本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。**執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。**特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事でわかること
- 売上+33.1%、営業利益が1百万円から132百万円へ——この増益の大半は、買収した子会社の「1〜3月」が今年から連結に入ったことで説明できること(その3か月を除くと、営業利益は約14百万円)
- 3か月ごとに引き算すると、6〜8月は営業赤字(△8.8百万円)で、6〜8月の営業赤字は3年続いていること
- 通期予想を据え置いたことで、下期に「売上+11.7%・営業利益+34.3%(前年下期比)」が求められていること。前年もほぼ同じ形で据え置き、下期の着地は営業利益で86%だったこと
- 筆頭株主のDream Bridge株式会社が、2026年4月から6月にかけて持株を約214万株から約116万株に減らし、議決権比率が29.90%から16.11%に下がっていたこと(変更報告書は118〜163日後にまとめて提出)
- 同社の5月の売買について金融商品取引法の「短期売買利益」2,000万円が当社に返還され、下期に特別利益として計上されること。これが通期予想に入っているかは開示されていないこと
- 過去の不正・決算訂正・特別注意銘柄指定から、2026年4月設置の調査委員会まで、ガバナンス関連の開示の時系列
1. 前提知識:東京衡機はどんな会社か
1-1. 「材料をちぎって強さを測る機械」を注文で仕立てる工房
橋の鉄骨、自動車の部品、発電所の配管。こうした材料は、使う前に「どれだけの力で伸び、どこでちぎれるか」を確かめる必要があります。実際に試験片を機械にかけて引っ張り、押しつぶし、何万回も揺すって壊し、その強さを数字にする。その機械が「試験機」です。
東京衡機は1923年創業の試験機メーカーで、引張・圧縮・衝撃・疲労などの試験機を、客の材料や規格に合わせて一台ずつ仕立ててきました。短信では、主力の試験機事業について「オーダーメイド製品の受注が堅調に推移」と書かれています。
この記事では、東京衡機を次の一文で捉えます。
「材料をちぎって強さを測る機械を注文ごとに仕立ててきた工房が、画面の上で先に壊してみる会社を買い足した会社」
2025年3月に子会社化した株式会社先端力学シミュレーション研究所(以下、ASTOM社)は、CAE(コンピューター上で部品に力をかけ、壊れ方を計算するソフトと受託解析)の会社です。本物を壊す機械と、画面の上で壊してみる計算を、同じグループで売ろうとしている、というのが会社の説明する方向です。
この一文には、強みと弱みが同時に入っています。
| 一文の中の言葉 | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| 注文ごとに仕立てる | 客の規格に合わせた一品物なので値崩れしにくい。粗利率は3割台半ば | 売上が立つのは客の検収(受け取り確認)が済んだとき。時期は自分で決められない。上期の計画未達の理由もこれ |
| 画面の上で先に壊してみる会社を買い足した | 実測データとシミュレーションを組み合わせた提案ができる | ASTOM社は1〜3月に売上・利益が集まる会社で、しかも当社とは決算の月がずれて連結されている。決算の見え方を大きく変える |
この2つの弱みは、それぞれ本記事の2つの深掘りに対応します。「検収の時期を自分で決められない」は、上期の計画未達と下期の据え置き(第4章)。「1〜3月に稼ぐ会社を、ずれた月で連結している」は、今期の大幅増益の正体(第3章)です。
1-2. 会社の形:持株会社の下に3つの事業
当社は持株会社で、事業は子会社が営んでいます。
| セグメント | 担う子会社 | 中身 | 上半期の売上高 | 上半期のセグメント利益 |
|---|---|---|---|---|
| 試験機事業 | ㈱東京衡機試験機 | 試験機の製造・販売、修理・校正、受託試験 | 1,885百万円 | 334百万円 |
| エンジニアリング事業 | ㈱東京衡機エンジニアリング | ゆるみ止めナット・ばね(製造は外部委託のファブレス) | 183百万円 | △8百万円 |
| デジタル事業 | ASTOM社(当社の議決権67.69%) | CAEソフト販売・保守、受託開発 | 402百万円 | 77百万円 |
| その他 | ― | 持分法適用会社からの管理業務料、相模原工場の敷地賃料 | 4百万円 | 4百万円 |
| 調整額(全社費用) | 当社 | 総務・経理など管理部門の費用、セグメント間取引の消去 | △23百万円 | △275百万円 |
| 連結 | 2,452百万円 | 132百万円 |
※短信のセグメント情報(2026年3〜8月)。百万円未満切り捨て。デジタル事業の売上はセグメント間取引23百万円を含む
この表のポイントは2つです。
- セグメント利益の合計は408百万円あるのに、全社費用275百万円を引くと連結の営業利益は132百万円になる。全社費用は前年同期の240百万円から14.8%増えています
- 稼ぎの大半は試験機事業です。エンジニアリング事業は上期で営業赤字、デジタル事業の77百万円は後で見るように季節の山の分です
株主優待は、会社IRサイトのIR情報ページとFAQに案内が見当たらないことから「制度なし」と判断しました(会社が「制度はない」と明言しているわけではなく、有報の「株主に対する特典」欄は本記事では確認していません)。配当は無配です。
1-3. 決算期と「何月の集合か」
東京衡機は2月決算です。四半期は次の月の集合になります。
| 連結上の四半期 | 当社の月 | ASTOM社の月(デジタル事業) |
|---|---|---|
| 第1四半期 | 3〜5月 | 1〜3月(ASTOM社の売上・利益が集まる時期) |
| 第2四半期 | 6〜8月 | 4〜6月 |
| 第3四半期 | 9〜11月 | 7〜9月 |
| 第4四半期 | 12〜2月 | 10〜12月 |
ASTOM社は12月決算で、当社はその2か月前の数字を連結しています(「連結決算日と被取得企業の決算日の差異が3か月を超えない」ための処理と、前期の短信に記載)。今期の第1四半期短信には、デジタル事業について「1月から3月までの期間は従来から売上・利益の集中する期間」と書かれています。
用語メモ:子会社の決算日が親会社と3か月以内のずれなら、子会社の決算をそのまま使って連結してよい、というルールがあります。東京衡機の場合、連結上の「3〜5月」の中身は、ASTOM社にとっては「1〜3月」です。
1-4. 業績の推移と会社予想
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 | 2027年2月期(会社予想) | 2027年2月期上半期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,483百万円 | 4,473百万円 | 5,392百万円 | 2,452百万円 |
