株式投資

【2026年10月発表・第3四半期決算】日本フイルコン(5942)営業利益は前年の約2.6倍、売上は2年前とほぼ同じ――利益はどこから来たのか?

本記事は2026年10月1日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。**執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。**特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 第3四半期累計(2025年12月〜2026年8月)の営業利益14.26億円(前年同期比+158.3%)の増益874百万円を、「売上が増えた分」「粗利率が上がった分」「販管費が増えた分」の3つに分けるとどうなるか
  • 電子部材・フォトマスク事業の利益が3.3倍になった理由のうち、「前期末に設備の帳簿価額をゼロまで減損したので、減価償却費が消えた」という会計上の効果がどこまで効いているか。そして、その後も毎四半期、同じ事業で減損が続いている事実
  • 2回目の上方修正後の通期予想が、残り3か月(9〜11月)に置いている営業利益273百万円は、過去2年の同じ3か月と比べてどの水準か
  • 2028年度の中期経営計画の営業利益目標15億円を、計画初年度の予想(17億円)がすでに上回っていること。ROE目標6%にはまだ届かない見通しであること
  • 配当方針「連結配当性向30%以上かつDOE2.4%以上」のうち、年28円の配当を決めているのはDOE側であること。今期末の自己資本で計算するとDOE2.4%に届かない可能性(筆者の試算)
  • 大株主の上位に製紙会社(王子ホールディングス・大王製紙・日本製紙)が並ぶ株主構成と、毎年1月に行われている立会外での自己株式取得

1. 前提知識:日本フイルコンはどんな会社か

1-1. 紙をすく「網」を、100年納めてきた会社

製紙工場の大きな抄紙機(しょうしき)では、水に溶いたパルプを細かい網の上に流し、水を抜いて紙の層を作ります。家庭の手すき和紙で言えば「すのこ」にあたる部分です。この網(ワイヤー)は、機械が動き続けるあいだ少しずつすり減るので、定期的に取り替えられる消耗品です。

日本フイルコンは1916年創業の金網メーカーで、この「紙をすく網」を製紙会社に納め続けてきました。この記事では、同社を次の1文で捉えます。

「製紙機械の消耗品である『すく網』を、100年納め続けてきた会社。網を買ってくれる製紙会社が、同時に大株主でもある会社」

この1文から、強みと弱みが同じところから出てきます。

  • 強み:消耗品なので、機械が動いている限り買い替え需要が続く。得意先ごとの抄造条件に合わせた品ぞろえと知見がある(中期経営計画資料より)
  • 弱み:需要の大きさは「得意先の機械が何台動いているか」で決まり、自社では決められない。国内では紙の需要減少で製紙会社の生産能力削減が続いている(各四半期の決算短信より)

1-2. 事業の構成

セグメント中身第3四半期累計の外部売上同セグメント利益
産業用機能フィルター・コンベア製紙用の網(ワイヤー)、食品向けコンベヤーベルト、工業用金網15,434百万円1,048百万円
電子部材・フォトマスク金属・フィルムのエッチング加工品、半導体・電子部品製造用のフォトマスク3,699百万円812百万円
環境・水処理関連プールとろ過装置の設計・販売、ガスパイプライン用絶縁継手1,746百万円82百万円
不動産賃貸工場・社宅の跡地を店舗・マンション・駐車場として賃貸774百万円580百万円
調整額(主に本社費用)――△1,098百万円
連結―21,654百万円1,426百万円

この表のポイントは2つです。

1つ目は、売上の7割強が製紙用の網を含む「産業用機能フィルター・コンベア事業」だということです。2つ目は、売上が全体の3.6%しかない不動産賃貸が、連結営業利益の40.7%に相当する利益(580百万円)を出していることです。

用語メモ:セグメント利益の合計(2,525百万円)から本社費用などの「調整額」(△1,098百万円)を引いたものが連結の営業利益(1,426百万円)になります。本社費用はどのセグメントにも配分されていないので、各セグメントの利益は「本社費用を負担する前」の数字です。

この不動産の比重は、前期(2025年11月期)にはもっとはっきり出ていました。前期の連結営業利益668百万円に対し、不動産賃貸のセグメント利益は779百万円です。連結営業利益から不動産賃貸の利益を引くと、残り(製造3事業+本社費用)は△111百万円になります。前期は、製造業としての部分だけを見ると、本社費用まで負担すると赤字だったということです。今期の第3四半期累計では同じ計算で+846百万円まで戻っています。この戻りがどこから来たのかが、本記事の中心の問いです。

  • 株主優待:制度なし(2024年1月12日に廃止を発表。2023年11月30日基準日分の贈呈をもって終了。2025年11月期の有価証券報告書「株主に対する特典」欄も「該当事項なし」)
  • 市場区分:東証スタンダード
  • 決算期:11月(第1四半期=12〜2月、第2四半期=3〜5月、第3四半期=6〜8月、第4四半期=9〜11月)

1-3. 直近の業績推移

決算期売上高営業利益営業利益率親会社株主に帰属する当期純利益1株当たり利益ROE1株配当
2023年11月期27,9866312.3%1,27062.56円5.6%27円
2024年11月期28,6399243.2%62231.65円2.7%28円
2025年11月期27,8426682.4%△726△37.47円―28円
2026年11月期(会社予想・10月1日修正後)29,0001,7005.9%1,15059.60円―28円

(単位:百万円。出典:各期の決算短信、2025年11月期有価証券報告書、2026年10月1日「通期連結業績予想の再修正に関するお知らせ」。営業利益率は筆者計算)

