本記事は2026年9月17日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。**執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。**特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事でわかること
- 売上高が39.7%増えたのに、売上総利益(粗利)は9.9%しか増えなかった理由(仲介と自社企画商品の「二階建て」)
- 経常利益38百万円から、純利益127百万円に「増える」カラクリ(新株予約権戻入益と税金のマイナス)
- 通期の営業利益169百万円を、第4四半期の1四半期(209百万円)だけで上回っている事実
- 自社企画商品の在庫36億円と、有利子負債34億円・財務制限条項の関係
- 丸井グループのA種種類株式、PKSHA Technologyへの第三者割当、新経営陣の自己株式取得とストック・オプションの条件
- 2027年7月期の会社予想(営業利益+67.8%、純利益△33.3%)の読み方
1. 前提知識:ツクルバはどんな会社か
1-1. 「物件を紹介する編集部」と「物件を仕入れて売る店」を、同じ看板で動かしている会社
ツクルバの主力は、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」です。
スマホのアプリを開くと、東京都心の中古マンションが、写真と読み物のような紹介記事つきで並んでいます。「この部屋は窓から何が見えるか」「前の住人がどう暮らしていたか」まで書いてある。昔なら駅前の不動産屋の窓ガラスに貼られていた間取り図のチラシが、雑誌の特集ページに置き換わったような見せ方です。
この記事で集めた買い手を、自社のエージェントが仲介して手数料を受け取る。これが一階部分です。
もう一つ、ツクルバは子会社(株式会社ツクルバボックス)で、自分で中古マンションを買い、リノベーションして、売る事業もやっています。会社はこれを「自社企画商品」と呼んでいます。これが二階部分です。
この記事では、ツクルバを次の一文で捉えます。
「物件を紹介する編集部と、物件を仕入れて売る店を、同じ看板の下で動かしている会社」
編集部は、在庫を持ちません。紹介して手数料をもらうだけなので、売上のほとんどが粗利になります。店は、在庫を持ちます。売上は大きく立ちますが、仕入れ値を引くと手元に残るのは1割前後で、しかも在庫を抱えている間は借入の金利がかかります。
2026年7月期の決算は、この「編集部」と「店」の違いを、そのまま数字にしたような決算でした。
1-2. 事業構造の一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業 | 中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」事業(単一セグメント) |
| 収益の柱(仲介・付帯サービス) | 中古マンションの仲介手数料、リノベーション工事の請負など |
| 収益の柱(自社企画商品) | 子会社が物件を仕入れ、リノベーションして販売 |
| 連結子会社 | 株式会社ツクルバボックス(100%)、株式会社カウカモ工務店(100%、当期に新規連結) |
| 連結正社員数 | 289名(2026年7月末) |
| 決算期 | 7月 |
| 市場 | 東証グロース |
| 配当 | 普通株式は無配(当期・来期予想とも0円) |
| 株主優待 | 取得できた範囲の開示に記載が見当たらない(§7-5) |
| 代表者 | 代表取締役CEO 野村駿太郎(2025年9月12日就任) |
出典:2026年7月期決算短信(2026年9月14日)、同決算説明資料
1-3. 直近3期の業績推移
| 項目 | 2024年7月期 | 2025年7月期 | 2026年7月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,481 | 8,099 | 11,310 |
| 売上総利益 | 2,821 | 3,543 | 3,894 |
| 売上総利益率 | 51.5% | 43.8% | 34.4% |
| 営業利益 | 155 | 274 | 169 |
| 経常利益 | ― | 199 | 38 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 約216(概算) | 106 | 127 |
| 1株当たり当期純利益(EPS) | ― | 9.38円 | 10.99円 |
| 自己資本比率 | ― | 29.1% | 34.9% |
単位:百万円。2026年7月期・2025年7月期は決算短信。2024年7月期の売上高・売上総利益・営業利益は2026年7月期決算説明資料の四半期推移表を筆者が4四半期合計したもの。2024年7月期の純利益は2025年7月期の増減率(△50.6%)から筆者が逆算した概算。
この表のポイントは2つです。
1つ目は、売上は2年で2倍になったのに、粗利率は51.5%から34.4%まで下がり続けていること。売上の伸びの中身が「店」(自社企画商品)に寄っているためで、これが本記事の深掘りテーマです。
2つ目は、営業利益が2期連続で伸びていないこと。2024年7月期155百万円、2025年7月期274百万円、2026年7月期169百万円と、売上2倍の間に利益は横ばい圏です。
用語メモ:売上総利益(粗利) 売上高から売上原価(仕入れ値や工事費など)を引いた利益。仲介手数料のように原価がほとんどかからない売上は粗利率が高く、物件の転売のように仕入れ値がそのまま原価になる売上は粗利率が低くなります。
2. 決算ハイライト
2-1. 損益
| 項目 | 2025年7月期 | 2026年7月期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,099 | 11,310 | +39.7% |
| 売上総利益 | 3,543 | 3,894 | +9.9% |
| 販売費及び一般管理費 | 3,268 | 3,724 | +13.9% |
| 営業利益 | 274 | 169 | △38.1% |
| 経常利益 | 199 | 38 | △80.9% |
