株式投資

【2026年9月発表・第3四半期決算】KOMPEITO(618A)の通期予想は、なぜ純利益が経常利益より大きいのか──77億円を吸収した上場で、会社に入った資金は0.74億円

本記事は2026年9月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。


この記事でわかること

  • 2026年8月期の通期予想が「経常利益877百万円・純利益1,126百万円」と、純利益のほうが大きい理由。そのカラクリを税金の側から分解します
  • 「PER14倍台の黒字転換IPO」という見え方が、どの数字に支えられているのか。税負担が正常化したときに同じ株価がPER何倍に見えるのか
  • 吸収金額77億円のIPOで、会社の手元に入った資金がなぜ0.74億円しかないのか。上場が「資金調達の場」ではなく「既存株主の換金の場」だった構造
  • サブスク型サービスの決算を読むための4つの数字(ARR・本契約社数・ARPU・解約率)と、そこから逆算できる顧客獲得コスト
  • 上場初日(2026年9月11日)の値動きと、ロックアップ・新株予約権が今後どのスケジュールで需給に効いてくるか
  • 4日後に期限を迎える「行使価額1円」の新株予約権という、開示の隅にある小さな数字

1. 前提知識:社員食堂を、冷蔵庫1台ぶんまで小さくした会社

KOMPEITO(コンペイトウ/618A)は、2026年9月11日に東証グロース市場へ上場したばかりの会社です。主力サービスは「OFFICE DE YASAI(オフィスでやさい)」。オフィスに専用の冷蔵庫・冷凍庫を置き、そこにサラダやカットフルーツ、冷凍の弁当・惣菜を週次で補充していく「設置型健康社食」です。従業員は原則1品100円から、専用アプリのキャッシュレス決済で購入します。

この会社を一つの軸で説明するなら、**「社員食堂を、冷蔵庫1台ぶんまで小さくして中小企業に配って回る会社」**が近いと思います。

社員食堂というのは、本来かなり重い装置です。厨房を作り、調理人を雇い、席を用意し、毎日一定数の食数を出さないと採算が合わない。だから昔から、社員食堂は「一定規模以上の会社のもの」でした。KOMPEITOがやったのは、この仕組みを分解して、厨房と調理人を外に出し、席を各自のデスクに置き換え、残った「冷蔵庫1台」だけを顧客のオフィスに設置することです。

実際、2026年8月期第3四半期末時点で、契約先の約81%は従業員100名以下の企業です。これは偶然ではなく、冷蔵庫1台まで小さくしたからこそ届いた層、という読み方ができます。

この軸は、あとで会社の弱点を説明するときにも、資本政策を説明するときにも使います。ひとまず、事業の骨格を表にしておきます。

項目内容
会社名(コード)株式会社KOMPEITO(618A・東証グロース)
上場日2026年9月11日(金)
決算期8月期
セグメント福利厚生サービス事業の単一セグメント
主力サービス設置型健康社食「OFFICE DE YASAI(オフィスでやさい)」。冷蔵プラン(サラダ・フルーツ)と冷凍プラン(弁当・惣菜)の2本立て
課金の仕組み初期導入費+月額利用料+商品代金。月額利用料と商品代金の合計で連結売上高の約9割(2025年8月期)
商品の作り手大部分を外部の食品メーカーに製造委託。PB(プライベートブランド)比率は6割以上
配送冷蔵7拠点(北海道・千葉・愛知・和歌山・広島・福岡・沖縄)+冷凍1拠点(東京)の計8拠点。自社グループ社員が補充まで行う「デリバリー方式」が全体の約2割、残りは宅配便
顧客獲得地方銀行81行・事業会社189社を中心とした計270の営業提携先(2026年5月末)からの紹介(PSチャネル)と、Web広告等(OSチャネル)
子会社ODYデリバリーズ(乳製品宅配)、優食(高齢者宅配食・介護施設向け配食)、KOMPEITO USA(米国)
株主優待上場日までの開示に記載が見当たらない(後述)
配当無配(設立以来、配当実績なし)

直近3期の業績推移

まず「どういうペースで伸びてきた会社か」を先に渡しておきます。2024年8月期から連結決算です。

決算期売上高営業利益経常利益純利益営業利益率純資産自己資本比率
2024年8月期(連結)3,101百万円△454百万円△461百万円△467百万円△14.6%965百万円32.3%
2025年8月期(連結)5,737百万円△225百万円△246百万円△161百万円△3.9%803百万円27.6%
2026年8月期(会社予想)9,871百万円880百万円877百万円1,126百万円8.9%

この表のポイントは2つです。

1つ目は、売上が2年で3.2倍になっていること。2024年8月期3,101百万円 → 2025年8月期5,737百万円(+85.0%)→ 2026年8月期予想9,871百万円(+72.1%)。会社は「OFFICE DE YASAI」の月次サブスク売上が69か月連続で増収していると説明しています。

2つ目は、赤字から黒字への転換が、この1年で起きたこと。2024年8月期は営業損失454百万円、2025年8月期も営業損失225百万円でしたが、2026年8月期第3四半期累計(2025年9月〜2026年5月)で営業利益671百万円を計上し、黒字転換しました。つまり、この会社の「黒字の実績」はまだ9か月分しかありません。

なお、2023年8月期以前は単体決算です。単体の5期推移を見ると、2021年8月期の売上高は580百万円しかなく、純資産は△186百万円の債務超過でした。5年で売上が17倍になった会社、という見方もできます。

会社が掲げる数値目標

この会社は現時点で「中期経営計画」という形の数値目標を公表していません。ただし、上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部、2026年8月12日提出)には、重要な経営指標として売上高・売上高成長率・限界利益率を挙げたうえで、2026年8月期について**「売上高9,645百万円、前期比+68.1%、限界利益率59.4%」**という目標が記載されています。

一方、上場日(2026年9月11日)に公表された通期業績予想は売上高9,871百万円(前期比+72.1%)です。約1か月の間に、目標として書かれていた数字を226百万円(+2.3%)上回る予想が出た形になります。

用語メモ:限界利益率 売上高から、商品原価や配送費といった「売上に比例して増える費用(変動費)」を引いた残りが限界利益です。売上が1円増えたときに、いくら手元に残るかを示します。KOMPEITOは、この指標をKOMPEITO単体の実績で管理していると説明しています。なお、限界利益率は損益計算書に出てくる科目ではないため、外部からは検算できません。


2. 決算ハイライト:黒字転換の中身

2026年9月11日、上場と同時に「東京証券取引所グロース市場への上場に伴う当社決算情報等のお知らせ」と「2026年8月期 第3四半期決算短信」の2本が開示されました。上場日が決算期末(8月31日)の直後だったため、第3四半期の実績と通期予想が同じ日に出るという、やや珍しい形になっています。

