本記事は2026年9月5日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事でわかること
- レシピ動画「デリッシュキッチン」のエブリーが、2026年6月期に売上50億円・営業利益3.2億円で初の通期黒字を達成したこと
- 純利益4.2億円が経常利益3.2億円より大きい理由(繰延税金資産)と、その1回きりの性質
- 決算短信の1株利益42円が「上場後の株数」で計算すると19.6円になる理由と、2027年6月期予想EPSが「46.6%減」に見える正体
- 2027年6月期の純利益予想にかかっている税率が5.5%しかないこと、その前提が変わるとPERがどう動くか
- 営業利益の4分の3が上半期に集中し、4〜6月期はほぼゼロという季節性
- 上場前の私募価格から約8割安で上場した経緯、株数の推移、ロックアップ解除日、ストックオプションの行使開始日
- 9月4日にストップ高した株価が、公募価格の1.5倍(345円)というロックアップ解除条件とどう関係するか
- 株主優待・配当がない会社で、株主が「還元」の代わりに見るべき数字
1. 前提知識:エブリーはどんな会社か
1-1. 軸となる例え:スーパーの「試食販売員」の仕事を、動画とモニターとデータで引き受ける会社
スーパーの売り場で、エプロンをつけた販売員が小さな紙皿で新商品を配っている光景を、誰でも見たことがあると思います。あの人件費を出しているのはスーパーではなく、多くの場合メーカーです。メーカーは「棚に置いてもらう」だけでは商品が動かないことを知っているので、売り場で使い方を見せ、味を試させ、その場で買ってもらうために販促費を使います。
エブリーは、この**「メーカーの販促費で、売り場と家庭の台所の両方に商品を届ける仕事」を、人ではなく仕組みで引き受けている会社**です。家庭側には月間3,100万人が見るレシピ動画メディア「デリッシュキッチン」があり、売り場側には全国11,000台超の店頭デジタルサイネージ(動画モニター)があります。メーカーはエブリーに広告費を払い、「鍋の素を使ったレシピ動画」がアプリとSNSで流れ、同じ動画が店頭のモニターでも流れ、その商品の棚が連動して作られる。そして小売や食品卸から得たPOSデータで「放映した店舗の売上は放映しなかった店舗より31%多かった」と効果を数字で返す。試食販売員が一番苦手だった「本当に売れたのか」の証明を、データで肩代わりするのがこの会社の売り物です。
この例えは、後で出てくる弱みの説明にもそのまま使います。試食販売員の仕事はメーカーの販促予算が減れば真っ先に削られる仕事であり、年末商戦に集中する仕事であり、売り場そのものは他人(小売・卸)のものです。エブリーの決算の凸凹は、ほぼこの3点で説明できます。
1-2. 事業構造
| 区分 | 顧客 | 中身 | 2026年6月期売上(百万円) | 前期比 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|---|
| Marketing Solutionビジネス(主力) | 食品・飲料メーカー、小売 | タイアップ動画広告、ディスプレイ広告、店頭サイネージ広告(ストアビジョン)、小売DX支援「retail HUB」 | 4,032 | +28.2% | 80.2% |
| Consumerビジネス | 一般ユーザー | アプリの有料会員(月額480円)、冷凍弁当のEC | 479 | +10.0% | 9.5% |
| その他ビジネス | KDDIグループが中心 | ライブコマース機能の保守・運用、番組・動画の受託制作 | 513 | △23.4% | 10.2% |
| 株主優待 | — | **制度なし。**会社は8月24日開示のQ&Aで「配当の実施だけではなく、株主優待制度の導入等も含め、様々な観点から株主還元の実施を今後検討」と明言 | — | — | — |
出典:決算説明資料(2026年8月12日)、有価証券届出書。単一セグメントのため、会社は「セグメント」ではなく「ビジネス区分」として開示しています。区分の合計5,024百万円と売上高5,025百万円の差は切捨ての誤差です。
会社が経営上の最重要指標に置いているのは、Marketing Solutionの売上高と、それを構成する「顧客社数×顧客単価」、とくに年間取引額1,000万円以上の「ロイヤル顧客」の社数です。ロイヤル顧客は2024年6月期42社→2025年6月期62社→2026年6月期80社(+29.0%)と増え、顧客社数全体は564→588→635社、1社あたりの顧客単価は4.0→5.3→6.3百万円(+18.7%)です。主力売上4,032百万円のうちロイヤル顧客経由が3,270百万円(81%、前期比+37.8%)を占めます。つまりこの会社の成長は「新しい客を増やす」より「同じ客から預かる予算を増やす」型です。
1-3. 業績の推移(上場までの5期+今期)
| 決算期 | 売上高(百万円) | 経常損益(百万円) | 純損益(百万円) | 純資産(百万円) | 自己資本比率 | 営業CF(百万円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年6月期 | 2,425 | △1,004 | △1,057 | 242 | 20.4% | — |
| 2023年6月期 | 2,580 | △544 | △555 | 2,092 | 71.0% | — |
| 2024年6月期 | 3,360 | △644 | △771 | 1,321 | 53.4% | △587 |
| 2025年6月期 | 4,251 | △30 | △33 | 1,288 | 52.7% | △82 |
| 2026年6月期 | 5,025 | 318 | 424 | 1,711 | 65.0% | 292 |
