株式投資

【2026年8月発表・通期決算】梅乃宿酒造(559A)は過去最高益。それなのに4〜6月の3か月だけを取り出すと営業利益がほぼゼロだったのはなぜか

本記事は2026年9月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 梅乃宿酒造(559A)の2026年6月期通期決算が「過去最高の増収増益」でありながら、上場時に自社で出した営業利益・売上総利益率・EBITDAの計画には届かなかったこと
  • 通期の数字から上半期・第3四半期を差し引くと、4〜6月の3か月は営業利益が約280万円しかなく、経常利益は赤字だったこと。それでも最終利益が黒字だった理由
  • 「日本酒の蔵を一年中動く工場に作り替えた会社」という見方で、この会社の高い粗利率も、季節の弱さも、これからの設備投資も一本の線で説明できること
  • 海外売上が前期比159.6%と急伸した一方で、その伸びが上半期に偏っていたこと
  • 上場したのに会社に1円も入っていない(公募ゼロ・売出しのみ)という資本構造と、初配当・株主優待・投資ファンドの出口の関係
  • 株主優待(100株からのEC利用券、200株からの限定日本酒)の中身と、名目の利回りではわからない注意点

1. 梅乃宿酒造とはどんな会社か

1-1. 軸となる見方:「冬しか動かなかった蔵を、一年中動く工場に作り替えた会社」

梅乃宿酒造は、奈良県葛城市にある1893年創業の日本酒蔵です。1950年に法人化しました。ただ、いまの売上の8割超は日本酒ではなくリキュール(果実酒)です。「あらごし梅酒」「あらごしみかん」などの、果肉がそのまま入った日本酒仕込みのリキュールがこの会社の主力です。

この会社を理解するのに、いちばん筋の通る見方はこうだと考えています。

日本酒づくりは、もともと冬にしか動かない仕事でした。 秋に準備をして、冬に仕込み、春に新酒を出したら、4月から10月は「休蔵」に入る。会社としては、年の半分近く、蔵と設備と人を遊ばせることになります。梅乃宿酒造は、その空いた時間に梅酒とリキュールを詰め込んだ会社です。2001年にリキュールの製造免許を取り、日本酒蔵としては先駆けて日本酒仕込みの梅酒を売り始めました。上場申請時の有価証券報告書(Ⅰの部)にも、リキュールへの進出が「日本酒蔵にありがちであった季節的な業績変動を克服」したと書かれています。

この見方は、この会社の強みも弱みも同じ言葉で説明できます。強みの側では、「同じ蔵をより長く回す」ことが利益率に直結します。弱みの側では、工場を一年中動かせるようになっても、お酒が売れる季節そのものは動かせない、という話になります。後者は、この記事のいちばん大事な論点(第3章)につながります。

1-2. 会社の基本情報

項目内容
会社名(コード)梅乃宿酒造株式会社(559A)
上場市場・上場日東証スタンダード市場・2026年4月24日
決算期6月30日(年1回・非連結。子会社・関連会社なし)
本社奈良県葛城市寺口27番地1
創業/設立1893年(吉田熊太郎商店)/1950年
代表者代表取締役社長 吉田佳代
従業員数71名(外、臨時29名)※2026年2月28日現在
平均年間給与549万円(2026年2月28日現在)
主力商品「あらごしシリーズ」等の日本酒仕込みリキュール、日本酒「葛城」「梅乃宿」ほか
事業セグメント酒類製造販売事業の単一セグメント
国内取引先1,000社超
海外展開24の国または地域
国産果実リキュール市場シェア16.7%(2024年・富士経済の調査を用いた会社算出)
売上高平均成長率+15.5%(2022年6月期〜2026年6月期の年平均・会社開示)
株主優待あり(毎年6月30日基準・100株から。第6章)
配当2026年6月期に初配当21円44銭。配当性向40%目標

1-3. なぜ利益率が高いのか(数字で見る)

Ⅰの部には、業界平均との比較が具体的な数字で書かれています。ここは会社が自分で開示している一次情報なので、そのまま使えます。

比較項目梅乃宿酒造業界平均
売上総利益率(2025年6月期)55.7%清酒製造者 38.8%/リキュール製造者 40.5%
酒類事業売上高26.8億円清酒製造者 3.09億円/リキュール製造者 74.5億円
日本酒の売上総利益率31%
主力リキュールの売上総利益率57%
在庫回転率(日本酒)年1.2回
在庫回転率(リキュール)年7.5回

※業界平均は国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和6年アンケート)」、粗利率・在庫回転率は2025年6月期の会社開示値。

この表のポイントは2つです。

ひとつは、日本酒とリキュールで粗利率が31%と57%、ほぼ倍近く違うこと。もうひとつは、在庫が動く速さが1.2回と7.5回で6倍以上違うことです。日本酒は仕込みに30日以上かかり、人手もかかる。リキュールは製造リードタイムが短い。つまり、同じ蔵・同じ設備で、より速く回して、より高い粗利を取れるのがリキュールだということです。「冬しか動かなかった蔵を一年中動かす」という話は、会社の言葉で言い換えると「固定費効率と在庫回転率を上げる」という話になります。

用語メモ:売上総利益率(粗利率) 売上高から売上原価(材料費・製造にかかった労務費や経費)を引いた「売上総利益」が、売上高の何%にあたるかを示す比率です。ここが高いほど、売ったときの手残りが厚いことを意味します。ただし、この後に販売費・一般管理費(広告費、運賃、人件費など)を引かないと営業利益にはなりません。

用語メモ:在庫回転率 1年間で在庫が何回入れ替わったかを表す指標です。回転率が高いほど、同じ在庫金額でより多く売れている=資金効率が良い、と読めます。お酒のように在庫を寝かせる商売では、商品によってこの数字が大きく変わります。

1-4. これまでの業績推移(6期)

決算期売上高営業利益経常利益当期純利益純資産総資産自己資本比率ROE1株配当
2021年6月期1,8173114202972,4473,20676.3%12.7%22.50円
2022年6月期1,7383314392123,1166,64846.8%7.6%
2023年6月期2,4102482642183,3336,66949.9%6.8%
2024年6月期2,6984224253172,9506,17147.8%10.1%166.00円
2025年6月期2,6843173062413,1926,06152.7%7.9%
2026年6月期3,0914654443223,5346,36855.5%9.6%21.44円

※単位は百万円。1株配当は2025年4月17日の1対20の株式分割を反映した調整後の金額(2021年・2024年はⅠの部の参考値)。2021〜2025年6月期はⅠの部、2026年6月期は決算短信の開示値。営業利益の2021〜2023年はⅠの部の事業概況の記載値。

この表の読みどころは3つあります。

(1)2022年6月期に総資産がほぼ倍になっている。 3,206百万円から6,648百万円へ、3,442百万円増えました。これは2022年7月に本社・製造場を新蔵へ移転したためで、そのために2022年3月に総額30億円の銀行借入を行っています。自己資本比率が76.3%から46.8%に落ちたのも同じ理由です。この会社の借入は、いま使っている蔵そのものです。

(2)2023年6月期に経常利益が大きく落ちている。 439百万円から264百万円へ、4割減です。売上は1,738百万円から2,410百万円へ大きく伸びているのに、利益は落ちました。新蔵移転による減価償却費の増加が効いていると読むのが自然ですが、会社は個別の理由を明示していないので、ここは「筆者の推測」の域を出ません。