この表のポイントは、営業利益率が2〜3%台の会社だったということです。今期予想の5.9%は、この3年で見ると一段高い水準です。2025年11月期の最終赤字は、後で見る減損損失1,579百万円と特別退職金544百万円によるものです。

1-4. 会社予想の達成履歴:期中は第3四半期で1回動かす会社だった

決算期期初予想(営業利益)修正①(開示日)修正②(開示日)実績期初予想比最終修正比
2024年11月期600800(2024年10月1日・第3四半期と同時)―924+54.2%+15.6%
2025年11月期600600(2025年10月1日・営業利益は据え置き、売上と純利益を下方修正)650(2025年12月25日・期末後。減損で純利益は△750)668+11.3%+2.8%
2026年11月期9001,400(2026年7月1日・中間決算と同時)1,700(2026年10月1日・第3四半期と同時)―(修正②は期初比+88.9%)―

(単位:百万円。出典:各期の決算短信・業績予想修正の開示。比率は筆者計算)

この表のポイントは2つです。

1つ目は、過去2期とも、最後に出した予想を営業利益の実績が上回って着地していることです(+15.6%、+2.8%)。2つ目は、今期は中間決算の時点で修正しているという点で、過去2期と動き方が違うことです。過去2期は第3四半期決算と同時(10月1日)に1回動かすのが基本でした。今期は7月と10月の2回、いずれも上方に動かしています。

2. 決算ハイライト(2026年10月1日発表・第3四半期累計)

2-1. 損益

項目2025年11月期 第3四半期累計2026年11月期 第3四半期累計増減率
売上高20,11621,654+7.6%
売上総利益7,0328,096+15.1%
(売上総利益率)35.0%37.4%+2.4pt
販売費及び一般管理費6,4806,669+2.9%
営業利益5521,426+158.3%
経常利益6971,659+137.7%
特別利益48935―
特別損失(減損損失)149234―
税金等調整前四半期純利益1,0381,459+40.6%
親会社株主に帰属する四半期純利益620971+56.8%
1株当たり四半期純利益32.01円50.37円―

(単位:百万円。百万円未満切捨て。出典:2026年10月1日発表の第3四半期決算短信。売上総利益率は筆者計算)

この表のポイントは3つです。

1つ目は、売上の伸び(+7.6%)に比べて、利益の伸びが桁違いに大きいことです。売上が増えた分だけでは、営業利益が2.6倍になることは説明できません。次の章で分解します。

2つ目は、**売上高21,654百万円は、2年前(2024年11月期の第3四半期累計21,729百万円)とほぼ同じ(△0.3%)**だということです。前年が落ち込んだ年だったので前年比は+7.6%に見えますが、2年前の水準に戻っただけです。

3つ目は、営業利益の伸び(+158.3%)に比べて、純利益の伸び(+56.8%)が小さいことです。理由は、前年同期に固定資産売却益281百万円と関係会社株式売却益208百万円という一時的な特別利益があったことです。前年の純利益はかさ上げされていて、今期にはそれがありません。

用語メモ:経常利益は、営業利益に本業以外の損益(受取配当金、持分法による投資利益、支払利息など)を足し引きしたものです。今期は持分法による投資利益が236百万円(前年同期137百万円)と増えており、経常利益を押し上げています。

2-2. 財政状態

項目2025年11月末2026年8月末増減
総資産42,95743,918+961
現金及び預金5,1895,317+127
棚卸資産(3科目合計)7,0027,620+617
投資有価証券3,1963,668+472
有利子負債(短期借入金+長期借入金)11,59911,586△13
純資産22,55223,660+1,107
自己資本比率51.6%52.9%+1.3pt

(単位:百万円。有利子負債は短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・長期借入金の合計で筆者計算。リース債務は含まない)

純資産の増加1,107百万円のうち、為替換算調整勘定の増加が651百万円で、利益剰余金の増加(427百万円)より大きくなっています。海外子会社(タイ、オーストラリア、中国など)の純資産を円に換算した額が、円安で膨らんだ分です。現金の動きを伴う増加ではありません。

第3四半期はキャッシュ・フロー計算書が作成されていません。注記によれば、第3四半期累計の減価償却費は1,143百万円(前年同期1,363百万円)で、220百万円減っています。この減少は次の章の論点につながります。

3. 深掘り:営業利益2.6倍はどこから来て、残り3か月に何が置かれているのか

この章は1つの問いを3段階で追います。

  1. 増益874百万円を「売上」「粗利率」「販管費」に分けるとどうなるか
  2. 粗利率を押し上げたものの1つ、電子部材・フォトマスク事業の「減価償却費が消えた」効果はどこまでか
  3. 2回目の上方修正後の予想は、残り3か月(9〜11月)に何を置いているか

3-1. 増益874百万円を3つに分ける

営業利益の増減は、次の3つの和で表せます。

  • 数量効果=売上の増加額×前年の売上総利益率
  • 率効果=今期の売上×(今期の売上総利益率−前年の売上総利益率)
  • 販管費の増減(増えれば利益のマイナス)
要因計算金額
数量効果売上増加1,538百万円×前年の粗利率34.96%+537.8百万円
率効果今期売上21,654百万円×(37.39%−34.96%)+526.0百万円
販管費の増加6,669−6,480△189.4百万円
合計―+874.3百万円
実際の営業利益の増加1,426.8−552.5+874.3百万円