| 営業利益 | 25百万円 | 152百万円 | 336百万円 | 132百万円 |
| 営業利益率 | 0.7% | 3.4% | 6.2% | 5.4% |
| 経常利益 | 36百万円 | 157百万円 | 352百万円 | 149百万円 |
| 親会社株主に帰属する純利益 | 62百万円 | 133百万円 | 235百万円 | 76百万円 |
| 1株当たり純利益 | 8.83円 | 18.71円 | 32.94円 | 10.65円 |
| ROE | 4.1% | 8.1% | ― | ― |
| 自己資本比率 | 41.7% | 34.0% | ― | 36.1% |
| 1株配当 | 0円 | 0円 | 0円 | ― |
| 試験機の受注残高(期末) | ― | 3,199百万円(前期比△10.5%) | ― | 開示なし |
※各期の決算短信・2026年2月期有報。受注残高は有報「生産、受注及び販売の状況」の試験機事業
この表のポイントは、2026年2月期の試験機の受注高が3,429百万円(前期比△14.1%)、受注残高が3,199百万円(同△10.5%)と、売上が伸びた年に受注と受注残はともに減っていたことです。受注高÷売上高(ブック・トゥ・ビル)は0.93倍で、1倍を下回りました。期中の受注残高は四半期の短信では開示されていません。
1-5. 会社予想の達成履歴
| 期 | 項目 | 期初予想(4月) | 修正(開示日) | 上期予想→上期実績 | 通期実績 | 期初比 | 修正後比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 売上高 | 4,930 | 4,770(2025年9月17日) | 2,230→1,842(△17.4%) | 4,473 | △9.3% | △6.2% |
| 2026年2月期 | 営業利益 | 126 | 177(同) | 70→1(△98.2%) | 152 | +21.4% | △13.6% |
| 2027年2月期 | 売上高 | 5,392 | 修正なし | 2,841→2,452(△13.7%) | ― | ― | ― |
| 2027年2月期 | 営業利益 | 336 | 修正なし | 207→132(△36.2%) | ― | ― | ― |
※単位は百万円。上期の増減率は会社の差異開示の表記。2025年2月期以前の予想と実績は本記事では確認していません
前期は、上期予想に大きく届かず(売上△17.4%、営業利益△98.2%)、その直前の9月17日に通期予想を「売上は下げ、利益は上げる」形に修正し、10月10日の上期決算では据え置きました。着地は修正後予想に対して売上△6.2%、営業利益△13.6%でした。
今期の上期も、売上△13.7%、営業利益△36.2%と上期予想に届かず、通期は据え置きです。2年続けて「上期予想に届かず、通期は据え置き」という形になっています。
1-6. 中期経営計画との距離
2025年9月に策定した中計(2026年2月期〜2028年2月期)の数値目標は次のとおりです。
| 項目 | 2026年2月期 | 2027年2月期 | 2028年2月期 |
|---|---|---|---|
| 中計の売上高 | 4,770 | 5,380 | 6,092 |
| 実績・会社予想の売上高 | 4,473(実績) | 5,392(予想) | ― |
| 中計の営業利益 | 177 | 366 | 626 |
| 実績・会社予想の営業利益 | 152(実績) | 336(予想) | ― |
| 中計の粗利率 | 33.6% | 35.1% | 35.7% |
| 実績の粗利率 | 34.6% | 36.6%(上期) | ― |
※単位は百万円。中計は2025年9月17日の開示
今期の営業利益予想336百万円は、中計の366百万円を30百万円下回る水準で置かれています。最終年度の626百万円には、今期予想から+86.3%の伸びが要ります。粗利率は中計を上回って推移しています。
また、中長期の経営指標には、書類によって違う数字が出てきます。
| 書類 | ROE | ROIC |
|---|---|---|
| 2025年4月の取締役会で設定した財務KPI(2026年3月26日の上場維持基準の開示に記載) | 10%以上 | 7%以上 |
| 中計(2025年9月)・2026年2月期有報 | 20%以上 | 15%以上 |
有報では、2026年2月期の実績(ROE8.1%、ROIC3.24%など)について、会社自身が「目標とする指標を下回る結果となりました」と書いています。2つの目標の関係は開示されていません。
2. 決算ハイライト(2026年10月15日15時30分発表)
2-1. 損益
| 項目 | 2026年2月期上半期 | 2027年2月期上半期 | 前年同期比 | 上期予想 | 予想比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,842 | 2,452 | +33.1% | 2,841 | △13.7% |
| 売上総利益 | 649 | 897 | +38.3% | ― | ― |
| 粗利率 | 35.2% | 36.6% | +1.4pt | ― | ― |
| 販管費 | 648 | 765 | +18.1% | ― | ― |
| 営業利益 | 1 | 132 | ― | 207 | △36.2% |
| 経常利益 | △13 | 149 | ― | 226 | △34.1% |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | △22 | 76 | ― | 159 | △52.2% |
※単位は百万円(切り捨て)。予想比は会社の差異開示の表記
経常利益が営業利益を17百万円上回ったのは、営業外収益に助成金収入21百万円が入ったためです(前年同期はゼロ)。助成金の中身は短信に書かれていません。
税金等調整前中間純利益142百万円に対する法人税等は49百万円(負担率34.7%)、さらに非支配株主に帰属する利益が16百万円差し引かれています。ASTOM社の株式の32.31%は当社以外が持っているため、ASTOM社が稼ぐと、その約3分の1は当社の株主の取り分になりません。
2-2. 会社の説明(差異開示の原文)
差異の理由について、会社は次のように書いています(2026年10月15日「連結業績予想と実績値の差異に関するお知らせ」)。
主力の試験機事業では、オーダーメイド製品の受注が堅調に推移したものの、一部案件の納入・検収時期のずれ等により、売上計上が当初の見込みを下回りました。デジタル事業では、ASTOM R&D 社の受託開発売上が拡大し、前年同期の営業損失から営業利益に転換した一方、一部案件の売上計上時期のずれが当初予想との差異に影響しました。
通期を据え置いた理由は次のとおりです。
試験機事業及びデジタル事業では、上期に売上計上が遅れた案件について、下期の納入・検収の進捗を見込んでおります。
