本記事は2026年9月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事でわかること
- 通期で382百万円の営業赤字になった直接の原因(子会社ののれん減損767百万円)と、その内訳
- 累計しか開示されない決算を四半期ごとに差し引くと、粗利率が46.1%→51.6%→52.5%→53.1%と一本調子で上がっていたこと
- 会社が使う「調整後営業利益」という指標の中身と、会社の説明資料のブリッジ図に潜む基準のずれ
- 税引前損失381百万円に対して最終損失が555百万円まで膨らんだ理由(法人所得税費用139百万円の正体)
- 2027年7月期予想が「16.7%~12.5%の減収」に見えるのに、会社が「107.3%~112.7%の増収」と書いている理由
- 決算と同日に決まったクランチロールへの第三者割当(7.56%の希薄化)と、2026年7月にプライム市場からスタンダード市場へ移った経緯のつながり
- 株主優待・配当の有無と、会社がそれをどう明言しているか
1. この会社を一言でいうと
Link-Uグループを一言でいうなら、**「本屋の棚ではなく、本屋の倉庫と配送を引き受けている会社」**です。
マンガアプリを開いたとき、読者が見ているのは出版社の看板です。『マンガUP!』はスクウェア・エニックス、『MANGA Plus by SHUEISHA』は集英社。ところが、そのアプリの裏側で、何百万人ものユーザーが同時にページをめくっても落ちないサーバーを設計し、画像を高速で配信し、アプリそのものを作って運用しているのは、看板を出していない別の会社であることが多い。Link-Uはその「別の会社」です。
自社設計のオリジナルサーバーによるコスト競争力と高速なデータ転送、そして大手出版社との長期の運用実績。これが会社が自ら挙げる強みです(決算短信より)。要するに、出版社が自前では抱えきれない「デジタル配信の裏側」を、設備ごと引き受けている。
この例えは、この記事の後半でもう3回使います。弱気材料のところでも、資本政策のところでも、同じ軸で説明ができるからです。先に結論だけ言っておくと、倉庫と配送を預かる会社は、棚に何を並べるかを自分では決められない。今回発表された中期経営計画「中期経営計画2030」で会社が「IP価値の最大化」を掲げたのも、決算と同日にクランチロールへ株を割り当てたのも、この一点から説明できます。
会社の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | Link-Uグループ株式会社(証券コード4446) |
| 上場市場 | 東証スタンダード市場(2026年7月2日にプライム市場から変更) |
| 決算期 | 7月期(2025年8月1日~2026年7月31日が「2026年7月期」) |
| 会計基準 | IFRS(2025年7月期から適用) |
| セグメント | インターネットサービス事業の単一セグメント(短信上の開示) |
| 従業員数 | 単体22名、連結193名(2026年7月末) |
| 資本金 | 477百万円 |
| 株主優待 | 制度なし(会社IRのFAQで「現在ご用意はございません」と明言) |
| 配当 | 無配(2025年7月期・2026年7月期とも0円、2027年7月期予想も0円) |
用語メモ:単一セグメントということの意味 セグメント情報は、会社が「事業ごとの売上と利益」を投資家に見せるための開示です。Link-Uはこれを「インターネットサービス事業の単一セグメント」としているため、短信からは事業ごとの利益がまったく読み取れません。売上だけは決算説明資料のグラフで事業別に開示されていますが、利益は会社全体の数字しかない。この記事で四半期の差し引きにこだわるのは、事業別が見えない以上、時間軸で切るしかないからです。
直近4期の業績推移
| 決算期 | 売上収益 | 営業利益 | 親会社帰属利益 | EPS | 1株当たり持分 | 配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年7月期 | 3,671百万円 | 312百万円 | 157百万円 | 11.10円 | 182.67円 | 0円 |
| 2025年7月期 | 4,835百万円 | 326百万円 | 147百万円 | 10.44円 | 182.69円 | 0円 |
| 2026年7月期 | 4,800百万円 | △383百万円 | △555百万円 | △39.18円 | 161.48円 | 0円 |
| 2027年7月期(予想) | 4,000~4,200百万円 | 400~480百万円 | 241~293百万円 | 17.00~20.67円 | - | 0円 |
(2024年7月期~2026年7月期は2026年9月14日「第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ」の記載、2027年7月期は同日の決算短信より)
この表でまず気づいてほしいのは、2024年7月期から2026年7月期まで、売上は伸びているのに親会社帰属の利益は157→147→△555と一度も増えていないことです。今期の赤字転落だけを「一時的な減損のせい」と片づけると、その前の2期の横ばいを見落とします。
2. 2026年7月期決算のハイライト
まず短信の数字をそのまま並べます。
| 項目 | 2026年7月期 | 2025年7月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 4,800,392千円 | 4,835,406千円 | △0.7% |
| 売上総利益 | 2,446,526千円 | 2,309,721千円 | +5.9% |
| 販売費及び一般管理費 | 2,069,616千円 | 2,062,257千円 | +0.4% |
| 減損損失 | 767,242千円 | 3,371千円 | - |
| 営業利益 | △382,566千円 | 326,968千円 | - |
| (参考)調整後営業利益 | 403,056千円 | 282,240千円 | +42.8% |
| 税引前利益 | △380,737千円 | 308,943千円 | - |
| 法人所得税費用 | 139,473千円 | 84,019千円 | +66.0% |
| 当期利益 | △520,211千円 | 224,924千円 | - |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | △554,815千円 | 147,986千円 | - |
| 基本的1株当たり当期利益 | △39.14円 | 10.44円 | - |
(2026年9月14日発表「2026年7月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」より転記。前期の調整後営業利益282百万円は短信の参考欄の記載)
