます。人件費中心の費用構造なので、売上が減っても費用はほとんど減りません。この事実が、次の深掘りパートの下敷きになります。
財政状態とキャッシュ・フローも見ておきます。
| 単位:千円 | 2026年1月末 | 2026年7月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 総資産 | 2,322,724 | 2,290,049 | △32,675 |
| 流動資産 | 1,648,916 | 1,377,255 | △271,661 |
| 固定資産 | 673,808 | 912,794 | +238,986 |
| 負債合計 | 463,902 | 330,042 | △133,859 |
| 純資産 | 1,858,822 | 1,960,007 | +101,184 |
| 自己資本比率 | 80.0% | 85.6% | +5.6pt |
| 単位:千円 | 前中間期 | 当中間期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるCF | 211,029 | 99,126 |
| 投資活動によるCF | △19,513 | △264,552 |
| 財務活動によるCF | △36,435 | △63,371 |
| 現金及び現金同等物期末残高 | 1,230,817 | 1,104,990 |
営業CFが半減し、投資CFが13倍以上に膨らんでいます。中身は後ろのセクションで扱います。
深掘り:四半期を差し引くと、5〜7月の利益はほぼ消えている
会社の説明は「計画を上回った」
決算説明資料で会社は、通期計画に対する進捗率を売上高45.8%・営業利益53.5%と示し、「順調に推移」と説明しています。さらに上期計画との比較では、売上高が計画533,650千円に対して+11.5%、営業利益が計画86,715千円に対して**+98.8%**だとしています。
この説明は嘘ではありません。会社が3月12日の通期決算発表時に開示した第2四半期累計の予想は、売上高533百万円・営業利益86百万円でした。もともと上期の営業利益は前年同期比66.9%減という計画だったのです。 その低い計画に対して2倍近く着地したのだから、「計画を上回った」は正しい。
前年の進捗率と並べる
ただし進捗率は、単独では意味を持ちません。前年同期と並べてみます。
| 通期予想に対する上期累計の進捗率 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年1月期 上期 | 56.1% | 114.9% | 114.8% | 124.0% |
| 2027年1月期 上期 | 45.8% | 53.5% | 53.3% | 57.4% |
前年は、上期の時点で通期の営業利益予想を超えていました。だからこの会社は前期中に通期予想を2回上方修正しています(2025年7月に売上10億円→12億円、2025年11月に12億円→13.2億円)。上の表の前年の分母は、7月修正後の12億円ベースの予想です。分母の性質が違う(前年は年度途中で2度引き上げられ、今期は期初予想のまま据え置き)ので、この表は「進捗が悪くなった」ことの証明ではなく、去年と今年では決算の形がまるで違うことを示すものとして読んでください。
四半期に割って見る
ここからが本題です。この会社は累計値しか開示していないので、各四半期の累計から前四半期の累計を引いて、単独四半期の数字を筆者が算出しました。売上総利益は各短信の開示値から差し引き、販管費も同様に差し引いています。
| 筆者の差し引き 単位:千円 | 売上高 | 売上総利益 | 粗利率 | 販管費 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026年1月期 2〜4月 | 311,075 | 234,559 | 75.4% | 95,127 | 139,431 | 44.8% |
| 2026年1月期 5〜7月 | 362,624 | 241,505 | 66.6% | 118,946 | 122,560 | 33.8% |
| 2026年1月期 8〜10月 | 443,620 | 278,480 | 62.8% | 104,832 | 173,648 | 39.1% |
| 2026年1月期 11〜1月 | 270,195 | 156,478 | 57.9% | 171,511 | △15,033 | △5.6% |