なお、今回の短信の表紙は「決算補足説明資料作成の有無:無」「決算説明会開催の有無:無」で、会社IRサイトのIRニュースにも説明資料は掲載されていません(10月15日の短信が最新)。本記事の会社説明は、短信と差異開示の文章だけに基づいています。
2-3. 財政状態とキャッシュ・フロー
| 項目 | 2026年2月末 | 2026年8月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 1,278 | 1,310 | +32 |
| 受取手形及び売掛金 | 981 | 582 | △398 |
| 仕掛品 | 775 | 865 | +90 |
| 契約負債(前受け) | 167 | 366 | +198 |
| 電子記録債務 | 467 | 189 | △278 |
| 有利子負債(借入金・社債・リース) | 1,395 | 1,275 | △120 |
| 純資産 | 1,902 | 2,005 | +102 |
| 自己資本比率 | 34.0% | 36.1% | +2.1pt |
※単位は百万円(切り捨て)。有利子負債は筆者が短信の科目を合計
この表のポイントは2つです。
- 売上前に代金を受け取った「契約負債」が198百万円増え、作りかけの「仕掛品」が90百万円増えた。どちらも「まだ売上になっていない仕事」が積み上がっていることを示す数字で、会社の「下期の納入・検収の進捗を見込む」という説明と同じ方向です。ただし、受注残高そのものは開示されていません
- 現預金1,310百万円に対し有利子負債は1,275百万円で、差し引き(ネットキャッシュ)は約35百万円のプラスです
営業キャッシュ・フローは313百万円の収入(前年同期426百万円)。売上債権の回収574百万円が大きく、仕入債務の支払い280百万円と棚卸資産の増加136百万円が出ていきました。投資キャッシュ・フローは△175百万円で、有形固定資産の取得155百万円(建物68百万円、建設仮勘定67百万円の増加)が中心です。中計では今期の設備投資を220百万円と計画していました。
3. 深掘り①:+33%増収の中身は「1〜3月の上乗せ」
3-1. 営業利益の増加131百万円を、セグメントごとに分ける
前年同期から営業利益は131.1百万円増えました。これをセグメントごとに分けると、次のようになります。
| セグメント | 2026年2月期上半期 | 2027年2月期上半期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 試験機事業 | 276.4 | 335.0 | +58.6 |
| エンジニアリング事業 | 20.3 | △8.9 | △29.2 |
| デジタル事業 | △65.4 | 77.8 | +143.2 |
| その他 | 10.3 | 4.3 | △6.0 |
| 調整額(全社費用) | △240.4 | △276.0 | △35.6 |
| 連結営業利益 | 1.2 | 132.3 | +131.1 |
※単位は百万円。千円単位の開示値から筆者が計算し、百万円未満1桁で四捨五入。合計は実際の増減131.1百万円と一致
増益の額をセグメントで見ると、デジタル事業の+143.2百万円が全体の増加(+131.1百万円)を上回っています。試験機事業も+58.6百万円伸びましたが、エンジニアリング事業と全社費用の悪化でほぼ相殺されました。
3-2. デジタル事業の+143百万円は、連結している「月」が違う
ここで1-3の表に戻ります。デジタル事業の数字は、前年と今年で連結している月数が違います。
| 前年上半期 | 今年上半期 | |
|---|---|---|
| 連結しているASTOM社の月 | 2025年4〜6月の3か月(取得日が3月31日のため) | 2026年1〜6月の6か月 |
| うち1〜3月(季節の山) | 0か月 | 3か月 |
| デジタル事業の売上 | 88.5 | 402.1 |
| デジタル事業の営業利益 | △65.4 | 77.8 |
※単位は百万円
前年は1〜3月がまったく入っておらず、今年は丸ごと入りました。今期の第1四半期(連結上の3〜5月=ASTOM社の1〜3月)だけで、デジタル事業の営業利益は118.2百万円です。
同じ月どうしで比べられるのは、連結上の6〜8月(ASTOM社の4〜6月)だけです。
| デジタル事業(ASTOM社の4〜6月) | 前年 | 今年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 88.5 | 120.5 | +31.9 |
| 営業利益 | △65.4 | △40.4 | +25.0 |
※単位は百万円。今年の6〜8月は上期から第1四半期を筆者が差し引き
同じ月で比べると、デジタル事業は赤字幅を25百万円縮めましたが、まだ赤字です。デジタル事業の+143.2百万円のうち、+118.2百万円は「今年から1〜3月が入った」ことによる上乗せと読めます。
3-3. 上乗せを除くと
ASTOM社の1〜3月分(第1四半期のデジタル事業の外部売上268.6百万円、セグメント利益118.2百万円)を連結から機械的に除くと、次のようになります。
| 前年上半期 | 今年上半期 | 今年上半期(ASTOM社の1〜3月を除く) | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,842.1 | 2,452.6 | 2,184.0 |
| 前年同期比 | ― | +33.1% | +18.6% |
| 営業利益 | 1.2 | 132.3 | 約14.1 |
※単位は百万円。右列は筆者の試算で、セグメント間取引の消去やのれん償却の配分は考慮していない概算
用語メモ:買収した会社を連結し始めた年の翌年は、「前年は入っていなかった月」の分だけ数字が膨らみます。これを「買収の上乗せ」と呼ぶことがあります。上乗せを除いた伸びを見ないと、本業がどれだけ伸びたかを読み違えます。
増収率は上乗せを除いても+18.6%あり、試験機事業の伸び(+24.2%)が支えています。一方、営業利益の「1百万円→132百万円」は、上乗せを除くと「1百万円→約14百万円」です。前年同期より良いことは変わりませんが、大幅増益の見出しの大半は、連結する月が変わったことで説明できます。
このことは来期にも効きます。来期は前年同期にも1〜3月が入っているので、デジタル事業の上乗せはなくなります。来期の上半期は、今年の132百万円が比較の起点になります。
3-4. 試験機事業:売上は伸び、6〜8月の利益率は下がった
主力の試験機事業を3か月ごとに分けます。
| 試験機事業 | 3〜5月 前年 | 3〜5月 今年 | 6〜8月 前年 | 6〜8月 今年 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 695.2 | 884.2 | 823.6 | 1,001.4 |
| セグメント利益 | 124.6 | 174.4 | 151.7 | 160.6 |
| 利益率 | 17.9% | 19.7% | 18.4% | 16.0% |