売上はほぼ横ばい。ところが売上総利益は5.9%増えています。原価が2,525百万円から2,353百万円へ減っているからです。そして販管費はほぼ動いていない。ここまでなら増益決算の形をしています。
それを全部吹き飛ばしたのが、減損損失767,242千円です。
財政状態とキャッシュ・フロー
| 項目 | 2026年7月末 | 2025年7月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び現金同等物 | 953,507千円 | 1,654,662千円 | △701,155千円 |
| のれん | 330,601千円 | 1,107,417千円 | △776,816千円 |
| 持分法で会計処理されている投資 | 462,883千円 | 45,076千円 | +417,807千円 |
| その他の金融資産(非流動) | 843,728千円 | 432,144千円 | +411,584千円 |
| 資産合計 | 4,865,892千円 | 5,720,877千円 | △854,985千円 |
| 借入金(流動+非流動) | 1,306,371千円 | 1,654,811千円 | △348,440千円 |
| 親会社の所有者に帰属する持分 | 2,289,532千円 | 2,589,279千円 | △299,747千円 |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 47.1% | 45.3% | +1.8pt |
| キャッシュ・フロー | 2026年7月期 | 2025年7月期 |
|---|---|---|
| 営業活動 | +677,144千円 | +222,561千円 |
| 投資活動 | △954,019千円 | △112,808千円 |
| 財務活動 | △429,376千円 | △362,034千円 |
| 現金及び現金同等物 期末残高 | 953,507千円 | 1,654,662千円 |
ここにも、見落とすと誤解する数字があります。
1つ目。最終赤字555百万円なのに、自己資本比率は45.3%から47.1%へ上がっています。 分子(自己資本)が300百万円減った以上に、分母(総資産)が855百万円減ったからです。のれんが777百万円消えた、その帳尻です。自己資本比率の改善が財務の改善を意味しないケースの典型で、ここは「赤字で資産が痩せた結果、比率だけ良く見えている」と読むのが正確だと思います。
2つ目。営業キャッシュ・フローは222百万円から677百万円へ3倍になっています。 これは減損767百万円が現金の出ていかない費用(非資金費用)として足し戻されているためで、短信も「税引前損失380,737千円を計上した一方で、減損損失767,242千円及び減価償却費及び償却費298,978千円といった非資金費用を調整した」と明記しています。
3つ目。営業CF 677百万円に対して投資CFが△954百万円で、フリーキャッシュ・フローは△277百万円です。 現金が701百万円減った最大の理由はここにあります。投資の中身は、持分法で会計処理されている投資の取得319百万円、有形固定資産316百万円、無形資産168百万円、連結範囲の変更に伴う支出89百万円(短信より)。サーバーを自前で持つ会社なので、有形固定資産への支出が前期の72百万円から316百万円へ4倍以上に増えている点は覚えておく価値があります。
3. 深掘り:累計しか出ない決算を、四半期に割り直す
ここからがこの記事の本体です。
Link-Uは四半期の損益を「累計」でしか開示しません。1Qは1Qだけ、2Qは8月~1月の6か月合計、3Qは9か月合計、通期は12か月合計。つまり「11月~1月の3か月だけの成績」は、どこにも書いていない。自分で引き算するしかありません。
用語メモ:なぜ引き算が必要なのか 上場企業の四半期開示は「累計方式」が一般的です。3Q決算短信に載っている「営業利益241百万円」は、8月から4月までの9か月の合計であって、2月~4月の3か月の数字ではありません。3か月分だけを取り出したいときは、その四半期の累計から前の四半期の累計を引く。これだけです。この作業は他のどの銘柄でも同じように使えるので、覚えておいて損はありません。
Link-Uの各短信から累計値を転記し、差し引いて3か月ごとに並べたものが以下です。4つの四半期を足し戻すと、9つの科目すべてが通期の開示値とぴったり一致することを確認済みです(売上収益・売上原価・売上総利益・販管費・減損損失・その他の収益・その他の費用・持分法損益・営業利益の9科目)。
単独四半期の損益(筆者の差し引き・単位:千円)
| 期間 | 売上収益 | 売上総利益 | 粗利率 | 販管費 | 減損損失 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025年7月期 1Q(24年8-10月) | 1,280,416 | 603,666 | 47.1% | 499,760 | 0 | 127,930 | 10.0% |
| 2025年7月期 2Q(24年11-1月) | 1,344,093 | 665,089 | 49.5% | 522,919 | 0 | 175,362 | 13.0% |
| 2025年7月期 3Q(25年2-4月) | 1,056,880 | 513,883 | 48.6% | 542,834 | 0 | △24,588 | △2.3% |
| 2025年7月期 4Q(25年5-7月) | 1,154,017 | 527,083 | 45.7% | 496,744 | 3,371 | 48,264 | 4.2% |
| 2026年7月期 1Q(25年8-10月) | 1,089,359 | 501,908 | 46.1% | 557,274 | 0 | △43,742 | △4.0% |
| 2026年7月期 2Q(25年11-1月) | 1,195,804 | 616,749 | 51.6% | 522,874 | 0 | 100,084 | 8.4% |
| 2026年7月期 3Q(26年2-4月) | 1,263,108 | 663,370 | 52.5% | 484,949 | 0 | 185,064 | 14.7% |
| 2026年7月期 4Q(26年5-7月) | 1,252,121 | 664,499 | 53.1% | 504,519 | 767,242 | △623,972 | △49.8% |
この表のポイントは3つあります。
ポイント1:粗利率が4四半期連続で上がっている。 46.1% → 51.6% → 52.5% → 53.1%。前期の同じ4四半期は47.1% → 49.5% → 48.6% → 45.7%で、期末に向けて下がっていました。方向が真逆です。売上がほぼ横ばいでも売上総利益が5.9%増えたのは、この粗利率の改善がまるごと効いています。
