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太洋テクノレックス(6663) 染め物の型を彫っていた技で、電子機器の試作品の配線を最短3日で彫って届けている会社 利益はもう通期予想を超えたのに、なぜ予想は据え置かれたのか?【2026年10月発表・第3四半期決算】

本記事は2026年10月29日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 太洋テクノレックスの第3四半期累計(2025年12月21日〜2026年9月20日)は、売上28億88百万円(前年同期比+10.3%)、営業利益1億39百万円(前年同期は33百万円の損失)。営業利益はすでに通期予想1億21百万円を超え、進捗率は115.4%。一方、売上の進捗率は59.3%にとどまる
  • 9か月の営業増益1億72百万円を「数量・率・販管費」に分けると、約6割(1億07百万円)が粗利率の改善。セグメント別では増益の4分の3が電子基板で、会社は外に作らせていた分(委託量産)が減り、自社の工場で作る分が増えたことを理由に挙げている
  • この会社の売上の実績は、過去3期とも期初予想を12〜18%下回り、通期予想は期中は据え置き、期末を過ぎた1月下旬に実績へ合わせて修正されてきた。2025年・2026年の期初予想は、中期経営計画の初年度の数字と同額
  • 据え置かれた通期予想を第4四半期(9月21日〜12月20日)に引き直すと、売上19億85百万円(前年同期比+75.1%)と営業損失19百万円という組み合わせになる。これは会社が赤字を予想したのではなく、据え置きの計算上の結果
  • 時価総額は約18.6億円で、9月20日時点の現預金18億67百万円とほぼ同じ。ただし退職給付に係る負債などを含む負債合計は21億93百万円ある
  • 東証スタンダード市場の上場維持基準(流通株式時価総額10億円)は、2025年12月20日時点で10.18億円と、基準を1.8%上回って適合した

1. 前提知識:染め物の型を彫っていた職人が、試作品の配線を彫っている

1-1. どんな会社か

太洋テクノレックスは和歌山市に本社を置く会社で、1960年に染め物(捺染)用のロールに模様を彫り、めっきをかける仕事から始まりました。この「金属の表面に細かい模様を刻む」技術を、プリント配線板づくりに応用したのが今の主力事業です。

主力製品は**FPC(フレキシブルプリント配線板)**です。

用語メモ:FPC ポリイミドなどの薄く曲がるフィルムの上に銅の配線を作った基板。スマートフォン、カメラ、内視鏡や補聴器などの医療機器のように、狭いすき間に配線を通したい機器で使われる。銅の表面に保護膜を焼き付け、不要な部分を薬品で溶かして(エッチング)配線を残す。

この会社が得意なのは、量産ではなく試作です。有価証券報告書によると、配線パターンの設計から最終検査まで(部品の実装を除く)を社内で一貫して行い、パターン設計を含めて受注から最短3日で納品できる体制を持っています。お客さんは主にメーカーの研究・商品開発部門で、新製品を開発する途中で「この形の配線を、まず数枚」という注文が来ます。

本記事では、この会社を次のように例えます。

「染め物の型を彫っていた技で、電子機器の試作品の配線を最短3日で彫って届けている会社」

この例えは、強みと弱みを同じ一文から説明できます。

観点例えの中で決算書のどこに出るか
強み設計から彫り上げまで自分の工房でやるので、早い。自分の手で彫る割合が高いほど儲かる電子基板事業の粗利率(委託量産の比率が下がると上がる)
弱み①何を、いつ、何枚試作するかは、客の開発部門が決める。工房は決められない売上の数量。会社予想の売上が毎年外れる理由(第4章)
弱み②工房の脇で売る「道具」(検査機・研磨機・自動化装置)は、客が据え付けて検収するまで売上にならないテストシステム・鏡面研磨機・産機システムの売上の時期。修正理由の「検収時期のずれ」(第5章)

1-2. 4つの事業と、利益がどこで消えているか

事業は4つのセグメントに分かれています。セグメント利益は全社費用を配る前の数字なので、連結の営業利益とは「全社費用(調整額)」の分だけ違います。

2025年12月期(百万円)売上高構成比セグメント利益利益率売上を計上する時点
電子基板(FPC)2,40964.2%50020.8%出荷時
テストシステム(基板検査機)45012.0%△33—検収時
鏡面研磨機(子会社ミラック)44511.9%7015.8%検収時
産機システム(FA・ロボット・仕入販売)44511.9%409.0%検収時(機械装置)
セグメント合計3,751100%57715.4%—
全社費用など(調整額)——△434——
連結営業利益3,751—1423.8%—

出所:2025年12月期決算短信・有価証券報告書のセグメント情報と収益認識の注記(百万円未満切捨て)。利益率は筆者の計算。売上の計上時点は国内販売の原則で、輸出の一部は貿易条件に応じて計上される。