損益

項目2025年8月期(実績)2026年8月期第3四半期累計(実績)2026年8月期(会社予想)
売上高5,737百万円7,047百万円9,871百万円
営業利益△225百万円671百万円880百万円
経常利益△246百万円666百万円877百万円
純利益△161百万円555百万円1,126百万円
1株当たり純利益△16円35銭56円35銭114円40銭
1株当たり配当金0円0円0円

この表で最初に目に入るのは、通期予想の純利益1,126百万円が、経常利益877百万円を249百万円も上回っていることだと思います。特別利益が出るわけではありません(会社は「特別損益は軽微」としています)。つまり、税金がマイナス(戻り)になる予想です。ここが今回の決算で一番わかりにくく、一番大事な論点なので、セクション3でまるごと扱います。

費用の構造

通期予想の内訳も開示されています。

項目2025年8月期(実績)2026年8月期(会社予想)
売上高5,737百万円9,871百万円
売上原価1,950百万円3,287百万円
売上総利益3,787百万円(66.0%)6,584百万円(66.7%)
販売費及び一般管理費4,013百万円(対売上69.9%)5,703百万円(対売上57.8%)
営業利益△225百万円880百万円

検算しておきます。9,871 − 3,287 = 6,584(売上総利益)。6,584 − 5,703 = 881。会社予想の営業利益880百万円とは1百万円ずれますが、これは百万円未満切捨ての丸め誤差です。

黒字転換の主因は、会社自身が説明しているとおり販管費率の低下です。粗利率は66.0%→66.7%とほぼ横ばいで、動いたのは販管費率のほう(69.9%→57.8%、12.1ポイント低下)。その中でも広告宣伝費・営業獲得費の寄与が大きく、金額は1,166百万円→1,327百万円と増えているのに、対売上比率は20.3%→13.4%まで下がっています。

販管費の内訳(通期予想)金額対売上比率
広告宣伝費・営業獲得費1,327百万円13.5%
配送費(荷造運賃)1,140百万円11.6%
人件費1,167百万円11.8%
消耗品費(冷蔵庫等)339百万円3.4%
上記4項目の小計3,973百万円40.2%
その他(開示なし)1,730百万円17.5%
販管費合計5,703百万円57.8%

内訳として開示されているのは4項目だけで、残り1,730百万円(販管費全体の30%)の中身は開示されていません。「販管費の内訳が全部わかった」と思わないほうがいい、という意味で表の最終行に明示しています。

ここで冒頭の軸が一度目の仕事をします。厨房を持たない会社なので、増えるのは工場の減価償却費ではなく、広告費と紹介手数料と配送費です。 販管費の内訳を見ると、金額の大きい順に広告宣伝費・人件費・配送費が並び、設備由来の費用(消耗品費=冷蔵庫等)は339百万円しかありません。この会社の成長コストは、鉄とコンクリートではなく、広告と人と運賃の形をしています。

売上の内訳(通期予想)

区分金額構成比
オフィスでやさい(冷蔵)5,116百万円51.8%
オフィスでごはん(冷凍)3,386百万円34.3%
初期導入費238百万円2.4%
ODYデリバリーズ(乳製品宅配)640百万円6.5%
優食(高齢者宅配食・介護配食)428百万円4.3%
小計9,808百万円99.4%
差額(開示のない区分)63百万円0.6%

冷凍(オフィスでごはん)の構成比が34.3%まで上がっている点は見ておく価値があります。会社は、トライアル獲得数が計画比702社超の上振れ、1社あたりの導入アカウント数(冷蔵庫・冷凍庫の台数)が1.39台まで拡大、弁当等の高単価品の受注増でARPUが月換算7,400円程度上振れた、と説明しています。冷蔵(サラダ・フルーツ)の会社から、冷凍(弁当)の比重が増した会社へ、という変化が起きている途中です。

財政状態(2026年5月31日時点)

項目2025年8月31日2026年5月31日
総資産2,907百万円4,047百万円
現金及び預金1,529百万円1,765百万円
売掛金687百万円1,191百万円
繰延税金資産106百万円241百万円
純資産803百万円1,357百万円
自己資本比率27.6%33.5%

有利子負債は、1年内返済予定の長期借入金214百万円+1年内償還予定の社債113百万円+社債188百万円+長期借入金772百万円=1,286百万円。現預金1,765百万円を差し引くと、ネットで479百万円の現金超過です。赤字が続いていた会社ですが、財務が切迫している状態ではありません。

売掛金が687百万円→1,191百万円と大きく増えていますが、会社は「取引規模の拡大」に加えて、前期の説明として「新規顧客の支払方法を原則として口座振替へ移行したことで入金時期が後ろにずれた」と書いています。増収局面のサブスクで売掛金が増えるのは自然ですが、増加率が売上の伸びを上回るかどうかは今後も見る価値があります。

なお、第3四半期の四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていません。開示されているのは減価償却費27百万円とのれん償却額9百万円だけです。前期(2025年8月期)は営業キャッシュ・フローが△341百万円でしたので、黒字転換後に営業キャッシュ・フローがどうなったかは、通期の短信を待つしかありません。ここは今回の開示で埋まらない空白です。


3. 深掘り①:なぜ純利益が経常利益より大きいのか

決算を読み慣れていない方向けに整理すると、損益計算書は普通、上から下へ利益が減っていきます。

売上高 → 営業利益 → 経常利益 → 税引前利益 → (法人税等を引く)→ 純利益

税金を払うので、純利益は税引前利益より小さくなるのが普通です。ところがKOMPEITOの通期予想は、経常利益877百万円に対して純利益1,126百万円。249百万円ぶん増えています。

会社の説明はこうです。

  • 資本金の額が1億円以下であるため、中小企業の法人税率が適用される要件を満たす
  • 繰越欠損金を100%活用できる
  • そのため法人税等の実質負担率が一時的に低い水準となる

「負担率が低い」だけなら純利益は税引前より小さくなるはずなので、この説明だけでは249百万円の上振れは説明しきれません。順を追って分解します。

四半期に割ってみる

会社は中間(2026年2月28日まで)と第3四半期累計(2026年5月31日まで)の実績を開示しています。通期予想から差し引けば、四半期単独の姿が出ます(以下は筆者の差し引きです。通期予想が百万円単位で丸められているため、1百万円程度の誤差を含みます)。

期間売上高営業利益営業利益率税引前利益純利益税負担率
上期(2025年9月〜2026年2月)4,468百万円479百万円10.7%485百万円425百万円12.5%
3〜5月(3か月)2,580百万円192百万円7.5%188百万円130百万円30.8%
6〜8月(3か月・予想)2,823百万円209百万円7.4%204百万円571百万円△180.4%
合計(=通期予想)9,871百万円880百万円8.9%877百万円1,126百万円△28.4%

