本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
グロースエクスパートナーズ(以下、GxP)が2026年10月15日(木)16時05分に、2026年8月期の通期決算を発表しました。売上高は46億70百万円(前期比8.2%減)、営業利益は5億03百万円(同34.9%減)。同じ日に、上場後初めての配当(1株22円)と配当方針の変更も発表しています。
来期(2027年8月期)の会社予想は、売上高53億42百万円(+14.4%)に対して営業利益5億23百万円(+3.8%)です。売上が14%伸びるのに、営業利益は4%しか増えない。そして今期は、売上が8%減っただけで営業利益が35%減った。この2つの「増減率の食い違い」が、この決算を読むときの入口になります。
この記事でわかること
- 今期の営業利益の減少2億70百万円のうち、約1億91百万円は「売上が減った分」で説明でき、売上総利益率(粗利率)はほぼ横ばいだったこと
- 7月の下方修正の時点で会社が6〜8月に置いていた営業利益は約69百万円(利益率5.8%)で、実際は約1億59百万円(13.4%)。その差の大半は粗利率の改善だったこと
- 来期予想は「売上+14.4%」「粗利率49.6%(今期の6〜8月とほぼ同じ水準を1年通す)」「販管費+29.7%」の3つが同時にそろって初めて届く数字であり、どれか1つが欠けると今期の営業利益を下回る計算になること
- 年間2億円以上取引する大口顧客からの売上比率は70.6%→61.2%に下がったが、その中身は「大口が7.3億円減り、その他が3.2億円増えた」の両方であること
- 初配当22円は配当基準日(8月31日)を過ぎてから決まったこと。来期の配当は未定だが、新しい方針(DOE2.0%を下限、配当性向20%程度)を来期予想に当てはめると、下限側のDOEのほうが高い1株配当になること
- 東証グロースの時価総額基準(上場5年経過後に100億円)に対し、現在の時価総額は約40億円であること
1. GxPはどんな会社か:老舗の家に出入りする大工
1-1. 軸となる例え
昔の大きな家には「出入りの大工」がいました。同じ家に何十年も通い、家の癖を知り尽くし、建て増しや修繕のたびに呼ばれる大工です。
GxPの仕事は、これに近い形をしています。顧客は売上高1,000億円以上・創業50年以上といった老舗の大企業(会社は「エンタープライズ企業」と呼んでいます)。その会社が長年使ってきた古いシステムや業務(会社の言葉では「レガシー資産」)を、新しいデジタルの仕組みに作り直す手伝いをします。
特徴は、作り直しを「外から請け負う」のではなく、「家族と一緒にやる」点にあります。会社は「出島型アプローチ」と呼んでいて、顧客の本社から切り離した小さな組織に、GxPの社員と顧客の社員が対等に入り、一緒に開発を進めます。最後は顧客が自分で台所を直せるようになる(会社の言葉では「自走型DX組織」)ところまで付き合う、というのが本来の形です。ニプロとの共同運営会社「ニプロデジタルテクノロジーズ」、三越伊勢丹ホールディングスと設立した「IM Digital Lab」がその典型で、代表取締役社長の渡邉伸一氏は両社の社外取締役も務めています(8月28日の個人投資家向け説明会、書き起こしベース)。
この例えは、強みと弱みを同じ一文で説明できます。
| 大工の姿 | GxPで対応するもの | 数字の出どころ |
|---|---|---|
| 同じ家に長年出入りする | 顧客維持率、大口顧客への集中 | 顧客維持率80.6%、年間2億円以上の顧客が売上の61.2% |
| 家族と一緒に作り直す | 出島型・共同運営会社。施主が株主でもある | ニプロ・豊田通商が各3.90%を保有 |
| 施主が「工事を始める」と決めないと仕事がない | 案件の後ろ倒し・端境期がそのまま売上減になる | 今期の減益の大半が「数量効果」 |
| 腕のいい弟子で回すか、外の応援を呼ぶか | 外注費と内製化が粗利率を決める | 6〜8月の粗利率50.0% |
| 今度は「どんな台所にするか」の相談から受ける | 戦略コンサル子会社VXIの設立、人の採用、作業場(本社)の拡張 | 来期の販管費+29.7% |
この表のポイントは2つです。1つ目は、今期の落ち込みが「腕が落ちた」のではなく「施主が工事を始めなかった」形で出ていること。2つ目は、会社がその反省から「間取りの相談(戦略づくり)から受ける」方向へ舵を切り、その費用が来期に先に出ること。以下、この2つを数字で確かめていきます。
用語メモ:会社自身の説明では、これまでGxPは「構想(何を作るか)はお客様自身が考えるべき」という考えで、戦略コンサルティングを事業領域の外に置いてきました。今期はAIの普及で顧客側が構想を決めきれない場面が増え、それに応えきれなかったことを「根本的な要因」と述べています(8月28日の個人投資家向け説明会、書き起こしベース)。
1-2. 3つの事業区分
決算短信のセグメントは「エンタープライズDX事業」の1つだけですが、説明資料では3つの事業区分で売上と粗利を開示しています。
| 事業区分 | 中身 | 今期の売上 | 前期比 | 今期の粗利率 |
|---|---|---|---|---|
| DX推進支援事業 | コンサルから開発・運用までの総合支援。主力 | 36億03百万円 | △9.2% | 47.3% |
| DX支援プロダクト・サービス事業 | 海外製ソフトのライセンス販売と導入支援 | 8億17百万円 | +10.2% | 36.9% |
| デジタルサービス共創事業 | 顧客と共同でサービスを作り、収益を分け合う | 2億45百万円 | △34.0% | 54.5% |
| 開示のない差額 | 区分合計と総額の差 | 5百万円 | — | — |
| 合計 | — | 46億70百万円 | △8.2% | 45.9% |
売上は説明資料の年間値、粗利率は説明資料の四半期表から筆者が合計して計算しました(四半期表の区分合計は年間値と数百万円ずれます)。区分合計と総額の差は毎年5〜10百万円あり、内訳は開示されていません。
この表のポイントは、主力のDX推進支援事業が売上を減らしながら粗利率を上げた(前期45.3%→47.3%)ことです。後で見る「数量は減ったが率は保った」という今期の形は、主力事業の形そのものです。
1-3. 業績の推移
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | 純利益 | EPS | 自己資本比率 | 配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年8月期 | 32.9億円 | 2.9億円 | 8.8% | 2.0億円 | 74.94円 | 38.1% | 0円 |
