株式投資

【2026年7月29日上場・第3四半期決算】ビーエイブル(604A)は「福島第一の片付け」をどこまで自分の仕事にできたのか?上場で変わった数字と変わらない数字を読む

本記事は2026年9月4日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • ビーエイブルが「誰の、どんな仕事」を引き受けている会社なのか(東京電力向けが売上の54%、グループ全体で7割)
  • 上場日に開示された第3四半期決算と通期予想の中身(進捗率、第4四半期の含み、4Q想定税率49%の謎)
  • 貸借対照表の4分の1(30.5億円)を占める「損益計算書に出てこない発電所」の正体
  • 今回の公募が「新株発行」ではなく「自己株式の処分」だったことと、それが株数・EPS・PERの見え方をどう複雑にしているか
  • IHIの取得単価1,117円に対して公募価格700円という「ダウンラウンド上場」の事実
  • 上場日がそのまま配当の権利付き最終日だったこと、ロックアップ解除日、新株予約権の行使開始日
  • 株主優待は「制度なし」であること(一次情報での確認結果)

1. 前提知識:ビーエイブルはどういう会社か

1-1. 軸となる見方:「事故を起こした発電所の片付けを、地元で引き受け続けてきた会社」

ビーエイブルは福島県双葉郡の会社です。1991年に発電所の機器メンテナンス会社として創業し、2011年3月11日以降は福島第一原子力発電所の事故対応と、その後の廃炉作業を続けてきました。

ここで一度、この会社の仕事を生活の風景に置き換えてみます。

工場や倉庫で大きな事故が起きたとき、片付けを自社の社員だけでやる会社はまずありません。壊れた設備を切って運び出し、危ない場所には人の代わりに機械を入れ、瓦礫を仕分けて、少しずつ更地に戻していく。この作業を、現場を知っている外部の専門会社に頼みます。東京電力ホールディングス(以下、東電HD)にとってのビーエイブルは、まさにこの「片付けを頼む先」です。

ただし普通の片付けと違うのは、この片付けが30〜40年続くと国が決めていることです。政府の中長期ロードマップでは廃炉完了目標は2041〜2051年、廃炉費用は約8兆円と推計され、2026〜2028年度は年2,600〜3,000億円規模の取り崩しが承認されています(有価証券届出書の記載、出典は東電HD・原子力損害賠償・廃炉等支援機構の資料)。

この軸で見ると、強みと弱みが同じ場所から出てくるのがわかります。

  • 強み:片付けの現場を15年やり続けてきたので、東電HDから「競争入札によらず指名で頼まれる」案件が増えている(元請受注比率は2025年7月期で61%、大型案件比率53%)。1・2号機の排気筒を遠隔操作ロボットで解体した実績は内閣総理大臣賞を受賞
  • 弱み片付けを頼む相手が実質1社であること(東電HD向けが売上の53.9%、グループ全体では7割程度)。そして片付けには終わりがあること。2041〜2051年に廃炉が完了すれば、この仕事はなくなる

後半で見る「再生可能エネルギーへの出資」「研究開発センターの建設」「他の原発の再稼働工事への展開」は、すべて片付けが終わった後の仕事を、片付けで稼いでいる今のうちに仕込んでいるという一本の線で読めます。この記事ではこの軸を、決算・資本政策・株価の見方の各章で使い回します。

1-2. 事業の構造

セグメント中身2025年7月期売上(百万円)構成比セグメント利益
工事事業福島第一の廃炉工事(工事事業の約7割)、他原発の再稼働準備・定期検査、一般産業向け配管・鉄骨工事7,85287.4%1,143
再生可能エネルギー事業木質バイオマス発電所(関連会社)の運転・保守受託、風力発電所55基のメンテナンス、自社太陽光5MW、電力小売(2025年11月開始)93010.4%1
その他事業介護(いわき市のデイサービス3か所・訪問看護)、料飲(秋田県鹿角市のレストラン)2002.2%△98
合計8,984100%671(営業利益)

出典:新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部、2026年6月25日提出)。以下「届出書」と表記します。

この表のポイントは2つです。1つ目、利益は工事事業がほぼ全部です。再エネは利益ゼロ、その他は赤字で、工事事業の利益から全社費用を引いたものが会社の営業利益になっています。2つ目、「地域貢献」として位置づけられた事業が赤字で並んでいることです。会社は届出書で介護・料飲を「地域社会との共創」と明記しており、収益事業として見ていません。株主として見るときは、この赤字を「コスト」と読むのか「地元で工事を続けるための必要経費」と読むのかで評価が分かれます。

項目内容
上場市場東証スタンダード(2026年7月29日上場)
決算期7月期(第3四半期は4月末)
主要顧客東京電力HD(2025年7月期売上の53.9%、受注の54.3%)
従業員数218名(2026年5月末)
主要株主創業者・佐藤順英社長と資産管理会社エイブル興産で約60%
株主優待制度なし(届出書・上場日開示に記載が見当たらないことによる判断。詳細は6章)

1-3. 直近5期の業績推移

決算期売上高前年比経常利益経常利益率当期純利益EPS(分割調整後)自己資本比率ROE営業CF
2021年7月期5,5582404.3%15921.43円44.7%4.9%52
2022年7月期6,507+17.1%4917.5%31743.92円45.9%9.5%73
2023年7月期7,426+14.1%1,13315.3%48967.62円44.9%12.7%△11
2024年7月期8,680+16.9%7678.8%52672.82円51.7%12.1%1,835
2025年7月期8,984+3.5%6577.3%47665.83円53.2%9.8%△306

単位:百万円(EPS除く)。出典:届出書「主要な経営指標等の推移」。EPSは2026年3月4日の1株→5株分割を全期間に遡って調整した参考値(2021〜2023年7月期は監査対象外)。配当は全期間で無配。