ポイント2:販管費は1Qの557百万円がピークで、その後は485~505百万円に落ちている。 会社は説明資料で「広告宣伝費」の減少を利益の押し上げ要因(+147百万円)として挙げており、四半期の動きと整合します。
ポイント3:4Qの営業損失624百万円は、減損767百万円を含んだ数字である。 減損を除いて考えると、4Qの実力ベースの利益は後述のとおりプラスです。
前期の3Qは、実は赤字だった
もうひとつ、累計だけ見ていたら絶対に気づかない事実があります。2025年7月期の3Q(2025年2月~4月)は、単独では営業損失24,588千円の赤字でした。この期は通期で営業利益327百万円を計上しており、累計の開示では3Q時点でも278百万円の黒字です。赤字の3か月は、累計の中に完全に埋まっていました。
これは「累計しか開示しない会社では、好調に見える期の中に赤字の四半期が埋まっていることがある」という一般論の実例です。そして今期を評価するには、この物差しが要ります。前期の3Qが赤字だったからこそ、今期3Qの185百万円という数字の意味が分かる。
調整後営業利益とは何か
会社は今期から「調整後営業利益」を前面に出しています。定義は短信の注記に明記されていて、営業利益から減損損失・その他の収益・その他の費用を調整して算出したものです。実際に短信の損益計算書の数字を当てはめると、こうなります。
調整後営業利益 = 営業利益 + 減損損失 - その他の収益 + その他の費用
2026年7月期: △382,566 + 767,242 - 10,241 + 28,622 = 403,057千円
2025年7月期: 326,968 + 3,371 - 51,125 + 3,026 = 282,240千円
会社の開示は403,056千円・282,240千円なので、当期は筆者の計算と1千円だけ差が出ます。損益計算書の各科目が千円未満を切り捨てて表示されているためで、実務上は一致と見て差し支えありません。前期比は403,056 ÷ 282,240 = 142.8%。会社が言う「調整後営業利益は142.8%」はこれで裏が取れます。
同じ計算を4Q単独に当てはめると、
2026年7月期 4Q単独: △623,972 + 767,242 - (△465) + 16,847 = 160,582千円
2025年7月期 4Q単独: 48,264 + 3,371 - 12,734 + 424 = 39,325千円
前期比 = 160,582 ÷ 39,325 = 408.3%
会社が説明資料で掲げる「4Q単体の調整後営業利益161百万円、前年比408%」と一致します。ここまでは、会社の説明は数字の上で正確です。
ただし、説明資料のブリッジ図には基準のずれがある
会社の決算説明資料13ページには、前期の営業利益から今期の営業利益までを要因別に橋渡しするグラフ(ブリッジ図)が載っています。図から読み取った数値は次のとおりです(単位:百万円、筆者が図から読み取ったもの)。
| 要因 | 金額 |
|---|---|
| 2025年7月期 営業利益 | 327 |
| 売上 | △35 |
| 売上連動費用 | +275 |
| 広告宣伝費 | +147 |
| 人件費・業務委託等 | △232 |
| 減価償却等 | △41 |
| その他 | △37 |
| 2026年7月期 営業利益(調整後) | 403 |
| 減損損失等 | △786 |
| 2026年7月期 営業利益(調整前) | △383 |
積み上げを検算すると327-35+275+147-232-41-37=404となり、図の403とは1百万円ずれます。これは百万円未満切捨ての累積誤差の範囲です。また「減損損失等786」は、短信の減損767.2+その他の費用28.6-その他の収益10.2=785.6で説明でき、ここも整合します。
気になるのは、橋の左端と右端で基準が違うことです。 左端の「327」は前期の調整前の営業利益で、右端の「403」は今期の調整後の営業利益です。会社自身が「調整後営業利益は前期比142.8%」と書いているとき、その分母は前期の調整後282百万円のほうです。同じ資料の中に、282を分母にした「143%」と、327を起点にした橋が併存している。
同じ基準で並べ直すと、こうなります。
| 比較の仕方 | 2025年7月期 | 2026年7月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 調整前どうし(=IFRSの営業利益) | 326.9百万円 | △382.5百万円 | 赤字転落 |
| 調整後どうし | 282.2百万円 | 403.0百万円 | +42.8% |
どちらも事実です。「営業赤字」も「実力ベースで4割強の増益」も、両方とも本当である、という状態がこの決算の正体だと思います。ブリッジ図を見るときに、左端が何の数字なのかを確認する癖はつけておいたほうがいい、というのが個人的な感想です。
4. 減損767百万円の中身と、税金の話
減損の中身
減損損失767,242千円のうち、745百万円は連結子会社である株式会社Romanzに係るのれんです。同日開示の「減損損失の計上及び通期連結業績予想と実績値との差異に関するお知らせ」に、理由がこう書かれています。
同社が展開するマーケティング事業において、主要顧客との取引縮小等により、買収時に想定していた収益が確保できず、事業計画を見直したことによるものです。
用語メモ:のれんの減損 会社を買収するとき、相手の純資産より高い値段を払うことがあります。その差額が「のれん」で、買収先が将来稼ぐと見込んだ分の値札です。その見込みが崩れたとき、値札を書き換える会計処理が減損です。現金は出ていきませんが、その分だけ利益と自己資本が減ります。IFRSではのれんを毎年償却せず、代わりに毎年減損テストを行うため、平常時はゼロ、崩れた年に一度で大きく計上されるという出方をします。
のれんは1,107百万円から331百万円へ777百万円減りました。減損745百万円との差32百万円は、2026年7月31日付でグループから外れたBrightech・バリューコンサルティング分と考えるのが自然です(会社は内訳を開示していないため、ここは筆者の推測です)。
業績予想との差異
2026年3月16日に公表されていた前回予想と、実績の差は次のとおりです(同日の差異開示より)。
| 項目 | 前回予想 | 実績 | 差 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 4,900~5,100百万円 | 4,800百万円 | △100~△300百万円 |
| 営業利益 | 320~400百万円 | △383百万円 | △703~△783百万円 |
| 税引前利益 | 300~380百万円 | △381百万円 | △681~△761百万円 |