ここまで割ると、構造がはっきりします。通期純利益1,126百万円のうち571百万円(50.7%)が、最後の3か月に集中しています。 そしてその3か月の税引前利益は204百万円しかない。つまり、6〜8月に約367百万円の「税金の戻り」が計上される予想になっています。

戻りの正体は、たぶん繰延税金資産

会社は具体的に書いていないので、ここからは筆者の読みです。

税金がマイナスになる会計上の経路は、実務上ほぼ一つに絞られます。繰延税金資産の追加計上です。

用語メモ:繰延税金資産と繰越欠損金 会社が過去に出した赤字(税務上の繰越欠損金)は、将来黒字になったときに、その黒字と相殺して税金を減らすことができます。つまり過去の赤字は「将来の節税券」としての価値を持ちます。ただしこの券は、将来ほんとうに黒字が出ると見込めないと、貸借対照表に資産として載せることができません。「載せられる」と判断した時点で、資産(繰延税金資産)を計上すると同時に、損益計算書では法人税等がその分マイナスになります。会計上の利益が増えるだけで、現金が入ってくるわけではありません。

KOMPEITOの繰延税金資産は、2024年8月期末はゼロ、2025年8月期末で106百万円、2026年5月末で241百万円と、すでに段階的に積み上がっています。会社は前期の説明で「将来の課税所得の見積りに基づき、税務上の繰越欠損金等に係る回収可能性を見直した」と書いています。

そして2026年8月期は、上場が決まり、通期で営業利益880百万円という黒字が見えた期です。「将来ほんとうに黒字が出る」という見込みの確度が一段上がるタイミングとしては、これ以上ないくらい典型的です。

もう一つ、税負担率の動きも傍証になります。上期の税負担率は12.5%でしたが、3〜5月の3か月だけ見ると30.8%に跳ね上がっています。四半期決算では、通期の見積実効税率を使って税金費用を計算するため、期中に見積りを変えると、その四半期にまとめて調整が出ます。そのうえで6〜8月に大きなマイナスが来る予想になっている、という順序です。

この構造が意味すること

3つあります。

1つ目。2026年8月期の純利益1,126百万円は、そのままの水準で来期以降に続く数字ではありません。 仮に税引前利益877百万円に法定実効税率30.62%を当てると、純利益は608百万円になります。これが「税金が正常に効いた場合」の目安です。

2つ目。EPSとPERの見え方が大きく変わります。 上場初日の終値1,670円で計算すると、

純利益の前提純利益1株当たり純利益(実株数ベース)PER(終値1,670円)
会社予想(税の戻りを含む)1,126百万円113.76円14.7倍
法定実効税率30.62%を当てた場合608百万円61.47円27.2倍

同じ株価が、14.7倍にも27.2倍にも見えます。「黒字転換してPER14倍台」という第一印象は、税金の戻りに支えられた数字です。 どちらが正しいという話ではなく、両方を並べて見るべき局面だということです。

3つ目。ただし、税の軽減はしばらく続く可能性があります。 会社はⅠの部のリスク項目で「当事業年度末時点で税務上の繰越欠損金が存在しており、今後当面の期間は、法人税等の税負担が軽減されることが予想される」と明記しています。繰延税金資産の計上(会計上の一時的な利益押し上げ)と、実際に支払う税金の軽減(現金の話)は別の話で、後者は繰越欠損金が尽きるまで続きます。会社は同じ項目で「繰越欠損金が解消した場合は、通常の税率に基づく税負担が生じる」とも書いています。

なお、資本金については補足しておきます。KOMPEITOの資本金は10百万円です。2022年8月と2024年8月の2回、欠損填補を目的とした無償減資を行っており(それぞれ減資割合98.6%、98.2%)、増資で入った資金はほぼ資本剰余金に積まれています。今回の公募は50,000株で、引受価額1,472円を掛けても73百万円。仮に全額を資本金に組み入れても83百万円で、1億円を超えません。 中小企業向けの税制上の取扱いは、上場後も当面維持される計算になります。

用語メモ:資本金1億円の壁 法人税法上、資本金1億円以下の会社は「中小法人」として扱われ、繰越欠損金を所得の100%まで控除できます(大法人は50%まで)。また所得のうち年800万円以下の部分には軽減税率が適用され、法人事業税の外形標準課税の対象外にもなります。上場企業でも資本金1億円以下の会社は珍しくありません。


4. 深掘り②:サブスクの決算を読む4つの数字

KOMPEITOのような「毎月お金が入り続ける」型の事業は、損益計算書だけを見ても実力がわかりません。会社が開示しているKPIから、この業種を今後読み続けるための道具を作っておきます。

使う数字は4つです。

  1. 本契約社数(何社と契約しているか)
  2. ARPU(1社あたり年間いくら払ってくれるか)
  3. ARR(年次経常収益=契約社数×ARPU)
  4. 解約率(毎月何%が抜けるか)

用語メモ:ARR・ARPU・解約率 ARR(Annual Recurring Revenue、年次経常収益)は、サブスク契約に基づいて毎年定期的に得られる収益のことです。KOMPEITOの場合、プランごとの固定金額である月額利用料と、販売された商品個数×単価である商品代金の合計で算出しています。ARPU(Average Revenue Per User)は1社あたりの平均売上高。解約率(チャーンレート)は、直近12か月の月次解約数を直近12か月の総契約社数で割ったものです。

会社が置いている前提

上場日の開示には、通期予想の前提となる期末KPIが書かれています。

KPI2025年8月期末(実績)2026年8月期末(会社予想)増減
本契約社数4,991社7,052社+41.3%
ARPU(年換算)125万円136万円+8.8%
ARR(年間経常収益)6,256百万円9,641百万円+54.1%
平均月次定期解約率1.4%1.2%△0.2pt
年間新規獲得社数2,907社

自分で検算してみる

読者が自分で追えるように、式を書いておきます。

検算1:ARR = 本契約社数 × ARPU

7,052社 × 136万円 = 9,591百万円。会社のARR予想9,641百万円に対して50百万円のずれですが、ARPUが万円単位に丸められているためで、実質的に一致しています。ARRという数字がどこから出てきているかが、これで確認できます。

検算2:期末社数 = 期首社数 + 新規 − 解約

会社は解約社数を開示していませんが、逆算できます。

4,991社 + 2,907社 − 7,052社 = 846社

つまり2026年8月期には、2,907社を新しく獲得する一方で、846社が抜ける前提です。期首と期末の平均社数6,022社に対して846社なので、年間14.0%。会社が開示している月次解約率1.2%を単純に12倍すると14.4%なので、ほぼ整合します。開示されていない数字が、開示されている数字から復元できたことになります。

