株式投資

東邦レマック(7422) 海外の工場に作らせた靴を全国の売り場に卸してきた問屋が、帳場の現金で部屋や建物を仕入れて売り始めた会社 下方修正のあと、残り3か月に置かれた「売上3割増」はどこから来るのか?【2026年10月発表・第3四半期決算】

本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

東邦レマックは2026年10月23日(金)15時30分、2026年12月期の第3四半期決算と同時に、通期の業績予想の下方修正を発表しました。営業利益は黒字88百万円の予想から76百万円の赤字予想へ、当期純利益は71百万円の黒字予想から55百万円の赤字予想へ変わっています。

数字だけを見ると「靴が売れなくて赤字になった」で終わりそうですが、この会社の決算は、靴の問屋としての顔と、2024年末に始めた不動産の売買・賃貸の顔が1枚の損益計算書に重なっています。修正後の予想を分解すると、残り3か月(9月21日〜12月20日)に前年同期の約1.3倍の売上を置いていることが分かります。その売上の中身を考えるのがこの記事の中心です。

この記事でわかること

  • 東邦レマックがどんな会社で、靴の「問屋」と「不動産」がどう同じ決算書に並んでいるのか
  • 第3四半期(6月21日〜9月20日)の3か月に、靴の事業で何が起きたのか(11四半期の差し引きと営業利益の3分解)
  • 修正後の通期予想が残り3か月に置いている「売上15億07百万円・営業利益ほぼゼロ」の重さと、過去2期の同じ時点の予想がどう外れてきたか
  • 靴の売上の伸びを何通りか置いたとき、残り3か月に不動産の売上がいくら要る計算になるか(筆者の試算)
  • 約2年で約11億円あったネットキャッシュ(現預金−有利子負債)が約1.8億円のネット借入に変わった経緯と、営業外の支払利息・暗号資産・特別調査費用
  • 筆頭株主(不動産会社)との関係、配当と株主優待、株価の見方

1. この会社は何をしているのか

海外の工場に作らせた靴を、全国の売り場に卸してきた問屋

東邦レマックは東京・湯島に本社を置く靴の卸売会社です。自社で企画した婦人靴・紳士靴・スニーカーなどを、主に中国の協力工場に作ってもらい、輸入して国内の量販店・専門店などに卸しています。有価証券報告書の「事業等のリスク」には、自社企画の商品の多くを海外の協力工場に生産委託し、とくに中国での生産比率が高いこと、輸入代金は人民元と米ドルで払っていることが書かれています。

ここでこの記事の「軸」を1つ立てておきます。

東邦レマックは、海外の工場に作らせた靴を全国の売り場に卸してきた問屋が、帳場(店の現金や帳簿を預かる場所)の現金で、部屋や建物を仕入れて売り始めた会社です。

この一文には、強みと弱みが同じ場所に入っています。

  • 問屋としての強み:企画して作らせて卸すという仕組み自体は長年回ってきたもので、借金をほとんどせずに現預金を積み上げてきました(2024年12月期末の現預金は18億91百万円、短期借入金は8億円)
  • 問屋としての弱み①(値段):靴の仕入値は為替と中国の工場で決まります。円安になれば同じ靴の原価が上がり、それを売値に乗せられなければ粗利率が下がります。これは営業利益の「率効果」に当たります
  • 問屋としての弱み②(量):卸先の店で靴が売れるかどうかは、天候・流行・消費者の財布で決まります。サンダルやブーツのような季節商品は特に天候に左右されます。これは「数量効果」に当たります
  • 帳場の現金で部屋を仕入れることの弱み:不動産は仕入れてから売れるまで現金が寝ます。足りない分は借りるので利息が出ます。そして売れた月に売上がまとまって立つので、四半期の数字が大きく振れます

この4つは、このあと決算を読むときの4つの物差しになります。

決算期は「12月20日締め」

東邦レマックの決算期は12月20日締めです。カレンダーの四半期とはずれるので、この記事では次のように呼びます。

用語メモ:この記事の四半期の呼び方 第1四半期=12月21日〜3月20日、第2四半期=3月21日〜6月20日、第3四半期=6月21日〜9月20日、第4四半期=9月21日〜12月20日。「◯月末」ではなく「◯月20日」が区切りなので、配当・優待の基準日も12月20日・6月20日になります。

事業は「シューズ」と「不動産」の2つ

2025年12月期から、セグメント(事業の区分)は「シューズ事業」と「不動産事業」の2つになりました。今期の第3四半期累計(9か月)の数字は次のとおりです。

セグメント売上高セグメント利益前年同期の売上高前年同期の利益
シューズ事業29億91百万円△1億00百万円33億13百万円△89百万円
不動産事業3億16百万円22百万円68百万円18百万円
合計(=営業利益)33億08百万円△78百万円33億81百万円△71百万円

出典:2026年12月期第3四半期決算短信のセグメント情報。百万円未満切り捨て。セグメント利益の合計は損益計算書の営業損失と一致します(全社費用の調整額はありません)。

この表のポイントは2つです。売上の9割は靴で、その靴の部門が赤字です。そして不動産は売上が前年の約4.6倍に増えた一方、利益は22百万円にとどまっています。

用語メモ:不動産事業はいつから「本業」になったのか 東邦レマックは以前から不動産を持って貸したり売ったりしていましたが、2024年12月期までは靴の本業の外(営業外・特別損益)として処理していました。2024年12月に宅地建物取引業の免許を取って事業として始め、2025年12月期から賃貸収入と売却額を「売上高」に入れる会計方針に変えています(前期の数字も遡って組み替え済み)。このため、2024年12月期の「旧基準」の数字と、組み替え後の数字の2通りが存在します。この記事では、特に断らない限り組み替え後の数字を使います。

業績の推移

決算期売上高営業利益経常利益当期純利益EPS1株配当
2023年12月期(旧基準)50億96百万円△2億08百万円△1億78百万円△1億35百万円△26.65円10.6円
2024年12月期(組み替え後)51億05百万円73百万円1億32百万円1億24百万円24.44円11.2円
2025年12月期45億47百万円△1億20百万円△99百万円17百万円3.44円11.4円
2026年12月期(10月23日修正後の会社予想)48億16百万円△76百万円△1億円△55百万円△10.89円11.4円(予想)

出典:各期の決算短信、2025年1月29日・2026年1月28日・2026年10月23日の業績予想の修正に関するお知らせ。2024年12月21日付で1株を10株に分割しているので、2023年12月期・2024年12月期のEPSと配当は分割後の株数に換算しています(筆者の換算)。

この表のポイントは、営業黒字の年が2024年12月期だけだということです。決算短信には「2023年12月期まで、7期連続の営業損失及び6期連続の当期純損失」と書かれており、2025年12月期の当期純利益17百万円も、固定資産売却益1億57百万円と投資有価証券売却益86百万円という特別利益に支えられたものでした。