| 親会社帰属当期利益 | 150~200百万円 | △555百万円 | △705~△755百万円 |
注意点をひとつ。この差異開示ではEPSが「△39.18円」と書かれていますが、決算短信では「△39.14円」です。 差異開示は百万円に丸めた555百万円を使っており、短信は554,815千円という実額を使っているため、小数第2位がずれます。正確なのは短信の△39.14円です。同じ日に出た2つの書類で1株利益が違って見える、というのは意外とよくあることで、数字を引くときはどの書類から引いたかを自分で覚えておく必要があるという実例です。
税引前損失なのに、税金が139百万円かかっている
この決算で一番地味に効いているのがここです。
税引前損失 △380,737千円
法人所得税費用 139,473千円 ← 赤字なのに費用が出る
当期損失 △520,211千円
赤字なら税金は戻ってくるのでは、と思うところですが、実際には139百万円の費用が計上されています。貸借対照表を見ると、繰延税金資産が前期末の85,492千円から当期末はゼロになり、代わりに繰延税金負債が110,982千円立っています。
用語メモ:繰延税金資産 将来の税金を減らせる見込みを、資産として先に計上したものです。ただし「将来ちゃんと黒字が出て、その税金を実際に減らせる」見込みがあることが条件になります。赤字が出て見通しが悪くなると、この資産は取り崩され、取り崩した分がそのまま税金費用として損益計算書に乗ります。赤字の年に税負担が増えて見えるのは、たいていこれが原因です。
もうひとつ、当期損失520百万円に対して親会社帰属の損失が555百万円と、親会社のほうが大きい点も押さえておきたいところです。差の34.6百万円は非支配持分(=子会社の外部株主)に帰属する利益です。減損を出したRomanzは100%子会社なので損失は全額が親会社側に乗り、一方でコンパスなど外部株主のいる子会社は利益を出していた。グループの中で、稼いでいる会社と損を出した会社が別だったということが、この1行から読めます。
包括利益で見ると、傷はもう少し浅い
最後に、損益計算書の下にある包括利益計算書も見ておきます。
| 項目 | 2026年7月期 |
|---|---|
| 当期損失 | △520,211千円 |
| その他の包括利益(公正価値測定の金融資産) | +285,904千円 |
| 当期包括利益 | △234,306千円 |
保有している金融資産の含み益が286百万円増えており、親会社持分の減少は300百万円にとどまりました。実際、非流動の「その他の金融資産」は432百万円から844百万円へ412百万円増えています。損益計算書だけ見ると555百万円の赤字ですが、資本の目減りは300百万円。この差を作っているのが、損益を通さない含み益です。ただし会社はこの金融資産の中身を開示していないため、何の含み益なのかは有価証券報告書(2026年10月28日提出予定)を待つ必要があります。
5. 事業別に何が起きたのか
短信では単一セグメントなので、事業別の数字は決算説明資料のグラフから読むことになります。以下は筆者が説明資料の棒グラフから読み取った値です(単位:百万円)。
| 事業 | 2025年7月期 | 2026年7月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| マンガサービス | 2,465 | 2,807 | 113.9% |
| 制作 | 1,270 | 1,477 | 116.3% |
| うち技術開発 | 824 | 952 | 115.5% |
| うちコンテンツ | 445 | 525 | 118.0% |
| マーケティング | 1,090 | 514 | 47.2% |
| 3事業合計 | 4,825 | 4,798 | 99.4% |
| (参考)短信の売上収益 | 4,835 | 4,800 | 99.3% |
検算として、3事業の合計と短信の売上収益を突き合わせると、2026年7月期は差が2百万円、2025年7月期は差が10百万円にとどまりました。グラフの読み取り精度と百万円未満の丸めを考えれば、この3事業でほぼ全社の売上を説明できていると判断してよさそうです。制作事業の内訳(技術開発+コンテンツ)も、各四半期で合計が一致することを確認しています。
読み方はシンプルです。伸びた2つ(マンガ+342百万円、制作+207百万円)を、縮んだ1つ(マーケティング△576百万円)がちょうど食い潰した。だから全社は0.7%の減収になった。そしてその縮んだ事業ののれんが、期末に745百万円吹き飛んだ。
海外比率の上昇
マンガサービス事業の四半期売上(説明資料の棒グラフより)は、2026年7月期が1Q 666 → 2Q 683 → 3Q 719 → 4Q 739百万円と4四半期連続で最高を更新しています。同事業に占める海外売上比率のグラフは、2025年7月期1Qの7.9%から、Crunchyroll Mangaをリリースした2025年10月以降に傾きが変わり、直近は17.5%です。
ただしここに1つ、数字の食い違いがあります。決算短信の本文は「マンガサービス事業における海外売上比率は17.2%(前年同期10.3%)まで上昇」と書いており、説明資料のグラフは直近を17.5%と表示しています。前年同期の10.3%はグラフの2025年7月期4Qと一致するので、17.2%も4Qの数字を指しているはずですが、0.3pt合いません。どちらが正なのかは開示からは判断できないため、この記事では「17%台前半から半ば」という粒度で扱い、精緻な比較には使いません。会社が併せて開示している「海外マンガサービスの売上高が前年比182%」は短信本文の記載です。
6. 2027年7月期予想の読み方
短信に載っている予想はこうです。
| 項目 | 2027年7月期予想 | 2026年7月期実績比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 4,000~4,200百万円 | △16.7%~△12.5% |
| 営業利益 | 400~480百万円 | 黒字転換 |
| 税引前利益 | 370~450百万円 | 黒字転換 |
| 親会社帰属当期利益 | 241~293百万円 | 黒字転換 |
| 基本的1株当たり当期利益 | 17.00~20.67円 | - |
| 配当 | 0円 | 無配継続 |
これは「1割以上の減収予想」に見えます。ですが、会社は同じ短信の中で「前期比107.3%~112.7%」と書いています。 矛盾しているわけではありません。分母が違うだけです。
2026年7月31日付でBrightech・バリューコンサルティングをグループから外し、コンパスを持分法適用関連会社に異動させたため、その3社分の売上は2027年7月期の連結に入りません。会社が示している継続事業ベースの2026年7月期売上は3,727,746千円。差し引くと、