検算3:顧客獲得コスト(CAC)の概算

広告宣伝費・営業獲得費1,327百万円を、年間新規獲得2,907社で割ります。

1,327百万円 ÷ 2,907社 = 1社あたり約45.6万円

これは筆者の概算です。広告宣伝費・営業獲得費のすべてが新規獲得に使われているとは限らず(既存顧客向けの販促や採用広報が混ざっている可能性があります)、逆に営業人件費は販管費の別項目に入っているため、実際のCACはこれより高い可能性があります。それでも桁感はつかめます。

1社あたり年間136万円のARPUに対し、獲得コストが45.6万円。粗利率66.7%を考慮すると、1社から年間約91万円の粗利が出るので、獲得コストの回収は約0.5年という計算になります。月次解約率1.2%が続くなら、1社の平均契約期間は単純計算で約6.9年(1÷0.012÷12)。回収0.5年に対して契約6.9年というのは、サブスク事業としてはかなり良い数字の部類です。

なぜPSチャネルが効くのか

会社は、2026年8月期の新規獲得2,907社のうち**約64%がPSチャネル(地方銀行等のパートナーセールス)**による獲得だと説明しています。提携金融機関は前期末73行から第3四半期末81行へ、約11%拡大しました。

地方銀行がなぜ紹介してくれるのか。会社の説明を要約すると、(1) サービス内容が分かりやすい、(2) 紹介先の企業の規模や業態を問わない(ホリゾンタル型)、(3) 健康経営や地産地消を訴求できる、の3点です。そして「地方銀行ではビジネスマッチングにおいて類似サービスの重複契約をしない企業も多い」ため、先行して提携網を押さえたこと自体が参入障壁になっている、と主張しています。

ここでも冒頭の軸が効きます。冷蔵庫1台に縮めたからこそ、銀行の営業担当者が「どの取引先にも同じ話ができる」商品になった、という関係です。厨房付きの社員食堂なら、紹介できる取引先は限られます。

この軸が説明する弱点

ただし、同じ軸が弱点も説明します。

弱点1:冷蔵庫1台の売上には天井がある。 ARPUは年間134〜136万円です。これを伸ばす方法は2つしかありません。1社あたりの設置台数を増やすか、単価を上げるか。会社は前者について「1社あたり獲得拠点数を前期末1.77台から当期末1.83台へ」(+3.4%)、後者について「2022年8月期より年次で10%程度の値上げを実施」と説明しています。台数のほうは、伸び率としては年3%台です。

弱点2:作るのも運ぶのも他人。 厨房を外に出した結果、商品の大部分は委託先の食品メーカーが作り、配送の約8割は宅配便業者が担っています。会社はⅠの部のリスク項目で、委託先の生産余力、配送体制の確保、委託先のガバナンスをそれぞれ独立したリスクとして挙げています。配送費は通期予想で1,140百万円、売上の11.6%です。物流費が上がれば、そのまま利益率に効きます。

弱点3:紹介チャネルへの依存。 新規獲得の64%を占めるPSチャネルは、裏を返せば「提携先の方針次第で獲得ペースが変わる」ということです。会社自身も、提携契約の見直し・終了、地域金融機関の経営統合・再編、コンプライアンス方針の変更、紹介手数料の条件変更をリスクとして列挙しています。

利益率が3四半期で下がっている

もう一つ、KPIとは別に指摘しておきたいことがあります。セクション3の四半期分解の表を、今度は利益率の欄だけ見てください。

  • 上期(9〜2月):営業利益率 10.7%
  • 3〜5月:営業利益率 7.5%
  • 6〜8月(予想):営業利益率 7.4%

「第3四半期累計で営業利益率9.5%」という数字は、10.7%と7.5%の平均です。 直近3か月だけを見ると7.5%まで下がっており、会社予想の最終四半期も7.4%です。四半期ごとの季節性なのか、獲得コストの前倒しなのか、あるいは子会社の連結による構成変化なのか、現時点の開示では切り分けられません。ただ、「累計の利益率」だけを見ていると気づけない変化がここにあります。

上場初年度で前年同期の四半期財務諸表が存在しないため、前年同期との比較はできません。この点は通期決算と、来期の第1四半期を待つ必要があります。


5. 子会社とM&A:もう一つの成長ドライバー

KOMPEITOは、本業のオーガニック成長に加えて、M&Aを成長戦略の柱に置いています。すでに動いている案件を時系列で整理します。

時期内容
2024年5月米国に完全子会社KOMPEITO USA Inc.を設立(カリフォルニア州ロサンゼルス、「Lumeal」ブランド)
2024年9月完全子会社 株式会社ODYデリバリーズを設立
2024年11月東京都大田区を基盤とする牛乳販売店の事業を譲受(取得価額44百万円、のれん25百万円)
2025年9月東京都世田谷区・江東区・練馬区・杉並区を基盤とする牛乳販売店の事業を譲受
2025年10月株式会社優食(高齢者宅配食・介護施設向け配食)を200百万円で完全子会社化(のれん35百万円、5年償却)
2025年11月東京都文京区・埼玉県朝霞市を基盤とする牛乳販売店の事業を譲受

牛乳販売店(乳販店)の買収が3件続いているのが特徴的です。これは単なる多角化ではなく、ラストワンマイル配送の内製化が狙いです。乳製品の宅配は、朝の時間帯に各戸を回る配送網を持っています。それをOFFICE DE YASAIの配送にも使う、という発想です。会社は牛乳販売店の統合効果により、毎月90万円程度のラストワンマイル配送原価が下がったと説明しています。

優食の買収は、方向性が少し違います。会社は「設置型社食から給食事業本丸への拡大」と表現しており、冷蔵庫を置くビジネスから、厨房を持つビジネス(セントラルキッチン)への接続を狙っています。優食の通期売上予想は428百万円で、全社の4.3%。2026年4月から倉敷市の行政委託配食事業で10%の価格改定が承認されたことが売上増加要因になったと説明されています。

用語メモ:のれんと償却 会社を買うときに、買った会社の純資産(資産−負債)を上回る金額を払うことがあります。この差額が「のれん」です。日本の会計基準では、のれんを一定年数で費用として償却します。KOMPEITOは5年で均等償却しています。優食ののれん35百万円なら、年間7百万円が費用になる計算です。買収先の収益力が想定を下回ると、償却とは別に「減損」として一括で費用計上する必要が生じます。

M&Aのリスクとして、会社はⅠの部で、デューデリジェンスで潜在債務を把握しきれない可能性、のれんの減損、PMI(統合プロセス)の遅延、海外子会社を含む複数拠点管理の複雑化を挙げています。現時点ののれん残高は54百万円(2026年5月末)と総資産の1.3%にすぎないので、論点としてはまだ小さい。ただ、会社が「非連続的な成長」をM&Aに求めている以上、この残高は今後増える前提で見るべき項目です。

