株式投資

【2026年9月発表・第2四半期決算(5〜7月期)】デル・テクノロジーズ(NYSE: DELL)――売上58%増・AI受注残950億ドルなのに、営業キャッシュフローはなぜ減ったのか?

本記事は2026年9月3日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • デルが「PCの会社」から「AIサーバーの会社」に変わった今、どこで儲けているのか(事業構造の1枚表)
  • 売上58%増・純利益3.6倍という派手な数字の裏で、営業キャッシュフローが前年比13%減った理由
  • 会社が強調する「調整後フリーキャッシュフロー81億ドル」のうち、8割が何でできているか
  • AIサーバー受注残950億ドルを、受注高・売上高から自分で積み上げて確かめる方法
  • 通期売上予想が半年で1,400億ドル→1,920億ドルへ、3回引き上げられた中身の分解
  • 株主資本がマイナス(債務超過)なのに株主還元が過去最高、という状態の読み方
  • 強気・弱気それぞれの材料と、次の決算までに見るべき数字

1. 前提知識:デルはどんな会社か

1-1. 「会社のIT機器を、買って・据え付けて・動かし続ける仕事」を丸ごと引き受ける会社

デルの事業を一言で言うなら、昔なら企業の情報システム部門が自前でやっていた「サーバーやPCを選んで買い、データセンターに据え付け、壊れたら直し、古くなったら入れ替える」という仕事を、設計・組み立て・設置・保守、そして支払いの立て替えまで丸ごと引き受ける会社です。

オフィスで働いたことがある方なら、情シスの担当者が新しいノートPCを何十台も箱から出して設定している光景や、サーバー室で古い機械を引き抜いて新しいラックを据え付けている光景を見たことがあるかもしれません。デルはその「機械を用意して、置いて、面倒を見る」工程を、自社の工場・物流・保守網・金融子会社(Dell Financial Services)で一手に引き受けます。

この例えを覚えておくと、この決算の読み方が変わります。丸ごと引き受けるということは、「引き受けた分だけ、部品在庫・売掛金・顧客への立て替え資金がデルの貸借対照表に載る」ということだからです。売上が伸びるほど貸借対照表が膨らむ構造が、今回の営業キャッシュフロー減少の背景にあります(3章で扱います)。

1-2. 事業構造の1枚表(第2四半期・2026年5〜7月期)

部門中身売上(億ドル)前年比営業利益(億ドル)利益率全社利益に占める割合
ISG(インフラ)AIサーバー164.0+100%
ISG従来型サーバー・ネットワーク105.3+122%
ISGストレージ48.5+26%
ISG 合計データセンター向け機器317.8+89%47.815.0%81%
CSG(クライアント)法人向けPC131.9+22%
CSG個人向けPC18.4+7%
CSG 合計PC・周辺機器150.3+20%11.47.6%19%
その他VMware再販など1.6
全社469.7+58%53.9(GAAP)11.5%

出典:2026年9月1日発表 決算リリース。全社営業利益は無形資産償却・株式報酬・その他本社費用を控除した後のGAAPベース。部門別合計(59.2億ドル)との差はこれらの本社費用。

この表のポイントは2つです。

  1. 利益の8割がISG(データセンター向け)から出ている。 1年前は65%でした。PCは売上では全体の3分の1を占めますが、利益では2割です。
  2. AIサーバーは売上全体の35%。 ただし売上が2倍になったのは前年比の話で、この後見るように「受注」はもっと先を走っています。

用語メモ:ISGとCSG デルは事業を2つに分けて開示しています。ISG(Infrastructure Solutions Group)はサーバー・ストレージ・ネットワーク機器など、企業のデータセンターに置く機器の部門。CSG(Client Solutions Group)はノートPC・デスクトップ・モニターなど、人が直接使う端末の部門です。「AIサーバー」はISGの中の一区分で、GPU(画像処理装置)を大量に搭載したAI計算用のサーバーを指します。

1-3. 直近3期の業績推移

四半期の話に入る前に、この会社がどういうペースで伸びてきたかを見ておきます。デルの決算期は毎年1月末で、「2026年1月期」を会社は「FY26」と呼びます。今回の決算は「2027年1月期(FY27)の第2四半期」です。