(3)2024年6月期に純資産が減っている。 3,333百万円から2,950百万円へ、383百万円の減少です。当期純利益は317百万円の黒字なのに純資産が減った。理由は配当です。2023年12月に999,970千円(約10億円)の臨時配当を実施しています。この話は第7章で詳しく扱います。


2. 2026年6月期通期決算のハイライト

2026年8月10日に発表された2026年6月期(2025年7月〜2026年6月)の通期決算は、次のとおりです。

2-1. 前期との比較

項目2025年6月期2026年6月期増減率
売上高2,684百万円3,091百万円+15.1%
売上総利益1,495百万円1,734百万円+16.0%
売上総利益率55.69%56.11%+0.42pt
販売費及び一般管理費1,178百万円1,268百万円+7.7%
営業利益317百万円465百万円+46.8%
営業利益率11.81%15.06%+3.25pt
経常利益306百万円444百万円+45.1%
税引前当期純利益307百万円442百万円+43.9%
当期純利益241百万円322百万円+33.6%
1株当たり当期純利益40.12円53.61円+33.6%
EBITDA531百万円671百万円+26.3%

売上・利益とも過去最高です。特に営業利益率が11.8%から15.1%へ3.3ポイント上がっているのが目立ちます。会社は2026年2月に主力の「あらごしシリーズ」の価格改定(値上げ)を実施しており、これが粗利率の改善につながりました。

ここでひとつ、読者が自分で確かめられる検算を置いておきます。

営業利益 = 売上総利益 − 販売費及び一般管理費
2025年6月期: 1,495,301 − 1,178,283 = 317,018 千円(開示317,017千円・端数処理の差1千円)
2026年6月期: 1,734,297 − 1,268,807 = 465,490 千円 ✓

売上高が +15.1%、販管費が +7.7%
→ 売上の伸びが費用の伸びを上回ったぶんが、そのまま営業利益率の改善になっている
売上高販管費率: 43.89%(2025年6月期) → 41.05%(2026年6月期)

営業利益率の改善は、粗利率が0.4ポイント上がったことよりも、販管費が売上ほどには増えなかったことの寄与が大きい構図です。

用語メモ:EBITDA ここでは会社の定義(税引前利益に、特別損益・支払利息・減価償却費を加減して算出)に従っています。設備を多く持つ会社では、減価償却費という現金の出ていかない費用が利益を押し下げるため、それを戻して「本業がどれだけ現金を生んだか」を見る指標です。実際に計算してみると、税引前442百万円+特別損失の純額1百万円+支払利息8百万円+減価償却費218百万円=671百万円となり、会社開示と一致します。

2-2. 上場時に自社で出した計画との比較

ここが、決算書を素直に並べただけでは見落としやすいところです。

会社は上場日(2026年4月24日)に「東京証券取引所スタンダード市場への上場に伴う当社決算情報等のお知らせ」で2026年6月期の通期予想を出しており、第3四半期決算短信(2026年5月13日)でも据え置いていました。決算補足説明資料には、その計画と実績の比較が載っています。

項目会社計画実績達成率
売上高3,019百万円3,091百万円102.4%
うち国内BtoB1,863百万円1,877百万円100.8%
うち海外707百万円770百万円109.0%
うちBtoC449百万円443百万円98.5%
売上総利益1,716百万円1,734百万円101.0%
売上総利益率56.9%56.1%△0.8pt
営業利益482百万円465百万円96.5%
営業利益率16.0%15.1%△0.9pt
当期純利益315百万円322百万円102.2%
EBITDA686百万円671百万円97.8%

売上は計画を超え、粗利率・営業利益・EBITDAは計画に届かず、最終利益はまた計画を超えた。 「過去最高の増収増益」という見出しだけを読むと気づけない形です。

計画を超えたのは海外(109.0%)だけで、BtoCは98.5%と未達でした。そして売上が計画を2.4%上回ったのに営業利益が3.5%下回ったということは、上振れした売上が利益に変換されていないということです。この理由は次の章で分解します。

用語メモ:営業利益・経常利益・当期純利益 営業利益は本業のもうけです。経常利益は、そこに本業以外の収支(受取利息、支払利息、上場にかかった費用など)を足し引きしたもの。当期純利益は、さらに一時的な損益(特別損益)と税金を差し引いた、最後に会社に残る利益です。この3つが同じ方向に動かないときは、必ず理由があります。


3. いちばん大事な論点:4〜6月の3か月を取り出すと何が見えるか

3-1. 四半期に分解する

梅乃宿酒造は上場したばかりなので、四半期ごとの単独の数字を会社が開示していません。ただ、上半期(2025年7月〜12月)の数字は上場申請時の半期報告書に、第3四半期累計(2025年7月〜2026年3月)の数字は第3四半期決算短信にあります。通期からこれらを差し引けば、それぞれの期間の姿が見えます。

以下は筆者が差し引いて算出したものです(単位:千円)。

項目上半期(7〜12月)1〜3月4〜6月通期
売上高1,684,430674,735731,9763,091,141
営業利益376,62986,0152,846465,490
経常利益375,62081,334△12,921444,033
税引前当期純利益377,22079,144△13,878442,486
当期純利益249,39552,26521,269322,929

合計の検算をしておきます。1,684,430+674,735+731,976=3,091,141千円で通期と一致します。

構成比にすると、この決算のかたちがはっきりします。

項目上半期1〜3月4〜6月
売上高の構成比54.5%21.8%23.7%
営業利益の構成比80.9%18.5%0.6%
経常利益の構成比84.6%18.3%△2.9%

売上は3つの期間にそれなりに分散しているのに、営業利益の80.9%が上半期に集中しています。 そして4〜6月の3か月は、7億3,197万円を売って営業利益が284万円、経常利益は1,292万円の赤字でした。

3-2. なぜ4〜6月はこうなるのか

理由は大きく3つに分けられます。

(1)お酒が売れる季節ではない。 Ⅰの部の事業等のリスクに、会社自身がこう書いています。「当社の販売するアルコール飲料は、忘年会シーズンや年始を控えた12月がハイシーズンとなっております」。発生可能性は「高」と評価されています。7〜12月に売上の54.5%、利益の80.9%が乗るのは、この季節性がそのまま出た形です。

ここで第1章の見方が効いてきます。蔵は一年中動かせるようになりました。でも、飲む人の季節までは動かせません。 リキュールへの転換で「造る側」の季節変動は克服できても、「売れる側」の季節変動は残る。この会社の四半期決算を読むときは、この非対称を頭に置いておく必要があります。

(2)上場にかかった費用が4〜6月に乗っている。 上場は2026年4月24日、つまり4〜6月の期間内です。損益計算書の営業外費用「上場関連費用」は通期19,919千円、第3四半期累計では4,496千円でした。差し引くと、4〜6月に15,423千円の上場関連費用が乗った計算になります(筆者の差し引き)。

これは経常赤字△12,921千円を上回る金額です。つまり、上場費用を除けば4〜6月の経常利益は約250万円の黒字だったことになります。赤字そのものは一過性の要因で説明がつきます。ただし、それを除いても営業利益が284万円しかないという事実は変わりません。

(3)減価償却費が毎月出ていく。 通期の減価償却費は218,720千円、第3四半期累計は163,537千円でした。差し引くと4〜6月だけで55,183千円です(筆者の差し引き)。売れようが売れまいが、蔵と設備の償却は止まりません。「一年中動く工場」を持つということは、動かない季節にも費用が出続けるということでもあります。