この表で見てほしいのは、売上は5年で1.6倍に伸びたのに、経常利益は2023年7月期をピークに2期連続で減っていることです。2025年7月期の減益は会社の説明では「人材投資・開発体制強化・システム改善による販管費増」で、販管費は1,055百万円から1,465百万円へ39%増えています。

そしてこれが、今期の業績予想を読むときの伏線になります。今期の経常利益予想1,110百万円(前期比+69.1%)は、実は2023年7月期の1,133百万円にわずかに届かない水準です。「7割増益」という見出しは正しいのですが、「2年前の水準に戻る」と読むのが実態に近いと筆者は考えます。

用語メモ:営業CFがマイナスなのに黒字? 工事会社は、工事の進み具合に応じて売上を計上します(工事進行基準)。ただ、お金が入るのは請求して回収してからです。工事が増えている時期は「売上は立ったがまだ請求していない分」(契約資産)が膨らみ、利益が出ていても手元のお金は減ります。2025年7月期の営業CF△306百万円はこの典型で、契約資産が314百万円、売上債権が162百万円増えたのが主因です。逆に2024年7月期の+1,835百万円は、前年までに積み上がった契約資産が一気に回収された年でした。1年だけ見ると誤解するので、2〜3年ならして見るのが安全です。

1-4. 中期経営計画の目標と、今期予想の位置

会社は中期経営計画(2025〜2027年度)で「営業利益率・経常利益率とも10%以上」を経営目標に置いています(届出書)。

営業利益率
2025年7月期(実績)7.5%
2026年7月期第3四半期累計(実績)12.0%
2026年7月期(会社予想)11.6%

第3四半期時点で目標を上回っており、通期予想でも達成する計画です。数値目標が「率」で置かれていて「売上いくら」「利益いくら」の絶対額目標がない点は、届出書の範囲では確認できませんでした。


2. 決算ハイライト:上場日に開示された第3四半期決算と通期予想

上場日の2026年7月29日、会社は「上場に伴う決算情報等のお知らせ」として、第3四半期決算(2025年8月〜2026年4月)と通期予想を同時に開示しました。上場初年度のため、前年同期の四半期数値は存在せず、前年比は出せません(会社も「記載しておりません」と明記)。

2-1. 損益

項目3Q累計実績通期予想進捗率4Qの含み(筆者の差し引き)前期実績通期予想の前期比
売上高7,3479,78375.1%2,4368,984+8.9%
営業利益8801,13177.8%251671+68.6%
経常利益8981,11080.9%212657+69.1%
当期純利益62072985.1%109476+53.3%
1株利益85.10円97.16円65.83円

単位:百万円。出典:上場日開示資料および第3四半期決算短信。進捗率と4Qの含みは筆者の計算。

この表のポイントは3つです。

1つ目、通期予想は「2026年5月までの実績+6月以降の予想」で作られています(会社が明記)。つまり4Qの含み2,436百万円のうち、5月分はすでに実績です。予想の確度は普通の期初予想より高いと考えられます。

2つ目、4Qの含みが小さく見えますが、四半期の実力と比べて不自然ではありません。 上期(8〜1月)の1四半期平均売上は2,364百万円、3Q単独(筆者の差し引き:7,347−4,728)は2,620百万円で、4Q含み2,436百万円はその間に収まります。ただし前年同期の四半期数値がないので、季節性は今年1年分でしか判断できません。

3つ目、当期純利益の4Q含み109百万円は、逆算すると税率が49%になり不自然です。 計算はこうです。

通期税引前利益(概算)=経常利益予想1,110 − 特別損失予想9 = 1,101百万円
4Qの税引前含み = 1,101 − 3Q累計税引前888 = 213百万円
4Qの純利益含み = 729 − 620 = 109百万円
4Qの想定税率 = (213 − 109) ÷ 213 = 48.9%
(参考:3Q累計の税負担率は30.2%、通期予想ベースは33.8%)

考えられる読み方は2つあります。(a)会社が純利益予想を保守的に置いている、(b)4Qに税務上損金にならない費用(上場関連費用など)や税率の見直しを織り込んでいる。どちらかは開示からは判断できません。言えるのは、通期の純利益予想729百万円は「経常利益予想から素直に降りてくる数字より小さめ」だということで、本決算(10月)で純利益が上振れても、それは業績の上振れではなく税率の正常化かもしれない、と読んでおくのが安全です。

2-2. セグメント別(第3四半期累計)

セグメント3Q売上通期予想売上進捗率3Qセグメント利益3Q利益率
工事事業6,3538,47775.0%1,28120.2%
再生可能エネルギー事業7811,02776.1%△8
その他事業21127876.2%△63
全社費用△329
合計7,3479,78375.1%88012.0%

単位:百万円。検算:セグメント売上の合計6,353,764+781,758+211,896=7,347,418千円(開示7,347,419千円、切捨て誤差±1)。セグメント利益1,281,719−8,049−63,943−329,322=880,405千円(開示880,404千円)。

工事事業のセグメント利益率が20%というのは、工事会社としては相当高い水準です。会社は「遠隔操作ロボット等を活用した高付加価値な工事が着実に進捗」「元請となる案件が着実に増えている」と説明しています。1章の軸に戻ると、「指名で頼まれる片付け」は「入札で取る片付け」より単価が高い、ということです。

再エネ事業は今期から始めた電力小売が「管理コストが収益を上回る状況」でセグメント赤字に転落しています(会社説明)。

2-3. 財政状態:借入が2.5倍、片付けの次の仕事に資金を先出ししている

項目2025年7月末2026年4月末増減
現金及び預金1,1971,367+170
完成工事未収入金5571,550+993
契約資産2,4062,226△180
有形固定資産2,1963,264+1,068
うち建設仮勘定7861,441+655
関係会社出資金2,5953,052+457
総資産9,57912,168+2,589
短期借入金6001,800+1,200
長期借入金(1年内含む)1,7462,972+1,227
純資産5,0965,799+702
自己資本比率53.2%47.7%△5.5pt

