株式投資

【2026年8月発表・2026年6月期通期決算】アイ・グリッド・ソリューションズ(603A)——店の屋根に「自販機」を置き続ける会社の初決算は計画超え。ただし「EPS61円」「PER17倍」はどの株数の話か?

本記事は2026年9月5日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 2026年7月29日に東証グロースへ上場したアイ・グリッド・ソリューションズが、8月14日に出した上場後初の通期決算(2026年6月期)の中身。売上高256億円・純利益19.4億円で、上場時に示した計画をすべて上回った理由
  • この会社が「店舗や倉庫の屋根に太陽光発電所を置いて電気を売る」仕事で、なぜ自社で発電所を持つ(PPAサービス)よりも、他社に持ってもらう(アライアンスソリューション)方向へ舵を切っているのか。そしてそれが利益率にどう効くのか
  • 上場直後の会社に固有の「見え方が誤解を生む数字」。会社が開示するEPS61.88円と、上場後の実際の株数で割ったEPS58.8円、さらに新株予約権をすべて数えた52.5円の3つが存在すること。証券サイトのPBRが上場前の純資産で計算されていること
  • 借金で発電所を積み上げてきた会社の財務。有利子負債265億円、ネットD/Eレシオ2.3倍(上場後の概算では1.4倍)、会社が目安とする4.0倍、金融機関との財務制限条項、資産除去債務42億円
  • 株主構成とロックアップ。筆頭株主の伊藤忠商事、VC2社で上場後21%、ロックアップ解除は2027年1月下旬、新株予約権439万株(行使価額60円・400円)が上場後株数の12%に当たること
  • 株主優待は「実施していない」と会社が明言していること、配当も「当面行わない」方針であること

1. 前提知識:どういう会社か

1-1. 事業の構造を1枚の表で

項目内容(2026年6月末時点)
証券コード・市場603A・東証グロース(2026年7月29日上場)
決算期6月末(年1回の本決算は8月中旬発表)
事業セグメントGXソリューション事業(売上構成比53.4%)、エナジートレーディング事業(同47.6%)
GXソリューション事業の中身商業施設・物流施設の屋根に太陽光発電設備を置く「オンサイトPPA」。自社で設備を持つ「PPAサービス」、パートナーに設備を持ってもらう「アライアンスソリューション」、顧客自身が設備を買う「インテグレーションサービス」の3本
エナジートレーディング事業の中身電力小売。屋根で余った電気(余剰電力)を集めて、別の需要家に売る「循環型電力」を2025年7月に開始
稼働実績累計1,549施設・421MW(うちオンサイトPPAが1,497施設・387MW)
契約企業数403社(イオン、バローHD、センコーグループなど流通小売・物流が中心)
従業員数153名(前期比22名増)
筆頭株主伊藤忠商事(上場前24.73%、上場後の概算21.8%)
配当創業以来無配。当面も無配の方針(配当開始時期は未定)
株主優待制度なし(会社IRのFAQで「株主優待は実施しておりません」と明言)
連結の有無子会社なし。2024年7月以降は単体決算のみ

用語メモ:オンサイトPPA PPAは「Power Purchase Agreement=電力購入契約」の略です。発電事業者が顧客の敷地内(この会社の場合は店舗や倉庫の屋根)に自分の費用で太陽光パネルを置き、そこで作った電気を顧客に売る仕組みです。顧客は初期費用ゼロで、20年間の固定単価で電気を買います。電力会社の送電網を通さないので託送料(送電線の使用料)がかからず、一般に系統電力より安くなります。

1-2. 軸となる例え:「店の屋根に、自販機を置くように発電所を置いていく会社」

この会社の仕事を一言でいうと、昔なら店のオーナーが自前で太陽光パネルを買うか、あきらめるかしかなかった「屋根の上の発電」を、設備の設置・所有・保守から、余った電気の引き取りまで丸ごと引き受ける会社です。

身近な光景に置き換えると、飲料メーカーが店の前に自販機を置く仕組みに近いと感じます。店は場所を貸すだけで機械を買いません。機械を持つのはメーカーで、補充も故障対応もメーカーがやります。この会社の場合、自販機に当たるのが屋根の上の太陽光発電設備で、店はそこから出てくる電気を20年間、決まった単価で買います。

普通の自販機と違うのは、「売れ残り」の扱いです。太陽光は昼に発電しますが、店が昼に使い切れない電気(余剰電力)が必ず出ます。普通のオンサイトPPA事業者はこれを売る先がないので、余りが出ないよう最初から小さめの設備しか置きません。この会社は、余った電気を自社の電力小売部門(エナジートレーディング事業)で引き取り、別の店や家庭に売ります。だから屋根いっぱいに設備を置けます。会社の説明資料によれば、この仕組みを使った案件では設置容量が一般的な設計より平均8割増えるとしています。「余った分を他の店に回せるから、機械を大きくできる」。これがこの会社の一番の特徴です。

この例えは、強みだけでなく弱みも説明できます。自販機を全部自分で買い続けると、お金が持ちません。 この会社は2017年からずっと借金とリースで機械(発電設備)を買ってきました。その結果が、後述する有利子負債265億円・自己資本比率19.3%という数字です。そこで2023年から、「機械はリース会社や不動産会社に買ってもらい、自分は設置と保守と売れ残りの引き取りだけを請け負う」形(アライアンスソリューション)を増やしました。設備投資を伴わない分、資本効率は上がりますが、開発した設備を売り渡す「売り切り」の商売になるので利益率は下がり、機械を買ってくれる相手(アライアンスパートナー)への依存も生まれます。この記事の深掘り(第3章)と弱気材料(第6章)、資本政策(第5章)で、この軸を繰り返し使います。