出典:2022〜2025年6月期は有価証券届出書、2026年6月期は決算短信(2026年8月12日発表)および株探の財務データ(XBRLベース)。配当は全期間で無配、株式分割の実績はありません(調整不要)。
売上は4年で2倍になった一方、赤字は10億円→5億円→6億円→ほぼゼロ→黒字と、2023年6月期に一段減り、2025年6月期にもう一段減っています。2023年6月期に純資産が急増しているのはE種優先株式による資金調達(後述するダウンラウンドの起点)で、事業で稼いだお金ではありません。
1-4. 会社が示している目標
中期経営計画は公表されていません。代わりに上場時の「事業計画及び成長可能性に関する事項」で**「早期に時価総額100億円以上へ」**という目標を掲げています。上場後の発行済株式数21,611,208株で割ると1株463円に相当し、9月4日終値317円からは+46%の水準です(筆者の概算)。また2027年6月期の会社予想では、主力のMarketing Solutionを31.6%増収させる計画です(8月24日開示のQ&Aより)。
2. 決算ハイライト(2026年6月期・2026年8月12日発表)
2-1. 通期損益
| 項目(百万円) | 2025年6月期 | 2026年6月期 | 増減 | 上場時予想(8月4日) | 予想比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,251 | 5,025 | +18.2% | 5,016 | +0.2% |
| 営業利益 | △24 | 324 | 黒字転換 | 345 | △6.1% |
| 経常利益 | △30 | 318 | 黒字転換 | 335 | △5.1% |
| 当期純利益 | △33 | 424 | 黒字転換 | 331 | +28.1% |
| 1株当たり純利益(短信) | △6.55円 | 42.02円 | — | 16.9円 | 2.5倍 |
| 売上総利益 | 2,658 | 3,057 | +15.0% | 3,088 | △1.0% |
| 売上総利益率 | 62.5% | 60.8% | △1.7pt | 61.6% | — |
| 販管費 | 2,682 | 2,732 | +1.9% | — | — |
| 営業利益率 | △0.6% | 6.5% | — | 6.9% | — |
この表のポイントは3つです。売上は上場時予想どおりなのに営業利益が6%下振れたのは、粗利率が予想61.6%に対し60.8%と低かったためで、会社は「粗利率の異なるソリューション間の収益計上の入り繰りによる原価の上振れ」と説明しています(販管費は予想どおりに抑えられています)。次に、経常利益が営業利益より6百万円小さいのは営業外費用に上場関連費用9百万円が入ったためです。そして純利益だけが予想を28%上回り、経常利益より105百万円大きいこと。通常は税金を引く分だけ純利益のほうが小さくなります。この逆転の理由は次の章で分解します。
2-2. 四半期ごとの推移
決算説明資料に四半期別の売上(区分別)と営業利益が載っています。
| 2026年6月期 | 売上高 | うちMarketing Solution | うちConsumer | うちその他 | 営業利益 | 営業利益率 | 売上の前年同期比 | その他の前年同期比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1四半期(7〜9月) | 1,155 | 852 | 115 | 188 | 36 | 3.1% | +27.8% | +18.2% |
| 第2四半期(10〜12月) | 1,441 | 1,166 | 117 | 157 | 207 | 14.4% | +26.1% | +1.3% |
| 第3四半期(1〜3月) | 1,233 | 1,001 | 117 | 114 | 79 | 6.4% | +11.6% | △37.0% |
| 第4四半期(4〜6月) | 1,194 | 1,012 | 129 | 53 | 1 | 0.1% | +8.8% | △69.4% |
| 通期 | 5,025 | 4,032 | 479 | 513 | 324 | 6.5% | +18.2% | △23.4% |
単位:百万円。前年同期比は筆者が説明資料の前年四半期の数値から算出。区分の合計が売上高と1百万円ずれる四半期があるのは切捨ての誤差です。
経常利益と純利益は四半期別の開示がないため、上半期・3Q累計・通期からの筆者の差し引きです。
| 期間 | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) |
|---|---|---|
| 上半期(7〜12月) | 246 | 244 |
| 第3四半期(1〜3月) | 78 | 77 |
| 第4四半期(4〜6月) | △6 | 104 |
この2つの表のポイントは3つです。第一に、営業利益324百万円のうち207百万円(64%)が10〜12月期で、4〜6月期は1百万円。売上は四半期ごとに2割しか違わないのに、利益は20倍違います。第二に、主力のMarketing Solutionは4四半期を通じて前年同期比+22〜34%で伸びている一方、**その他ビジネスは下期に前年の半分以下(3Q△37%、4Q△69%)**に落ちており、全社売上の伸びが1Qの+28%から4Qの+9%まで減速して見えるのはその他ビジネスの縮小が理由です。第三に、4〜6月期は経常赤字なのに純利益104百万円で、ここに今回の決算の「読みにくさ」が全部詰まっています。