※単位は百万円。6〜8月は上期から第1四半期を筆者が差し引き
6〜8月の売上は+21.6%伸びたのに、利益は+5.8%しか伸びず、利益率は18.4%から16.0%に下がりました。売上の内訳では、試験機製品が+37.6%(上期1,454百万円)、試験機修理が△8.1%(上期388百万円)です。利益率の低下の理由を会社は説明していません。製品と修理で利益率が違う可能性はありますが、内訳別の利益は開示されていないので、筆者には確かめられません。
4. 深掘り②:下期に何を求めているか
前章で、今年の上半期の大幅増益の大半は「1〜3月の上乗せ」だと分かりました。では、据え置かれた通期予想は、下期にどれだけの伸びを求めているのでしょうか。ここでは「1〜3月の上乗せ」が入らない下期どうしで比べられる点が重要です。下期(連結上の9〜2月)に入るASTOM社の月は、前年も今年も7〜12月で同じです。
4-1. 3か月ごとに引き算すると、6〜8月は赤字
まず、10四半期分を引き算で並べます。
| 期 | 3〜5月 | 6〜8月 | 9〜11月 | 12〜2月 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年2月期 売上高 | 801.0 | 698.0 | 638.5 | 1,346.4 |
| 2025年2月期 営業利益 | 14.0 | △54.0 | △65.9 | 131.1 |
| 2026年2月期 売上高 | 833.5 | 1,008.6 | 1,052.6 | 1,578.7 |
| 2026年2月期 営業利益 | 26.6 | △25.4 | 8.4 | 143.3 |
| 2026年2月期 粗利率 | 38.1% | 32.9% | 36.6% | 32.4% |
| 2027年2月期 売上高 | 1,227.1 | 1,225.5 | ― | ― |
| 2027年2月期 営業利益 | 141.2 | △8.8 | ― | ― |
| 2027年2月期 粗利率 | 42.1% | 31.1% | ― | ― |
※単位は百万円。各期の短信の累計値から筆者が差し引き(2025年2月期の3〜5月と上期は百万円単位の値を使用)。4四半期の合計は通期の開示値と一致。2026年2月期の6〜8月からASTOM社を連結(4〜6月の3か月分)
用語メモ:東京衡機の短信は「3月からの累計」で開示されます。6〜8月だけの数字は、上半期の累計から第1四半期を引き算しないと出てきません。
この表のポイントは3つです。
- 6〜8月の営業損益は、3年続けて赤字(△54.0→△25.4→△8.8)。赤字の幅は縮まっていますが、季節の谷と言ってよい形です
- 12〜2月は2年続けて最大の四半期(131.1、143.3)。2年分の確認なので「2年続けて」とまでしか言えません
- 今期の3〜5月の141.2百万円は、ASTOM社の1〜3月が初めて入った四半期です。前年までの3〜5月(14.0、26.6)とは中身が違います
4-2. 「残り期間の含み」:下期に求められている数字
通期予想から上半期の実績を引くと、予想が下期に置いている数字が出ます。
| 項目 | 通期予想 | 上半期実績 | 予想が置く下期 | 前年下期 | 必要な前年比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,392 | 2,452.6 | 2,939.4 | 2,631.4 | +11.7% |
| 営業利益 | 336 | 132.3 | 203.7 | 151.7 | +34.3% |
| 営業利益率 | 6.2% | 5.4% | 6.9% | 5.8% | +1.2pt |
| 経常利益 | 352 | 149.5 | 202.5 | 171.2 | +18.3% |
| 純利益 | 235 | 76.3 | 158.7 | 155.8 | +1.9% |
※単位は百万円。筆者の差し引き
下期の営業利益は前年下期比+34.3%、営業利益率は6.9%(前年下期5.8%、前々年下期3.3%)が置かれています。上半期の営業利益率5.4%も上回る水準です。
4-3. 上期の未達は、そのまま下期に移っている
期初(4月)の予想は、上期と通期の両方が出ていました。期初の下期計画と、据え置き後の下期を並べます。
| 項目 | 期初の下期計画 | 据え置き後の下期 | 差 | 上期の未達額 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,551 | 2,939.4 | +388.4 | △388.4 |
| 営業利益 | 129 | 203.7 | +74.7 | △74.7 |
※単位は百万円。期初の下期計画=通期予想−期初の上期予想
上期に届かなかった金額が、ちょうどそのまま下期に積み増されています。会社の説明(「上期に売上計上が遅れた案件について、下期の納入・検収の進捗を見込んで」)は、この形と整合します。言い換えると、期初の下期計画(それ自体が前年下期比で売上△3.1%、営業利益△15.0%の置き方でした)に、上期にずれた分を全部上乗せした形です。
4-4. 前年も同じ形だった
前年の同じ時点(上期決算の時点)で、予想が置いていた下期と、実際の下期を並べます。
| 期 | 予想が置いた下期の売上 | 実際の下期の売上 | 達成率 | 予想が置いた下期の営業利益 | 実際の下期の営業利益 | 達成率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 2,927.9 | 2,631.4 | 89.9% | 175.8 | 151.7 | 86.3% |
| 2027年2月期 | 2,939.4 | ― | ― | 203.7 | ― | ― |
※単位は百万円。2026年2月期は9月17日修正後の通期予想(4,770・177)から上期実績を差し引き
前年に予想が下期に置いた売上は2,927.9百万円、今年は2,939.4百万円で、ほぼ同じ金額です。前年はそこに対して売上で89.9%、営業利益で86.3%の着地でした。今年の下期の営業利益は、前年より28百万円多く置かれています。
この表から言えることは、「前年と同じように下期に大きな数字を置いている」ことと、「前年はその数字に届かなかった」ことの2つです。今年も届かないとは書けません。前年の上期は、ASTOM社の連結初年度の季節要因(会社は差異開示で、上期予想がASTOM社の連結影響を織り込んでいなかったと説明)という特殊事情があったからです。
用語メモ:業績予想の修正の適時開示は、売上10%・利益30%の基準に届かなければ出ません。予想を据え置いていることは、予想どおりに進んでいることを意味しません。
4-5. 下期の営業利益203.7百万円を、セグメントに割ってみる
会社はセグメント別の通期予想を出していません。ただし第1四半期短信で、デジタル事業について「当期から通常の12か月決算となり、売上高850百万円、営業利益47百万円と増収・増益の計画」と書いています。この数字を上期実績と並べると、次のようになります。