この表のポイントは2つです。

  • 稼いでいるのはほぼ電子基板だけです。セグメント利益の合計5億77百万円のうち5億00百万円が電子基板で、そこから全社費用4億34百万円が引かれて、連結の営業利益は1億42百万円になります
  • 電子基板以外の3事業は、売上を「客が検収した時点」で計上します。機械が1台納まるかどうかで四半期の売上が大きく動きます(弱み②)

用語メモ:決算期と四半期の月 この会社の決算期は12月20日締めです(12月21日〜翌年12月20日)。月末締めではないので、本記事では四半期を日付で書きます。第1四半期=12月21日〜3月20日、第2四半期=3月21日〜6月20日、第3四半期=6月21日〜9月20日、第4四半期=9月21日〜12月20日。なお、タイの子会社は10月31日決算の数字を、上海の子会社は11月30日の仮決算の数字を使って連結しています(有価証券報告書)。

1-3. 5期の業績推移

回次(12月期)20212022202320242025
売上高(百万円)3,9173,6253,4113,5193,751
営業利益(百万円)121△27△141△54142
経常利益(百万円)25345△108△47158
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)24139△126△79136
1株当たり当期純利益(円)40.846.70△21.28△13.3522.84
自己資本利益率(ROE)9.7%1.5%△4.9%△3.2%5.3%
自己資本比率53.5%55.0%54.8%55.0%58.4%
1株当たり配当(円)5.003.003.003.006.00
従業員数(連結)245234228209192
株主総利回り(配当込みTOPIX)113.0%(110.6%)98.3%(111.4%)86.0%(140.9%)72.0%(165.9%)64.9%(212.9%)

出所:2025年12月期有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」(金額は千円の開示を百万円未満切捨て。営業利益は同書「事業等のリスク」の表から。株主総利回り・配当は提出会社の指標)。2025年12月期の配当6円は記念配当3円を含む。

2023年・2024年は営業赤字で、2025年に4期ぶりに黒字へ戻りました。会社は2025年2月に希望退職者を募集しており、従業員数は2年で36人減っています。株主総利回りは5年で64.9%(同じ期間の配当込みTOPIXは212.9%)です。

1-4. 会社予想の達成履歴

この会社の予想を読むうえで、最初に知っておきたいのが過去の外れ方です。

期期初予想の売上(前期比)期初予想の営業利益上期予想の修正日通期予想の修正日実績の売上(期初予想比)実績の営業利益
2023年12月期4,144(+14.3%)41未確認2024年1月29日3,411(△17.7%)△141
2024年12月期3,994(+17.1%)442024年7月29日2025年1月30日3,519(△11.9%)△54
2025年12月期4,471(+27.1%)612025年7月29日2026年1月29日3,751(△16.1%)142
2026年12月期4,873(+29.9%)1212026年7月29日—9か月で2,8889か月で139

単位:百万円。出所:各期の決算短信と「業績予想の修正に関するお知らせ」。期初予想比の増減率は修正開示の会社表記。2023年12月期の期初予想の前期比は筆者の計算。2023年12月期の上期予想の修正の有無は本記事では確認していない。

この表のポイントは3つです。

  • 売上の実績は、3期続けて期初予想を12〜18%下回りました。期初予想の前期比は+14.3%→+17.1%→+27.1%→+29.9%と年々大きくなり、実績の前期比は△5.9%→+3.2%→+6.6%でした
  • 通期予想は、期中に一度も修正されていません。3期とも、期末日(12月20日)を過ぎた翌年1月下旬、決算発表の前日に、実績とほぼ同じ数字へ修正されています
  • 営業利益の外れ方は向きが変わりました。2023年・2024年は予想を下回り、2025年は予想の2.3倍で着地しました

用語メモ:期末後の修正 決算期が終わってから決算発表までの間に出る修正は、残り期間の見通しではなく、ほぼ確定した実績の速報として読むものです。この会社では、期中の「据え置き」が会社の見通しについて持っている情報は少ない、という前提で予想を読む必要があります(第4章)。


2. 決算ハイライト(2026年10月26日15時30分発表)

2-1. 損益

第3四半期累計(百万円)2025年12月期2026年12月期増減
売上高2,6182,888+10.3%
売上総利益712893+181
売上総利益率27.2%30.9%+3.7pt
販売費及び一般管理費745753+1.1%
営業利益△33139黒字転換
経常利益△31139黒字転換
特別利益590前年は投資有価証券売却益など
特別損失448ほぼ全額が早期割増退職金
親会社株主に帰属する四半期純利益△2974黒字転換
1株当たり四半期純利益(円)△4.9512.35—

出所:2026年12月期第3四半期決算短信(百万円未満切捨て)。率は千円の開示から筆者が計算。

ポイントは2つです。

  • 売上の伸び(+10.3%)に対して、販管費はほぼ横ばい(+1.1%)でした。売上総利益の増加1億81百万円が、ほぼそのまま営業利益の改善になっています
  • 前年は特別利益と特別損失が大部分で打ち消し合っていました。前年同期の特別利益59百万円(政策保有株式の売却益44百万円など)は、希望退職の割増退職金44百万円の補填に充てると会社が説明していたものです。今期は特別利益がなく、割増退職金は8百万円です(第1四半期の短信は、連結子会社で計上したと説明)