(筆者の計算。損益計算書の千円単位の値から計算し、合計が実際の増減と一致することを確認)

**増益のおよそ半分は「売上が増えた分」、残り半分は「粗利率が2.4ポイント上がった分」**です。販管費は2.9%しか増えておらず、売上の伸び(7.6%)より小さく抑えられています。

ここで、粗利率の上昇(率効果)の中身として、会社が開示している要因は次の3つです。

  • 電子部材・フォトマスク事業:前期末の減損で減価償却費が減少(各四半期の決算短信)
  • 産業用機能フィルター・コンベア事業:国内連結子会社の退職金制度変更で退職給付費用が減少(同)
  • 修繕費などの製造経費が当初見込みより抑制された(2026年7月1日の業績予想修正の開示)

これに加え、前期に実施した静岡工場の早期退職優遇措置(特別退職金500百万円)による人件費の減少も、前期の決算短信で「当期と比べ増益となる見通し」の理由の1つに挙げられています。

ただし、それぞれの金額は開示されていません。開示されている数字で確認できるのは、全社の減価償却費が9か月で220百万円減ったことだけです。率効果526百万円のうち、少なくとも一部は「売れ方」ではなく「費用の構造を小さくしたこと」から来ている、というところまでが一次情報から言えることです。

3-2. 11四半期を並べると、今期の第2・第3四半期だけが別の水準にある

累計の数字では見えないので、決算短信の累計値を差し引いて、四半期ごとの数字に直します。

四半期売上高売上総利益率販管費営業利益営業利益率
2024年 第1(12〜2月)6,92432.5%2,1281211.7%
2024年 第2(3〜5月)7,17334.2%2,2282253.1%
2024年 第3(6〜8月)7,63236.9%2,4064075.3%
2024年 第4(9〜11月)6,91033.9%2,1711722.5%
2025年 第1(12〜2月)6,61332.6%2,176△23△0.4%
2025年 第2(3〜5月)6,81135.7%2,1253064.5%
2025年 第3(6〜8月)6,69236.6%2,1792704.0%
2025年 第4(9〜11月)7,72632.6%2,4011161.5%
2026年 第1(12〜2月)6,86433.7%2,0272884.2%
2026年 第2(3〜5月)7,49538.2%2,3195477.3%
2026年 第3(6〜8月)7,29540.0%2,3245928.1%

(単位:百万円。各四半期の決算短信の累計値から筆者が差し引いて算出。「2024年 第1」は2024年11月期の第1四半期を指す。4四半期の合計が通期の開示値と一致することを2期とも確認済み)

この表のポイントは3つです。

1つ目は、売上高は四半期あたり66億〜77億円の幅に収まっていて、今期だけが特別に多いわけではないことです。今期の第2・第3四半期の売上は75億円・73億円で、2024年の第3四半期(76億円)や2025年の第4四半期(77億円)と同じくらいです。

2つ目は、売上総利益率が今期の第2四半期38.2%、第3四半期40.0%と、11四半期の中で最も高い2つになっていることです。それまでの最高は36.9%でした。営業利益547百万円・592百万円も、それまでの最高(407百万円)を大きく上回ります。

3つ目は、直近2期とも、第1四半期(12〜2月)と第4四半期(9〜11月)の営業利益率が低いことです。2024年は1.7%と2.5%、2025年は△0.4%と1.5%でした。2年続けて同じ形が出ていますが、2期分だけなので「季節性」と言い切れるかどうかには留保が必要です。会社はこの形について理由を説明していません。

用語メモ:日本フイルコンのように累計の数字しか開示しない会社では、「第3四半期だけの3か月」の数字は、第3四半期累計(9か月)から中間期累計(6か月)を引き算して自分で作るしかありません。百万円未満切捨ての開示値どうしを引くと±1百万円ずれることがあるため、この記事では千円単位の財務諸表から計算しています。

3-3. 電子部材・フォトマスク事業:帳簿価額「ゼロ」の設備が稼いでいる

増益の内訳を事業ごとに見ると、いちばん目立つのは電子部材・フォトマスク事業です。

四半期外部売上セグメント利益利益率
2024年 第11,06611110.4%
2024年 第21,04113913.4%
2024年 第31,10714613.2%
2024年 第41,1511038.9%
2025年 第11,040272.6%
2025年 第21,12311810.5%
2025年 第31,1571008.7%
2025年 第41,2371239.9%
2026年 第11,14020217.7%
2026年 第21,26028522.6%
2026年 第31,30032625.1%

(単位:百万円。各四半期の決算短信のセグメント情報から筆者が差し引いて算出)

売上は四半期あたり10億〜13億円で、前年より1〜2割増えた程度です。それに対して利益率は、それまでの2〜13%から、今期は17.7%→22.6%→25.1%と段違いの水準に上がっています。

この段差の理由として会社が挙げているのが「前期末に実施した減損損失の計上により減価償却費が減少した」ことです。2025年11月期の有価証券報告書と決算短信の注記には、次のように書かれています。

  • 2024年11月期:エッチング製造設備を減損(522百万円)。回収可能価額は零として評価
  • 2025年11月期:エッチング製造設備(288百万円)とフォトマスク製造設備(1,291百万円)を減損。当該資産の回収可能価額は、零として評価

