本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
ホテル、ニューグランド(以下、ニューグランド)は2026年10月8日15時30分、2026年11月期の第3四半期決算(2025年12月〜2026年8月の9か月)を発表しました。9か月の営業利益は3億11百万円(前年同期比+72.9%)、四半期純利益は4億50百万円(同+95.5%)です。
一方で、7月に引き上げた通期予想(営業利益3億30百万円、当期純利益3億33百万円)は据え置かれました。純利益は9か月の時点で通期予想を1億17百万円上回っています。営業利益も、残り3か月(9〜11月)に1,800万円しか置かれていない計算です。9〜11月は、会社自身が「宴会(婚礼)需要が強く、売上高が多く計上される傾向」と書いている四半期です。
この記事では、据え置かれた予想が最後の3か月に何を置いているのかを、過去4年の四半期の並びと、税金の行の動きから読み解きます。
この記事でわかること
- 6〜8月の3か月は4年連続で年間最小の営業利益で、2024年以降は3年連続の営業赤字。今年の赤字8,463万円は前年の1億3,970万円より小さいが、宿泊と宴会の売上は前年割れだった
- 据え置かれた通期予想は、9〜11月の営業利益率を1.1%と置いている。過去3年の同じ3か月は6.8〜10.0%。第3四半期時点の予想に対する実際の9〜11月の達成率は、過去3年で220.8%・62.9%・310.3%と上にも下にも大きく外れてきた
- 純利益予想が9か月実績を1億17百万円下回るのは、主に税金の行の計算。この会社は将来の税金の減り分(繰延税金資産)の大半に評価性引当額を付けており、期中に積んだ税金の戻りを期末に取り崩す動きが前年にも出ている
- 配当は年25円(予想配当性向8.9%)、株主優待は100株でホテル利用券1,000円分など。予想PERは会社予想EPSで23.4倍だが、法定実効税率を当てると36.8倍になる
- 2027年12月に開業100周年。会社は配当方針に「節目においては記念配当」と書いている
1. ニューグランドはどんな会社か
1-1. 軸:開業99年の洋館を、直しながら回している会社
ニューグランドは横浜・山下公園前のホテルです。1927年12月にホテル営業を始め、1991年に新館(タワー館)が加わりました。子会社はなく、事業はホテル事業と小さな不動産賃貸事業(賃貸ビル「グランドアネックス水町」)の2つです。
この記事では、この会社を**「1927年に開業した洋館を、毎年どこかを直しながら、秋の婚礼と泊まり客で一年を回している会社」**として読みます。
- 強み:同じ場所で99年営業してきたこと自体が商品です。宿泊の単価、婚礼、ホテル発祥メニューの外販(エスワイル)はここから出ています
- 弱み①(季節):売上の山は9〜11月の婚礼シーズン、谷は6〜8月の夏です。一方で、人件費や建物の費用は季節で減りません。谷の3か月は赤字になりやすい構造です
- 弱み②(直し続ける費用):古い建物は毎年どこかを直す必要があります。前期は熱源設備の更新で既存設備を撤去し、6,200万円の特別損失を計上しました。外壁工事、中庭の改装、照明のLED化、自動火災報知機の更新も続いています。会社は「本館客室は改修工事を予定」とも書いています
弱み①は四半期の営業利益の振れ(第3章)に、弱み②は通期予想の置き方(第4章)と貸借対照表(第6章)に出てきます。
1-2. 事業構造(2025年11月期)
| 区分 | 売上高 | 構成比 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 宿泊部門 | 20億58百万円 | 31.5% | +13.3% |
| 宴会部門(婚礼・一般宴会) | 23億14百万円 | 35.4% | +10.7% |
| レストラン部門 | 14億55百万円 | 22.3% | +4.5% |
| その他の部門 | 1億30百万円 | 2.0% | △19.0% |
| 支店部門(百貨店内店舗・エスワイル2店) | 5億22百万円 | 8.0% | +50.7% |
| 不動産賃貸(グランドアネックス水町他) | 48百万円 | 0.7% | +1.0% |
| 合計 | 65億29百万円 | 100.0% | +11.5% |
出典:2025年11月期決算短信「営業部門売上高」(千円未満切捨ての開示を百万円未満切捨てで転記)。
この表のポイントは2つです。
- 宿泊・宴会・レストランの3部門で売上の約8割です。宴会が最大の部門で、宴会が最も強いのが9〜11月です
- 支店部門の伸びは、2024年12月に開いたエスワイル横浜髙島屋店(1億35百万円)によるものです
1-3. 4期の業績推移
| 決算期 | 売上高 | 経常利益 | 当期純利益 | 1株利益 | 1株配当 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年11月期 | 42億81百万円 | △3億23百万円 | △3億49百万円 | △295.66円 | 無配 | 36.9% |
| 2023年11月期 | 53億72百万円 | 2億57百万円 | 3億93百万円 | 333.07円 | 25円 | 40.9% |
| 2024年11月期 | 58億56百万円 | 2億44百万円 | 3億03百万円 | 256.95円 | 25円 | 41.7% |
| 2025年11月期 | 65億29百万円 | 2億70百万円 | 2億01百万円 | 170.56円 | 25円 | 42.0% |
| 2026年11月期(会社予想) | 68億00百万円 | 3億20百万円 | 3億33百万円 | 282.05円 | 25円(予想) | ― |
出典:第148期有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」、2026年11月期第3四半期決算短信。