税金費用は、通期の見積実効税率を税引前利益に掛ける方法で計算されており、9か月の税負担率は37.1%(48百万円÷1億30百万円)です。

用語メモ:見積実効税率方式 四半期の税金を、その年の税引前利益の見込みに対する税率で計算する方法。短信の注記に書かれている。この方式の会社では、四半期の税負担率は会社が見込む通年の税負担率に近い。

2-2. 財政状態

百万円2025年12月20日2026年9月20日増減
現金及び預金1,2571,867+610
受取手形及び売掛金1,001665△335
棚卸資産(商品・仕掛品・原材料)325354+29
投資有価証券394625+230
短期借入金(1年内返済の長期借入金を含む)290500+210
長期借入金280288+8
退職給付に係る負債533541+8
純資産2,6982,925+227
自己資本比率58.4%56.4%△2.0pt

出所:同短信(百万円未満切捨て)。棚卸資産の合計は筆者の計算。

ポイントは3つです。

  • 売掛金の減少と現預金の増加は、前期の第4四半期の売上を回収した結果です。前期末の売掛金は、第4四半期の売上が大きかった分だけ膨らんでいました(前期の営業キャッシュ・フローは61百万円のマイナス)
  • 投資有価証券の増加2億30百万円は、ほぼ値上がりで説明できます。その他有価証券評価差額金の増加1億55百万円を(1−法定実効税率30.5%)で割ると2億23百万円で、繰延税金負債も73百万円増えています。中心は紀陽銀行の株式です(第6章)
  • 現預金が増える中で、短期借入金も2億10百万円増えています。上半期のキャッシュ・フロー計算書では、定期預金の純増が3億97百万円ありました

第3四半期はキャッシュ・フロー計算書が作られていません。9か月の減価償却費は80百万円(前年同期93百万円)です。

2-3. 会社は第4四半期をどう説明しているか

この会社は決算補足説明資料を作っておらず、決算説明会も開いていません。会社の説明は短信の文章だけです。通期予想について、会社は次の趣旨を書いています。

  • 第4四半期に、電子基板事業の受注増加と、テストシステム事業の検査装置などの売上増加を見込んでいる
  • 利益は収益性の改善などで当初予想を上回って推移している
  • ただし第4四半期に見込む案件の受注・検収の時期に不確定な要素があり、売上計画の達成見込みを「合理的に見積もることが困難」なので、通期予想は据え置く

つまり会社は、利益が予想を超えていることを認めたうえで、売上の見通しが立たないことを理由に据え置いた、ということです。この「据え置き」をどう読むかが本記事の問いです。


3. 深掘り①:9か月の増益1億72百万円は、どこから来たのか

最初に、すでに出ている利益の中身を確かめます。会社予想の読み方(第4章・第5章)は、ここで分かった「利益の出方」を前提にします。

3-1. 数量・率・販管費に分ける

9か月の営業利益の増減(百万円)金額計算
数量効果(売上が増えた分)+73.5売上の増加270.2×前年の粗利率27.20%
率効果(粗利率が上がった分)+107.8今期の売上2,888.4×(30.93%−27.20%)
販管費の増減△8.6753.9−745.4
合計+172.8実際の増減:139.6−(△33.1)=172.8

出所:短信の千円単位の数字から筆者が計算。各項目は四捨五入。

増益の約6割が率効果です。売上が10%伸びたことより、同じ売上からより多くの粗利が残るようになったことの方が効いています。

用語メモ:数量・率・販管費の3分解 営業利益の増減を、①売上が増えた分(前年の粗利率のまま売上だけ増えたら、粗利はいくら増えたか)、②粗利率が変わった分、③販管費が変わった分、の3つに分ける方法。3つの合計は実際の営業利益の増減と一致する。

3-2. セグメント別に分けても同じ答えになる

9か月(百万円)売上(前年→今年)前年比セグメント利益(前年→今年)増減
電子基板1,707→2,026+18.7%306→436+130.6
テストシステム220→289+31.7%△87→△48+39.2
鏡面研磨機320→344+7.4%52→71+19.5
産機システム370→227△38.4%27→8△18.7
調整額——△331→△329+2.1
合計(営業利益の増減)———+172.8

出所:短信のセグメント情報(金額は百万円未満切捨て、増減は千円から筆者が計算)。

2つの分け方の合計はどちらも1億72百万円で一致します。そして答えは同じで、増益の4分の3(1億30百万円)は電子基板です。電子基板のセグメント利益率は、9か月で17.9%→21.6%に上がりました。

会社は電子基板の増益理由を、委託量産品が減り、社内で製造した製品の売上が増えたことによる粗利率の上昇、と説明しています。これは有価証券報告書の収益の分解でも確かめられます。

電子基板事業の売上の内訳(百万円)2024年12月期2025年12月期
FPC製造(自社工場)2,0412,265
FPC委託量産(外部に製造を委託)225143
自社工場の比率90.1%94.0%
電子基板のセグメント利益率14.7%20.8%