3-3. それでも最終利益が黒字だった理由

税引前が1,388万円の赤字なのに、4〜6月の当期純利益は2,127万円の黒字でした。順番が逆転しています。

通期の税引前当期純利益     442,486 千円
第3四半期累計の税引前四半期純利益 456,364 千円
→ 4〜6月の税引前        △13,878 千円(赤字)

4〜6月の当期純利益       +21,269 千円(黒字)
→ 4〜6月の法人税等       △35,147 千円(税金費用のマイナス計上)

つまり、期末に税金費用が3,514万円ほど戻された形です。

理由として最も可能性が高いのは税額控除です。Ⅰの部の税効果会計の注記を見ると、この会社は法定実効税率34.3%に対して、2024年6月期は税額控除で6.9ポイント、2025年6月期は12.6ポイント、税負担率を下げています。2026年6月期の税負担率は次のとおりです。

通期の法人税等 = 法人税、住民税及び事業税 133,656 + 法人税等調整額 △14,099 = 119,556 千円
税負担率 = 119,556 ÷ 442,486 = 27.0%
法定実効税率34.3%との差 = 7.3pt = 金額にして約32百万円

第3四半期累計の税負担率が33.9%(154,703千円 ÷ 456,364千円)だったことを考えると、税額控除の大半が期末にまとめて認識されたと読むのが自然です。ただし、内訳は決算短信では確認できません。確定的なことは、有価証券報告書(2026年9月24日提出予定)の税効果会計の注記が出てから判断すべき論点です(筆者の推測)。

読者にとっての意味はこうです。4〜6月の最終利益が黒字だったのは、本業がもうかったからではありません。 そして税額控除は毎年同じ額が出るとは限りません。

なお、Ⅰの部の注記には、2026年7月1日以降に開始する事業年度から「防衛特別法人税」が課され、法定実効税率が34.3%から35.1%に上がることも書かれています。2027年6月期以降の税負担を見るときの前提が1つ変わります。

用語メモ:税額控除 計算した法人税額から、政策的な理由で一定額を直接差し引ける制度です。賃上げ促進税制や研究開発に関する制度などがあります。「経費が増える」のではなく「税金そのものが減る」ので、税引前利益が同じでも最終利益が増えます。ただし適用できる条件は毎年変わり得るため、恒常的な利益とは切り分けて見る必要があります。

3-4. 営業外・特別損益で押さえておきたい数字

損益計算書の下のほうにも、小さいが方向性を示す数字があります。

項目2025年6月期2026年6月期
支払利息9,053千円8,305千円
上場関連費用(営業外費用)4,000千円19,919千円
補助金収入(特別利益)2,825千円2,000千円
固定資産除却損(特別損失)1,324千円956千円
製品開発契約解約損(特別損失)2,500千円

営業利益465百万円から経常利益444百万円まで21百万円落ちている主因は、この上場関連費用19,919千円です。上場は毎年あるものではないので、2027年6月期の経常利益が前期比21.1%増と、営業利益の伸び(16.2%増)を上回る計画になっているのは、この費用が消えることが大きく効いています。

「製品開発契約解約損2,500千円」は今期初めて出てきた項目です。金額は小さいものの、新商品開発を高速に回すこの会社の性格からすると、試行の一部が途中で止まった記録として読めます。内訳は開示されていません。


4. チャネル別の売上:海外+159.6%の中身

会社は決算補足説明資料で、売上をチャネル別に開示しています。単一セグメントの会社なので、実質的にはこれがセグメント情報の役割を果たします。

チャネル2025年6月期2026年6月期前期比構成比
国内BtoB(酒販店・大手小売店・コストコ)1,791百万円1,877百万円104.8%60.8%
海外(代理店・空港免税店)482百万円770百万円159.6%24.9%
BtoC(自社EC・モール・直営店)411百万円443百万円107.8%14.3%
 うちEC304百万円327百万円107.6%
 うち直営店106百万円115百万円108.4%
合計2,684百万円3,091百万円115.1%100.0%

※EC・直営店の2025年6月期は、2026年6月期の金額を会社開示の前期比で割り戻した筆者の概算値です。

増収406百万円のうち、海外が289百万円を稼いでいます。増収額の7割が海外です。 会社は北米・台湾の好調さがけん引したと説明しています。

海外の中身も開示されています。

輸出先地域(2026年6月期)構成比
アジア41.6%
北米18.6%
空港免税店12.8%
欧州11.7%
その他8.5%
オセアニア6.8%

アジアが4割超で、中国・台湾・香港が中核市場です。空港免税店が12.8%を占めており、会社は「インバウンド需要継続も中国旅客数減少の影響」があったと注記しています。

4-1. 「159.6%」を上半期と下半期に割る

ここにも分解の余地があります。上半期のチャネル別売上は半期報告書に開示されているので、下半期を差し引けます。

チャネル上半期(7〜12月)下半期(1〜6月)上半期の構成比
国内BtoB973百万円904百万円51.8%
海外484百万円286百万円62.9%
BtoC228百万円215百万円51.4%

※下半期は通期から上半期を差し引いた筆者の算出値。

海外だけ、上半期に62.9%が偏っています。 国内BtoBとBtoCは半々に近いのに、海外は上半期484百万円に対して下半期286百万円です。「前期比159.6%」という数字は事実ですが、その勢いが期を通じて続いていたわけではありません。

海外売上の推移を並べると、この事業の振れ幅がわかります。

決算期海外売上前期比
2023年6月期643百万円
2024年6月期709百万円110.3%
2025年6月期482百万円68.0%
2026年6月期770百万円159.6%
2027年6月期(計画)800百万円103.8%

2025年6月期に3割減り、2026年6月期に6割増えています。会社は補足説明資料で、2025年6月期の減少要因を「北米:24/6期に発生した纏め買いの反落及びトランプ関税による貿易情勢の不透明性による需要低下」「アジア:中国の景況感の不透明性による需要の落込み」と説明しています。代理店経由の輸出は、1件の大口取引の有無で年度の数字が動きます。 前期比だけを見て伸び率をそのまま将来に延ばすと、読み違えます。

会社自身も、2027年6月期の海外計画を前期比103.8%と、今期の急伸に対してかなり控えめに置いています。

なお、Ⅰの部には「売上高に対する割合が10%を超える顧客がないため記載を省略しております」とあり、特定の1社に依存する構造ではありません。2025年6月期末の売掛金の上位は、東瀛三山(25百万円)、飯田(23百万円)、Spyglass Trading GmbH(23百万円)、コストコホールセールジャパン(10百万円)、Iconic Spirits LLC(7百万円)と分散しています。


5. 2027年6月期の会社計画

項目2026年6月期実績2027年6月期計画前期比
売上高3,091百万円3,250百万円105.2%
 国内BtoB1,877百万円1,964百万円104.6%
 海外770百万円800百万円103.8%
 BtoC443百万円485百万円109.7%
売上総利益1,734百万円1,872百万円108.0%
売上総利益率56.1%57.6%+1.5pt
営業利益465百万円540百万円116.2%
営業利益率15.1%16.6%+1.6pt
経常利益444百万円537百万円121.1%
当期純利益322百万円359百万円111.2%
EBITDA671百万円763百万円113.8%
総資産6,368百万円6,473百万円101.7%
純資産3,534百万円3,741百万円105.9%
自己資本比率55.5%57.8%+2.3pt
ROE9.6%9.9%+0.4pt
1株当たり当期純利益53.61円59.63円+6.02円
1株当たり配当金21.44円23.85円+2.41円