売上は3年で約1.5倍になりましたが、当期純利益は経常利益と同じ方向に動いていません。2023年11月期は経常2億57百万円に対し純利益3億93百万円、2025年11月期は経常2億70百万円に対し純利益2億01百万円です。経常利益と純利益の間で、毎年1億円前後の「ずれ」が出ています。このずれの中身が第5章の主題です。
1-4. 会社予想の達成履歴
ニューグランドの業績予想は、期初に低く置き、7月(中間決算の直前)と翌年1月(通期決算の直前)に修正するのが続いています。
| 決算期 | 期初予想の営業利益(前期実績比) | 期中の修正(開示日) | 実績 | 期初予想比 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年11月期 | 2億45百万円(△13.6%) | 3億20百万円に上方(2024年7月8日) | 2億54百万円(2025年1月10日に下方修正) | 104.0% |
| 2025年11月期 | 1億05百万円(△58.8%) | 7月9日は上期のみ上方・通期は据え置き → 2億20百万円に上方(10月7日) | 3億03百万円(2026年1月9日に上方修正) | 289.2% |
| 2026年11月期 | 1億60百万円(△47.3%) | 3億30百万円に上方(2026年7月8日) | 9か月で3億11百万円(第3四半期は据え置き) | 9か月で194.8% |
出典:各期の決算短信、業績予想の修正に関するお知らせ。前期実績比・期初予想比は筆者計算。
この表のポイントは3つです。
- 期初予想は2年続けて前期実績の半分前後に置かれ、実績は2年続けて期初予想の2〜3倍で着地しています(2025年11月期)
- 修正の開示日は、決算発表の1〜3営業日前に集中しています(2024年7月8日・2025年1月10日・2025年10月7日・2026年1月9日・2026年7月8日)
- ただし上方修正後に届かなかった年もあります。2024年11月期は7月に3億20百万円へ引き上げたあと、実績は2億54百万円でした。会社は理由を「売上高増加に伴う販売手数料や人手不足を補うための業務委託費が計画に比べて増加」と書いています
「期初予想は控えめで、毎年上振れる会社」という読み方は、2025年11月期には当てはまりました。2024年11月期の下方修正があるので、一方向には決めつけられません。
2. 決算ハイライト(2025年12月〜2026年8月)
2-1. 損益
| 項目 | 2025年11月期9か月 | 2026年11月期9か月 | 前年同期比 | 通期会社予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 47億54百万円 | 50億73百万円 | +6.7% | 68億00百万円 | 74.6% |
| 営業利益 | 1億80百万円 | 3億11百万円 | +72.9% | 3億30百万円 | 94.5% |
| 経常利益 | 1億54百万円 | 3億17百万円 | +105.1% | 3億20百万円 | 99.2% |
| 特別利益 | ― | 79百万円 | ― | ― | ― |
| 特別損失 | 7百万円 | 42百万円 | ― | ― | ― |
| 四半期純利益 | 2億30百万円 | 4億50百万円 | +95.5% | 3億33百万円 | 135.3% |
| 1株利益 | 195.09円 | 381.50円 | ― | 282.05円 | ― |
出典:2026年11月期第3四半期決算短信(百万円未満切捨て)。進捗率は筆者計算。
用語メモ:進捗率は「9か月の実績÷通期予想」。ニューグランドは9〜11月の売上が最も大きい会社なので、進捗率が75%前後なら季節の形どおりです。売上の進捗率74.6%は、前年の9か月実績が通期実績に占めた割合(72.8%)とほぼ同じです。
営業外では、補償金収入25百万円(中間期に計上)が経常利益を押し上げました。特別利益の固定資産権利変換益79百万円は、会社によると「所有不動産の再開発事業に伴う」ものです。どの不動産の再開発かは、短信・半期報告書には書かれていません。補償金収入の内容も説明されていません。
用語メモ:権利変換は、市街地再開発事業で、元の土地・建物の権利を再開発後の建物の権利に置き換える手続きです。置き換え前の帳簿価額と置き換え後の評価額の差が利益として計上されることがあります。現金は入っていません。中間期に土地が7億50百万円から8億34百万円に増え、同時に土地再評価差額金19百万円が利益剰余金へ振り替わっています(中間純利益と配当だけでは利益剰余金の増加額が19百万円合わないことから筆者が確認)。
2-2. 部門別売上(9か月)
| 部門 | 2026年11月期9か月 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 宿泊部門 | 16億08百万円 | +6.2% |
| レストラン部門 | 11億97百万円 | +10.7% |
| 宴会部門 | 16億88百万円 | +3.9% |
| 不動産賃貸事業 | 42百万円 | +17.7% |
9か月ではすべて増収です。ただし、3か月ずつに割ると、宿泊と宴会の伸びは6〜8月に止まっています(第3章)。
2-3. 財政状態
| 項目 | 2025年11月末 | 2026年8月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 23億48百万円 | 21億20百万円 | △2億27百万円 |
| 有形固定資産 | 53億85百万円 | 57億93百万円 | +4億07百万円 |
| うち建設仮勘定 | 1億75百万円 | 4億22百万円 | +2億46百万円 |
| 繰延税金資産 | 56百万円 | 1億36百万円 | +80百万円 |
| 借入金合計 | 24億17百万円 | 27億67百万円 | +3億50百万円 |
| 純資産 | 37億21百万円 | 41億75百万円 | +4億53百万円 |
| 自己資本比率 | 42.0% | 46.0% | +4.0pt |
出典:2026年11月期第3四半期決算短信。借入金合計は短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・長期借入金の合計(筆者計算)。