単位:百万円。出典:第3四半期決算短信。有利子負債(リース含む)は会社開示で4,950百万円(前期末比+2,548百万円)。

9か月で総資産が27%増え、借入が2.5倍になっています。使い道は会社の説明で明確です。

  • 建設仮勘定+655百万円:beABLE研究開発センター(福島県双葉町、総投資額2,202百万円、2027年2月完成予定)
  • 有形固定資産の増加:富津市の新工場用地取得(新工場は総投資1,200百万円、2027年12月完成予定)、廃炉工事用の特殊車両
  • 関係会社出資金+457百万円:栃木県佐野市の木質バイオマス発電所への出資(次章)

1章の軸で言えば、片付けで稼いだ利益を超える金額を借金して、片付けが終わった後の仕事(ロボット研究、一般産業向け工場、再エネ)に先出ししている状態です。今回の上場で得た資金(公募の自己株処分とOAの第三者割当を合わせた手取概算1,966百万円、8月26日開示)のうち654.5百万円は借入返済(3Q末借入の13.7%)に充てる計画で、残りは研究開発センター599百万円と富津工場713百万円に向かいます(2026年7月21日提出の訂正届出書)。

見落としやすい小さな数字も拾っておきます。工事損失引当金が前期末3.6百万円→3Q末ゼロになっています(2024年7月期末は47.6百万円)。赤字が見込まれる工事がなくなったという意味で、20%のセグメント利益率と整合的です。一方で完成工事未収入金が3倍近くに増えたのは「請求はしたが回収前」の金額が積み上がっているということで、営業CF(四半期では未作成)は今期も苦しいはずです。中間期の営業CFは△673百万円でした(届出書)。

2-4. 工事会社の読み方フレーム:受注高・売上高・受注残高

工事会社の決算は、この3つの数字が「期首受注残+受注高−売上高=期末受注残」でつながります。実際の数字を当てはめて確認します。

工事事業2024年7月期2025年7月期
受注高8,0378,230(+2.4%)
売上高7,0637,853(+11.2%)
期末受注残高3,3983,776(+11.1%)

単位:百万円。出典:届出書「受注及び売上の状況」。

検算:期首受注残3,398,498 + 受注高8,230,005 − 売上高7,852,556 = 3,775,947千円
開示の期末受注残 3,775,946千円 → 一致(切捨て誤差1千円)

受注残は売上の5.8か月分で、前年と同じ水準です。「受注高の伸び(+2.4%)より売上の伸び(+11.2%)が大きいのに受注残が増えている」のは、2024年7月期に大型受注が先行して積み上がっていた分を今期消化したためと読めます。四半期の受注残は開示されていないので、本決算(10月)で2026年7月期の受注残がどう出るかが、来期の売上の先行指標になります。


3. 深掘り:貸借対照表の4分の1を占める「損益計算書に出てこない発電所」

この決算で一番わかりにくく、一番大事な論点はここだと筆者は考えます。

3-1. 何が起きているか

3Q末の総資産12,168百万円のうち、**関係会社出資金が3,052百万円、25.1%**を占めています。中身は2つです。

出資先出資額議決権比率内容
エイブルエナジー合同会社2,595百万円40%福島いわきバイオマス発電所(112MW、国内最大級の木質バイオマス専焼、2022年4月運転開始)。関西電力が50%出資し燃料調達を担当、ビーエイブルは運転・保守を担当
合同会社佐野バイオマス発電457百万円20%栃木県佐野市の木質バイオマス発電所(2028年9月運転開始予定)。ビーエイブルが運転・保守を長期契約で受託

出典:届出書「関係会社の状況」「事業等のリスク」。

ここで初心者が引っかかるのが次の点です。この30億円は、損益計算書に一切登場しません。 理由は、ビーエイブルが連結財務諸表を作っていないからです(完全子会社が1社ありますが重要性が乏しいとして非連結)。連結を作らないので持分法も適用されず、関連会社が儲かっても損しても、ビーエイブル本体の利益には反映されません。貸借対照表には出資したときの金額(原価)がそのまま載り続けるだけです。

用語メモ:持分法 会社が20〜50%を出資している先(関連会社)の利益や損失を、出資比率の分だけ自社の利益に取り込む会計処理です。連結財務諸表を作る会社では必須ですが、ビーエイブルのように連結を作らない会社では使いません。届出書には「持分法を適用した場合の投資損益」という参考数値が載っており、これが「もし適用していたら」の答えになります。

3-2. 「もし持分法を適用していたら」の推移

決算期持分法を適用した場合の投資損益
2022年7月期△19.5百万円
2023年7月期△204.7百万円
2024年7月期△217.1百万円
2025年7月期+60.7百万円

出典:届出書「主要な経営指標等の推移」注記。

2022年4月に運転を始めた発電所は、初年度から2年間は持分ベースで年2億円強の損失を出し、2025年7月期に初めてプラスに転じました。もし持分法を適用していたら、2023年7月期と2024年7月期の当期純利益はそれぞれ2億円程度低く、2025年7月期は6千万円高かったことになります。この間、ビーエイブル本体の損益計算書はこの変動を一切受けていません。

3-3. これをどう読むか

読み方は3つに分かれます。

(a)資産の質として読む。 30億円は「原価で載っている非上場の発電所持分」です。時価はわかりません。会社は届出書のリスク項目で「減損が発生する蓋然性は高くない」「プロジェクトファイナンスなので追加出資や債務保証の義務はなく、損失リスクは出資額の範囲内」と説明しています。上場後のPBRを見るとき、純資産の半分近く(3,052÷5,799=52.6%)がこの原価評価の出資金だという事実は、頭に入れておく必要があります。