用語メモ:季節性 会社の説明(届出書・8月24日Q&A)によれば、食品・飲料メーカーの広告出稿は年末(10〜12月)と年度末(1〜3月)に集中し、第2四半期の営業利益が四半期で最大になります。試食販売員の仕事が年末に集中するのと同じで、これは業界の構造です。4〜6月期には新卒入社による人件費増と上場関連費用も重なりました。「4〜6月期を4倍しても意味がない」典型例で、この会社の四半期決算は前年同期比でしか読めません。ただし今期(2027年6月期)は上場初年度で、四半期ごとの前年同期の数値が届出書にある上半期・3Q累計しか存在しない点に注意が必要です。
2-3. 財政状態とキャッシュ・フロー
| 項目(百万円) | 2025年6月末 | 2026年6月末 | 上場後の概算(筆者) |
|---|---|---|---|
| 総資産 | 2,446 | 2,635 | 約3,054 |
| 純資産 | 1,288 | 1,711 | 約2,130 |
| 自己資本比率 | 52.7% | 65.0% | 約70% |
| 現金及び現金同等物 | 1,741 | 1,823 | 約2,242 |
| 有利子負債(借入金+リース債務) | 508 | 305 | 305 |
| 営業CF | △82 | 292 | — |
| 投資CF | △39 | 0 | — |
| 財務CF | △33 | △209 | — |
出典:決算短信。有利子負債は長期借入金300百万円(前期末は1年内返済分201.7百万円を含む501.7百万円)とリース債務の合計です。上場後の概算は、6月末の数値に公募(1,105,300株)と第三者割当(873,100株)の引受価額211.60円ベースの払込額419百万円を単純に足したもので、発行費用は控除していません。
ポイントは3つです。第一に、**営業CFが初めてプラス(292百万円)**になり、純利益424百万円より小さいのは、純利益に含まれる繰延税金資産の計上分(現金を伴わない利益)が除かれるためです。営業CFの出発点は税引前利益318.8百万円で、売掛金の増加△27百万円と未払消費税・預り金の減少△36百万円を減価償却等が相殺し、ほぼ税引前利益どおりの現金が残っています。投資CFはほぼゼロ(設備投資は0.3百万円)で、この会社は固定資産をほとんど持たない構造です。第二に、財務CFの△209百万円は、前期末に「1年内返済予定」に振り替えられていた長期借入金201.7百万円の返済です。固定負債の長期借入金300百万円はそのまま残っています。第三に、6月末の貸借対照表には上場で調達した資金が入っていません。払込日は公募が8月3日、第三者割当が9月2日なので、決算短信の自己資本比率65%やBPS87円を見て判断すると前提を間違えます。
3. 深掘り:この決算で「誤解を生む数字」を3つ分解する
この会社の決算は、売上と営業利益だけ見れば単純です(増収、黒字転換、利益率6.5%)。ややこしいのは純利益から下、つまり税金と株数の話で、ここは上場直後の会社に固有の問題です。3つに分けます。
3-1. 純利益424百万円のうち106百万円は「税金の払い戻し予約」
2026年6月期の経常利益318.8百万円に対し、純利益は424.0百万円。差額の105.3百万円は税金費用がマイナスだったことを意味します。損益計算書では「法人税、住民税及び事業税」4.1百万円に対し「法人税等調整額」が△109.3百万円で、貸借対照表の固定資産に繰延税金資産109.3百万円が新たに載りました。会社は8月12日に「繰延税金資産の計上」を別途開示しています。
用語メモ:繰延税金資産と繰越欠損金 会社が過去に出した赤字は、税務上「繰越欠損金」として一定期間持ち越せ、将来の黒字と相殺して税金を減らせます。エブリーは上場までに累計で40億円前後の赤字を出しており(利益剰余金は2025年6月末で△13.6億円、今期末でもなお△9.3億円)、この「将来払わなくて済む税金」を、黒字が見込めるようになった段階で資産として貸借対照表に載せます。これが繰延税金資産で、計上した期は税金費用がマイナスになり純利益が膨らみます。現金は1円も入ってきません。
つまり2026年6月期の「純利益4.2億円」は、事業で稼いだ3.2億円(経常利益)に、過去の赤字がもたらす将来の節税を1.1億円分だけ前倒しで乗せたものです。4〜6月期の営業利益がゼロなのに純利益が104百万円出ているのは、この計上がほぼ全額4Qに入ったためです(筆者の差し引き:4Qの税金費用は△109百万円)。
これは悪いことではありません。会社は「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の「分類4」を適用し、翌期(2027年6月期)の回収見込み分に限って計上したと説明資料で開示しています。「分類4」は過去に重要な税務上の欠損金がある会社の区分で、1年先の黒字までしか見込みに入れない保守的な区分です。裏返せば、繰越欠損金はまだ大量に残っており(利益剰余金は今期末でも△9.3億円)、今後黒字が続けば同じ形の計上が毎期起こり得ます。実際、2027年6月期の純利益予想は「今期計上した109百万円を取り崩し、翌々期分を新たに計上する」前提で作られています(次項)。
3-2. 「EPS 42円」の分母は1,009万株。上場後の株数で割ると19.6円
決算短信の1株当たり当期純利益は42.0円です。ところが上場後の発行済株式数21,611,208株で純利益424百万円を割ると19.6円にしかなりません。半分以下です。
理由は、1株利益の分母が「期中平均株式数」で、しかも優先株式が普通株式に転換されたのが2026年2月24日だったことにあります。それまでのエブリーの普通株式は500万株しかなく、残り1,463万株はA〜E種の優先株式でした。優先株式は1株利益の分母に入りません。期首から2月23日までの238日間は500万株、2月24日から期末までの127日間は19,632,808株として加重平均すると10,091,415株になり、短信の注記にある期中平均株式数10,091,415株と1株の狂いもなく一致します(筆者の再現)。424,042千円÷10,091,415株=42.02円です。