追い風:42年ぶりの税制改正

事業環境の面では、2026年4月から施行された税制改正が効いています。従業員向け食事補助に係る所得税の非課税限度額が、月額3,500円(税別)から7,500円(税別)へ、約2.1倍に引き上げられました。 会社によれば42年ぶりの改正です。

仕組みを整理すると、会社が従業員に食事を現物支給する場合、(1) 従業員が食事価額の50%以上を負担し、(2) 会社負担額が一定の限度額以下であれば、その会社負担分は給与として課税されません。この限度額が上がったということは、同じ「給与として課税されない」枠の中で、会社がより多く食事代を補助できるということです。導入企業にとっては福利厚生を拡充しやすくなり、従業員にとっては実質的な手取りが増えます。

一方で、会社はこれをリスクとしても記載しています。 「将来において、当該通達の改廃や課税要件の厳格化、非課税限度額の引下げ・撤廃、又は食事補助に対する課税方針の変更等が行われた場合には、導入企業が享受する税制上のメリットが減退し、新規導入の停滞や既存顧客の解約増加等を通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります」。追い風と向かい風は同じ蛇口から出てくる、という構造です。

この改正は2026年4月1日以後の支給分からなので、2026年8月期に含まれるのは5か月分だけです。効果がフルで出るのは2027年8月期から、という見方が成り立ちます。


6. 資本政策と株主還元:77億円のうち、会社に入ったのは0.74億円

KOMPEITOは無配で、株主優待についても上場日までの開示に記載が見当たりません。したがってこのセクションは「還元」ではなく、希薄化と需給の管理情報として読んでください。上場から1日しか経っていない銘柄なので、今後の株価にとってはこちらのほうが決算より重い可能性があります。

株主優待について(不在の確認)

筆者が確認した範囲では、上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)の第一部〜第三部、上場日の開示、第3四半期決算短信のいずれにも、株主優待制度に関する記載は見当たりませんでした。ただし、「会社が制度なしと明言している」ことを確認できたわけではありません。 Ⅰの部の第六部「提出会社の株式事務の概要」(株主に対する特典の欄が置かれる箇所)と、会社IRサイトのFAQページについては、筆者は内容を確認できていません。優待を目当てに検索してこられた方は、会社IRに直接確認されることをおすすめします。

上場の構造:これは資金調達ではなかった

まず、今回のIPOの株数を整理します。

項目株数備考
上場前の発行済株式総数9,848,300株2026年6月18日に1株→70株の株式分割を実施後
公募50,000株上場前株数の0.51%
売出4,139,300株うち国内3,118,800株、海外1,020,500株
オーバーアロットメント(OA)628,200株上限
公開株数 合計4,817,500株公開価格1,600円で77.1億円
上場後の発行済株式総数9,898,300株OA反映前

この表のポイントは1つです。公開された4,817,500株のうち、会社が新しく発行したのは50,000株、全体の1.0%しかありません。 残りはすべて既存株主が売った株です。

金額で見ると、もっとはっきりします。

  • 市場から吸い上げた金額(吸収金額):4,817,500株 × 1,600円 = 約77.1億円
  • そのうち会社の手元に入る金額:50,000株 × 引受価額1,472円 = 約0.74億円
  • 比率:0.95%

77億円のうち、会社に入ったのは1%弱。残りの99%は、既存株主(大半はベンチャーキャピタル)の換金です。

用語メモ:公募・売出・引受価額 「公募」は会社が新しく株を発行して売ること。お金は会社に入り、そのぶん既存株主の持分は薄まります(希薄化)。「売出」は既存株主が持っている株を売ること。お金は売った株主に入り、会社には1円も入りませんが、株数も増えないので希薄化はしません。「引受価額」は、証券会社が発行体から株を買い取る価格です。公開価格1,600円に対して引受価額1,472円なので、差額128円(8%)が証券会社の取り分になります。会社が実際に受け取るのは公開価格ではなく引受価額のほうです。

会社が届出書で説明している調達資金の使途は、OFFICE DE YASAIの導入拠点数拡大に向けた広告宣伝費(デジタル広告費、地域特化型プロモーション費用等)への充当です。ただし、通期予想の広告宣伝費・営業獲得費は1,327百万円。調達した0.74億円は、年間の広告費の6%弱にあたる金額です。手取概算額については、IPO情報サイトの記載(想定価格ベースで61,760千円)を見かけましたが、筆者は訂正届出書の原文を確認できていないため、確定値としては扱いません。

ここで冒頭の軸の3度目の仕事です。厨房も工場も持たない会社なので、そもそも上場で大きな資金を集める必要がありませんでした。 設備投資は2025年8月期で114百万円、2026年8月期第3四半期累計で52百万円しかありません。冷蔵庫を配る会社にとっての「設備」は、広告費と提携ネットワークであり、それは営業キャッシュフローの範囲でまかなえる規模です。だから公募が5万株で済んだ、という読み方ができます。

同時に、だからこそ上場の主目的が「VCの出口」になったとも読めます。どちらの読み方も、同じ事実から出てきます。

株主構成とロックアップ

上場前の株主構成は、Ⅰの部のリスク項目に「ベンチャーキャピタルやその他の投資ファンド、及びこれらが組成する投資事業有限責任組合等が保有する株式は、全体の約66%を占めております」と明記されています。

上位10名の保有株数・売出株数・ロックアップ条件は以下のとおりです。なお、この表は目論見書をもとにIPO情報サイトが整理したものを参照しており、筆者は目論見書の原文を確認していません(報道・IPO情報サイトベース)。 比率の分母は上場前発行済株式数9,848,300株に潜在株式683,620株を足した10,531,920株です(届出書の記載比率と一致することを確認しました)。

株主保有株数比率売出株数ロックアップ
渡邉 瞬(代表取締役CEO)2,301,600株21.85%180日
JICベンチャー・グロース・ファンド1号1,049,580株9.97%671,700株90日/1.5倍
IF Growth Opportunity Fund I, L.P.896,910株8.52%358,700株180日
ニッセイ・キャピタル7号877,310株8.33%526,300株90日/1.5倍
ニッセイ・キャピタル11号744,240株7.07%323,200株90日/1.5倍
ニッセイ・キャピタル9号646,450株6.14%446,500株90日/1.5倍
インキュベイトファンド2号552,370株5.24%220,900株180日
キユーピー株式会社408,240株3.88%45,000株360日
あおぞらHYBRID3号305,340株2.90%90日/1.5倍
鈴与株式会社264,670株2.51%360日

上位10名の保有合計は8,046,710株(76.4%)、売出合計は2,592,300株です。売出総数4,139,300株との差1,547,000株が、上位10名以外の株主による売出ということになります。