決算期売上(億ドル)増収率営業利益(億ドル)営業利益率純利益(億ドル)EPS(GAAP)EPS(非GAAP)営業CF(億ドル)年間配当
2024年1月期(FY24)884▲14%525.9%324.36ドル7.13ドル871.48ドル
2025年1月期(FY25)956+8%626.5%466.38ドル8.14ドル451.78ドル
2026年1月期(FY26)1,135+19%817.2%598.68ドル10.30ドル1122.10ドル
2027年1月期(FY27)会社予想1,920+69%24.37ドル25.50ドル2.52ドル

出典:各期の決算リリース。FY24の純利益は報道ベース(決算リリース本文にはEPSと営業利益のみ記載)。ROE・自己資本比率は、この会社の場合は株主資本がマイナスのため算出できません(5章で説明します)。

この表から読み取ってほしいことは、2024年1月期まではPC不況で売上が14%減っていた会社が、2年で売上2倍超の予想を出すまでに変わったという点です。営業利益率は5.9%→7.2%と一桁台で、これがこの会社の「普段の姿」です。今期予想のEPS24.37ドルは前期の2.8倍で、利益率も過去の水準を大きく超える見込みです。この高利益率が続くかどうかが、株価を考えるときの最大の論点になります。

1-4. 株主優待:制度なし

米国株には日本のような株主優待制度は一般にありません。デルの株主向け還元は四半期配当と自社株買いの2本立てです(5章)。


2. 決算ハイライト(2026年9月1日発表)

2-1. 損益計算書

項目第2四半期(2026年5〜7月)前年同期前年比上半期累計前年比
売上高469.7億ドル297.8億ドル+58%908.1億ドル+71%
売上総利益98.3億ドル54.5億ドル+80%176.1億ドル+70%
売上総利益率20.9%18.3%+2.6pt19.4%▲0.1pt
営業利益(GAAP)53.9億ドル17.7億ドル+204%90.4億ドル+208%
営業利益率11.5%6.0%+5.5pt10.0%+4.5pt
純利益41.3億ドル11.6億ドル+255%75.7億ドル+256%
希薄化後EPS(GAAP)6.34ドル1.70ドル+273%11.58ドル+277%
希薄化後EPS(非GAAP)7.04ドル2.32ドル+203%11.90ドル+208%
営業キャッシュフロー22.3億ドル25.4億ドル▲13%63.1億ドル+18%
フリーキャッシュフロー9.9億ドル18.7億ドル▲47%41.0億ドル±0%
調整後フリーキャッシュフロー81.5億ドル25.2億ドル+224%113.1億ドル+138%

この表のポイントは3つです。

  1. 売上が58%増えて、営業利益が3倍、純利益が3.6倍。 売上の伸び以上に利益が伸びたのは、販管費・研究開発費(合計44.5億ドル、前年比+21%)の伸びが売上の伸びよりずっと小さかったから。営業費用の対売上比率は12.3%→9.5%に下がりました。会社はこれを「規模の利益(オペレーティング・レバレッジ)」と呼んでいます。
  2. EPSの伸び(+273%)が純利益の伸び(+255%)より大きい。 自社株買いで希薄化後株式数が6.86億株→6.52億株(▲5%)に減ったためです。検算:3.551÷0.950=3.74倍→+274%。開示の+273%と一致します(端数差)。
  3. 利益が3.6倍なのに、営業キャッシュフローは13%減、フリーキャッシュフローは47%減。 この3行目が今回の決算の一番わかりにくく一番大事な論点です。3章で分解します。

用語メモ:GAAPと非GAAP GAAPは米国の会計基準どおりの数字。非GAAPは会社が「本業の実力を見るために」買収に伴う無形資産の償却、株式報酬費用、リストラ費用、投資の評価損益などを除いた数字です。デルは説明会での数字をすべて非GAAPで語ります。どちらが正しいというものではなく、両方見て差の理由を確認するのが読み方です。今回はGAAPのEPS(6.34ドル)のほうが非GAAP(7.04ドル)より小さく、差の内訳は無形資産償却0.15+株式報酬0.28+その他0.39-投資評価益0.11-税効果0.01=0.70ドルです。

2-2. 貸借対照表(2026年7月末 vs 2026年1月末)