| 税金等調整前当期純利益 | 161 | 119 | ― |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 106 | 127 | +19.5% |
| EPS | 9.38円 | 10.99円 | ― |
| 潜在株式調整後EPS | 8.88円 | 10.44円 | ― |
単位:百万円。出典:2026年7月期決算短信
見出しの数字を並べると、「売上+39.7%」「営業利益△38.1%」「経常利益△80.9%」「純利益+19.5%」と、4つの数字が4方向を向いています。この記事では、この食い違いを1つずつほどいていきます。
2-2. 会社予想との比較
ツクルバは2026年6月15日(第3四半期決算と同時)に、通期予想を下方修正しています。
| 項目 | 期初予想 | 修正後予想(6/15) | 実績 | 期初比 | 修正後比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12,000 | 11,500 | 11,310 | △5.7% | △1.6% |
| 売上総利益 | 4,260 | 3,900 | 3,894 | △8.6% | △0.2% |
| 販管費 | 3,890 | 3,770 | 3,724 | △4.3% | △1.2% |
| 営業利益 | 370 | 130 | 169 | △54.1% | +30.7% |
| 経常利益 | 240 | 0 | 38 | △84.1% | ― |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 170〜220 | △50〜0 | 127 | ― | ― |
単位:百万円。出典:2026年7月期決算説明資料。期初・修正後の純利益予想はレンジ開示。
期初予想との差を分けると、次のようになります。
- 売上総利益の不足:△366百万円(4,260→3,894)
- 販管費の抑制:+166百万円(3,890→3,724)
- 営業外損益の差:ほぼゼロ(期初想定△130百万円、実績△131百万円)
つまり、粗利が366百万円足りず、コストを166百万円削ってその半分弱を埋めたのが通期の着地です。会社は下方修正の理由を「先行費用の投下は計画通り推進したが、その収益寄与が想定より遅行した」と説明しています(2026年6月15日開示、株探ニュース掲載の会社コメントより。筆者は修正開示の原文テキストを取得できていません)。
2-3. 財政状態とキャッシュ・フロー
| 項目 | 2025年7月末 | 2026年7月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 総資産 | 6,141 | 6,210 | +68 |
| 現金及び預金 | 1,867 | 1,687 | △180 |
| 販売用不動産+仕掛販売用不動産 | 3,479 | 3,611 | +132 |
| 有利子負債(借入金+社債) | 3,655 | 3,375 | △280 |
| 純資産 | 1,931 | 2,193 | +261 |
| 自己資本比率 | 29.1% | 34.9% | +5.8pt |
| 1株当たり純資産(BPS) | 94.85円 | 122.49円 | ― |
| キャッシュ・フロー | 2025年7月期 | 2026年7月期 |
|---|---|---|
| 営業活動 | △1,477 | 16 |
| 投資活動 | △76 | △105 |
| 財務活動 | 1,503 | △95 |
| 期末の現金同等物 | 1,821 | 1,636 |
単位:百万円。有利子負債は短期借入金・1年内償還予定の社債・1年内返済予定の長期借入金・社債・長期借入金の合計で、筆者の集計。出典:2026年7月期決算短信
前期は在庫の積み増し(棚卸資産の増加1,619百万円)で営業CFが△1,477百万円まで沈み、その穴を借入で埋めていました。当期は在庫の増加が189百万円にとどまり、営業CFは16百万円のプラスに戻っています。
用語メモ:販売用不動産・仕掛販売用不動産 売るために持っている不動産のこと。リノベーションが完了して売り出している物件が「販売用不動産」、仕入れたがまだ工事中の物件が「仕掛販売用不動産」です。当期末は仕掛が1,130百万円減り、販売用が1,263百万円増えました。工事が終わって「売り場に並んだ在庫」が増えた形です。
3. 深掘り:売上の7割を占める「店」が、粗利では2割しか稼いでいない
3-1. 事業領域別に分けると、ねじれが見える
| 項目 | 2025年7月期 | 2026年7月期 | 増減率 | 当期の構成比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,099 | 11,310 | +39.7% | 100.0% |
| 仲介・付帯サービス | 2,921 | 3,281 | +12.3% | 29.0% |
| 自社企画商品 | 5,177 | 8,029 | +55.1% | 71.0% |
| 売上総利益 | 3,543 | 3,894 | +9.9% | 100.0% |
| 仲介・付帯サービス | 2,896 | 3,174 | +9.6% | 81.5% |
| 自社企画商品 | 646 | 720 | +11.4% | 18.5% |
単位:百万円。出典:2026年7月期決算説明資料(テキスト層のある表から転記)
この表のポイントは2つです。
1つ目は、売上高の構成比と、売上総利益の構成比が、ほぼ裏返しになっていること。自社企画商品(店)は売上の71.0%を占めますが、粗利では18.5%です。仲介・付帯サービス(編集部)は売上の29.0%で、粗利の81.5%を稼いでいます。
2つ目は、売上の増加額3,211百万円のうち、2,852百万円(88.8%)が自社企画商品だったこと。一方で、粗利の増加額351百万円のうち、自社企画商品の寄与は74百万円にとどまり、278百万円は仲介・付帯サービスからです。
粗利率に直すと、違いはさらにはっきりします。
| 粗利率 | 2025年7月期 | 2026年7月期 |
|---|---|---|
| 仲介・付帯サービス | 99.1% | 96.7% |