この表のポイントは2つです。
- 設備投資が続いています。中間期の有形固定資産の取得による支出は5億55百万円(前年同期1億80百万円)で、建設仮勘定(工事中の設備)も積み上がっています。6〜8月には長期借入金が約4億円増えました(1年内返済分を含む残高が5月末15億20百万円→8月末19億17百万円)。借入の内容は開示されていません
- 繰延税金資産が9か月で80百万円増えています。これが純利益を押し上げた分で、第5章で扱います
第3四半期はキャッシュ・フロー計算書が作成されていません。9か月の減価償却費は2億91百万円(前年同期2億44百万円)で、19.2%増えています。
3. 深掘り①:6〜8月の3か月に何が起きたか
この記事の問いは「据え置かれた通期予想は、最後の3か月に何を置いているのか」です。その前に、物差しとして過去の四半期の形を確認します。
3-1. 15四半期の並び
ニューグランドは累計の数字しか開示していないので、各四半期は筆者が累計から差し引いて出しています。
| 四半期 | 売上高 | 販管費 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年11月期 12〜2月 | 12億33百万円 | 8億91百万円 | 36百万円 | 3.0% |
| 2023年11月期 3〜5月 | 13億72百万円 | 9億48百万円 | 90百万円 | 6.5% |
| 2023年11月期 6〜8月 | 12億44百万円 | 9億53百万円 | 5百万円 | 0.4% |
| 2023年11月期 9〜11月 | 15億23百万円 | 9億79百万円 | 1億53百万円 | 10.0% |
| 2024年11月期 12〜2月 | 14億10百万円 | 9億42百万円 | 1億24百万円 | 8.8% |
| 2024年11月期 3〜5月 | 15億10百万円 | 10億48百万円 | 1億03百万円 | 6.8% |
| 2024年11月期 6〜8月 | 13億20百万円 | 10億76百万円 | △83百万円 | △6.3% |
| 2024年11月期 9〜11月 | 16億16百万円 | 11億06百万円 | 1億10百万円 | 6.8% |
| 2025年11月期 12〜2月 | 16億30百万円 | 10億43百万円 | 1億69百万円 | 10.4% |
| 2025年11月期 3〜5月 | 16億61百万円 | 10億98百万円 | 1億50百万円 | 9.1% |
| 2025年11月期 6〜8月 | 14億64百万円 | 12億49百万円 | △1億40百万円 | △9.5% |
| 2025年11月期 9〜11月 | 17億75百万円 | 11億98百万円 | 1億23百万円 | 7.0% |
| 2026年11月期 12〜2月 | 17億16百万円 | 11億08百万円 | 1億95百万円 | 11.3% |
| 2026年11月期 3〜5月 | 18億37百万円 | 11億92百万円 | 2億02百万円 | 11.0% |
| 2026年11月期 6〜8月 | 15億21百万円 | 12億33百万円 | △85百万円 | △5.6% |
| 2026年11月期 9〜11月(会社予想の残り) | 17億26百万円 | ― | 18百万円 | 1.1% |
出典:各期の四半期・中間・通期決算短信の累計値から筆者が差し引き(千円単位の開示から百万円単位に四捨五入)。2023〜2025年11月期は4四半期の合計が通期の開示値と一致することを確認済み。最終行は〈通期予想−9か月実績〉。
この表のポイントは3つです。
- 6〜8月は4年連続で年間最小の営業利益で、2024年以降は3年連続の営業赤字です。売上は他の四半期より少し低いだけですが、販管費はむしろ6〜8月が多い年があり(2025年は年間最大の12億49百万円)、売上の谷がそのまま赤字になります
- 売上は9〜11月が3年連続で年間最大です。会社の「第4四半期に宴会(婚礼)需要が強く、売上高が多く計上される傾向」という説明と一致します
- 最終行の会社予想の残りは、過去3年のどの9〜11月とも形が違います。売上は前年の9〜11月より2.7%少なく、営業利益率は1.1%です。これが第4章の主題です
用語メモ:「季節性がある」と書けるのは、毎年同じ四半期に同じ形が出ている場合です。ニューグランドの6〜8月の谷は4年すべてで出ているので季節性と言えます。一方、営業利益が最大の四半期は2023年が9〜11月、2024・2025年が12〜2月で、年によって違います。
3-2. 6〜8月の赤字は前年より55百万円小さい
今年の6〜8月の営業赤字8,463万円は、前年(1億3,970万円の赤字)より5,506万円小さくなりました。中身を3つに分けます。
| 要因 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 数量効果(売上が増えた分) | +43百万円 | 売上の増加5,701万円×前年の粗利率75.8% |
| 率効果(粗利率の変化) | △5百万円 | 当期売上×粗利率の差(75.8%→75.5%) |
| 販管費の減少 | +17百万円 | 販管費12億49百万円→12億33百万円 |
| 合計 | +55百万円 | 実際の営業利益の増減と一致 |
筆者の差し引き・計算。
6〜8月の改善は、売上の増加(+3.9%)と、販管費が前年より1,694万円少なかったことの2つで説明できます。販管費が前年を下回ったのは、2025年11月期以降の7四半期でこの3か月だけです。会社は四半期の販管費の内訳を開示していないので、何が減ったのかは分かりません。なお、前年の6〜8月は、会社が2025年7月に「第3四半期以降にホテル本館中庭改装やホテル内エスカレーター整備などの修繕工事を予定」と書いていた時期にあたります(費用の計上区分は開示されていません)。
3-3. 宿泊と宴会は6〜8月に前年割れ
部門別売上も累計から3か月ずつに割ると、別の顔が出ます。