項目7月末1月末増減
現金・現金同等物115.7億ドル115.3億ドル+0.4
売掛金229.2億ドル175.9億ドル+53.3
金融債権(短期+長期)204.3億ドル142.8億ドル+61.5
棚卸資産(在庫)212.9億ドル104.4億ドル+108.5(2.0倍)
総資産1,273.9億ドル1,012.9億ドル+261.1
買掛金497.2億ドル336.3億ドル+160.9
有利子負債(短期+長期)344.7億ドル315.0億ドル+29.6
繰延収益(短期+長期)297.2億ドル269.3億ドル+27.9
自己株式(取得原価)▲200.1億ドル▲145.3億ドル▲54.8
株主資本▲14.3億ドル▲24.7億ドル+10.4

半年で総資産が26%(261億ドル)膨らみました。増えたのは在庫(2倍)・金融債権(+62億ドル)・売掛金(+53億ドル)で、これを主に買掛金(+161億ドル)、つまり部品を納めたサプライヤーへの未払いで賄っています。1-1の例えで言えば、「引き受けた仕事の分だけ、部品と立て替え金が積み上がった」状態です。

用語メモ:金融債権(Financing receivables) デルには金融子会社(Dell Financial Services、DFS)があり、顧客が機器を買うときにデル自身が分割払い・リースなどの形で資金を貸します。その貸付残高が「金融債権」です。売掛金が「納品したがまだ入金されていない代金」なのに対し、金融債権は「代金を自分で融資した」もので、回収には年単位の時間がかかります。この残高が半年で62億ドル増えたことが、3章の主役になります。

用語メモ:株主資本がマイナス 日本の感覚では「債務超過=危険」ですが、デルの場合は事情が違います。自己株式(買い戻した自社株)を取得原価で200億ドル分も控除しているためで、利益剰余金自体は100.7億ドルのプラスです。米国の大企業では自社株買いを積み重ねた結果、株主資本がマイナスになる例は珍しくありません(別の機会に詳述します)。ただし、自己資本比率やROEといった日本株で使い慣れた指標が計算できないことは覚えておく必要があります。

2-3. キャッシュフロー計算書(第2四半期)

項目第2四半期前年同期
純利益41.3億ドル11.6億ドル
運転資本などの調整▲19.1億ドル+13.8億ドル
営業キャッシュフロー22.3億ドル25.4億ドル
設備投資▲12.4億ドル▲6.8億ドル
自社株買い▲38.0億ドル▲9.4億ドル
配当支払い▲4.1億ドル▲3.7億ドル
借入(純額)+33.7億ドル▲1.5億ドル
現金の増減▲0.2億ドル+4.4億ドル

純利益41億ドルに対して営業キャッシュフローは22億ドル。差の19億ドルが「運転資本の増加」、つまり在庫・売掛金・金融債権に回った分です。そして自社株買い38億ドルは営業キャッシュフローでは足りず、借入を34億ドル純増させて賄った形になっています。


3. 深掘り:「調整後フリーキャッシュフロー81億ドル」の中身

3-1. 3つのキャッシュフローが並んでいる

決算リリースには「キャッシュフロー」と名の付く数字が3つ並んでいます。

指標第2四半期前年比計算式
営業キャッシュフロー22.3億ドル▲13%会計基準どおり
フリーキャッシュフロー(FCF)9.9億ドル▲47%営業CF-設備投資12.4億ドル
調整後FCF81.5億ドル+224%FCF+金融債権の増加66.7億ドル+リース機器4.96億ドル

決算リリースの冒頭サマリーに載っているのは「営業CF 22億ドル」で、CFOの説明会コメントで強調されるのは「調整後FCF 81億ドル」です。同じ四半期の話なのに、上から3行目まで下りると数字が8倍になります。

3-2. 「調整後」とは何を足し戻しているのか

会社の定義(リリース末尾の非GAAP調整表)によると、調整後FCFは**「金融債権の変動による営業CFへの影響を除いた」**数字です。

つまりこういう理屈です。「顧客に融資した分(金融債権の増加)は、営業CFの計算上はキャッシュの流出として扱われる。しかし、それは本業の稼ぐ力とは別の『金融事業』の話なので、除いて見せます」。