| 2027年1月期 2〜4月 | 404,546 | 283,068 | 70.0% | 118,399 | 164,669 | 40.7% |
| 2027年1月期 5〜7月 | 190,227 | 109,366 | 57.5% | 101,649 | 7,717 | 4.1% |
この表のポイントは3つあります。
1つ目。今期の5〜7月は、営業利益が772万円しかありません。 直前の2〜4月は1億6,467万円でしたから、3か月で95%以上が消えたことになります。前年同期の1億2,256万円と比べても94%減です。上期累計で見れば「34%の減益」ですが、中身は「4〜6月までは絶好調、5〜7月でほぼゼロ」という極端な形をしています。
2つ目。理由は売上の半減と粗利率の低下の合わせ技です。 5〜7月の売上は190,227千円で、前年同期362,624千円の52%。そのうえ粗利率が66.6%から57.5%に9.1ポイント下がっています。結果、売上総利益は241,505千円から109,366千円へと55%減りました。一方で販管費は101,649千円で、前年同期118,946千円から17,297千円しか減っていない。粗利1億934万円から販管費1億165万円を引いた残りが772万円、というのがこの四半期の全体像です。人件費中心の固定費が、縮んだ粗利をほぼ食い尽くした四半期でした。
3つ目。これは今期だけの異常事態ではありません。 表の4行目を見てください。前期の11〜1月(第4四半期単独)は、売上270,195千円に対して販管費が171,511千円に膨らみ、営業損失15,033千円になっています。前期は通期で営業利益4億2,060万円の過去最高益でしたが、その最終四半期は赤字だったのです。累計しか見ていないと、この事実には一生気づけません。
用語メモ:累計と単独四半期 日本の四半期決算では、多くの会社が「期初からの累計」で数字を開示します。第2四半期決算といえば、通常は上半期6か月分の合計です。したがって「その3か月だけ」の数字を知りたければ、当期の累計から前四半期の累計を自分で引く必要があります。この記事の四半期表は、その引き算で作っています。百万円未満・千円未満の切捨ての関係で±1千円のずれが出ることがあります。
検算もしておきます。前期(2026年1月期)の4四半期を足し戻すと、売上高は311,075+362,624+443,620+270,195=1,387,514千円で開示値と一致、営業利益は139,431+122,560+173,648△15,033=420,606千円でこちらも開示値と一致しました。差し引きの前提は正しいと確認できます。
なぜこんなに振れるのか
理由は、軸の例えにそのまま戻ってきます。この会社の売上は「持ち上げた現場の数×単価」です。工場のラインのように毎月一定量が流れてくるわけではありません。1件2億円規模の大型案件を獲得すると、その工事が完了した四半期に売上がまとまって立ちます。逆に大型案件の谷にあたる四半期は、売上が半分になる。それでも49名の人件費と本社費用は毎月同じだけ出ていきます。
しかも粗利率も案件で動きます。表を見ると、粗利率は75.4%から57.5%までの間で四半期ごとに揺れています。工事の内容・規模・現場条件によって原価率が違うため、どの案件が売上に立ったかで利益率そのものが変わる構造です。
つまりこの銘柄では、四半期の営業利益を四半期あたりの実力として読んではいけないということになります。「5〜7月の営業利益が772万円だから年換算3,000万円の会社だ」と読むのは、前期の11〜1月の赤字を見て「赤字企業だ」と読むのと同じくらい的外れです。年間で見て、大型案件が何本入ったかで判断するしかありません。
下期に残っているもの
通期予想から上期実績を引くと、下期に残っている含みが出ます。
| 単位:千円 | 通期予想 | 上期実績 | 下期の含み | 前年下期の実績 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,300,000 | 594,773 | 705,227 | 713,815 |
| 営業利益 | 322,000 | 172,386 | 149,614 | 158,615 |
| 当期純利益 | 213,000 | 122,298 | 90,702 | 114,733 |