| 自社企画商品 | 12.5% | 9.0% |
| 全社 | 43.8% | 34.4% |
筆者の算出(売上総利益÷売上高)
「編集部」の売上はほぼ全額が粗利になり、「店」の売上は1割しか残らない。そして当期は、1割しか残らない「店」のほうが大きく伸び、しかもその1割自体が12.5%から9.0%に薄くなりました。全社の粗利率が43.8%から34.4%へ9.4ポイント下がったのは、この2つが重なった結果です。
「売上高39.7%増」という見出しだけを見ると、事業全体が4割伸びたように読めます。しかし、会社の稼ぐ力(粗利)で見れば伸びは9.9%で、しかもその大半は「店」ではなく「編集部」が稼いでいます。
なお、仲介・付帯サービスの内訳(うち仲介関連:売上3,073百万円、粗利3,109百万円)では、粗利が売上をわずかに上回る表示になっています。グループ内取引の配分など、説明資料に記載のない処理によるものと見られますが、これは筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません。本記事では内訳ではなく「仲介・付帯サービス」の合計値で議論します。
3-2. 四半期に分けると、「第4四半期だけで通期の利益」
決算説明資料には、16四半期分の四半期推移表が載っています。直近8四半期を並べます。
| 四半期 | 売上高 | 売上総利益 | 粗利率 | 営業費用 | 営業利益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年7月期 1Q(8〜10月) | 1,538 | 791 | 51.4% | 785 | 6 |
| 2025年7月期 2Q(11〜1月) | 1,837 | 852 | 46.4% | 799 | 52 |
| 2025年7月期 3Q(2〜4月) | 2,408 | 927 | 38.5% | 837 | 90 |
| 2025年7月期 4Q(5〜7月) | 2,315 | 971 | 41.9% | 846 | 125 |
| 2026年7月期 1Q(8〜10月) | 2,677 | 919 | 34.3% | 895 | 24 |
| 2026年7月期 2Q(11〜1月) | 2,563 | 920 | 35.9% | 947 | △26 |
| 2026年7月期 3Q(2〜4月) | 2,661 | 960 | 36.1% | 997 | △37 |
| 2026年7月期 4Q(5〜7月) | 3,408 | 1,094 | 32.1% | 884 | 209 |
単位:百万円。出典:2026年7月期決算説明資料の四半期推移表。粗利率は筆者の算出。
検算:2026年7月期の4四半期合計は、売上高11,309・売上総利益3,893・営業利益170で、短信の通期値(11,310・3,894・169)と百万円未満の丸めの範囲で一致します。2025年7月期も8,098・3,541・273で、短信(8,099・3,543・274)と±2百万円以内で一致しました。
この表のポイントは3つです。
1つ目は、第4四半期の営業利益209百万円が、通期の営業利益169百万円を上回っていること。2Qと3Qの2四半期で合計△63百万円の営業赤字を出し、4Qでそれを取り返した形です。通期の数字だけを見ると「減益だが黒字」ですが、中身は「半年赤字、最後の3か月で黒字化」でした。
2つ目は、営業費用(販管費に相当)が3Qの997百万円をピークに、4Qで884百万円へ113百万円下がったこと。会社が説明する「先行投資の厳選と全社的なコスト合理化」は、この4Qの数字に表れています。4Qの営業利益の改善は、粗利が伸びた分と、費用を削った分の両方です。
3つ目は、4Qの売上が3,408百万円と過去最高なのに、粗利率は32.1%と8四半期で最低なこと。売上の伸びが「店」に寄ったと読めます。次の在庫の動きがその裏付けになります。
用語メモ:単独四半期 決算短信は「期首からの累計」で開示されることが多く、第3四半期決算なら8〜4月の9か月分の数字が出てきます。3か月ごとの動きを見るには、累計から前の四半期の累計を引き算します。ツクルバは説明資料に単独四半期の表を載せているため、本記事ではその表を使い、合計が通期の短信と一致することを確認しています。
3-3. 在庫は3Qの51億円から4Qの36億円へ。「店の棚を空けた四半期」
| 四半期末 | 自社企画商品の在庫金額(簿価) |
|---|---|
| 2025年7月期 1Q | 25億円 |
| 2025年7月期 2Q | 28億円 |
| 2025年7月期 3Q | 32億円 |
| 2025年7月期 4Q | 35億円 |
| 2026年7月期 1Q | 36億円 |
| 2026年7月期 2Q | 49億円 |
| 2026年7月期 3Q | 51億円 |
| 2026年7月期 4Q | 36億円 |
出典:2026年7月期決算説明資料の四半期推移表
2Q・3Qに在庫を49〜51億円まで積み上げ、4Qに15億円分を売って36億円まで戻しています。期末の貸借対照表の「販売用不動産+仕掛販売用不動産」3,611百万円とも整合します。
これを「編集部と店」の比喩で言い直すと、店の棚に物件を積んだ半年間は、仕入れと工事と金利のコストが先に出て利益が消え、棚を空けた3か月で売上と利益がまとめて立った、ということです。自社企画商品を持つ会社では、四半期の利益は「いつ売れたか」で大きく振れます。1Qや3Qの数字を4倍して通期を読むことは、この会社では成り立ちません。
3-4. 「店」のコストは粗利の外にもある
自社企画商品の粗利720百万円は、売上から仕入れ値と工事費を引いたものです。在庫を抱えるための借入のコストは、そこには入っていません。営業外費用として別に計上されています。
| 項目 | 2025年7月期 | 2026年7月期 |
|---|---|---|
| 支払利息 | 47.9 | 84.9 |
| 社債利息 | 0.8 | 1.2 |
| 支払手数料(借入関連) | 28.9 | 43.1 |
| 合計 | 77.6 | 129.2 |
単位:百万円。出典:2026年7月期決算短信の連結損益計算書