| 部門 | 12〜2月 | 3〜5月 | 6〜8月 |
|---|---|---|---|
| 宿泊部門 | +5.5% | +13.5% | △0.6% |
| レストラン部門 | +9.7% | +11.1% | +11.5% |
| 宴会部門 | +2.4% | +9.9% | △2.1% |
各四半期の前年同期比。筆者の差し引き。
- 宿泊は3〜5月に+13.5%と伸びたあと、6〜8月は4億93百万円で前年(4億96百万円)を0.6%下回りました
- 宴会も6〜8月は4億53百万円で前年(4億62百万円)を2.1%下回りました
- 6〜8月の増収は、レストラン(+11.5%)と、3部門以外の売上(支店・その他)が支えています
会社は短信で、6〜8月に宿泊と宴会が前年を下回った理由を説明していません。前期の決算短信では、業界の課題として「記録的猛暑」や「日中関係の緊張化による影響」に触れていますが、今期の6〜8月の数字との関係は書かれていません。結びつけるのは筆者の推測になるので、ここでは前年割れの事実だけを置きます。9か月の累計(宿泊+6.2%、宴会+3.9%)では見えない変化で、9〜11月の宿泊・宴会がどう動くかが第4章の予想の読み方に関わります。
4. 深掘り②:据え置いた予想が9〜11月に置いているもの
第3章で、9〜11月は売上が最も大きい四半期だと確認しました。会社予想はそこに何を置いているのでしょうか。
4-1. 予想の残り3か月は「売上△2.7%、営業利益率1.1%」
| 項目 | 前年の9〜11月(実績) | 今年の9〜11月(会社予想の残り) | 差 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 17億75百万円 | 17億26百万円 | △2.7% |
| 営業利益 | 1億23百万円 | 18百万円 | △85.2% |
| 営業利益率 | 7.0% | 1.1% | △5.9pt |
| 経常利益 | 1億16百万円 | 3百万円 | ― |
| 純利益 | △29百万円 | △1億17百万円 | ― |
今年の欄は〈通期予想−9か月実績〉(筆者計算)。
9か月で+6.7%伸びた売上が、残り3か月で前年割れになる置き方です。営業利益は前年の85%減です。前年の9〜11月の粗利率(74.5%)が続くとすると、営業利益1,800万円に届く販管費は約12億67百万円で、前年の9〜11月(11億98百万円)より5.7%多い計算です。9か月の販管費の伸びは+4.2%でした。
この予想は「売上が前年を割り、費用は9か月より速く増える」という前提を置いている計算になります。 会社が9〜11月の前提を説明しているわけではありません。
4-2. 7月の修正は「上期の上振れ分だけ」を足したもの
この置き方は、7月の上方修正のときに決まっています。
| 時点 | 通期営業利益予想 | 上期(12〜5月)の営業利益 | 予想が下期(6〜11月)に置いた営業利益 |
|---|---|---|---|
| 期初(2026年1月13日) | 1億60百万円 | 2億03百万円(予想) | △43百万円 |
| 7月修正(2026年7月8日) | 3億30百万円 | 3億96百万円(実績) | △66百万円 |
| 第3四半期(2026年10月8日) | 3億30百万円(据え置き) | ― | 6〜8月の実績△85百万円+9〜11月18百万円 |
筆者計算。7月時点の上期実績は修正開示の「今回修正予想」の値。
7月の修正で通期の営業利益は1億69百万円引き上げられましたが、上期の計画比の上振れは1億93百万円でした。下期の計画は期初の△43百万円から△66百万円へ、むしろ23百万円下げられています。 修正理由は「第2四半期までの業績を踏まえ」とだけ書かれています。
会社は7月の修正で、下期の前提を変えた理由を書いていません。前年の7月には、上期が計画を大きく上回ったのに通期を据え置き、その理由を次のように書いていました(原文)。
2025 年 11 月期通期については、売上高は昨今の猛暑による需要減少を見込み、販売費及び一般管理費は第 3 四半期以降にホテル本館中庭改装やホテル内エスカレーター整備などの修繕工事を予定していることから、(中略)変更はありません。
夏の需要減と修繕費を下期に置くのは、前年に会社が明言していた予想の作り方です。今年も同じ作り方かどうかは、今年の開示には書かれていません。
4-3. 第3四半期時点の予想は、過去3年とも大きく外れた
過去3年、第3四半期決算の時点で予想が9〜11月に置いていた営業利益と、実際の9〜11月を並べます。
| 決算期 | 第3四半期時点の予想が置いた9〜11月の営業利益(利益率) | 実際の9〜11月 | 達成率 | その後の修正 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年11月期 | 69百万円(5.1%) | 1億53百万円(10.0%) | 220.8% | 上方(2024年1月10日) |
| 2024年11月期 | 1億75百万円(11.0%) | 1億10百万円(6.8%) | 62.9% | 下方(2025年1月10日) |
| 2025年11月期 | 40百万円(2.6%) | 1億23百万円(7.0%) | 310.3% | 上方(2026年1月9日) |
| 2026年11月期 | 18百万円(1.1%) | ― | ― | ― |
筆者計算。予想は各期の第3四半期決算時点で公表されていた通期予想(2025年11月期は10月7日修正後)。
この表のポイントは2つです。
- 置き方が低かった年(2023年・2025年)は実績が2〜3倍で着地し、高かった年(2024年)は届きませんでした。今年の置き方(1,800万円・1.1%)は過去4年で最も低い
- 一方で、実際の9〜11月の利益率は6.8〜10.0%の範囲にとどまっています。過去3年の9〜11月の利益率が今年も出るなら上振れになりますが、2024年のように費用が想定より膨らむ年もあります