下期の含みは、売上・営業利益とも前年下期の実績をわずかに下回る水準です。特別に高いハードルが置かれているわけではありません。
そして、その下期には確定した大型案件が1本入っています。2026年7月23日に開示された民間工事の沈下修正案件で、受注金額206,170千円、施工完了は2026年12月。会社はこれを2027年1月期の第4四半期の売上高に計上する予定だと明記しています。**この1件だけで下期の含み売上705,227千円の29.2%**を占めます。会社が通期予想を据え置いたまま「予算達成の見込み」と言えている根拠のかなりの部分は、この受注残です。
裏返せば、リスクもここにあります。この案件の施工完了が2027年2月にずれ込めば、売上は翌期に飛びます。工事の進捗が遅れるだけで通期の着地が変わる、という集中度の高さは覚えておいたほうがよさそうです。
財政状態:現金の置き場所が変わった
上半期の貸借対照表で最も動いたのは、資産の中身の入れ替えでした。
| 単位:千円 | 2026年1月末 | 2026年7月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 1,330,406 | 1,101,203 | △229,202 |
| 有価証券(満期保有の社債等) | 100,000 | 144,974 | +44,974 |
| 投資有価証券 | 352,916 | 477,965 | +125,048 |
| 保険積立金 | 29,711 | 129,538 | +99,826 |
| 完成工事未収入金及び契約資産 | 153,847 | 39,844 | △114,003 |
総資産は32,675千円減っただけですが、流動資産が271,661千円減り、固定資産が238,986千円増えています。増えた固定資産の中身は、投資有価証券と保険積立金です。事業に使う資産ではありません。
キャッシュ・フロー計算書を見ると、投資CFの△264,552千円の内訳は、投資有価証券の取得105,767千円、保険積立金の積立100,000千円、有価証券の取得100,000千円(うち50,000千円は償還で戻り)、有形固定資産の取得17,082千円です。本業で稼いだ99,126千円に対し、金融資産に2億円以上を動かした半年だったことになります。
前期末時点の投資有価証券352,916千円の内訳は、上場株式が54,800千円、投資信託が298,116千円でした(招集通知の金融商品注記)。大半が投資信託です。そして上半期の損益計算書には、営業外費用に有価証券評価損5,025千円が計上されています。運用の含み損が損益に出てきている、ということです。
これをどう読むかは、両方の見方が成り立ちます。
前向きな読み方。手元資金は潤沢で、無借金に近い財務です。7月末の現金預金・有価証券・投資有価証券・保険積立金を合計すると1,853,680千円で、総資産2,290,049千円の80.9%を占めます。有利子負債は長期借入金187,844千円と1年内返済分22,104千円の計209,948千円だけですから、差し引きで16億4,373万円の実質的な余剰資金があります。低金利の預金に置いておくより運用するほうが合理的、という判断は普通にありえます。会社は中期経営計画の資金計画のなかで「投資資金」を第23期の年3億円から第24期は年5億円に増やすと明記しており、今回の積み増しは計画どおりの行動です。
慎重な読み方。事業への再投資先が乏しいことの裏返しでもあります。従業員60名・施工機10台という上限を自分で置いている会社が、稼いだ現金を投資信託と保険に回している。株主から見れば、「事業で増やせないなら還元してほしい」という論点が出てきます。前期の配当性向は16.7%で、会社がコーポレートガバナンスの方針として掲げているのは「配当性向10%以上」です。目標としてはかなり低い水準にとどまっています。また、運用資産が積み上がるほど、有価証券評価損のような本業と関係のない損益が決算に混ざるようになります。今回の5,025千円は小さな額ですが、運用残高が増えれば影響も大きくなります。
なお、有利子負債209,948千円は前期に土地を取得するためにりそな銀行から借りた221,000千円の残高です。土地228,462千円が担保に入っており、返済は年22,104千円の10年均等。上半期の返済額は11,052千円でした。手元に18億円の金融資産を持ちながら、2億円の借入は返さずに残しているという形になっています。