用語メモ:減損損失とは、設備などが将来生み出すお金で帳簿価額を回収できないと判断したとき、帳簿価額を回収できる額(回収可能価額)まで一度に切り下げ、差額を特別損失に計上する処理です。「回収可能価額を零と評価」は、帳簿上の価値をゼロにしたという意味です。帳簿価額がゼロになった設備からは、翌期以降、減価償却費が発生しません。設備そのものは工場で動き続け、製品を作り続けます。

つまり、今期の電子部材・フォトマスク事業の利益には、「設備は動いているのに、その設備の減価償却費が損益計算書に出てこない」という会計上の効果が入っています。前期のこのセグメントの減価償却費は476百万円でした(2025年11月期決算短信のセグメント情報)。このうちどれだけが減損で消えたのかは開示されていませんが、会社は中期経営計画の資料で「次期中期目標の営業利益は減価償却費の減少を織り込んだ数値」と明記しています。

そして、もう1つ重要な事実があります。帳簿価額をゼロにした後も、このセグメントでは毎四半期、減損損失が出続けています。

期間電子部材・フォトマスク事業の減損損失
2024年11月期 通期522百万円
2025年11月期 第3四半期累計149百万円
2025年11月期 通期1,579百万円
2026年11月期 第1四半期71百万円
2026年11月期 第2四半期(3か月)59百万円
2026年11月期 第3四半期(3か月)103百万円

(出典:各期の決算短信・有価証券報告書。2026年11月期の3か月ごとの値は累計から筆者が差し引いた。2025年11月期通期は遊休資産75千円を含む連結合計)

会社は毎回「将来の回収可能性を検討した結果、帳簿価額を回収可能価額まで減額」と書くだけで、何の資産を減損したのかを四半期ごとには説明していません。考えられる説明の1つは、回収可能価額をゼロと評価している資産グループに、新しく設備を買い足すと、その分もすぐに減損の対象になるという処理です。中期経営計画は、フォトマスク製品分野の主要設備を「順次更新していく計画」としており、設備投資は続きます。ただし、この説明は筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません。

この処理が続く場合、設備の費用は「毎年少しずつ減価償却費として営業利益から引かれる」のではなく、「買ったときに一度に特別損失として計上される」ことになります。営業利益は良く見え、そのぶん特別損失が毎期出る、という形です。

両方を同じ表に並べると、次のようになります。

項目2025年11月期 第3四半期累計2026年11月期 第3四半期累計
セグメント利益245百万円812百万円
同セグメントの減損損失(特別損失)149百万円234百万円
差し引き(筆者の参考計算)95百万円577百万円

(差し引きは会計上の利益ではなく、筆者が比較のために作った参考値)

減損損失を差し引いても577百万円で、前年の95百万円の約6倍です。減価償却費が消えた効果を割り引いても、この事業の稼ぐ力が上がっていることは数字から言えます。会社の説明でも、通信デバイス向けの販売が好調で、エッチング加工製品とフォトマスク製品の両方で売上が伸びています。一方で、セグメント利益の伸び(3.3倍)をそのまま「事業の実力の伸び」と読むと、会計上の効果の分だけ大きく見積もることになります。

3-4. 産業用機能フィルター・コンベア事業:売上は戻り切っていない

主力事業の四半期の推移です。

四半期外部売上セグメント利益利益率
2024年 第35,4353045.6%
2024年 第44,8392024.2%
2025年 第14,8771232.5%
2025年 第24,8513116.4%
2025年 第34,8742956.0%
2025年 第45,429581.1%
2026年 第14,9842665.3%
2026年 第25,2033406.5%
2026年 第35,2474428.4%

(単位:百万円。筆者の差し引き)

第3四半期(6〜8月)の外部売上5,247百万円は、前年同期(4,874百万円)を上回りますが、2年前(5,435百万円)にはまだ届いていません。それでも利益は442百万円と、9四半期で最も高くなっています。

会社の説明を「すく網」の軸で読むと、こうなります。

  • 製紙製品分野:国内は製紙会社の生産能力削減が続き、販売は減少。海外は北米・欧州で不織布向けを中心に販売が伸びた
  • コンベヤーベルト・フィルター分野:中国の食品業界向けコンベヤーベルトが増加。オーストラリア子会社は円安で円換算の売上が増えた
  • 利益:国内連結子会社の退職金制度変更による退職給付費用の減少が寄与

つまり、日本国内で「網を買ってくれる機械の数」が減る流れは変わっておらず、利益の戻りは海外と費用側から来ています。軸の言葉で言えば、需要の大きさは相変わらず得意先の機械の数で決まっており、会社が自分で決められたのは「自分の体の大きさ」(静岡工場の早期退職、欧州販売拠点の再編、タイ子会社への生産移管)のほうでした。

なお、2025年11月期の有価証券報告書の「重要な会計上の見積り」には、この事業について次の記載があります。国内の印刷用紙の需要減少と経費の増加で収益性が大きく低下したため、同事業の固定資産(有形固定資産2,117百万円、無形固定資産50百万円)に減損の兆候が認められた。ただし、主たる事業所である静岡事業所の正味売却価額が帳簿価額を上回るため、減損損失の計上は不要と判断した。そして「想定を超えて不動産価格が下落した場合、減損損失の計上の判断に重要な影響を与えるリスク」があると書かれています。電子部材・フォトマスク事業とは違い、こちらは「土地の値段」が減損を防いでいる、という構図です。

3-5. 残り3か月に、予想は何を置いているか

ここまでで、今期の第2・第3四半期が過去11四半期の中で別の水準にあることを見ました。では、10月1日に修正した通期予想は、残りの第4四半期(9〜11月)に何を置いているでしょうか。