連結から外れる分 = 4,800,392 - 3,727,746 = 1,072,646千円(全体の22.3%)
4,000,000 ÷ 3,727,746 = 107.3%
4,200,000 ÷ 3,727,746 = 112.7% ← 短信の記載と一致
つまり、売上の2割強が会計上いなくなったうえで、残った事業は7~13%伸びる、というのが会社の絵です。これを「減収予想」と読むか「実質増収予想」と読むかで、この銘柄の見え方はかなり変わります。
利益率も計算しておきます。予想の中央値(売上4,100百万円・営業利益440百万円)で営業利益率は10.7%。2026年7月期の調整後営業利益率8.4%、継続事業ベースの8.7%(説明資料)からの改善を見込んでいることになります。
会社の予想EPS 17.00~20.67円は、後述する第三者割当による新株1,071,900株を織り込んでいるのかどうかが短信からは読み取れません。現在の発行済株式数14,175,300株で単純に割ると、
241,000千円 ÷ 14,175,300株 = 17.00円
293,000千円 ÷ 14,175,300株 = 20.67円
と、開示されたレンジにぴったり一致します。したがって予想EPSは増資前の株式数ベースであり、新株発行後の期中平均株式数で計算すると、この数字より下がる可能性が高いと考えられます(筆者の計算。会社が前提を明示しているわけではありません)。
中期経営計画2030に必要な成長率
決算と同日に公表された「中期経営計画2030(2027年7月期~2030年7月期)」の数値目標は、2030年7月期に売上収益80億円、営業利益16億円、営業利益率20%超です。説明資料では起点を「FY2026 売上48億円・営業利益4億円・営業利益率8.4%」としており、この営業利益4億円は調整後ベースである旨が注記されています。
ここから逆算すると、必要な年率成長率はこうなります(筆者の試算)。
| 指標 | 起点 | 2030年7月期目標 | 必要な年率成長率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益(実績48.0億円起点・4年) | 4,800百万円 | 8,000百万円 | 13.6% |
| 売上収益(継続事業37.3億円起点・4年) | 3,728百万円 | 8,000百万円 | 21.0% |
| 営業利益(調整後4.03億円起点・4年) | 403百万円 | 1,600百万円 | 41.2% |
| 営業利益(2027年7月期予想の中央値起点・3年) | 440百万円 | 1,600百万円 | 53.8% |
売上の13.6%は、直近のマンガ(13.9%増)・制作(16.3%増)の伸びと同じ水準です。 そこは手が届く範囲に見えます。一方で営業利益の年率41%は、直近の実績(調整後で42.8%増)を4年続ける必要があるということで、こちらは相当に強い前提です。しかも継続事業ベースを起点に置くと、売上のほうも年率21%が必要になる。中計を評価するときは、どの数字を起点にした年率なのかを自分で置き直してみるのが、いちばん誤解が少ないと思います。
2027年7月期からは事業区分も「MANGA PLATFORM(国内・海外マンガサービス)」「CONTENT SOLUTION(IP新領域・システム開発)」「LIFE STYLE(自社プロダクト・読み放題サービス)」の3区分に再編されます。説明資料に載っている新区分ベースの売上は次のとおりです(グラフからの読み取り)。
| 新区分 | 2026年7月期 | 2027年7月期予算 |
|---|---|---|
| MANGA PLATFORM | 16.1億円 | 18.8億円 |
| CONTENT SOLUTION | 6.6億円 | 8.3億円 |
| LIFE STYLE | 14.3億円 | 13.9億円 |
| 合計 | 37.0億円 | 41.0億円 |
注意すべきは、この新区分の数字は従来の事業区分とまったく比べられないことです。 従来区分の「マンガサービス事業」は2026年7月期に28.1億円ありましたが、新区分の「MANGA PLATFORM」は16.1億円。ビューンの読み放題などが「LIFE STYLE」へ移ったためと考えられます(会社は対応関係を明示していないため、ここは筆者の推測です)。来期以降の決算で「マンガが減った」と読み違えないように、区分が変わった年であることを覚えておく必要があります。
7. 資本政策と株主還元
この会社は配当も株主優待も出していません。ですから本来なら「株主還元」の項目は数行で終わるのですが、今期に限っては、資本政策のほうが決算よりも大きな出来事になっています。
7-1. 配当と優待の現状
- 配当:2025年7月期・2026年7月期とも年間0円。2027年7月期の予想も0円。会社IRの「株主還元に関する基本方針」には、利益還元を重要な経営課題としつつ「当面は実施する見込みはなく、当該方針が投資家の支持を得られなかった場合、当社株価の形成に影響を及ぼす可能性があります」と明記されています。方針として無配を選んでいることを、会社自身が言葉にしている形です。
- 株主優待:会社IRのFAQに「Q6. 株主優待制度はありますか?」→「現在ご用意はございません」。これは「探したが見つからなかった」ではなく、会社が明言している一次情報です。
- 基準日:会社IRのFAQによると、期末配当金の株主確定日は7月末日、中間配当を行うときの株主確定日は1月末日。ただし実際には配当を実施していないため、制度として基準日が定められているだけという状態です。
- 権利付き最終日:無配のため、7月31日の基準日で得られるのは定時株主総会の議決権だけです。国内株式の決済はT+2なので、権利付き最終日は基準日の2営業日前。2026年7月31日は金曜日だったため、逆算すると**2026年7月29日(水)**でした(筆者の計算。取引所の休業日次第で前後します)。
7-2. クランチロールへの第三者割当(2026年9月14日決議)
決算と同じ日に、資本提携が決議されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 割当予定先 | クランチロール株式会社(親会社:Crunchyroll, LLC、持株比率100%) |
| 発行新株式数 | 1,071,900株 |
| 発行価額 | 1株856円 |
| 払込金額の総額 | 917,546,400円 |
| 差引手取概算額 | 912,546,400円 |
| 増加する資本金/資本準備金 | 各458,773,200円 |
| 払込期日 | 2026年9月30日~2026年11月30日(予定) |
| 条件 | 有価証券届出書の効力発生、および外為法に基づく対内直接投資等の事前届出手続の完了 |