1-3. 直近3期の業績推移

項目2024年6月期(連結)2025年6月期(単体)2026年6月期(単体)
売上高(百万円)22,56622,93925,699
売上総利益(百万円)4,4596,0597,046
営業利益(百万円)1,9483,1393,581
営業利益率8.6%13.7%13.9%
EBITDA(百万円)3,5155,0595,748
経常利益(百万円)1,3272,3892,867
当期純利益(百万円)8671,5951,940
EPS(円、分割調整後)27.5649.8060.42
ROE21.7%27.6%25.7%
自己資本比率13.7%15.8%19.3%
総資産(百万円)36,31341,67444,294
配当0円0円0円
オンサイトPPA累計容量226MW300MW387MW

出典:決算短信、上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)、決算説明資料。2024年6月期は連結、2025年6月期以降は単体(子会社を吸収合併し連結を作らなくなったため)。EBITDAは営業利益+減価償却費+のれん償却費(会社定義)。

この表のポイントは2つです。売上は3期で14%しか伸びていないのに、売上総利益は58%伸びていること。これは売上の中身が、薄利の電力小売(エナジートレーディング事業)から、利益率の高い発電所の開発・運営(GXソリューション事業)へ入れ替わっているためです。もう1つは、ROEが20%台なのに自己資本比率が10%台であること。純資産が薄く、借金で総資産を膨らませている構造です。この2点は記事全体を貫く論点になります。

用語メモ:2024年6月期の「単体」の数字に注意 上場申請書類や株主総会の招集通知に載っている「単体」の5期推移では、2024年6月期の当期純損失が△26.3億円になっています。同じ年の連結決算は純利益8.7億円です。これは、子会社だった株式会社VPP Japanを吸収合併したときに「抱合せ株式消滅差損」という会計上の損失が単体にだけ出たためで、事業が赤字だったわけではありません。証券サイトによっては「前々期は26億円の赤字」と表示されることがあるので、連結の数字と読み分けてください。

1-4. 会社が示している目標

中期経営計画は公表されていません。代わりに、上場時と決算説明会で示された数字が目安になります。

  • 2027年6月期の会社予想:売上高309.7億円(前期比20.5%増)、営業利益38.4億円(同7.3%増)、純利益21.4億円(同10.3%増)、EBITDA61.8億円
  • 資本効率:ROEを20%強で維持する(説明資料の記載)
  • 財務規律:ネットD/Eレシオ4.0倍を目安に借入を使う(同上)
  • 新規稼働のうち7割以上をアライアンス(他社保有)にする方針

「率」だけで絶対額の目標がないのはROEとD/Eで、施設数や容量の中期目標も数字では示されていません。開発余地として「現行顧客の保有施設2.3万、中・大型の小売・物流施設5万、その他を含めて10万施設」という母集団が示されている程度です。


2. 決算ハイライト:計画をすべて上回った初決算

2-1. 損益の全体像

項目(百万円)2025年6月期上場時の計画2026年6月期実績前期比計画比
売上高22,93925,46425,699+12.0%100.9%
売上総利益6,0596,6867,046+16.3%105.4%
販管費2,9193,4483,465+18.7%100.5%
営業利益3,1393,2383,581+14.1%110.6%
EBITDA5,0595,4015,748+13.6%106.4%
経常利益2,3892,4972,867+20.0%114.8%
当期純利益1,5951,7231,940+21.6%112.6%

出典:決算短信(2026年8月14日)、上場時の「決算情報等のお知らせ」(2026年7月29日)。計画比は筆者の概算。

この表のポイントは2つです。1つ目は、売上はほぼ計画どおり(100.9%)なのに、利益は段階が下に行くほど上振れ幅が大きいこと。売上総利益で5.4%、営業利益で10.6%、経常利益で14.8%の上振れです。売上原価と営業外費用(主に支払利息)が計画より抑えられました。2つ目は、上場からわずか2週間後に出た決算で、上場時の計画を上回ったことです。上場時の計画は2026年4月に策定され、7月まで実績を見た上で公表されているので、もともと下振れしにくい計画だったとも読めます。

会社は8月21日に公表したQ&Aで、上振れ要因を「GXソリューション事業の主力3サービスがそれぞれ計画を上回った」と説明しています。

用語メモ:EBITDA 営業利益に減価償却費とのれん償却費を足し戻した利益です。この会社は太陽光設備を20年で償却しているため、減価償却費が年間21.4億円(売上の8%)あります。会社は「キャッシュの創出実態に近い指標」としてEBITDAを重視しています。ただし、EBITDAには支払利息(6.7億円)も税金(9.0億円)も含まれていません。EBITDA57億円と純利益19億円の差は、減価償却21.7億円+支払利息等7.1億円+税金9.0億円でほぼ説明がつきます。「EBITDA57億円の会社」と「純利益19億円の会社」は同じ会社です。

2-2. セグメント別

セグメント(百万円)売上高前期比セグメント利益前期比売上総利益率
GXソリューション13,713+53.7%2,843+51.0%32.3%
エナジートレーディング12,232△14.0%2,024△11.6%21.4%
調整額△246△1,286
全社25,699+12.0%3,581+14.1%27.4%

出典:決算短信セグメント情報(売上高はセグメント間取引を含む)。売上総利益率は決算説明資料。

全社の売上は12%増ですが、片方は54%増、もう片方は14%減の合成です。 GXソリューション事業(屋根の上の発電所)が伸び、エナジートレーディング事業(電力小売)は縮んでいます。電力小売の縮小は、会社が2022年6月期以降に積極的な営業をしていないためで、販売電力量は8.9億kWh(2022年6月期)から4.1億kWh(2026年6月期)まで減っています。「売上12%増」だけを見ると平凡に見えますが、中身は「利益率の高い事業が5割伸びて、薄利の事業が縮んだ」という構成変化です。

2-3. 四半期に分解する

上場初年度なので前年同期の四半期数値がなく、進捗率を前年と並べることができません。代わりに、通期から中間期・第3四半期累計を差し引いて、四半期ごとの姿を筆者が並べます。