| 分母の取り方 | 株数 | 2026年6月期EPS | 2027年6月期予想EPS | 見かけの増減 |
|---|---|---|---|---|
| 短信の実績(期中平均・優先株転換前を含む) | 10,091,415株 | 42.02円 | — | — |
| 短信の会社予想 | 約2,071万株(485百万円÷23.42円から筆者が逆算。上場時株数20,738,108株にほぼ一致し、9月2日払込のOA分873,100株は含まない模様) | — | 23.42円 | △44.3% |
| 上場後の実株数(2026年9月2日以降) | 21,611,208株 | 19.6円 | 22.4円 | +14.4% |
| 証券サイト等の表示(株探) | 21,611,208株 | 42.0円 | 22.4円 | △46.6% |
短信の表を素直に読むと「EPSは42.02円→23.42円で44%減」に見え、株探でも「△46.6%」と出ますが、これは分母が違う2つの数字を並べているだけで、純利益そのものは424→485百万円で+14.5%です。**「上場直後の会社で、EPSの伸びと利益の伸びが食い違ったら、まず分母を疑う」**というのは、この会社に限らず使える型です。
ちなみに「来期以降に1株が受け取れる利益」の目安として使うべきなのは実株数ベースのほうです。9月4日終値317円で計算すると、2026年6月期実績ベースのPERは16.2倍、2027年6月期予想ベースは14.1倍になります。
3-3. 2027年6月期の純利益予想にかかっている税率は5.5%
2027年6月期の会社予想は経常利益513百万円、純利益485百万円。差額28百万円が税金費用で、税率にすると5.5%です。日本の法人実効税率は3割前後なので、ここでも繰越欠損金が効いています。説明資料の備考には、この28百万円が3つの要素の合成であることが書かれています。①今期計上した繰延税金資産109百万円の取り崩し(税金費用を増やす)、②翌々期(2028年6月期)の課税所得見込みに基づく繰延税金資産の新規計上(税金費用を減らす)、③上場時の増資で資本金が1億円を超えたことによる外形標準課税の適用と、繰越欠損金で相殺できる上限が課税所得の50%であることによる法人税等の発生(税金費用を増やす)。つまり「繰越欠損金があるから税金ゼロ」ではなく、課税所得の半分には税金がかかり始めるのが今期からです。
この前提は数年は続く可能性が高い一方、いつか終わります。「もし通常税率だったら」を並べておくと、株価の見方が変わります。
| 2027年6月期予想 | 会社予想(税率5.5%) | 税率30%と仮定(筆者の試算) |
|---|---|---|
| 経常利益 | 513百万円 | 513百万円 |
| 純利益 | 485百万円 | 359百万円 |
| 実株数EPS | 22.4円 | 16.6円 |
| PER(317円) | 14.1倍 | 19.1倍 |
「PER14倍のメディア株」と「PER19倍」では受ける印象がかなり違います。どちらが正しいというより、繰越欠損金が使い切られる時期(有価証券報告書の税効果会計の注記で確認できます)までは前者、それ以降は後者に近づく、と理解しておくのが安全です。
3-4. 整理:営業利益とEPSの伸び率が一致しない理由
決算で普通に成り立つ「EPS成長率≒利益成長率÷株数成長率」の検算を、この会社に当てはめると次のようになります。
- 営業利益:324→530百万円(+63.6%)。会社はその他ビジネスの減収を主力の増収と販管費抑制で吸収する計画
- 経常利益:318→513百万円(+61.3%)
- 純利益:424→485百万円(+14.4%)。前期の繰延税金資産計上(△106百万円の税金費用)が剥落する反動
- 実株数EPS:19.6→22.4円(+14.4%)。上場後の株数で揃えれば純利益の伸びと一致します
- 短信EPS:42.02→23.42円(△44%)。分母が1,009万株から約2,071万株へ倍増するため半減して見えます
「営業利益は6割増なのにEPSは半減」という一見矛盾した並びは、税金の反動と分母の変化を分ければ全部説明がつきます。
4. 事業別の中身とイベント
4-1. Marketing Solution:主力は3割増、顧客単価型の成長
Marketing Solutionの2026年6月期売上は4,032百万円(+28.2%)で、上場時予想4,015百万円を達成しました。2027年6月期は5,305百万円(+31.6%)を計画し、全社売上予想5,854百万円の90.6%を占めます。四半期別では4四半期とも前年同期比+22〜34%で、直近の4〜6月期も+24.8%と減速していません。会社は「ロイヤル顧客数および顧客単価の上昇率は前期と同様の高い成長率を想定」と説明しています。
上場時の説明資料には、ある顧客A社の単価が5期で0.1百万円→166.9百万円まで伸びた事例が載っています。ブランド数1→13、利用ソリューション1→6と横に広げていく型で、「試食販売員を1店舗に置いてもらった後、同じメーカーの別ブランドの売り場にも置いてもらう」動きそのものです。会社は理論上の顧客単価上限を「1社7億円」と試算しており、現在の平均5.2百万円との差が、会社が見ている伸びしろです。
4-2. その他ビジネス:KDDIグループとの契約が2026年9月30日で終了
その他ビジネスの中身はほぼKDDIグループ向けの受託で、2025年6月期はKDDI本体198百万円+auコマース&ライフ451百万円=650百万円、全社売上の15.3%を占めていました(届出書)。このうちau PAY マーケットのライブコマース共同運営契約が2026年9月30日で終了することが確定しており、**2027年6月期のその他ビジネスは「大幅な減収」**と会社が明言しています(Q&A)。