会社予想の達成履歴:期中には動かさず、期末のあとで直す会社

この会社の予想を読むうえで一番大事な前提は、修正のタイミングです。

決算期期初予想(売上/営業)期中の通期修正修正の開示日着地・修正後(売上/営業)売上の期初比
2024年12月期(旧基準)54億円/5百万円なし2025年1月29日(期末後)47億57百万円/6百万円△11.9%
2025年12月期57億95百万円/1億50百万円なし2026年1月28日(期末後)45億47百万円/△1億20百万円△21.5%
2026年12月期51億04百万円/88百万円あり(第3四半期決算と同日)2026年10月23日48億16百万円/△76百万円(予想)△5.6%

出典:各期の決算短信と業績予想の修正に関するお知らせ。2024年12月期は会計方針の変更前(旧基準)の予想と実績どうしで比べています。

上期(中間期)の予想も、毎年7月下旬、上期決算の発表の2日前に実績に合わせて修正されています(2024年7月24日、2025年7月23日、2026年7月22日)。

決算期上期予想(売上/営業)修正後=上期実績(売上/営業)
2024年12月期(旧基準)26億18百万円/△20百万円23億71百万円/0百万円
2025年12月期25億09百万円/14百万円23億92百万円/△29百万円
2026年12月期22億23百万円/7百万円24億42百万円/△11百万円

この2つの表のポイントは3つです。

  1. 過去2期は、通期予想を期中に一度も動かさず、期末(12月20日)を過ぎてから実績に合わせて直していました。 今期は初めて、第3四半期決算と同時に期中で修正しています
  2. 期初予想は毎年、前期より2桁の増収を置いてきました(2025年12月期は前期比+13.5%、2026年12月期は+12.2%)。着地は2025年12月期が△10.9%、今期の修正後予想が+5.9%です
  3. 上期予想の修正は、毎年「上期が終わって数字が固まったあと」に出ています。この会社の上期修正は、見通しの変更というより実績の速報として読むのが自然です

用語メモ:期末後の修正 期中に予想を据え置き、期末後・決算発表の直前に実績へ合わせて修正する会社では、期中の「据え置き」は会社の見通しについてほとんど情報を持ちません。据え置きを「自信の表れ」とも「下方修正の前触れ」とも読まず、過去の外れ方の表で前提をそろえておくのが安全です。

第3四半期の時点で、予想は残り3か月に何を置いていたか

もう1つ、過去2期の「第3四半期決算の時点で、通期予想が第4四半期(9月21日〜12月20日)に置いていた数字」と、実際の第4四半期を並べます。

決算期第3四半期時点の予想が置いた第4四半期実際の第4四半期売上の達成率その後
2024年12月期(旧基準)売上18億96百万円・営業利益16百万円売上12億53百万円・営業利益17百万円66.1%期末後に売上を下方修正
2025年12月期売上24億13百万円(前年同期比+71.2%)・営業利益2億21百万円売上11億65百万円・営業利益△49百万円48.3%期末後に売上・利益とも下方修正
2026年12月期売上15億07百万円(前年同期比+29.3%)・営業利益2百万円(12月20日まで)——

出典:各期の決算短信と業績予想の修正開示から筆者が差し引き(〈通期予想−第3四半期累計実績〉)。2024年12月期は旧基準の売上(=靴の売上)と旧基準の営業利益(筆者が会計方針変更の注記から逆算)で比べています。

この表のポイントは、過去2期とも、第3四半期時点の予想は残り3か月に大きな売上を置き、売上はその5〜7割しか届かなかったことです。今期の修正後予想は、前年(2025年12月期)の第3四半期時点の置き方(前年同期比+71.2%)よりはずっと控えめで、営業利益もほぼゼロしか置いていません。それでも売上は前年同期の約1.3倍を求めています。この「約1.3倍」の中身が、第4章のテーマです。


2. 第3四半期決算のハイライト

損益:9か月累計と、第3四半期の3か月

決算短信は9か月累計しか開示しないので、第3四半期(6月21日〜9月20日)の3か月は、9か月累計から上期(6か月)累計を差し引いて出します。

項目9か月累計前年同期前年同期比うち第3四半期の3か月前年の第3四半期
売上高33億08百万円33億81百万円△2.2%8億66百万円9億89百万円
売上総利益9億14百万円10億09百万円△9.4%2億50百万円3億01百万円
粗利率27.6%29.8%△2.2pt29.0%30.4%
販管費9億92百万円10億80百万円△8.1%3億17百万円3億42百万円
営業利益△78百万円△71百万円—△66百万円△41百万円
経常利益△1億02百万円△44百万円—△49百万円△33百万円
四半期純利益△56百万円△52百万円—△49百万円△39百万円

出典:2026年12月期第3四半期・中間期決算短信、2025年12月期の同短信。3か月の数字は千円単位の累計から筆者が差し引き、百万円未満を切り捨てています(短信の累計値とは丸めの関係で±1百万円ずれることがあります)。

用語メモ:累計しか開示されない 日本の四半期決算短信は、期首からの累計で数字を出します。「第3四半期の3か月だけ」の数字は開示されないので、読者が自分で〈9か月累計−6か月累計〉を引き算するしかありません。この記事の「第3四半期の3か月」の数字は、すべてこの引き算によるものです。

この表のポイントは、9か月累計では「営業赤字が7百万円広がっただけ」に見えるのに、第3四半期の3か月では営業赤字が前年の41百万円から66百万円に広がっていることです。上期は不動産の売却で売上が膨らみ、販管費の削減も効いて営業損益は前年より改善していました(上期△11百万円、前年同期△29百万円)。その改善分を、6〜9月の3か月で取り返された形です。

経常利益が営業利益より24百万円悪い理由

前年の9か月累計では、経常利益(△44百万円)が営業利益(△71百万円)より26百万円良い数字でした。投資事業組合の運用益や配当金などの営業外収益が上乗せされていたからです。今期は逆に、経常利益(△1億02百万円)が営業利益(△78百万円)より24百万円悪くなっています。

営業外の主な項目(9か月累計)今期前年同期
支払利息23百万円4百万円
暗号資産評価損8百万円(評価益5百万円)
特別調査費用14百万円—
投資事業組合運用益0百万円8百万円
営業外収益合計24百万円31百万円
営業外費用合計48百万円5百万円

支払利息は前年の約4.6倍です。この3つの項目は第5章で詳しく扱います。

純利益は「特別利益」で上期に一度ほぼトントンになっていた

上期には、2026年3月16日に退任した前会長が退職慰労金の一部を辞退した結果として、役員退職慰労引当金の戻入額46百万円を特別利益に計上しています(2026年5月11日の開示)。上期の純損失が7百万円にとどまったのはこのためで、第3四半期の3か月だけでは49百万円の純損失でした。