四半期(百万円)売上高営業利益経常利益純利益売上構成比
上期(7〜12月)11,4821,6451,29592044.7%
第3四半期(1〜3月)7,0621,00983758027.5%
第4四半期(4〜6月)7,15792873644127.8%
通期25,6993,5812,8671,940100%

出典:中間期は上場申請書類、第3四半期累計は上場日の短信、通期は決算短信。第3四半期単独と第4四半期単独は筆者の差し引き。

ここで拾っておきたいのが、第4四半期の純利益が441百万円と、経常利益736百万円に対して小さいことです。第3四半期累計の税負担率は29.1%でしたが、第4四半期単独で逆算すると39.7%になります(筆者の概算)。通期では31.8%です。第4四半期に税負担が重くなった理由は短信に説明がなく、税効果の調整か一過性の費用かは有価証券報告書(9月18日提出予定)の税効果注記で確認する必要があります。

会社は季節性について、GXソリューション事業は工事しやすい第2四半期(10〜12月)と第4四半期(4〜6月)、エナジートレーディング事業は電力需要の多い第1四半期(7〜9月)と第3四半期(1〜3月)に売上が偏ると説明しています。GXソリューション事業の売上は第4四半期単独で4,565百万円と通期の33.3%を占め、説明どおりの偏りが出ています。2027年6月期の第1四半期(7〜9月)は、GXソリューション事業の閑散期に当たるので、11月頃に出る第1四半期決算だけで通期の進捗を判断すると、実態より弱く見える可能性があります。

2-4. 財政状態

貸借対照表(百万円)2025年6月末2026年6月末増減
現金及び預金6,1067,299+1,193
売掛金及び契約資産4,2964,699+402
機械及び装置(太陽光設備)19,58421,289+1,705
リース資産8,4238,264△159
総資産41,67444,294+2,620
有利子負債(借入+リース)27,39026,538△852
資産除去債務3,4034,240+838
純資産6,5928,532+1,940
自己資本比率15.8%19.3%+3.5pt
ネットD/Eレシオ3.2倍2.3倍

出典:決算短信。有利子負債は短期借入金+1年内返済予定の長期借入金+リース債務(流動・固定)+長期借入金(会社定義のNet Debtと同じ範囲)。2025年6月末の有利子負債は説明資料の短期・長期有利子負債の合計。ネットD/Eは筆者の概算。

この貸借対照表は上場前のものです。 公募増資の払込は7月28日、オーバーアロットメント分の払込は8月26日で、どちらも6月末の後です。上場後の姿を概算すると、純資産は手取金30.2億円が乗って115.6億円、自己資本比率は24%台、ネットD/Eレシオは1.4倍程度になります(筆者の試算。第5章で詳述)。証券サイトに出ている自己資本比率19.3%やPBRは、この上場前の数字で計算されています。

貸借対照表の隅で拾っておきたい数字が「資産除去債務」です。屋根に置いた設備は契約が終わったら撤去して原状回復する義務があり、その将来費用を見積もって負債に計上します。2026年6月期にこの見積りを見直し、6.0億円増やしました(損益への影響はなし)。残高42億円は総資産の9.6%、純資産の半分に当たります。設備を増やせば増やすほど膨らむ負債で、撤去費用の単価が上がれば見積りはさらに増えます。

2-5. キャッシュ・フロー

キャッシュ・フロー(百万円)2025年6月期2026年6月期
営業CF4,6344,451
投資CF△4,764△2,755
うち有形・無形固定資産の取得△4,899△2,983
財務CF2,422△490
うちセール・アンド・リースバック収入3,620645
現金同等物期末残高5,2146,421

出典:決算短信。

過去最高益なのに営業CFは前期より減っています(46.3億円→44.5億円)。売上債権と棚卸資産が増え、法人税の支払いが3.7億円から9.2億円に増えたためです。一方で設備投資が49億円から30億円に減ったので、営業CFから設備投資を引いた手残りは△2.7億円から+14.7億円へ改善しました(筆者の概算)。ただし、設備投資が減ったのは「自販機を自分で買う量を減らして、他社に買ってもらう量を増やした」からで、事業規模が縮んだわけではありません。この点は次の章で扱います。

用語メモ:セール・アンド・リースバック 自分で作った設備をいったんリース会社に売り、その設備を借り直して使い続ける取引です。設備は手元に残ったまま現金が入るので、実質的には借入の一種です。この会社は2025年6月期に36億円、2026年6月期に6.5億円をこの方法で調達しています。貸借対照表の「リース資産」83億円と「リース債務」78億円は、その積み上がりです。


3. 深掘り:「自販機を売る」と「自販機を持つ」で、儲け方はどう違うか

この決算で一番わかりにくく、一番大事なのは、GXソリューション事業の中身が3つのサービスに分かれていて、それぞれ儲け方も利益率も違うことです。会社は説明資料でサービス別の売上高と売上総利益を開示しているので、そこから「1MWあたり」「粗利率」で読み解きます。

3-1. サービス別の売上総利益率

GXソリューション事業の内訳(百万円)2025年6月期 売上同 粗利粗利率2026年6月期 売上同 粗利粗利率
PPAサービス及びその他(自社保有・ストック)3,8091,34935.4%4,1401,44534.9%
アライアンスソリューション(他社保有・フロー)3,6021,03328.7%7,7401,93725.0%
インテグレーションサービス(顧客保有・フロー)1,50885856.9%1,8331,04757.1%
GXソリューション事業計8,9203,24036.3%13,7134,42932.3%

出典:決算説明資料のサービス別数値を転記。粗利率は筆者の概算。検算:3サービスの粗利を足すと1,445+1,937+1,047=4,429百万円で、セグメント粗利4,429百万円と一致します。売上も4,140+7,740+1,833=13,713百万円で一致します。