会社の説明は「主力に経営資源を集中するための判断」であり、上場前からリスク項目として開示されていたものです。数字で見ると、その他ビジネスは2026年6月期513百万円(△23.4%)から2027年6月期は**60百万円(△88.3%)**まで落ちる計画で、四半期別にはすでに4〜6月期が53百万円(前年同期173百万円)まで縮んでいます。全社の増収率が主力の31.6%増に対して16.5%増にとどまる差の大半がこの減収で、営業利益の伸び(+63.3%)は減収を吸収した後の数字です。試食販売員の例えでいえば、「販促とは別に請け負っていた番組制作のバイトが9月で終わる」ことが最初から織り込まれた計画です。なおKDDIは売出で保有株の大半(1,834,400株)を手放し、上場後の比率は約4.6%まで下がっています(筆者の概算)。
4-3. retail HUB:アークスグループへ導入(2026年9月1日)
9月1日、小売向け統合ソリューション「retail HUB」を、北海道のスーパー大手アークス(9948)グループの中核企業ラルズのネットスーパーに導入し、「アークスオンラインショップ」として開始したと発表しました。年内にアプリのリリースも予定し、グループ内の他社(スーパー10社)への展開を見据えるとしています。金額の開示はありません。
この案件の意味は、売上より「売り場側のデータの入口が増える」ことにあります。試食販売員は売り場を借りる立場ですが、ネットスーパーやアプリのシステムを提供すると、その小売の購買データが自社に流れ込みます。広告効果の証明(3-1で触れた「放映店舗は売上131%」の類の分析)は、このデータがなければできません。なお発表当日の株価は△4.2%で、市場は当初この材料をほとんど評価しませんでした(後述)。
4-4. 伊藤忠食品との提携と、売り場を「借りている」構造
店頭サイネージ事業は、食品卸大手の伊藤忠食品との業務提携(2019年7月締結)のもとで、サイネージの設置営業・保守・広告販売を共同で行っています。同社は上場後も10.9%を持つ第3位株主(上場前は11.98%)で、社外取締役も受け入れています。加藤産業(同じく10.9%)、旭食品ともリテールメディア領域で協業しています。
これは強みであると同時に、届出書がリスク項目として明記しているとおり、売り場に入る経路を卸に依存している構造でもあります。試食販売員が売り場に立てるのは卸がスーパーに話をつけてくれるからで、その関係が変われば11,000台のモニターは「会社の資産」ではなく「置かせてもらっているモニター」になります。
4-5. 販管費:3年間ほぼ横ばいという「利益の源泉」
この会社の黒字転換は、売上が伸びたからというより販管費を増やさなかったことで起きています。
| 販管費(百万円) | 2024年6月期 | 2025年6月期 | 2026年6月期 | 2026年6月期の四半期(1Q/2Q/3Q/4Q) |
|---|---|---|---|---|
| 人件費 | 1,206 | 1,220 | 1,161 | 301/281/287/292 |
| その他販管費 | 1,342 | 1,104 | 1,196 | 269/289/306/332 |
| 変動販管費(代理店手数料・利益分配金等) | 284 | 353 | 368 | 81/116/92/79 |
| 合計 | 2,835 | 2,680 | 2,732 | 652/688/686/705 |
| 売上高販管費率 | 84% | 63% | 54% | 56%/48%/56%/59% |
出典:決算説明資料の四半期グラフから筆者が合計(切捨ての誤差で短信の2,732百万円と1〜2百万円ずれます)。年度の販管費率は筆者算出。
人件費は四半期290百万円前後で3年間ほとんど動いていません。売上は2年で1.5倍になっているので、試食販売員の例えでいえば「同じ人数で担当する売り場が1.5倍になった」状態です。会社はその理由として、①成長が新規顧客の大量獲得ではなく既存顧客の単価向上であり営業人員を比例して増やす必要がないこと、②生成AIの活用でレポート作成が1〜2週間から数時間になるなど生産性が上がっていること、③ユーザー獲得を広告宣伝費に頼らずオーガニックで進めていることを挙げています(8月24日Q&A)。
裏面もあります。変動販管費(代理店手数料・卸へのレベニューシェア等)は売上に連動して増え、4Qは売上に対する原価の上振れで粗利率が60.8%まで下がりました。「固定費を増やさない」は続けられても、「粗利率を維持する」は取り扱う広告商品の構成次第で、2027年6月期の営業利益率9.1%はこの2つが両方成り立つ前提です。
5. 資本政策と株主還元(上場直後の銘柄として)
このセクションは、配当も優待もない会社の「還元」の話ではなく、上場によって株数・株主・株価の前提がどう変わったかの管理情報として読んでください。今回の決算より、8月4日の上場そのものが株価に効いている銘柄です。
5-1. 時系列表
| 日付 | 出来事 | 数字 |
|---|---|---|
| 2022年7月ごろ | E種優先株式による資金調達(最終ラウンド) | 1株価格は届出書第四部に記載(本記事では原文未取得。報道ベースの逆算で1,200円前後) |
| 2026年2月24日 | 全優先株式(1,463万株)を普通株式に1対1で転換・消却 | 普通株式19,632,808株に |
| 2026年6月30日 | 有価証券届出書提出、上場承認 | 想定価格230円、想定時価総額47.7億円 |
| 2026年7月27日 | 公募・売出価格決定 | 230円(仮条件220〜230円の上限)、引受価額211.60円 |
| 2026年8月4日(火) | 東証グロース上場。公募1,105,300株、売出4,815,100株、OA888,000株 | 初値294円(+27.8%)、終値240円、出来高1,719万株 |