| 2023年8月期 | 37.4億円 | 3.9億円 | 10.3% | 2.8億円 | 102.96円 | 49.3% | 0円 |
| 2024年8月期 | 44.2億円 | 6.0億円 | 13.6% | 4.2億円 | 153.89円 | 54.0% | 0円 |
| 2025年8月期 | 50.9億円 | 7.7億円 | 15.2% | 6.0億円 | 183.91円 | 71.4% | 0円 |
| 2026年8月期 | 46.7億円 | 5.0億円 | 10.8% | 4.0億円 | 118.03円 | 79.7% | 22円 |
| 2027年8月期(会社予想) | 53.4億円 | 5.2億円 | 9.8% | 3.4億円 | 100.80円 | — | 未定 |
億円は四捨五入。2024年8月期以前は有価証券報告書ベースの値です。2024年9月26日に東証グロースに上場しました。
この表のポイントは、上場前から4期続いた増収増益が、上場2期目の今期に途切れたことです。そして来期は増収に戻る予想でも、営業利益率は9.8%と今期よりさらに下がる計画です。
1-4. 会社予想の達成履歴
| 決算期 | 期初予想(営業利益) | 期初予想の前期比 | 期中の修正 | 修正の開示日 | 実績 | 期初予想比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 6.75億円 | +12.1% | なし(決算発表日に差異を開示) | 2025年10月15日 | 7.74億円 | +14.7% |
| 2026年8月期 | 8.01億円 | +3.4% | ①4.13億円 ②5.06億円 | ①2026年7月15日(第3四半期決算と同日)②2026年9月15日(期末後) | 5.03億円 | △37.1% |
| 2027年8月期 | 5.23億円 | +3.8% | — | — | — | — |
この表のポイントは2つです。前期は期初予想を控えめに置いて上回り、今期は期初予想を大きく下回った。上場からまだ2期で、方向の違う2回しか並べられませんが、「この会社の予想は上にも下にも外れうる」という前提だけは持っておく必要があります。
もう1つ、今期は第1・第2四半期の決算で予想を据え置いています。第3四半期のQ&A集には、第2四半期時点で「通期計画に大きな変更はない」と説明していたのに、なぜ第3四半期での発表になったのか、という質問が載っています。会社の回答の要点は、医療業界向け案件の遅れは上期から一定程度想定していたが、影響の範囲と規模が確定していなかった、というものです。
2. 決算ハイライト
2-1. 損益
| 項目 | 2025年8月期 | 2026年8月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 50億86百万円 | 46億70百万円 | △8.2% |
| 売上総利益 | 23億37百万円 | 21億43百万円 | △8.3% |
| 売上総利益率 | 46.0% | 45.9% | △0.1pt |
| 販売費及び一般管理費 | 15億63百万円 | 16億39百万円 | +4.9% |
| 営業利益 | 7億74百万円 | 5億03百万円 | △34.9% |
| 経常利益 | 8億70百万円 | 5億33百万円 | △38.7% |
| 特別利益(投資有価証券売却益) | — | 95百万円 | — |
| 特別損失(主に投資有価証券評価損26百万円) | — | 26百万円 | — |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 6億00百万円 | 3億95百万円 | △34.1% |
| EPS | 183.91円 | 118.03円 | △35.8% |
百万円未満切り捨て。
この表のポイントは、売上総利益率が46.0%→45.9%とほぼ動いていないのに、営業利益が35%減っていることです。率が動かないなら、減益の理由は「売上が減ったこと」と「販管費が増えたこと」の2つしかありません。
経常利益の減益率(△38.7%)が営業利益(△34.9%)より大きいのは、前期に保険返戻金84百万円が営業外収益に入っていたためです(今期は21百万円)。純利益の減益率(△34.1%)が経常利益より小さいのは、投資信託の一部売却益95百万円が特別利益に入ったためです。
2-2. 営業利益の減少を3つに分ける
| 要因 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 数量効果(売上が減った分) | △1億91百万円 | 売上の減少4億16百万円×前期の粗利率45.96% |
| 率効果(粗利率が変わった分) | △3百万円 | 今期の粗利−今期売上×前期の粗利率 |
| 販管費の増加 | △76百万円 | 16億39百万円−15億63百万円 |
| 合計 | △2億71百万円 | 実際の営業利益の増減△2億70百万円と一致(四捨五入の差) |
筆者の計算で、各項目は四捨五入しています。
この表のポイントは、減益の約7割が数量効果だということです。出入りの大工でいえば、腕(粗利率)は落ちていない。施主が工事を始めなかった(案件の後ろ倒し・端境期)ので、手を動かす仕事が減った。それがそのまま利益に出ています。
説明資料にも、同じ減少を事業区分と費目に分けた増減分析が載っています。
| 要因 | 金額 |
|---|---|
| DX推進支援事業の粗利 | △96百万円 |
| DX支援プロダクト・サービス事業の粗利 | △13百万円 |
| デジタルサービス共創事業の粗利 | △83百万円 |
| 人件費・採用費・教育研修費 | +7百万円 |
| 営業経費・研究開発費 | △39百万円 |
| その他販管費 | △44百万円 |
| 合計 | △2億68百万円 |
説明資料の図から筆者が読み取った値です。合計△2億68百万円は実際の減少△2億70百万円と、億円未満の丸めの範囲で一致します。
こちらの表で目を引くのは、人件費・採用費・教育研修費が前期より7百万円減っている(利益にはプラスに働いている)ことです。販管費の増加は「人」ではなく、営業経費・研究開発費とその他の費用から来ています。来期はこの「人」の費用を大きく増やす計画で、それは4章で見ます。
用語メモ:数量効果・率効果の分け方。粗利の変化は「売上が増減したこと(同じ粗利率なら粗利がいくら動くか)」と「粗利率が変わったこと」に分けられます。2つと販管費の増減を足すと、営業利益の増減と一致します。