〈通期予想−第3四半期累計の実績〉で、予想に含まれている第4四半期を逆算します。

項目予想に含まれる第4四半期(2026年9〜11月)2025年 第4四半期の実績2024年 第4四半期の実績
売上高7,3457,7266,910
営業利益273116172
営業利益率3.7%1.5%2.5%
経常利益291246197
親会社株主に帰属する純利益178△1,346△108

(単位:百万円。予想側は2026年10月1日の修正予想から第3四半期累計実績を引いた筆者の計算。実績側は筆者の差し引き。2025年第4四半期の純利益は減損損失・特別退職金を含む)

この表のポイントは3つです。

1つ目は、予想は第4四半期の売上を前年同期比△4.9%と置いていることです。前年の第4四半期は環境・水処理関連事業の売上(802百万円)が大きかった四半期で、その反動を見込んでいる可能性があります。ただし会社は第4四半期の内訳を開示していません。

2つ目は、第4四半期の営業利益273百万円(利益率3.7%)は、過去2年の第4四半期(1.5%、2.5%)より高いが、今期の第2・第3四半期(7.3%、8.1%)の半分以下だということです。「直近2期とも第4四半期は弱い」という形をそのまま置いたうえで、その水準を少し引き上げた予想、と読めます。

3つ目は、同じ時期の過去の予想との比較です。

決算期第3四半期決算時点の予想に含まれた第4四半期の営業利益実際の第4四半期
2024年11月期47172
2025年11月期47116
2026年11月期273―

(単位:百万円。筆者の計算)

過去2期は、第3四半期の時点で第4四半期をほぼゼロ(47百万円)と置き、実際はそれを上回りました。今期は273百万円と、過去の置き方より明らかに高い水準を置いています。「過去2期と同じだけ上振れする」と読むのは、置き方そのものが変わっている以上、根拠が弱いというのが筆者の見方です。

もう1つ、最終利益の予想には確認しておきたい点があります。第4四半期の経常利益291百万円から純利益178百万円まで降りる途中に、特別損失をどれだけ置いているかです。第3四半期累計の税負担率(29.3%)と、四半期あたりの非支配株主に帰属する利益(約20百万円)を当てはめると、次のようになります。

第4四半期の減損損失(仮定)第4四半期の純利益(筆者の試算)会社予想に含まれる第4四半期の純利益
0百万円約186百万円178百万円
30百万円約164百万円178百万円
60百万円約143百万円178百万円
100百万円約115百万円178百万円

(筆者の試算。税負担率29.3%は第3四半期累計の法人税等÷税金等調整前四半期純利益。非支配株主に帰属する利益は第3四半期累計の3分の1。会社は第4四半期の前提を開示していない)

この計算どおりなら、会社の純利益予想は第4四半期の特別損失をほとんど置いていない形になります。今期の電子部材・フォトマスク事業では3か月あたり59〜103百万円の減損が続いてきたので、同じペースが続けば最終利益は予想を下回る方向に働きます。一方で、税負担率は期末の税効果の見直しで動くことがあり、営業利益が予想を上回れば吸収される規模でもあります。どちらに転ぶかは、2027年1月の通期決算で確認するしかありません。

4. その他のセグメント

4-1. 環境・水処理関連事業:大型工事の進み方で四半期が大きく振れる

四半期外部売上セグメント利益
2025年 第4802100
2026年 第1483△21
2026年 第2774101
2026年 第34903

(単位:百万円。筆者の差し引き)

前期まで不採算案件の影響で新規の大型受注を控えていましたが、会社の説明では「前期まで受注を控えていた大型案件工事が進行」しています。工事の進み具合で売上を計上する案件(一定の期間にわたり移転される財)が、第3四半期累計で624百万円と前年同期(227百万円)の2.7倍になりました。

中期経営計画の資料には、学校プール市場で大きなシェアを持っていた競合が事業から撤退し、当社への引き合いが増えている状況が当面続く見込みだと書かれています。ただし、2028年度の目標(売上3,310百万円、営業利益259百万円)に対し、第3四半期累計の利益は82百万円です。四半期ごとの振れが大きく、3か月の数字で傾向を判断しにくい事業です。

4-2. 不動産賃貸事業:四半期あたり約190百万円の土台

不動産賃貸の利益は、11四半期を通じて四半期あたり187〜200百万円の範囲に収まっています。第1章で見たとおり、前期はこの利益が連結営業利益を上回っていました。製造業の利益が大きく振れる会社の中で、ほぼ動かない土台が1つあるという構造です。

5. 中期経営計画:初年度の予想が最終年度の目標を超えた

2026年1月14日に発表された中期経営計画(2026年度〜2028年度)の目標と、今期の位置を並べます。

項目2028年度目標2026年11月期状況
売上高28,86929,000(会社予想)予想は目標を上回る
営業利益1,5001,700(会社予想)予想は目標を上回る
電子部材・フォトマスクの営業利益733812(第3四半期累計の実績)9か月で目標を上回る
産業用機能フィルター・コンベアの営業利益1,3051,048(第3四半期累計の実績)9か月で目標の80.4%
ROE6.0%約5.1%(筆者の概算)未到達
配当方針配当性向30%以上かつDOE2.4%以上配当性向47.0%(会社予想ベース)―

(単位:百万円。ROEは会社予想の純利益1,150百万円を、2025年11月末と2026年8月末の自己資本の平均で割った筆者の概算)