| 2026年8月12日(水) | 2026年6月期決算発表 | 翌日△11.4% |
| 2026年8月20日(木) | 上場来安値210円 | 公募価格比△8.7% |
| 2026年8月28日(金) | 第三者割当増資の結果を開示 | 873,100株発行、失権14,900株 |
| 2026年9月1日(火) | retail HUBのアークス導入を発表 | 当日△4.2% |
| 2026年9月2日(水) | 第三者割当の払込 | 発行済株式数21,611,208株に |
| 2026年9月4日(金) | ストップ高317円(上場来高値) | 出来高1,456万株=発行済の67% |
| 2026年9月30日(水) | KDDIグループとのライブコマース契約終了 | — |
| 2026年11月1日(日) | 90日ロックアップ解除(VC等) | 数え方で1日ずれる可能性あり |
| 2027年1月30日(土) | 180日ロックアップ解除(創業者・事業会社等) | 同上 |
出典:有価証券届出書・訂正届出書、適時開示、株探の時系列(2026年8月4日〜9月4日の全営業日を取得済み)。
5-2. ダウンラウンド:私募価格の約2割で上場した
上場時の想定時価総額47.7億円は、2022年7月の資金調達後の評価額を約80.1%下回るとされています(報道ベース:庶民のIPO・note等の複数記事で一致)。この比率から逆算すると当時の1株価格は1,220円前後で、公募価格230円はその約19%です(筆者の逆算。正確な価格は届出書第四部「第三者割当等の概況」で確認できます)。
これは投資家にとって二通りに読めます。「累計133億円を集めた事業の入口に、私募投資家の5分の1の値段で入れた」という読みと、「VCも事業会社も元本割れで換金せざるを得なかった案件で、そのVCが上場後90日で売れる」という読みです。どちらも事実に基づいており、後者はロックアップの項で数字にします。
5-3. オーバーアロットメントの帰結:14,900株だけ市場で買い戻された
用語メモ:オーバーアロットメント(OA)とグリーンシューオプション 主幹事証券は、需要が多いときに創業者などから株を借りて公募価格で追加販売します(OA)。借りた株は返さなければならず、返し方は2つ。株価が公募価格を下回れば市場で買い戻して返し(シンジケートカバー取引。株価の下支えになります)、下回らなければ会社から新株を引き受けて返します(グリーンシューオプションの行使=第三者割当増資)。
エブリーでは吉田社長が888,000株を貸し、主幹事のSMBC日興証券は8月28日までに14,900株だけを市場で買い戻し、残り873,100株について新株を引き受けました(8月28日開示)。株価は8月7日から8月27日まで公募価格230円を下回って推移していたので、「安く買える期間は3週間あったのに、ほとんど買わなかった」ことになります。主幹事は買付を行う義務を負っていないので契約上は問題ありませんが、公募割れの期間に需給の下支えはほぼなかったという事実は、上場後の株価の弱さと整合します。一方で会社側には、新株発行によって184百万円の追加資金が入り、手取りは公募分と合わせて約398百万円になりました。
5-4. 株数の推移と希薄化
| 時点 | 発行済株式数 | 増減の内訳 | 検算 |
|---|---|---|---|
| 上場前(優先株転換後) | 19,632,808株 | — | — |
| 上場日(8月4日) | 20,738,108株 | 公募+1,105,300株 | 19,632,808+1,105,300=20,738,108 ✓ |
| 第三者割当払込後(9月2日) | 21,611,208株 | OA分+873,100株(888,000株の上限に対し14,900株失権) | 20,738,108+873,100=21,611,208 ✓ |
| 潜在株式(新株予約権) | 1,843,541株(2026年6月末・短信注記) | 上場後株数の8.5% | 行使価額90〜320円(届出書記載分) |
- 公募による希薄化率:1,105,300÷19,632,808=5.6%。OA分を含めると10.1%
- 公募+OAの新株が上場後株数に占める比率:9.2%
- 売出4,815,100株を含め、上場で市場に出た株の合計は6,793,500株、上場後株数の31.4%(オファリングレシオ)
新株予約権の行使開始日は回次ごとに違います。第1回(41,000株、行使価額90円)は上場3か月後の2026年11月4日(水)以降、第2回以降(行使価額100〜320円)は原則として上場6か月後の2027年2月4日(木)から段階的(6か月後に50%、18か月後に100%など)に行使可能になります。9月4日終値317円は行使価額のほぼ全てを上回っており、行使のインセンティブは既にある状態です。届出書提出時点(2026年6月30日)の潜在株式は1,920,000株でしたが、短信の注記では期末時点で9種類・1,843,541株となっており、6月中に一部が失効した模様です。届出書に個別条件が載る回次は第8回(行使価額320円)までで、第9回の条件は有価証券報告書で確認できます。
5-5. 大株主と議決権(上場後の概算)
| 株主 | 上場前 | 売出 | 上場後(筆者の概算) |
|---|---|---|---|
| 吉田大成(社長・創業者) | 4,631,900株(23.59%) | なし(OAの貸株人) | 21.4% |
| 伊藤忠食品 | 2,351,835株(11.98%) | なし | 10.9% |
| 加藤産業 | 2,351,835株(11.98%) | なし | 10.9% |
| KDDI | 2,822,202株(14.37%) | △1,834,400株 | 4.6% |
| WiL Fund II | 1,536,150株(7.82%) | △768,000株 | 3.6% |