その土地は川崎市高津区末長の317.70㎡で、研究施設兼倉庫の建設用地です。会社は2027年1月期中に設計プランを確定し、2028年1月期に着工・竣工する予定としています。建設費は2〜4億円の見込みで、7月末時点の建設仮勘定は17,014千円。この設備投資が、金融資産に回っている資金の本来の行き先という整理も可能です。
資本政策と株主還元
この会社に株主優待制度はありません。会社IRサイトのFAQに「株主優待制度はありますか?」という項目があり、回答は「現在ご用意はございません」です。制度が見当たらないのではなく、会社が明言しているタイプの不在です。
したがってこのセクションは、優待の代わりに配当と株式の需給の話になります。
配当
配当は年1回の期末配当のみです。基準日は1月31日。会社のFAQには「中間配当を行うときの株主確定日は7月31日」との記載もありますが、直近では中間配当は実施されていません。
| 2025年1月期 | 2026年1月期 | 2027年1月期 | |
|---|---|---|---|
| 1株当たり年間配当 | 25.00円 | 12.00円 | 未定 |
| 内訳 | 普通10円+特別15円 | 普通6円+特別6円 | ― |
| 配当金総額 | 35,107千円 | 50,842千円 | ― |
| 配当性向 | 14.4% | 16.7% | ― |
25円から12円への「減配」に見えますが、減配ではありません。 2025年10月1日付で1株を3株に分割しているため、分割を考慮しない場合の2026年1月期の配当は36円相当(普通18円+特別18円)です。25円から36円へ、実質は44%の増配でした。配当金総額も35,107千円から50,842千円へ増えています。株式分割をまたいだ配当の比較は、必ず総額か調整後の1株額で行ってください。
2027年1月期の配当は現時点で未定です。会社は「業績に対応した配当を行う」方針を掲げており、普通配当部分に業績次第で特別配当を加える運用をしています。通期の減益予想どおりに着地した場合、特別配当の扱いがどうなるかは開示を待つしかありません。
権利付き最終日を計算しておきます。基準日の2027年1月31日は日曜日です。取引所の最終営業日は2027年1月29日(金)となり、権利付き最終日はその2営業日前の**2027年1月27日(水)**になります。
用語メモ:権利付き最終日 配当や株主総会の議決権を受け取るには、基準日時点で株主名簿に載っている必要があります。日本株の受渡しは約定日から2営業日後(T+2)なので、基準日の2営業日前までに買っておく必要があります。この日を権利付き最終日と呼び、その翌営業日(権利落ち日)に買っても、その期の配当は受け取れません。基準日が休業日にあたる場合は、直前の営業日を起点に逆算します。
株式数と希薄化
発行済株式総数は7月末時点で4,247,200株(うち自己株式298株)です。期初の4,237,200株から10,000株増えていますが、これは2026年6月16日に発行された取締役向けの譲渡制限付株式報酬によるものです。資本金と資本準備金がそれぞれ6,685千円増えました。増加率は0.24%で、希薄化としては軽微です。
新株予約権は存在しません。 招集通知の「新株予約権等に関する事項」は「該当事項はありません」と記載されており、短信でも潜在株式調整後1株当たり利益は「潜在株式が存在しないため」記載されていません。つまり、この銘柄には将来の希薄化要因がほぼありません。証券情報サイトのEPS・PERをそのまま使ってよい、数少ないタイプの銘柄です。
立会外分売と、名証メイン市場
2026年7月、会社は立会外分売を実施しました。
| 内容 | |
|---|---|
| 分売予定株式数 | 180,000株(発行済の4.24%) |
| 実際の分売株式数 | 136,800株(同3.22%) |
| 分売の値段 | 1,037円 |
| 実施日 | 2026年7月22日 |
| 実施の目的(開示原文) | 名古屋証券取引所メイン市場への市場区分変更を目指し、流通株式比率の向上および流動性向上を図る |
読むべき点が2つあります。
1つは、目的が市場区分変更だと明記されていることです。会社は2022年12月に名証ネクスト市場へ上場しており、次の段階としてメイン市場を目指しています。中期経営計画にも「次なる株式市場へのステップアップ」という表現が繰り返し出てきます。メイン市場には流通株式比率や流通株式時価総額の基準があり、それを満たすために市場に出回る株式を増やす必要がある、という文脈です。