支払利息はほぼ倍になりました。支払利息と社債利息の合計86百万円は、自社企画商品の粗利720百万円の約12%、支払手数料を加えると約18%にあたります(筆者の算出)。全社の有利子負債の多くが自社企画商品の在庫に使われていることは、会社自身が説明資料のQ&Aで述べています。
この数字の読み方は2通りあります。
- 強気の読み方:在庫の回転(自社企画商品の売上÷平均在庫で約2.3回/年、筆者の算出)が維持できれば、金利を払っても「店」は黒字で回っている。仲介で集めた買い手に自社の物件を売れるので、他の買取再販業者より売り切りが速い、というのが会社の説明です。
- 弱気の読み方:営業利益169百万円から経常利益38百万円まで131百万円が消えた主因は、この金融コストです。市況が冷えて在庫が売れ残れば、粗利が削られるのと同時に金利は払い続けることになり、両側から利益が挟まれます。
3-5. 「編集部」の側のKPI:人を増やしたが、件数は増えていない
仲介・付帯サービスのKPIも四半期で開示されています。
| 四半期 | 取引件数 | 収益単価 | 稼働営業人員数 | 営業生産性 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年7月期 1Q | 254件 | 2.8百万円 | 71人 | 1.2件 |
| 2025年7月期 2Q | 253件 | 2.7百万円 | 78人 | 1.1件 |
| 2025年7月期 3Q | 278件 | 2.6百万円 | 71人 | 1.3件 |
| 2025年7月期 4Q | 311件 | 2.7百万円 | 69人 | 1.5件 |
| 2026年7月期 1Q | 282件 | 2.9百万円 | 69人 | 1.4件 |
| 2026年7月期 2Q | 234件 | 3.0百万円 | 75人 | 1.2件 |
| 2026年7月期 3Q | 299件 | 2.9百万円 | 84人 | 1.2件 |
| 2026年7月期 4Q | 262件 | 3.1百万円 | 81人 | 1.1件 |
出典:2026年7月期決算説明資料の四半期推移表(取引件数・収益単価・営業生産性は成約ベース)
年間の取引件数は1,077件で、前期の1,096件から1.7%減りました(筆者の算出)。4Q単独では262件で、前年同期311件から15.8%減です。一方、収益単価は2.7百万円から3.1百万円に上がっています。
稼働営業人員は69人から81人に増えたのに、件数は増えず、1人あたりの件数(営業生産性)は1.5件から1.1件に下がった。これが会社の言う「先行費用の収益寄与が想定より遅行」の、KPIでの姿です。
「編集部」の粗利が9.6%増えたのは、件数ではなく単価の上昇によるものです。会社は2026年7月期に、都心2億円超の物件を扱う専用窓口「SUITE by cowcamo」を始めており、単価の上昇はこの高価格帯シフトと方向が一致しています。
3-6. 市況:首都圏の中古マンション成約件数は、2026年4月から前年割れ
決算短信には、東日本不動産流通機構のデータに基づく市況の記述があります。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 首都圏中古マンション成約件数(2025年8月〜2026年7月の12か月) | 48,736件(前年同期比+12.7%) |
| 同(2026年5〜7月の3か月) | 11,588件(前年同期比△4.4%) |
| 2026年7月度の成約㎡単価 | 84.17万円(前年同月比△1.5%) |
| 2026年7月度の成約価格 | 5,267万円(前年同月比△0.7%) |
| 2026年7月度の在庫件数 | 47,151件(前年同月比+5.5%) |
出典:2026年7月期決算短信(会社が東日本不動産流通機構のデータを引用したもの)
説明資料のQ&Aでは、会社は首都圏の成約件数が2026年4〜8月に5か月連続で前年割れ、主要展開エリアの東京都区部は2026年8月度に前年同月比△20.6%で8か月連続の減少、と説明しています。そのうえで、足元の業績への影響は「主に自社企画商品の販売進捗」に出ているが、長期継続はしないと考えている、としています(筆者は東日本不動産流通機構の原資料は確認していません)。
年間では+12.7%でも、直近3か月は△4.4%、しかも在庫は増え、価格はわずかに下がっている。「店」が在庫を積んだのは、ちょうど市況が切り替わりつつある時期でした。
4. 見え方が誤解を生む数字
4-1. 経常利益38百万円なのに、純利益127百万円
| 段階 | 金額 |
|---|---|
| 経常利益 | 38.2 |
| +特別利益 | +117.1 |
| うち新株予約権戻入益 | +93.4 |
| うち受取補償金・受取保険金 | +21.3 |
| -特別損失 | △36.2 |
| うち減損損失 | △25.2 |
| うち特別調査費用等 | △11.0 |
| =税金等調整前当期純利益 | 119.1 |
| -法人税等合計 | +8.3(マイナスの税金費用) |
| =当期純利益 | 127.4 |
単位:百万円。出典:2026年7月期決算短信
経常利益から純利益が増えた理由は2つです。
1つ目は、新株予約権戻入益93百万円。過去に発行したストック・オプションが、行使条件を満たせなかったり、権利者が放棄したりして消滅すると、それまで費用として計上していた分が利益に戻ります。現金は1円も入っていません。会社は2026年7月31日に、第4四半期に一部の権利者から放棄の申し出があり、37百万円の戻入益を計上する見込みと開示していました。
2つ目は、**法人税等合計がマイナス(△8百万円)**になったこと。税金を払ったのではなく、繰延税金資産を追加で計上したことで、税金費用が収益側に振れています。会社は説明資料で「繰延税金資産の追加計上等の影響」と説明しています。
仮に、戻入益を除き、残りの税前利益に30%の税率を当てると、純利益は約18百万円、EPSは約1.6円になります(筆者の概算で、会社の開示に基づくものではありません)。表示上のEPS 10.99円のうち、本業から来ている部分はかなり小さいと読めます。
用語メモ:新株予約権戻入益 ストック・オプションは、付与した時点から権利確定までの間、会社が「株式報酬費用」として少しずつ費用計上します。権利が行使されずに消滅すると、積み上げた費用を取り消す形で特別利益に戻します。過去の費用の戻しなので、繰り返し出る利益ではありません。