用語メモ:ロックアップ 上場前からの株主が、上場後の一定期間、市場で株を売らないと主幹事証券に約束する取り決めです。上場直後に大量の売りが出て株価が崩れるのを防ぐためのものですが、期間が切れた瞬間に売り圧力が顕在化することもあります。「90日/1.5倍」は、原則90日間は売れないが、その期間中でも株価が公開価格の1.5倍以上になれば主幹事の判断で売却できる、という条項です。なお、主幹事は期間中でも裁量で解除できるのが通例です。

解除日を自分で計算しておきます。上場日2026年9月11日を1日目と数えると、

  • 90日:2026年12月9日(水)
  • 180日:2027年3月9日(火)
  • 360日:2027年9月5日(日)

数え方(上場日を含めるか、翌日から数えるか)で1日ずれます。上場日の翌日起算なら、それぞれ12月10日・3月10日・9月6日です。

売出後に各区分に残る株数を集計すると、こうなります。

ロックアップ区分売出後の残存株数上場後株数(9,898,300株)に対する比率解除日
90日/1.5倍1,655,220株16.7%2026年12月9日
180日3,171,280株32.0%2027年3月9日
360日627,910株6.3%2027年9月5日

1.5倍の価格条項は、公開価格1,600円の1.5倍=2,400円です。 上場初日の高値は1,700円でしたので、この水準からは29%下にあります。現時点では価格条項は効いておらず、実質的に効いてくるのは2026年12月9日という日付のほうです。この日を境に、上場後株数の16.7%にあたる株が売却可能になります。

新株予約権:4日後に期限を迎える「行使価額1円」の権利

Ⅰの部に記載されている新株予約権は5回分あります。株式分割(1株→70株)を反映した後の数字です。

回次対象株数行使価額行使期間状態
第1回17,500株1円2016年9月15日〜2026年9月15日行使可能(期限間近)
第4回48,510株309円2019年12月19日〜2026年12月31日行使可能
第5回74,550株310円2023年7月13日〜2031年7月12日行使可能
第6回542,080株525円2027年11月28日〜2035年11月27日条件待ち
第7回980株525円2028年2月20日〜2036年2月19日条件待ち
合計683,620株上場後株数の6.91%

潜在株式は683,620株で、上場後の発行済株式数に対して6.91%。5%を超えているので、後述のEPS計算では完全希薄化後の数字も併記します。

このうち、**すぐに行使できるのは第1回・第4回・第5回の合計140,560株(上場後株数の1.42%)**です。行使価額は1円・309円・310円で、上場初日の終値1,670円を大きく下回っています。残りの第6回・第7回(543,060株)は行使開始が2027年11月以降なので、少なくとも1年以上先の話です。

ここで、開示の隅にある小さな数字を1つ拾っておきます。

第1回新株予約権の行使期限は2026年9月15日です。 上場日の4日後です。

この新株予約権には「本行使期間内においても、当社が証券取引所に株式上場をした後でなければ、本新株予約権を行使することができない」という条件が付いています。2014年に発行され、上場を待ち続けて、2026年9月11日にようやく行使条件が満たされた。そして期限は9月15日。

上場日から期限までの営業日を数えると、9月11日(金)、9月14日(月)、9月15日(火)の3営業日しかありません。17,500株、行使価額1円。初日終値1,670円で計算すると、権利の内在価値は約2,900万円です。Ⅰの部の株主の状況には、この17,500株を保有する個人名(社外協力者と記載)が載っています。

株価への影響という意味では17,500株(0.18%)にすぎず、些末な数字です。ただ、12年間行使できなかった権利が、上場によって3営業日だけ開いた窓を通る、という事実は、この会社の資本政策の来歴を1行で示しています。

EPSは3つある

上場直後の会社は、1株当たり利益の分母が複数あり得るため、指標の見え方が変わります。3本並べます(株価は上場初日終値1,670円、純利益は会社予想1,126百万円)。

EPSの種類分母(株数)EPSPER(終値1,670円)PER(公開価格1,600円)
会社予想EPS9,848,300株(予定期中平均)114.40円14.6倍14.0倍
実株数ベースEPS9,898,300株(上場後発行済)113.76円14.7倍14.1倍
完全希薄化後EPS10,581,920株(+潜在株式)106.41円15.7倍15.0倍

会社予想EPSの分母に公募株が含まれていないのは、公募の払込日が決算期末(2026年8月31日)より後だからです。会社自身も「基準日末日後の公募増資となることから、2026年8月期(予想)において、発行済株式総数の増加は見込んでおりません」と注記しています。

3本の差は今回わずかです。公募が5万株しかないので、会社予想EPSと実株数ベースEPSはほぼ同じ。潜在株式683,620株を足しても、EPSは114.40円から106.41円へ7%下がる程度です。「来期以降に1株が受け取れる利益」の目安としては、実株数ベースの113.76円を見るのが素直だと思います。

ただし、セクション3で見たとおり、この1,126百万円は税の戻りを含んだ数字です。税金が正常に効いた場合の目安は608百万円、実株数ベースEPSは61.47円、PERは27.2倍。3本のEPSの差(14.6〜15.7倍)より、税の前提の差(14.7倍と27.2倍)のほうがはるかに大きい。今回の銘柄で注意すべきなのは分母ではなく分子です。

オーバーアロットメントの行方

OAの上限は628,200株です。まだ結果は開示されていません。

用語メモ:オーバーアロットメント(OA) 需要が想定を上回った場合に備え、主幹事証券が大株主から株を借りて、予定より多く売り出す仕組みです。売り出したぶんは後日埋め合わせる必要があり、方法は2つ。(1) 会社から第三者割当で新株を受け取る、(2) 市場で買い戻す(シンジケートカバー取引)。株価が公開価格を下回っていれば市場で買い戻したほうが安いので、(2)が選ばれやすく、その場合は新株が発行されないため希薄化も起きません。逆に株価が公開価格を上回り続ければ(1)になり、株数が増えます。

KOMPEITOの上場初日は、初値1,480円と公開価格1,600円を下回って始まり、安値1,472円まで下げたあと、終値1,670円で公開価格を上回って引けました。公開価格を下回った局面があった以上、シンジケートカバー取引が入っていた可能性はありますが、これは筆者の推測であり、結果が開示されるまでは確定しません。

株数への影響は以下のとおりです。

  • OAが全株失権(市場で買い戻し):上場後株数は9,898,300株のまま
  • OAが全株発行:上場後株数は10,526,500株(+6.3%)

本記事の指標はすべて9,898,300株ベースで計算しています。「第三者割当増資の結果に関するお知らせ」が開示された時点で、EPS・PER・時価総額は計算し直す必要があります。