会社予想EPSの検算をしておきます。359百万円 ÷ 6,023,920株 = 59.60円。会社開示の59.63円との差は、純利益予想が百万円未満切捨てで表示されているためです(59.63円から逆算すると359,206千円)。

この会社は上場時に新株を発行していないため(第7章)、株数が動かず、利益の伸びとEPSの伸びが一致します。

当期純利益の伸び率 322 → 359 = +11.2%
EPSの伸び率   53.61円 → 59.63円 = +11.2%
→ 一致。希薄化はゼロ

5-1. 営業利益の増減要因(会社開示のブリッジ)

会社は補足説明資料で、営業利益の増減要因を9項目に分けて開示しています。合計の検算までやっておきます(単位:百万円)。

要因2026年6月期(実績)2027年6月期(計画)
起点317465
増収効果+228+92
粗利率改善効果+11+47
人件費△37+19
販売費+7△35
物流費△14△39
修繕費△12
管理諸費△20△1
研究開発費+13△6
その他△27△1
合計466541
開示値465540

合計は開示値と1百万円しか違いません(百万円未満の丸めによるもの)。ブリッジ図を見たら合計を確かめる、という手順を踏むと、内訳が全部そろっているのか、それとも一部だけの開示なのかがわかります。この会社は全部出しています。

2026年6月期のポイントは、増収効果+228に対して費用側の合計が△90あることです。会社は人件費△37を「人員増・上場に伴う特別賞与」、修繕費△12を「第2蔵土地取得に伴う関連費用、本社棟空調保守」、管理諸費△20を「株主優待引当金による管理諸費の増加」と説明しています。研究開発費が+13(=費用の減少)となっているのは「デザイン費等の研究開発費の抑制」によるものです。

2027年6月期でいちばん大きな変数は、粗利率改善の+47百万円です。会社はその根拠として、2026年2月の価格改定効果と、2026年10月に予定されている酒税改定に伴う主力リキュールの価格改定を挙げています。リキュールは増税の対象です。増税分を販売価格にきちんと転嫁できるかどうかが、この計画の前提になっています。Ⅰの部の事業等のリスクにも「税率の改正に伴い、販売価格の改定が円滑に実施できなかった場合、当社の利益率が悪化する」と明記されています。

値上げは2026年2月に一度実施したばかりです。 そこに2026年10月の酒税改定に伴う価格転嫁が重なります。1年足らずで2回、店頭価格が上がることになる。需要が耐えられるかどうかは、2027年6月期の中間決算(7〜12月=最需要期を含む)の数字ではじめて見えます。

なお、2026年6月期は粗利率が計画56.9%に対して実績56.1%と未達でした。その会社が、翌期は57.6%へ1.5ポイント引き上げる計画を置いているという関係は、押さえておく価値があります。

5-2. 会社が示す貸借対照表とキャッシュ・フローの計画

項目2025年6月期2026年6月期2027年6月期目標
流動資産合計2,861百万円2,799百万円3,101百万円
固定資産合計3,199百万円3,568百万円3,372百万円
流動負債合計557百万円759百万円897百万円
固定負債合計2,310百万円2,074百万円1,834百万円
営業キャッシュ・フロー250百万円686百万円583百万円
投資キャッシュ・フロー△246百万円△618百万円△49百万円
フリーキャッシュ・フロー4百万円68百万円534百万円
財務キャッシュ・フロー△242百万円△259百万円△399百万円
期末現預金1,516百万円1,324百万円1,557百万円

2027年6月期の投資キャッシュ・フローが△49百万円と、今期の△618百万円から大きく減る計画になっています。第二蔵の用地取得が一巡し、来期は「生産自動化設備投資」に絞る方針だからです。その結果、フリーキャッシュ・フローは534百万円まで増える見込みで、財務キャッシュ・フローの△399百万円(借入返済と配当)を賄う形になっています。

第二蔵の建物・設備そのものは、この計画にまだ入っていません。 会社は「数年後の第2蔵建設に向けた収益の確保」と表現しており、用地(奈良県葛城市・約18,000平方メートル・本社から車で約5分)は取得済みですが、建設の時期と金額は未定です。


6. 株主優待

梅乃宿酒造には株主優待があります。上場承認時から配当政策とセットで打ち出されていたもので、個人投資家の関心を集めた要素のひとつです。

6-1. 優待の内容

会社IRサイトのFAQと、上場申請時の有価証券報告書(Ⅰの部)「提出会社の株式事務の概要」に、同じ内容が記載されています。毎年6月30日現在の株主名簿に記載された1単元(100株)以上の株主が対象です。

保有期間100株以上200株未満200株以上
1年未満EC利用券1,000円分EC利用券1,000円分+対象株主限定日本酒(720ml)
1年以上EC利用券2,000円分EC利用券2,000円分+対象株主限定日本酒(720ml)+株主限定蔵見学会

6-2. 名目の利回りを計算してみる

株価1,173円(2026年9月2日終値)を前提に、読者が自分で再計算できる形で置きます。EC利用券は額面がはっきりしているので、これだけで計算します。

【100株を買う場合】
投資額 1,173円 × 100株 = 117,300円

保有1年未満:EC利用券1,000円 ÷ 117,300円 = 0.85%
保有1年以上:EC利用券2,000円 ÷ 117,300円 = 1.71%

(参考)2027年6月期の予想配当 23.85円 × 100株 = 2,385円
    配当利回り 2,385 ÷ 117,300 = 2.03%
    配当+EC利用券(1年以上)= 4,385円 → 3.74%

【200株を買う場合】
投資額 1,173円 × 200株 = 234,600円

保有1年未満:EC利用券1,000円 ÷ 234,600円 = 0.43%(+限定日本酒720ml)
保有1年以上:EC利用券2,000円 ÷ 234,600円 = 0.85%(+限定日本酒720ml+蔵見学会)

6-3. 名目と実質のギャップ

ここが優待でいちばん見落とされやすいところです。

(1)EC利用券は現金ではありません。 使えるのは梅乃宿酒造の公式オンラインショップだけです。そこで買いたいものがあるかどうかで、実質価値は0円にも2,000円にもなります。もともと梅乃宿の商品を買っている人にとっては額面どおりの価値ですが、そうでなければ「2,000円分買うために送料と差額を払う」ことになりかねません。すでにこの会社のお酒を飲んでいる人ほど、額面に近い価値になる優待だと言えます。

(2)200株の優待は、1株あたりで見ると薄くなります。 EC利用券の金額は100株でも200株でも同じです。増えるのは限定日本酒(720ml)と蔵見学会の権利だけ。上の計算のとおり、EC利用券だけで見た名目利回りは200株にすると半分になります。限定日本酒の金額を会社が開示していないため、200株の実質利回りは計算できません。この点は「未確認」として扱うべきところです。

(3)蔵見学会は現地に行けることが前提です。 蔵は奈良県葛城市にあります。優待の一部として金額に換算するのは、居住地によって意味が変わります。

(4)「保有期間1年以上」の判定方法が公表されていません。 会社IRのFAQには「保有期間に応じて」としか書かれておらず、何をもって1年以上とするか(連続する2回の基準日で株主名簿に記載されることなのか、証券会社の残高記録なのか)が明示されていません。この条件は初回取得の締切日を左右するので、200株以上を1年以上保有して優待を受け取りたい場合は、会社IRに直接確認することを強くおすすめします。