出所:有価証券報告書の収益認識の注記とセグメント情報。比率は筆者の計算。2026年12月期の内訳は四半期では開示されていない。

これが軸の「強み」の数字です。工房の外に彫らせていた分を自分の手に戻すほど、1枚あたりに残るお金が増える。2025年12月期はこの比率が4pt上がり、利益率は6pt上がりました。

3-3. 11四半期を並べる

累計しか開示されないので、単独の四半期は筆者が引き算で出しています。

単独四半期(百万円)売上粗利率販管費販管費率営業利益営業利益率
2024年 第1四半期865.831.4%270.531.2%1.80.2%
2024年 第2四半期894.425.0%260.229.1%△36.2△4.1%
2024年 第3四半期997.930.1%269.427.0%31.23.1%
2024年 第4四半期761.128.0%264.134.7%△50.8△6.7%
2025年 第1四半期783.928.2%280.635.8%△59.5△7.6%
2025年 第2四半期823.329.1%237.428.8%2.10.3%
2025年 第3四半期1,011.124.9%227.422.5%24.32.4%
2025年 第4四半期1,133.436.3%236.120.8%175.715.5%
2026年 第1四半期820.833.4%249.630.4%24.22.9%
2026年 第2四半期961.932.2%250.626.0%59.26.2%
2026年 第3四半期1,105.728.0%253.722.9%56.25.1%

出所:各四半期の決算短信の累計から筆者が差し引き(千円から計算し、小数第1位を四捨五入)。2024年・2025年の4四半期の合計は、通期の開示値と一致することを確認済み。年は決算期(12月期)の年。第1四半期は前年12月21日から。

この表から読めることは3つです。

  • 販管費は、希望退職のあと1四半期あたり2億27百万〜2億54百万円の水準に下がりました(2024年は2億60百万〜2億71百万円)。会社は2026年3月の資料で、この固定費の適正化は一過性ではなく翌期以降も続くと書いています
  • 今期の3つの四半期は、すべて営業黒字です。前の2年(8四半期)で営業黒字は5回で、うち2回は利益率1%未満でした
  • 2025年の第4四半期だけ、営業利益が1億75百万円と突出しています。1四半期で通期の営業利益(1億42百万円)を上回りました

ここで注意したいのは、第4四半期の形です。

第4四半期(9月21日〜12月20日)売上営業利益営業利益率
2023年12月期907.0△3.1△0.3%
2024年12月期761.1△50.8△6.7%
2025年12月期1,133.4175.715.5%

出所:通期と第3四半期累計の決算短信から筆者が差し引き(百万円)。

第4四半期が大きく稼いだのは、3年のうち前期の1回だけです。2023年・2024年の第4四半期は赤字でした。「第4四半期に稼ぐ季節性がある会社」とは言えません。前期の第4四半期は、電子基板が701.9百万円(セグメント利益1億94百万円、利益率27.7%)、テストシステムが2億31百万円(同53百万円)と、両方が同時に跳ねた四半期でした。

3-4. 今期の第3四半期単独は、粗利率が下がった

2026年12月期 単独第1四半期第2四半期第3四半期
連結の粗利率33.4%32.2%28.0%
電子基板の売上(百万円)650.0673.1703.3
電子基板のセグメント利益率24.4%20.3%20.1%
産機システムの売上(百万円)28.439.3160.1

出所:短信の累計から筆者が差し引き。

第3四半期単独の営業利益は56百万円で、前年同期(24百万円)の2.3倍です。ただし前の四半期と比べると、連結の粗利率は4.2pt下がりました。電子基板の利益率は第1四半期の24.4%から20%台前半へ戻っており、粗利率の低い産機システムの売上(仕入販売を含む)が第3四半期に増えています。どの売上の変化がどれだけ粗利率を動かしたかは、製品別の粗利率が開示されていないので確かめられません。

第3章のまとめ:今期の利益は、売上の数量より「自社で作る割合」と「下がった固定費」から来ています。利益の出方は前の2年と変わりました。では、会社の予想はその変化をどう織り込んでいたのでしょうか。


4. 深掘り②:この会社の「期初予想」は何を表しているのか

第3章で見た利益の改善は、会社の予想の上振れとして現れています。では、予想そのものはどう作られているのか。過去の予想の置き方から確かめます。

4-1. 期初予想は、中期経営計画の初年度の数字と同じ

この会社は、2025年2月7日と2026年3月9日に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」という資料を出し、その中で3年間の業績計画を示しています。並べると次のようになります。

百万円(EPSは円)2025年12月期2026年12月期2027年12月期2028年12月期
旧計画(2025年2月7日)売上4,4715,0215,468—
旧計画 営業利益61167289—
旧計画 EPS5.2819.9836.78—
新計画(2026年3月9日)売上実績3,7514,8735,4255,822
新計画 営業利益実績142121230292
新計画 EPS実績22.8412.5028.5836.14
決算短信の期初予想(売上/営業利益)4,471/614,873/121——