貸借対照表:販売用不動産が膨らみ、現預金が減った

科目2025年12月20日2026年9月20日増減
現金及び預金19億35百万円14億41百万円△4億93百万円
商品(靴の在庫)5億18百万円6億22百万円+1億03百万円
販売用不動産5億19百万円12億23百万円+7億03百万円
土地(固定資産)13億01百万円12億05百万円△96百万円
有形固定資産のその他(純額。建設仮勘定を含む)76百万円3億50百万円+2億73百万円
有利子負債合計15億29百万円16億20百万円+90百万円
純資産45億21百万円43億82百万円△1億39百万円
自己資本比率67.4%64.2%△3.2pt

出典:決算短信の貸借対照表。有利子負債は短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・長期借入金の合計(筆者の合算)。

この表のポイントは2つです。販売用不動産は9か月で7億03百万円増え、そのうち2億92百万円は、9月14日に賃貸用だった日本橋とさいたま市の物件を販売用に振り替えた分です(土地と建物が減って販売用不動産が増えています)。そして有形固定資産の「その他(純額)」が2億73百万円増えたのは、決算短信の説明では建設仮勘定が2億77百万円増えたことによるもので、6月30日に取得を決めた北海道幕別町の系統用蓄電所(2027年1月稼働予定)の分と見られます(建設仮勘定の内訳は開示されておらず、蓄電所の分であることは筆者の推測です)。

第3四半期はキャッシュ・フロー計算書が作られていません。減価償却費の注記は9か月で54百万円(前年同期36百万円)です。

通期予想の修正理由(原文)

会社は修正理由を次のように書いています(原文)。

売上高につきましては、シューズ事業のゴム・スニーカー・その他の商品群は堅調に推移しましたが、主力である婦人靴と紳士靴が苦戦を強いられ、売上高は前回予想を下回る見込みとなりました。 営業利益につきましては、売上高の減少及び円安による売上原価の増加により前回予想を下回る見込みとなりました。 経常利益につきましては、支払利息の増加、暗号資産評価損、特別調査費用を計上したことにより営業外費用が増加し、前回予想を下回る見込みとなりました。

(このあとに当期純利益の段落が続きますが、ここでは省略しています。)

修正理由には不動産事業への言及がありません。この点は第4章で扱います。


3. 深掘り①:靴の6〜9月に何が起きたのか

最初の問いは単純です。靴の部門の赤字は、どこまでが季節の形で、どこからが今年の悪化なのか。

11四半期を並べる

セグメント情報の累計を差し引いて、靴の部門だけを11四半期並べます(2026年12月期の第4四半期はまだありません)。

決算期・四半期靴の売上靴のセグメント利益利益率
2024年12月期 第1四半期10億87百万円△15百万円△1.4%
2024年12月期 第2四半期12億83百万円16百万円1.3%
2024年12月期 第3四半期11億32百万円△13百万円△1.2%
2024年12月期 第4四半期12億53百万円19百万円1.5%
2025年12月期 第1四半期11億31百万円△35百万円△3.1%
2025年12月期 第2四半期12億18百万円△7百万円△0.6%
2025年12月期 第3四半期9億63百万円△47百万円△4.9%
2025年12月期 第4四半期11億39百万円△43百万円△3.8%
2026年12月期 第1四半期11億05百万円△18百万円△1.7%
2026年12月期 第2四半期10億65百万円△11百万円△1.1%
2026年12月期 第3四半期8億20百万円△69百万円△8.5%

出典:各期の決算短信のセグメント情報(2024年12月期は2025年12月期の短信の前年同期欄)から筆者が差し引き。百万円未満切り捨て。各期の4四半期の合計が通期の開示値と一致することを確認しています(2026年12月期は第3四半期まで)。

この表のポイントは3つです。

  1. 第3四半期(6〜9月)の靴の売上は、11億32百万円→9億63百万円→8億20百万円と2年続けて大きく減っています。 赤字も△13百万円→△47百万円→△69百万円と深くなっています
  2. 6〜9月が年間で最も深い赤字になったのは直近2年です。 3年前(2024年12月期)は第1四半期のほうがわずかに深い赤字でした。3年のうち1年だけ形が違うので、この記事では「6〜9月は季節的に赤字」とは書きません。「2年続けて6〜9月が底になった」と書くにとどめます
  3. 一方で、季節の山であるはずの第2四半期(3〜6月)も、今期は10億65百万円と前年(12億18百万円)を大きく下回りました。上期の会社売上が前年を上回ったのは、第2四半期に不動産の売上(2億33百万円)が乗ったためです

用語メモ:「季節性がある」と書く条件 1年分の形だけで「この会社は夏に赤字になる」と書くと、別の年に逆の形が出ていれば誤りになります。この記事では、3年とも同じ形なら「季節性」、2年なら「2年続けて」、1年なら「前期はそうだった」と書き分けています。

営業利益の悪化を「量」「値段」「経費」に分ける

会社全体の営業利益の変化を、3つに分けます。

  • 数量効果:売上の増減×前年の粗利率(売上が減った分、粗利がいくら減ったか)
  • 率効果:粗利率の変化×今年の売上(粗利率が下がった分、粗利がいくら減ったか)
  • 販管費:販管費が減れば利益にはプラス
期間粗利率(前年→今年)数量効果率効果販管費営業利益の増減
第1四半期(12/21〜3/20)29.1%→27.1%△2百万円△23百万円+35百万円+9百万円
第2四半期(3/21〜6/20)30.0%→27.2%+18百万円△36百万円+27百万円+8百万円
第3四半期(6/21〜9/20)30.4%→29.0%△38百万円△13百万円+25百万円△25百万円
9か月累計29.8%→27.6%△22百万円△73百万円+88百万円△7百万円

出典:決算短信から筆者が算出。各項目は四捨五入。3項目の合計は実際の営業利益の増減と一致します(第3四半期:△37.6+△12.8+25.5=△24.9百万円)。

この表のポイントは、上期と第3四半期で悪化の中身が入れ替わったことです。

  • 上期(第1・第2四半期)は、粗利率の低下(率効果)が大きく、それを販管費の削減が上回っていました。会社の説明でも、上期の粗利の減少は「想定以上の円安進行」による売上原価の増加とされています。これは軸の「弱み①(値段)」です
  • 第3四半期は、粗利率の低下は1.5pt程度にとどまり、売上の減少(数量効果)が主因になりました。販管費は前年より25百万円減っていますが、売上の減り方に追いつきませんでした。これは軸の「弱み②(量)」です

ただし注意点が1つあります。上期の率効果には、靴の原価上昇だけでなく、不動産の売却という別の粗利率の取引が混ざっています。第2四半期の売上には不動産が2億33百万円含まれていますが、不動産の粗利率は開示されていません。このため、上期の粗利率の低下のうち、円安による靴の原価上昇の分と、不動産の取引が混ざった分を切り分けることはできません。第3四半期は不動産の売上が46百万円と小さいので、粗利率の低下は主に靴の側で起きたものと読めます(筆者の推測です)。

