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北興化学工業(4992) 田植え前に売る農薬を秋のうちに作り置きしながら、別の釜では半導体材料の原料も作っている会社 9か月で通期予想を超えたのに、なぜ予想は据え置かれたのか?【2026年10月発表・第3四半期決算】

本記事は2026年10月12日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。**執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。**特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 北興化学工業は、2026年10月9日(金)15時30分に第3四半期決算(2025年12月〜2026年8月)を発表しました。9か月の営業利益は54億08百万円で、通期予想の52億円をすでに上回っています。それでも会社は通期予想を据え置きました
  • 「9か月で予想超え」は今年が初めてではありません。直近4期のうち4期とも、第3四半期の時点で営業利益が通期予想を上回っていました。そして4期のうち1期(2023年11月期)は、最終的に予想を下回って着地しています
  • 据え置いた予想を事業別に割ると、農薬事業には残り3か月で約22.5億円の赤字、ファインケミカル事業には約20.5億円の黒字が置かれている計算になります。どちらも過去の第4四半期とは桁が違い、両者が打ち消し合って全体の「残り3か月で約2億円の赤字」ができています
  • 農薬事業の上振れには、中東情勢を受けた海外の前倒し受注が含まれていると会社自身が説明しています。前倒しの反動が出るかどうかが、第4四半期の見どころです
  • 7月に岡山工場でベンゼン等を含む排水の流出が判明しました。業績への影響額はまだ開示されておらず、通期予想にも反映されていません
  • 株主還元は、累進配当(年54円予想)と最大20億円の自己株式取得の2本立てです。累進配当の方針は2024〜2026年度の中期経営計画の中で導入されたもので、今期が最終年度にあたります。株主優待制度はありません

1. 前提知識:田んぼの薬と、半導体の原料

1-1. 何をしている会社か

北興化学工業は、1950年創業の化学メーカーです。事業は大きく2本あります。

1つ目は農薬事業です。水稲(田んぼ)用の除草剤・育苗箱剤や、野菜・果樹向けの園芸剤を製造・販売しています。自社で開発した原体(薬の有効成分)として、天然物由来の殺菌剤カスガマイシンや、水稲用除草剤イプフェンカルバゾンを持っています。

2つ目はファインケミカル事業です。グリニャール反応という合成技術を得意とし、半導体のフォトレジスト(回路を焼き付けるための感光材)用の原料、医薬・農薬の原料や中間体、樹脂の硬化促進剤、触媒などを、他社の製品の「材料」として納めています。主力製品のPTBSTはKrFフォトレジスト用の原料です。

ほかに、規模の小さい繊維資材事業があります。

区分2025年11月期 売上高営業利益営業利益率
農薬事業293億98百万円8億38百万円2.9%
ファインケミカル事業177億85百万円40億04百万円22.5%
繊維資材事業19億36百万円81百万円4.2%
連結(その他・調整額を含む)491億25百万円49億13百万円10.0%

この表のポイントは2つです。売上の6割は農薬ですが、営業利益の8割はファインケミカルから出ています。そして農薬事業の利益率は2.9%と低く、年間の利益は小さく見えます。

ただし、農薬事業には「受取手数料」という、営業外収益に計上される収入があります。会社の説明では、製品の普及拡大支援のために仕入れ先から受け取る手数料で、経営管理上は営業利益に加算して管理しています。2025年11月期は5億43百万円あり、これを足すと農薬事業の利益は13億81百万円になります(決算短信のセグメント情報の注記)。

1-2. 軸となる例え:春に売る薬を、秋のうちに作り置きする

この会社を理解するために、ひとつの風景を置きます。

北興化学工業は、田植え前に売る農薬を秋のうちに作り置きしながら、別の釜では一年中、半導体材料の原料を作っている会社です。

田んぼの薬は、使われる時期が決まっています。会社の説明資料によれば、農薬の販売は第1〜第2四半期(12〜5月)が主に予約販売で、この期間の売上高が年間の約7割を占めます。6〜9月頃の農作業期は当用販売が中心になり、9〜11月(第4四半期)は売上が落ちます。一方で工場は、翌春の需要期に備えて秋から生産に入ります。売れない季節に、作る費用だけがかかる。これが農薬事業の第4四半期が毎年大きな赤字になる理由です。

もう一方の釜で作っている半導体材料の原料は、季節では動きません。代わりに、買い手の在庫で動きます。買い手が在庫を積み増す局面では注文が増え、在庫を減らす局面(在庫調整)では、需要そのものが変わらなくても注文が止まります。

この例えから、弱みが2つ出てきます。

  • 弱み①(田んぼ側):季節は決められない。 秋から冬に作る費用は、売上に関係なく毎年出ます。天候や病害虫の発生、米価で需要も揺れます
  • 弱み②(釜側):注文の時期は決められない。 買い手の在庫調整が始まると、技術力とは関係なく売上が止まります

この2つは、後で見る「通期予想の作り方」にそのまま対応します。

1-3. 業績の推移

項目2023年11月期2024年11月期2025年11月期2026年11月期(会社予想)
売上高452億27百万円461億95百万円491億25百万円520億円
営業利益44億17百万円45億40百万円49億13百万円52億円
営業利益率9.8%9.8%10.0%10.0%
経常利益54億74百万円56億91百万円60億83百万円61億円
親会社株主に帰属する当期純利益37億24百万円40億06百万円44億52百万円44億60百万円
1株当たり当期純利益(EPS)137.50円148.15円169.90円173.00円
ROE8.8%8.6%9.0%—
自己資本比率69.3%70.7%68.2%—
年間配当24円32円46円(うち記念6円)54円
営業キャッシュ・フロー48億34百万円60億73百万円76億12百万円—