理屈自体は筋が通っています。銀行がお金を貸すたびに「キャッシュが減った」と言わないのと同じです。問題は割合です。

調整後FCF 81.5億ドル
  = FCF 9.9億ドル
  + 金融債権の増加 66.7億ドル   ← 82%
  + リース機器 5.0億ドル

調整後FCFの82%が、「顧客に貸したお金」を足し戻した分です。前年同期はこの足し戻しが5.9億ドルで、調整後FCF25.2億ドルの23%でした。1年で構造が変わっています。

3-3. 何が起きているのか

説明会の質疑で、アナリストがまさにこの点(金融債権の急増)を質問しています。CFOの回答を要約すると、「事業の成長に伴うもので、AIの拡大に紐づく。DFS(金融子会社)は選別的に、主に短期の融資に絞って関与する。姿勢に変更はない」というものでした。COOは別の箇所で、「注文から最初のトークン(AIが動き始める瞬間)までの橋渡しをDFSが担うことが差別化になっている」とも述べています。

ここから読み取れる構図はこうです。

  1. AIサーバーの顧客の中には、「ネオクラウド」と呼ばれる新興のAIデータセンター事業者がいる(会社は顧客層を「ネオクラウド・政府系・企業」の3つで語っています)
  2. こうした顧客は巨額のGPUサーバーを一括で買う資金を持たないことがあり、デルが自ら融資して納品を成立させている
  3. その融資が金融債権として残り、営業CFを押し下げる
  4. 会社は「それは金融事業だから」として調整後FCFでは除いて見せる

1-1の例えに戻ると、「機器を用意して、置いて、面倒を見る」の先に**「支払いも待ってあげる」**が加わった、ということです。それ自体は昔からデルがやってきたことですが、AIサーバーの単価が桁違いに大きいため、貸借対照表への影響も桁違いになっています。

3-4. どう評価するか(両論)

問題視しない見方:金融債権は回収されればキャッシュに戻る。デルは金融事業を長年やっており、貸倒引当金も計上している(短期債権に対し1.86億ドル、長期に1.28億ドル)。純利益に対する調整後FCFの比率は1倍超で、会社は資本・流動性に問題はないとしている。

警戒する見方:貸した相手が誰かは開示されていない。AIデータセンター事業者は業歴が浅く、資金調達環境が悪化すれば返済が滞る可能性がある。半年で62億ドル増えた債権のうち、どこまでが短期でどこまでが長期かは開示上、短期128億ドル・長期76億ドルという残高でしか見えない(7月末)。「調整後FCF」だけを見て「キャッシュ創出力が3倍になった」と読むのは、この決算の最も危険な誤読である。

筆者の整理としては、営業CF(22億ドル、前年比▲13%)を基準に見て、調整後FCFは「デルが顧客の資金繰りをどれだけ肩代わりしているか」の指標として別枠で追うのが、この会社の数字の読み方だと考えます。次の四半期に見るべきは、金融債権の残高がさらに増えるのか、回収に転じるのかです。

用語メモ:フリーキャッシュフロー(FCF) 営業活動で稼いだ現金から、事業を維持・拡大するための設備投資を引いた残り。「株主に返したり借金を返したりに使える現金」の目安です。今回のFCF9.9億ドルに対し、自社株買いと配当の合計は42億ドル。差額は借入で賄われています(2-3の表)。


4. 部門別・イベント解説

4-1. AIサーバー:受注残950億ドルを自分で積み上げてみる

デルはAIサーバーについて「受注高」「売上高」「受注残」の3つを四半期ごとに開示しています。これは日本の建設会社と同じ読み方ができます。期首の受注残+当期の受注高-当期の売上高=期末の受注残です。

時点期首受注残受注高売上高期末受注残(計算)会社開示
2026年1月期末(FY26末)430億ドル
第1四半期(2〜4月)430244161513―(筆者未確認)
第2四半期(5〜7月)513609164958950億ドル

(単位:億ドル。受注高・受注残は会社が説明会で示した概数。売上高は決算リリースの確定値)

計算値958と会社開示950の差8億ドルは、概数の端数や受注取消などによるものと考えられますが、開示から理由は確認できません。重要なのは、この式が成り立つことで「受注残950億ドル」が空中の数字ではないと確かめられることです。