配当と株主総会の基準日

会社は設立以来無配です。Ⅰの部の配当政策には「現時点においては、財務体質の強化と事業拡大のための投資を優先し、持続的な成長を実現することが、中長期的な株主価値の向上に繋がる」「配当の実施時期等については、現時点で未定であります」と記載されています。

定款上は年1回の期末配当を基本方針とし、取締役会の決議により2月末日を基準日として中間配当を行うことができるとされています。期末配当の決定機関は株主総会、中間配当は取締役会です。

無配なので配当の権利付き最終日に実務上の意味はありませんが、議決権の基準日としては重要です。 期末の基準日は8月31日。仮に2027年8月31日(火)を基準日とすると、国内株式の決済はT+2(約定日から2営業日後に受渡し)なので、権利付き最終日は2営業日前の**2027年8月27日(金)**になります(取引所の休業日次第で変わります)。

そして、ここは今回の上場特有の注意点です。直近の基準日である2026年8月31日(月)は、上場日(9月11日)より前にあります。 つまり、上場後に市場で株を買った投資家は、2026年8月期末の株主名簿に載っていません。2026年11月頃に開催されるであろう定時株主総会の議決権は、上場前の株主構成で行使されることになります。個人株主が総会に出られるのは、2027年8月期の総会(2027年11月頃)からです。

自己株式・保有有価証券・減資

  • 自己株式:保有していません。2026年6月4日に全種類の優先株式(A種・B種・C1種・C2種・D種、計89,408株)を取得条項に基づき取得し、普通株式89,408株を交付したうえで、同日付で優先株式は全て消却されています。この取引の結果、優先株式はすべて普通株式に転換され、種類株式発行会社ではなくなりました。
  • 株式分割:2026年6月18日付で1株につき70株の株式分割を実施。分割前140,690株→分割後9,848,300株。本記事の1株当たり指標はすべて分割後ベースです。過去記事と比較する場合、2026年6月17日以前の1株当たり数値は70で割る必要があります。
  • 保有有価証券:Ⅰの部の「株式の保有状況」は「該当事項はありません」。政策保有株の論点はありません。
  • 減資:2022年8月に694,908千円(減資割合98.6%)、2024年8月に534,990千円(同98.2%)の無償減資を、いずれも欠損填補目的で実施しています。減資といっても資本金が資本剰余金等に振り替わるだけで、純資産の総額は変わりません。結果として資本金は10百万円に固定され、これがセクション3で見た中小企業向け税制の前提になっています。

7. 株価の見方

上場初日(2026年9月11日)に何が起きたか

項目
公開価格1,600円
始値(初値)1,480円(公開価格比 △7.5%)
高値1,700円
安値1,472円
終値1,670円(公開価格比 +4.4%、初値比 +12.8%)
出来高5,871,700株
時価総額(終値ベース)約165億円

事実として記録しておくべき点が3つあります。

1つ目。初値は公開価格を7.5%下回りました(公募割れ)。 事前のIPO情報サイトの初値予想は1,760円〜2,090円のレンジだったので、それを大きく下回った形です。

2つ目。当日の安値1,472円は、主幹事証券の引受価額1,472円と同値でした。 引受価額は証券会社が発行体から株を買い取った価格で、これを下回ると証券会社の手取りが毀損します。安値がこの水準でぴたりと止まったことは事実として記録しておきますが、その理由については開示がなく、筆者は解釈を加えません。

3つ目。出来高5,871,700株は、上場後発行済株式数9,898,300株の59.3%にあたります。 公開株数4,817,500株を上回っており、初日のうちに公開株が1回転以上したことになります。上場初日としては珍しい水準ではありませんが、需給主導の値動きだったことは数字から読めます。

なお、夜間PTS(ジャパンネクスト証券J-Market)では9月11日18時13分時点で1,640円(東証終値比△1.8%)でした。

強気に見る材料

  • サブスクとしての基礎体力:月次定期解約率1.1%(直近12か月実績平均)。1社あたりの平均契約期間に換算すると約7.6年になります。顧客獲得コストの回収は粗利ベースで約0.5年(筆者の概算)。獲得した顧客が長く残り、獲得費用の回収が速い。この組み合わせは、サブスク事業として素直に良い数字です
  • 市場の浸透率が1%:会社は中小企業70.5万社×ARPU134万円から、アプローチ可能な市場規模を約9,000億円と試算しています。これに対して2026年5月末のARRは89.2億円、約1%。数字の前提(すべての中小企業が潜在顧客になるか)には議論の余地がありますが、天井が近い事業でないことは確かです
  • 税制改正の追い風:食事補助の非課税限度額が2026年4月から2.1倍に。2026年8月期に含まれるのは5か月分だけなので、フルで効くのは2027年8月期からです
  • 地方銀行81行の提携網:新規獲得の64%がこのチャネル経由。会社は「地方銀行では類似サービスの重複契約をしない企業も多い」ため先行優位性があると主張しており、構築に時間がかかる資産であることは確かです
  • 財務は健全:現預金1,765百万円に対し有利子負債1,286百万円で、ネット479百万円の現金超過(2026年5月末)
  • 上場直後の株価水準:初値1,480円は公開価格を下回り、時価総額は約147億円まで下がりました。終値ベースでも約165億円。売上規模(通期予想98.7億円)に対するPSRは1.67倍です

弱気に見る材料

  • 純利益が税の戻りで膨らんでいる:通期予想純利益1,126百万円のうち、最後の3か月に571百万円(50.7%)が集中し、その3か月の税引前利益は204百万円。税金が正常に効いた場合のEPSは61.47円、PERは27.2倍(終値ベース)。「PER14倍台」という第一印象は、この前提に支えられています
  • 利益率が下がっている:営業利益率は上期10.7%→3〜5月7.5%→6〜8月予想7.4%。累計の9.5%だけを見ていると気づけません
  • 需給の重さ:上場前株式の約66%を投資ファンドが保有。売出後もなお、90日ロックアップ(2026年12月9日解除)の対象に上場後株数の16.7%、180日(2027年3月9日解除)の対象に32.0%が残っています。価格条項の2,400円は初日高値1,700円から29%上で、現時点では効いていません
  • 黒字の実績が9か月しかない:2024年8月期・2025年8月期はいずれも営業赤字。黒字化は2026年8月期に入ってからで、通期の黒字決算はまだ1度も確定していません
  • 上場が資金調達ではなかった:77.1億円の吸収に対し、会社に入ったのは0.74億円(0.95%)。会社が成長投資のために外部資金を必要としていない、という読み方もできますが、既存株主の換金が主目的だった、という読み方も同時に成り立ちます
  • 主力サービスへの依存:2025年8月期の売上構成比はOFFICE DE YASAI事業が95.4%。会社自身が「特定のサービスへの依存度が高い事業構造」とリスク項目に明記しています
  • ARPUの伸ばし方が限られる:1社あたりの設置台数は1.77台→1.83台(+3.4%)。値上げは2022年8月期から年10%程度続けており、インフレ下でどこまで続けられるかは顧客の受容次第です
  • 配送費と原材料費:配送費は通期予想で売上の11.6%。原材料は2024年8月期末から2025年8月期末にかけて3%程度上昇したと会社は説明しており、物流の2024年問題を背景としたドライバー不足も継続しています
  • 営業キャッシュ・フローが未確認:第3四半期は四半期キャッシュ・フロー計算書が作成されていません。前期は△341百万円でした。黒字転換後に営業CFがプラスに転じたかどうかは、通期決算を待つ必要があります
  • 無配・優待なし:インカムゲインはありません