(b)将来の収益源として読む。 会社は「数年後以降には、当該発電所の運営会社から有償減資及び配当等による収益を見込んでおります」と届出書に書いています。持分法損益が黒字転換したのは2025年7月期が初めてで、配当が出るのは「数年後以降」です。時期も金額も開示されていません。強気に読めば「まだ損益に反映されていない30億円の資産がある」、慎重に読めば「回収時期が未定の30億円が寝ている」です。

(c)本業とのつながりで読む。 ビーエイブルは出資先から運転・保守業務を受託しています。関係会社向けの売上高は2025年7月期で574百万円(売上全体の6.4%)、さらに出向料181百万円を受け取っています。福島いわきバイオマス発電所の運転・保守契約は2043年3月までです。つまり出資は「発電所の利益の分け前」だけでなく、「17年分の保守の仕事」も一緒に買っている構造です。1章の軸で言うと、片付けが終わった後の「面倒を見る仕事」を、出資という形で先に確保しています。

筆者の見方は、この30億円を「隠れ資産」とも「不良資産」とも決めつけず、上場後初の有価証券報告書(2026年10月末が提出期限)で関連会社の財務情報がどこまで開示されるかを待つのが妥当、というものです。届出書には関連会社の損益計算書は載っておらず、「持分法を適用した場合」の1行しかありません。


4. セグメント・イベント解説

4-1. 工事事業:福島第一以外への広がり

会社が届出書と上場日開示で挙げている、福島第一以外の受注先です。

  • 再稼働関連:東電HD柏崎刈羽(6号機が再稼働、2026年3月出力100%)、中国電力島根、北陸電力志賀、日本原子力発電東海第二、東北電力女川
  • 再処理工場(青森県六ヶ所村):建設工事が終盤で、竣工後のメンテナンス受注を目標
  • 小型モジュール原子炉(SMR)向け検査装置:国内メーカーから開発業務を受注(売上規模は「現時点では限定的」と会社が明記)
  • 一般産業:京葉・京浜地区の鉄骨製作。木更津工場を富津市へ移転・増強(2027年12月完成予定)

1章の軸で言うと、「事故を起こした発電所の片付け」で覚えた技術を、「動いている発電所の点検」に横展開しようとしています。届出書によれば会社は「BWR型原子力発電所の炉内作業や制御棒の点検」に強みがあり、再稼働したプラントでは「毎年、定例の工事が発生」します。片付けは終わりがありますが、点検は発電所が動く限り続きます。

4-2. 東電HDへの依存度

2024年7月期2025年7月期
東電HD向け売上3,956百万円(45.6%)4,842百万円(53.9%)
東電HD向け受注4,640百万円(52.0%)5,208百万円(54.3%)

出典:届出書。会社は「グループ企業も含めた総額は売上の70%程度」とリスク項目で明記しています。

依存度は上がっています。売上が伸びた分の大半が東電HD向けです。会社はリスク対応として「特定の工事に集中せず、燃料デブリ取り出し・使用済燃料・汚染水対策・廃棄物処理と幅広く取り組む」ことを挙げていますが、これは「1社の中で分散している」であって「顧客を分散している」ではありません。この点は6章の弱気材料で再び使います。

4-3. IHIとの資本関係

2025年9月、IHIがビーエイブルの自己株式72,500株(分割後換算)を80,953,500円で引き受けました。1株1,116.6円、つまり新株予約権の行使価額1,117円と同じ水準です。IHIは原子力プラント機器の主要メーカーで、届出書の沿革には「2025年9月 株式会社IHIより出資を受ける」とだけあり、業務提携の中身は記載されていません。この1,117円という数字は、次章の資本政策で「公募価格700円」と比べるときに効いてきます。

4-4. 再生可能エネルギー事業:風力メンテナンスと電力小売

  • 風力発電所メンテナンス:GEベルノバ製の風車を中心に55基を受注。「第三者機関による審査・承認が必要で参入障壁が高い」と会社説明
  • 電力小売(2025年11月開始):現状は卸電力取引所からの調達で、自社の再エネ電力は使えていない(FIT制度で東北電力ネットワークに売電しているため)。顧客数が限られ、セグメント赤字の原因
  • 開発案件:陸上風力(環境アセスメント着手)、小水力、波力発電(2029年以降の事業化計画)

再エネは今のところ「利益ゼロ〜赤字の事業に30億円を出資している」段階です。3章で見た出資金の回収が始まるまで、この事業は損益計算書上は重荷に見え続けます。

4-5. 2024年7月期のサイバー攻撃

届出書の財務諸表を読むと、2024年7月期に**「システム障害対応引当金繰入額」51百万円が特別損失**として計上され、2025年7月期に全額取り崩されています。会計方針の注記に「サイバー攻撃によるシステム障害について、外部専門家に対する調査費用やシステム復旧作業等に係る諸費用の見積額を計上」とあります。届出書のリスク項目にも「二重のファイアウォール」などの対策が書かれていて、原発の廃炉工事を請け負う会社としてはこのリスクは軽くありません。金額は小さいですが、2024年7月期の純利益526百万円は一過性の51百万円を引いた後の数字だということは押さえておきます。


5. 資本政策と株主還元

先にお断りします。この章は「株主還元」というより「上場に伴って株数と株主構成がどう変わったか」の管理情報です。 配当は今期20円が初めてで、株主優待は制度がありません。