4-2. 「純利益+19.5%」と「来期純利益△33.3%」
2027年7月期の会社予想は、営業利益が+67.8%の増益なのに、純利益は△33.3%の減益です。これは来期が悪くなるという意味ではなく、当期の純利益が特別利益と税金のマイナスで膨らんでいた反動です。営業利益で見れば、会社は来期を増益と見ています。
4-3. 自己資本比率の上昇は、利益の積み上げだけではない
自己資本比率は29.1%から34.9%に上がりました。自己資本は1,786百万円から2,168百万円へ382百万円増えましたが、その内訳は次のとおりです。
| 増加要因 | 金額 |
|---|---|
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | +127 |
| PKSHA Technologyへの第三者割当増資 | +140 |
| 取締役への自己株式の処分 | +100 |
| 新株予約権の行使 | +18 |
| A種種類株式への配当(資本剰余金から) | △7 |
| その他有価証券評価差額金 | +3 |
単位:百万円。出典:2026年7月期決算短信の連結株主資本等変動計算書(筆者が項目ごとに集計)
382百万円のうち約258百万円(約3分の2)は、株式の発行・処分による資本の払込みです。利益の積み上げで比率が上がったわけではありません。
4-4. 1株当たり純資産122.49円は、純資産を株数で割った数字ではない
純資産2,193百万円を期末の普通株式数11,929,491株で割ると、約184円になります。開示値の122.49円との差は、丸井グループが保有するA種種類株式700百万円(と、その配当7百万円)、新株予約権25百万円を、普通株主の取り分から控除しているためです(決算短信の1株当たり情報の注記どおりに再計算して一致を確認しました)。
普通株主から見ると、純資産2,193百万円のうち約3分の1は、先に優先的な権利を持つ種類株主の取り分です。
5. 2027年7月期の会社予想
| 項目 | 2026年7月期実績 | 2027年7月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 11,310 | 12,159 | +7.5% |
| 売上総利益 | 3,894 | 4,380 | +12.5% |
| 販管費 | 3,724 | 4,095 | +10.0% |
| 営業利益 | 169 | 285 | +67.8% |
| 経常利益 | 38 | 105 | +175.1% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 127 | 85 | △33.3% |
| EPS | 10.99円 | 7.12円 | ― |
単位:百万円。出典:2026年7月期決算短信・決算説明資料
この予想のポイントは3つです。
1つ目は、売上の伸びを+7.5%に落とし、粗利を+12.5%伸ばす計画であること。売上より粗利の伸びが大きいということは、全社の粗利率を34.4%から36.0%へ戻す前提です。当期の「店に寄りすぎた売上」から、構成を少し「編集部」側に戻す計画と読めます。
2つ目は、営業利益から経常利益までの差が△180百万円と、当期の△131百万円より大きいこと。借入金利の上昇を支払利息の増加として織り込んでいる、と会社は説明資料のQ&Aで述べています。
3つ目は、第4四半期の営業利益209百万円と比べると、**通期予想285百万円は「当期4Qの1.4四半期分」**にすぎないことです。4Qの水準が続けば予想は保守的に見えますが、4Qは在庫を15億円分売り切った四半期でした。在庫を積み直す四半期が来れば、2Q・3Qのように利益が消える可能性があります。どちらに読むかは、次の四半期の在庫金額と粗利率で確かめるしかありません。
6. 資本政策と株主還元
普通株式は無配で、株主優待の記載も見当たらないため、このセクションは「還元」ではなく、株主構成と潜在株式・資本の動きの整理として読んでください。当期は、この欄に書くことが多い年でした。
6-1. 時系列
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年6月13日 | 丸井グループへA種種類株式700百万円を発行(同社保有の新株予約権付社債の買入消却に充当) |
| 2025年5月7日 | 竹内真氏・野村駿太郎氏が取締役に就任 |
| 2025年9月12日 | 代表取締役CEOが村上浩輝氏から野村駿太郎氏へ交代 |
| 2026年1月20日 | 「新経営体制における株主価値に対するアラインメント施策」を公表(有償ストック・オプション、取締役への自己株式処分、創業株主とのコール・オプション契約) |
| 2026年3月16日 | PKSHA Technologyとの資本業務提携、第三者割当増資、主要株主の異動を公表 |
| 2026年4月15日 | 第三者割当増資の払込完了 |
| 2026年6月15日 | 通期予想の下方修正、新株予約権戻入益の計上を公表 |
| 2026年7月31日 | 新株予約権戻入益37百万円の計上見込み、子会社の極度貸付契約(財務制限条項つき)の締結予定を公表 |
| 2026年9月14日 | 通期決算、資本金・資本準備金の減少を公表 |
| 2026年10月27日(火) | 定時株主総会・有価証券報告書提出予定 |
| 2026年12月1日(火) | 減資の効力発生予定 |
出典:各適時開示、2022年6月14日付の会社ニュースリリース、2025年5月9日付のプレスリリース。代表者交代の日付は日本経済新聞の人事記事(報道ベース)
6-2. 新経営陣の「自腹」:自己株式の取得とストック・オプションの条件
2026年1月20日の開示では、創業経営者から新経営陣への移行にあたり、3つの施策が示されました。
| 施策 | 対象 | 株式数 | 条件・補足 |
|---|---|---|---|
| 有償ストック・オプション | 役職員 | 165,000株(議決権ベース1.4%) | 2029年7月期までに時価総額100億円以上を達成したうえで、売上総利益80億円以上で50%、90億円以上で75%、100億円以上で100%行使可能 |