用語メモ:期中に予想を据え置くと、累計が予想に近づくほど、残り期間の予想は計算上小さくなります。「残り3か月に1,800万円」は、会社が9〜11月の利益をそう見積もったと発表したものではなく、通期予想を変えなかった結果として出てくる数字です。
4-4. 9〜11月の売上と販管費を置き換えた場合
予想が置いた前提がどれだけ重いかを、売上と販管費の伸びを置き換えて試算します。
| 9〜11月の売上(前年比) | 販管費 前年並み | 販管費+4.2%(9か月の伸び) | 販管費+7.6% |
|---|---|---|---|
| △2.7%(会社予想の売上) | 88 / 399 | 37 / 349 | △3 / 308 |
| ±0% | 123 / 435 | 73 / 385 | 32 / 344 |
| +3.9%(6〜8月の伸び) | 175 / 487 | 125 / 436 | 84 / 396 |
| +6.7%(9か月の伸び) | 212 / 524 | 162 / 473 | 121 / 433 |
各マスは「9〜11月の営業利益 / 通期の営業利益」(百万円)。筆者の試算で、将来の見通しではありません。粗利率は前年9〜11月の74.5%で固定、販管費は前年9〜11月(11億98百万円)を基準にしています。会社予想の通期営業利益は3億30百万円です。
この表の読み方は2つです。
- 会社予想の3億30百万円は、売上が前年を割り、販管費が9か月の伸びより速く増える左上の領域にあります
- 売上が前年並みで販管費が9か月と同じ伸びなら約3億85百万円、6〜8月並みの伸びなら約4億36百万円です。どのマスに着地するかを示す表ではなく、予想が表の中のどこに置かれているかを示す表です
5. 深掘り③:純利益予想が9か月実績を下回る理由
第4章は営業利益の話でした。純利益の予想はさらに大きく「下」に置かれています。9か月の純利益4億50百万円に対し、通期予想は3億33百万円です。残り3か月で1億17百万円の純損失を置いている計算です。
5-1. 税金の行が毎年大きく動く
| 決算期 | 税引前利益 | 法人税等合計 | 負担率 | 当期純利益 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年11月期 | 2億56百万円 | △1億38百万円 | △53.8% | 3億93百万円 |
| 2024年11月期 | 3億26百万円 | 23百万円 | 7.0% | 3億03百万円 |
| 2025年11月期 | 1億91百万円 | △10百万円 | △5.2% | 2億01百万円 |
| 2026年11月期9か月 | 3億54百万円 | △96百万円 | △27.1% | 4億50百万円 |
出典:各期の決算短信(千円単位の開示から百万円単位に四捨五入)。△はマイナス(税金の戻り)。負担率は筆者計算。
法定実効税率は34.0%ですが、ニューグランドの税負担率は毎年それを大きく下回り、マイナスの年もあります。損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」は毎年2百万円程度(2,447千円)です。
理由は有報の税効果の注記に書かれています。2025年11月末の繰延税金資産は、総額13億29百万円に対し評価性引当額が△12億52百万円で、計上されているのは77百万円だけです。総額の最大項目は「減損損失」の7億83百万円で、過去の減損で生じた税務上の差です。税務上の繰越欠損金2億22百万円にも、全額に評価性引当額が付いています。
用語メモ:繰延税金資産は「将来の税金の減り分」を資産にしたものです。将来の利益で本当に使えると判断できる分だけを計上し、使えるか分からない分は「評価性引当額」として差し引きます。判断が変わって計上額が増えると税金費用がマイナスになり(純利益が増える)、減ると税金費用が増えます(純利益が減る)。現金は動きません。
2025年11月期の税率差異の注記を転記します。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 法定実効税率 | 34.0% | 34.0% |
| 住民税均等割 | 0.8% | 1.3% |
| 評価性引当額の増減 | △27.8% | △24.1% |
| 税率変更による影響 | ― | △16.0% |
| その他 | 0.0% | △0.4% |
| 税効果会計適用後の負担率 | 7.0% | △5.2% |
出典:第148期有価証券報告書。各項目の合計が負担率と一致することを確認済み。
利益が出ても、評価性引当額の取り崩しで税金がほぼ相殺されるのが、この3年の形です。
5-2. 期中に戻り、期末に取り崩す
四半期ごとの税金の行を並べると、もう一つの形が見えます。
| 決算期 | 9か月の法人税等合計 | 9〜11月の法人税等合計 | 通期 |
|---|---|---|---|
| 2023年11月期 | 2百万円 | △1億39百万円 | △1億37百万円 |
| 2024年11月期 | 21百万円(6〜8月に+84百万円) | 1百万円 | 23百万円 |
| 2025年11月期 | △83百万円 | +73百万円 | △10百万円 |
| 2026年11月期 | △96百万円 | 予想から逆算すると+1億20百万円 | ― |
筆者の差し引き。
- 2023年11月期は、期末に繰延税金資産を1億40百万円計上し、9〜11月の純利益が大きく膨らみました(会社開示「繰延税金資産140百万円を計上」)
- 2024年11月期は、上期に積んだ戻り(△63百万円)が6〜8月に逆転し、会社は通期決算前の修正で「繰延税金資産が前期に比べ75百万円減少」と説明しています
- 2025年11月期は、9か月で△83百万円積んだ戻りのうち73百万円が9〜11月に取り崩されました
今期は9か月で△96百万円の戻りが積まれ、貸借対照表の繰延税金資産は56百万円から1億36百万円に増えています。会社予想の経常利益(3億20百万円)を前提に、9〜11月に特別損益がないと置くと、純利益予想3億33百万円に届く通期の税金は約24百万円、負担率は約6.8%です。これは2024年11月期の負担率7.0%とほぼ同じ水準です。