(出典:各期の決算短信)

この表のポイントは、経常利益が営業利益より毎年10億円以上大きいことです。受取配当金と、前述の農薬の受取手数料が営業外収益に入るためです。後で見る第4四半期の議論でも、この営業外の部分が効いてきます。

用語メモ:経常利益は、本業の儲け(営業利益)に、受取配当金・受取利息・為替差損益などの本業以外の損益(営業外損益)を足し引きしたものです。北興化学工業は多くの上場株式を保有しているため(4-3)、受取配当金が大きく、経常利益が営業利益を大きく上回ります。

1-4. 中期経営計画との関係

会社は2024〜2026年度を「第2次3ヵ年経営計画」としています。2026年1月13日に目標を上方修正し、最終年度(今期)の目標を売上高520億円・経常利益61億円としました。修正の開示には「修正後の売上高および経常利益は、本日発表の決算短信における2026年11月期の連結業績予想と一致」と書かれています。つまり、中計の最終年度目標と今期の会社予想は同じ数字です。

9か月の経常利益は62億68百万円で、すでにこの目標を上回っています。2029年度の長期目標は売上高550億円・経常利益「68億円+α」です。

株主優待制度はありません。会社IRサイトの「よくいただくご質問」に「現在、行っておりません」と明記されています(配当・資本政策は4章)。

2. 決算ハイライト:9か月で何が起きたか

2-1. 損益

項目2025年11月期 第3四半期累計2026年11月期 第3四半期累計増減率
売上高415億78百万円449億24百万円+8.0%
売上総利益105億36百万円113億92百万円+8.1%
販売費及び一般管理費56億90百万円59億84百万円+5.2%
営業利益48億46百万円54億08百万円+11.6%
経常利益55億80百万円62億68百万円+12.3%
親会社株主に帰属する四半期純利益41億27百万円45億04百万円+9.1%
EPS156.81円174.30円+11.2%

(出典:2026年10月9日発表の第3四半期決算短信。増減率のうち売上総利益・販管費・EPSは筆者の計算)

9か月のEPSは174.30円で、通期の会社予想EPS173.00円をすでに上回っています。

営業利益の増加5億62百万円を3つに分けると、次のようになります(筆者の計算)。

要因金額計算方法
数量効果(売上が増えた分)+8億48百万円売上の増加額×前年の粗利率25.34%
率効果(粗利率が変わった分)+8百万円今年の売上×粗利率の差(25.34%→25.36%)
販管費の増加△2億94百万円59億84百万円−56億90百万円
合計+5億62百万円実際の営業利益の増加と一致

この表のポイントは、連結の粗利率がほとんど動いていないことです。ところが事業別に見ると、農薬事業の利益率は6.1%から9.8%へ大きく上がり、ファインケミカル事業は24.1%から18.2%へ大きく下がっています。2つの事業の動きが逆向きで、連結では打ち消し合っています。

2-2. 事業別

事業売上高前年同期比営業利益前年同期比営業利益率
農薬305億80百万円+13.1%30億02百万円+82.6%9.8%(前年6.1%)
ファインケミカル129億11百万円△1.4%23億46百万円△25.5%18.2%(前年24.1%)
繊維資材14億25百万円△0.5%65百万円+10.1%4.6%

(出典:決算短信のセグメント情報)

農薬事業は、国内・海外とも伸びました。補足説明資料によると、単体の国内販売は251億15百万円(前年同期比+7.6%)で、水稲剤が+6.0%、園芸剤が+10.6%です。会社は「これまでの普及推進活動の成果に加え、前年に続き防除意欲が高いことも後押し」と説明しています。園芸剤では除草剤ザクサ液剤が伸びました。

海外輸出(単体)は54億01百万円(同+48.3%)と大きく伸び、輸出割合は13.5%から17.7%に上がりました。輸出の約8割はカスガマイシンです。アジア向け(主にインド・中国)と中南米向け(主にブラジル・コロンビア)が伸び、円安も寄与しています。

ここで大事な一文があります。補足説明資料は、6〜8月の農薬事業について「中国向けおよびインド向けは前倒し出荷の影響も有り」と書いています。また7月10日の中間決算説明会の質疑応答要旨で、会社は次のように答えています(書き起こしではなく、会社が公表した要旨です)。

海外輸出において中東情勢の影響を受けた前倒し受注があり、これが業績を押し上げた。(中略)下期において、海外輸出の前倒し受注の反動が生じる可能性もあり、慎重に見極めていきたい。

農薬事業の営業利益の増加について会社は「海外輸出の増加、生産数量増による固定費比率低減が寄与」と説明しています。1-2の例えで言えば、作り置きの量が増えたことで、工場の固定費が1つあたり薄まった形です。

ファインケミカル事業は、分野によって明暗が分かれました。単体の分野別売上(補足説明資料)は次のとおりです。

  • 樹脂分野:43億69百万円(+30.0%)。主にコンタクトレンズ用途のその他樹脂原料が需要回復
  • 医農薬分野:21億59百万円(△28.6%)。取引先の需要変動や需要時期の後ろ倒し
  • 電子材料分野:30億62百万円(△18.5%)。フォトレジスト用途が△7億47百万円で、うちKrF向けは+2億40百万円、生成AI向けは△10億39百万円
  • その他分野:21億26百万円(+15.7%)