何が売れなくなったのか:製品別の3か月

決算短信の製品別の9か月累計から上期を引くと、第3四半期の3か月の製品別売上が出ます。

製品第3四半期の3か月前年の第3四半期前年比9か月累計の前年比
婦人靴4億86百万円5億32百万円△8.6%△8.1%
紳士靴1億52百万円2億24百万円△32.1%△26.7%
ゴム・スニーカー・その他1億81百万円2億08百万円△13.0%+6.5%
合計8億19百万円9億64百万円△15.0%△9.7%

出典:決算短信の定性的情報(百万円単位で開示)から筆者が差し引き。合計は靴のセグメント売上(8億20百万円)と丸めの範囲で一致します。

この表のポイントは2つです。

  • 上期まで唯一伸びていた「ゴム・スニーカー・その他」が、6〜9月の3か月では前年を13%下回りました。9か月累計ではまだ+6.5%ですが、勢いは上期で止まっています
  • 紳士靴は9か月で販売足数が27.6%減りました(販売単価は+1.3%)。婦人靴は単価が5.1%上がった一方、足数が12.5%減っています。単価×足数で計算し直すと、婦人靴は約△8.0%、紳士靴は約△26.7%で、開示の増減率とほぼ一致します

会社は「5月後半から続く全国的な天候不順」と「消費者の価格志向」を挙げ、ハンズフリーシューズなど利便性を重視した商品群は堅調としています。単価を上げて足数が落ちる形は、「円安で上がった原価を売値に乗せた結果、買われる数が減った」とも、「不採算の取引を見直した結果、量を追わなくなった」とも読めます。前期の決算短信の「今後の見通し」には、「従来の販売数量の拡大を主眼とした商品投入から転換」「価格政策の見直しによる不採算取引の是正」と書かれており、会社自身が量より単価を選ぶ方針を示していました。ただ、どちらの要因がどれだけ効いたのかを開示から分けることはできません。

在庫は前年の約3分の2

9月20日時点の靴の在庫(商品)は6億22百万円で、前年同期末(9億04百万円)より31.2%少なくなっています。9月の月次報告でも、シューズ在庫は前年同月の67.8%とされています。

前期(2025年12月期)は、撤退・縮小するブランドの在庫評価を見直し、売上原価に1億07百万円の棚卸資産評価損を計上していました(前々期は7百万円)。この評価損を足し戻すと、前期の粗利率は開示の28.9%から31.2%になります(会計上の数字ではなく参考値です)。前期の第4四半期の粗利率が26.1%と低かったのは、この評価損がおもに第4四半期に入ったためと見られます(四半期ごとの評価損の額は開示されていないので、筆者の推測です)。

在庫が少ないことは、強気に読めば「売れ残りの値引き・評価損のリスクが小さい」、弱気に読めば「売る商品の量そのものが減っている」の両方になります。


4. 深掘り②:修正後予想は、残り3か月に何を置いているのか

第3章で、靴の6〜9月が2年続けて大きく落ちていることを見ました。では、10月23日に修正された通期予想は、その延長線上にあるのでしょうか。

残り3か月の「含み」

〈修正後の通期予想−9か月累計実績〉で、予想が第4四半期(9月21日〜12月20日)に置いている数字を出し、前年・前々年の第4四半期と並べます。

項目修正後予想が置いた第4四半期前年の第4四半期前々年の第4四半期
売上高15億07百万円11億65百万円14億09百万円
前年同期比+29.3%——
営業利益2百万円△49百万円39百万円
経常利益2百万円△54百万円58百万円
当期純利益1百万円69百万円60百万円

出典:修正後の通期予想(百万円単位)と第3四半期累計実績(千円単位)から筆者が差し引き。予想が百万円単位なので、差し引いた値には±1百万円程度の幅があります。

この表のポイントは2つです。

  1. 利益の置き方は控えめです。 営業利益は前々年の第4四半期(39百万円)よりずっと低く、ほぼゼロしか置いていません
  2. 売上の置き方は強めです。 前年同期の約1.3倍、前々年の第4四半期(14億09百万円)も上回る水準を置いています

ちなみに、修正前の予想(売上51億04百万円・営業利益88百万円)のままなら、第4四半期に売上17億95百万円・営業利益1億66百万円を置く計算でした。修正は、この残り3か月の要求を売上で2億88百万円、営業利益で1億64百万円引き下げたものです。

用語メモ:「予想が置いている」という言い方 会社は第4四半期だけの予想を発表しているわけではありません。通期予想から9か月の実績を引くと、計算上こうなる、という意味で「置いている」と書いています。

売上15億円の中身は何か

修正理由は靴の苦戦しか挙げておらず、第4四半期の売上を靴と不動産にどう割り振っているかは開示されていません。そこで、靴の第4四半期の売上を何通りか置き、残りを不動産の売上とした場合の計算をしてみます。

靴の第4四半期の前年比の置き方靴の売上予想に届くのに必要な不動産の売上不動産の9か月累計売上(3億16百万円)の何倍か
前年並み(±0%)11億39百万円3億68百万円1.16倍
9か月累計並み(△9.7%)10億28百万円4億78百万円1.51倍
第3四半期並み(△14.9%)9億69百万円5億38百万円1.70倍
9月単月並み(△20.5%、月次報告)9億05百万円6億01百万円1.90倍

出典:前年の第4四半期の靴の売上(11億39百万円)は2025年12月期の決算短信から筆者が差し引き。靴の伸び率の置き方と、それに対応する不動産の売上は筆者の試算で、会社の見通しではありません。

この表のポイントは、靴が前年並みに戻ったとしても、不動産で3億68百万円、靴が今の勢いのままなら5〜6億円の売上が残り3か月に要る計算になることです。9か月で積み上げた不動産の売上(3億16百万円、うち第2四半期だけで2億33百万円)の1.2〜1.9倍を、3か月で立てる必要があります。

これを支える材料と、逆の材料を並べます。

  • 支える材料:9月20日時点の販売用不動産は12億23百万円あり、9月14日には日本橋(帳簿価額2億58百万円)とさいたま市(同34百万円)の2物件を、会社の言葉では「売却に迅速に対応するため」に販売用へ振り替えています。売る物件そのものは手元にあります
  • 逆の材料:不動産の売上は「引き渡した時点」で立ちます。引き渡しが12月20日を1日でも越えれば、売上は来期に回ります。そして過去2期とも、第3四半期時点の予想は第4四半期の売上を半分から3分の2しか達成していません(第1章の表)

用語メモ:不動産の売上はなぜ振れるのか 有報の収益認識の注記では、不動産販売は「物件が引き渡される一時点」で収益を認識するとされています。1件数億円の物件が1つ売れるかどうかで、四半期の売上が数億円単位で動きます。今期の第2四半期の不動産売上(2億33百万円)と第3四半期(46百万円)の差がその例です。

利益の置き方:売上が届いても、利益はほぼゼロ

利益側を見ると、予想が置く第4四半期の営業利益はわずか2百万円です。前年の第4四半期の靴の部門は△43百万円の赤字で、その中には撤退するブランドの在庫評価損が含まれていたと見られます(金額は四半期ごとには開示されていません)。