会社が挙げた減収の要因は、①採算と成長領域への人の配分を考えて一部の保守案件を縮小・終了した(自社の判断)、②スマートモビリティ関連案件が次の案件までの端境期になった、③医療業界向け案件の検討が長引き、受注と売上計上が後ろ倒しになった(第4四半期に始動)、④前期に計上した医療業界向けのハードウェア・ソフトウェア販売が一巡した(前期比2.5億円減、管理会計ベース)、の4つです。
用語メモ:「医療業界向け案件」と大口顧客の関係について。前期の有価証券報告書では、ニプロデジタルテクノロジーズ(売上の19.9%)、ニプロ(11.0%)、豊田通商システムズ(10.1%)が売上の10%以上を占める顧客として名前が出ています。一方、会社は今期の減収要因として挙げた医療業界・スマートモビリティ関連の顧客の名前を出していません。本記事では両者を結びつけません。
2-3. 財政状態とキャッシュ・フロー
| 項目 | 2025年8月末 | 2026年8月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 20億62百万円 | 18億60百万円 | △2億02百万円 |
| 現金及び現金同等物 | 20億57百万円 | 20億08百万円 | △48百万円 |
| 売掛金及び契約資産 | 8億70百万円 | 7億99百万円 | △71百万円 |
| 投資有価証券 | 5億25百万円 | 6億33百万円 | +1億08百万円 |
| 敷金 | 98百万円 | 2億21百万円 | +1億23百万円 |
| 有利子負債(借入金・リース) | 4億19百万円 | 2億14百万円 | △2億05百万円 |
| 純資産 | 33億77百万円 | 38億20百万円 | +4億42百万円 |
| 自己資本比率 | 71.4% | 79.7% | +8.3pt |
この表のポイントは2つです。
1つ目は、「現金及び預金」が2億02百万円減ったのに、「現金及び現金同等物」は48百万円しか減っていないことです。今期から、証券会社への預け金(流動資産の「その他」に含まれ、今期1億62百万円増)をキャッシュ・フロー計算書の資金の範囲に含める会計方針の変更をしたためです。前期末の現金同等物も遡って4百万円増やしています(有報では20億52百万円、今期の短信では20億57百万円)。同じ「前期末の資金」が2通りあるのはこのためです。
2つ目は、敷金が1億23百万円増えたことです。2026年9月から本社と同じビルの47階に事務所を広げることを昨年12月に決めており、その差入れです。会社は増床の費用を来期の予想に織り込んだと明記しています(第1四半期決算短信の後発事象)。
自己資本比率が8.3pt上がったのは、利益の積み上げ(分子)に加えて、短期借入金1億50百万円の返済などで負債が減り、総資産(分母)がほとんど増えなかったためです。
営業キャッシュ・フローは1億66百万円で、純利益3億95百万円の約4割でした。前期分を含む法人税等の支払い3億06百万円、投資有価証券売却益(投資活動に振り替え)95百万円、未払消費税などの流動負債の減少が主な理由です。
3. 深掘り:利益はどこに消え、どこから戻ったのか
ここからは、冒頭の「増減率の食い違い」を3段階で追います。1段目は今期の四半期の推移、2段目は7月の下方修正と実際の6〜8月の差、3段目(4章)は来期予想の前提です。
3-1. 12四半期を並べる
GxPは8月決算なので、第1四半期は9〜11月、第2四半期は12〜2月、第3四半期は3〜5月、第4四半期は6〜8月です。
| 期 | 9〜11月 | 12〜2月 | 3〜5月 | 6〜8月 | 通期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年8月期 売上 | 11.19億円 | 10.31億円 | 11.65億円 | 11.05億円 | 44.22億円 |
| 2024年8月期 粗利率 | 40.5% | 46.6% | 43.6% | 45.8% | 44.1% |
| 2024年8月期 営業利益率 | 13.3% | 15.4% | 14.2% | 11.4% | 13.6% |
| 2025年8月期 売上 | 10.94億円 | 13.50億円 | 12.06億円 | 14.35億円 | 50.86億円 |
| 2025年8月期 粗利率 | 48.1% | 43.8% | 49.1% | 43.8% | 46.0% |
| 2025年8月期 営業利益率 | 14.5% | 16.5% | 16.3% | 13.7% | 15.2% |
| 2026年8月期 売上 | 10.97億円 | 13.05億円 | 10.78億円 | 11.89億円 | 46.70億円 |
| 2026年8月期 粗利率 | 46.4% | 39.6% | 48.4% | 50.0% | 45.9% |
| 2026年8月期 営業利益率 | 9.1% | 9.9% | 10.7% | 13.4% | 10.8% |
2025年8月期・2026年8月期は各四半期の決算短信の累計値から筆者が差し引いた値で、4四半期の合計が通期の開示値と一致することを確認しています。2024年8月期は説明資料の四半期表の百万円単位の値から筆者が計算した比率です(この期は四半期決算短信がありません。説明資料の表記と0.1pt違う四半期があります)。億円は四捨五入。
用語メモ:四半期の差し引き。決算短信は「第1四半期累計」「上半期累計」「第3四半期累計」「通期」と累計で出るため、3か月ごとの数字は自分で引き算して出します。GxPは説明資料に四半期表を載せていて、短信から引き算した値と百万円単位で一致しました。
この表のポイントは3つです。
1つ目は、今期は営業利益率が9.1%→9.9%→10.7%→13.4%と、四半期ごとに上がっていったことです。前期は14〜16%台でしたから、今期の上期は前期より5〜6pt低い水準でした。
2つ目は、6〜8月の位置づけが年によって違うことです。2024年8月期と2025年8月期は6〜8月の営業利益率がその年で最も低く、今期は最も高い。3年のうち1年だけ形が違うので、「季節性がある」とは書けません。会社自身もQ&A集で、毎年同じ形で繰り返される明確な季節性はないと説明しています。
3つ目は、12〜2月の粗利率39.6%だけが飛び抜けて低いことです。これは利益率の低いライセンス販売(アトラシアン社製品)が大口顧客向けに集中した四半期で、プロダクト事業のこの四半期の粗利率は23.8%でした。会社はこの製品の販売を今期中に終えています。
3-2. 7月の修正が6〜8月に置いた数字と、実際の6〜8月
今期の予想は2回修正されました。会社は修正の理由を次のように書いています(原文の抜粋)。