6-4. 権利を得るにはいつまでに買えばよいか

権利確定日は毎年6月30日です。実際に買わなければならないのは、その前の「権利付き最終日」です。

国内株式の受渡し(決済)は、2019年7月16日の約定分から「T+2」(約定日から起算して3営業日目に受渡し)です。基準日の時点で株主名簿に載っている必要があるため、権利付き最終日は権利確定日の2営業日前になります。カレンダーで計算すると次のとおりです。

対象権利確定日権利付き最終日(曜日つき)
2026年6月期(済)2026年6月30日(火)2026年6月26日(金)
2027年6月期2027年6月30日(水)2027年6月28日(月)

※祝日や市場の休業日が入ると1営業日ずれます。実際に買う前に、必ず証券会社のカレンダーで確認してください。

6-5. この優待は続きそうか

優待の継続性を考えるときは、会社側のコストから見るのが早道です。

2026年6月期の貸借対照表には「株主優待引当金 15,084千円」が新しく計上されています(前期はゼロ)。キャッシュ・フロー計算書でも同額が加算項目として出てきます。この期から優待制度を始めたので、これがそのまま初年度の優待コストの見積額です。

株主優待引当金 15,084千円 ÷ 営業利益 465,490千円 = 3.2%
株主優待引当金 15,084千円 ÷ 発行済株式数 6,023,920株 = 1株あたり2.50円

決算補足説明資料の営業利益ブリッジでは「管理諸費 △20百万円」とされ、その説明が「株主優待引当金による管理諸費の増加」となっています。引当金そのものは15百万円なので、管理諸費という括りには優待引当金以外の増加分も5百万円程度含まれていると読むのが自然です(筆者の解釈)。

継続性の判断材料としては、次の点を挙げられます。

  • 優待の中身が自社商品・自社ECの利用券であり、金券や他社商品券ではありません。会社の負担は原価ベースになるため、額面どおりの現金流出ではありません。金券型の優待より、コスト面での持続性は高い類型です。
  • 一方で、優待は株主数に比例して増えます。 現時点で発行済株式数の31.29%を創業家の資産管理会社が、14.33%程度を投資ファンドが保有しており(第7章)、優待の対象になる株主は限られています。今後、大株主が保有株を放出して個人株主が増えれば、優待コストも比例して増えます。
  • 会社は株主還元を配当性向40%・自己株式取得10%(総還元性向50%)と数値で示しており、優待はその外側にあります。優待コストは営業利益の3.2%なので、いまの規模なら負担は限定的です。

優待の継続は約束されたものではありません。 会社は制度の内容や継続について、今後の開示で変更する可能性があります。最新の内容は必ず会社IRサイトの「株主還元策/株主優待」ページでご確認ください。

6-6. 優待だけを目当てに買うべきか

推奨はしませんが、判断の軸だけ置いておきます。

100株の投資額は約11.7万円です。EC利用券は1年未満で1,000円、1年以上で2,000円。この株は1日で1〜3%程度動くことが普通にあります。 1%は約1,170円で、1年以上保有した場合のEC利用券の半分強にあたります。優待の価値は、株価の1〜2日分の値動きと同じ桁だということです。

この会社のお酒をもともと買っている人にとって、EC利用券は額面どおりの価値があります。そうでない人にとっては、優待は投資判断の主要因にはなりにくい規模だと考えます。


7. 資本政策と株主構成:上場したのに会社に1円も入っていない

この会社の資本構造は、上場したばかりの会社としてはかなり特徴的です。ここを理解しないと、指標の見え方を読み違えます。

7-1. 公募ゼロ・売出しのみのIPOだった

梅乃宿酒造は上場に際して新株を1株も発行していません。

決算短信の「発行済株式数(普通株式)」を見ると、期末発行済株式数は2026年6月期・2025年6月期とも6,023,920株、期末自己株式数はどちらもゼロ、期中平均株式数もどちらも6,023,920株です。上場を挟んで1株も動いていません。

つまりこの上場は、既存株主が持っている株を市場に売った「売出し」だけで構成されています。

これが意味するのは次の3つです。

  1. 会社には上場による資金が1円も入っていません。 一般的なIPOでは公募増資で得た資金が設備投資や借入返済に充てられますが、この会社にはそれがありません。第二蔵の建設も、借入返済も、すべて営業キャッシュ・フローと銀行借入で賄うことになります。実際、キャッシュ・フロー計算書の財務活動の欄には、長期借入金の返済・上場関連費用の支出・リース債務の返済しかなく、株式発行による収入は1行もありません。
  2. 希薄化はゼロです。 新株が発行されていないので、既存株主の1株あたり利益が薄まっていません。潜在株式(新株予約権など)も存在しないため、決算短信の「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」は「該当なし」です。上場直後の会社にありがちな「会社予想EPSと実株数ベースEPSがずれる」という現象も起きません。株価情報サイトのPERやPBRをそのまま使えます。
  3. 上場は、既存株主が現金化する場でした。 誰がいくら現金化したのかは、次の項で見ます。

7-2. 投資ファンドの出口

Ⅰの部の「株主の状況」によれば、上場前の株主構成はこうでした。

株主所有株式数比率
J-GIA2号投資事業有限責任組合2,751,580株45.68%
グッドフィールド・ビーチサイド株式会社(社長の資産管理会社)1,885,040株31.29%
吉田佳代(社長・個人分)740,400株12.29%
JGⅡ(CAYMAN),L.P.320,620株5.32%
梅乃宿酒造持株会161,840株2.69%
松浪雄二(取締役)80,280株1.33%
その他役員・執行役員(5名)84,160株1.40%
合計6,023,920株100.00%

日本成長投資アライアンス(J-GIA)が運営する2つのファンドの合計が51.0%、創業家(社長個人+資産管理会社)が43.6%です。上場前は、この会社は投資ファンドが過半数を持つ会社でした。 2021年6月に、この2つのファンドから合計1,000百万円の出資を受けたのが始まりです。

上場によって何が起きたかは、筆頭株主異動の開示に書かれています。

株主上場前(2026年3月25日)上場後(2026年4月24日)
J-GIA2号投資事業有限責任組合2,751,580株・45.68%・第1位863,280株・14.33%・第2位
グッドフィールド・ビーチサイド1,885,040株・31.29%・第2位1,885,040株・31.29%・第1位

J-GIA2号は保有株の大半を手放し、筆頭株主が創業家側に移りました。

J-GIA2号の減少分の内訳
 上場前 2,751,580株
 上場後  863,280株(オーバーアロットメントのための貸株246,300株を除く)
 貸株   246,300株(SMBC日興証券へ、2026年5月28日を期限として貸出)

 売出しに応じた株数 = 2,751,580 − 863,280 − 246,300 = 1,642,000株
 発行済株式数に対する比率 = 1,642,000 ÷ 6,023,920 = 27.26%

発行済株式の27.26%が、この1社の売出しだけで市場に出ました。 これに加えてもう1つのファンド(JGⅡ(CAYMAN),L.P.、5.32%)の動きがありますが、こちらは異動の開示対象になっていないため、売出しに応じたかどうかを一次情報では確認できませんでした。