8. 今後のカレンダーと、見るべきKPI

カレンダー

時期内容
2026年9月15日(火)第1回新株予約権(17,500株・行使価額1円)の行使期限
2026年10月上旬〜中旬(未定)2026年8月期 通期決算発表。東証は決算期末後45日以内の開示を要請しており、8月31日から45日後は10月15日。会社はまだ発表日を公表していません
2026年10月頃(未定)オーバーアロットメントに係る第三者割当の結果開示(実施された場合)
2026年11月30日まで有価証券報告書の提出期限(決算期末から3か月以内)。正式な大株主表・税効果会計の注記・セグメント情報はここで確定します
2026年11月頃(未定)定時株主総会。基準日は2026年8月31日で、上場前の株主構成で議決権が行使されます
2026年12月9日(水)90日ロックアップ解除(上場後株数の16.7%)
2026年12月31日(木)第4回新株予約権(48,510株・行使価額309円)の行使期限
2027年1月中旬頃(未定)2027年8月期 第1四半期決算。前年同期比が初めて成立する四半期です
2027年3月9日(火)180日ロックアップ解除(上場後株数の32.0%)
2027年9月5日(日)360日ロックアップ解除(上場後株数の6.3%)

通期決算で確認したい数字

  1. 実際の法人税等の金額。会社予想では通期で△249百万円(戻り)です。この金額と、繰延税金資産の期末残高(2026年5月末241百万円からいくら増えたか)を突き合わせれば、セクション3の読みが正しかったかどうかが検証できます
  2. 有価証券報告書の税効果注記。繰越欠損金の残高と期限別の内訳が載ります。「あと何年、税負担が軽いままなのか」がここで初めて数字になります
  3. 営業キャッシュ・フロー。第3四半期では作成されていません。黒字転換が現金の裏付けを伴っているかどうかの確認です
  4. 第4四半期単独の営業利益率。会社予想は7.4%。上期の10.7%からの低下が構造的なものか、四半期の振れなのかを判断する最初の材料になります
  5. 期末の本契約社数とARR。会社予想は7,052社・9,641百万円。この2つが計画どおりなら、翌期の売上のスタート地点が確定します

四半期ごとに追うKPI

KPI直近の値見る理由
本契約社数6,644社(2026年5月末)成長の量。期末予想は7,052社
ARPU(年換算)134万円(2026年5月末)成長の質。値上げと台数増の両方が効く
月次定期解約率1.1%(直近12か月平均)この数字が悪化すると、CACの回収前提が崩れます
ARR89.2億円(2026年5月末)翌期の売上の土台
1社あたり獲得拠点数1.83台(期末予想)ARPUを伸ばす2つの方法のうち、値上げ以外の側
提携金融機関数81行(2026年5月末)新規獲得の64%を占めるチャネルの容量
広告宣伝費・営業獲得費 ÷ 新規獲得社数約45.6万円(筆者の概算)獲得効率。悪化すれば成長のコストが上がります
販管費率57.8%(通期予想)黒字転換の主因だった項目
のれん残高54百万円(2026年5月末)M&Aを加速する方針なので、増え方と減損リスクを見る

9. 3行まとめ

  1. 2026年8月期の通期予想は「経常利益877百万円、純利益1,126百万円」と純利益のほうが大きく、最後の3か月に約367百万円の税金の戻り(繰延税金資産の追加計上と読むのが自然)が集中している。初日終値1,670円でPER14.7倍だが、税が正常に効いた場合の目安では27.2倍になる。 見るべきは分母(EPSの3つの計算方法)ではなく分子(税の前提)です。
  2. 事業としての足腰は強い。月次解約率1.1%、顧客獲得コストの回収は粗利ベースで約0.5年(筆者の概算)、地方銀行81行の提携網が新規獲得の64%を担い、2026年4月の食事補助の非課税枠2.1倍という追い風はまだ5か月分しか効いていない。 ただし営業利益率は上期10.7%から直近3か月7.5%へ低下しており、累計値だけ見ていると気づけません。
  3. 上場は資金調達ではなく出口だった。吸収77.1億円のうち会社に入ったのは0.74億円(0.95%)で、上場前株式の約66%を投資ファンドが保有していた。売出後もなお上場後株数の16.7%が2026年12月9日、32.0%が2027年3月9日にロックアップ解除を迎える。 厨房を持たない会社は大きな資金を必要としない、という事業構造の裏返しでもあります。

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値は、2026年9月11日付「東京証券取引所グロース市場への上場に伴う当社決算情報等のお知らせ」および「2026年8月期 第3四半期決算短信」、2026年8月12日付「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」、2026年8月26日付「同 訂正報告書」、日本取引所グループの新規上場会社情報、株価情報サイトの時系列データ、ならびに報道・IPO情報サイトに基づいています。四半期単独の損益、税金の内訳、顧客獲得コスト、上場後の1株当たり純資産、ロックアップ解除日は筆者の試算・差し引きであり、会社が開示した数値ではありません。

出典に関して、以下の点を明示しておきます。ロックアップの期間・価格条項および上位10名の株主構成・売出株数は、目論見書をもとにIPO情報サイトが整理した内容を参照しており、筆者は目論見書および訂正届出書の原文を確認していません。 親引け(従業員持株会への20,700株の売付け)および公募による手取概算額も同様です。また、Ⅰの部については本文の分量制約により、第四部「株式公開情報」(特別利害関係者等の株式等の移動状況、第三者割当等の概況、株主の状況)および第六部「提出会社の株式事務の概要」の全文を通読できておらず、株主に対する特典(株主優待)の有無は「記載が見当たらない」という水準の確認にとどまります。会社IRサイトのFAQページの内容も未確認です。本記事で踏み込まなかった論点として、通期のキャッシュ・フロー計算書、税務上の繰越欠損金の残高と期限、セグメント情報(単一セグメントのため開示なし)、KOMPEITO USA Inc.の個別業績、優食・ODYデリバリーズの個別損益、限界利益率の実績値があります。これらは2026年11月30日までに提出される有価証券報告書、および通期決算短信でご確認ください。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

-株式投資
-, ,