この表のポイントは2つです。

1つ目は、中期経営計画の発表からわずか9か月で、最終年度の営業利益目標を今期の予想が上回ったことです。電子部材・フォトマスク事業は、9か月の実績だけで2028年度の目標を超えています。

2つ目は、ROEは6%に届かない見通しだということです。営業利益が目標を超えても、純資産が大きい(自己資本は約232億円)ので、ROEは上がりにくい構造です。会社は2034年度に「営業利益23億円・ROE8%以上」をありたい姿として掲げています(中期経営計画資料)。

目標を上回ったことの読み方は2通りあります。

  • 強気の読み:計画の前提(費用構造の見直しの効果)が想定より早く・大きく出ている。計画の上方見直しの余地がある
  • 慎重な読み:計画は「減価償却費の減少を織り込んだ」数値で、2028年度までに大阪工場の建て替え(2028年度末完成予定)やフォトマスク設備の更新が控えている。費用が後年度に戻ってくる前提で目標を低めに置いていた可能性がある

会社は、中期経営計画の目標を見直すかどうかについて、今回の開示では何も述べていません。

6. 資本政策と株主還元

6-1. 配当:年28円を決めているのはDOE側

配当方針は、有価証券報告書の「配当政策」に次のように書かれています。自己資本比率を中長期的に45〜55%とすることが望ましいとしたうえで、「連結配当性向30%以上、かつDOE2.4%以上を目途に配当」。中間配当と期末配当の年2回が基本で、配当基準日は5月31日と11月30日です。

用語メモ:DOE(株主資本配当率)は、配当総額を自己資本で割った比率です。利益が少ない年でも、純資産に対して一定割合の配当を出すことを約束する物差しです。「配当性向30%以上かつDOE2.4%以上」はAND条件なので、両方を満たす必要があり、2つの下限のうち高いほうが実際の下限になります。

2つの下限を1株配当に直します。

物差し計算1株配当の下限
配当性向30%会社予想EPS59.60円×30%17.9円
DOE2.4%(2025年11月末のBPS)1,143.22円×2.4%27.4円
DOE2.4%(2026年8月末の自己資本から筆者が算出したBPS)約1,217円×2.4%約29.2円
実際の予想配当中間14円+期末14円28.0円

(筆者の計算。2026年8月末のBPSは、自己資本23,211百万円を、発行済株式数から自己株式数(従業員持株ESOP信託の保有分を含む)を引いた株数で割った概算)

この表のポイントは2つです。

1つ目は、年28円は配当性向の下限(17.9円)を大きく上回っていますが、DOEの下限(27.4円)にほぼ張り付いていることです。前期・今期の28円は、方針の下限に沿った水準で、利益に応じた上乗せではありません。前期の決算短信では今期の配当性向を120.6%と見込んでいましたが、利益予想が2回上方修正されたので、会社予想ベースの配当性向は47.0%まで下がりました。

2つ目は、2026年8月末の自己資本で計算すると、年28円のDOEは約2.30%で、2.4%を下回ることです。純資産は円安による為替換算調整勘定の増加で膨らんでおり、配当の分母が増えています。会社がDOEを期末の自己資本で計算するのか、期中平均で計算するのかは、筆者が確認した資料には書かれていません。期中平均(2025年11月末と2026年8月末の平均)で計算しても約2.37%です。期末配当14円の予想が据え置かれたままでよいのかどうかは、期末の自己資本の水準と、会社のDOEの計算方法しだいで、これは筆者の試算であり会社が述べていることではありません。

配当の権利を得るには、2026年11月30日(月)の基準日に株主名簿に載っている必要があります。**権利付き最終日は2026年11月26日(木)**です(基準日の2営業日前)。

6-2. 毎年1月の自己株式取得

実施日方法取得株数取得価額の総額1株あたり
2025年1月14日ToSTNeT-3550,800株280,908,000円510円
2026年1月15日ToSTNeT-3155,800株87,403,800円561円

(出典:各「自己株式の取得結果および自己株式取得終了に関するお知らせ」。1株あたりは筆者計算。2024年1月にもToSTNeT-3による取得の開示がある)

用語メモ:ToSTNeT-3(自己株式立会外買付取引)は、通常の取引時間外に、前日の終値で自己株式を買い付ける東証の仕組みです。会社が買い注文を出し、それに見合う売り注文を出した株主から買います。市場で少しずつ買うのと違い、特定の大口の売り手の株をまとめて引き取る形になることが多く、市場の需給に直接効くものではありません。1株あたりの利益を押し上げる効果は同じように残ります。

ここで、1つの事実を並べておきます。2025年11月30日時点の有価証券報告書の大株主表では、日本製紙の保有株数は1,106,500株でした。2026年5月31日時点の半期報告書の大株主表では950,700株で、減少数は155,800株です。これは2026年1月15日のToSTNeT-3での取得株数と同じ数です。会社は取得の相手先を開示しておらず、両者を結びつける記載はどこにもありません。同じ数字であるという事実だけを示し、相手先についての判断はしません。

6-3. 製紙会社が並ぶ株主構成

2026年5月31日時点の大株主上位です(半期報告書)。

株主持株比率(自己株式を除く発行済株式に対する割合)日本フイルコン側の保有(2025年11月末・貸借対照表計上額)
王子ホールディングス13.91%861,520株・708百万円
大王製紙9.36%247,200株・236百万円
日本フイルコングループ従業員持株会7.03%―
日本製紙4.90%49,405株・54百万円
日本フエルト1.55%330,000株・211百万円