この表から読み取れることは2つです。

  1. 第2四半期の受注高609億ドルは、その四半期の売上164億ドルの3.7倍。 注文が来ても作れていません。会社自身が「需要が供給を上回っている」「DRAM、DRAM、DRAM。次にNAND、NAND、NAND」(COOの説明会発言の要約)と、メモリ部品の不足を繰り返し述べています。
  2. 受注残950億ドルは、下半期のAIサーバー売上計画415億ドル(通期740億-上期325億)の2.3倍。 つまり今期の残りを全部消化しても、来期に500億ドル超を持ち越す計算です(筆者の概算。受注の納期やキャンセル条件は不明)。

会社はさらに「向こう5四半期のパイプライン(商談の見込み)は受注残の何倍もある」「顧客数は6,500社を超えた」「直近3四半期で3,300社増えた(最初の3,200社に達するのに8四半期かかった)」と述べています。これらは説明会での発言ベースで、パイプラインの金額は開示されていません。

受注残の注意点:受注残は「納品を約束された注文」ですが、納期が数四半期先のものを含みます。また部品不足で納品できなければ、売上にならないまま受注残に残り続けます。受注残が増えることは「需要がある」証拠であると同時に、「供給が追いついていない」証拠でもあります。

4-2. 従来型サーバー・ネットワーク:+122%の中身

AIサーバーより伸び率が高かったのがこの区分(105億ドル、+122%)です。説明会でアナリストが「価格上昇と前倒し購入ではないか」と疑問を投げ、COOは次のように答えました(要約)。

  • 成長の大半は既存の企業顧客で、古いサーバーを新しい世代に集約する「データセンターの近代化」需要
  • 設置済みのサーバーのうち120万台が旧世代(14G以前)で、新世代に置き換えると6〜8台が1台、次の18Gなら12〜14台が1台に集約できる
  • セキュリティ要件の高度化(耐量子暗号など)が、古い機器の更新を強いる
  • ただし価格上昇(インフレ)の成分も含まれることは認めている。 部品コストが上がり、より多くのコア・メモリ・ストレージを積んだ構成が売れているため
  • 直近2四半期で従来型サーバーのシェアを10ポイント以上獲得した

読み方:+122%のうち、何%が台数増で何%が単価上昇かは開示されていません。会社は「下半期も三桁成長」と言っていますが、メモリ価格が反転すれば単価要因は剥落します。

4-3. ストレージ:+26%、利益率改善の主役

ストレージ(48.5億ドル、+26%)は前期まで1〜2%成長だった区分で、今回の伸びは会社が「EMC買収以来」と言うほどの水準です。ポイントは、他社製品の再販(パートナーIP)から自社製品(デルIP)への入れ替えが進み、利益率が上がっていることです。CFOは「ISGの利益率15%のうち、規模の利益が400bp超、ストレージの利益率改善がその次」と説明しています。一方、ここにもNAND価格上昇による単価上昇が含まれるとCOOは認めています。

4-4. PC(CSG):+20%だが、下半期は減速見込み

法人向けPCが+22%で「5年で最も速い成長」。大企業が設置済みPCの更新を進めていることによるものです(会社説明)。ただし会社は第3四半期のCSG利益率を「6%程度に低下」と明示し、「PC市場に軟化の兆しが見えたため、限られた部品(DRAM・NAND)をPCからインフラ事業に振り向けた」と説明しています。PCは意図的に成長を抑えて、部品をAIサーバーに回している構図です。


5. 通期ガイダンス:半年で3回目の上方修正を分解する

5-1. 修正の推移

発表時期通期売上AIサーバー売上非GAAP EPSGAAP EPS
2026年2月(期初)1,400億ドル約500億ドル12.90ドル11.52ドル
2026年5月(第1四半期)1,670億ドル約600億ドル17.90ドル17.31ドル
2026年9月(第2四半期)1,920億ドル約740億ドル25.50ドル24.37ドル
期初からの上乗せ+520億ドル+240億ドル約2倍約2.1倍