営業利益の減少について会社は、売上の減少に加えて「中東情勢の影響による原材料や重油価格の上昇、中国子会社における価格競争の影響」を挙げています。

生成AI向けについては、中間決算の質疑応答要旨で「2025年度4Qから販売先の在庫調整の影響を受けており、当期2Q段階の受注はゼロ」と説明されていました。会社は「構造的な問題ではなく、販売先での一時的な在庫調整の影響」とし、2027年度以降の需要回復を見込んでいます。1-2の弱み②(注文の時期は決められない)がそのまま出た形です。

一方、主力のKrF向けは回復が始まっています。6〜8月の3か月では前年同期比+1億72百万円でした。

2-3. 6〜8月の3か月

累計から差し引いた6〜8月の3か月は、次のとおりです(会社の補足説明資料の四半期表。百万円未満の丸めで筆者の差し引きと±1百万円ずれる箇所があります)。

事業売上高前年同期営業利益前年同期
農薬67億49百万円57億67百万円3億30百万円△68百万円
ファインケミカル48億60百万円46億88百万円8億69百万円12億44百万円
連結営業利益——12億24百万円11億89百万円

農薬事業は、例年なら利益がほぼ出なくなる6〜8月に3億30百万円の黒字を出しました。前倒し出荷の分が入っていると会社は説明しています。ファインケミカル事業は売上が増えたのに利益は3割減りました。

2-4. 財政状態

科目(8月末)2024年2025年2026年
受取手形、売掛金及び契約資産160億38百万円190億31百万円204億24百万円
商品及び製品94億76百万円85億19百万円91億55百万円
原材料及び貯蔵品68億06百万円66億64百万円77億円

(出典:各年の第3四半期決算短信)

農薬は春に売って夏から秋に代金を回収するので、8月末は売掛金が1年で最も膨らむ時期です。季節で大きく動く科目なので、前期末(11月末)ではなく前年の同じ8月末と比べています。売掛金は売上の伸びに沿って増え、原材料は前年同月末より約10億円多くなっています。原材料の増加理由は短信には書かれていません。

ほかの動きとしては、投資有価証券が183億34百万円から216億23百万円へ増えました(4-3)。有形固定資産の「その他」(建設仮勘定を含む)が17億21百万円から41億12百万円に増えており、会社が岡山工場で建設中のKrFレジスト用原料の新工場(2027年1月竣工予定)の支出が積み上がっている時期と重なります。借入金は長期借入金10億円だけで、前期末の「1年内返済予定の長期借入金」10億円が長期に置き換わった形です。

3. 深掘り:据え置いた予想は、残り3か月に何を置いているのか

この章の問いは1つです。9か月で通期予想を超えたのに会社は予想を据え置いた。その予想は、残り3か月(9〜11月)に何を置いているのか。 連結で見る(3-1)、事業別に割る(3-2)、予想の外にあるものを確認する(3-3)、の3段階で答えます。

3-1. 連結で見る:「9か月で予想超え」は4期連続

まず、過去の同じ時点と並べます。2023年11月期以降の決算短信と適時開示一覧を確認した範囲では、業績予想の修正開示は出ていません。期初に出した通期予想を、そのまま期末まで据え置いてきた会社です。

決算期期初の営業利益予想第3四半期累計進捗率予想が置いた第4四半期実際の第4四半期着地(予想比)
2023年11月期46億円48億38百万円105.2%△2億38百万円△4億21百万円44億17百万円(96.0%)
2024年11月期41億20百万円44億68百万円108.4%△3億48百万円+72百万円45億40百万円(110.2%)
2025年11月期47億50百万円48億46百万円102.0%△96百万円+67百万円49億13百万円(103.4%)
2026年11月期52億円54億08百万円104.0%△2億08百万円??

(出典:各期の決算短信。「予想が置いた第4四半期」は〈通期予想−第3四半期累計〉、「実際の第4四半期」は〈通期実績−第3四半期累計〉で、いずれも筆者の差し引き)

この表のポイントは3つです。

1つ目。4期とも、第3四半期の時点で営業利益が通期予想を上回っていました。進捗率100%超えは、この会社では珍しいことではありません。

2つ目。4期のうち1期(2023年11月期)は、最終的に予想を下回りました。この期は第4四半期に4億21百万円の営業赤字が出ています。「9か月で予想を超えたから、通期で予想を下回ることはない」とは言えません。

3つ目。2024・2025年11月期は、予想が置いた赤字を実際の第4四半期が上回り、ほぼトントンで終わっています。今期の予想が置いている△2億08百万円は、過去4期で見ると「2023年11月期の実績(△4億21百万円)と、2024・2025年の実績(ほぼゼロ)の間」です。

用語メモ:累計が通期予想を超えたまま予想を据え置くと、〈通期予想−累計〉はマイナスになり、「残り3か月は赤字」という計算になります。これは会社が「第4四半期に赤字を見込む」と発表したわけではなく、期初の予想を変えていないことによる計算上の結果です。ただし後で見るように、この会社の第4四半期はもともと赤字になりやすい季節でもあります。