出所:各資料の業績計画のグラフのラベル(筆者が読み取り)と決算短信。旧計画の数値は資料のグラフのラベルから読んだもので、2025年12月期の値が同期の期初予想と一致することで裏を取った。

この表のポイントは3つです。

  • 2年続けて、短信の期初予想と計画の初年度が、売上・営業利益とも百万円単位まで一致しています。この会社の期初予想は「その年に作った見通し」というより、「3か年計画の1年目の数字」として読むのが自然です
  • 2026年3月の作り直しで、利益の水準は下がり、目標の年は後ろにずれました。2026年12月期の営業利益は167→121百万円(△27.5%)、2027年12月期は289→230百万円(△20.4%)に下がり、EPS 36円台は2027年→2028年に1年後ろへ動きました
  • 新計画の初年度(今期)の営業利益121百万円は、前期の実績142百万円より15.1%低い水準です。会社は、設備投資と人材の採用・育成、人事制度改革を含む人的資本への投資で人件費などが増えるため減益と説明していました

会社は、2025年12月期の振り返りで、計画と実績を自ら並べています。

2025年12月期計画実績差
売上高(百万円)4,4713,751△16.1%
売上総利益(百万円)1,1591,124△3.0%
売上総利益率25.9%30.0%+4.1pt
営業利益(百万円)61142+132.6%

出所:2026年3月9日「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について(更新版)」。

売上は16%届かず、粗利は3%しか届かず、粗利率は計画より4pt高かった。計画は「売上が大きく伸び、粗利率は低い」形で置かれ、実際は「売上は伸びず、粗利率が高い」形で着地しました。2つの外れが打ち消し合い、利益は計画を上回りました。会社はこの資料で、売上は計画未達、損益は人件費の抑制と収益構造の改善で計画を上回った、と自ら総括しています。

これは軸の弱み①そのものです。工房は、客がいつ何を試作するかを決められません。計画の売上は、工房が埋めたい予定表であって、客の開発部門が出す注文書ではない、と読むことができます。

4-2. 修正は毎年同じ時期に、同じ形で出ている

期7月29日の上期予想の修正(売上)上期の売上の達成率通期予想の扱い通期の修正日
2024年12月期1,797→1,76098.0%据え置き2025年1月30日
2025年12月期2,058→1,60778.1%据え置き2026年1月29日
2026年12月期2,150→1,78282.9%据え置き—

出所:各年の「第2四半期累計期間業績予想の修正に関するお知らせ」(いずれも7月29日、上期決算発表の前日)。達成率は筆者の計算。

3年とも、上期決算の前日に上期予想だけを実績に合わせて修正し、通期は据え置いています。据え置きの理由として、会社は3年とも「売上高計画の達成見込み」が「不透明」という趣旨の文を書いており、2026年の第3四半期短信では表現が「合理的に見積もることが困難」に変わりました(比べている相手は7月の修正開示で、前年の第3四半期短信は「変更なし」とだけ書いていたので、同じ種類の書類どうしの比較ではありません)。表現の変化が何を意味するかは、開示からは判断できません。

修正理由の中身は、2025年と2026年がよく似ています(2024年は電子基板の在庫調整だけが理由で、テストシステムは想定を上回っていました)。2025年と2026年の上期修正はどちらも、電子基板の一般試作・量産案件の受注が想定どおり進まなかったこと、産機システムで見込んでいたFA案件の検収が第3四半期以降にずれ込んだこと、テストシステムの外観検査機の販売が想定を下回ったことを、売上未達の理由に挙げています。電子基板の言い回しは「社内量産及び一般試作案件」(2025年)と「一般試作及び委託量産案件」(2026年)で少し違いますが、並ぶ3項目は同じです。軸で言えば、弱み①(客の試作の予定)と弱み②(道具の検収時期)が、2年続けて同じ形で出てくるということです。

用語メモ:業績予想の修正の適時開示 上場会社は、売上が直近の予想から10%以上、利益が30%以上ずれる見込みになったとき、修正を開示する決まりになっている(原則。細かい除外規定がある)。開示が出ていないことは、予想どおりであることを意味しない。この会社の通期予想が期中に修正されないのは、期中の時点では「見込み」が確定していないと会社が判断してきた、ということになる。

第4章のまとめ:期初予想は計画の1年目の数字で、期中は据え置かれ、期末後に実績へ合わせて直されてきました。計画と実績の粗利率を比べられる2025年12月期は、売上は高め・粗利率は低めに置かれていました。では、今期の据え置きは第4四半期に何を求めているのでしょうか。


5. 深掘り③:据え置かれた予想は、第4四半期に何を置いているのか

第4章で見たとおり、この会社の据え置きは会社の見通しを示す情報としては弱いものです。それでも、予想から9か月の実績を引くと、第4四半期に何が置かれている「計算になるか」は出せます。