5-1. 時系列表:上場前後の資本の動き

日付出来事株数・価格
2025年6月24日第3回・第4回新株予約権を決議(役員・従業員・社外協力者)行使価額5,583円(分割後1,117円)
2025年9月1日IHIへ自己株式を処分72,500株(分割後)、1株1,116.6円
2025年10月24日第5回・第6回新株予約権を決議行使価額同上
2026年3月4日株式分割(1株→5株)発行済2,035,000株→10,175,000株
2026年6月25日上場承認、届出書提出想定価格660円
2026年7月9日仮条件決定660〜700円
2026年7月21日公開価格決定、訂正届出書提出700円(引受価額644円、差額56円は証券会社の取り分)。親引け:クラフティア142,800株・従業員持株会80,000株
2026年7月28日公募(自己株式処分)の払込2,577,500株
2026年7月29日上場、初値1,016円、終値1,316円(ストップ高)この日が配当の権利付き最終日
2026年7月31日配当基準日(期末)20円予定
2026年8月5日佐藤社長が大量保有報告書を提出共同保有60.10%
2026年8月26日オーバーアロットメントに伴う第三者割当の結果を開示。みずほ証券が上限491,600株の全株を引き受け割当価格644円(引受価額と同額)、手取概算316,590千円
2026年8月31日第三者割当の払込期日発行済株式数10,175,000株→10,666,600株
2027年1月24日(日)ロックアップ期間の末日(上場日を含めて180日目、訂正届出書に日付の明記あり)翌営業日は1月25日(月)
2027年6月25日第3回・第4回新株予約権の行使開始516,100株分
2027年10月25日第5回・第6回新株予約権の行使開始128,700株分

出典:届出書、訂正届出書(2026年7月21日)、上場日開示、8月26日開示、株探(大量保有報告書・株価)。

5-2. 今回の公募は「新株発行」ではなく「自己株式の処分」

ここが、この銘柄の株数を読むときの最大のポイントです。

ビーエイブルは上場前から発行済株式の28.3%(2,877,500株)を自己株式として持っていました。今回の公募2,577,500株は、この自己株式を投資家に売ったもので、公募では新しい株は1株も発行されていません。上場時点の発行済株式数は10,175,000株のまま変わらず、自己株式が300,000株に減っただけです。新株が発行されたのは、その後8月31日に払い込まれたオーバーアロットメント(OA)に伴う第三者割当の491,600株です。

時点発行済株式数自己株式自己株控除後増減の内訳
2026年4月末(3Q末)10,175,0002,877,5007,297,500
2026年7月28日(公募払込後)10,175,000300,0009,875,000自己株処分△2,577,500
2026年8月31日(OAの第三者割当の払込後)10,666,600300,00010,366,600新株発行+491,600(資本金36.7百万円→195.0百万円)
検算:7,297,500 + 2,577,500 = 9,875,000株、9,875,000 + 491,600 = 10,366,600株
公募による「株数の増え方」= 2,577,500 ÷ 7,297,500 = 35.3%(上場前の自己株控除後株数に対して)
公募株の上場後比率 = 2,577,500 ÷ 9,875,000 = 26.1%

「新株を発行していないのに35%も株数が増える」というのは、自己株式が議決権も配当もない株だったのが、投資家の手に渡って普通の株に戻ったということです。**希薄化率としては新株発行と同じ35%**で、ここは誤解しないでください。

用語メモ:オーバーアロットメント(OA) 公募で人気が集中したとき、主幹事証券が株主(今回はエイブル興産)から株を借りて追加で売る仕組みです。借りた株は、上場後に市場で買い戻して返すか、会社から新株を第三者割当で引き受けて返します。株価が公募価格を上回ったままだと市場で買い戻すと損なので、通常は第三者割当(新株発行)で返します。ビーエイブルの株価は上場後一度も700円を下回っていない(安値872円)ので、市場での買い戻しは起きず、8月26日の「第三者割当増資の結果に関するお知らせ」のとおりみずほ証券が上限491,600株の全株を引き受け、8月31日に新株が発行されました。割当価格は644円で、これは公募の引受価額と同じです(公募価格700円との差56円が証券会社の取り分)。以下の指標は、この新株発行後の10,366,600株(自己株控除後)を「実株数」として使います。9,875,000株の行は、7月31日の配当基準日時点の株数として残しています。

5-3. 同じ株価でPERが12倍にも18倍にも見える理由

会社の通期予想EPSは97.16円です。ところが、上で見た自己株控除後の株数で純利益予想729百万円を割ると、まったく違う数字が出ます。

EPSの計算方法分母の株数EPS9月4日終値1,308円でのPER
会社予想(予定期中平均株数)約7,503,000株97.16円13.5倍
自己株控除後(7月31日時点、OA前)9,875,000株73.8円17.7倍
自己株控除後(8月31日以降、OA新株込)10,366,600株70.3円18.6倍
発行済ベース(OA込、自己株含む)10,666,600株68.3円19.1倍
検算:729,000,000円 ÷ 97.16円 = 7,503,088株(会社が使った平均株数の逆算)

会社の97.16円が間違っているわけではありません。今期は8月から7月28日まで株数が7,297,500株で、最後の3日間だけ9,875,000株だったので、期中平均をとれば7.5百万株程度になるのは当然です。ただしこの数字は「今期1年間の1株あたり利益」であって、来期以降に1株が受け取れる利益の目安ではありません。来期の株数は最初から9.9〜10.4百万株です。

証券サイトの「予想PER」がサイトによって13倍だったり19倍だったりするのはこのためです。筆者は、株価の割高・割安を考えるときは実株数ベースの70.3円を使うのが妥当だと考えます。公募価格700円で見ると、会社EPSで7.2倍、実株数EPSで10.0倍でした。「PER7倍の割安IPO」と紹介されていたのは、期中平均株数の効果が入った数字です。

同じ問題はPBRにも起きます。

純資産の取り方純資産株数BPS9月4日終値1,308円でのPBR
3Q末(上場前)5,799百万円7,297,500株795円1.65倍
上場後(公募+OAの手取1,966百万円を加算)筆者の試算7,765百万円10,366,600株749円1.75倍
証券サイトの一部が表示する値5,799百万円10,666,600株544円2.41倍