| 自己株式の処分 | 執行取締役2名(竹内氏・北原氏) | 207,000株(1.8%) | 自己負担で取得 |
| 創業株主との相対取引(コール・オプション) | 代表取締役CEO(野村氏) | 352,000株 | 村上浩輝氏・中村真広氏から2030年10月末まで段階的に譲渡予定。相対取引のため希薄化なし。詳細は非開示 |
出典:2026年1月20日付「新経営体制における株主価値に対するアラインメント施策について」
自己株式は期首335,709株から期末128,709株へ207,000株減っており、処分額99,774千円を株数で割ると1株482円になります(筆者の算出)。
このストック・オプションの条件は、会社の中期的な目標値として読めます。
| 条件 | 必要な水準 | 現在地との距離 |
|---|---|---|
| 時価総額100億円 | 株価約838円(自己株式を除く期末普通株式数11,929,491株で割った筆者の算出) | 2026年9月14日終値336円の約2.5倍 |
| 売上総利益80億円(行使50%) | 2029年7月期に80億円 | 2026年7月期3,894百万円の約2.1倍。2027年7月期予想4,380百万円から2年で年率約35%の成長が必要 |
| 売上総利益100億円(行使100%) | 2029年7月期に100億円 | 2027年7月期予想から2年で年率約51%の成長が必要 |
必要成長率は筆者の算出。株価は株探の表示(2026年9月14日終値)で、要確認箇所です。
条件の基準に「売上高」ではなく**「売上総利益」**を置いていることは、本記事の深掘りと噛み合います。「店」で売上だけを膨らませても条件には近づかず、粗利を積まないと行使できない設計です。
6-3. PKSHA Technologyへの第三者割当
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 割当先 | 株式会社PKSHA Technology |
| 発行株式数 | 320,400株 |
| 発行価額 | 1株438円 |
| 払込総額 | 140,335千円(筆者の検算:320,400株×438円) |
| 差引手取概算額 | 134,835,200円 |
| 資金使途 | AI技術を活用したシステム開発費、販売用不動産の取得・リノベーション費用に充当するための子会社貸付など |
| 増資後のPKSHAの持株比率 | 10.19%(大株主順位2位の予定) |
| 払込期日 | 2026年4月15日 |
出典:トレーダーズ・ウェブの記事(Yahoo!ファイナンス掲載、報道ベース)。払込総額は短信の株主資本等変動計算書の「新株の発行」140,335千円と一致することを筆者が確認しました。
期中の発行済株式数の増加343,000株も、このPKSHAの320,400株と、新株予約権の行使22,600株の合計で一致します(筆者の検算)。
発行株式数320,400株は増資後の株式数の約2.7%にすぎません。持株比率10.19%との差は、共同創業者の中村真広氏とその資産管理会社からの株式譲渡によるもので、会社も同時に「主要株主の異動」を開示しています。報道の持株比率と自己株式を除く株数から逆算すると、譲渡分は90万株前後と見られますが、持株比率の分母の定義を筆者は原文で確認していないため、概算の目安にとどめます。
つまり、PKSHAは、会社に入るお金(増資)は約1.4億円に抑え、株式の大半は創業者から直接買う形で10%の株主になりました。既存株主の希薄化は抑えつつ、会社の資金調達額も小さい、という設計です。
6-4. 丸井グループのA種種類株式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保有者 | 丸井グループ |
| 株数・金額 | 700株・700百万円 |
| 配当 | 1株10,000円(年7百万円)。2026年7月期は資本剰余金を原資に支払い。2027年7月期も同額を予定 |
| 普通株式への転換 | 当初取得価額1,200円で全部を請求した場合、583,333株 |
出典:2026年7月期決算短信、2022年6月13日付の適時開示(JPX掲載)
決算短信の潜在株式調整後EPSの計算では、普通株式増加数620,269株のうち新株予約権分が36,936株で、差額の583,333株がちょうどA種種類株式の転換株数に一致します(筆者の差し引き)。
普通株主が無配の一方で、A種種類株式には毎年7百万円の配当が払われ、しかもその原資は資本剰余金です。金額は小さいですが、「利益からではなく資本から配当している」ことは、普通株主が知っておくべき事実です。
転換価格1,200円は現在の株価の3倍を超えるため、足元で転換される可能性は低いと見られます。ただし、潜在株式の数としては発行済株式数の約5%にあたります。
6-5. 株数と希薄化
| 項目 | 株数 |
|---|---|
| 期末発行済株式数 | 12,058,200株 |
| 期末自己株式数 | 128,709株 |
| 自己株式を除く普通株式数 | 11,929,491株 |
| 期中平均株式数 | 11,591,378株 |
| 希薄化効果のあるA種種類株式(転換時) | 583,333株 |
| 2026年1月発行の有償ストック・オプション | 165,000株(行使条件あり) |
出典:2026年7月期決算短信、2026年1月20日付開示
EPSの検算:127,429千円÷11,591,378株=10.99円(開示値と一致)。BPSの検算:(純資産2,193,258千円-新株予約権25,063千円-A種種類株式700,000千円-A種配当7,000千円)÷11,929,491株=122.49円(開示値と一致)。
6-6. 資本金を1,000万円へ減らす
2026年10月27日の株主総会に、資本金93,864,897円のうち83,864,897円、資本準備金93,864,895円のうち83,864,895円を減らし、それぞれ1,000万円にする議案が付議されます。減らした分はその他資本剰余金に振り替えるだけなので、純資産の総額と1株当たり純資産は変わりません。