7月15日(第3四半期決算と同日、16時00分):市場環境の変化に伴う支援領域の変容および顧客ニーズの高度化への対応を進め、下期偏重の計画に沿って推移したものの、上期の進捗不足を十分に補完できず、想定していた業績水準を下回る見込みとなりました。
9月15日(期末後、18時00分):前回発表時点(2026年7月15日)におきましては、第4四半期の外注費および外部委託費について保守的な見積りを織り込んでおりましたが、その後、第4四半期における実績の精査を進めた結果、想定を上回るコスト削減が実現する見込みとなりました。
2回の修正が、6〜8月(第4四半期)にどんな数字を置いていたかを逆算します。
| 項目 | 7月15日の修正が置いた6〜8月 | 実際の6〜8月 | 前年の6〜8月 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 11億76百万円 | 11億89百万円 | 14億35百万円 |
| 営業利益 | 69百万円 | 1億59百万円 | 1億97百万円 |
| 営業利益率 | 5.8% | 13.4% | 13.7% |
| 達成率(売上/営業利益) | — | 101.1%/232.5% | — |
〈7月15日の通期予想(売上46億57百万円、営業利益4億13百万円)−第3四半期累計の実績〉で筆者が計算しました。
この表のポイントは、売上はほぼ予想どおりだったのに、営業利益が予想の2.3倍になったことです。7月の予想が6〜8月に置いた営業利益率5.8%は、上の12四半期で最も低い9.1%をさらに下回る水準でした。
差の約91百万円がどこから来たかを、販管費の側から確かめます。6〜8月の実際の販管費は4億35百万円で、12四半期で最も多い四半期でした。仮に7月の予想も販管費をこの水準で置いていたとすると、予想が置いていた粗利は約5億04百万円(粗利率42.9%)になります。実際の粗利は5億95百万円(50.0%)でした。つまり上振れの大半は、販管費を抑えたことではなく、粗利率が上がったことで説明できます(予想の販管費の置き方は開示されていないので、筆者の試算です)。
9月の修正理由にある「外注費(売上原価)」の削減は、この見え方と整合します。出入りの大工でいえば、外の応援を呼ぶ前提で見積もっていたが、実際には自分の弟子で回せた、という形です。会社はQ&A集で、外部委託への依存を引き下げ、自社の人材で提供する体制へ移ることで収益性を確保する方針を述べています。
6〜8月の粗利率50.0%について、会社は「過去12四半期で初めて50%に達した」と書いています。事業区分別では、DX推進支援事業50.0%、プロダクト事業50.6%、共創事業48.8%で、3区分とも高い水準でした。
用語メモ:受託開発の会社では、作業途中の費用はいったん「仕掛品」として資産に積み、納品したときに売上原価へ移します。そのため四半期の粗利率は、仕掛品の出し入れのタイミングで上下します。
この会社でも確かめておきます。仕掛品の残高は5月末の37百万円から8月末の4百万円に減りました。つまり6〜8月の売上原価には、それ以前に積んだ費用が約33百万円含まれています。それを除いて「6〜8月に実際に使った原価」で粗利率を計算し直すと52.8%で、開示の50.0%より高くなります。6〜8月の粗利率の上昇は、費用を先送りした結果ではないことになります(会計上の数字ではなく、筆者の試算です)。
| 四半期 | 開示の粗利率 | 仕掛品の残高(期首→期末) | 使った原価ベースの粗利率 |
|---|---|---|---|
| 9〜11月 | 46.4% | 11百万円→33百万円 | 44.4% |
| 12〜2月 | 39.6% | 33百万円→40百万円 | 39.1% |
| 3〜5月 | 48.4% | 40百万円→37百万円 | 48.7% |
| 6〜8月 | 50.0% | 37百万円→4百万円 | 52.8% |
使った原価=売上原価−期首の仕掛品+期末の仕掛品。筆者の試算です。
3-3. 上期時点で予想が置いていた下期
もう一段さかのぼって、上期決算(4月14日)の時点で据え置かれた期初予想が、下期(3〜8月)に何を求めていたかを見ます。
| 項目 | 2025年8月期の上期時点 | 2026年8月期の上期時点 |
|---|---|---|
| 予想が置いた下期の売上 | 25億86百万円(前年下期比+13.8%) | 32億05百万円(同+21.3%) |
| 予想が置いた下期の営業利益 | 2億94百万円(同+0.3%) | 5億72百万円(同+45.5%) |
| 予想が置いた下期の営業利益率 | 11.4% | 17.9% |
| 実際の下期の売上 | 26億42百万円(+16.3%) | 22億67百万円(△14.2%) |
| 実際の下期の営業利益 | 3億93百万円(+34.3%) | 2億75百万円(△30.0%) |
| 達成率(売上/営業利益) | 102.2%/133.8% | 70.7%/48.1% |
〈通期予想−上期実績〉で筆者が計算しました。前年下期は〈前期の通期−前期の上期〉です。
この表のポイントは、今期の期初予想が、下期に「売上+21%・営業利益+46%・営業利益率17.9%」を求める形だったことです。17.9%は上の12四半期のどの四半期よりも高い水準です。前期は下期に「前年並みの利益」しか置いておらず、それを大きく上回りました。今期は置き方そのものが違っていました。
会社は期初の説明資料で「事業拡大に向けた投資コストが上期において先行することから、下期偏重での計画達成を目論む」と書いていました。8月の説明会でも渡邉社長は、期初の時点で下期偏重の計画であったことに加え、上期の遅れを下期で挽回することを織り込んでいた、と述べています(書き起こしベース)。
4. 深掘り(続き):来期予想は何を前提にしているか
1段目で「今期の減益は数量効果が中心で、率は保っていた」、2段目で「6〜8月に粗利率が50%まで上がった」ことを見ました。3段目は、その6〜8月の姿を来期の予想がどう使っているかです。
4-1. 来期予想の中身
| 項目 | 2026年8月期実績 | 2027年8月期予想 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 46億70百万円 | 53億42百万円 | +14.4% |
| 売上総利益 | 21億43百万円 | 26億50百万円 | +23.6% |
| 売上総利益率 | 45.9% | 49.6% | +3.7pt |
| 販管費(粗利−営業利益で筆者が逆算) | 16億39百万円 | 21億26百万円 | +29.7% |