| デジタル事業 | 通期計画 | 上半期実績 | 計画が置く下期 | 前年の同じ月(ASTOM社の7〜12月) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 850 | 402.1 | 447.9 | 363.7 |
| 営業利益 | 47 | 77.8 | △30.8 | +37.9 |
※単位は百万円。前年の同じ月は2026年2月期のデジタル事業から前年上期を筆者が差し引き
計画どおりなら、デジタル事業の下期は約△31百万円の赤字になる計算です。前年の同じ月は+38百万円の黒字でした。この「850・47」がセグメント利益ベースの計画か、ASTOM社単体の計画かは短信に書かれていません。上期にもデジタル事業の売上計上のずれがあったと会社は書いているので、この計画の扱いには幅があります。
そこで、デジタル事業の下期を3通り置き、エンジニアリング事業・その他・全社費用を前年下期並みとしたとき、試験機事業の下期にいくら要るかを逆算しました。
| デジタル事業の下期 | 試験機事業に必要な下期のセグメント利益 | 前年下期(372.9)比 |
|---|---|---|
| △30.8(第1四半期短信の計画どおり) | 493.7 | +32.4% |
| 0(収支とんとん) | 462.8 | +24.1% |
| +37.9(前年の同じ月並み) | 424.9 | +13.9% |
※単位は百万円。筆者の試算で、将来の見通しではない。エンジニアリング事業△8.4、その他+6.8、全社費用△257.6(いずれも前年下期実績)で固定
試験機事業の上半期のセグメント利益は前年同期比+21.2%でした。デジタル事業が前年並みに稼げば、試験機事業は+14%程度で予想に届く計算です。逆に、デジタル事業が会社の計画どおりの赤字なら、試験機事業には+32%が要ります。予想が「厳しいか、届く範囲か」は、デジタル事業の下期の置き方でほぼ決まる、というのがこの表の読み方です。
全社費用は上期に前年同期比+14.8%でした。下期も同じペースで増えれば、必要な数字はさらに大きくなります。
4-6. 純利益:下期に置かれた「純利益÷経常利益」
| 期間 | 経常利益 | 純利益(親会社株主帰属) | 純利益÷経常利益 |
|---|---|---|---|
| 今年の上半期 | 149.5 | 76.3 | 51.0% |
| 前年下期 | 171.2 | 155.8 | 91.0% |
| 予想が置く下期 | 202.5 | 158.7 | 78.4% |
※単位は百万円。筆者の差し引き
上半期は、税負担(34.7%)と非支配株主の取り分(ASTOM社の黒字の約3分の1)で、純利益が経常利益の半分になりました。下期の予想はこの割合が78.4%に上がる前提です。デジタル事業の下期が赤字なら非支配株主の取り分はマイナスに働き(親会社の取り分が増える方向)、これと整合する読み方はできます。
もう1つ、下期には「短期売買利益受贈益」20,008千円の特別利益が計上されます(第7章)。会社は10月9日の開示で通期業績への影響を「現在精査中」とし、10月15日には通期予想を据え置きました。この2千万円が予想に織り込まれているかどうかは開示されていません。
- 織り込まれていない読み方:純利益予想に約2千万円(税引前)の上振れ余地が残っている
- 織り込まれている読み方:他の未達を埋める分としてすでに予想の内側にある
どちらかは開示から判断できません。第3四半期決算(2027年1月予定)で特別利益の計上と予想の扱いが分かります。
5. その他のセグメントとイベント
5-1. エンジニアリング事業:上期は営業赤字
ゆるみ止めナット・ばねの事業は、上期の売上183百万円(前年同期比△18.6%)、営業損失8百万円(前年同期は20百万円の利益)でした。会社は「主要顧客の設備投資動向の影響」と説明しています。3か月ごとに見ると、3〜5月が△9.5百万円、6〜8月が+0.7百万円で、赤字は第1四半期に出ています。
この事業では、元取締役(子会社の元社長)が外注先を介した水増し請求とキックバックを行っていたことが2024年に判明しています(第7章の時系列)。前期の個別決算では、同子会社の株式について関係会社株式評価損139百万円を計上しました(連結では消去されるため影響なし)。
5-2. デジタル事業:フィジカルAIの新規テーマ
2026年8月25日、当社はASTOM社と連携したフィジカルAI関連の新規事業テーマ(生産工場ラインのデジタルツイン化、簡易高速構造解析、コンサルティング)の技術検証を開始すると開示しました。開示によれば、2026年度に技術検証、2027年度にPoC(概念実証)と初期顧客の獲得、2028年度に事業化という計画です。業績への影響額は書かれていません。
TDnetでの開示は8月25日10時00分ですが、会社IRサイトのIRニュースには8月21日付で同じ内容が掲載されています。掲載日がずれている理由は分かりません。
6. 筆頭株主の持株が半分になっていた
決算そのものと同じくらい、株主構成の変化が大きい半年でした。この章は、提出書類に書かれた事実だけを並べます。
6-1. 大株主の変化
| 時点 | Dream Bridge㈱の所有株式数 | 議決権比率(自己株式を除く発行済に対する割合) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月28日 | 2,140,100株 | 29.90% | 2026年2月期有報 |
| 2026年8月31日 | 1,155,700株 | 16.11% | 半期報告書(10月15日提出) |
8月31日時点の2位以下は、山下秀子氏3.27%、モルガン・スタンレーMUFG証券㈱2.91%、張正達氏1.97%と続き、上位10名の合計は30.67%です。
Dream Bridge㈱は、当社が「その他の関係会社」として開示してきた会社です。2026年4月14日の「支配株主等に関する事項」によれば、同社の事業は投資事業で、当社株式を「純投資目的」で保有し、同社の代表取締役である小塚英一郎氏が当社の代表取締役社長を兼任しています。2025年12月26日の「非上場の親会社等の決算情報に関するお知らせ」によれば、同社(2025年8月期)の株主は井上貴博氏1名(100%)です。小塚氏個人の当社株式の所有株式数は、有報の役員の状況で0株と記載されています。
議決権比率は20%を下回りましたが、当社の適時開示一覧(10月15日まで)と会社IRサイトのIRニュースに、「その他の関係会社の異動」に関する開示は見当たりません。20%を下回ったことで「その他の関係会社」に当たらなくなるかどうかは、議決権の比率だけでなく実質的な影響力も含めて判定されるため、筆者には判断できません。
用語メモ:大量保有報告書の「株券等保有割合」は、自己株式を含む発行済株式総数が分母です。大株主表の「議決権比率」は、自己株式を除いた株数が分母です。東京衡機は自己株式が約3千株と少ないため、2つの比率の差はわずかです(9月8日の報告で16.14%、8月末の大株主表で16.11%)。