5-3. 2つの読み方
純利益予想が9〜11月に置いた△1億17百万円は、次の2通りに読めます。
- 読み方①:期中に積んだ税金の戻りを、期末の見直しで取り崩す前提。9〜11月の税金が約1億20百万円になる計算で、前年の9〜11月(+73百万円)と同じ方向の動きです
- 読み方②:9〜11月に特別損失を置いている。税金を9か月の水準のままとすると、約1億20百万円の特別損失が必要な計算です。前年の9〜11月は熱源設備の撤去費用62百万円を特別損失に計上しました
どちらか、あるいは両方の組み合わせかは、開示から判断できません。会社は純利益予想の内訳を説明していません。分かるのは、営業利益の予想と同じく、純利益の予想も残り期間を低く置いた形になっていることだけです。読み方①なら、純利益が予想を上回るかどうかは、期末の繰延税金資産の判断(来期の事業計画に基づく)に左右されます。
用語メモ:有報の「重要な会計上の見積り」には税効果会計が挙がっています。会社は繰延税金資産の計上にあたり「将来計画に基づく一時差異等加減算前課税所得の見積り」を行っていると書いています。来期の業績計画を低く置けば、計上できる繰延税金資産も小さくなる関係です。
5-4. 1株利益を3本で見る
| 物差し | 1株利益 | 株価6,590円でのPER |
|---|---|---|
| 会社予想EPS | 282.05円 | 23.4倍 |
| 経常利益予想−住民税均等割(税金がほぼかからない前提) | 269.0円 | 24.5倍 |
| 経常利益予想×(1−法定実効税率34.0%) | 178.9円 | 36.8倍 |
筆者計算。分母は自己株式を除く1,180,649株。株価は2026年10月8日終値。
会社予想EPSのPERと、税金がほぼかからない前提のPERは近い水準です。評価性引当額の残高(12億52百万円)がある間は、この関係が続く可能性があります。一方、評価性引当額が取り崩され、繰延税金資産が計上され切ったあとは、法定実効税率に近い税金が出ます。そのときの利益水準で見たPERが3本目です。
6. 貸借対照表の隅にあるもの
6-1. 借地とリースの注記
2025年11月11日、ニューグランドは第144期〜第147期(2021年〜2024年11月期)の4期分の訂正有価証券報告書を同日に提出しました。筆者が内容を確認した第147期の訂正事項は「注記事項(リース取引関係)」で、「(訂正前)(省略)」から次の内容が追加されました。
| 項目 | 2024年11月末 | 2025年11月末 |
|---|---|---|
| 解約不能のオペレーティング・リースの未経過リース料(1年内) | 1億32百万円 | 1億33百万円 |
| 同(1年超) | 34億26百万円 | 33億03百万円 |
| 合計 | 35億58百万円 | 34億36百万円 |
出典:第147期訂正有価証券報告書、第148期有価証券報告書。
未経過リース料の合計34億円は、純資産(2025年11月末37億21百万円)に近い規模です。何のリースかは注記に書かれていませんが、有報の資産除去債務の注記には「ホテルタワー館底地の事業用定期借地権設定契約」があることが書かれています。
用語メモ:オペレーティング・リースは、借りている資産と将来の支払い義務を貸借対照表に載せない処理です。新しいリース会計基準では、原則として全てのリースが資産と負債に載ります。ニューグランドは有報で、適用予定日を2028年11月期の期首と書いています。
参考までに、割引前の合計34億36百万円をそのまま資産と負債の両方に足すと、8月末の自己資本比率は46.0%から33.4%になります。実際に計上される額は将来の支払いを割り引いた額で、これより小さくなります。筆者の試算で、会社が影響額を開示しているわけではありません。
6-2. 賃貸ビルの含み
有報の賃貸等不動産の注記では、賃貸ビル等の帳簿価額4億51百万円に対し、期末時価は7億09百万円です。差額2億58百万円が含み益に当たります。一方、事業用土地は2000年に再評価しており、土地再評価差額金は8月末で△4億29百万円(マイナス)です。
7. 資本政策と株主還元
7-1. 配当
| 決算期 | 1株配当 | 配当性向 |
|---|---|---|
| 2018〜2022年11月期 | 無配(5期) | ― |
| 2023年11月期 | 25円 | 7.5% |
| 2024年11月期 | 25円 | 9.7% |
| 2025年11月期 | 25円 | 14.7% |
| 2026年11月期(予想) | 25円 | 8.9% |
出典:有価証券報告書、剰余金の配当に関するお知らせ(2019〜2021年は「剰余金の配当(無配)に関するお知らせ」)、決算短信。2026年11月期の配当性向は会社予想EPSによる筆者計算。
- 配当方針は「長期にわたる安定的配当の継続を基本方針とし、節目においては記念配当を実施するなど利益の還元に努めてまいります」です。配当性向やDOEの目標はありません
- 2025年11月期の配当は、方針に加えて「営業利益及び当期純利益を計上する見込みとなりました」ことを理由に25円とされています。利益の額ではなく、利益を計上する見込みかどうかに触れた書き方です
- 2025年11月期の純資産配当率(DOE)は0.8%です
- 定款上は中間配当(5月31日基準)もできますが、実施していません。配当は取締役会で決議します
2027年12月に開業100周年を迎えます。会社は「2027年の開業100周年を見据えた足場固めの取組み」を対処すべき課題に挙げています。90周年の2017年には「開業90周年記念株主優待」を実施しました。100周年の記念配当・記念優待は、現時点で何も開示されていません。
7-2. 株主優待
ニューグランドには株主優待があります。有報の「株主に対する特典」欄と会社IRサイトの株主優待ページを確認し、内容は一致しています。
| 保有株数 | ホテル利用券(保有3年未満) | ホテル利用券(保有3年以上) | 株主コーヒー券 | 1株当たりの利用券額(3年未満) |
|---|---|---|---|---|