| 営業利益 | 5億03百万円 | 5億23百万円 | +3.8% |
| 営業利益率 | 10.8% | 9.8% | △1.0pt |
| 経常利益 | 5億33百万円 | 5億49百万円 | +3.0% |
| 純利益 | 3億95百万円 | 3億38百万円 | △14.5% |
予想の販管費は会社が開示していないため、売上総利益の予想から営業利益の予想を引いて筆者が出しました。
この表のポイントは3つです。
1つ目は、予想の粗利率49.6%が、今期の6〜8月の50.0%とほぼ同じ水準だということです。今期の通期は45.9%、過去12四半期で49%を超えたのは2回だけ(2025年8月期の3〜5月49.1%、今期の6〜8月50.0%)です。会社は粗利率が上がる理由として、コンサルティング案件の増加、提供価値に基づく価格設定の拡大、内製化の進展、低採算のライセンス販売の終了を挙げています。
2つ目は、販管費が約4億87百万円(+29.7%)増える計画だということです。今期の6〜8月の販管費4億35百万円を4倍した年換算(約17億43百万円)と比べても、22%多い水準です。会社は人材の採用・育成と本社オフィスの増床に先行投資するため、営業利益率は一時的に低下すると説明しています。
3つ目は、来期の増益1,900万円を3つに分けると、ほとんど打ち消し合いでできていることです。
| 要因 | 金額 |
|---|---|
| 数量効果(売上+6億72百万円×今期の粗利率45.9%) | +3億08百万円 |
| 率効果(粗利率45.9%→49.6%) | +1億98百万円 |
| 販管費の増加 | △4億87百万円 |
| 合計 | +19百万円 |
筆者の計算です。
出入りの大工でいえば、来期は「仕事の量を14%増やし」「弟子で回して手間賃の取り分を上げ」、その稼ぎのほぼ全部を「間取りの相談役(コンサル人材)を雇い、作業場を広げる」ことに使う計画です。
4-2. 事業区分別の計画
| 事業区分 | 今期の期初計画 | 今期の実績 | 達成率 | 来期の計画 | 来期の前期比 |
|---|---|---|---|---|---|
| DX推進支援事業 | 41億79百万円 | 36億03百万円 | 86.2% | 43億36百万円 | +20.3% |
| DX支援プロダクト・サービス事業 | 9億12百万円 | 8億17百万円 | 89.6% | 7億42百万円 | △9.2% |
| デジタルサービス共創事業 | 5億08百万円 | 2億45百万円 | 48.2% | 2億54百万円 | +3.7% |
| 開示のない差額 | 9百万円 | 5百万円 | — | 10百万円 | — |
| 合計 | 56億08百万円 | 46億70百万円 | 83.3% | 53億42百万円 | +14.4% |
説明資料の値です。来期のプロダクト事業の前期比は会社表記では△9.1%で、上の表は百万円単位の値から筆者が計算した△9.2%です。
この表のポイントは、来期の増収のほぼすべてを主力のDX推進支援事業に置いていることです。来期の計画43億36百万円は、前期(2025年8月期)の実績39億67百万円を9.3%上回り、過去最高を更新する水準です。今期の6〜8月の実績(9億74百万円)を4倍した年換算38億96百万円と比べても、約11%上にあります。
今期の期初計画との比較では、共創事業は計画の半分以下でした。来期の共創事業の計画は今期並み(2億54百万円)に置かれており、今期のような外れ方をしても来期全体への影響は小さく抑えた置き方とも読めます。
4-3. 感応度表:予想に届くマスはどこか
販管費を会社予想の水準(筆者の逆算で21億27百万円)に固定し、売上の伸びと粗利率を3段階ずつ動かして営業利益を計算しました。
| 売上の伸び\粗利率 | 45.9%(今期通期) | 47.8%(中間) | 49.6%(会社予想) |
|---|---|---|---|
| 前期並み(46.7億円) | 17百万円 | 1億05百万円 | 1億90百万円 |
| +7.0%(50.0億円) | 1億67百万円 | 2億62百万円 | 3億52百万円 |
| +14.4%(53.4億円・会社予想) | 3億25百万円 | 4億27百万円 | 5億23百万円 |
筆者の試算で、将来の見通しではありません。販管費は会社予想の売上総利益と営業利益から逆算した値で固定しています。
この表のポイントは、会社予想の5億23百万円に届くのは9マスのうち右下の1マスだけで、それ以外の8マスはすべて今期の実績(5億03百万円)を下回ることです。今期の粗利率のままなら、売上を23.6%伸ばしてようやく予想の営業利益に届く計算になります。
言い換えると、来期の予想は「増収」と「6〜8月の粗利率の持続」の両方を前提にしており、販管費の増加は先に確定的に出る費用です。予想が置いている前提の重さを、この1表で確かめられます。
この見方は弱気にも強気にも読めます。
- 弱気の読み:販管費は人を雇い事務所を借りた時点で出る費用で、売上と粗利率は顧客の判断と案件の中身で決まる。片方だけが予定どおり進めば減益になる
- 強気の読み:粗利率49.6%は、すでに今期の6〜8月に3区分そろって実現した水準で、架空の目標ではない。販管費の一部(人の採用)は売上が伸びなければ絞れる余地もある
会社も8月の説明会で、来期を事業モデルの転換・定着のフェーズと位置づけていました。来期予想は、その転換の費用を先に置いた計画です。
4-4. 純利益が減る予想の中身
来期の純利益予想は3億38百万円で、14.5%の減益です。会社は、今期に投資有価証券売却益を特別利益に計上した反動で、これを除けば前期並みになる見込みと説明しています(9月15日の修正開示によれば、今期の特別損益を除いた純利益は約3億41百万円)。
経常利益予想5億49百万円と純利益予想3億38百万円から、特別損益をゼロとしたときの税負担率を逆算すると38.5%です。
| 物差し | 税負担率 |
|---|---|
| 来期予想から逆算した暗黙の負担率 | 38.5% |
| 今期の実績(特別損益込み) | 34.5% |
| 今期の特別損益除き(会社の約3億41百万円から逆算) | 36.1% |
| 前期の実績 | 31.3% |
筆者の計算です。
この表のポイントは、来期予想の税負担率が直近2期の実績より高く置かれていることです。理由は開示されていません。立ち上げ期のインド子会社や戦略コンサル子会社の損益が、連結の税金計算でどう扱われるかが一因になりうる、というのは筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません。有価証券報告書の税率差異の注記(11月25日提出予定)で確認できる可能性があります。