出典:各回の決算リリース。前期の売上1,135億ドルに対し、期初予想は+23%、今回は+69%。

期初から半年で、売上予想を520億ドル引き上げています。この520億ドルは2024年1月期の会社全体の売上(884億ドル)の6割に相当します。

5-2. 下半期の中身

項目上半期実績下半期(会社予想から逆算)前年下半期下半期の前年比
売上908億ドル1,012億ドル604億ドル+68%
うち第3四半期490億ドル+81%
うち第4四半期(逆算)522億ドル
AIサーバー売上325億ドル415億ドル
うち第3四半期190億ドル
うち第4四半期(逆算)225億ドル
非GAAP EPS11.90ドル13.60ドル
うち第3四半期6.50ドル+151%
うち第4四半期(逆算)7.10ドル

筆者の概算。会社は上半期+71%、下半期+68%と説明しており、計算と一致します。

この表のポイントは、第4四半期の売上522億ドル・EPS7.10ドルという、過去最高だった今回(470億ドル・7.04ドル)をさらに上回る四半期を、会社が前提にしていることです。前提が崩れるとすれば「部品が入らない」「顧客のデータセンターが受け入れ準備できていない」の2点で、どちらも需要ではなく供給側の問題です。

5-3. 利益率の前提

CFOは通期の営業費用を「売上の約8%、42年の社史で最低」と述べ、ISGの利益率は下半期に前年比1ポイント超の改善を見込んでいます。一方で、第2四半期のISG利益率15%については「需要・ミックス・価格がすべて追い風に向いた四半期で、すべての要因がこの水準で続くとは想定していない」とも述べています。「一過性の追い風がある」と会社自身が言っている点は、EPS予想25.50ドルを見るときに頭に置いておくべきです。


6. 資本政策と株主還元

6-1. 配当

項目内容
四半期配当1株0.63ドル(年間2.52ドル)
前期比+20%(2.10ドル→2.52ドル。2026年2月に増配発表)
直近の権利確定日2026年10月20日(火)。支払日は10月30日
配当性向(会社予想EPS 25.50ドルに対して)9.9%(筆者の概算)
配当利回り(株価492ドル)0.51%(筆者の概算・報道ベースの株価)

配当は過去3年、毎年20%ずつ増配してきました(1.48→1.78→2.10→2.52ドル)。ただし利益に対する配当の割合は1割程度で、株主還元の主役は配当ではなく自社株買いです。

米国株の配当は四半期ごとに支払われ、権利確定日(record date)の前に株を保有している必要があります。米国株は2024年以降T+1決済(約定の翌営業日に受け渡し)のため、権利落ち日は権利確定日と同日になるのが通例ですが、証券会社によって国内の受付締切が異なります。実際の締切は利用する証券会社で確認してください。

6-2. 自社株買い

項目第2四半期上半期前期(FY26通期)
自社株買い(CF計上額)38.0億ドル54.2億ドル60.1億ドル
取得株数・平均単価950万株・401ドル約5,400万株
配当支払い4.1億ドル8.7億ドル14.6億ドル
還元合計42.0億ドル(会社発表:約43億ドル)62.9億ドル74.7億ドル(会社発表:75億ドル)
純利益41.3億ドル75.7億ドル59.4億ドル
総還元性向約100%83%126%

筆者の概算。会社発表額とCF計上額の差は、決済タイミングの違いと考えられます。

第2四半期の自社株買い38億ドルは、前四半期(16億ドル)の2.3倍、社史上のどの四半期の約2倍(CFO発言)です。2026年2月には自社株買い枠を100億ドル追加しています。

見るべき点

  1. 上半期の還元性向83%は、フリーキャッシュフロー(41億ドル)を上回っている。 差額は借入で賄われています。会社は「コア・レバレッジ比率0.8倍」「格付け機関から前向きな評価」と財務の健全性を強調していますが、金融債権の膨張と自社株買いの加速が同時に起きている点は、2つ合わせて見る必要があります。
  2. 株数削減効果:950万株の取得は希薄化後株式数6.52億株の1.5%。四半期で1.5%なら年率6%のペースで、EPSの押し上げ要因になります。ただし会社は第3四半期の株数を6.51億株と、今回とほぼ同じ水準を想定しています(株式報酬による発行との差し引き)。
  3. 平均取得単価401ドルに対し、決算後の株価は492ドル(報道ベース)。会社の買値より2割高い水準で株が取引されています。

6-3. 株式分割・併合

該当なし。過去の決算と比較するときのEPS・配当の調整は不要です。

6-4. 投資の評価益(GAAPとnon-GAAPの差)