読み方はこうです。

  • PPAサービス(自販機を自分で持つ):売上の3分の1が粗利として残る。ただし設備を持つので減価償却費と支払利息がこの後にかかる
  • アライアンスソリューション(自販機を作って他社に売る):粗利率25%。設備投資は不要で、完成時に一括で収益が立つ。2026年6月期は売上が2.1倍になり、GXソリューション事業の成長の大半をこれが担った
  • インテグレーションサービス(顧客が自販機を買い、設置や蓄電池の制御を請け負う):粗利率57%と最も高いが規模は小さい

GXソリューション事業全体の粗利率が36.3%から32.3%に4ポイント下がったのは、粗利率25%のアライアンスの比率が上がったためです。 各サービスの粗利率自体は大きく動いていません(会社もQ&Aで「サービスごとの粗利率に大きな変動は見込んでいない」としています)。これはミックスの問題であって、値引きや採算悪化の問題ではありません。

同じ理屈で、2027年6月期の会社予想は売上が20.5%増なのに営業利益が7.3%増にとどまります。全社の粗利率は27.4%から24.4%に、GXソリューション事業の粗利率は32.3%から28.8%に下がる計画です。アライアンスを伸ばせば伸ばすほど、売上は膨らみ、利益率は下がり、資本効率は上がる。 この三つは同じ現象の三つの側面です。

3-2. 1MWあたりで読む

アライアンスソリューションは2026年6月期に67MW(215件)を新規稼働させ、売上7,740百万円・粗利1,937百万円を計上しました。1MWあたりに直すと売上116百万円、粗利28.9百万円です(筆者の概算。前期は38MWで粗利27.2百万円/MW)。つまり、発電所を1MW作ってパートナーに渡すと、約1.2億円の売上と約2,900万円の粗利が一度に立つ商売です。

一方、自社で持っているPPA設備は、2026年6月末の帳簿価額(機械及び装置212.9億円+リース資産82.6億円)を累計容量263MWで割ると、1MWあたり約112百万円です(筆者の概算。時期の異なる設備の平均なので目安)。アライアンスの売却単価116百万円/MWと大きく違わないことから、「自社で持てば20年かけて回収する資産を、アライアンスなら完成時に原価の2〜3割増しで現金化している」と読めます。

ストックとフローの違いを例えで言えば、自販機を自分で置けば毎月の売上が20年続きますが、機械代は借金で先に払います。自販機をリース会社に売れば、今年の利益は大きく出ますが来年は同じ量をまた作らないと利益が続きません。会社が「新規稼働の7割以上をアライアンスにする」と言っている以上、この会社の利益は今後、毎年の開発量(何MW完成させたか)にこれまで以上に左右されることになります。そのフローを追うKPIが、契約済容量(開発待ちの案件)です。

3-3. 契約済容量というパイプライン

KPI2025年6月末2026年6月末増減
オンサイトPPA累計稼働容量300MW387MW+87MW
うちPPAサービス(自社)243MW263MW+20MW
うちアライアンス(他社)57MW123MW+66MW
契約済容量(着工前のパイプライン)178MW239MW+34%
契約済案件数396件468件+72件

出典:決算説明資料、会社Q&A(8月21日)、上場申請書類のKPI表。アライアンスの2026年6月末は説明資料の図から筆者が読み取ったもので、当期新規67MWとの差1MWは四捨五入と見ています。

契約済容量239MWは、稼働済み387MWの6割に相当する「作る約束はできているが、まだ完成していない」案件です。2026年6月期の新規稼働が87MWだったので、単純計算では2年半分以上の開発量が手元にあります。ただし会社は「契約後に設置環境の不適合などで開発が止まる案件が一定数ある」と注記しており、239MWがそのまま売上になるわけではありません。

3-4. 電力小売は「売れ残りの卸売部門」

エナジートレーディング事業は、売上が14%減っても粗利は2,818百万円から2,616百万円への7%減で済み、粗利率はむしろ19.8%から21.4%に上がりました。2023年4月に「調整項」という仕組みを入れ、卸電力市場(JEPX)から買う分の価格変動を顧客への販売単価に連動させたため、市場価格が上がっても逆ザヤになりにくくなっています。2026年6月期のJEPX平均は12.25円/kWhと前期並みでしたが、第4四半期は中東情勢で上昇傾向にあったと短信は書いています。

自販機の例えでいえば、この部門は「各店で売れ残った飲料を集めて、別の店に卸す部門」です。屋根の上の発電所が増えるほど、市場から仕入れる電気が減り、自前の余剰電力の比率が上がります。会社は、余剰電力を昼間固定単価で20年供給する「循環型電力」を2025年7月に始め、2027年6月期はこの事業の売上を15.9%増の141.8億円と見ています。ただし、粗利は2,623百万円と前期並みの計画です。売上の増加は燃料価格の上昇見込みによるもので、儲けが増える計画ではない点は押さえておきたいところです。


4. 上場後のイベントと事業トピック

4-1. 東急不動産との第2弾アライアンス(8月7日)

東急不動産が「TLC VPP2合同会社」を設立し、100億円規模で出資しました。第1弾(2023年11月設立)は100MW規模に到達見込みです。アライアンスの組成は第4弾まで累計で約400億円規模(2023年2月〜2025年10月)に達し、会社は「2028年初め頃までの開発に相当」としています。

ここで弱気側の論点も拾っておきます。上場申請書類のリスク項目によれば、**TLC VPP合同会社1社への売上が2026年6月期第3四半期累計で21.6%**を占めています(2025年6月期は13.7%)。通期の比率は有価証券報告書で確認する必要がありますが、アライアンスの比率が上がるほど、特定の「自販機を買ってくれる相手」への依存が上がります。第2弾の設立は、その相手が今後も買い続けるという意味では好材料ですが、依存度の解消ではありません。