5-1. 残り3か月の含み

百万円通期予想9か月実績進捗率予想が置いた第4四半期前年の第4四半期
売上高4,8732,888.459.3%1,984.61,133.4
営業利益121139.6115.4%△18.6175.7
経常利益113139.0123.0%△26.0190.0
親会社株主に帰属する純利益7574.599.3%0.5166.3

出所:通期予想と短信の千円単位の実績から筆者が計算。

据え置かれた予想を第4四半期に引き直すと、売上は前年同期の1.75倍(+75.1%)、営業利益は19百万円の損失という組み合わせになります。

用語メモ:据え置きによる計算上のマイナス 累計の利益が通期予想を超えたまま予想を据え置くと、残り期間の予想は計算上マイナスになる。会社が第4四半期の赤字を予想すると発表したわけではない。この会社は「利益は当初予想を上回って推移している」と書いたうえで据え置いており、利益の行は機械的な結果として読む。

前年同時点と比べると、前期は第3四半期時点の進捗率が売上58.6%・営業利益は赤字で、今期とほぼ同じ売上進捗のまま、営業利益だけが予想を超えています。

5-2. 過去3期の第3四半期時点の置き方と、実際の第4四半期

期予想が置いた第4四半期の売上前年の第4四半期比予想が置いた第4四半期の営業利益実際の第4四半期の売上(達成率)実際の第4四半期の営業利益
2023年12月期1,639.5—179.8907.0(55.3%)△3.1
2024年12月期1,235.8+36.3%47.3761.1(61.6%)△50.8
2025年12月期1,852.8+143.4%94.11,133.4(61.2%)175.7
2026年12月期1,984.6+75.1%△18.6——

出所:各期の通期予想(第3四半期時点で据え置かれていた期初予想)と短信の累計から筆者が計算(百万円)。

この表のポイントは2つです。

  • 第4四半期の売上は、3期とも予想が置いた額の55〜62%で着地しています。今期に同じ達成率を当てると第4四半期の売上は約11億〜12億円、通期では約40億〜41億円になります(筆者の試算で、将来の見通しではない)
  • 一方で利益は、置き方と実際の関係が年によって逆です。2023年・2024年は利益も届かず、2025年は売上が61%しか届かないのに利益は置いた額の約1.9倍でした。今期は、利益の置き方が初めてマイナスになっています

同じ数字は両側に読めます。強気側に読めば「会社の売上計画が届かなくても、前期は第4四半期に大きく稼いだ」。弱気側に読めば「第4四半期の売上は毎年計画の6割前後で、前期の大きな利益は2023年・2024年には起きていない」。どちらの読みも、表の数字は同じです。

5-3. セグメント別に見ると、何に一番大きく置いているか

2026年3月の資料には、電子基板事業の計画(売上・営業利益)がグラフで示されています。2024年と2025年の値が短信の実績と一致することを確かめたうえで、2026年の計画を使います。

百万円2026年計画9か月実績第4四半期に必要前年の第4四半期必要な前年比
電子基板 売上3,0282,026.31,001.7701.9+42.7%
電子基板 セグメント利益455436.918.1194.6—
電子基板以外の3事業 売上(連結計画−電子基板計画)1,845862.1982.9431.6+127.7%

出所:2026年3月9日の資料のグラフのラベル(筆者が読み取り。2024年・2025年の値は短信と一致)と短信のセグメント情報。電子基板以外の計画は筆者の差し引き。

計画の第4四半期で最も重いのは、電子基板以外の3事業です。テストシステム・鏡面研磨機・産機システムの合計で、前年の第4四半期の2.3倍の売上が置かれています。この3事業は、検収した時点で売上を計上する「道具」の事業です(軸の弱み②)。会社が短信で、第4四半期の受注時期・検収時期に不確定な要素がある、と書いているのは、この部分だと読むことができます(筆者の解釈)。電子基板の第3四半期単独の売上は7億03百万円で、計画どおりなら第4四半期にそこから約3億円の上積みが要ります。

なお、前期末の受注残高は6億18百万円(有価証券報告書。うち電子基板3億30百万円、テストシステム77百万円、鏡面研磨機72百万円、産機システム1億37百万円)でしたが、四半期ごとの受注残高は開示されていません。

5-4. 第4四半期の売上と利益率で、通期の営業利益はどうなるか

第4四半期の売上 → / 第4四半期の営業利益率 ↓△1%0%5%10%15.5%(前年並み)
1,133(前年並み)128140196253315
1,417(前年比+25%)125140210281359
1,700(前年比+50%)123140225310403
1,985(会社予想の置き方、+75%)120140239338447

単位:百万円。通期営業利益=9か月実績139.6+第4四半期の売上×営業利益率。筆者の試算で、将来の見通しではない。参考までに、過去3年の第4四半期の営業利益率は△0.3%、△6.7%、15.5%、今期の3つの四半期は2.9%、6.2%、5.1%。

この表で見たいのは、会社予想121百万円が表のどこにあるかです。121百万円に近いのは、営業利益率△1%の列だけです。第4四半期が損益ゼロでも通期は140百万円になり、予想を上回ります。