上半期のGAAP純利益75.7億ドルには、保有する株式投資の公正価値評価益7.0億ドル(税引前)が含まれています。純利益の9%、EPSにして1.08ドルです。第2四半期単体では0.7億ドルと小さいので、第1四半期に集中していたことになります。どの投資先かは決算リリースからは分かりません。

この評価益は非GAAP利益からは除かれています。通期GAAP EPS予想24.37ドルにもこの1.08ドルが含まれているので、「GAAPで見た利益成長181%」のうち一部は投資評価益によるものです。本業の実力は非GAAPの25.50ドル(+148%)で見るほうが、この点に関しては保守的です。会社は「今後の評価損益は予想に織り込まない」と注記しており、下半期に評価損が出ればGAAP EPSは予想を下回ります。

6-5. 大株主

デルは創業者マイケル・デル氏が会長兼CEOを務め、大株主でもあります。決算リリースのリスク要因にも「マイケル・デルおよび主要幹部への依存」が明記されています。議決権比率など詳細は本記事では確認していません(委任状説明書=Form DEF 14Aに記載があります)。


7. 株価の見方

7-1. 株価の位置(報道ベース・要確認)

項目数値
決算発表前日(9月1日)終値約425ドル(9月2日終値と騰落率から逆算)
決算翌日(9月2日)終値492.00ドル(+15.76%)
9月2日の値幅安値432.27ドル〜高値497.99ドル
52週レンジ110.22〜514.00ドル
年初来+238%(決算前時点・報道)
時価総額約3,170億ドル(基本株式数6.45億株×492ドル、筆者の概算)
円換算(1ドル=160円)1株約78,700円、時価総額約50.7兆円(筆者の概算)

出典:株価は9月2日付の報道(The Motley Fool、Robinhoodの株価ページ)。数値は証券会社のツールで確認のうえ差し替えてください。

PERの計算(筆者の概算・株価492ドル)

分母PER
今期会社予想 非GAAP EPS 25.50ドル19.3倍
今期会社予想 GAAP EPS 24.37ドル20.2倍
前期実績 非GAAP EPS 10.30ドル47.8倍

同じ株価でも、前期実績で見れば48倍、今期予想で見れば19倍です。この差がそのまま「今期の利益が来期以降も続くと信じるかどうか」の分かれ目です。

7-2. 強気材料(こう見る人がいる)

  1. 受注残950億ドルが可視性を与えている。 4-1の計算どおり、今期の残りを全部消化しても来期に500億ドル超を持ち越します。「来期の売上はすでに半分見えている」という見方が成り立ちます。
  2. 成長がAIサーバー以外にも広がった。 従来型サーバー+122%、ストレージ+26%、PC+20%。利益率の高いストレージが伸びたことで、AIサーバーの低利益率を相殺しています。
  3. 規模の利益が効いている。 営業費用の対売上比率9.5%(前年12.3%)。売上が伸びても費用が伸びない構造で、EPSは売上以上に伸びます。
  4. 今期予想PER19倍は、成長率(+148%)に対して低く見える。 ただしこれは「今期の利益が続く」前提です。
  5. 1-1の例えに戻ると、「機器を用意して、置いて、面倒を見て、支払いも待ってあげる」を丸ごとできる会社は多くありません。会社は「50通りの設計を求める顧客もいる」「注文から最初のトークンまでの時間が最短」と、設計・設置・金融の一体提供を差別化として繰り返しています。

7-3. 弱気材料(こう見る人もいる)

  1. 営業CFが減っている。 純利益3.6倍で営業CF▲13%。3章のとおり、在庫と金融債権に現金が吸われています。「調整後FCF+224%」を額面どおりに受け取ると見誤ります。
  2. 顧客への融資が膨らんでいる。 金融債権が半年で62億ドル増。貸し先の信用力は開示されていません。AIデータセンター事業者の資金調達環境が悪化すれば、需要減と貸倒れが同時に来る可能性があります。1-1の例えの裏面です。「丸ごと引き受ける」ということは、「顧客が払えなくなったときのリスクも引き受ける」ということです。
  3. 利益率の追い風は一過性を含む。 CFO自身が「すべての要因がこの水準で続くとは想定していない」と言っています。DRAM・NANDの値上がりが売上と利益率を押し上げている面があり、部品価格が反転すれば逆回転します。
  4. 供給制約。 受注残が積み上がるのは供給が追いつかないからでもあり、第4四半期522億ドルという前提は部品調達次第です。
  5. 自社株買いが借入で賄われている。 還元性向83%(上半期)はFCFを超えており、株主資本はマイナス。金利上昇局面では負担になります。
  6. 株価はすでに年初来3倍超。 52週安値110ドルから4.5倍。期待の織り込みが進んでいる分、次の決算で「上方修正がない」だけで失望売りが出る可能性があります。
  7. 顧客集中の可能性。 受注残950億ドルの顧客別内訳は非開示。「ネオクラウド」向けの大口案件がどの程度を占めるかは分かりません。