5. 顧客の中身:出入り先が変わりつつある
5-1. 大口顧客への依存は下がったのか
| 指標 | 2025年8月期 | 2026年8月期 |
|---|---|---|
| 年間2億円以上の顧客からの売上比率 | 70.6% | 61.2% |
| 同上の売上(筆者の概算) | 約35.9億円 | 約28.6億円 |
| それ以外の顧客からの売上(筆者の概算) | 約15.0億円 | 約18.1億円 |
| 年間5億円以上の顧客数 | 3社 | 3社 |
| 年間2億円以上の顧客数 | 6社 | 5社 |
| 年間1億円以上の顧客数 | 9社 | 6社 |
| エンタープライズ顧客数 | 21社 | 26社 |
| 新たに取引を始めた顧客数 | 15社 | 28社 |
| 顧客維持率 | 86.6% | 80.6% |
売上は〈比率×売上高〉で筆者が概算しました。
この表のポイントは、大口顧客への依存度の低下に2つの面があることです。大口からの売上が約7.3億円(△20.4%)減り、それ以外の顧客からの売上が約3.2億円(+21.2%)増えました。分母(全体)が縮む中での比率の低下なので、「分散が進んだ」と「大口が縮んだ」の両方が起きています。
顧客維持率は86.6%から80.6%に下がりました。会社は、製品戦略の見直し(プロダクト事業の取引先)の影響を除いた維持率は94.6%と説明しています。販売を終えたライセンスの顧客が抜けた分だという説明です。
用語メモ:顧客維持率は、過去3年度の累計取引額が300万円以上の顧客を対象に「前年度と今年度の両方で取引した顧客数÷前年度に取引した顧客数」で計算した会社独自の指標です。年に一度しか集計されません。
取引開始から3年以内の顧客からの売上は8.5億円(前期5.9億円)に増え、2019年8月期以前からの顧客からの売上は6.9億円減りました。長年出入りしてきた家の仕事が減り、新しい家の仕事が増えた1年でした。ただし会社自身が言うとおり、新しい顧客との取引は小さく始めて広げていくモデルで、その増加が売上の規模に追いつくまでには時間がかかります。
5-2. 施主が株主でもある
| 株主 | 保有株数 | 持株比率 | 取引上の関係(前期有報) |
|---|---|---|---|
| ニプロ株式会社 | 130,000株 | 3.90% | ニプロ11.0%、子会社のニプロデジタルテクノロジーズ19.9%(売上比率) |
| 豊田通商株式会社 | 130,000株 | 3.90% | 豊田通商システムズ10.1%(売上比率) |
| 株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ | 50,000株 | 1.50% | 会社が共同運営会社の事例として挙げる三越伊勢丹ホールディングスのグループ会社 |
2025年8月31日現在の有価証券報告書の大株主表。持株比率は自己株式を除く発行済株式総数に対する割合です。
この表のポイントは、売上の上位顧客が株主にも並んでいることです。会社はニプロと2009年に資本・業務提携契約を、豊田通商と2021年に資本業務提携契約を結んでいます。渡邉社長は説明会で、資本業務提携先は株主でもありお客様でもあると述べています(書き起こしベース)。前期は上位3社(ニプログループ2社と豊田通商システムズ)で売上の約41.0%でした。
出入りの大工でいえば、主な施主が大工の店の出資者でもある関係です。長い付き合いの裏付けになる一方、施主の投資判断が変われば、仕事と株主の両面で影響を受ける関係でもあります。会社は有報の事業等のリスクで、ニプロとの契約に競合他社との取引を制限する条項は含まれていないとも書いています。
今期(2026年8月期)の主要顧客の売上比率は、11月25日提出予定の有価証券報告書で判明します。
6. 資本政策と株主還元
6-1. 株主優待
株主優待の制度はありません。会社のIRサイトのFAQ(2026年10月21日確認)は、配当や株主優待などの株主還元の予定について「現在は予定しておりません」と答えています。ただし同じ回答は配当についても「予定していない」のままで、10月15日に取締役会が決議した初配当の開示と食い違っています。配当については10月15日の開示を正として扱います。当期(2026年8月期)の有価証券報告書の「株主に対する特典」欄は、提出前のため確認していません。
6-2. 配当方針の変更と初配当
会社は10月15日、配当方針を次のように変更しました(原文の抜粋)。
変更前:当社は、上場以来、将来の事業展開及び財務体質の強化を勘案し、内部留保の確保を配当政策の基本方針とし、これまで配当を実施しておりませんでした。
変更後:具体的には、DOE2.0%を安定配当の下限の目安としたうえで、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向20%程度を目安として配当を実施いたします。配当性向は、成長投資の進捗や業績等を踏まえ、3年後を目途に30%超を目標として段階的な引き上げを検討してまいります。
用語メモ:DOE(純資産配当率)は、1株配当を1株当たり純資産で割った値です。利益ではなく純資産に対する割合なので、利益が落ちた年にも配当が下がりにくい物差しです。会社の定義では、分母は期首と期末の1株当たり純資産の平均です。
今期の配当22円を、方針の2つの物差しで検算します。
| 物差し | 計算 | 値 |
|---|---|---|
| DOE | 22円÷(1,012.84円+1,136.60円)÷2 | 2.05%(会社表記2.0%) |
| 配当性向 | 22円÷EPS 118.03円 | 18.6% |
| 配当総額 | 22円×3,355,580株(自己株式を除く期末株数) | 73.8百万円(開示値73百万円) |
この表のポイントは、今期の配当が「DOE2.0%の下限」にほぼ張り付いていることです。配当性向は18.6%で、目安の20%程度より少し下です。配当方針の変更の開示では配当性向を18.5%と書いていますが、決算短信と説明資料は18.6%で、22円÷118.03円の計算とも一致するので、本記事は18.6%を使います。
来期は配当予想を「未定」としています。方針を来期の会社予想に当てはめると、次のようになります。
| 物差し | 計算 | 1株配当 |
|---|---|---|
| 配当性向20% | 予想EPS 100.80円×20% | 約20.2円 |
| 配当性向30%(3年後の目標水準) | 予想EPS 100.80円×30% | 約30.2円 |
| DOE2.0%(下限の目安) | (今期末1,136.60円+来期末の概算1,215.40円)÷2×2% | 約23.5円 |