不動産の利益率は、今期の9か月で7.1%(22百万円÷3億16百万円)、第2四半期の3か月では8.8%でした。仮に不動産で5億円を売って同じ程度の利益率なら、利益は35〜45百万円程度になります(筆者の試算)。その場合、予想どおり営業利益がほぼゼロで着地するには、靴の部門が第4四半期に30〜40百万円程度の赤字になる計算です。前年の第4四半期の靴の赤字(△43百万円)とほぼ同じ水準です。

つまり、修正後の予想は「靴の赤字は前年の第4四半期並みで続き、不動産の売上(主に販売用不動産の引き渡し)で埋める」形に近い置き方になっている可能性があります。ただし、これは不動産の利益率を9か月の実績で固定した筆者の試算で、会社がこの内訳を示しているわけではありません。

用語メモ:業績予想の修正の開示基準 業績予想の修正の適時開示は、原則として売上で10%、利益で30%以上の差が見込まれるときに出ます。今期の売上予想48億16百万円に対しては、約4億8千万円の未達まで開示が出ない計算です。予想どおりに着地しても、届かなくても、期末後の決算発表まで修正が出ないことはありえます。


5. 深掘り③:帳場の現金はどこへ行ったのか

第4章で、予想の売上が不動産の売却に寄っている可能性を見ました。ここでは、その不動産を仕入れるために、会社のお金の形がどう変わったかを追います。軸の「帳場の現金で部屋を仕入れる」の部分です。

ネットキャッシュからネット借入へ

時点現金及び預金有利子負債差額(ネットキャッシュ)
2024年12月20日18億91百万円8億00百万円+10億91百万円
2025年12月20日19億35百万円15億29百万円+4億05百万円
2026年3月20日15億40百万円16億18百万円△78百万円
2026年6月20日15億75百万円16億02百万円△27百万円
2026年9月20日14億41百万円16億20百万円△1億79百万円

出典:各期の決算短信の貸借対照表から筆者が算出(有利子負債=短期借入金+1年内返済予定の長期借入金+長期借入金)。現金及び預金には定期預金を含みます。

この表のポイントは、約2年で、借金より現金の多い会社から、現金より借金の多い会社に変わったことです。差額の動きは約12億70百万円で、主な行き先は次のとおりです。

  • 販売用不動産:0円(2024年12月期末。旧基準では投資不動産の一部)→12億23百万円
  • 賃貸用の土地・建物:有報の賃貸等不動産の帳簿価額は、2024年12月期末の7億30百万円から2025年12月期末の13億46百万円へ増えました(期中の新規取得6億92百万円)
  • 系統用蓄電所:2026年6月30日に取得を決め、2027年1月の稼働を予定。建設仮勘定が9か月で2億77百万円増えています(決算短信の説明)
  • 暗号資産:2025年7月に「年間10億円」の購入枠を設定し、2025年12月期に1億円を購入。2025年12月期末の帳簿価額は81百万円
  • 太陽光発電所:2024年12月に小豆島の発電所を取得(機械及び装置として計上)

一方、靴の在庫(商品)は2年前の6億64百万円から6億22百万円へと減っていて、現金を吸ったのは靴ではありません。

用語メモ:担保に入っている資産 有報によると、2025年12月期末で販売用不動産2億91百万円、建物2億12百万円、土地10億99百万円が借入金などの担保に入っています(合計16億02百万円)。不動産を担保に借りて、不動産を買っている形です。

支払利息は四半期で8百万円台に

四半期支払利息
第1四半期(12/21〜3/20)6.7百万円
第2四半期(3/21〜6/20)8.1百万円
第3四半期(6/21〜9/20)8.3百万円
前年の9か月累計5.0百万円

出典:決算短信から筆者が差し引き。

第3四半期の8.3百万円を4倍すると年約33百万円で、9月20日時点の有利子負債16億20百万円に対して約2.1%になります(筆者の概算)。前期の通期の支払利息(7.4百万円)の4倍以上です。利息は営業利益の下で効くので、靴の部門が赤字のまま不動産の在庫を借入で抱え続けると、経常段階の赤字が営業段階より膨らむ構造になります。2025年12月期末の借入金の大半は短期借入金(10億95百万円)で、借り換えのたびに金利の上昇が効く形です。

暗号資産:評価損益が四半期ごとに振れる

四半期暗号資産の評価損益
第1四半期△19.7百万円
第2四半期△8.1百万円
第3四半期+19.2百万円
9か月累計△8.6百万円

出典:決算短信と2026年10月23日の開示から筆者が差し引き。

有報によると、暗号資産は期末の市場価格による時価法で評価されています。上期の累計で27百万円あった評価損が、第3四半期の相場の戻りで8百万円まで縮みました。会社は10月23日の開示で、この評価損を「営業外費用」の項目として別に説明しています。期末(12月20日)の相場しだいで、経常利益は上にも下にも振れます。修正後予想の経常利益(△1億円)が、暗号資産の相場をどう置いているかは開示されていません。

特別調査費用14百万円

第1四半期に計上された特別調査費用14百万円について、会社は第1四半期決算短信で次のように書いています(原文)。

一部不動産取引の内容確認等のため外部専門業者に依頼した際の費用14百万円を特別調査費用として計上

どの取引について、何を確認したのか、確認の結果どうなったのかは、筆者が確認した範囲の開示には書かれていません。第2・第3四半期に追加の計上はありません(9か月累計も14百万円)。この記事では、この費用と特定の取引・取引先を結びつけません。

不動産の含み益

一方で、不動産には帳簿に出ていない価値もあります。有報の賃貸等不動産の注記では、2025年12月期末の帳簿価額13億46百万円に対し、期末時価は18億19百万円とされ、差額は約4億73百万円です(時価は主に不動産鑑定士の調査価格または固定資産税評価額を調整した価額。新規取得の物件は帳簿価額を時価としています)。2025年12月期の賃貸損益は44百万円でした。

この含みは、売れば利益になりますが、売るまでは利益になりません。そして第4章で見たように、今期の予想の売上は、まさにその「売ること」に寄っています。

3つの深掘りを1本の線でつなぐ

  • 第3章:靴の部門は、上期は円安による原価(値段)で、6〜9月は売れる量で利益を失いました。問屋としての2つの弱みが、半年ずつ順番に出た形です
  • 第4章:修正後の予想は、残り3か月に前年の約1.3倍の売上を置いており、靴の勢いを当てはめると、その相当部分を不動産の売上で埋める計算になります
  • 第5章:その不動産を仕入れるために、約2年で約11億円のネットキャッシュが約1.8億円のネット借入に変わり、支払利息が経常利益を押し下げ始めています

帳場の現金で部屋を仕入れた問屋は、靴が売れない時期に、部屋を売ることで帳尻を合わせようとしている、という読み方が成り立ちます。それが計画どおりに進むか(強気)、引き渡しの時期と借入の重さが逆に効くか(弱気)は、12月20日までの3か月で分かります。