会社は目的を「資本政策の機動性及び柔軟性の確保」と説明しています。資本金を1億円以下にすると、税務上は中小企業向けの扱い(外形標準課税の対象外など)が受けられる場合がありますが、会社は税務上の効果には触れておらず、この点は一般論です。A種種類株式の配当原資をその他資本剰余金に求めている会社なので、剰余金を厚くしておく意味もあると読めますが、これも筆者の推測です。
6-7. 借入と財務制限条項
| 項目 | 2026年7月末 |
|---|---|
| 短期借入金 | 1,645 |
| 1年内返済予定の長期借入金 | 1,170 |
| 長期借入金 | 457 |
| 社債(1年内償還分を含む) | 101 |
| 有利子負債合計 | 3,375 |
| 現金及び預金 | 1,687 |
| 差引(純有利子負債) | 1,687 |
単位:百万円。筆者の集計。出典:2026年7月期決算短信
有利子負債の約83%(短期借入金と1年内返済予定の長期借入金の合計)が1年以内に返済期限を迎える構造で、当期も長期借入1,862百万円・返済2,049百万円と、大きな金額を借りては返しています。在庫を仕入れて売る「店」の資金は、基本的に短期の借り換えで回っています。
決算短信の後発事象として、子会社ツクルバボックスが2026年8月3日に千葉銀行と締結した極度貸付契約(上限500百万円、取引期限2027年8月3日)には、次の財務上の特約が付いています。
| 特約 | 内容 | 2026年7月期の状況(筆者の確認) |
|---|---|---|
| ① 純資産の維持 | 親会社の連結純資産を、2025年7月期末または前年度末のいずれか大きい方の70%以上に維持 | 基準約1,352百万円に対し2,193百万円 |
| ② 経常利益 | 親会社の連結経常利益を2期連続でマイナスにしない | 2026年7月期は38百万円のプラス |
| ③ 在庫の月商倍率 | 借入人単体で、(販売用不動産+仕掛販売用不動産)÷(売上高÷12)が8を上回らない | 単体の数値は非開示。連結の自社企画商品売上で目安を出すと約5.4倍 |
③の約5.4倍は、連結の在庫3,611百万円を自社企画商品の売上8,029百万円の月平均で割った筆者の目安で、特約の計算方法(借入人単体)とは異なります。
②の特約について、当期の経常利益は38百万円と、プラスではあるものの薄い黒字でした。2027年7月期の経常利益予想は105百万円です。予想どおりなら特約には触れませんが、2Q・3Qのように在庫を積む期間が長引いた場合、この特約の位置づけは重くなります。
6-8. 株主優待・配当の基準日
- 株主優待:決算短信・決算説明資料に記載が見当たらず、日本経済新聞の銘柄ページでも「株主優待 無」と表示されています。会社IRサイトのFAQ、および当期の有価証券報告書(2026年10月27日提出予定)は筆者は確認できていません。「取得できた範囲の開示に記載が見当たらない」水準の確認です。
- 配当:普通株式は2025年7月期・2026年7月期とも無配、2027年7月期も0円予想。
- 期末の基準日は7月31日です。2027年7月31日は土曜日のため、直前の営業日(7月30日金曜日)を起点に2営業日前をとると、**権利付き最終日は2027年7月28日(水)**となります(休業日の設定で変わる可能性があります)。無配のため、この日に意味があるのは株主総会の議決権です。
7. 株価の見方
7-1. 株価に依存する指標(要確認)
基準:2026年9月14日終値 336円(株探の表示)。公開前に確定値へ差し替えてください。
| 指標 | 値 | 計算 |
|---|---|---|
| 時価総額 | 約40億円 | 336円×11,929,491株 |
| PER(2026年7月期実績) | 約30.6倍 | 336円÷10.99円 |
| PER(2027年7月期会社予想) | 約47.2倍 | 336円÷7.12円 |
| PBR | 約2.7倍 | 336円÷122.49円 |
| 年初来高値・安値 | 490円(2026年1月19日)/323円(2026年8月10日) | 日本経済新聞の銘柄ページ(報道ベース) |
いずれも筆者の算出。株価基準日が古いため、公開時点で必ず差し替えます。
参考として、2026年1月の自己株式処分の価格(1株482円、筆者の算出)と、4月のPKSHAへの割当価格(438円)は、いずれも現在の株価を上回っています。新経営陣とPKSHAは、この決算の時点で取得価格から2〜3割下の水準に置かれています。
7-2. 強気材料
- 「編集部」の単価は上がっている。取引件数は横ばいでも、収益単価は2.7百万円から3.1百万円に上がり、仲介・付帯サービスの粗利は+9.6%伸びた。高価格帯専用窓口「SUITE by cowcamo」の方向とも一致する。
- 第4四半期は過去最高の営業利益209百万円。コスト合理化の効果が1四半期で113百万円の費用減として見えており、来期予想285百万円は4Qの水準から見ると届かない数字ではない。
- 来期予想は売上より粗利を伸ばす計画で、「店に寄りすぎた売上構成」を戻す意思が数字に出ている。経営陣のストック・オプション条件も「売上総利益」基準で、同じ方向を向いている。
- PKSHA Technologyが10%の株主になり、AIを使ったマッチング精度の向上や営業生産性の改善を共同で進める。営業生産性が1.1件まで落ちた「編集部」にとっては、ちょうど効きどころの提携と言える。
- 新経営陣が自腹で株を買っている。取締役2名が1株482円で自己株式を取得し、CEOは創業株主から段階的に株を取得する契約を結んでいる。
7-3. 弱気材料
- 純利益127百万円のほとんどは一過性。新株予約権戻入益93百万円と税金費用のマイナスを除くと、純利益は20百万円程度(筆者の概算)で、実績PER約30倍の見え方は実態より割安側に寄っている。来期予想ベースではPER約47倍。
- 売上の7割を占める「店」は粗利率9.0%で、前期の12.5%から低下。しかも在庫を抱える期間の金利・手数料が粗利の約18%を食う。市況が冷えれば、粗利と金利の両側から挟まれる。
- 市況は切り替わりつつある。首都圏の成約件数は直近3か月で△4.4%、東京都区部は8月度に△20.6%(会社Q&A)。在庫件数は+5.5%。「店」が在庫を積んだ2Q・3Qに利益が消えた構造は、市況が弱い局面ほど長引く。