修正開示の基準に当てはめると、次のようになります(筆者の計算)。

  • 売上は、通期で4,386百万円(予想の90%)を下回ると基準に触れます。第4四半期で14億97百万円が必要で、前年の第4四半期(11億33百万円)並みなら通期は40億22百万円(予想比△17.5%)です
  • 営業利益は、通期で157百万円(予想の130%)を超えると基準に触れます。第4四半期で18百万円の営業利益が出れば超えます

どちらの場合も、第4四半期の数字しだいで修正開示の基準に届く位置にあります。過去3年、この会社は期末後の1月下旬に通期の修正を出してきました。

5-5. 3つの深掘りを1本の線でつなぐ

  • 第3章:利益は「自分の工房で彫る割合」と「軽くなった固定費」から出ていて、売上の数量にはあまり頼っていない
  • 第4章:会社予想は3か年計画の1年目で、売上は3期続けて期初予想を下回った。比べられる2025年12月期は、計画が「売上が大きく伸び、粗利率は低い」形、実際が「売上は伸びず、粗利率は高い」形だった
  • 第5章:今期も同じ形のまま、利益だけが先に予想を超えた。据え置きは、売上計画(客の試作の予定と道具の検収)が見通せないことの表明で、利益の見通しを示すものではない

この会社の業績を追うときの物差しは、会社予想の利益よりも、四半期ごとの売上と粗利率、1四半期あたり2億50百万円前後の販管費の3つ、と整理できます。


6. 資本政策・株主還元

6-1. 株主優待

株主優待制度はありません。会社IRサイトのQ&Aに「現在、株主優待は実施しておりません」とあり、2025年12月期の有価証券報告書の「株主に対する特典」欄も「該当事項はありません」で、両者は一致しています。

6-2. 配当

12月期1株配当内訳配当の決め方(会社の説明)連結配当性向
2021年5円普通安定配当を基本に収益に応じて12.2%
2022年3円普通同上44.8%
2023年3円普通同上(純損失)—
2024年3円普通同上(純損失)—
2025年6円普通3円+記念3円創立65周年・上場20周年の記念配当26.3%(普通配当だけなら13.1%)
2026年(予想)3円普通同上24.0%
2027年(計画)6円—中計の計画(配当性向21.0%)—
2028年(計画)8円—中計の計画(配当性向22.1%)—

出所:有価証券報告書、決算短信、2026年3月9日の資料。2021年・2022年の配当性向は同資料の表、普通配当だけの配当性向は筆者の計算。

配当方針は、安定的な配当の継続を基本に、内部留保の充実や配当性向などを総合的に勘案して収益状況に応じて還元する、というものです。中期経営計画のKPIは「配当性向20.0%以上(2028年12月期)」です。会社は2025年12月期に配当性向26.3%でKPIを「達成」と自己評価していますが、これは記念配当込みの数字です。

方針の文言と実績を並べると、純損失の2年も3円を維持し、利益が出た2025年は記念配当を上乗せし、今期は3円に戻す、という動きです。今期の配当総額は約18百万円(3円×自己株式を除く606万株)で、9か月の純利益74百万円の約4分の1です。

  • 期末配当の基準日は12月20日です。2026年12月20日は日曜日なので、直前の営業日12月18日(金)から2営業日さかのぼった12月16日(水)が権利付き最終日です(筆者の計算)
  • 定款上は6月20日を基準日とする中間配当ができますが、実際の配当は期末の1回だけです
  • 期末配当の決定機関は株主総会です(有価証券報告書)

6-3. 株数と潜在株式

項目内容
発行済株式総数6,062,400株(2026年9月20日)
自己株式6,227株(自己株式の取得は行っていない)
潜在株式なし(有報に新株予約権の記載なし。短信の潜在株式調整後EPSは記載なし)
2026年4月3日の新株発行譲渡制限付株式報酬として取締役4名に70,000株(発行価額324円、総額22,680,000円)

出所:短信、有価証券報告書、2026年3月18日の適時開示。

譲渡制限付株式の発行価額324円は、取締役会決議日の直前営業日(2026年3月17日)の終値です。譲渡制限期間は30年で、2028年3月の定時株主総会までの期間の報酬として割り当てられています。発行による株数の増加は1.17%で、9か月のEPS(12.35円)の分母は期中平均の6,029,859株です。

6-4. 大株主

株主(2025年12月20日)株数比率(自己株式を除く)
株式会社細江ホールディングス1,600,00026.73%
細江正大(代表取締役社長)348,6005.82%
株式会社SBI証券233,0643.89%
小川由晃179,0002.99%
太洋テクノレックス従業員持株会157,8242.64%
細江美則(取締役会長)99,9201.67%

出所:2025年12月期有価証券報告書。

有価証券報告書には、細江正大氏が細江美則氏の実子であることが書かれています。一方、株式会社細江ホールディングスと両氏の関係(資本関係など)を示す記載は、本記事で読んだ書類の中では確認できなかったので、持株比率を合算していません。同社の所在地は当社の本社と同じですが、それだけでは関係を判断しません。会社は有報で、支配株主を有していないと書いています。