6-2. 変更報告書の時系列
同社が提出した変更報告書を、報告義務発生日の順に並べます。
| 報告義務発生日 | 書類 | 提出日 | 保有株数 | 株券等保有割合 | 提出事由・主な記載 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年4月21日 | 変更報告書No.3 | 10月1日 | 2,140,100株 | 29.85% | 1,140,100株に影山グループホールディングス㈱を質権者とする質権を設定 |
| 4月27日 | No.4 | 10月1日 | 1,960,100株 | 27.34% | 保有割合が1%以上減少 |
| 4月30日 | No.5 | 10月1日 | 1,870,100株 | 26.08% | 同上 |
| 5月7日 | No.6 | 10月1日 | 1,797,900株 | 25.08% | 同上 |
| 5月8日 | No.7 | 10月1日 | 1,720,800株 | 24.00% | 同上 |
| 5月13日 | No.8 | 10月1日 | 1,598,300株 | 22.29% | 同上 |
| 5月15日 | No.9 | 10月1日 | 1,518,600株 | 21.18% | 同上 |
| 5月26日 | No.10 | 10月1日 | 1,390,100株 | 19.39% | 同上(20%を下回る) |
| 5月29日 | No.13 | 10月2日 | 1,390,100株 | 19.39% | 質権を5月29日付で解除 |
| 6月3日 | No.11 | 10月1日 | 1,297,200株 | 18.09% | 保有割合が1%以上減少 |
| 6月5日 | No.12 | 10月1日 | 1,179,200株 | 16.45% | 同上 |
| 9月8日 | 変更報告書NO.1(EDINET上の書類種別は大量保有報告書) | 9月15日 | 1,155,700株 | 16.14% | ― |
※EDINETの提出書類(提出者:Dream Bridge株式会社)。保有割合の分母は7,169,791株(2026年5月29日現在)、9月8日分のみ7,159,791株
この表のポイントは3つです。
- 2,140,100株から1,155,700株へ、984,400株の減少(自己株式を除く発行済株式の13.7%に当たる株数)。60日間の売買の表を合計すると、処分1,207,900株・取得223,500株で、差し引きは保有株数の減少と一致します
- 4月27日から6月5日までの報告(No.3〜No.13)は、報告義務発生日から118〜163日後の10月1日・2日にまとめて提出されています。変更報告書の提出期限は、報告義務発生日から5営業日以内です。9月15日に提出された9月8日分(NO.1)の方が、それより前の日付の報告より先に出ています
- 保有目的はすべて「純投資」、重要提案行為等は「該当事項なし」です
6-3. 売買の中身(60日間の取得・処分の状況から)
| 月 | 処分 | 処分の平均単価 | 取得 | 取得の平均単価 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年4月 | 270,000株 | 653.55円 | 0株 | ― |
| 2026年5月 | 703,500株 | 566.12円 | 223,500株 | 575.74円 |
| 2026年6月(23日まで) | 234,400株 | 426.22円 | 0株 | ― |
※変更報告書No.12とNO.1の60日表から集計(重複行は1回だけ計上)。平均は株数による加重平均で筆者が計算
5月は、売りながら買ってもいました。報告書の「保有株券等の取得資金」欄には、信用取引による買い付け(5月26日時点で80,000株分)の記載があり、SBI証券に当社株式を信用取引の保証金代わりに差し入れている(4月27日時点で820,000株、6月5日時点で39,100株)と書かれています。取得資金の借入金485,362千円の借入先は「株式会社S&Iリゾートトラスト」と記載されています。
同社が売却した期間の株価は、4月23日の終値778円(高値847円)から、6月5日の426円まで下がっています。売却が株価にどれだけ影響したかは、日足のデータからは分かりません。売却の理由について、同社も当社も開示していません。
6-4. 短期売買利益の返還:2千万円が当社に入った
金融商品取引法には、上場会社の役員や主要株主(議決権10%以上)が、その会社の株式を6か月以内に買って売る(または売って買う)と、その利益を会社に返さなければならない、という規定があります(第164条)。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年5月 | Dream Bridge㈱の当社株式の売買(「令和8年5月分」) |
| 9月24日 | 関東財務局が、主要株主から提出された売買報告書に基づき「利益を得ていると判断される売買」があるとして、利益関係書類(写)を当社に送付 |
| 9月29日 | 当社が受領を開示。利益額20,008,920円 |
| 10月8日 | Dream Bridge㈱から当社へ利益を返還 |
| 10月9日 | 当社が特別利益(短期売買利益受贈益)の計上を開示。通期業績への影響は「現在精査中」 |
| 10月15日 | 短信の重要な後発事象に記載。通期予想は据え置き |
返還額20,008,920円は、自己株式を除く株数で割ると1株あたり約2.79円、純利益予想235百万円の8.5%に当たります。この特別利益にかかる税金の扱いは開示されていません。
用語メモ:短期売買利益の返還は、主要株主に「会社の内部情報を使った売買」があったと認定されたものではありません。6か月以内の売買で利益が出れば、理由を問わず機械的に返還の対象になる仕組みです。
6-5. Dream Bridge㈱の財務(2025年8月期)
当社は同社の決算を毎年開示してきました。直近(2025年8月31日)の数字は次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 資産合計 | 1,578百万円 |
| うち投資有価証券 | 509百万円 |
| うち長期貸付金 | 727百万円 |
| 長期借入金 | 1,417百万円 |
| 純資産 | 40百万円 |
| 受取利息 | 31百万円 |
| 支払利息 | 42百万円 |
| 当期純利益 | 1百万円 |
※2025年12月26日「非上場の親会社等(その他の関係会社)の決算情報に関するお知らせ」。百万円未満切り捨て
当社は無配なので、同社が当社から受け取る配当はありません。同社の財務と今回の売却の関係について、同社も当社も説明していないので、本記事では結びつけません(筆者の推測を置かない)。2026年8月期の同社決算は、例年どおりなら12月下旬に開示されます。
7. 資本政策・株主還元とガバナンス
7-1. 配当:無配、2029年2月期の復配が目標