| DCM Ventures China Fund(DCM8) | 1,462,060株(7.45%) | △731,000株 | 3.4% |
| DBJキャピタル | 579,061株(2.95%) | なし | 2.7% |
| VC等の合計 | 31.43%(届出書) | △2,435,400株 | 約17% |
出典:届出書「株主の状況」、売出要項、大量保有報告書(吉田氏22.34%=分母20,733,662株で上場日時点、伊藤忠食品・加藤産業も8月に5%超を報告。いずれも株探の要約記事経由の報道ベース)。正式な大株主表は上場後初の有価証券報告書(9月下旬の株主総会前後に提出見込み)まで出ません。
議決権上の意味は次のとおりです。吉田氏単独では21%で、3分の1(特別決議の拒否権)にも過半数にも届きません。ただし吉田氏+伊藤忠食品+加藤産業の3者で43%、これに菅原取締役ら180日ロックアップ対象の株主を足すと、経営側と事業パートナーで概ね過半に近い構図です。
5-6. ロックアップと「345円」
ロックアップの構造がこの銘柄の値動きの核心です。
- 180日(2027年1月30日まで):吉田氏、KDDI、味の素、伊藤忠食品、加藤産業、菅原取締役、セイノーHD、新株予約権者56名など。解除条件なし
- 90日(2026年11月1日まで):WiL、DCM、グロービス、SMBCベンチャーキャピタル、GMO VP、DBJキャピタル、SBI系、INTAGEなどのVC。ただし公募価格の1.5倍=345円以上で主幹事を通じて売る場合は期間内でも解除
- いずれも主幹事は裁量で解除・短縮できます
9月4日のストップ高317円は、この345円まであと28円のところです。VCの残りは合計で約373万株(上場後株数の17%、筆者の概算)。株価が345円を超えれば、90日を待たずに売れる株がこれだけあるということです。9月4日の出来高1,456万株は発行済株式数の67%で、株探は「自動運転関連株を売った個人の資金が流入」と報じており、会社の適時開示はありません(9月1日のアークス導入は既に△4.2%で消化済み)。
なお9月4日の夜間PTSは275円(東証終値比△13%)で取引されていました(Yahoo!ファイナンス、9月5日0時27分時点)。公開時点で株価が大きく動いている可能性が高く、本記事の株価関連の数字はすべて9月4日終値317円基準です。
5-7. 上場後の貸借対照表と1株指標
| 指標 | 6月末(短信・証券サイト表示) | 上場後の概算(筆者) |
|---|---|---|
| 純資産 | 1,711百万円 | 約2,130百万円 |
| 1株純資産(BPS) | 87.19円(分母19,632,808株) | 約98円(分母21,611,208株) |
| PBR(317円) | 3.6倍 | 約3.2倍 |
| 現預金 | 1,823百万円 | 約2,242百万円 |
| ネットキャッシュ | 約1,519百万円 | 約1,937百万円(1株約90円) |
時価総額68.5億円のうち約19億円が実質的な手元現金で、事業の評価額は差し引き約50億円です。
5-8. 調達資金の使途
公募213百万円と第三者割当184百万円の手取り約398百万円は、①採用活動費・人件費に311百万円(2027年6月期100、2028年6月期100、2029年6月期111百万円)、②広告宣伝費に90百万円(各期30百万円)を充てる計画です(訂正届出書)。借入返済は含まれていません。年間の人件費(給料968百万円、2025年6月期)に対して年100百万円ですから、規模としては「1割増員分の原資」程度です。
5-9. 配当・優待・自己株式
- 配当:設立以来無配。2027年6月期予想も無配です。8月24日のQ&A(Q7)で会社は「今後安定的な利益創出が定着したタイミングにおいては、キャッシュアロケーションを明確にしたうえで、配当の実施を検討」と回答しており、時期は未定です。基準日は6月末で、2027年6月30日(水)を基準日とする権利付き最終日は2027年6月28日(月)ですが、無配の間、この日に意味があるのは9月の株主総会の議決権だけです
- 株主優待:制度はありません。同じQ&Aで「配当の実施だけではなく、株主優待制度の導入等も含め、様々な観点から株主還元の実施を今後検討」と会社が明言しており、「検討対象」であることまでは一次情報で確認できます。導入時期や内容の言及はありません
- 自己株式:優先株式の取得・消却(2026年2月)以外の取得はなく、期末の自己株式はありません
- 保有有価証券:投資有価証券の保有は総資産に対して論点になる規模ではありません(3Q末の固定資産合計が97百万円)
6. 株価の見方:強気と弱気を並べる
判断は読者に委ねます。9月4日終値317円、時価総額68.5億円を基準に、両方の読みを並べます。
強気側の材料
- 黒字化した年に、黒字の持続をコストで裏付けている。販管費は直近3期でほぼ横ばい(2,835→2,682→2,732百万円)のまま売上が2年で1.5倍になり、人件費に対する売上の比率は2024年上半期261%→2026年上半期445%。四半期営業利益は2025年6月期2Q以降、1四半期を除いて黒字が続いています。試食販売員を増やさずに担当売り場を増やしている構図で、2027年6月期の営業利益率9.1%計画はこの延長線上にあります
- 主力が3割増を続けている。ロイヤル顧客80社(+29%)経由の売上が主力の81%を占め、顧客単価6.3百万円(+19%)の拡大が牽引しています。広告効果の検証では直近1年の案件49件のうち80%で配信後売上が伸び、平均リフト121%(説明資料)。効果を数字で示せる限り、この型は営業コストが軽い
- 繰越欠損金が数年分の税金を軽くする。PER14倍(実株数・会社予想ベース)は、この税率5.5%を織り込んだ数字ですが、キャッシュベースでは本物の恩恵です