売上と経常利益の行でも同じ計算をします。

項目予想が置いた第4四半期(今期)2025年11月期の実際の第4四半期2024年11月期2023年11月期
売上高70億76百万円75億47百万円69億34百万円70億89百万円
営業利益△2億08百万円+67百万円+72百万円△4億21百万円
営業外損益(純額)+40百万円+4億36百万円+3億69百万円+3億16百万円
経常利益△1億68百万円+5億03百万円+4億41百万円△1億05百万円

(筆者の差し引き)

この表のポイントは、営業外損益の行です。過去3期の第4四半期には、毎年3〜4億円台の営業外収益(純額)が入っています。前述の農薬の受取手数料は、2025年11月期の通期5億43百万円のうち第3四半期累計が2億27百万円で、残りの3億16百万円が第4四半期に入っていました(筆者の差し引き)。ところが今期の予想が第4四半期に置いている営業外損益は+40百万円です。

これは会社が「第4四半期の手数料が入らない」と言っているわけではなく、期初予想を据え置いたため、上期・第3四半期に入った営業外収益の分だけ、第4四半期の置き方が機械的に小さくなっていると読むのが自然です。会社は期初の決算説明資料で、経常利益について「為替差益の剥落や、受取配当金の減少を見込み微増」と書いていました。

売上の行も見ておきます。予想が置いた第4四半期の売上は70億76百万円で、前年の第4四半期(75億47百万円)より6.2%少ない水準です。2024・2023年11月期の第4四半期とはほぼ同じです。売上の置き方は、極端に低いわけではありません。

ここまでをまとめると、連結の数字だけでは「控えめな予想」とも「現実的な予想」とも言い切れません。そこで事業別に割ります。

3-2. 事業別に割る:農薬に△22.5億円、ファインケミカルに+20.5億円

会社は期初の決算説明資料で、事業別の通期予想も出しています。2026年10月9日の補足説明資料のグラフでも、事業別の予想値(農薬事業の営業利益750百万円、ファインケミカル事業4,400百万円)は期初から変わっていません。これを9か月の実績と並べます。

事業通期予想(期初)第3四半期累計進捗率予想が置いた第4四半期
農薬:売上高317億円305億80百万円96.5%11億20百万円
農薬:営業利益7億50百万円30億02百万円400.3%△22億52百万円
ファインケミカル:売上高183億円129億11百万円70.6%53億89百万円
ファインケミカル:営業利益44億円23億46百万円53.3%+20億54百万円

(出典:2025年11月期決算説明資料(2026年1月13日)のセグメント別連結業績予想、第3四半期決算短信。第4四半期は筆者の差し引き)

これを過去の第4四半期と比べます。

事業予想が置いた第4四半期(今期)2025年11月期 実際2024年11月期 実際2023年11月期 実際
農薬:売上高11億20百万円23億52百万円18億28百万円—
農薬:営業利益△22億52百万円△8億06百万円△8億54百万円△12億00百万円
ファインケミカル:営業利益+20億54百万円+8億53百万円+9億04百万円+7億53百万円

(筆者の差し引き。2023年11月期は通期と第3四半期累計の事業別営業利益から算出)

この表のポイントは、両方の事業とも、過去の第4四半期とは桁が違う数字が置かれていることです。

  • 農薬事業:過去3期の第4四半期は△8億〜△12億円の赤字でした。1-2で見たとおり、売れない季節に翌春の分を作るので、第4四半期の赤字自体はこの事業の「季節の形」です。しかし予想が置いている△22億52百万円は、過去3期で最大の赤字(△12億円)の約1.9倍です。売上も11億20百万円と、過去2期の半分程度しか置かれていません
  • ファインケミカル事業:過去3期の第4四半期の営業利益は7億〜9億円台です。2024年11月期以降の11四半期で最も大きかった四半期でも13億37百万円(2024年3〜5月)でした。予想が置いている+20億54百万円は、その1.5倍です。利益率に直すと約38%で、11四半期の最高(27.4%)を10ポイント以上上回ります

つまり、農薬事業の予想は「辛すぎる」方向に、ファインケミカル事業の予想は「甘すぎる」方向に、それぞれ大きく外れたまま残っていて、2つが打ち消し合った結果が連結の「残り3か月で約2億円の赤字」になっています。連結の数字が過去と比べてそれほど不自然に見えないのは、この打ち消し合いのためです。

では、事業別の予想はもともとどの程度当たってきたのでしょうか。過去2期の期初予想と実績を並べます。

決算期農薬:営業利益 期初予想→実績ファインケミカル:営業利益 期初予想→実績
2024年11月期1億20百万円 → 4億05百万円(3.4倍)39億30百万円 → 40億60百万円(103.3%)
2025年11月期4億10百万円 → 8億38百万円(2.0倍)42億90百万円 → 40億04百万円(93.3%)
2026年11月期7億50百万円 → 9か月で30億02百万円44億円 → 9か月で23億46百万円

(出典:各期の決算説明資料「セグメント別連結業績予想」。2024・2025年11月期分は説明資料の表を画像として目視で読み取り、通期の売上・営業利益の合計が連結予想と一致することを確認しました)

この表のポイントは、農薬事業の期初予想は2期続けて実績の半分以下に置かれていたことです。農薬事業は天候・病害虫・米価で需要が揺れるので、会社は低めに置いているのかもしれません(筆者の推測で、会社はそう説明していません)。会社は今期の農薬事業の減益予想の理由として、原体再評価・原体創製・新製剤開発に伴う研究開発費の増加と、販売数量増加に伴う運賃倉敷料の増加を挙げていました。