来期末の1株当たり純資産は〈今期末+予想EPS−今期の配当22円〉で筆者が概算しました(その他有価証券評価差額金の変動や株数の変化は入れていません)。筆者の試算で、会社の配当予想ではありません。
この表のポイントは、来期は利益側(配当性向20%)の約20円より、純資産側の下限(DOE2.0%)の約23.5円のほうが高くなることです。来期予想の純利益が減益なので、方針どおりなら配当を支えるのは配当性向ではなくDOEの側になり、その場合の配当性向は約23%になります。ただし会社は「DOE2.0%を下限の目安」としており、どちらで決めると明言しているわけではありません。配当予想の公表時に確かめる点です。
6-3. 初配当は基準日を過ぎてから決まった
今期の配当の基準日は2026年8月31日(月)で、権利付き最終日は8月27日(木)でした。配当は10月15日に決まったので、この配当を受け取れるのは、配当が決まる前の8月末時点の株主です。発表を見てから買っても今期の配当は受け取れません。配当は11月26日(木)の定時株主総会で承認されれば確定し、11月27日(金)から支払われる予定です。定款上、期末配当の決定機関は株主総会、中間配当(2月末日基準)は取締役会です。
来期の期末配当の基準日は2027年8月31日(火)で、権利付き最終日は8月27日(金)です(会社予想の中間配当は0円)。
6-4. 株数と潜在株式
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 発行済株式数(2026年8月末) | 3,378,380株 |
| 自己株式 | 22,800株 |
| 期中平均株式数 | 3,352,636株 |
| 潜在株式(希薄化効果のある新株予約権) | 154,968株 |
| 潜在株式調整後EPS | 112.81円 |
今期は新株予約権の行使で発行済株式数が24,940株増えました。EPSの減少率(△35.8%)が純利益の減少率(△34.1%)より大きいのは、期中平均株式数が2.7%増えたためです(上場時の新株発行・自己株式の処分が前期の途中だったため、平均株数が今期に一段増えています)。来期の予想EPS 100.80円は、予想純利益3億38百万円を期末の株数(自己株式を除く3,355,580株)で割った値と一致します。
6-5. 支配株主
| 株主 | 保有株数 | 議決権比率 |
|---|---|---|
| Watanabe&Partners株式会社(渡邉社長の資産管理会社) | 1,150,000株 | 34.53% |
| 渡邉伸一氏 | 713,400株 | 21.42% |
| 合計 | 1,863,400株 | 55.95% |
2025年8月31日現在。資産管理会社であることは有報の大株主表の注記と事業等のリスクに書かれており、会社の「支配株主等に関する事項」(2025年11月28日)でも合算対象分として示されています。
渡邉社長は資産管理会社と合わせて議決権の過半数を持つ支配株主です。会社は支配株主との取引はないと開示しています。経営の一貫性という面がある一方、流通株式比率は29.7%(2025年8月末、有報)にとどまります。
売買の量も少ない銘柄です。2026年9月の日々の出来高は、9月16日の21,700株を除くと100〜5,500株でした(東証の日足から筆者が集計)。渡邉社長自身も8月の説明会で、株価と出来高が低調だという事前質問に「全くご指摘のとおり」と答えています(書き起こしベース)。
6-6. 手元資金と投資有価証券
| 項目 | 2026年8月末 |
|---|---|
| 現金及び現金同等物 | 20億08百万円 |
| 有利子負債(長期借入金・リース債務) | 2億14百万円 |
| ネットキャッシュ(筆者の計算) | 約17億94百万円 |
| 投資有価証券 | 6億33百万円(総資産の13.2%) |
今期は投資信託の一部を売って売却益95百万円を計上し、保有する外国株式の時価が取得原価を大きく下回ったため評価損26百万円を計上しました。投資有価証券は1億08百万円増えましたが、その他有価証券評価差額金の増加(35百万円)を税効果前に戻すと約51百万円で、残りは売却と新たな取得の差です。
会社は配当を始めた理由として、成長投資の重心をM&Aへの備えから協業・連携・出資に移したこと、財務基盤がすでに適正な水準にあることを挙げています。資本配分の詳細は、11月末に公表予定の中期経営計画で説明するとしています。
6-7. グロース市場の時価総額基準
東証グロース市場では、2030年3月1日以後に到来する基準日から、上場5年を経過した会社に時価総額100億円以上が求められます。GxPの上場日は2024年9月26日で、5年経過は2029年9月26日です。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 上場株式数(自己株式を含む) | 3,378,380株 |
| 時価総額100億円に必要な株価 | 約2,960円 |
| 2026年10月20日終値 | 1,201円 |
| 必要な株価までの倍率 | 約2.5倍 |
筆者の試算です。判定は事業年度末日以前3か月間の終値平均×事業年度末日の上場株式数で行われ、不適合の場合は1年の改善期間があります。最初に判定される基準日や株数の扱いの細部は、JPXの規則原文で確認してください(筆者は規則原文を確認していません)。会社はこの基準への対応方針を開示していません。
7. 株価の見方
株価に関わる数字はこの章にまとめます。基準は2026年10月20日(火)の終値1,201円です。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 時価総額(自己株式を除く株数) | 約40.3億円 |
| PER(今期実績EPS 118.03円) | 10.2倍 |
| PER(来期予想EPS 100.80円) | 11.9倍 |
| PBR(今期末BPS 1,136.60円) | 1.06倍 |
| 配当利回り(今期22円) | 1.83% |
| ネットキャッシュ÷時価総額 | 約45% |
| 2026年の年初来高値・安値 | 1,796円(1月13日)・1,045円(5月25日) |
| 上場後の終値の最高値 | 4,290円(2024年11月5日)。そこから約72%下 |