6. 筆頭株主と不動産事業

筆頭株主は不動産会社

項目内容
名称株式会社フロンティアグループ(東京都千代田区)
事業内容不動産事業・投資アドバイザリー事業
当社との関係その他の関係会社(2025年4月25日に異動を確認)
議決権比率19.35%(直接18.57%、合算対象0.79%。2025年12月20日時点、2026年3月2日の開示)
大株主表の持株比率18.55%(944,000株。自己株式を除く発行済株式に対する割合)
役員の兼任同社代表取締役の金子嘉德氏と、同社取締役の山形秀樹氏が当社の社外取締役
同社の株主金子嘉德氏が100%保有

出典:2025年4月25日「その他の関係会社の異動に関するお知らせ」、2026年3月2日「支配株主等に関する事項について」、2026年10月16日「非上場の親会社等の決算情報に関するお知らせ」、2025年12月期有価証券報告書。

2025年4月25日の開示で、会社はフロンティアグループを「その他の関係会社」とした理由として、議決権の保有、社外取締役2名の存在に加え、新規の不動産事業の意思決定に対して重要な影響を与えうることを挙げています。

筆頭株主との取引

有報の関連当事者情報には、次の取引が載っています。

期取引の内容取引金額備考
2024年12月期不動産の購入2億40百万円購入価額は「市場価額等を勘案し交渉により決定」(有報の注記)
2024年12月期出向者の受入7百万円—
2025年12月期出向料の支払4百万円不動産部への出向者1名

2024年7月24日の開示によると、この不動産は東京都中央区晴海の「HARUMI FLAG」の2戸で、取締役会では利害関係のある取締役2名が決議に加わっていません。2025年12月期には、固定資産売却益1億57百万円が特別利益に計上されています(2025年12月4日の開示。どの物件の売却益かの対応は、筆者は本記事では確認していません)。

非上場の親会社等の決算

フロンティアグループは上場していないため、上場規程に基づいて同社の決算の要約が毎年開示されます。2026年7月期の数字は次のとおりです。

項目2026年7月31日時点・2026年7月期
総資産165億02百万円
うち棚卸資産77億26百万円
短期借入金52億47百万円
純資産24億92百万円
売上高67億25百万円
営業利益7億25百万円
当期純利益2億30百万円

出典:2026年10月16日「非上場の親会社等の決算情報に関するお知らせ」。決算期は7月で、東邦レマック(12月20日締め)とは異なります。

筆頭株主自身も、借入で不動産の在庫を持つ不動産会社です。東邦レマックの不動産事業がこの株主の知見を取り入れて始まったことは、会社自身の開示から読み取れます。一方で、2026年3月2日の開示で会社は、この関係が当社独自の経営判断の支障にはならず、一定の独立性が確保されていると説明しています。

用語メモ:合算しないもの 大株主表には、第3位に金子将幸氏(神戸市須磨区、11.59%)がいます。2026年6月15日に戦略的業務提携を発表した靴の企画・卸の株式会社オークラ商会(神戸市長田区)の代表者も金子将幸氏で、当社の社外取締役だった同氏は、2026年4月24日付で取締役(靴事業統括部長)になっています(同日の人事異動の開示)。ただ、筆頭株主の代表者(金子嘉德氏)と姓が同じであることや、所在地が近い株主(株式会社ヌル:神戸市長田区)がいることだけで、親族関係・資本関係があるとは言えません。そうした関係を示す開示を筆者は確認できていないので、この記事では持株比率を合算しません。また、第1四半期の特別調査費用(一部不動産取引の内容確認)も、特定の取引先と結びつけません。

オークラ商会との取引

有報の関連当事者情報では、オークラ商会は「役員が代表権を有している会社」として、2025年12月期に商品の仕入3百万円(取引条件は他の取引先と同様)、出向料の受取2百万円が記載されています。2026年6月15日の提携では、商品の企画開発・販路・物流の協力を掲げ、当社から同社に社外取締役を1名出して取引の公正性を監督するとしています。会社は今期業績への影響は軽微としています。


7. 資本政策と株主還元

配当:赤字予想でも年11.4円を据え置き

決算期1株配当(分割後換算)うち中間EPS(分割後換算)配当性向配当の決め方
2021年12月期11.4円5.7円——方針文言(安定配当)
2022年12月期10.6円5.3円——同上
2023年12月期10.6円5.3円△26.65円計算できない(赤字)同上
2024年12月期11.2円5.5円24.44円45.8%同上(期中に増配修正)
2025年12月期11.4円5.7円3.44円331.4%同上
2026年12月期(予想)11.4円5.7円(支払済み)△10.89円(予想)計算できない(赤字予想)同上

出典:会社IRサイトの株主還元ページ(2021〜2024年12月期は分割前の実額。筆者が10で割って換算)、各期の決算短信。2021年・2022年12月期のEPSは本記事では確認していません。

会社の配当方針は、有報で次のように書かれています(原文)。

株主への長期的な利益還元を重要と考え、安定かつ充実した配当を行うことを基本とし、配当性向の向上に努める一方、企業体質強化のため、内部留保を充実させることにあります。

この表のポイントは、利益の上下にかかわらず、1株配当は10.6〜11.4円の幅に収まってきたことです。方針文言の「安定かつ充実した配当」が、実績の推移と一致しています。配当性向の数字は、黒字の年でも45.8%から331.4%まで振れており、配当性向で配当を決めている会社ではありません。

今期の配当総額は、自己株式を除く株数(5,088,200株)×11.4円=約58百万円です(半期ごとに5,088,200株×5.7円=29,002千円。前期の有報に載った中間・期末の配当総額29,002千円と同じ計算で再現できます)。9月20日時点の利益剰余金は25億08百万円あり、その約43年分に当たります。強気に読めば「赤字の年が続いても、配当を払う余力はまだ厚い」、弱気に読めば「利益で賄えない配当を、積み上げてきた剰余金から払っている」の両方になります。自己資本に対する配当の比率(DOE)は約1.3%です。

用語メモ:配当の権利付き最終日 期末配当の基準日は12月20日ですが、2026年12月20日は日曜日です。基準日が休日の場合は直前の営業日(12月18日(金))を起点に2営業日さかのぼるので、**期末配当と優待の権利付き最終日は2026年12月16日(水)**です。「12月末」ではない点に注意してください。中間(2027年6月20日、日曜日)の権利付き最終日は2027年6月16日(水)です。

配当の決定機関は、中間配当が取締役会、期末配当が株主総会です(有報の配当政策)。

株主優待:QUOカード(年2回)

東邦レマックには株主優待があります。2025年5月1日に、自社サイトの割引クーポンからQUOカードに切り替えました。有報の「株主に対する特典」欄(2025年12月期)の内容は次のとおりです。