一方、ファインケミカル事業の期初予想は、前期は実績を上回り(93.3%で着地)、今期も9か月で53.3%しか進んでいません。会社が期初予想で見込んでいた「KrFフォトレジスト原料の需要回復」は始まりつつありますが、生成AI向けの在庫調整と医農薬分野の後ろ倒しが重なっています。

第4四半期の着地の幅(筆者の試算)

会社は事業別の予想を修正していないので、事業別の第4四半期を「過去並み」に置き直したらどうなるかを、表で試算します。

農薬事業の第4四半期 \ ファインケミカル事業の第4四半期+7億50百万円+9億円+10億50百万円
△8億06百万円(2025年11月期並み)53億72百万円55億22百万円56億72百万円
△10億円51億78百万円53億28百万円54億78百万円
△12億円(2023年11月期並み)49億78百万円51億28百万円52億78百万円
△16億円45億78百万円47億28百万円48億78百万円

(筆者の試算。通期営業利益=第3四半期累計54億08百万円+農薬の第4四半期+ファインケミカルの第4四半期+繊維資材・その他・調整額の第4四半期。繊維資材・その他・調整額は過去2期の第4四半期の実績から+20百万円で固定しています。将来の見通しではありません)

この表の読み方は2つです。

まず、農薬事業の第4四半期が前期並み(△8億円)なら、ファインケミカル事業の第4四半期が過去並みのどの水準でも、通期営業利益は会社予想の52億円を上回ります。農薬事業が△10億円の場合は、ファインケミカル事業が9億円以上で上回ります。過去3期の農薬事業の第4四半期は△8億〜△12億円でした。

次に、農薬事業の第4四半期が過去最大(△12億円)を超えて悪化すると、会社予想に届かない組み合わせが増えます。そうなる経路として、会社自身が挙げているのが「海外輸出の前倒し受注の反動」です。前倒しで6〜8月までに出荷した分は、本来なら9〜11月以降に出荷されるはずだった分です。農薬事業の6〜8月の黒字(3億30百万円)の一部が、第4四半期から移ってきたものだとすれば、その分だけ第4四半期の赤字は大きくなります(どれだけが前倒し分かは開示されていません)。

予想の読み方を強気・弱気の両側に置いておきます。どちらも同じ数字から出てくる読み方です。

  • 強気の読み:この会社は4期連続で「9か月で予想超え→据え置き」を続けてきており、直近2期は上振れで着地しました。事業別の予想はもともと農薬を低めに置く作り方で、ファインケミカルの過大な置き方と相殺されています。第4四半期の営業外収益(手数料・配当)も機械的に小さく置かれており、経常利益・純利益にも上振れの余地が残っています
  • 弱気の読み:9か月の上振れには前倒し受注が含まれており、会社自身が反動の可能性に触れています。2023年11月期は、同じ「9か月で予想超え」から予想を下回って着地しました。ファインケミカル事業は9か月で予想の53.3%しか進んでおらず、主力の買い手の在庫調整が続いています。さらに、3-3で見る岡山工場の件の影響額は予想に入っていません

3-3. 予想の外にあるもの:岡山工場の排水流出

据え置かれた予想には、まだ入っていない事柄があります。

岡山工場からのベンゼン等を含む排水の流出(2026年7月)

会社の適時開示(7月21日の第1報、7月30日の第2報、7月31日の訂正)によると、経緯は次のとおりです。

  • 7月14日16時15分頃、玉野市から、岡山工場前の吉浦海岸岸壁基礎付近から液体が流出しているとの通報があった旨の連絡があった
  • 調査の結果、7月17日22時頃、会社が取り扱う化学物質を含む排水が流出していることを確認した。含まれていた化学物質はベンゼン、トルエン、キシレンなど
  • 原因は、合成第6工場・合成第7工場の排水ピットの樹脂コーティング部分の亀裂と考えられる(調査・究明は継続中)
  • 会社が岸壁付近で採取した排水の水質調査(7月16〜27日)では、ベンゼンが1.5〜4.6mg/L(水質汚濁防止法の排水基準は0.1mg/L)
  • 岡山県が7月17日に採取した海洋水のサンプリング調査の結果について、同県から環境基準に適合している旨の報告を受けた
  • 合成第6・第7工場は、排水ピットを使用しない方法で再発防止を徹底したうえで生産を再開。製品の出荷は「概ね予定どおり」
  • 業績への影響は「判明次第、速やかにお知らせいたします」

第3四半期決算短信でも、通期予想に変更はないとしたうえで、この件の業績影響は「判明次第、速やかにお知らせいたします」と書かれています。つまり、影響額は現時点で開示されておらず、通期予想にも入っていません。

本記事では影響額を推測しません。調査費用、地下水の揚水などの対策費用、設備の改修費用などが今後どの程度出るか、それが営業費用に入るのか特別損失に入るのかも、開示がない段階では分かりません。会社は有価証券報告書の「事業等のリスク」で、事故等の発生や副次的に発生する環境問題を起こした場合に事業が影響を受ける可能性を挙げています。

なお、合成第6・第7工場がどちらの事業の生産を担っているかは開示されていません。会社は岡山工場を将来ファインケミカル事業の専用工場にする方針を示しており、KrFレジスト用原料の新工場(合成第10工場、2027年1月竣工予定)も岡山工場に建設中です。