(出典:2026年11月期半期報告書、2025年11月期有価証券報告書「株式の保有状況」)

軸の言葉に戻ると、網を買ってくれる製紙会社が、同時に大株主でもあります。日本フイルコン側も、王子ホールディングス・大王製紙・日本製紙などの株式を「産業用機能フィルター・コンベア事業における取引関係の維持・強化」を目的に保有しており、相互に株を持ち合う関係です。日本フエルト・イチカワ(製紙用フェルトのメーカー)とは災害時相互協力協定を結んでおり、その維持が保有目的とされています。

政策保有株式(上場12銘柄)の貸借対照表計上額は合計1,606百万円で、総資産の約3.7%、1株あたりに直すと約84円です。前期中に売却した銘柄はありません。株価水準に比べて無視できる規模ではありませんが、本記事の結論を左右する規模でもない、というのが筆者の整理です。

製紙会社3社の持株比率を合計すると28.17%(2026年5月末)です。株主総会の特別決議を単独で否決できる3分の1には届きませんが、安定株主として大きな塊です。強気の読み方は「得意先との長期的な関係が資本でも裏打ちされている」、慎重な読み方は「得意先が国内の生産能力を削減しているのと同じように、持ち合いの解消も進む可能性があり、その売りを誰が受け止めるのか」です。毎年1月のToSTNeT-3は、後者の受け皿になっている可能性がありますが、これも筆者の推測です。

6-4. 自己株式と従業員持株ESOP信託

時点自己株式(ESOP信託分を含む)うちESOP信託
2025年11月末2,762,295株95,800株
2026年5月末2,785,496株23,800株
2026年8月末3,096,612株332,100株

(出典:各決算短信)

2026年7月1日に「従業員持株会支援信託ESOP」の再導入を決め、取得総額250百万円を上限に、7月7日〜8月6日に市場から株式を取得しました。8月末の信託保有分332,100株はこの取得によるものです。信託が保有する株式は会計上は自己株式として扱われ、1株当たり利益の計算でも分母から除かれます。議決権は、従業員持株会の議決権行使状況を反映して行使されます。

自己株式の比率は、ESOP信託分を含めて発行済株式の約14.0%です。潜在株式(新株予約権など)はなく、潜在株式調整後1株当たり利益は記載されていません。

7. 株価の見方

7-1. 株価に関する数字(2026年10月1日終値ベース)

項目値
終値(10月1日)728円(前日比+39円、+5.66%)
当日の高値757円(14時49分。年初来高値)
当日の出来高1,241,900株(9月の1日平均約42,000株の約29倍)
年初来安値546円(2026年1月5日)
時価総額(発行済株式数ベース)約161億円
時価総額(自己株式控除後)約139億円
PER(修正後の会社予想EPS59.60円)12.2倍
PER(修正前の会社予想EPS41.34円)17.6倍
PBR(2026年8月末の自己資本から筆者が算出したBPS約1,217円)0.60倍
配当利回り(年28円)3.85%

(株価・出来高はYahoo!ファイナンスの時系列・株価ページ。PER・PBR・利回り・時価総額は筆者計算)

決算発表は10月1日14時00分で、当日の終値には発表後90分間の取引が含まれています。高値757円は発表後の14時49分に付いています。株価情報サイトのPER17.6倍は、修正前の予想EPS(41.34円)で計算された値なので、修正後のEPSで計算し直すと12.2倍になります。

株価の時系列は次のとおりです。

時点株価出所
2025年11月期の最高値・最低値579円・463円有価証券報告書
2026年1月14日終値561円自己株式取得の開示(ToSTNeT-3の買付価格)
2026年4月1日(第1四半期決算日)終値615円(前日比+6.8%)Yahoo!ファイナンス
2026年7月1日(中間決算・上方修正日)終値715円(前日比+16.3%)同上
2026年10月1日(第3四半期決算・再修正日)終値728円(前日比+5.66%)同上

(決算発表はいずれも14時00分)

2026年1月14日の561円は、当時のBPS(1,143.22円)に対してPBR約0.49倍でした。2025年11月期の有価証券報告書によれば、2020年11月末に投資した場合の配当込みの株主総利回りは121.93%で、比較対象の配当込みTOPIX(217.24%)を大きく下回っていました。

7-2. 強気の材料

  • 営業利益の改善は、売上の伸び(数量効果538百万円)と粗利率の改善(率効果526百万円)の両方から来ている。費用構造の見直し(減価償却費の減少、早期退職、退職金制度変更、欧州拠点の再編)は一度実施すれば翌年以降も効く性格のもの
  • 電子部材・フォトマスク事業は、減損損失を差し引いた参考値でも前年の約6倍。通信デバイス向けの需要が続いている
  • 中期経営計画の最終年度の営業利益目標を、初年度の予想で上回った
  • 修正後の予想EPSでPER12.2倍、PBR0.60倍、配当利回り3.85%。会社予想の第4四半期は、今期の第2・第3四半期の利益率の半分以下で置かれている
  • DOE2.4%の下限で配当が決まる構造なので、利益が落ちても配当が下がりにくい。期末の自己資本しだいでは、DOEの下限が28円を上回る可能性もある(筆者の試算)