4-2. その他

  • 8月14日:オンサイトPPAの開発実績が47都道府県すべてに到達(北海道が最後)
  • 8月17日:JA全農ラドファが初のオンサイトPPAを導入(アライアンス先のサーキュラーグリーンエナジー合同会社と連携)
  • 7月29日(上場当日):前日に発生した熊本地震について「当社が関与する発電設備に重大な被害は確認されていない」と開示
  • 8月31日:既存コミットメントライン(総額30億円、7行)から20億円を借入。運転資金目的。この契約には「純資産を前期末または2023年6月期末の75%以上に維持」「経常損失を計上しない」という財務制限条項が付いています
  • 9月2日:定款変更を株主総会に付議。取締役の任期を2年から1年に短縮し、剰余金の配当を取締役会決議で決められるようにする内容です(配当を始めるという意味ではありません。第5章参照)
  • 9月24日(木):第23期定時株主総会

5. 資本政策・株主還元

この会社に株主優待はなく、配当もありません。その代わり、上場に伴う株数・株主構成の変化と、借金の使い方が、株価と1株あたり価値に直接効きます。このセクションは「還元」ではなく**「希薄化と需給の管理情報」**として読んでください。

5-1. 配当方針と権利確定日

  • 創業以来無配。会社は「当面も引き続き配当は行わないことを基本方針」とし、「配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定」と有価証券届出書・招集通知に書いています
  • 2027年6月期の予想配当も0円です
  • 基準日は毎年6月30日(期末)と12月31日(中間)。2027年6月30日は水曜日なので、**権利付き最終日は2027年6月28日(月曜日)**になります(筆者の計算。祝日・休業日次第で変わります)。無配なので、この日に意味があるのは株主総会の議決権だけです
  • 9月24日の株主総会で、配当の決定機関を株主総会から取締役会に移す定款変更が諮られます。会社はこれを「機動的な資本政策及び配当政策を図るため」と説明しています。機動的に配当できる仕組みを先に作ったという読みも、上場会社の標準的な定款に揃えただけという読みもできます

5-2. IPOの時系列

日付出来事数字
2021年11月16日伊藤忠商事がA種優先株式を引き受け、20%超の株主(その他の関係会社)に1株200万円(分割後換算400円)
2023年7月28日B種優先株式を第三者割当(THE FUND、伊藤忠、東急不動産、ES&Gパートナーズほか)1株220万円(分割後換算440円)
2025年1月6日A種・B種優先株式をすべて普通株式に転換し消却
2025年1月10日1株を5,000株に分割発行済31,985,000株
2025年1月新株予約権の行使125,000株増、発行済32,110,000株
2026年6月25日上場承認、有価証券届出書提出想定価格710円
2026年7月10日仮条件決定740〜770円
2026年7月17日公開価格決定770円
2026年7月28日公募2,689,000株の払込引受価額708.40円、手取19.0億円
2026年7月29日東証グロース上場。売出8,051,500株(うち海外2,044,000株)、OA売出1,611,000株初値953円(公募比+23.8%)
2026年8月3日上場来安値670円(公募比△13.0%)
2026年8月14日通期決算発表当日終値851円
2026年8月21日OAに伴う第三者割当の結果1,581,000株発行、30,000株失権
2026年8月26日同払込手取11.2億円、発行済36,380,000株
2027年1月24日または25日ロックアップ180日の満了(数え方で1日ずれる)

出典:上場申請書類、有価証券届出書、決算短信の後発事象、第三者割当増資の結果に関するお知らせ、Yahoo!ファイナンスの株価時系列。売出人の内訳はIPO情報サイトの記載で、目論見書原文での確認を推奨します。

5-3. ダウンラウンドではなく、アップラウンド

上場前の最後の資金調達は2023年7月のB種優先株式で、分割後換算で1株440円でした。公募価格770円はその1.75倍です。直前の第三者割当より安く上場する「ダウンラウンド」ではありません。なお、2023年11月に発行した第8回新株予約権の行使価額は400円で、B種優先株式の価格をやや下回る水準に設定されています。

5-4. オーバーアロットメントの帰結:30,000株の失権が示すもの

用語メモ:オーバーアロットメント(OA)とシンジケートカバー取引 主幹事証券(野村證券)が、公募・売出とは別に、大株主(この会社では伊藤忠商事)から株を借りて追加で売る仕組みです。借りた株は後で返さなければならず、返し方は2通りあります。株価が公募価格を上回っていれば、会社が新株を発行して主幹事に渡し、それを貸主に返します(第三者割当増資)。株価が公募価格を下回っていれば、主幹事は市場で買い戻して返します(シンジケートカバー取引)。この場合、新株は発行されません。

この会社ではOA1,611,000株のうち1,581,000株が新株として発行され、30,000株が失権しました。失権分は、主幹事が市場で買い戻して伊藤忠商事に返した分と解釈できます。つまり、上場後のどこかで株価が公募価格770円を下回り、主幹事が買い支えに入った痕跡です。実際、8月3日に670円の安値をつけています。

同時に、30,000株分の新株発行が回避されたので、希薄化はその分だけ小さくなりました。「失権」は会社にとって悪い言葉に聞こえますが、株数の観点では既存株主に有利な結果です。

5-5. 株数の推移と、3種類のEPS

時点発行済株式数増減の内訳
2026年6月末(上場前)32,110,000株
2026年7月28日(公募払込後)34,799,000株+2,689,000株(公募)
2026年8月26日(OA払込後、現在)36,380,000株+1,581,000株(OA第三者割当)
潜在株式を含めた場合40,770,000株+4,390,000株(新株予約権)

検算:32,110,000+2,689,000=34,799,000(第三者割当増資の結果のお知らせに記載の「現在の発行済株式総数」と一致)。34,799,000+1,581,000=36,380,000(同「増資後発行済株式総数」と一致)。自己株式はありません。