手取額は8月26日の開示で確定しており、公募(自己株処分)が1,649,910千円、OAの第三者割当が316,590千円、合計1,966,500千円です。3Q末の貸借対照表にはこの資金が入っていないので、証券サイトのPBRは「上場前の純資産を上場後の株数で割る」というちぐはぐな計算になっている場合があります。自己資本比率も3Q末の47.7%から、手取資金を足すと約55%、借入654.5百万円を返した後は約58%まで戻る計算です(筆者の試算。手取資金の運用・返済以外の使途は考慮していません)。

5-4. ダウンラウンド判定:IHIの1,117円と公募の700円

4章で見たとおり、IHIは2025年9月に1株1,116.6円で株を取得しました。公募価格は700円です。

700 ÷ 1,117 − 1 = △37.3%

上場価格が、10か月前の第三者割当の価格を37%下回る「ダウンラウンド」でした。 ただし届出書の記載では、IHIの取得価格は新株予約権の行使価額と同じ1,117円であり、事業提携を前提とした交渉価格の可能性があります。上場時の値付けが市場評価そのものを表しているとは限りません。

事実として添えておくと、9月4日終値1,308円はIHIの取得価格を17.1%上回っています。IHIも、新株予約権を持つ役員・従業員も、現在の株価では含み益の状態です。

5-5. ロックアップと新株予約権:2027年1月と6月に何があるか

ロックアップは、訂正届出書(2026年7月21日)の原文で確認できます。売出人かつ貸株人のエイブル興産、佐藤社長、従業員持株会、大東銀行の4者が、「上場日(当日を含む)後180日目の2027年1月24日まで」主幹事の書面同意なしに売却しない旨を合意しています。日付が明記されているので数え方のずれはなく、期間末日は2027年1月24日(日曜日)、実際に売却できるのは1月25日(月曜日)以降です。株価による解除条項はなく期間固定ですが、「主幹事会社はロックアップ期間中であってもその裁量で当該合意の内容を一部若しくは全部につき解除できる権限を有して」いると明記されています。この裁量解除は多くのIPOで付いているもので、ロックアップは絶対の約束ではありません。

同じ訂正届出書には、あと2つのロックアップがあります。1つは会社側の発行制限で、同じ期間中は新株の発行や転換証券の発行を行わないという合意(ストックオプションは除外)。もう1つは親引け先のロックアップで、公募のうち会社が販売先を指定した株式会社クラフティア(142,800株、約1億円)と従業員持株会(80,000株)も、同じ2027年1月24日まで売却しない書面を差し入れています。

用語メモ:親引け 公募株の一部を、会社が指定した相手(取引先や従業員持株会)に優先的に販売することです。クラフティア(旧九電工)は、3章で見た福島いわきバイオマス発電所の運営会社に5%を出資している共同事業者で、届出書は「持分法適用関連会社において協業」と説明しています。親引け株は長期保有が前提で、公募株の8.6%(222,800株÷2,577,500株)が市場に出回らない安定株主に渡った計算です。

新株予約権は合計644,800株分で、自己株控除後株数10,366,600株の6.2%に相当します。行使価額は1,117円、行使開始は第3回・第4回(516,100株)が2027年6月25日、第5回・第6回(128,700株)が2027年10月25日です。上場後6か月ではなく決議から2年後に固定されている点が一般的なIPOと違います。株価が1,117円を上回っていれば行使される可能性があり、2027年6月以降は潜在的な売り圧力になります。

まとめると、需給面で見るべき日付は次の順です。

  1. 2027年1月24日(日):ロックアップ期間満了、売却可能は1月25日(月)から(対象は約59%を持つ創業者側、親引け先、従業員持株会、大東銀行)
  2. 2027年6月25日:新株予約権の行使開始(516,100株、5.0%)
  3. 2027年10月25日:同(128,700株、1.2%)

5-6. 大株主と議決権:創業者側で59%

8月5日提出の大量保有報告書(株探経由で確認)によれば、佐藤順英社長とエイブル興産の共同保有は6,115,000株、60.10%です。分母は発行済10,175,000株なので、議決権ベース(自己株控除後)で計算し直すと次のようになります。

株主株数報告書の分母(発行済10,175,000株)議決権ベース(7月31日時点、9,875,000株)議決権ベース(8月31日以降、10,366,600株)
エイブル興産(佐藤社長の資産管理会社)4,315,00042.4%43.7%41.6%
佐藤順英社長1,800,00017.7%18.2%17.4%
創業者側合計6,115,00060.1%61.9%59.0%
従業員持株会(親引け80,000株を含む)330,0003.2%3.3%3.2%
クラフティア(親引け)142,8001.4%1.4%1.4%
大東銀行160,0001.6%1.6%1.5%
IHI72,5000.7%0.7%0.7%
検算:エイブル興産 5,015,000 − 売出700,000 = 4,315,000株。4,315,000 + 1,800,000 = 6,115,000株
6,115,000 ÷ 10,175,000 = 60.10%(報告書の記載と一致)

用語メモ:議決権の3分の1、2分の1、3分の2 株主総会の議案は、普通決議(取締役の選任、配当など)が過半数、特別決議(定款変更、合併など)が3分の2以上で可決されます。過半数を持つ株主は普通決議を単独で可決でき、3分の1超を持つ株主は特別決議を単独で否決できます。 創業者側の59.0%は「取締役の選任も配当も自分たちで決められるが、定款変更などの特別決議は他の株主の賛成が必要」という位置です。

正式な大株主表は、上場後初の有価証券報告書(2026年10月末が提出期限)まで出ません。 上の表は届出書の株主リストと売出・親引け株数から筆者が計算した概算です。なお訂正届出書にある「本募集及び売出し後」の比率(エイブル興産41.01%、佐藤社長17.11%)は、分母に新株予約権の潜在株644,800株を含めた10,519,800株で計算されており、上の表より低く出ます。証券サイトの大株主比率がどの分母を使っているかは、サイトごとに確認が必要です。VC(ベンチャーキャピタル)は届出書の上位株主に見当たりません。届出書は「流通株式比率33.5%」と記載しており、東証スタンダードの上場維持基準(25%以上)は上回っています。