もう1つは、予定した180,000株のうち136,800株しか売れなかったことです。予定株数に対する消化率は76%。立会外分売は買い手の申込みがあって初めて成立するので、この結果は需要が予定に届かなかったことを意味します。流通株式比率を上げる取り組みは、1回で終わらない可能性があります。
株主構成
前期末(2026年1月31日)時点の上位株主です。
| 株主名 | 持株数 | 持株比率 |
|---|---|---|
| 松藤 展和(代表取締役社長) | 2,153,700株 | 50.83% |
| アクアプレコン株式会社 | 450,000株 | 10.62% |
| 松藤 真弓 | 180,000株 | 4.24% |
| 松藤 花梨 | 180,000株 | 4.24% |
| 松藤 南輝 | 180,000株 | 4.24% |
上位5名で74.17%を占めます。社長個人だけで50.83%、つまり普通決議を単独で可決できる水準を保有しています。株主数は892名です。
用語メモ:議決権比率のライン 過半数(50%超)を持つ株主は、取締役の選任など普通決議を単独で可決できます。3分の1超を持つ株主は、定款変更や合併などの特別決議を単独で否決できます。アップコンの場合、社長が50%超を持っているため、経営の意思決定は実質的に社長の判断で決まる構造です。
この株主構成は、そのまま強みと弱みの両方になります。経営の一貫性が保たれ、短期的な株主の圧力で方針がぶれにくい一方で、流通している株式が少ないため株価が少ない売買で動きやすく、メイン市場の流通株式基準を満たすにはこの比率を下げていく必要があります。立会外分売の続きがあるとすれば、この表の数字が動くことになります。
なお、上の表は2026年1月31日時点のものです。7月の立会外分売を誰が売ったかは開示されていないため、現時点の比率は変動している可能性があります。正式な株主構成は、次に提出される有価証券報告書で確認できます。
株価の見方
株価の水準について、確認できた事実を並べます。
- 2026年7月22日の立会外分売の値段:1,037円(適時開示の一次情報)
- 年初来高値:1,368円(2026年4月2日)/年初来安値:996円(2026年7月23日)※株価情報サイトベース
- 発行済株式数:4,247,200株(2026年7月末)
- 会社予想1株当たり当期純利益:50.27円
- 1株当たり純資産(7月末自己資本1,960,007千円÷自己株控除後4,246,902株、筆者算出):461.51円
仮に1,037円で計算すると、時価総額は約44.0億円、会社予想EPSベースのPERは20.6倍、7月末BPSベースのPBRは2.25倍になります。ただし本記事執筆時点の株価は確認できていないため、実際の数値はご自身の証券口座でご確認ください。
そのうえで、強気と弱気の両方の読み方を並べておきます。
強気に読むなら。上期の進捗は会社計画を大きく上回り、通期予想は据え置かれたままです。下期には2億617万円の大型案件が確定しており、含み売上の3割を埋めています。会社は「通期では予算達成の見込み」とし、上方修正が必要になれば速やかに開示すると説明しています。財務は自己資本比率85.6%、実質の余剰資金16.4億円で、時価総額の4割近くが金融資産という状態です。粗利率60%台の事業が、設備をほとんど持たずに回っています。名証メイン市場への区分変更が実現すれば、投資家層が広がる可能性もあります。
弱気に読むなら。直近3か月の営業利益は772万円まで落ちており、前期の最終四半期は営業赤字でした。四半期の利益が案件のタイミングでこれほど振れる会社に、安定的な利益倍率を当てはめてよいのかという問題があります。会社自身が中期経営計画で2028年1月期・2029年1月期に前期を超える営業利益を置いていません(322百万円→300百万円→360百万円)。従業員60名・施工機10台という上限も会社が明示しています。流通株式が少ないため株価が動きやすく、7月の立会外分売は予定株数の76%しか消化できませんでした。配当性向の目標は10%以上にとどまり、増えた現金は投資信託と保険積立金に向かっています。
どちらの読み方が正しいかは、この記事では判断しません。上期の決算をどう受け取るかは、「四半期の772万円」を異常値と見るか、この会社の振れ幅の一部と見るかで変わります。 判断の材料として、前期の11〜1月が営業赤字だったという事実を置いておきます。