7-4. 個人的な整理

この決算は「売上・利益・受注の数字は文句なし、キャッシュと貸借対照表は要注意」の2階建てだと見ています。株価がどちらを見て動くかは局面次第で、AI投資の資金調達環境が良い間は前者、悪化すれば後者が意識されやすいと考えます。次の四半期に金融債権が減り始めれば弱気材料の2番は薄れ、さらに増えれば重みが増します。判断は読者にお任せします。


8. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るべき点
2026年10月新世代サーバー「18G」出荷開始(説明会発言)従来型サーバーの成長持続
2026年10月20日配当権利確定日(支払日10月30日)
2026年11月下旬(見込み)第3四半期決算(8〜10月期)。前年は11月25日発表下記KPI
2027年1月29日2027年1月期 決算期末
2027年2月下旬(見込み)通期決算・来期ガイダンス来期のAIサーバー売上見通し、配当方針

発表日は未確定のものを「見込み」としました。会社IRサイトで確認してください。

第3四半期決算で見るべきKPI

KPI今回会社の第3四半期前提注目点
売上高469.7億ドル490億ドル(+81%)達成するか。4回目の上方修正があるか
AIサーバー売上164億ドル190億ドル供給制約下で出荷を増やせるか
AIサーバー受注高・受注残609億ドル・950億ドル受注残が1,000億ドルを超えるか。式で検算する
ISG利益率15.0%前年比+1pt超「一過性の追い風」がどれだけ剥落するか
CSG利益率7.6%約6%会社の言うとおり低下するか
営業キャッシュフロー22.3億ドル純利益との差が縮まるか
金融債権残高204億ドル増え続けるか、回収に転じるか
在庫213億ドル部品確保のための積み増しが続くか
自社株買い額38億ドル借入依存が続くか
非GAAP EPS7.04ドル6.50ドル第2四半期より低い前提であることに注意

9. 3行まとめ

  • 売上58%増・純利益3.6倍・AIサーバー受注残950億ドルは、受注残の積み上げ式でも確認できる本物の数字。通期予想は半年で3回引き上げられ、期初の1,400億ドルが1,920億ドルになった。
  • 一方で営業キャッシュフローは13%減。原因は在庫倍増と、顧客への融資(金融債権)が半年で62億ドル増えたこと。会社が強調する「調整後FCF81億ドル」の82%はこの融資分の足し戻しで、営業CFを基準に見るのが安全。
  • 株価は決算翌日+16%で492ドル、今期予想PER19倍。強気は「来期の売上は半分見えている」、弱気は「顧客の資金繰りまで引き受けている」。どちらも同じ貸借対照表を見て言っている。

本記事は、決算リリース(Form 8-K添付)・決算説明会の書き起こし(会社IRサイト掲載)・前期および前々期の決算リリース、ならびに株価・為替に関する報道をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は特定の金融商品の売買を勧誘・助言するものではありません。財務数値は会社の決算リリースに基づき、比率・逆算値は筆者の概算です(「筆者の概算」と明記)。株価・時価総額・PER・配当利回りは2026年9月2日終値の報道ベースであり、証券会社のツールで確認してください。説明会での発言は会社IRサイト掲載の書き起こしを要約したもので、原文をご確認ください。本記事では、金融債権の貸し先・信用力、受注残の顧客別内訳、大株主の議決権比率、保有株式投資の内訳、地域別売上には踏み込んでいません。これらはForm 10-Q・Form 10-K・委任状説明書(DEF 14A)で確認できます(SEC EDGAR:www.sec.gov)。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・SEC EDGAR等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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