- 私募価格の約2割で上場した。ダウンラウンドは「安く入れた」とも読めます。上場時の目標「時価総額100億円」は463円に相当します
- retail HUBのアークス導入のように、小売システム側の入口が増えると、広告効果の証明力(データ)が強まります
弱気側の材料
- 4〜6月期の営業利益はゼロ、季節性が極端。年末商戦に依存する構造は、メーカーが販促費を絞る局面で真っ先に効きます。試食販売員は不況時に最初に削られる仕事です
- その他ビジネスの減収が今期に集中する。KDDIグループ向け6.5億円(2025年6月期)が9月末で契約終了。会社予想は吸収する前提ですが、主力の31.6%増が計画未達なら営業利益予想530百万円の達成は難しくなります
- 売り場は他人のもの。サイネージ事業は伊藤忠食品との提携に依存し、会社自身がリスク項目に挙げています
- 345円の上でVCが売れる。上場後株数の約17%を持つVC等は、株価が公募価格の1.5倍に達すれば90日を待たずに売却できます。ストップ高の翌営業日にその水準まであと9%です。11月1日以降は無条件で売れます
- 上場後の株価は需給主導。8月4日の出来高は上場時株数の83%、9月4日は67%。会社の材料(決算・アークス)にはむしろ下げで反応し、材料のない日にストップ高した経緯は、ファンダメンタルズで説明しにくい値動きです
- 税率5.5%は永続しない。会社自身が「繰越欠損金で相殺できるのは課税所得の50%まで」「外形標準課税が適用される」と予想の前提に書いています。通常税率で計算し直すとPERは19倍で、グロース市場のメディア株としては割高とも割安とも言い切れない水準です
- 粗利率が下がっている。62.5%→60.8%と、予想61.6%も下回りました。売上の構成が変わると粗利率が動く商売で、営業利益率9.1%の計画は粗利率の維持が前提です
7. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 確認すること |
|---|---|---|
| 2026年9月28日(月) | 定時株主総会(第11期)。同日に有価証券報告書を提出予定(短信記載) | 正式な大株主表、税効果会計の注記(繰越欠損金の残高と使い切る見込み時期)、第9回新株予約権の条件 |
| 2026年9月30日(水) | KDDIグループとのライブコマース契約終了 | 以降のその他ビジネスの落ち方 |
| 2026年11月1日(日) | VC等の90日ロックアップ解除(それ以前でも345円以上なら売却可) | 大量保有報告書(変更報告書)の有無 |
| 2026年11月4日(水) | 第1回新株予約権(41,000株、行使価額90円)の行使開始 | — |
| 2026年11月中旬(推定) | 2027年6月期第1四半期決算(7〜9月) | 上場初年度で前年同期の四半期数値がないため、上半期累計での比較を待つほうが安全 |
| 2026年12月 | アークスグループ向けアプリのリリース予定 | — |
| 2027年1月30日(土) | 180日ロックアップ解除(創業者・事業会社等) | — |
| 2027年2月4日(木) | 第2回以降の新株予約権の行使開始(段階制) | 潜在株1,920,000株の消化ペース |
| 2027年2月中旬(推定) | 上半期決算(10〜12月期が季節のピーク) | 上半期の営業利益が前年244百万円をどれだけ上回るか |
| 2027年8月(推定) | 2027年6月期通期決算、事業計画及び成長可能性に関する事項の更新 | 営業利益530百万円・営業利益率9.1%の達成、時価総額100億円目標の進捗 |
見るべきKPI(会社が開示している順):Marketing Solution売上高、顧客社数とロイヤル顧客社数、顧客単価、店頭サイネージ設置台数(11,000台超)、アプリ・ウェブMAU(3,100万)。四半期ごとに追うなら、販管費の絶対額が横ばいを保っているかが、この会社の利益率改善の生命線です。
8. 3行まとめ
- 2026年6月期は売上50億円・営業利益3.2億円で初の通期黒字。純利益4.2億円のうち1.1億円は繰延税金資産の計上(現金を伴わない一過性)で、営業CFは2.9億円。
- 短信のEPS42.02円は優先株転換前の期中平均1,009万株で割った数字で、上場後の実株数では19.6円。短信の来期予想EPS23.42円は「44%減」ではなく、純利益は+14.5%。ただし純利益予想は税率5.5%が前提で、通常税率なら3.6億円。
- 株価は決算より需給。9月4日のストップ高317円は、VCが90日ロックアップを待たずに売れる345円まであと28円で、上場後株数の約17%を持つVCの売却可否がこの秋の焦点になります。
本記事は、決算短信、有価証券届出書・訂正届出書、決算説明資料に関する会社Q&A、適時開示(第三者割当増資の結果、事業計画及び成長可能性に関する事項)、会社ニュースリリースおよび報道に基づき、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。記載した数値は決算短信・決算説明資料・有価証券届出書・適時開示の原文に基づき、筆者が算出した比率・四半期の経常利益と純利益の差し引き・上場後の1株指標・大株主比率・ダウンラウンドの逆算には「概算」「筆者の試算」と明記しています。E種優先株式の1株価格と第9回新株予約権の条件は本記事では原文を確認できておらず、有価証券届出書第四部および有価証券報告書でご確認ください。大量保有報告書の内容は株探の要約記事経由(報道ベース)です。株価・出来高は2026年9月4日終値時点であり、公開時点では大きく変動している可能性があります。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。