株価の動きも事実だけを記しておきます。第1報(7月21日8時30分、取引開始前)の当日終値は1,988円で、前営業日(7月17日)の1,928円から+3.1%でした。その後7月29日・30日には1,779円まで下がり、第2報(7月30日16時、取引終了後)の翌営業日(7月31日)は1,848円(+3.9%)でした。日足だけでは、これらの値動きが開示によるものかどうかは分かりません。

このほかの予想の外の事柄

  • グループ内の組織再編(2026年12月1日効力発生予定):子会社の美瑛白土工業を吸収合併し、北興産業から事業の全部を譲り受け、北興産業がホクコーパツクスを吸収合併します。いずれもグループ内の再編で、無対価です。来期からの事業区分・連結範囲への影響は、来期の開示で確認します
  • KrFレジスト用原料の新工場:2027年1月竣工予定。会社は既存工場と合わせて生産能力が概ね2倍になり、2032年度に同製品の売上高44億円を目指すとしています(2025年度実績16億円)。なお、2025年1月の決算説明資料では竣工予定を「2026年12月」としていました。稼働後は減価償却費が加わるので、来期の利益の見方に関わります

3-4. 3つの段階をつなぐ

ここまでの3段階をまとめます。連結で見ると「残り3か月で約2億円の赤字」という、過去と比べてそれほど不自然ではない数字でした(3-1)。事業別に割ると、その中身は「農薬に過去3期で最大の赤字の約1.9倍」と「ファインケミカルに過去最高の四半期の約1.5倍の黒字」の打ち消し合いでした(3-2)。そして、岡山工場の件はこの予想のどこにも入っていません(3-3)。

1-2の例えに戻れば、田んぼ側(季節)と釜側(買い手の在庫)は、それぞれ別の理由で動きます。連結の通期予想が当たるかどうかより、9〜11月に「作り置きの赤字がどこまで膨らむか」と「釜の注文がどこまで戻るか」を別々に見るほうが、この会社の第4四半期は読みやすい、というのが本記事の整理です。

4. 株主還元・資本政策

4-1. 配当

決算期中間期末年間配当の決め方
2021年11月期9円10円19円安定配当の継続を基本方針
2022年11月期10円11円21円同上
2023年11月期12円12円24円同上
2024年11月期16円16円32円累進配当(第2次3ヵ年経営計画)
2025年11月期20円26円(うち記念6円)46円同上
2026年11月期(予想)27円(実施済み)27円54円同上

(出典:会社IRサイトの配当情報、各期の決算短信)

会社の配当方針は、「第2次3ヵ年経営計画(2024〜2026年度)において、累進配当を基本方針とし、利益の成長に応じた増配を目指」すというものです。会社は2026年1月の「資本コストや株価を意識した経営」の開示で、2015〜2025年度を「11期連続増配予想」と書いています。

ここで注意したいのは、累進配当の方針が「第2次3ヵ年経営計画の中で」導入されたもので、その計画の最終年度が今期(2026年度)だということです。次の中期経営計画(2027〜2029年度)でこの方針が続くかどうかは、まだ開示されていません。次期計画は、例年どおりなら2027年1月中旬の通期決算と同時期に示されると考えられます(前回の計画は2024年1月12日に公表)。

今期の配当54円の配当性向は、会社予想EPS173.00円に対して31.2%です。普通配当だけで比べると、前期の40円から14円の増配です。

配当の権利確定日は、期末が11月30日(月)、中間が5月31日です。**期末配当の権利付き最終日は2026年11月26日(木)**です(基準日の2営業日前)。

用語メモ:累進配当は、「配当を前年より減らさず、据え置くか増やす」という方針です。利益が落ちた年にも減配しないことを約束する一方、方針の適用期間が決まっている場合は、期間が終わった後の扱いが改めて決まります。

4-2. 自己株式取得

2026年7月10日、会社は自己株式取得を決議しました。取得し得る株式の総数は120万株(自己株式を除く発行済株式総数の4.65%)、取得価額の総額は20億円が上限で、期間は2026年7月13日〜2027年7月12日、方法は市場買付けです。取得した株式は消却を予定しています。

期間取得株式数取得価額平均単価(筆者計算)
7月13日〜31日289,800株5億55百万円1,918円
8月227,600株4億48百万円1,971円
9月188,200株3億65百万円1,939円
累計(9月30日まで)705,600株13億69百万円1,941円

(出典:自己株式の取得状況に関するお知らせ(8月4日・9月3日・10月5日)。累計は10月5日の開示の数値と一致)

株数上限と金額上限のどちらが先に効くかを、残りで判定します。残りの株数は494,400株、残りの金額は約6億30百万円です。残りの金額を使い切るのに必要な平均単価は約1,275円で、10月9日の終値1,952円を大きく下回ります。つまり、現在の株価水準では金額上限(20億円)が先に効き、取得できる株数は残り約32万株、合計で約103万株と、株数上限の120万株には届かない計算です(筆者の試算)。

上限の20億円をすべて使い切った場合、今期の配当総額(約13.6億円、筆者の概算)と合わせた総還元額は約33.6億円で、純利益予想44億60百万円に対する総還元性向は約75%です(筆者の試算。取得期間は来期にまたがるので、会計年度ごとの総還元性向とは一致しません)。自己株式取得の上限は約束ではないので、実際の取得額は今後の取得状況の開示で確認する必要があります。

期末自己株式数は8月末時点で2,214,472株(発行済株式総数の8.1%)です。このうち160,000株は役員向け株式交付信託が保有する株式で、会計上は自己株式として扱われています。