保有株数12月20日(期末)6月20日(中間)年間合計1株当たり優待額優待利回り(505円)
100〜299株なしなし0円0円0%
300〜499株500円なし500円1.0〜1.67円最大0.33%
500〜999株500円500円1,000円1.0〜2.0円最大0.40%
1,000〜1,999株1,000円1,000円2,000円1.0〜2.0円最大0.40%
2,000〜2,999株1,500円1,500円3,000円1.0〜1.5円最大0.30%
3,000〜4,999株2,000円2,000円4,000円0.8〜1.33円最大0.26%
5,000〜9,999株3,000円3,000円6,000円0.6〜1.2円最大0.24%
10,000株以上5,000円5,000円10,000円1.0円以下最大0.20%

出典:2025年12月期有価証券報告書「提出会社の株式事務の概要」。1株当たり優待額と利回りは筆者の算出(各区分の下限〜上限の株数で計算)。

この表のポイントは3つです。

  1. 100株(単元)では優待はもらえません。 最低でも300株(10月23日終値で約15万円)が必要で、中間の優待は500株からです
  2. 1株当たりの優待額が最も高いのは、500株と1,000株ちょうど(2.0円)です。 999株では1.0円まで下がり、1,000株に1株足すと2.0円に戻ります。同じように、499株は500株より1株当たりが低くなります。区分の境目のすぐ下で持つと、1株当たりの優待額が半分になる設計です
  3. 1株当たりの優待額(最大2.0円)は、1株配当(11.4円)の6分の1程度です。 優待を含めた利回りは、500株・1,000株ちょうどで約2.65%、配当だけなら2.26%です

なお、Yahoo!ファイナンスの優待欄(大和インベスター・リレーションズ提供)には、12月の優待について「上記に加え、追加贈呈300株以上500円分」という表記があり、読み方によっては500株以上の株主に12月だけ500円が上乗せされるようにも読めます。有報の記載は上の表のとおりで、12月の300株以上の500円は「300〜999株の区分の額」と読めます。会社IRサイトの株主還元ページには優待の記載が見当たらなかったため、会社サイトでの突き合わせはできていません。正確な区分は会社IRに確認するのが確実です。

優待の費用は開示されていません。2025年12月20日時点の株主数は1,038名なので、仮に全員が年500〜2,000円の区分にいたとしても、年0.5〜2百万円程度です(100〜299株の株主は対象外なので、実際はこれより小さい可能性があります。筆者の試算)。営業損益の規模に比べて小さく、制度の継続性を左右する金額ではないと見られます。優待の継続条件(保有期間)は、有報には記載がありません。

株数・自己株式・希薄化

  • 発行済株式5,120,700株、自己株式32,500株(0.63%)。今期の自己株式の取得はありません
  • 潜在株式はありません(決算短信の潜在株式調整後EPSは記載なし、有報の1株当たり情報の注記で「潜在株式が存在しない」と明記)。株価情報サイトのEPS・PERの分母の問題は起きにくい会社です
  • 2024年12月21日に1株を10株に分割しています。分割前の配当・EPSと比べるときは10で割る必要があります

保有有価証券

9月20日時点の投資有価証券は4億32百万円(純資産の約9.9%)で、2025年12月期末から57百万円減りました。その他有価証券評価差額金も26百万円減っています。〈評価差額金の減少÷(1−法定実効税率)〉を計算すると約39百万円で、投資有価証券の減少(57百万円)の約7割が時価の下落、残りが償還・売却等と読めます(筆者の概算。売却の有無は四半期では開示されていません)。

「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載

2025年12月期の有報の「事業等のリスク」には、「継続企業の前提に関する重要事象等」が記載されています。会社は、2023年12月期まで7期連続の営業損失、6期連続の当期純損失だったこと、2025年12月期も営業損失を計上したことを挙げたうえで、主な要因は翌期に取り扱いを中止する商品の評価損で一時的なものであり、「継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められない」と判断しています。対応策として、在庫管理の高度化、商品ポートフォリオの最適化、粗利益率の改善、月次での業績・在庫の確認を挙げています。

第3四半期決算短信の「継続企業の前提に関する注記」は「該当事項はありません」です。

用語メモ:「重要事象等」と「注記」の違い 有報の「継続企業の前提に関する重要事象等」は、事業の継続に疑いを生じさせるような事象があることの記載です。そのうえで重要な不確実性が認められる場合に、財務諸表に「継続企業の前提に関する注記」が付きます。東邦レマックは前者の記載があり、後者はありません。両者は別物です。

今期も営業損失の予想になったため、2026年12月期の有報(2027年3月提出予定)でこの記載がどうなるかが確認点になります。現時点の自己資本比率は64.2%で、財務の体力そのものはまだ厚い水準です。

流動性

2025年12月20日時点の株主数は1,038名、うち個人株主は969名で、個人の持株比率は69.60%です。月間の出来高は、2026年に入ってからは月6万〜47万株程度で推移しています(2026年1月は5.9万株、9月は47.3万株。Yahoo!ファイナンスの月足で確認)。暗号資産の購入枠を発表した2025年7月は、月間527万株の出来高と954円の高値を付けました。1日の出来高が数千株の日も多く、売買したいときに思った値段で売買できない可能性がある銘柄です。


8. 株価の見方

株価の基準点

項目値
株価(2026年10月23日終値)505円
時価総額(発行済株式数ベース)約25億86百万円
時価総額(自己株式控除後)約25億69百万円
PBR(9月20日時点の1株純資産861.32円)約0.59倍
予想PER計算できない(純利益予想が赤字)
配当利回り(年11.4円)約2.26%
2026年の高値・安値600円(10月5日)・351円(8月4日ほか)

出典:株価は東京証券取引所の終値(Yahoo!ファイナンスで確認)。指標は筆者の計算。

決算と修正の発表は10月23日(金)15時30分、取引終了と同時刻なので、10月23日の終値505円は決算への反応を含んでいません。最初に反応が出るのは10月26日(月)です。同日夜の夜間取引(PTS)では482円(東証終値比△4.55%、23時36分時点、出来高400株)が付いていますが、取引量が小さく、翌営業日の値動きと一致するとは限りません(報道ベース)。

株価の時系列が開示と一致するかも確かめておきます。前期の決算短信の「時価ベースの自己資本比率」38.6%に総資産67億05百万円を掛け、自己株式控除後の株数で割ると約508.7円で、2025年12月19日(期末日の前営業日)の終値509円と一致します。前々期(43.7%)でも同じ計算で約524円となり、2024年12月20日の終値525円(分割調整後)と一致します。

直近の値動き(事実だけ)

9月25日に424円だった株価は、9月29日に出来高25.7万株で485円、10月2日に出来高9.5万株で593円まで上がり、10月5日に600円の高値を付けたあと、10月23日には505円まで戻しています。10月2日の15時30分には9月の月次報告(売上は前年同月比81.3%)が出ていますが、10月2日の上昇は取引時間中のことで、開示の前です。上昇の理由について会社の開示はなく、この記事では理由を推測しません。