公募による希薄化率は2,689,000÷32,110,000=8.4%、OAを含めると13.3%です。上場後株数に対する公募+OA株の比率は11.7%になります。

ここからが「見え方が誤解を生む数字」の本丸です。会社が開示する2027年6月期の予想EPS61.88円は、公募株を払込日から日割りした「予定期中平均株数」約3,459万株で純利益21.4億円を割ったものです。上場後の実際の株数36,380,000株で割ると58.8円になります。さらに新株予約権4,390,000株がすべて行使されたと仮定すると52.5円です。

EPSの種類2026年6月期2027年6月期予想分母
会社開示(期中平均株数ベース)60.42円61.88円32,110,000株/約34,583,000株
実株数ベース(筆者の概算)53.3円58.8円36,380,000株
完全希薄化後(筆者の概算)47.6円52.5円40,770,000株

検算:21.4億円÷61.88円=34,583,064株。公募2,689,000株を払込翌日から期末までの337日で日割りすると2,482,721株で、32,110,000株に足すと34,592,721株。会社の分母とほぼ一致します(OA分は会社の注記どおり含まれていません)。

同じ株価で、PERは次のように変わります(9月4日終値1,145円)。

株価会社EPS61.88円実株数EPS58.8円完全希薄化EPS52.5円
770円(公募価格)12.4倍13.1倍14.7倍
953円(初値)15.4倍16.2倍18.2倍
1,145円(9月4日終値)18.5倍19.5倍21.8倍

証券サイトのPERはこのいずれとも一致しない値(9月4日時点で17.18倍と表示)になっており、分母の取り方が異なるようです。来期以降に1株が受け取れる利益の目安は、実株数ベース(58.8円)と考えるのが筆者の見解ですが、新株予約権の行使価額が60円・400円と株価を大きく下回るため、完全希薄化後の数字も現実味があります(次項)。

5-6. 新株予約権:行使価額60円が上場後株数の12%分ある

回次株数行使価額行使期間主な保有者
第6回2,000,000株60円2020年10月〜2029年10月30日取締役2名(本多会長1,250,000株を含む)、従業員1名
第7回1,145,000株60円同上コタエル信託(時価発行新株予約権信託。将来の役職員に分配)
第8回1,245,000株400円2025年11月〜2033年10月13日取締役4名、従業員12名
合計4,390,000株上場前株数の13.7%、上場後株数の12.1%

出典:招集通知、上場申請書類。本多会長の保有数はIPO情報サイトの記載(原文要確認)。

検算:2,000,000+1,145,000+1,245,000=4,390,000株。個数は40,000個(1個50株)+22,900個(同)+249個(1個5,000株)=63,149個で、短信の「新株予約権3種類63,149個」と一致します。

行使条件はいずれも満たされている(第6・7回は「2024年6月期までに営業利益3.3億円超」が条件で、2023年6月期に達成済み)ため、すべて行使可能な状態です。ただし、第7回の信託分については「ロックアップ期間中は役職員を受益者として指定しない」と申請書類に記載があり、ロックアップ解除まで分配されません。行使価額60円の権利を持つ人にとって、株価1,145円は行使すれば1株あたり1,085円の含み益です。ロックアップ解除後に行使と売却が進めば、需給の重しになり得ます。

5-7. 上場後の1株あたり純資産と自己資本比率(筆者の試算)

項目上場前(2026年6月末実績)上場後(筆者の概算)
純資産(百万円)8,53211,557
発行済株式数32,110,000株36,380,000株
1株あたり純資産(BPS)265.71円317.7円
PBR(1,145円)4.31倍3.60倍
自己資本比率19.3%24.4%
ネットD/Eレシオ2.3倍1.4倍

概算の前提:手取金は引受価額708.40円×(2,689,000+1,581,000株)=30.2億円(決算短信の払込金額の総額と割当価格の総額の合計)。純資産と総資産に同額を加算し、有利子負債は不変とした。証券サイトのPBR4.31倍は上場前のBPSで計算されています。

会社が目安とするネットD/Eレシオ4.0倍まで借りるとすると、上場後の純資産115.6億円の4倍は462億円で、現在のネット有利子負債162億円との差は約300億円です(筆者の概算)。上場で得た30億円は「借金を減らすため」ではなく「さらに借りるための頭金」として使われると読むのが、会社の説明資料(「適切な財務規律を維持しつつ借入資金を活かし自社保有の発電設備を積み上げ」)と整合します。資金使途も「PPAサービスに係る設備投資及び新規商材のシステム開発資金」で、借入返済は含まれていません。設備の新設計画では、2026年6月〜2028年6月に59.5億円(増資資金・自己資金・借入金)、システム開発に8.9億円を予定しています。

5-8. 借金の中身と財務制限条項

有利子負債265億円の返済スケジュールは、1年以内27億円、2〜5年で95億円、5年超で144億円です(招集通知の注記)。主な借入先はみずほ銀行147億円(うちシンジケートローン146億円)、三菱UFJ銀行24億円で、長期借入金184億円のうち148億円には預金12.9億円と売掛金1.7億円が担保に入っています。

金融機関との契約には財務制限条項が9本ついています。共通するのは「純資産を前期末(または基準年度)の75%以上に維持」「経常損失を出さない」「PPA事業のDSCR(元利金支払前キャッシュフロー÷元利金支払額)1.2〜1.25以上」です。会社は「2022年6月期に経常黒字維持の条項に抵触した事例があるが、金融機関から弁済は求められなかった」と申請書類に書いています。現在の純資産85億円に対し、75%ラインは64億円です。経常利益28.7億円の会社が1年で純資産を21億円減らす事態は考えにくいものの、この会社の借入は「黒字を出し続けること」を条件に成り立っていることは押さえておきたい点です。