用語メモ:オーバーアロットメント(OA) IPOで需要が想定より多かった場合に備え、主幹事証券が大株主などから株を借りて追加で売る仕組みです。あとで市場から買い戻すか、貸株人から追加で取得して返します。梅乃宿酒造の場合、貸株はJ-GIA2号から246,300株、期限は2026年5月28日でした。その結果がどうなったかを示す開示は、筆者が確認した範囲では見つかりませんでした。 株価は上場後、公開価格600円を一度も下回っていないため、貸株が返還される形で処理された可能性が高いと考えますが、これは推定です。いずれの場合も新株は発行されないため、株数は変わりません。決算短信の期末発行済株式数が6,023,920株のままであることが、その裏付けになります。

7-3. 上場前に約10億円の配当を出していた

もうひとつ、Ⅰの部の配当政策に書かれている事実があります。

2023年12月20日、上場の2年4か月前に、1株3,320円・総額999,970千円(約10億円)の臨時配当を実施しています。 2021年6月にファンドから受け入れた出資額1,000百万円と、ほぼ同額です。

会社はこの配当の経緯を丁寧に説明しています。コロナ禍で手元現預金を厚く持つ必要があったこと、新蔵移転の資金は2022年3月の銀行借入30億円で賄えたこと、その後コロナ禍が収束して現預金に余剰感が出たため、現預金残高・自己資本比率・自己資本利益率・純有利子負債/調整EBITDAの4指標を勘案して資本効率改善のために配当を決めた、という説明です。

この配当は全株主に対して按分されているため、ファンドだけが受け取ったわけではありません。ただ、当時のファンドの持分は51.0%なので、およそ半分がファンドに、残りが創業家側などに渡った計算になります。

年月出来事
2021年6月J-GIA2号・JGⅡ(CAYMAN)から合計1,000百万円の第三者割当増資
2022年3月新蔵建設のため総額3,000百万円の銀行借入。梅乃宿ホールディングス等を吸収合併
2022年7月奈良県葛城市寺口に新蔵を建設し本社・製造場を移転
2023年12月18日新株予約権の行使(社長の資産管理会社と取締役、合計45,182株)
2023年12月20日臨時配当 999,970千円(1株3,320円)を実施
2025年4月17日1株につき20株の株式分割(301,196株→6,023,920株)
2026年3月25日上場承認
2026年4月24日東証スタンダード市場に上場(公募なし・売出しのみ)

2024年6月期の配当性向は293.3%と開示されています。これは分割前の1株配当3,320円を、分割前の1株当たり当期純利益1,131.90円で割った値です。配当総額999,970千円と当期純利益317,170千円で割ると3.15倍になります(筆者の計算)。分母の株数が違う(EPSは期中平均280,210株、配当は基準日の301,196株)ためにこの差が出ます。

この配当は上場前の話であり、いまの株主に直接関係するものではありません。 ただ、「この会社が上場までにどういう資本の動きをしてきたか」を知っておくことは、これからの資本政策を読むうえで役に立ちます。少なくとも、この会社は株主還元に消極的な会社ではないという事実は読み取れます。

7-4. 初配当と還元方針

2026年6月期に初めての配当が出ました。

決算期1株配当配当金総額配当性向純資産配当率
2025年6月期0円
2026年6月期21円44銭129百万円40.0%3.8%
2027年6月期(予想)23円85銭143百万円(筆者の計算)40.0%

検算します。

2026年6月期:21.44円 ÷ EPS 53.61円 = 40.0%
2027年6月期:23.85円 ÷ EPS 59.63円 = 40.0%
→ どちらもきれいに配当性向40%。EPSに連動する業績連動型

配当総額
2026年6月期: 21.44円 × 6,023,920株 = 129,152千円(短信の開示は129百万円)
2027年6月期: 23.85円 × 6,023,920株 = 143,670千円(予定)

なお、第3四半期決算短信(2026年5月13日)の時点では2026年6月期の期末配当予想は20円95銭でした。実績が21円44銭になったのは、当期純利益が計画315百万円に対して322百万円と上振れ、配当性向40%を維持した結果です。配当が業績にそのまま連動する会社では、業績予想の修正がそのまま配当の修正になります。

配当支払開始予定日は2026年9月29日です。

会社は還元方針として**配当性向40%+自己株式取得10%=総還元性向50%**を掲げています。2027年6月期の当期純利益予想359百万円で計算すると、自己株式取得は36百万円程度が目安になります(筆者の概算。会社は自己株式取得の具体的な金額・時期を公表していません)。

配当の基準日は毎年6月30日(期末)で、定款上は12月31日を基準日とする中間配当も可能です。ただし2026年6月期は年1回の期末配当のみでした。「配当が年2回ある会社」と思い込まないよう注意が必要です。

株式分割については、2025年4月17日の1対20の分割以降、実施されていません。過去記事との比較で調整が必要なのはこの1回だけです。

自己株式は保有していません(2025年6月30日・2026年6月30日ともゼロ)。

保有有価証券は、2026年6月30日時点で投資有価証券79,354千円(前期49,617千円)です。その他有価証券評価差額金が8,684千円から27,676千円へ18,992千円増えており、これが今期の純資産増加341,921千円のうち当期純利益322,929千円を除いた部分にそのまま対応します。総資産6,368百万円に対して1.2%程度で、含み益を論じるような規模ではありません。

7-5. 借入の中身とキャッシュ・フロー

上場で資金が入っていない以上、この会社の設備投資を支えるのは営業キャッシュ・フローと銀行借入です。

まず借入の中身です。2025年6月30日時点の内訳がⅠの部の附属明細表にあります。

借入先残高構成比
南都銀行1,025百万円41.5%
日本政策金融公庫820百万円33.2%
三井住友銀行626百万円25.3%
合計2,472百万円100.0%

平均利率は0.3〜0.4%、最終返済期限は2037年3月31日です。返済スケジュールは、1年以内236百万円、以降も毎年220〜236百万円ずつで、5年超が1,337百万円残ります。毎年およそ2.3億円ずつ、10年以上かけて返していく構造です。

担保も入っています。2025年6月30日時点で、現金及び預金50百万円、投資有価証券23百万円、建物1,250百万円、土地188百万円の合計1,513百万円が担保に供され、担保付の長期借入金は2,387百万円。借入の97%が担保付です。

2026年6月期のキャッシュ・フローを見ると、この構造が動いていることがわかります。

項目2024年6月期2025年6月期2026年6月期
営業活動によるCF+570百万円+250百万円+686百万円
投資活動によるCF△120百万円△246百万円△618百万円
フリーCF(営業+投資)+449百万円+3百万円+67百万円
財務活動によるCF△950百万円△242百万円△259百万円
期末の現金及び現金同等物1,755百万円1,516百万円1,324百万円

検算しておくと、686,524 − 618,998 − 259,794 + 換算差額1,060 = △191,208千円で、決算短信の「前事業年度に比べて191百万円減少」と一致します。

2026年6月期は営業キャッシュ・フローが686百万円と大きく改善しました(前期は250百万円)。一方で投資キャッシュ・フローが618百万円と大きく出ています。中身は第二蔵の用地取得と造成費用が中心で、有形固定資産の取得による支出が605,657千円です。稼いだキャッシュのほぼ全額を、次の蔵の土地に使ったという形です。フリーキャッシュ・フローは67百万円と、かろうじてプラスに留まりました。