価格の決め方:取締役会決議日(9月14日)の直前営業日である9月11日の終値920円に0.93を乗じ、1円未満を切り上げて856円。ディスカウント率は**6.96%**で、日本証券業協会の指針が定める10%以内に収まります。
希薄化:1,071,900株は届出書提出日現在の発行済株式総数14,176,500株に対して7.56%(議決権ベースでは7.57%)。発行後の株式数は15,247,200株になります。東証の企業行動規範上、希薄化率25%未満かつ支配株主の異動を伴わないため、第三者からの意見入手や株主の意思確認手続きは不要とされています。
資金使途(913百万円):海外マンガ配信プラットフォーム事業の拡大365百万円、海外デジタルマンガ配信を支えるリソース・能力の強化290百万円、IP関連コンテンツ・サービスの海外展開257百万円。支出予定時期はいずれも2026年10月~2030年7月で、中期経営計画の期間とぴったり重なります。
株主構成の変化(開示より、2026年7月31日時点の株主名簿に新株を加算した会社の概算):
| 株主 | 募集前 | 募集後 |
|---|---|---|
| 松原 裕樹(代表取締役グループCEO) | 31.31% | 29.11% |
| 山田 剛史 | 20.70% | 19.24% |
| 株式会社アポロ・キャピタル | 8.62% | 8.01% |
| 株式会社メディアシーク | 7.86% | 7.30% |
| クランチロール株式会社 | - | 7.03% |
創業経営陣2名で約48%を握る構造は変わりません。クランチロールは一気に第5位株主になります。
ここで冒頭の例えに戻ります。倉庫と配送を預かる会社は、棚に何を並べるかを自分では決められない。 Link-Uが海外で売るには、海外に棚を持っている相手が要る。Crunchyroll, LLCは2026年5月時点で有料会員数2,100万人超(開示より)のアニメブランドです。2024年9月のMOU、2025年9月の共同開発契約、2025年10月のCrunchyroll Manga提供開始と段階を踏んできて、今回そこへ資本関係を足した。7%の希薄化と引き換えに、棚を持つ相手との関係を固定した取引、と整理するのが素直だと思います。
7-3. プライム市場からスタンダード市場へ(2026年7月2日)
今期のもう一つの大きな出来事が、市場区分の変更です。時系列で並べます。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2021年12月22日 | プライム市場の上場維持基準適合に向けた計画書を提出 |
| 2022年~2026年4月 | 適合状況の開示を計7回実施 |
| 2026年4月3日 | 1日平均売買代金基準への適合を開示。ただし流通株式時価総額基準は不適合が継続 |
| 2026年6月12日 | スタンダード市場への市場区分変更を申請 |
| 2026年6月25日 | 東証が変更を承認。プライム適合計画は撤回 |
| 2026年7月2日 | 東証プライム市場 → 東証スタンダード市場へ変更 |
2026年4月3日の開示には、適合状況の実数が載っています。
| 基準 | 2024年7月末 | 2025年7月末 | 上場維持基準 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 株主数 | 3,599人 | 3,422人 | 800人 | 適合 |
| 流通株式数 | 49,554単位 | 53,500単位 | 20,000単位 | 適合 |
| 流通株式時価総額 | 30.0億円 | 19.2億円 | 100億円 | 不適合 |
| 流通株式比率 | 34.9% | 37.7% | 35.0% | 適合 |
| 1日平均売買代金 | 0.13億円 | 5.25億円 | 0.2億円 | 適合 |
同じ開示に、改善期間内に適合が確認できなければ監理銘柄に指定され、その後の審査次第では2027年2月1日に上場廃止となる可能性があると書かれています。流通株式時価総額100億円という基準に対して19.2億円という距離は、事業の成長で埋められる幅ではありませんでした。スタンダードへの変更は、この期限に対する現実的な答えだったと読めます。会社は6月25日の開示で「中長期的なプライム市場への再適合を目指してまいります」とも書いています。
用語メモ:流通株式とは 東証の上場維持基準でいう「流通株式」は、発行済株式から、10%以上を持つ大株主、役員、自己株式、そして国内の銀行・保険会社・事業法人等が保有する株式などを除いたものです。市場で実際に売り買いされうる株式だけを数えよう、という考え方によります。
ここが、今回の第三者割当と交差します。クランチロール株式会社は事業法人です。 東証の定義に沿って考えると、同社が取得する7.03%は流通株式から除外される可能性があります。そうなると、増資によって発行済株式数は7.56%増えるのに、流通株式の数は増えず、流通株式比率は下がるという計算になります。2025年7月末の流通株式比率は37.7%で、基準の35.0%まで2.7ptしかありません。
ただしこれは会社が開示していない事項についての筆者の推測です。保有目的が純投資と認められる場合など、扱いが変わる余地もあります。次に東証へ提出される分布状況表と、会社のコーポレート・ガバナンス報告書で確認すべき「要確認箇所」の筆頭として挙げておきます。
7-4. 株数と潜在株式
| 項目 | 株数 | 発行済に対する比率 |
|---|---|---|
| 期末発行済株式数(2026年7月31日) | 14,175,300株 | 100.00% |
| 期末自己株式数 | 68株 | ほぼゼロ |
| 潜在株式数(ストック・オプション) | 65,100株 | 0.46% |
| 第三者割当による新株 | 1,071,900株 | 7.56% |
| 発行後(潜在株式含む) | 15,312,300株 | 108.02% |
前期からの株数の増加はわずか2,400株(新株予約権の行使分)で、今期の1株当たり利益の悪化は希薄化によるものではありません。EPSが10.44円から△39.14円になったのは、純粋に分子(利益)が動いたからです。この点は式で確認できます。
前期:147,986千円 ÷ 14,172,832株 = 10.44円 → 短信と一致
当期:△554,815千円 ÷ 14,173,631株 = △39.14円 → 短信と一致
なお短信の1株当たり情報には、第2回新株予約権(1,085個・65,100株)が逆希薄化効果を有するため希薄化後EPSの算定に含めていない旨の注記があります。損失の期には潜在株式を加えると1株当たり損失が小さく見えてしまうため、含めないという処理です。来期に黒字化すれば、この65,100株は希薄化後EPSに効いてきます。