決算は10月15日(木)16時05分、取引終了後の発表でした。この日の終値1,269円は決算を織り込んでいません。最初に反応が出た10月16日(金)は始値1,213円、終値1,201円(前日比△5.4%)、出来高10,000株でした。7月15日の下方修正(16時00分)の翌日は△9.8%(出来高75,800株)、9月15日の上方修正(18時00分)の翌日は+2.7%(出来高21,700株)でした。いずれも発表後最初の取引日の値動きの事実で、値動きの理由は確認できません。
この株価をどう読むかは、来期予想の前提をどう見るかで分かれます。
強気の読み
- 減益の中心は数量効果で、粗利率は保っていた。6〜8月には3区分そろって粗利率50%に届いた
- 6〜8月の営業利益率13.4%は前期並みの水準まで戻っている
- 新しい顧客が28社に増え、取引開始3年以内の顧客の売上は8.5億円に伸びた
- ネットキャッシュが時価総額の約45%あり、自己資本比率は79.7%。配当方針にDOEの下限を置いた
- 主要な顧客が株主でもあり、関係が長い
弱気の読み
- 来期予想は増収・粗利率の持続・販管費の大幅増の3つがそろって初めて届く形で、感応度表では9マス中1マスしか予想に届かない
- 今期の期初予想は下期に過去最高の利益率を置いて大きく外れた。上場後の2期で予想の外れ方が上下に大きい
- 長年の大口顧客からの売上が減っており、会社も来期に一定の影響が残る見込みとしている
- 来期の純利益予想は減益で、暗黙の税負担率は直近2期より高い
- 出来高が少なく、売買したいときに思った値段で売買できない可能性がある。時価総額基準までの距離は株価で約2.5倍ある
出入りの大工の例えに戻ると、今期は「腕は落ちていないが施主が工事を始めなかった1年」、来期は「間取りの相談役を雇い作業場を広げ、仕事の量と取り分の両方を上げにいく1年」です。後者の費用はもう決まっていて、前者の量と取り分は施主の判断で決まります。株価がどちらの見方に寄っているかは、読者ご自身で判断してください。
8. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 見るポイント |
|---|---|---|
| 2026年11月25日(水) | 有価証券報告書の提出予定 | 主要顧客の売上比率、外注費・仕入高、税率差異、株主に対する特典欄 |
| 2026年11月26日(木) | 定時株主総会 | 初配当22円の承認 |
| 2026年11月27日(金) | 配当支払開始予定 | — |
| 2026年11月末 | 中期経営計画(事業計画及び成長可能性に関する事項)の公表予定 | 数値目標、資本配分、来期の配当予想 |
| 2027年1月中旬(前年は1月14日) | 第1四半期決算 | 9〜11月の粗利率が6〜8月の50%近くを保てたか、販管費の増え方 |
| 2027年8月27日(金) | 来期の期末配当の権利付き最終日 | 配当予想(現在は未定) |
| 2029年9月26日 | 上場5年経過 | 時価総額基準の判定が始まる時期は規則原文で確認 |
見るべきKPI
- 四半期の粗利率:来期予想は49.6%を1年通す前提。今期は9〜11月46.4%、6〜8月50.0%
- 四半期の販管費:来期は年21億円強(四半期平均で約5.3億円)の計画。今期の6〜8月は4億35百万円
- DX推進支援事業の四半期売上:来期の計画は年43億36百万円(四半期平均約10.8億円)。今期の6〜8月は9億74百万円
- 年間2億円以上の顧客の売上比率と、新規顧客数
- コンサルタント・エンジニア社員数(今期末231名)と離職率(8.2%)
コンサルタント・エンジニア社員数の前期末の値は、前期の説明資料では213名、今期の説明資料では214名と書かれています。どちらが正しいかは開示から判断できないため、本記事は今期末の231名だけを使っています。
9. 3行まとめ
- 今期は売上△8.2%に対し営業利益△34.9%。減益の約7割は売上減の数量効果で、粗利率はほぼ横ばい、6〜8月には粗利率50.0%・営業利益率13.4%まで戻った
- 来期予想(営業利益+3.8%)は、売上+14.4%と粗利率49.6%の持続を前提に、その稼ぎを販管費+29.7%(人材とオフィス)に回す計画で、どれか1つが欠けると今期を下回る計算になる
- 初配当22円はDOE2.0%の下限に張り付いた水準で、来期も方針どおりならDOE側(約23.5円)が配当を支える計算。中計と配当予想は11月末に公表予定
免責事項
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘や投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、グロースエクスパートナーズの決算短信(2026年8月期通期・各四半期、2025年8月期通期)、決算説明資料(2026年8月期通期・2025年8月期通期)、適時開示(業績予想の修正2本、配当方針の変更及び剰余金の配当、支配株主等に関する事項)、決算Q&A集(第3四半期)、有価証券報告書(第18期)、会社IRサイトのFAQ、東証の株価(日足)です。四半期の値は各四半期の決算短信の累計値から筆者が差し引いたもの、感応度表・配当の試算・税負担率の逆算・顧客別売上の金額は筆者の試算です。以下の点にご注意ください。代表取締役社長の発言は、2026年8月28日開催の個人投資家向け説明会の書き起こし(会社公表)に基づく書き起こしベースで、動画の原資料は確認していません。今期の決算説明会は開催されておらず(短信表紙)、会社の追加説明・質疑応答は反映していません。第1・第2四半期のQ&A集は読んでいません。来期の税負担率が高く置かれている理由についての記述は筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません。会社が名前を伏せた顧客(医療業界・スマートモビリティ関連)を特定していません。2026年3月19日に提出された第18期の訂正有価証券報告書は、訂正の内容を確認していません。当期(2026年8月期)の有価証券報告書は提出前のため、株主に対する特典欄・主要顧客を確認していません。説明資料はテキスト抽出で読み、四半期表の値は短信の差し引きと一致することを確認して使いました。営業利益の増減分析の項目別の値は説明資料の図から筆者が読み取ったものです。来期の業績予想のページでは、テキスト抽出で「下期偏重での計画達成を目論む」という文言も出てきますが、前期資料と同じ文言で表示位置を確認できなかったため、本記事では来期予想の説明として使っていません。グロース市場の時価総額基準の細部(最初の判定基準日・株数の扱い)は規則原文を確認していません。株価・時価総額・PER・配当利回りは2026年10月20日終値に基づく概算です。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。