- 有利子負債の8割強が1年以内に期限を迎え、借り換えで回っている。新しい極度貸付には「経常利益2期連続マイナス禁止」の特約があり、当期の経常利益は38百万円と薄い。
- 営業人員を増やしたのに件数が増えていない。稼働営業人員は69人から81人になったが、年間取引件数は△1.7%、営業生産性は1.5件から1.1件に低下。「先行費用の収益寄与の遅行」がいつ解消するかは、まだ数字で示されていない。
- 普通株主の取り分は純資産の3分の2程度。A種種類株式700百万円が普通株主に優先し、毎年7百万円が資本剰余金から配当されている。
- ストック・オプションの条件(時価総額100億円・粗利80億円以上)は、現在地から遠い。株価は約2.5倍、粗利は約2.1倍が必要で、達成できなければ行使されず、再び戻入益として特別利益に戻ることになる。
7-4. 筆者の見方
個人的には、この決算を「増収減益」とひとことでまとめるより、**「売上を作る『店』と、利益を作る『編集部』の比率を、どこに置くかを会社自身が探っている決算」**と読むほうが実態に近いと考えています。
当期は「店」に大きく振った結果、売上は4割伸び、利益は薄くなり、市況の変わり目に在庫を抱えました。来期予想とストック・オプションの条件は、どちらも「粗利」を基準にしており、振り子を「編集部」側に少し戻す方向を示しています。
この戻し方がうまくいくかは、次の2つの数字でしか確かめられません。1つは四半期ごとの在庫金額と全社の粗利率、もう1つは仲介の取引件数と営業生産性です。
8. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 見るポイント |
|---|---|---|
| 2026年10月27日(火) | 第15期定時株主総会、有価証券報告書提出予定 | 減資議案の可決、大株主の状況(PKSHA・創業者・丸井グループの保有)、株主優待の記載の有無 |
| 2026年12月1日(火) | 資本金・資本準備金の減少の効力発生予定 | 純資産・BPSに変化がないことの確認 |
| 2026年12月中旬頃(前年は12月12日) | 2027年7月期第1四半期決算 | 在庫金額、粗利率、営業利益の単独四半期、取引件数 |
| 2027年7月末 | 2027年7月期末 | 財務制限条項②(経常利益)③(在庫の月商倍率)の判定期末 |
| 2027年8月3日(火) | 千葉銀行の極度貸付契約の取引期限 | 契約の更新有無 |
| 2029年7月末 | 有償ストック・オプションの時価総額条件の期限 | 時価総額100億円・売上総利益80億円以上の到達状況 |
| 2030年10月末 | 創業株主からCEOへの株式譲渡(コール・オプション)の期限 | 譲渡の進捗(詳細は非開示) |
四半期ごとに見るべきKPIは次の5つです。
- 自社企画商品の在庫金額:積み増しか売り切りか。四半期の利益はここで決まる
- 全社の粗利率:32〜36%のどこにいるか。会社予想は通期36.0%
- 仲介の取引件数と営業生産性:人員増が件数に結びつき始めたか
- 支払利息:金利上昇と在庫の規模の掛け算
- 首都圏・東京都区部の中古マンション成約件数:前年割れがいつまで続くか
9. 3行まとめ
- 売上高+39.7%の中身は、粗利率9%の自社企画商品(在庫を持つ「店」)の伸びで、会社の稼ぐ力である売上総利益は+9.9%にとどまりました。
- 通期の営業利益169百万円は第4四半期の209百万円だけで上回っており、純利益127百万円は新株予約権戻入益93百万円と税金費用のマイナスで押し上げられた数字です。
- 新経営陣の自社株取得、PKSHAの10%出資、「粗利80億円」を条件にしたストック・オプションと、資本面の動きは多く、来期はその方向どおり「粗利」を積めるかが問われます。
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、株式会社ツクルバの2026年7月期決算短信(2026年9月14日)、2026年7月期通期決算説明資料(同日)、資本金及び資本準備金の額の減少に関するお知らせ(同日)、特別利益(新株予約権戻入益)の計上見込みに関するお知らせ(2026年7月31日)、新経営体制における株主価値に対するアラインメント施策について(2026年1月20日)、A種種類株式の発行に関する適時開示(2022年6月13日)です。四半期推移・事業領域別の数値は決算説明資料の表から転記し、4四半期合計が決算短信の通期値と一致することを確認しています。株価・時価総額・PER・PBR・年初来高値安値は概算・報道ベースで、2026年9月14日時点の株探・日本経済新聞の表示に基づくため、公開時点の値とは異なります。PKSHA Technologyへの第三者割当の条件(発行株式数・価額・持株比率)はトレーダーズ・ウェブの報道に基づき、払込総額は決算短信と照合しましたが、適時開示の原文は冒頭部分しか確認できていません。2026年6月15日の業績予想修正の理由は株探ニュース掲載の会社コメントに基づき、修正開示の原文テキストは取得できていません。首都圏の中古マンション市況は会社が決算短信・説明資料で引用した東日本不動産流通機構のデータに基づき、筆者は原資料を確認していません。代表取締役の就任日は日本経済新聞の人事記事に基づきます。本記事は、決算説明資料のうち画像のみで構成されたページ(事業の取り組み・来期予想の内訳等)の内容と、2026年9月14日の決算説明会の書き起こし(質疑応答を含む)の内容を反映していません。 次の箇所は筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません:仲介関連の粗利が売上を上回る表示の理由(§3-1)、戻入益と税金のマイナスを除いた純利益の概算(§4-1)、PKSHAへの譲渡株数の概算(§6-3)、減資の目的に関する読み(§6-6)、財務制限条項③の連結ベースの目安(§6-7)。本記事では、繰延税金資産の残高と回収可能性、減損損失25百万円の対象資産、特別調査費用の内容、カウカモ工務店の損益、有価証券報告書に記載される大株主の状況には踏み込んでいません。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。