5-9. 大株主とロックアップ

株主上場前(2026年6月末)売出上場後の概算ロックアップ
伊藤忠商事7,940,000株(24.73%)なし(OAの貸株人)21.8%180日
THE FUND投資事業有限責任組合4,775,000株(14.87%)なし13.1%180日
ES&Gパートナーズ投資事業有限責任組合2,900,000株(9.03%)なし8.0%180日
関西電力2,600,000株(8.10%)全株0%
シグマクシス・ホールディングス1,750,000株(5.45%)全株0%
芙蓉総合リース1,500,000株(4.67%)550,000株2.6%180日
JA三井リース1,355,000株(4.22%)406,500株2.6%180日
東急不動産1,075,000株(3.35%)なし3.0%180日
本多聰介(取締役会長・創業者)60,000株(0.19%)60,000株0%(新株予約権1,250,000株は別)180日

出典:上場前は招集通知の大株主表(2026年6月30日現在)。売出とロックアップはIPO情報サイトの目論見書要約(報道ベース、原文要確認)。上場後は上場後株数36,380,000株で筆者が概算。正式な大株主表は9月18日提出予定の有価証券報告書まで出ません。

読み取れることを整理します。

  • 上位株主の売出合計は5,366,500株で、売出総数8,051,500株との差2,685,000株は上位10名以外の株主が売ったものです(筆者の差し引き)。上場申請書類の株主数は65名で、片山晃氏・山口貴弘氏(各750,000株)など個人株主もいます
  • 関西電力とシグマクシスは全株を売却し、株主から外れました
  • VC2社(THE FUND、ES&Gパートナーズ)は1株も売らず、上場後も合計21.1%を持っています。 2021年と2023年に1株400〜440円で引き受けた株で、ロックアップが明けた後に売却が始まる可能性はリスクとして申請書類にも記載があります
  • 伊藤忠商事は21.8%で、3分の1(特別決議の拒否権ライン)には約419万株足りません。ただし、社外取締役1名が伊藤忠出身で、電力の仕入・販売や資材調達で取引関係があり(2026年6月期の関係会社からの仕入高4.5億円)、申請書類は伊藤忠を「筆頭株主であり事業上の重要なパートナー」と位置づけています
  • 創業者の本多会長は、直接保有株を上場時にすべて売却した一方で、行使価額60円の新株予約権1,250,000株を持っています(IPO情報サイトの記載。原文要確認)
  • ロックアップ対象と見られる上位株主の保有は概算で18,588,500株(51.1%)、公募・売出・OAで市場に出た株は12,321,500株(33.9%)、残り5,470,000株(15.0%)はその他の株主でロックアップの有無は原文で確認が必要です

ロックアップは上場後180日で、上場日を1日目と数えれば2027年1月24日(日曜日)、上場日の翌日から数えれば1月25日(月曜日)に明けます。主幹事の裁量で早期に解除できる条項が一般的に付いており、また第7回新株予約権の信託分の分配もこの時期に動き出すので、2027年1月下旬は需給の節目になります。

5-10. その他

  • 自己株式:保有なし。取得の発表もありません
  • 保有有価証券:投資有価証券は非上場株式1銘柄14.9百万円、出資金50.5百万円。含み益の論点にはなりません
  • 株式分割・併合:2025年1月の1:5,000分割のみで、上場後の分割・併合はありません。過去のEPS・BPSはすべて分割後に換算済みで、追加の調整は不要です
  • 株主優待:制度なし(会社IRのFAQに「株主優待は実施しておりません」と明記)

6. 株価の見方

6-1. 事実

  • 公開価格770円、初値953円(7月29日)。上場日の終値は初値を下回りました(報道ベース)
  • 8月3日に上場来安値670円(公募比△13.0%)
  • 決算発表当日(8月14日、15時30分発表)の終値は851円。翌営業日8月17日は始値791円、安値745円、終値817円
  • 8月28日以降に上昇し、9月4日は始値1,329円、高値1,449円、安値1,124円、終値1,145円。出来高14,284,700株は発行済株式数の39.3%に相当します
  • 9月4日について会社の適時開示はなく、筆者が確認した範囲で報道上の材料も特定できていません。日中の値幅(1,124〜1,449円)と出来高から見て需給主導の値動きと考えられますが、解釈は読者にお任せします
  • 9月4日終値1,145円の時価総額は約417億円(上場後株数ベース、筆者の概算)

6-2. 強気に読む材料

  • 上場直後の初決算で計画を全段階で上回り、翌期の計画(純利益+10.3%)は「上振れ後の実績が分母」なので見かけより保守的。上場時計画との比較では純利益+24.2%相当。会社自身がQ&Aで「保守的という評価をいただく可能性は承知している」と述べている
  • 契約済容量239MWは年間開発量87MWの2年半分。自販機を置く場所の予約は積み上がっている
  • アライアンスの組成が累計約400億円規模で、東急不動産の第2弾100億円も設立済み。他社の資金で自社の技術(余剰電力循環)を使った発電所を増やせる
  • 上場で純資産が3割増え、ネットD/Eが1.4倍程度まで下がったので、借入余力が広がった
  • 4年連続のオンサイトPPA国内シェア1位(富士経済調査、14.0%)。太陽光の主力がメガソーラーから屋根上に移る政策の流れ(改正省エネ法による屋根設置目標の策定義務化など)は追い風
  • 直前の私募価格440円に対して公募770円のアップラウンドで、初期投資家の含み益は大きいが、VC2社が売り急いでいない