| 100〜499株 | 1,000円分 | 2,000円分 | 5枚 | 10円〜2.0円 |
| 500〜999株 | 2,000円分 | 4,000円分 | 10枚 | 4.0円〜2.0円 |
| 1,000株以上 | 4,000円分 | 8,000円分 | 20枚 | 4.0円以下 |
このほか、宿泊料金と館内レストランの飲食料金が10%割引になる「株主優待証」が付きます。基準日は毎年11月30日の年1回です。
この表のポイントは3つです。
- 100株のときに1株当たりの価値が最も高く、株数を増やすほど下がります。100株と499株で利用券は同じ1,000円分です
- ホテル利用券1,000円分の名目利回りは、100株・株価6,590円で0.15%、保有3年以上で0.30%です。株主コーヒー券は金額が開示されていないので利回りに入れていません。10%割引は、利用する予定があるかどうかで価値が0にも数千円にもなります
- 「保有3年以上」は「同一の株主番号で、5月31日および11月30日現在の株主名簿に7回以上連続」です。いま買って2026年11月30日の名簿に載ると、7回目は2029年11月30日で、初めて2,000円分になるのは2029年11月基準の優待(2030年2月下旬発送)です。「3年」という言葉より実際の待ち時間は長く、配当の基準日ではない5月31日にも名簿に載り続ける必要があります
優待の費用は開示されていません。2025年11月末の株主数1,064名が全員100株保有なら約106万円、全員1,000株以上・3年以上なら約851万円で、2025年11月期の営業利益の0.4〜2.8%に当たります(ホテル利用券の額面ベース、筆者の試算)。自社の施設で使う利用券なので、会社の実際の負担は額面より小さい可能性があります。
**権利付き最終日は2026年11月26日(木)**です。基準日の11月30日(月)から2営業日さかのぼります。配当25円と優待の権利が同じ日に確定します。
7-3. 株主構成
| 株主 | 持株比率 | 開示されている関係 |
|---|---|---|
| 原地所株式会社 | 16.22% | 当社の代表取締役会長兼社長・原信造氏が代表取締役社長 |
| 穐田誉輝氏 | 4.88% | ― |
| 横浜銀行 | 4.67% | 借入先(6億16百万円)。同行顧問が当社の社外取締役(監査等委員) |
| 清水建設 | 3.98% | 2025年11月末時点では同社常任顧問が当社の社外取締役(2026年2月の総会の選任者には含まれていない) |
| 東日本旅客鉄道 | 3.71% | 同社横浜支社長が当社の社外取締役(監査等委員) |
| そごう・西武 | 3.22% | 支店(そごう横浜店内のバー)の出店先 |
| 原信造氏 | 3.15% | 代表取締役会長兼社長 |
| 上野グループホールディングス | 2.88% | ― |
| 麒麟麦酒 | 2.80% | ― |
| セコム | 2.71% | ― |
出典:第148期有価証券報告書(2025年11月30日現在。2026年5月31日現在の半期報告書も同じ)、第148回定時株主総会招集通知。持株比率は自己株式を除く発行済株式数に対する比率。
- 株式の60.6%を89社の「その他の法人」が持ち、個人(952名)は30.9%です。上位10名で48.2%です
- 原地所と原信造氏の持分を足すと19.37%です(筆者の合算・参考値)。ただし、原信造氏が原地所の代表取締役社長であることは開示されていますが、原地所の株主構成や両者の資本関係・共同保有の関係は開示で確認できなかったため、この記事では合算した比率を主に使いません
- 2026年2月の定時株主総会では、取締役選任議案の賛成割合が97.90%〜99.33%でした
地元の銀行・鉄道・建設・百貨店・ビールの会社が株主に並び、その一部から社外取締役を迎えているのが、この会社の株主構成の特徴です。有報は、ステークホルダーとして「当社設立の歴史的経緯を踏まえ横浜市及び横浜市民等」を挙げています。
7-4. 投資単位と流動性
株価6,590円で、1単元(100株)の購入には約66万円が必要です。東京証券取引所は望ましい投資単位を50万円未満としており、ニューグランドは2025年1月と2026年2月に「投資単位の引下げに関する考え方及び方針等について」を開示しています。2026年の開示の内容は「株価、株主数の推移、株式市場の動向、また引下げに伴う費用対効果等を総合的に勘案し、慎重に検討してまいりたい」で、具体策は書かれていません。
売買は細く、2026年9月は営業日19日のうち売買が成立したのが13日、1日の出来高は100〜300株でした(Yahoo!ファイナンスの時系列による、報道ベース)。売りたいときに思った値段で売れない可能性は、この会社の株を持つうえでの前提になります。
8. 株価の見方
8-1. 株価の基準点
- 直近終値は2026年10月8日の6,590円です。決算は同日15時30分の発表で、この終値は発表前の取引です。翌10月9日(金)は売買が成立せず、10月12日(月)は祝日のため、決算後に最初に値が付き得るのは10月13日(火)です
- 時価総額は約77.8億円(自己株式を除く1,180,649株)、PBRは1.86倍(8月末の1株純資産3,536.56円)、配当利回りは0.38%です
- 2026年の年初来高値は6,590円(10月)、安値は5,150円(6月)です(月足から、報道ベース)
- 7月8日15時30分の上方修正の翌日(7月9日)は、出来高3,200株(7月で最多)、高値6,370円、終値5,980円(前日比+6.8%)でした
株価の時系列の信頼性は、有報の数字2つで確認できます。有報の株価収益率38.1倍×1株利益170.56円=約6,498円、短信の時価ベースの自己資本比率86.7%×総資産88億55百万円÷株数=約6,503円は、いずれも2025年11月末の終値6,500円と一致します。有報の株主総利回りは5年で186.3%(配当込みTOPIX 217.2%)です。
8-2. 強気の見方