貸借対照表でも同じ動きが確認できます。

科目2025年6月30日2026年6月30日増減
土地197,531千円592,498千円+394,967千円
建設仮勘定59,093千円201,565千円+142,472千円
棚卸資産910,623千円1,004,320千円+93,697千円
現金及び預金1,618,184千円1,486,998千円△131,186千円
長期借入金(1年内含む)2,472,367千円2,235,556千円△236,811千円

土地が約4億円増え、造成工事の途中である建設仮勘定も1.4億円増えています。第二蔵の用地取得の投資予定金額は562百万円(Ⅰの部・2026年2月28日時点の既支払額426百万円)でした。土地は買ったが、そこに何をいつ建てるかはまだ決まっていないという段階です。

有利子負債の指標を計算しておきます。

長期借入金(1年内返済予定を含む) 2,235,556 千円
現金及び預金           1,486,998 千円
ネットデット            748,558 千円

D/Eレシオ   2,235,556 ÷ 純資産3,534,789 = 0.63倍
ネットD/E   748,558 ÷ 純資産3,534,789 = 0.21倍

自己資本比率は55.5%、ネットD/Eは0.21倍で、財務の健全性そのものに強い懸念はありません。ただし、第二蔵の建物と設備をこれから建てるとなれば、この数字は動きます。

7-6. 製造原価から見えること

決算短信には製造原価明細書が付いています。ここも読みどころがあります。

区分2025年6月期構成比2026年6月期構成比前期比
材料費831,829千円66.0%889,595千円67.4%106.9%
労務費197,136千円15.7%188,029千円14.2%95.4%
経費230,622千円18.3%242,644千円18.4%105.2%
当期総製造費用1,259,588千円100.0%1,320,269千円100.0%104.8%

売上が15.1%増えているのに、製造費用は4.8%しか増えていません。 そして製造現場の労務費は前期比95.4%と減っています(販売費及び一般管理費のほうの人件費は、上場特別賞与などで増えています)。

これが第1章で見た「同じ蔵をより速く回す」の中身です。生産量が増えても、製造現場の人件費はむしろ減った。会社が進めてきた製造ラインの自動化と、リキュールの製造リードタイムの短さが効いていると読めます。

一方で材料費の構成比は66.0%から67.4%へ上がっています。原材料価格の上昇分は、値上げで吸収する形になっています。


8. 株価の見方

株価は日々動きます。以下の数字は2026年9月2日終値をもとにしたものです。実際に判断される際は、必ずご自身で最新の株価と指標をご確認ください。

項目数値
株価(2026年9月2日終値)1,173円
発行済株式数6,023,920株
時価総額7,066百万円
PER(2027年6月期 会社予想EPS 59.63円)19.67倍
PER(2026年6月期 実績EPS 53.61円)21.88倍
PBR(実績BPS 586.79円)2.00倍
配当利回り(2027年6月期予想 23.85円)2.03%
ROE(2026年6月期実績)9.6%
年初来高値1,350円(2026年4月27日)
年初来安値900円(2026年4月24日=上場日の初値)
公開価格600円
初値900円(公開価格+50%)
上場日終値1,050円(公開価格+75%)

上場後、株価は一度も公開価格600円を下回っていません。 上場日につけた初値900円がそのまま年初来安値になっています。9月2日終値は公開価格比+96%、初値比+30%です。

8-1. 強気に見る材料

  • 粗利率が上がる方向にある。 2026年2月の値上げが浸透し、粗利率は55.69%から56.11%へ改善しました。2027年6月期は57.6%を計画しています。第1章の見方で言えば、「一年中動く工場」の稼働をより高い単価で埋められるようになった、ということです。
  • 製造費用が売上ほど増えていない。 売上が15.1%増えたのに製造費用は4.8%増にとどまり、製造現場の労務費はむしろ4.6%減りました。増産に対して原価が比例的に増えない構造は、今後の増収が利益に変換されやすいことを意味します。
  • 上場で希薄化していない。 公募ゼロなので、既存株主の1株あたりの取り分が薄まっていません。潜在株式もゼロで、利益の伸びがそのままEPSの伸びになります。
  • 海外の伸びしろが残っている。 海外は24の国・地域で、構成比24.9%。日本産酒類の輸出金額は2025年に1,495億円と過去最高を更新しています(Ⅰの部の記載、国税庁資料に基づく)。北米・台湾で伸びた実績があり、コストコの海外店舗への展開も始まっています。
  • 国内BtoBが安定して伸びている。 取引先1,000社超で、売上高の10%を超える単独顧客はいません。前期比104.8%と派手さはありませんが、この部分が売上の60.8%を支えています。
  • 還元方針が数値で明示されている。 配当性向40%、総還元性向50%。初配当を出した初年度から、計画どおりの水準を実行しました。
  • ブランドとしての露出がある。 2025年10月28日の日米首脳会談後のワーキングランチのメニューに「葛城 純米大吟醸」が採用された実績があり、2026年6月には350mLで税込22万円という最高価格帯の梅酒「AFULL 刻覚」を発売しています。高価格帯の商品を出せるブランドは、値上げ耐性の面で有利に働きます。

8-2. 弱気に見る材料

  • 上場時に自社で出した営業利益・粗利率・EBITDAの計画に届かなかった。 わずか2か月半後の着地で、営業利益は計画482百万円に対して465百万円(96.5%)、EBITDAは686百万円に対して671百万円(97.8%)、粗利率は56.9%に対して56.1%でした。上場直後の初回決算で計画未達というのは、今後の計画の確度を見るうえで軽くない事実です。
  • 4〜6月の3か月の営業利益が284万円しかない。 上場費用という一時要因を除けば経常利益は黒字ですが、営業利益の水準そのものが極端に低い。この会社は年に2四半期しか稼がない、という季節性を織り込んでおく必要があります。
  • 最終利益の一部は税額控除に支えられている。 通期の税負担率は27.0%で、法定実効税率34.3%との差は約32百万円。過去2期も同様の傾向がありますが、税額控除は制度と実績に依存し、毎年同じとは限りません。加えて2027年6月期から法定実効税率が35.1%に上がります。
  • ROEが会社の目安を下回っている。 会社はKPIとしてROE10%超の維持を掲げていますが、2026年6月期の実績は9.6%、2027年6月期の計画も9.9%です。2期連続で目安に届かない計画になっています。
  • 海外の伸びは上半期に偏っていた。 通期で前期比159.6%でも、下半期は上半期の6割の水準です。過去にも2025年6月期に3割減った実績があり、大口取引の有無で年度の数字が動きます。会社自身も来期の海外計画を103.8%と控えめに置いています。
  • BtoCは計画未達だった。 2026年6月期は計画449百万円に対して443百万円(98.5%)。会社が「成長ドライバー」と位置づけるチャネルが、唯一計画を下回りました。2027年6月期は109.7%の成長を計画し、そのためにEC広告投資を35百万円積む前提です。
  • 1年足らずで2回の値上げになる。 2026年2月の価格改定に続き、2026年10月の酒税改定に伴う価格転嫁が控えています。2027年6月期の粗利率改善+47百万円は、この転嫁が需要を大きく損なわないことを前提にしています。
  • 上場で資金が入っていない。 第二蔵の建物・設備の資金は、営業キャッシュ・フローか追加の借入で賄うことになります。2026年6月期のフリーキャッシュ・フローは67百万円しかありませんでした。
  • 流通株式の基準に近接するリスクを会社自身が開示している。 Ⅰの部の事業等のリスクに、「当社の流通株式比率及び流通株式時価総額は、新規上場時において、株式会社東京証券取引所の定める上場維持基準に近接することが見込まれます」と明記されています。時価総額70億円、創業家が31.29%を保有する構造では、流動性が細るリスクが残ります。
  • 投資ファンドが14.33%を保有し続けている。 J-GIA2号は上場後も863,280株(14.33%)を保有しています。Ⅰの部のリスク項目にも「上場後の一定時点において、当社株式を売却することが想定されますが、その処分方法によっては、当社株式の需給バランス及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります」と書かれています。
  • ロックアップの解除条件が既に満たされている可能性がある。 IPO情報サイトの記載によれば、ロックアップ期間は上場後180日(2026年10月20日まで)で、公開価格の1.5倍=900円で解除可能な条項が付いています(報道・IPO情報サイトベース。目論見書の原文は筆者未確認)。株価は初値の時点で900円をつけており、その後も900円を下回っていません。条項の内容が上記のとおりであれば、主幹事証券の判断次第で期間内でも売却が可能な状態にあることになります。これは記事執筆時点でもっとも確認の必要な論点です。目論見書または訂正届出書の原文でご確認ください。