7-5. 借入と手元資金
| 項目 | 2026年7月末 | 2025年7月末 |
|---|---|---|
| 現金及び現金同等物 | 953,507千円 | 1,654,662千円 |
| 借入金(流動) | 331,980千円 | 839,607千円 |
| 借入金(非流動) | 974,391千円 | 815,204千円 |
| 借入金合計 | 1,306,371千円 | 1,654,811千円 |
| ネットキャッシュ(現金-借入金) | △352,864千円 | △149千円 |
期中に長期借入662百万円を実行し、925百万円を返済しています(キャッシュ・フロー計算書より)。短期の借入を長期に組み替えつつ、全体では348百万円圧縮した形です。一方で手元現金が701百万円減ったため、ネットキャッシュは実質ゼロから△353百万円へ振れました。ここに第三者割当の913百万円が入れば、ネットキャッシュは再びプラスに戻る計算になります(筆者の試算。払込期日は2026年9月30日~11月30日の予定で、確定していません)。
8. 株価の見方
※この章の数値は株価に依存します。株価は2026年9月15日11時30分(前場引け)時点の792円を基準にしています。記事を読む時点の株価で必ず取り直してください。
直近の株価
| 日付 | 終値 | 出来高 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2026年9月11日(金) | 920円 | 144,800株 | 第三者割当の価格算定基準日 |
| 2026年9月14日(月) | 908円 | 119,100株 | 決算発表日(説明会は17:30から) |
| 2026年9月15日(火)前場引け | 792円 | - | 前日比△116円、△12.78% |
(Yahoo!ファイナンスの時系列・リアルタイム表示より。9月11日の終値920円は第三者割当開示にも記載されており、一次情報で裏が取れます)
決算短信・中期経営計画・第三者割当はいずれも9月14日の取引終了後に開示され、決算説明会は同日17時30分から開催されています。したがって市場の反応は9月15日に出ており、前場だけで12.78%下げています。
年初来高値は1,375円(2026年2月19日)、年初来安値は544円(2026年6月3日)。なお第三者割当の開示に載っている「2026年7月期」の高値1,814円・安値333円は2025年8月~2026年7月の会計年度ベースで、暦年ベースの年初来レンジとは集計期間が違います。同じ会社の高値が1,375円とも1,814円とも書かれているのは、期間の取り方が違うだけです。
指標(筆者の試算)
| 指標 | 792円(9/15前引け) | 908円(9/14終値) |
|---|---|---|
| 時価総額(現状株数) | 112.3億円 | 128.7億円 |
| 時価総額(増資後15,247,200株) | 120.8億円 | 138.4億円 |
| 予想PER(EPS 17.00~20.67円) | 38.3倍~46.6倍 | 43.9倍~53.4倍 |
| 実績PBR(BPS 161.52円) | 4.90倍 | 5.62倍 |
ここで注意点がひとつあります。 株価情報サイトに表示されているPERは、更新のタイミングによっては**修正前の会社予想EPS(10.58円)**を使っている場合があります。9月14日時点で85.8倍と表示されていたのはこの計算によるもので、9月14日発表の新しい予想EPS(17.00~20.67円)を使うと40倍台になります。決算発表直後は、サイトの指標が古い予想を引きずっていないかを確認したほうがいいという典型例です。
なお増資後の1株当たり親会社所有者帰属持分は、2026年7月末の持分2,289百万円に差引手取概算額913百万円を足して発行後株式数で割ると210.01円(筆者の概算。2027年7月期の損益は考慮していません)。BPSベースでは増資は希薄化ではなく、むしろ厚くなる方向に働きます。発行価額856円がBPS161.52円を大きく上回っているためです。
強気に見る材料
- 調整後営業利益は前期比42.8%増、4Q単独では4.1倍。 粗利率は4四半期連続で上昇し、販管費は抑えられている。減損を別に置けば、本業の収益性は明確に改善している。
- マンガサービス事業は4四半期連続で過去最高を更新し、海外比率が10%台前半から17%台へ。 海外マンガサービスの売上は前年比182%(短信より)。
- クランチロールとの資本提携により、海外の販路を持つ相手と関係を固定できた。 913百万円の資金使途はすべて海外関連で、中計の期間と一致している。発行価額856円は直前終値からわずか7%のディスカウントで、足元をみられた条件ではない。
- 不採算だったマーケティング事業を整理し終えた。 減損745百万円は痛いが、会計上の後始末は今期で完了しており、2027年7月期の連結からは対象会社が外れる。
- 予想の営業利益率10.7%は、実績の8.4%からの素直な延長線上にある。 中計の最終年度20%超と比べれば、来期の目標設定は保守的に見える。
弱気に見る材料
- 売上の2割強が連結から消える。 2027年7月期の連結売上は表面上1割以上減る。会社が言う「実質107.3~112.7%」は、あくまで分母を入れ替えたうえでの話で、グループ全体の事業規模そのものは縮んでいる。
- 利益は3期連続で伸びていない。 157百万円(2024年7月期)→147百万円(2025年7月期)→△555百万円。売上は3,671→4,835→4,800と増えたのに、最終利益は一度も増えていない。M&Aで売上を積み、そのM&Aののれんを減損した、という循環が一巡した形。
- 中計の営業利益は年率41%成長が必要。 売上の年率13.6%は実績の延長で届く水準だが、利益の41%は「売上の伸び以上に利益率が上がり続ける」ことを前提にしている。
- IPを持っているのは自社ではない。 冒頭の例えの通り、Link-Uは倉庫と配送を預かる側です。中計で掲げる「IP価値の最大化」は、その立ち位置から外へ出ようという宣言ですが、外に出た結果が今期のマーケティング事業の減損だったという見方もできます。
- 流通株式時価総額はプライム基準に遠く及ばず、スタンダードへ移ったばかり。 さらに事業法人であるクランチロールが7%を持つことで、流通株式比率が下がる可能性がある(前述のとおり筆者の推測で、要確認)。流動性の薄さは、値動きの荒さとして株主が負担することになる。
- 無配・優待なしで、会社自身が「当面は実施する見込みはない」と書いている。 インカムゲインを期待する設計にはなっていない。
- 繰延税金資産がゼロになっている。 将来の黒字見通しに基づいて計上される資産が消えたということは、少なくとも期末時点で回収可能性が保守的に見積もられたということです。来期の黒字化が計画どおり進めば戻る余地はありますが、現時点では税負担が重く出やすい状態にあります。