強気の読み方

  • PBR約0.59倍で、純資産の4割引きの値段です。 さらに、有報の賃貸等不動産の注記では帳簿価額より約4億73百万円高い時価が示されています。税金(法定実効税率31.52%)を引いた含みは1株あたり約64円です(筆者の試算。売らなければ実現しません)
  • 残り3か月の利益の置き方は控えめです。 営業利益はほぼゼロしか置いておらず、不動産の売却が予定どおり進めば、上振れの余地はあります
  • 靴の在庫は前年より3割少なく、前期のような大きな評価損が繰り返されるリスクは小さくなっています
  • 配当は利益と関係なく11.4円前後で続いてきた実績があり、利益剰余金は配当の約43年分あります
  • 系統用蓄電所が2027年1月に稼働予定で、会社は2027年12月期以降の収益への寄与を見込んでいます

弱気の読み方

  • 靴の部門は、6〜9月の3か月で売上△14.9%、赤字△69百万円と、2年続けて悪化幅が広がっています。 本業の部分が縮んでいます
  • 残り3か月の予想売上は前年同期の約1.3倍で、靴の勢いを当てはめると不動産の売却への依存度が高い計算になります。 引き渡しの時期が12月20日を越えれば、売上は来期にずれます。過去2期とも、第3四半期時点の予想は第4四半期の売上を半分から3分の2しか達成していません
  • ネットキャッシュはネット借入に変わり、支払利息は前年の4倍以上のペースです。借入の大半は短期で、金利上昇の影響を受けやすい構成です
  • 暗号資産の評価損益で経常利益が振れ、第1四半期には一部不動産取引の内容確認のための特別調査費用が出ています。本業以外の要素が、利益の見通しを読みにくくしています
  • 有報には「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載があり、今期も営業損失の予想です

同じ「不動産の売却」が、強気側では上振れの源泉、弱気側では依存先として出てきます。どちらの読みも数字は同じで、違うのは12月20日までに引き渡しが進むかどうかです。


9. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るポイント
2026年10月26日(月)決算発表後の最初の取引日10月23日15時30分の発表への反応
2026年11月上旬10月度の月次業績報告靴の売上が9月(前年同月比79.5%)からどこまで戻るか。不動産の売上
2026年12月上旬11月度の月次業績報告同上。不動産の大口の引き渡しが月次に出るか
2026年12月16日(水)期末配当・優待の権利付き最終日基準日は12月20日(日)。「12月末」ではない
2026年12月20日(日)期末暗号資産の評価、販売用不動産の引き渡しの締め
2027年1月12月度の月次業績報告、北海道幕別町の蓄電所の稼働予定第4四半期の着地の速報。蓄電所の稼働時期
2027年1月下旬2026年12月期決算(過去2年は1月28〜31日に期末後の修正と決算)第4四半期の売上15億07百万円・営業利益2百万円の予想に対する着地。2027年12月期の予想の置き方
2027年3月中旬定時株主総会、有価証券報告書「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載の有無、賃貸等不動産の時価、関連当事者取引

見るべきKPI

  • 靴の月次売上の前年比(9月は79.5%。婦人靴90.7%、紳士靴57.9%、ゴム・スニーカー・その他78.1%)
  • 不動産事業の月次売上(9月は15百万円。第4四半期に数億円規模の引き渡しが出るか)
  • 販売用不動産の残高(9月20日時点12億23百万円。売れれば減り、現金か借入返済に変わる)
  • ネットキャッシュ(現預金−有利子負債)(9月20日時点△1億79百万円)
  • 支払利息の四半期額(第3四半期8.3百万円)
  • 月次の総利益率(9月は28.3%で前年同月と同水準)

10. 3行まとめ

  • 東邦レマックは、海外の工場に作らせた靴を卸してきた問屋が、帳場の現金で不動産を仕入れて売り始めた会社で、10月23日に通期予想を営業利益88百万円→△76百万円に下方修正しました。過去2期は通期予想を期末後にしか修正しなかった会社が、今期は期中に動かしています
  • 靴の部門は、上期は円安による原価で、6〜9月は売れる量で利益を失い、6〜9月の売上は前年比△14.9%、赤字は△69百万円まで広がりました
  • 修正後の予想は残り3か月に前年同期の約1.3倍の売上(15億07百万円)を置いており、靴が前年並みでも不動産の売上が約3.7億円、靴の今の勢いを当てはめると約4.8〜6億円要る計算になります(筆者の試算)。そのための不動産は、約2年でネットキャッシュ約11億円をネット借入約1.8億円に変えて仕入れたものです

免責事項

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値は、東邦レマックの決算短信(2024年12月期〜2026年12月期第3四半期)、業績予想の修正に関するお知らせ、特別利益の計上・固定資産の取得・保有目的の変更・業務提携・その他の関係会社の異動・支配株主等に関する事項・非上場の親会社等の決算情報・暗号資産の購入枠に関する各適時開示、月次業績報告、2025年12月期有価証券報告書、会社IRサイトの株主還元ページに基づいています。株価は東京証券取引所の終値をYahoo!ファイナンスで確認したもので、夜間取引(PTS)の価格は報道ベースです。四半期の数字は累計からの筆者の差し引き、試算・概算は筆者によるものです。以下の点にご注意ください。

  • 当四半期(6月21日〜9月20日)について、決算補足説明資料・決算説明会はありません。2026年12月期中間決算の決算説明動画は、執筆時点で会社サイトのニュース一覧に見当たらず、反映していません。本文の会社の説明は、各四半期の決算短信と適時開示の記載によるもので、当四半期についての会社の追加説明・質疑応答は一切反映していません
  • 第4四半期の売上の靴と不動産への割り振り、不動産の利益率、靴の部門の第4四半期の赤字幅に関する記述は筆者の試算で、会社の見通しではありません
  • 建設仮勘定の増加を北海道幕別町の蓄電所の分とした点、前期第4四半期の粗利率の低下を棚卸資産評価損によるとした点、第3四半期の粗利率の低下を主に靴の側によるとした点、投資有価証券の減少の内訳は、筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません
  • 特別調査費用の対象となった取引の内容・結果は開示されておらず、筆者は把握していません。特定の取引・取引先と結びつけていません
  • 姓が同じ株主・役員、所在地が近い株主について、親族関係・資本関係を示す開示を確認できなかったため、持株比率を合算していません
  • 株主優待の区分は有価証券報告書の記載によります。株価情報サイトの表記には異なる読み方ができるものがあり、会社IRサイトには優待の記載が見当たりませんでした。優待の費用は開示されておらず、本文の金額は筆者の試算です
  • 2024年12月期の数字は、会計方針の変更(不動産事業の収益・費用の処理方法)の前後で2通りあります。達成履歴の2024年12月期は旧基準、それ以外は組み替え後の数字を使っています
  • 決算発表は取引終了と同時刻(15時30分)で、10月23日の終値は決算への反応を含みません。夜間取引の価格は取引量が小さく、翌営業日の値動きと一致するとは限りません
  • 本記事は、有価証券報告書の監査報告書(監査上の主要な検討事項)を確認していません

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

-株式投資