4-3. 政策保有株式:1銘柄が純資産の4分の1

北興化学工業の貸借対照表で目立つのが、投資有価証券です。2025年11月期の有価証券報告書によると、政策保有株式(上場17銘柄)の貸借対照表計上額は179億91百万円です。

銘柄株式数計上額(2025年11月末)相手の当社株式保有
野村マイクロ・サイエンス4,200,000株131億04百万円有
日産化学192,000株10億14百万円有
野村ホールディングス457,171株5億38百万円有
OATアグリオ226,400株5億10百万円有
日本曹達131,840株4億69百万円有

(出典:2025年11月期 有価証券報告書「株式の保有状況」。上位5銘柄)

この表のポイントは、野村マイクロ・サイエンス1銘柄で政策保有株式の約73%、2025年11月末の純資産(529億円)の約25%を占めていることです(筆者の計算)。会社は保有目的を「環境規制に関する情報収集や環境対策技術等の支援などの面での協力関係を維持するため」としています。前期中に15万株を売却しています。

会社は2026年1月に政策保有株式の縮減方針を公表しました。2030年度(2030年11月期)までに、政策保有株式の残高を30%程度縮減し(2025年11月末時価ベース)、連結純資産に対する比率を20%未満にする、というものです。2025年11月期末の比率は34.2%でした(会社開示)。売却資金は成長投資に活用するとしています。

今期の9か月では、投資有価証券売却益2億37百万円を計上しています。一方で投資有価証券の残高は32億89百万円増えました。これが「買った」のか「値上がりした」のかを、税効果で確かめます。その他有価証券評価差額金の増加額22億15百万円を(1−法定実効税率30.62%)で割り戻すと約31億93百万円で、投資有価証券の増加額32億89百万円とほぼ一致します(筆者の計算)。残高の増加は、主に保有株式の値上がりによるものと読めます。

保有株式の値動きは、純資産(自己資本)を通じて1株当たり純資産(BPS)とPBRに効きます。野村マイクロ・サイエンス株の値動きが、北興化学工業の純資産の大きさを左右しやすい構造です。

4-4. 大株主

株主所有株式数比率(自己株式を除く発行済株式数に対する割合)
日本マスタートラスト信託銀行(信託口)2,395千株9.23%
野村殖産2,103千株8.11%
住友化学1,968千株7.59%
MSIP CLIENT SECURITIES1,769千株6.82%
りそな銀行1,287千株4.96%
北興化学工業従業員持株会894千株3.45%
野村ホールディングス836千株3.22%
全国農業協同組合連合会801千株3.09%

(出典:2026年11月期 半期報告書。2026年5月31日現在)

大株主表には、社名に「野村」を含む株主が複数並んでいます(野村殖産、野村ホールディングス、10位の野村プロパティーズ2.73%)。ただし、これらの株主の関係は有価証券報告書・半期報告書に書かれていないため、本記事では持株比率を合算しません。半期報告書の注記には、野村證券を提出者とする大量保有報告書の変更報告書(野村ホールディングスおよび共同保有者3社、2026年5月28日現在で株券等保有割合9.45%)が記載されています。

住友化学は大株主であると同時に、北興化学工業も住友化学株を426,124株(2025年11月末の計上額2億03百万円)政策保有しており、有価証券報告書では相互保有「有」とされています。会社は保有目的を「農薬事業とファインケミカル事業における業務(購買や販売)面や研究開発面での協力関係を維持するため」としています。関連当事者情報には「記載すべき重要な事項はありません」とあります。

株主優待制度はありません(会社IRサイトのFAQで「現在、行っておりません」と明記)。

5. 株価の見方

株価に依存する数字はこの節にまとめます。基準は2026年10月9日(金)の終値1,952円です。

決算は10月9日15時30分(取引終了と同時刻)の発表なので、9日の終値・出来高(107,500株)には決算への反応は含まれていません。10月12日(月)はスポーツの日で休場のため、**決算への最初の反応が出るのは10月13日(火)**です。Yahoo!ファイナンスの表示では、10月9日の夜間取引(PTS)の価格は1,900円(東証終値比△2.66%、23時57分時点)でした(報道ベース。PTSは取引量が小さく、翌営業日の値動きと一致するとは限りません)。

指標値計算方法
時価総額(発行済株式数ベース)約537億円1,952円×27,485,531株
時価総額(8月末の自己株式控除後)約493億円1,952円×25,271,059株
予想PER11.3倍1,952円÷会社予想EPS173.00円
PBR0.86倍1,952円÷8月末BPS約2,272円
予想配当利回り2.77%54円÷1,952円
年初来高値・安値2,288円(6月26日)・1,563円(1月13日)報道ベース

(BPSは8月末の自己資本574億21百万円÷自己株式控除後の株式数で筆者が計算。株価情報サイトのPBR表示とは基準日が異なる場合があります)

会社自身は2026年1月の開示で、PBRが株価上昇により0.80倍まで改善したとしつつ、「PBR1倍超えに向け、成長戦略に対する市場評価の向上、資本効率の向上、株主還元策が引き続き課題と認識」と書いています。

強気の材料

  • 4期連続で「9か月で予想超え→据え置き」が続き、直近2期は予想を上回って着地した。今期も第4四半期の置き方には、営業外収益を中心に機械的な保守性がある(3-1)
  • 農薬事業は、普及推進の成果・カスガマイシンなどの海外輸出・固定費の希薄化で、利益率が上がっている
  • ファインケミカル事業の主力であるKrF向けは回復が始まっており、新工場(2027年1月竣工予定)で生産能力は概ね2倍になる計画
  • 累進配当、最大20億円の自己株式取得(消却予定)、政策保有株式の縮減と、資本政策が具体的に動いている