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 配当方針(有報) | 自己資本比率、収益見通し等を慎重に勘案して業績に応じた配当を行うことが基本方針。年1回の期末配当が基本で、決定機関は株主総会 |
| 実績 | 2025年2月期・2026年2月期とも無配。2027年2月期予想も無配 |
| 中計の還元方針 | 「2029年2月期の復配実現を目指して」 |
| 株主優待 | 会社IRサイトに案内なし(1-2参照) |
配当がないので、権利付き最終日に意味があるのは議決権だけです。次の期末(2027年2月28日・日曜日)の権利付き最終日は、直前の営業日2月26日(金)から2営業日さかのぼった**2027年2月24日(水)**です(2月23日は天皇誕生日で休場)。
7-2. 株数と潜在株式
| 項目 | 2026年8月31日 |
|---|---|
| 発行済株式総数 | 7,177,791株 |
| 自己株式 | 3,070株 |
| 自己株式を除く株数 | 7,174,721株 |
| 新株予約権(純資産の部) | 84百万円 |
発行済株式は期首から18,000株増えました。新株予約権(ストック・オプション)の行使によるものです。2026年2月期末の注記では、希薄化効果のある潜在株式が386,122株、希薄化効果がない(行使価額が当時の株価を上回るなどの理由)として算定から除いたものが2023年第2回の321,000株と2025年第5回の59,000株でした。第5回(子会社の従業員18名、行使価額1株263円)は2025年9月に発行内容が確定しています。各回の行使条件の詳細は、本記事では有報で確認していません。
会社予想EPS32.94円は、純利益予想235百万円を約713万株で割った値で、前期の期中平均株式数(7,133,247株)とほぼ同じ株数が分母になっています。8月末の株数で割ると32.75円です。
7-3. 上場維持基準:改善期間を経て適合
| 時点 | 株主数 | 流通株式数 | 流通株式時価総額 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年2月末 | 3,319人 | 46,762単位 | 8億4,825万円 | 不適合(基準10億円) |
| 2026年2月末 | 5,270人 | 48,475単位 | 15億9,631万円 | 適合 |
※2026年3月2日・3月26日の開示。流通株式時価総額は基準日以前3か月間の終値の平均×流通株式数
2025年2月末の不適合で改善期間に入り、2026年3月1日に監理銘柄(確認中)に指定、2月末時点の適合が確認されて3月26日に指定が解除されました。
次の判定基準日は2027年2月末です。Dream Bridge㈱が売却した984,400株は、議決権10%以上の主要株主の持分(流通株式から除かれる)から外れたので、他の条件が変わらなければ流通株式は増えます。仮に2026年2月末の流通株式数に984,400株を足すと約583万株で、10億円に必要な株価は約172円です(筆者の概算。実際の流通株式数は株主の構成で変わり、東証の判定とは異なりうる)。
7-4. ガバナンス関連の開示の時系列
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2023年3月30日 | 東証が当社株式を特別注意銘柄(当時の名称は特設注意市場銘柄)に指定 |
| 2024年3月29日 | 社外取締役で構成する調査委員会が報告。元取締役が外注先を介して水増し請求を行い、当社に合計3億4,426万円の損害を与えたとの内容 |
| 2024年5月31日 | 過年度の決算訂正(訂正報告書を提出) |
| 2024年11月13日 | 元取締役が会社法違反(特別背任)の容疑で逮捕 |
| 2024年11月23日 | 特別注意銘柄の指定解除 |
| 2025年4月17日 | 2025年2月期の監査報告書で無限定適正意見 |
| 2025年12月5日 | 元取締役らに対する損害賠償請求訴訟を提起(請求総額3億4,426万円) |
| 2026年3月1日〜26日 | 監理銘柄(確認中)に指定、解除(上場維持基準の件) |
| 2026年4月22日 | 内部通報事案(人事対応および再発防止策の適切性に関するもの)について、外部の弁護士を含む調査委員会の設置を決議 |
| 2026年6月15日 | 調査委員会の委員4名(うち2名は当社の社外取締役監査等委員)を選任 |
※各日の適時開示、JPXの公表、2026年2月期有報の記載
4月の調査委員会について、会社は「調査報告書を受領次第速やかに開示」「業績に対する影響については…影響が生じる場合には速やかに開示」としています。10月21日時点で報告書は開示されていません。業績への影響額を推測できる材料は開示されておらず、本記事では推測しません。訴訟関連費用は特別損失として毎期出ており、2025年2月期32百万円、2026年2月期31百万円、今期上期5百万円です。
8. 株価の見方
8-1. 株価の基準点(2026年10月21日終値373円)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 終値(2026年10月21日) | 373円 |
| 時価総額(自己株式を除く株数) | 約26.8億円 |
| 予想PER(会社予想EPS32.94円) | 約11.3倍 |
| 予想PER(8月末の株数で計算したEPS32.75円) | 約11.4倍 |
| 1株当たり純資産(8月末の自己資本÷株数) | 約249.6円 |
| PBR | 約1.49倍 |
| 配当利回り | 0% |
| 年初来高値・安値 | 高値983円(3月10日、取引時間中)、安値284円(1月6日、取引時間中) |
※株価はYahoo!ファイナンスの時系列(報道ベース)。PER・PBR・時価総額は筆者の計算
開示書類から株価の水準を確かめられる点を並べておきます。
| 経路 | 出所 | 値 |
|---|---|---|
| 流通株式時価総額の基準となった3か月平均 | 2026年3月2日の開示 | 2025年2月末以前3か月:181.39円、2026年2月末以前3か月:329.3円(15億9,631万円÷4,847,500株でも再現) |
| 短信の「時価ベースの自己資本比率」から逆算した期末株価 | 2026年2月期短信 | 90.2%×総資産5,037百万円÷自己株式を除く株数=約635円(2026年2月27日の終値635円と一致) |
| 大株主の市場内処分の単価 | 変更報告書No.4 | 4月24日:730円(同日の終値730円と一致) |
2026年の株価は、1月の300円前後から3月10日に983円(取引時間中)まで上がり、そこから大きく下げています。2月19日以降の急騰の時期に、それに対応する会社の適時開示は見当たりません。
8-2. 決算への反応