5-7. 配当:初配当20円、権利付き最終日は上場日だった

項目内容
配当方針「継続的かつ安定的な配当」「1株当たり配当金は20円を下限とする方針」(届出書)
回数期末の年1回が基本(定款上は1月31日基準日の中間配当も取締役会決議で可能)
2026年7月期20円(予想、初配当)。基準日2026年7月31日
権利付き最終日2026年7月29日(水)=上場日
配当性向会社EPSベース20.6%、実株数ベース27.1%(筆者の計算)
配当利回り公募価格700円で2.86%、9月4日終値1,308円で1.53%
配当総額 = 20円 × 9,875,000株 = 197.5百万円
配当性向(純利益729百万円) = 27.1%
※OAの第三者割当株は8月31日払込のため、7月31日基準日の配当対象外(配当総額の分母は9,875,000株)
※2026年7月31日(金)の2営業日前 = 7月29日(水)。上場日に買った株は初日から配当の権利あり

上場日に公募で取得した株も初値で買った株も、その日の終値で持っていれば20円の配当を受け取れます。翌7月30日は権利落ち日で、株価は△19.2%の1,063円でしたが、これは配当落ち(20円)だけでは説明できず、初日のストップ高からの反落が主因です。

次回以降の権利付き最終日は、筆者の計算で**中間(もし実施されれば)2027年1月27日(水)、期末2027年7月28日(水)**です。2027年7月31日は土曜日なので、最終営業日7月30日の2営業日前になります。休業日次第で変わるので、直前に会社IRでご確認ください。

配当性向が20.6%と27.1%で2つあるのも5-3と同じ理由(期中平均株数と実株数)です。会社の「20円を下限」という方針を実株数で読むと、来期以降は最低でも年約207百万円(20円×10,366,600株)の配当原資が必要で、今期の純利益予想729百万円に対しては余裕があります。

5-8. 株式分割の影響と株主優待

  • 株式分割:2026年3月4日に1株→5株。届出書の1株指標はすべて分割後に調整済みで、この記事の数字も分割後です。過去記事との比較で調整が必要な場面は、上場前のため存在しません
  • 自己株式:上場後も300,000株(発行済10,666,600株の2.8%)を保有。直近の追加取得はなし
  • 保有有価証券の含み益:上場株式3銘柄(ハイデイ日高、大東銀行、福島銀行)で簿価40百万円、含み益は数百万円規模で論点になりません。政策保有株の縮減という論点はこの会社にはありません
  • 株主優待:届出書・上場日開示・第3四半期決算短信のいずれにも株主優待制度の記載が見当たりません。会社IRサイトにFAQは確認できませんでした。「制度がないと会社が明言している」のではなく「一次情報に記載がないことから判断した」ものです

6. 株価の見方:強気と弱気を並べる

6-1. 上場後の株価の事実(株探の時系列データ、9月4日時点で筆者が確認できた範囲)

日付出来事株価
7月21日公開価格決定700円
7月29日上場。初値1,016円(公開価格+45.1%)、終値1,316円(ストップ高、+88.0%)、出来高11,864,600株1,316円
7月30日権利落ち日1,063円(△19.2%)
8月4日ザラ場安値881円908円
8月6日ザラ場で上場来安値872円892円
8月28日1,081円
9月1日1,140円
9月2日1,067円
9月3日前日比+12.75%1,203円
9月4日前日比+8.7%(前場に1,350円前後まで上昇後、伸び悩み)。公募価格比+86.9%、時価総額約136億円(自己株控除後株数ベース)1,308円

上場日の出来高11,864,600株は当時の発行済株式数10,175,000株の1.17倍(OA新株発行後の10,666,600株でも1.11倍)で、上場日だけで全株が1回転以上した計算です。9月3日・4日の急騰について、会社の適時開示は8月26日のOA結果以降ありません(9月4日時点)。報道ベースの材料も筆者は確認できておらず、需給主導と見るのが自然ですが、断定はしません。

6-2. 強気に読む材料

  • 「終わりが決まった片付け」だからこそ予算が読める。 廃炉費用は年2,600〜3,000億円規模が2028年度まで承認済みで、東電HDの総合特別事業計画は「廃炉事業の長期化を前提に人員・体制を強化」を明記。景気に左右されない国策工事
  • 元請比率の上昇と20%のセグメント利益率。 指名で頼まれる仕事が増えており、今期は営業利益率11.6%で中計目標の10%を初めて超える計画
  • 片付けの技術が「点検」に転用できる。 再稼働原発の定期検査は毎年発生し、廃炉と違って終わりがない。柏崎刈羽・島根・志賀・東海第二への受注が始まっている
  • 貸借対照表に「損益計算書に出ていない」30億円の発電所持分がある。 持分法損益は2025年7月期に黒字転換し、数年後以降の配当・有償減資が会社計画にある
  • 需給面で、創業者側60%は2027年1月まで売れない。 VCの出口案件ではなく、公募も新株ではなく自己株の処分。上場後に会社に入った資金の3分の1近くは借入返済に向かう
  • IHIが1,117円で出資した価格を現在の株価は上回っており、「上場時が安すぎた」と読む余地がある