6-3. 弱気に読む材料

  • 自販機を借金で買い続けてきた構造は変わらず、会社はネットD/E4.0倍まで借りる方針。金利が1%上がると新規借入分のコストは上がり、既存分もスワップやリースの更新時に効いてくる。支払利息6.7億円は営業利益の19%、純資産の8%
  • 成長の主役アライアンスは粗利率25%の売り切り商売で、フロー比率が上がるほど「来年も同じ量を作らないと利益が続かない」構造になる。しかも販売先はTLC VPP合同会社1社で売上の2割超
  • 20年固定単価の売電契約は、物価と金利が上がる局面では固定収入の実質価値が目減りする(申請書類のリスク項目)。撤去費用(資産除去債務42億円)は逆に見積りが増える方向
  • 行使価額60円・400円の新株予約権439万株(上場後株数の12%)と、VC2社の21%が、ロックアップ解除(2027年1月下旬)後に売り圧力になり得る
  • 第4四半期の税負担率39.7%の理由が未確認。来期の税率次第で純利益の着地が上下する
  • 9月4日の出来高が発行済の4割に達する需給主導の値動きの後で、株価の水準が事業の実力を反映しているかは判断が難しい。PERは分母の株数次第で18.5倍〜21.8倍と幅がある
  • 上場承認から決算まで、電力小売の縮小、伊藤忠への一部依存、財務制限条項の抵触歴(2022年6月期)といった開示は申請書類に載っており、「知られていないリスク」ではないが、上場直後で市場の評価が固まっていない

6-4. 筆者の見解

数字を整理した上での感想としては、「事業の中身」より「株数と借金の読み方」で評価が割れる銘柄だと感じます。EPS61.88円をそのまま使う人と、完全希薄化後52.5円を使う人では、同じ株価でPERが2割違います。ネットD/E1.4倍を「健全化した」と読む人と、「4倍まで借りる宣言の途中」と読む人でも見え方は変わります。どちらが正しいかは決められませんが、どちらの数字で見ているかを自覚した上で判断することが、この銘柄では特に大事だと考えます。


7. 今後のカレンダーと見るべきKPI

日付出来事確認したいこと
2026年9月18日(金)有価証券報告書の提出予定正式な大株主表(上場後)、税効果注記(第4四半期の税率)、TLC VPP合同会社への通期の売上比率、ロックアップ対象の詳細
2026年9月24日(木)定時株主総会定款変更(取締役任期1年、配当の決定機関)の可決
2026年11月中旬(推定)第1四半期決算(7〜9月)GXソリューション事業の閑散期。前年同期の四半期数値が初めて比較可能になる(2025年7〜9月の数値は開示されていないため、会社が出すかどうか要確認)
2027年1月24日または25日ロックアップ180日の満了VC2社・伊藤忠・リース2社・東急不動産の動き。第7回新株予約権の信託分の分配開始
2027年2月中旬(推定)中間決算(7〜12月)通期予想の修正有無
2027年6月28日(月)権利付き最終日(無配なので議決権のみ)
2027年8月中旬(推定)2027年6月期通期決算上場後初の「前年比較ができる」本決算

見るべきKPIは、会社が申請書類で「経営上の目標の達成状況を判断する指標」として挙げている6つです。

  1. オンサイトPPA累計開発容量・件数(2026年6月末:387MW・1,497件)
  2. 契約済容量・案件数(同239MW・468件)——アライアンスの比率が上がるほど、この先行指標の重みが増します
  3. GXソリューション事業のフロー収益(アライアンスとインテグレーションの導入時粗利。2026年6月期は1,937+1,047=2,984百万円)
  4. 電力販売量(4.1億kWh)——循環型電力で反転するか
  5. 売上総利益(7,046百万円)
  6. EBITDA(5,748百万円)

これに筆者としては、ネットD/Eレシオ(会社目安4.0倍に対してどこまで使うか)と、TLC VPP合同会社への売上依存度を加えて見たいところです。


8. 3行まとめ

  • 上場後初の通期決算は、売上256億円・純利益19.4億円で上場時計画を全段階で上回った。成長の主役は、発電所を作ってパートナーに売る「アライアンス」で、利益率は下がるが資本効率は上がる商売
  • 上場前の貸借対照表で見た自己資本比率19.3%・PBR4.3倍は、上場後の概算では24%・3.6倍。会社EPS61.88円は実株数では58.8円、新株予約権をすべて数えると52.5円で、どの分母を使うかでPERは18.5〜21.8倍と幅がある
  • 借金で発電所を増やす構造は上場後も変わらず、会社はネットD/E4.0倍を目安に借入を続ける方針。2027年1月下旬のロックアップ解除と、行使価額60円の新株予約権が需給の節目

免責事項

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではなく、投資助言でもありません。記載した数値は、2026年6月期決算短信(2026年8月14日)、上場に伴う決算情報等のお知らせ(7月29日)、決算説明資料(8月14日)、決算説明会の書き起こし公開及びよくある質問と回答(8月21日)、第三者割当増資の結果に関するお知らせ(8月21日)、第23期定時株主総会招集通知(9月3日)、財務上の特約が付された借入の実施について(8月28日)、新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部、6月25日)、会社IRサイトのFAQ、および報道・IPO情報サイトに基づきます。「筆者の概算」「筆者の試算」「筆者の差し引き」と記した数値は会社開示ではなく筆者の計算です。株価・時価総額・PER・PBRは2026年9月4日終値時点のもので、公開時点では変動している可能性があります。決算説明会の書き起こし(ログミーファイナンス)の質疑応答部分は会員限定のため筆者は読んでおらず、質疑の内容は会社が別途開示したQ&Aに基づいています。売出人の内訳・ロックアップの対象者・本多会長の保有株数は目論見書の要約サイトの記載であり、原文(有価証券届出書・目論見書)での確認を推奨します。上場申請書類の「第四部 株式公開情報」は本記事の執筆時点で原文を確認できていません。本記事で踏み込まなかった論点として、有価証券報告書(9月18日提出予定)で確認すべき事項——上場後の正式な大株主表、第4四半期の税負担率の要因、TLC VPP合同会社への通期の売上依存度、ロックアップの正確な対象と裁量解除条項、関連当事者取引の詳細——があります。株主優待がないことは会社IRサイトのFAQでの会社の明言に基づきます。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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