決算の発表は10月15日(木)15時30分で、取引終了と同時刻です。同日の終値465円は発表前の値です。最初に反応が出たのは翌10月16日(金)で、始値406円(前日比△12.7%)、終値419円(同△9.9%)、出来高325,300株でした。その後、10月20日(火)380円、10月21日(水)373円と下げ、発表前の終値から△19.8%です。決算以外の材料の有無は、日足からは分かりません。
8-3. 強気の読み方
- 契約負債(前受け)が198百万円、仕掛品が90百万円増えた。上期にずれた案件が下期に検収されれば、会社の説明どおり下期に売上が立つ
- 12〜2月は2年続けて最大の四半期。下期偏重の予想は、少なくとも直近2年の季節の形と同じ向き
- 試験機事業は上期のセグメント利益が+21.2%。デジタル事業が前年の同じ月並みに稼げば、試験機事業は+14%程度で予想に届く計算(4-5の表)
- 短期売買利益2千万円が予想の外なら、純利益に上振れ余地
- 粗利率は中計を上回って推移(上期36.6%)
- 有利子負債を返しながら現預金を維持し、ネットキャッシュはプラス
- Dream Bridge㈱の売却で流通株式は増えたとみられ、上場維持基準(流通株式時価総額)との距離は広がった
- 予想PERは約11倍。予想どおりに着地した場合の水準
8-4. 弱気の読み方
- **大幅増益の大半は「1〜3月の上乗せ」**で、これを除くと上期の営業利益は約14百万円(筆者の試算)。来期は上乗せがなくなる
- 2年続けて「上期予想に届かず、通期据え置き」。前年は下期に置いた営業利益の86.3%で着地した
- 下期に求められる営業利益は前年下期比+34.3%、営業利益率6.9%。会社が示したデジタル事業の計画どおりなら下期は赤字で、試験機事業に+32%が要る
- 試験機事業の6〜8月の利益率は16.0%(前年18.4%)に下がった。前期末の受注残高は△10.5%、受注高は△14.1%
- 6〜8月の営業赤字は3年続いている。エンジニアリング事業も上期は赤字、全社費用は+14.8%
- 筆頭株主が4〜6月に保有株の46%を売却し、変更報告書は数か月後にまとめて提出された。株主構成の変化について、当社は開示を出していない
- 内部通報事案の調査委員会の報告書が未開示で、業績への影響も不明
- 無配で、復配の目標は2029年2月期
9. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 見るポイント |
|---|---|---|
| 随時 | 調査委員会の調査報告書 | 事実認定と再発防止策、業績への影響の有無 |
| 随時 | Dream Bridge㈱の変更報告書(1%以上の増減で提出義務) | 保有株数の変化、担保契約の記載 |
| 随時 | 「その他の関係会社の異動」等の開示 | 開示が出るかどうか |
| 2026年12月下旬(例年) | Dream Bridge㈱の2026年8月期決算の開示 | 開示が続くか、借入・投資有価証券の変化 |
| 2027年1月中旬(前年は1月14日) | 第3四半期決算 | 9〜11月の営業利益(前年8.4百万円)、短期売買利益の計上と予想の扱い、試験機事業の利益率 |
| 2027年2月24日(水) | 期末の権利付き最終日 | 無配のため議決権のみ |
| 2027年2月28日(日) | 決算期末・上場維持基準の判定基準日 | 流通株式時価総額 |
| 2027年4月中旬(前年は4月14日) | 通期決算・来期予想 | 下期の達成率、来期の上半期予想(1〜3月の上乗せがない比較) |
| 2027年5月下旬 | 有価証券報告書 | 期末の受注残高、大株主の状況、ストック・オプションの行使条件 |
見るべきKPI
- 試験機事業の3か月ごとの売上とセグメント利益率(6〜8月は16.0%)
- 契約負債と仕掛品の残高(下期に売上へ変わっていくか)
- デジタル事業の下期の損益(計画どおり赤字か、前年の同じ月並みの黒字か)
- 全社費用(上期は前年同期比+14.8%)
- 期末の試験機の受注残高(前期末3,199百万円)
10. 3行まとめ
- 上半期の「売上+33%、営業利益1→132百万円」の大半は、買収したASTOM社の1〜3月が今年から連結に入った上乗せで、それを除くと営業利益は約14百万円。6〜8月の営業赤字は3年続いている
- 通期予想は据え置きで、下期に前年比+34%の営業利益を求めている。上期の未達額をそのまま下期に積んだ形で、前年もほぼ同じ形で下期は86%の着地だった。届くかどうかはデジタル事業の下期の置き方で大きく変わる
- 筆頭株主のDream Bridge㈱は4〜6月に持株を約46%減らし(議決権比率29.90%→16.11%)、5月の売買について短期売買利益2千万円が当社に返還された。調査委員会の報告書は未開示
免責
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、東京衡機の決算短信(2026年10月15日・7月15日・4月14日・2026年1月14日・2025年10月10日発表)、適時開示(業績予想と実績値の差異、短期売買利益、調査委員会、支配株主等に関する事項、非上場の親会社等の決算情報、上場維持基準、中期経営計画、損害賠償請求訴訟、フィジカルAI、ストック・オプション)、2026年2月期有価証券報告書、2027年2月期半期報告書、EDINETのDream Bridge株式会社の変更報告書、JPXの公表です。株価はYahoo!ファイナンスの時系列(報道ベース)です。PER・PBR・時価総額、四半期の差し引き、「1〜3月の上乗せ」を除いた数字、下期のセグメント別の逆算はすべて筆者の計算・試算です。
当該四半期について決算補足説明資料・決算説明会はなく、本文の会社説明は短信と差異開示の文章に基づきます。会社の追加説明・質疑応答は一切反映していません。2025年2月期第1四半期の数値は、筆者が短信原文を開かず、データベース(IRBANK、EDINET・TDnet由来)の値を使いました。有報の「株主に対する特典」欄と、ストック・オプション各回の行使条件は確認していません。デジタル事業の通期計画(売上850百万円・営業利益47百万円)がセグメント利益ベースかASTOM社単体ベースかは開示されておらず、4-5の試算はその計画を当てはめた機械的な計算です。「ASTOM社の1〜3月を除いた」数字は、セグメント間取引の消去やのれん償却の配分を考慮していない筆者の概算です。試験機事業の利益率低下の理由、Dream Bridge㈱の売却の理由とその財務との関係、売却が株価に与えた影響について、筆者は推測していません。Dream Bridge㈱の変更報告書は2026年10月21日時点の提出一覧(最終提出日10月2日)で確認しており、公開までに新たな報告書が出ている可能性があります。変更報告書の60日表は、提出書類のPDFを読み取って筆者が集計したもので、書類によって行のまとめ方が異なります。調査委員会の事案による業績への影響額は推測していません。上場維持基準の流通株式数の扱いの細部は、東証の規則原文では確認していません。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。