弱気の材料

  • 農薬事業の上振れには前倒し受注が含まれ、会社自身が下期の反動に触れている。2023年11月期は「9か月で予想超え」から予想未達で着地した(3-1・3-2)
  • ファインケミカル事業は9か月で予想の53.3%しか進んでおらず、予想が置く第4四半期は過去最高の四半期の1.5倍。原材料・重油価格の上昇と中国子会社の価格競争も続いている
  • 岡山工場の排水流出の影響額は未開示で、予想に入っていない(3-3)
  • 累進配当の方針は今期が最終年度の中期経営計画の中で導入されたもので、次期計画での扱いは未定(4-1)
  • 純資産の約4分の1が1銘柄の政策保有株式で、その値動きがBPSとPBRを動かす(4-3)

6. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るポイント
2026年10月13日(火)決算発表後の最初の取引日株価・出来高(10月12日は休場)
毎月上旬自己株式の取得状況の開示取得ペースと平均単価、金額上限への進み方
随時岡山工場の件の続報業績への影響額、計上区分(営業費用か特別損失か)
2026年11月26日(木)期末配当の権利付き最終日期末配当27円(予想)
2026年11月30日(月)決算期末—
2026年12月1日グループ内組織再編の効力発生(予定)来期の事業区分・連結範囲
2027年1月KrFレジスト用原料の新工場竣工(予定)稼働時期と減価償却費
2027年1月中旬(例年)2026年11月期 通期決算農薬事業・ファインケミカル事業それぞれの第4四半期、次期中期経営計画、累進配当の扱い
2027年2月定時株主総会—
2027年7月12日自己株式取得の期限最終的な取得額
2030年11月期まで政策保有株式の縮減目標純資産比20%未満への進み方

見るべきKPI

  • 農薬事業の第4四半期の営業利益(過去3期は△8億〜△12億円)と、海外輸出の前倒し受注の反動の有無
  • ファインケミカル事業の第4四半期の営業利益(過去3期は7億〜9億円台)と、KrF向け・生成AI向けの受注の戻り
  • 第4四半期の営業外収益(過去3期は純額で3〜4億円台)
  • 岡山工場の件の業績影響の開示
  • 次期中期経営計画での配当方針と投資計画(会社は2027〜2029年度の投資規模を「150億円+X」と概算)

7. 3行まとめ

  • 9か月で営業利益54億08百万円と通期予想52億円を超えたが、会社は予想を据え置いた。「9か月で予想超え→据え置き」は4期連続で、4期のうち1期は予想未達で着地している
  • 据え置いた予想を事業別に割ると、農薬に過去3期で最大の赤字の約1.9倍、ファインケミカルに過去最高の四半期の約1.5倍の黒字が置かれ、両者が打ち消し合っている。9〜11月は「作り置きの赤字」と「釜の注文の戻り」を別々に見るのが読みやすい
  • 岡山工場の排水流出の影響額は未開示で予想の外。累進配当の方針は今期で終わる中期経営計画の中にあり、次期計画での扱いが次の焦点になる

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・助言を目的としたものではありません。数値の出典は、北興化学工業の決算短信(2023年11月期〜2026年11月期第3四半期)、決算補足説明資料・決算説明資料、決算説明会の質疑応答要旨(会社公表の要旨)、適時開示(自己株式取得、岡山工場の排水流出、組織再編、中期経営計画の修正、資本コストや株価を意識した経営、政策保有株式の縮減方針、配当予想の修正)、有価証券報告書(2025年11月期)・半期報告書(2026年11月期)、会社IRサイトのFAQ・配当情報です。株価・年初来高値安値・夜間取引の価格はYahoo!ファイナンスの表示(報道ベース)で、夜間取引の価格は取引量が小さく翌営業日の値動きと一致するとは限りません。「予想が置いた第4四半期」「数量効果・率効果」「着地の幅の試算表」「総還元性向」などは筆者の差し引き・試算で、会社の開示ではありません。事業別の期初予想のうち2024・2025年11月期分は、決算説明資料の表を画像として目視で読み取ったもので、読み取り誤差の可能性があります。2023年11月期の事業別期初予想は確認していません。決算説明会の質疑は会社公表の要旨のみを参照しており、当第3四半期については決算説明会が開催されていないため、会社の追加説明は反映していません。岡山工場の排水流出について、業績への影響額は会社が開示しておらず、本記事は推測していません。合成第6・第7工場がどの事業の生産を担っているかも開示されておらず、特定していません。農薬事業の前倒し受注のうち、どれだけが第4四半期以降の需要の先取りかは開示されていません。原材料の増加理由は短信に記載がなく、推測していません。大株主のうち社名に「野村」を含む株主どうしの関係は開示で確認できないため、持株比率を合算していません。2025年11月期の有価証券報告書には訂正報告書(2026年3月30日提出、経営計画の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」部分の訂正)が出ていますが、本記事で使った財務数値に関する訂正ではないことを確認しています。定時株主総会の議決権行使結果(臨時報告書)は確認していません。2023年11月期以前の業績予想の修正開示の有無は、Yahoo!ファイナンスの適時開示一覧(2023年12月以降)と会社IRサイトの決算短信で確認した範囲に限ります。

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