6-3. 弱気に読む材料

  • 片付けを頼む相手が1社。 東電HD向け53.9%、グループで7割。しかも依存度は上がっている。「1社の中での分散」は「顧客の分散」ではない
  • 片付けには終わりがある。 廃炉完了目標2041〜2051年。今の利益の源泉は、遅くとも25年後には消える仕事であり、代わりの仕事(再エネ・一般産業・SMR)はまだ利益が出ていない
  • 「7割増益」は「2年前の水準への回復」。 経常利益は2023年7月期がピークで2期連続減益だった。今期予想1,110百万円は2023年7月期の1,133百万円に届かない
  • PERは実株数ベースで19倍。 「PER7倍の割安IPO」は期中平均株数の効果が入った数字で、来期以降の株数で見れば公募価格時点でも10.0倍だった。現在の株価は公募価格の1.9倍
  • 借入が9か月で2.5倍。 有利子負債4,950百万円は純資産の85%。研究開発センターと富津工場の残り投資は約16.5億円(筆者の計算:総投資3,403百万円−既払1,752百万円)で、公募資金のうち借入返済654.5百万円を除いた分がここに消える。財務制限条項(純資産を前期末の75%以上に維持、経常赤字を2期連続にしない)は現状十分な余裕があるが、存在はする
  • 30億円の出資金は原価評価で、回収時期未定。 純資産の半分がこの出資金であり、減損リスクは「蓋然性は高くない」という会社の判断に依存している
  • 株価が需給で動いている。 上場日に発行済の1.17倍が売買され、直近2日で23%上昇したが、会社の開示材料はない。2027年1月24日のロックアップ期間満了、6月の新株予約権行使開始(1,117円、5.0%相当)が需給の重石になりうる
  • ダウンラウンド上場であった事実。IHIの取得価格を37%下回る公募価格は、主幹事と機関投資家がこの会社の価値をどう見ていたかの一つの手掛かり

6-4. 筆者の見方

この銘柄は、「片付けの仕事」の安定性を買うのか、「片付けが終わった後の仕事」への転換を買うのかで、見る数字が変わります。前者なら受注残と東電HD向け売上、後者なら再エネセグメントの利益と関係会社出資金の回収です。現在の株価(実株数PER19倍、PBR1.8倍)は、前者だけでは説明しにくく、後者への期待がいくらか入っている水準だと筆者は読んでいます。その期待が正しいかどうかは、10月の本決算で出てくる受注残と、上場後初の有価証券報告書で開示される関連会社の情報で、最初の答え合わせができます。判断はお任せします。


7. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るべき点
2026年9月中旬〜10月上旬2026年7月期 本決算発表(会社の発表日は未確認)通期着地(特に純利益の税率)、2026年7月期末の受注残高、来期予想の株数の前提(10,366,600株ベースか)
2026年10月下旬(例年)定時株主総会配当20円の決議、役員体制
2026年10月末上場後初の有価証券報告書の提出期限正式な大株主表、関連会社の財務情報、四半期ごとの売上高(季節性の把握)
2026年12月中旬第1四半期決算(8〜10月)上場初年度で初めて前年比が出せる四半期
2027年1月24日(日)ロックアップ期間満了(翌25日から売却可能)創業者側・親引け先の売却有無(大量保有報告書の変更報告で確認)
2027年1月27日(水)中間配当の権利付き最終日(実施される場合のみ。筆者の計算)中間配当の有無
2027年2月beABLE研究開発センター完成予定借入の返済計画
2027年6月25日第3回・第4回新株予約権の行使開始株価1,117円との位置関係
2027年7月28日(水)期末配当の権利付き最終日(筆者の計算)
2027年12月富津工場完成予定一般産業向け売上の変化
2028年9月佐野バイオマス発電所 運転開始予定再エネセグメントの利益

継続して見るKPI

  1. 工事事業の受注高・受注残高(本決算で年1回)。「受注残÷売上」の月数が5.8か月から伸びるか縮むか
  2. 東電HD向け売上比率(有価証券報告書で年1回)。50%台で止まるか、さらに上がるか
  3. 工事事業のセグメント利益率(20%が維持できるか)
  4. 関係会社出資金の残高と、有価証券報告書に関連会社の損益が載るか
  5. 有利子負債と自己資本比率(研究開発センター・富津工場の完成まで上昇が続く前提)
  6. 元請受注比率・大型案件比率(届出書のKPI。年1回の開示があるか)

8. 3行まとめ

  • ビーエイブルは「福島第一の片付け」を元請として引き受け、今期は営業利益率12%で中計目標を上回る計画だが、経常利益は2年前のピークに戻る途中であり、売上の54%が東電HD1社に依存している
  • 上場の中身は新株発行ではなく自己株式の処分で、会社のEPS97円と実株数EPS70円の差、公募価格700円とIHI取得価格1,117円の差、貸借対照表の4分の1を占める非連結の発電所持分30億円の3点を押さえないと、この銘柄の指標は読み違える
  • 次の答え合わせは10月の本決算(受注残と純利益の税率)と上場後初の有価証券報告書(大株主表と関連会社情報)で、需給面では2027年1月24日のロックアップ期間満了と6月の新株予約権行使開始が節目

本記事は、有価証券届出書・上場日の決算情報開示・第3四半期決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は特定銘柄への投資を勧誘・助言するものではありません。数値は日本取引所グループの新規上場会社情報ページに掲載された届出書(Ⅰの部)および上場日開示資料の原文に基づいており、「筆者の概算」「筆者の試算」「筆者の差し引き」と記載した数値は筆者の計算です。株価・出来高は株探の時系列データ、大量保有報告書の内容は株探の報道記事、ロックアップの対象者・期間・解除条項、親引けの内容、引受価額、資金使途の内訳(599/713/654.5百万円)は2026年7月21日提出の有価証券届出書の訂正届出書(EDINET)の原文に基づきます。届出書第四部の「第三者割当等の概況」(IHI等への割当に付された継続所有の確約の詳細)は筆者が原文で確認できていません。オーバーアロットメントに伴う第三者割当の株数・払込金額・手取額は、2026年8月26日開示「第三者割当増資の結果に関するお知らせ」の原文に基づいています。本記事では、関連会社エイブルエナジー合同会社の個別の財務内容、東電HDの廃炉中長期実行プランの工事内容と同社の受注の対応関係、新株予約権の割当先ごとの内訳、上場前の第三者割当に付された継続所有の確約、財務制限条項の詳細には踏み込んでいません。有価証券報告書(2026年10月末提出期限)でご確認ください。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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