8-3. 「一年中動く工場」という見方から、株価をどう考えるか

第1章で置いた見方に戻ります。

この会社は、冬しか動かなかった蔵をリキュールで一年中動くようにした会社です。だから粗利率が業界平均を大きく上回り、在庫回転率も高い。売上が15.1%増えても製造費用が4.8%しか増えなかったのも、同じ構造から出てきます。ここまでが強みの側です。

弱みの側では、同じ見方がこう反転します。工場は一年中動かせても、飲む人の季節は動かせません。 そのため利益は上半期に80.9%が集中し、4〜6月はほぼゼロになります。そして、いま買った土地の上に第二蔵を建てれば、埋めるべき工場はさらに大きくなります。埋めるのに使える手段は、値上げか、海外か、BtoCか。2026年6月期はそのうち「値上げ」と「海外」が同時に効いた年でした。2027年6月期は、酒税改定への価格転嫁と、EC広告投資(△35百万円を織り込み)で埋めにいく計画です。

PER19.67倍(2027年6月期予想)、PBR2.00倍という水準を高いと見るか妥当と見るかは、「この工場を埋め続けられるか」をどう評価するかに帰着します。判断は読者ご自身でお願いします。


9. 今後のカレンダーと見るべきKPI

9-1. カレンダー

時期予定・イベント
2026年9月24日2026年6月期の有価証券報告書の提出予定日(正式な大株主表・税効果注記・借入金の内訳が確認できる)
2026年9月28日第76期定時株主総会
2026年9月29日2026年6月期 期末配当(21円44銭)の支払開始予定日
2026年10月酒税改定(リキュール増税)。価格転嫁の実施
2026年10月20日ロックアップ期間の満了(上場後180日。数え方で1日ずれます。IPO情報サイトベース)
2026年11月ごろ2027年6月期 第1四半期決算(7〜9月)の発表
2026年12月最需要期。酒税改定後の初めての年末商戦
2027年2月ごろ2027年6月期 中間決算(7〜12月)の発表。この期の利益の大半がここで決まります
2027年6月28日(月)2027年6月期の配当・優待の権利付き最終日(見込み。祝日等で変動)
2027年8月ごろ2027年6月期 通期決算の発表

9-2. 見るべきKPI

会社はⅠの部で、EBITDA・BtoC売上・海外売上・ROEの4つをKPIとして掲げています。実績と計画を並べます。

KPI2024年6月期2025年6月期2026年6月期2027年6月期計画会社の目安
EBITDA622百万円531百万円671百万円763百万円明示なし
BtoC売上448百万円411百万円443百万円485百万円明示なし
海外売上709百万円482百万円770百万円800百万円明示なし
ROE10.1%7.9%9.6%9.9%10%超を維持

BtoC売上は2024年6月期の448百万円をまだ超えていません。 会社が成長ドライバーと位置づけるチャネルが2期かけて元の水準に戻りきっていない、という読み方もできます。

このほか、筆者が見ておきたい数字を挙げます。

  1. 上半期(7〜12月)の利益構成比。 2026年6月期は80.9%でした。この偏りが緩和されるのか、それとも構造として続くのか。
  2. 粗利率。 2026年6月期56.1%(計画56.9%に未達)→2027年6月期計画57.6%。酒税改定への価格転嫁が効いているかは、まず粗利率に出ます。
  3. 海外売上の四半期の分布。 通期の前期比だけでなく、上半期と下半期でどう分かれているか。
  4. 税負担率。 2026年6月期27.0%。法定実効税率が35.1%に上がるなかで、実効ベースがどこに着地するか。
  5. 製造原価の労務費と材料費の構成比。 2026年6月期は労務費14.2%、材料費67.4%。自動化投資が続くなかで、この比率がどう動くか。
  6. 第二蔵の建設計画の具体化。 建物・設備の時期と金額が決まった時点で、投資キャッシュ・フローと借入の見通しが大きく変わります。
  7. ロックアップ満了後の大株主の動き。 J-GIA2号の14.33%、創業家の31.29%。大量保有報告書の提出の有無。
  8. 株主優待引当金の残高。 個人株主が増えれば増える性質の費用です。2026年6月期は15,084千円でした。

10. 3行まとめ

  1. 2026年6月期は売上高3,091百万円(+15.1%)、営業利益465百万円(+46.8%)と過去最高だが、上場時に自社で出した営業利益計画482百万円・粗利率56.9%・EBITDA686百万円のいずれにも届かず、通期から差し引いた4〜6月の3か月は営業利益が284万円、経常利益は1,292万円の赤字だった。
  2. この会社は冬しか動かなかった蔵をリキュールで一年中動く工場に作り替えた会社であり、粗利率56%という高い収益性も、売上15.1%増に対し製造費用が4.8%増にとどまる構造も、利益の80.9%が上半期に偏る季節性も、いま土地を買った第二蔵をこれから埋めていく必要があることも、同じ構造から出てくる。
  3. 上場は公募ゼロ・売出しのみで会社に資金は入っておらず、潜在株式もゼロで希薄化もない。初配当21円44銭(配当性向40.0%)と株主優待が始まった一方、投資ファンドが14.33%を保有し続け、流通株式の上場維持基準に近接するリスクを会社自身が開示している。

免責事項

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は特定の銘柄の売買を推奨・勧誘するものではなく、投資助言でもありません。記載した数値は、梅乃宿酒造株式会社の2026年6月期決算短信・2026年6月期通期決算補足説明資料・2026年6月期第3四半期決算短信・上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)・上場申請のための半期報告書・適時開示・会社IRサイトおよび報道に基づいています。「概算」「筆者の試算」「筆者の差し引き」「筆者の計算」と付した数値は筆者が算出したものです。四半期別の数値は会社が単独四半期として開示しているものではなく、通期・第3四半期累計・中間期の開示値から筆者が差し引いたものです。

本記事で踏み込めなかった論点: オーバーアロットメントの帰結、ロックアップの解除条項の原文、上場時の売出株数の内訳、2026年6月30日時点の借入先別残高と大株主の状況、4〜6月の税額控除の内訳については、原文を確認できていません。このうち借入先別残高・大株主表・税効果注記は、2026年9月24日提出予定の有価証券報告書で確認できる見込みです。ロックアップの解除条項は目論見書または訂正届出書でご確認ください。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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