7-3. 慎重な材料

  • 売上高は2年前の水準に戻っただけ(第3四半期累計で△0.3%)。主力の製紙用の網は、国内の製紙会社の生産能力削減という、自社では決められない縮小が続いている
  • 電子部材・フォトマスク事業の利益には、帳簿価額をゼロにした設備の減価償却費が出てこないという会計上の効果が入っている。同じ事業で毎四半期の減損損失(特別損失)が続いており、営業利益と最終利益の見え方がずれる
  • 産業用機能フィルター・コンベア事業の固定資産には減損の兆候があり、減損を避けている理由は静岡事業所の土地の正味売却価額(有価証券報告書)。不動産価格が下がれば判断が変わり得る
  • 会社予想の純利益は、第4四半期の特別損失をほとんど置いていない形に見える(筆者の試算)
  • 第4四半期の予想は過去2年より高い水準で置かれており、「過去と同じように上振れする」前提は置きにくい
  • ROEは約5.1%(筆者の概算)で、中期経営計画の目標6%に届かない。自己資本の大きさが重い
  • 製紙会社との株式の持ち合いが解消に向かう場合、その売りの受け皿が必要になる

7-4. 判断の分かれ目

この決算の評価は、「費用構造を小さくした効果が、売上が横ばいのままでも続くのか」で分かれると筆者は考えます。今期の第2・第3四半期の営業利益率7〜8%が新しい平常値なのか、それとも一時的に条件がそろった結果なのかは、第4四半期(9〜11月)と来期の第1四半期(12〜2月)という、直近2期とも弱かった2つの四半期の数字で確かめることになります。

8. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るポイント
2026年11月26日(木)期末配当の権利付き最終日―
2026年11月30日(月)期末・配当基準日―
2027年1月中旬(例年)2026年11月期 通期決算・2027年11月期の予想第4四半期の営業利益(予想273百万円)、特別損失、期末配当、DOEの実績値、来期の配当予想
2027年1月(例年)自己株式取得の有無過去3年続いたToSTNeT-3による取得が今年もあるか
2027年2月下旬(例年)定時株主総会・有価証券報告書大株主表(製紙会社の持株比率)、政策保有株式の増減、減損の兆候の記載

(通期決算の発表日は、過去3年が1月10日〜14日であったことからの推定。会社は2027年の日程を公表していない)

見るべきKPIは次の5つです。

  1. 第4四半期の営業利益率:予想が置く3.7%に対し、過去2年は1.5%・2.5%、今期の第3四半期は8.1%
  2. 電子部材・フォトマスク事業の四半期ごとの減損損失:今期は59〜103百万円。営業利益が良く見える分、特別損失がどれだけ出続けるか
  3. 産業用機能フィルター・コンベア事業の外部売上:四半期あたり52億円台が続くか。2年前の第3四半期(54億円)に戻るか
  4. 期末の自己資本とDOE:年28円がDOE2.4%の下限を満たすか
  5. 製紙会社の持株比率:次の有価証券報告書の大株主表での変化

9. 3行まとめ

  • 第3四半期累計の営業利益は約2.6倍。増益874百万円の内訳は、売上の増加分538百万円、粗利率改善分526百万円、販管費の増加△189百万円。売上は2年前とほぼ同じ水準で、利益の戻りの多くは費用構造を小さくしたことから来ている
  • 電子部材・フォトマスク事業の利益3.3倍には、帳簿価額をゼロにした設備の減価償却費が消えた効果が入っており、同じ事業で毎四半期の減損が続いている。減損を差し引いても前年の約6倍で、稼ぐ力の改善自体は数字に出ている
  • 修正後の予想は第4四半期に営業利益273百万円(利益率3.7%)を置き、中期経営計画の最終年度目標を初年度で上回る。配当28円はDOE2.4%の下限に張り付いており、期末の自己資本しだいで下限が28円を上回る可能性がある(筆者の試算)

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・助言を目的としたものではありません。数値の出典は、日本フイルコンの決算短信(2024年11月期第1四半期〜2026年11月期第3四半期)、業績予想の修正に関するお知らせ(2025年12月25日・2026年7月1日・2026年10月1日)、中期経営計画策定に関するお知らせ(2026年1月14日)、自己株式の取得に関する開示(2025年1月・2026年1月)、従業員持株会支援信託ESOPの再導入に関するお知らせ(2026年7月1日)、株主優待制度の廃止に関するお知らせ(2024年1月12日)、2025年11月期有価証券報告書、2026年11月期半期報告書です。株価・出来高はYahoo!ファイナンスの株価・時系列ページによります。四半期ごとの数字、要因の分解、残り期間の含み、PER・PBR・DOE・ROE等の比率は筆者の計算です。当四半期については決算補足説明資料・決算説明会がなく(決算短信の表紙に「無」と記載)、本文中の会社の説明は決算短信・業績予想の修正の開示・中期経営計画の資料によるもので、当四半期についての会社の追加説明・質疑応答は一切反映していません。電子部材・フォトマスク事業で毎四半期の減損が「新たに取得した設備の減損」である可能性、日本製紙の持株数の減少と2026年1月の自己株式取得の株数の一致、製紙会社の持ち合い解消の受け皿としての自己株式取得、会社予想の純利益が第4四半期の特別損失をほとんど置いていない可能性、DOEの下限が28円を上回る可能性は、いずれも筆者の推測・試算であり、会社の開示に基づくものではありません。会社のDOEの計算方法(期末の自己資本か期中平均か)は確認できていません。2026年2月の定時株主総会の議決権行使結果(臨時報告書)と、2024年11月期の有価証券報告書の大株主表は確認していません。本記事は第3四半期決算の発表当日に執筆しており、公開時点で新たな開示が出ている可能性があります。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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