どちらの見方にも根拠があります。個人的には、この決算を「赤字決算」と読むか「構造転換の年」と読むかは、四半期の差し引き表を自分で作ったかどうかで決まると思っています。作らなければ、営業赤字382百万円という1行しか残りません。
9. 今後のカレンダーと、見るべきKPI
カレンダー
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年9月30日~11月30日 | 第三者割当の払込期日(予定)。外為法の事前届出手続の完了が前提 |
| 2026年10月28日 | 定時株主総会(議決権基準日は2026年7月31日) |
| 2026年10月28日 | 有価証券報告書 提出予定 |
| 2026年11月1日 | 連結子会社 株式会社Link-U Marketingを合併により消滅(予定) |
| 2026年12月中旬(過去実績から推定) | 2027年7月期 第1四半期決算発表 |
| 2030年7月期 | 中期経営計画2030の最終年度(売上80億円・営業利益16億円) |
見るべきKPI
- 単独四半期の粗利率。 46.1%→53.1%という上昇が続くのか、止まるのか。新しい四半期が出たら累計から引き算して確認する。これが止まったとき、中計の営業利益率20%は遠のきます。
- マンガサービス(新区分ではMANGA PLATFORM)の海外比率。 17%台からどこまで行くか。ここが伸びるほど、Crunchyroll Mangaの経済性が見えてきます。
- 第三者割当の払込完了。 外為法の事前届出が前提条件になっているため、払込が実際に行われたかどうかの開示を確認する必要があります。完了時期が確定していないことは会社も注記しています。
- 流通株式比率と流通株式時価総額。 増資後の分布状況と、スタンダード市場の上場維持基準(流通株式時価総額10億円・流通株式比率25%)に対する余裕度。
- 繰延税金資産の再計上。 黒字化が確実視されれば資産が戻り、その期の税負担が軽くなります。逆に戻らなければ、黒字でも実効税率が高止まりします。
- 金融資産の含み益の中身。 非流動のその他の金融資産が412百万円増え、包括利益に286百万円の評価益が乗っています。有価証券報告書で内訳を確認したいところです。
- 新3区分の実績開示。 2027年7月期からMANGA PLATFORM/CONTENT SOLUTION/LIFE STYLEの区分になります。旧区分との接続が示されるかどうか。
10. 3行まとめ
- 通期の営業赤字382百万円は、子会社Romanzののれん減損767百万円によるもの。 減損を除いた調整後営業利益は403百万円で前期比42.8%増、4Q単独では前年の4.1倍でした。
- 累計しか出ない四半期を自分で引き算すると、粗利率は46.1%→51.6%→52.5%→53.1%と4期連続で上昇しており、決算書の見出しとは逆の方向を向いています。 ただし前期の3Qが単独では赤字だった事実も、同じ引き算で出てきます。
- 2027年7月期は表面上1割以上の減収予想ですが、これはグループ会社3社が連結から外れたためで、残った事業では7~13%の増収を見込んでいます。 同日に決まったクランチロールへの7.56%の第三者割当と、2026年7月のスタンダード市場への区分変更を合わせて読む必要があります。
免責事項
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は特定の有価証券の売買を推奨するものではなく、投資勧誘・投資助言を目的としたものでもありません。本文中の数値の出典は次のとおりです。一次情報(そのまま転記)=2026年9月14日発表「2026年7月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」、同日「第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ」、同日「減損損失の計上及び通期連結業績予想と実績値との差異に関するお知らせ」、2026年6月12日「2026年7月期 第3四半期決算短信」、2026年3月16日「2026年7月期 第2四半期(中間期)決算短信」、2025年12月12日「2026年7月期 第1四半期決算短信」、2026年6月25日「スタンダード市場への市場区分の変更承認及びプライム市場の上場維持基準への適合に向けた計画の撤回に関するお知らせ」、2026年4月3日「上場維持基準(1日平均売買代金)への適合に関するお知らせ」、2026年9月1日「2026年7月期決算説明会の開催について」、および会社IRサイトのFAQ・株主還元ページ。一次情報からの算出=単独四半期の損益(累計からの差し引き)、粗利率・営業利益率、調整後営業利益の検算、必要成長率、PER・PBR・時価総額、権利付き最終日。いずれも「筆者の差し引き」「筆者の試算」と本文に明記しています。説明資料の図からの読み取り=事業別売上、海外売上比率、営業利益ブリッジ、新3区分の売上、中期経営計画の目標値。グラフから読み取った数値であり、縦横の合計が一致することを確認したうえで掲載していますが、読み取り誤差を含みます。報道・株価情報サイト由来=2026年9月15日前場引けの株価792円、9月14日終値908円、出来高、年初来高値・安値(Yahoo!ファイナンス)。株価は記事執筆時点のものであり、必ず最新値をご確認ください。
本記事で踏み込まなかった論点を挙げておきます。①決算説明会(2026年9月14日17時30分開催)の質疑応答は、本記事の執筆時点で書き起こし・動画が公開されていないため、内容を一切反映していません。会社説明の内容はすべて決算短信と決算説明資料の記載に基づいています。②有価証券届出書(2026年9月14日提出)の原文は確認していません。 第三者割当に関する記載は、同日の適時開示「第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ」に基づいています。③2026年7月期の有価証券報告書は2026年10月28日提出予定であり、大株主の確定情報、金融資産の内訳、繰延税金資産の内訳、セグメント関連情報の詳細は未確認です。④のれん777百万円の減少のうち減損745百万円以外の内訳、Romanzの個別業績、クランチロール株式会社の業績(同社は非上場で非開示)については、開示がないため扱っていません。⑤流通株式の算定における事業法人保有株の扱いは筆者の理解に基づく推測であり、会社および東証が個別に開示したものではありません。⑥決算短信と決算説明資料で海外売上比率が17.2%と17.5%に食い違っており、どちらが正しいかは判断できませんでした。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。