今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年9月14日 | 半期報告書の提出予定日(短信に記載) |
| 2026年12月頃 | 第3四半期決算発表(前期は12月15日) |
| 2026年12月 | 7月23日に開示された大型案件(206,170千円)の施工完了予定 |
| 2027年1月27日(水) | 期末配当・議決権の権利付き最終日(筆者算出) |
| 2027年1月31日 | 決算期末 |
| 2027年3月頃 | 通期決算発表・2028年1月期の業績予想と配当予想の開示(前期は3月12日) |
| 2027年4月下旬 | 定時株主総会・有価証券報告書提出(前期は4月24日・4月23日) |
見るべきKPIは5つです。
- 大型案件の適時開示。この会社の四半期業績は大型案件の有無で決まります。受注金額と施工完了時期がそのまま売上計上の四半期を示すので、開示が出たら必ずどの四半期に載るかを確認してください。
- 四半期単独の粗利率。今期は70.0%→57.5%と大きく動きました。案件構成の変化を最も早く示す指標です。
- 販管費の水準。前期の11〜1月に171,511千円まで膨らんで営業赤字の原因になっています。今期の第4四半期に同じことが起きるかどうかが、通期着地の分かれ目になります。
- 投資有価証券・保険積立金の残高。中期計画では投資資金を年5億円に増やす方針です。運用残高が増えれば、有価証券評価損益が決算に与える影響も大きくなります。
- 名証メイン市場への区分変更の進捗と、追加の立会外分売。流通株式比率を上げる動きが続くかどうかは、需給に直接効きます。
3行まとめ
- 上半期は売上594,773千円(前年同期比11.7%減)、営業利益172,386千円(同34.2%減)だが、会社の上期計画(営業利益86,715千円)に対しては98.8%上振れており、通期予想は据え置かれた。
- 四半期に割ると5〜7月の営業利益は772万円で、売上半減と粗利率9.1ポイント低下により、固定費が粗利をほぼ食い尽くした。ただし前期の11〜1月も営業赤字であり、この振れ幅はこの会社の構造そのものである。
- 手元の金融資産は総資産の80.9%にあたる18.5億円まで積み上がり、上半期は投資有価証券と保険積立金に2億円を移した。優待はなく(会社明言)、配当は年1回・性向16.7%、名証メイン市場を目指した立会外分売は予定の76%の消化にとどまった。
本記事について
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値は、アップコン株式会社の2027年1月期第2四半期(中間期)決算短信(2026年9月14日)、2027年1月期第1四半期決算短信(2026年6月11日)、2026年1月期決算短信(2026年3月12日)、2026年1月期第3四半期決算短信および第2四半期(中間期)決算短信、第23回定時株主総会招集ご通知(2026年4月2日)、新中期経営計画ローリング(2026年2月16日)、大型案件受注に関するお知らせ(2026年7月23日)、株式の立会外分売に関する各開示(2026年7月13日・21日・22日)、および会社IRサイトのFAQに基づいています。四半期単独の数値は、累計値から前四半期の累計値を差し引いて筆者が算出したものであり、千円未満の切捨てにより±1千円程度のずれが生じる場合があります。1株当たり純資産・PER・PBR・実質余剰資金は筆者の算出です。
本記事で踏み込まなかった論点として、次のものがあります。中間期の決算補足説明資料は本稿執筆時点で会社IRサイトに掲載を確認できず、上期の会社説明の内容は決算説明の書き起こし(ログミーファイナンス、2026年9月14日公開)を参照しています。書き起こしに基づく記載には「100億宣言」および壁断熱ウレタン注入工法の内容が含まれます。原資料をご確認ください。また、2026年7月の立会外分売に応じた株主の内訳、および現在の株主構成は開示されておらず、本記事の株主表は2026年1月31日時点のものです。株価・時価総額・PER・PBRは基準日を明示した概算であり、公開時点の実際の株価とは異なります。ご自身の証券口座で確認のうえご利用ください。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。