- 期初予想は2年続けて前期実績の半分前後に置かれ、2025年11月期は期初予想の約2.9倍で着地しました。今期も9か月で期初予想の約1.9倍です
- 据え置いた予想が9〜11月に置いた営業利益率1.1%は、過去3年の9〜11月(6.8〜10.0%)より大幅に低い水準です。過去並みの利益率が出れば、営業利益は予想を上回ります
- 6〜8月の赤字は前年より55百万円縮小し、販管費は前年を下回りました
- 評価性引当額12億52百万円が残っている間は、利益の大半が税金に取られにくい構造です
- 賃貸ビルには2億58百万円の含み益があり、2027年12月には開業100周年を迎えます
8-3. 弱気の見方
- 6〜8月に宿泊(△0.6%)と宴会(△2.1%)が前年を下回りました。9〜11月の最大部門である宴会の伸びが止まっているなら、予想の「売上△2.7%」は保守的とは限りません
- 2024年11月期は、7月に上方修正したあと9〜11月の費用が膨らみ、下方修正で着地しました。古い建物の修繕・更新費用は、毎年どこかで出ます
- 純利益は税金の行で毎年大きく動きます。期中に積んだ税金の戻りは、前年も期末に取り崩されました。四半期の純利益を実力として読むのは難しい会社です
- 設備投資が続き、借入金は9か月で3億50百万円増えました。2028年11月期からは新しいリース会計基準で、借地の支払い義務(未経過リース料34億円)が貸借対照表に載る可能性があります
- 法定実効税率を当てたPERは36.8倍、配当利回りは0.38%です。売買も細く、1単元は約66万円です
同じ「9〜11月に1,800万円」という数字が、強気側では上振れの余地、弱気側では費用が膨らむ前提として読めます。数字は同じで、読み方が違うだけです。
9. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 見るポイント |
|---|---|---|
| 2026年10月13日(火) | 決算発表後の最初の取引日 | 発表後に最初に付く値段(10月9日は売買不成立、12日は祝日) |
| 2026年11月26日(木) | 権利付き最終日 | 配当25円(予想)と株主優待の権利 |
| 2026年11月30日(月) | 決算期末・優待と配当の基準日 | ― |
| 2027年1月上旬(例年) | 業績予想の修正(例年、通期決算の数日前) | 修正の有無と向き、繰延税金資産の取り扱い |
| 2027年1月中旬(例年) | 2026年11月期決算短信 | 9〜11月の営業利益率、税金の行、来期予想の置き方 |
| 2027年1月中旬(例年) | 期末配当の取締役会決議 | 25円か |
| 2027年2月 | 有価証券報告書・定時株主総会 | 税効果の注記、未経過リース料、大株主 |
| 2027年12月 | 開業100周年 | 記念配当・記念優待の開示の有無 |
| 2027年12月1日 | 2028年11月期の期首 | 新リース会計基準の適用予定 |
日付のうち「例年」としたものは過去の発表日からの推定です。
見るべきKPI
- 9〜11月の営業利益率(予想の残りは1.1%、過去3年は6.8〜10.0%)
- 宿泊・宴会部門の単独四半期の前年比(6〜8月は△0.6%・△2.1%)
- 9〜11月の法人税等合計と、期末の繰延税金資産の残高(8月末1億36百万円)
- 特別損益(修繕・更新に伴う除却損、再開発関連)
- 借入金と建設仮勘定の残高
10. 3行まとめ
- 6〜8月は4年連続で年間最小の営業利益になる季節の谷で、今年の赤字は前年より55百万円小さかった。ただし宿泊と宴会は前年を下回った
- 据え置いた通期予想は、売上が最も大きい9〜11月に営業利益率1.1%しか置いていない。過去3年の第3四半期時点の予想は、実際に対して220.8%・62.9%・310.3%と上下どちらにも外れてきた
- 純利益予想が9か月実績を下回るのは、主に税金の行の計算。期中に積んだ税金の戻りを期末に取り崩す動きは前年にもあり、営業利益と純利益は別々に読む必要がある
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値は、同社の決算短信、業績予想の修正に関するお知らせ、剰余金の配当に関するお知らせ、投資単位の引下げに関する考え方及び方針等について、定時株主総会招集通知、有価証券報告書・訂正有価証券報告書・半期報告書・臨時報告書(EDINET)、会社IRサイトの株主優待ページに基づきます。株価・出来高・年初来高値安値はYahoo!ファイナンスの時系列による報道ベースの値です。四半期ごとの数値、残り期間の予想、感応度表、優待費用の幅、リースを貸借対照表に載せた場合の自己資本比率、税負担率からの逆算は筆者の計算・試算です。ニューグランドは決算補足説明資料を作成しておらず、決算説明会も開催していないため、当四半期についての会社の追加説明・質疑応答は一切反映していません。本文中の会社説明は、各期の決算短信・業績予想の修正開示・有価証券報告書・招集通知の記載によるものです。6〜8月の宿泊・宴会の前年割れの理由、販管費が前年を下回った理由、7月の修正で下期の計画を引き下げた理由、純利益予想が9〜11月に置いた損失の中身(税金か特別損失か)は会社が開示しておらず、本文の2つの読み方は筆者の推測であり、会社の開示に基づくものではありません。固定資産権利変換益の対象となった不動産と補償金収入の内容は開示されておらず、筆者は特定していません。原地所株式会社と原信造氏の持分の関係(資本関係・共同保有の有無)は開示で確認できなかったため、合算した比率は参考として示すにとどめています。未経過リース料の内訳(どの契約か)は開示されておらず、資産除去債務の注記との関係は筆者の整理です。株主コーヒー券・割引の金額は開示されていないため、優待利回りに含めていません。決算発表後、本記事の執筆時点まで売買が成立しておらず、本文の株価は発表前の終値です。訂正有価証券報告書は第147期分の訂正内容を確認し、第144〜146期分は訂正事項の内容を確認していません。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。