細江正大氏は2025年11月26日、保有株式のうち10万株を、希望する従業員に無償で贈与すると開示しました(贈与予定日は2025年12月)。目的は、創立65周年・上場20周年にあたっての感謝と、従業員の経営参画意識を高めることとされています。

6-5. 上場維持基準:基準をわずかに上回って適合

基準日株主数流通株式数流通株式時価総額流通株式比率
2023年12月20日2,166人26,005単位9.18億円43.6%
2024年12月20日2,339人31,342単位8.47億円52.3%
2025年12月20日3,008人37,596単位10.18億円62.7%
スタンダード市場の基準400人以上2,000単位以上10億円以上25%以上

出所:2026年1月30日「上場維持基準への適合に関するお知らせ」。

この会社は、流通株式時価総額が基準に届かない状態が続いていましたが、2025年12月20日時点ですべての基準に適合しました。会社は取り組みとして、株式の立会外分売と大株主の保有株式の売却を促す取り組み、記念配当などを挙げています。

日付内容株数価格
2024年5月15日立会外分売(目的:流通株式数の改善)200,000株304円
2025年11月11日立会外分売(目的:流通株式時価総額の適合に向けた流通株式数の改善)299,600株257円
2025年12月代表取締役社長から従業員への株式贈与(予定数)100,000株無償

出所:各適時開示。分売の開示には売出人の記載がないため、本記事では売出人を特定していない。

適合したとはいえ、10.18億円は基準の10億円を1.8%上回っただけでした。流通株式時価総額は、基準日以前3か月間の終値の平均で計算されます。2025年の開示値を流通株式数で割ると、判定に使われた平均株価は約271円です。次の基準日(2026年12月20日)について、流通株式数が前回と同じ376万株なら、10億円に必要な3か月平均の株価は約266円で、10月28日の終値307円はそれを約15%上回っています(筆者の概算。流通株式数の変動や規則の細部は確認していない)。

6-6. 政策保有株式

2025年12月20日時点で上場株式6銘柄を保有し(計上額3億61百万円)、その約99%が紀陽銀行(110,000株、3億58百万円)です。2025年12月期には政策保有株式1銘柄を一部売却し、売却益44百万円を特別利益に計上しました。9月20日時点の投資有価証券6億25百万円の増加分は、前述のとおりほぼ値上がりで説明できます。

6-7. 時価総額と手元の現金を並べる

2026年9月20日時点総額1株当たり
時価総額(10月28日終値307円×自己株式を除く株数)18.59億円307円
現金及び預金18.67億円308円
現預金−有利子負債(短期・長期借入金)10.78億円178円
現預金−負債合計△3.26億円△54円
同+投資有価証券2.99億円49円
1株当たり純資産(BPS)28.89億円477円

出所:短信の貸借対照表から筆者が計算(株数6,056,173株)。

時価総額は、現預金とほぼ同じ水準です。ただし、負債合計(21億93百万円)を引くとマイナスになります。負債の中で大きいのは、退職給付に係る負債5億41百万円、役員退職慰労引当金1億64百万円、借入金7億89百万円です。この表は、手元の現金を株主に返す場合に限って意味を持つ計算です。現金は事業の運転資金や設備投資にも使われ、会社が還元を約束しているわけではありません。会社は2026年3月の資料で、2026年〜2028年の3年間に得る営業キャッシュ・フローを成長投資と株主還元に配分する方針を示しています。


7. 株価の見方

7-1. 決算発表前後の値動き

決算は2026年10月26日(月)の15時30分、取引終了と同時刻に発表されました。当日の終値には決算への反応は含まれていません。

日付始値高値安値終値出来高
10月23日(金)31831830731117,300株
10月26日(月)発表日309336309327171,200株
10月27日(火)最初の反応日311318304309170,500株
10月28日(水)30931030430734,300株

出所:Yahoo!ファイナンスの時系列(東京証券取引所)。

10月26日は、決算発表の前に出来高が普段の10倍近くに膨らみ、高値336円を付けていますが、これは開示前の取引です。最初の反応日の10月27日は前日比△5.5%の309円で引けました。値動きの理由は書きません。

なお、10月8日には出来高418,100株・高値349円の日がありました。同日、会社サイトに「MSAP工法による4層FPC製造技術の確立」のお知らせが掲載されています(掲載時刻は未確認。業績予想への影響の記載はない)。

7-2. 開示書類から復元できる株価の基準点

経路出所株価時系列との照合
譲渡制限付株式の発行価額2026年3月18日の適時開示324円(3月17日終値)一致
会社が資料で使った株価2026年3月9日の資料244円(2025年12月19日)一致
有報の株価収益率×EPS10.7倍×22.84円約244円(2025年12月期末)一致
短信の時価ベースの自己資本比率×総資産÷株数32.0%×45.70億円÷598.6万株約244円(同)一致
立会外分売の価格2025年11月11日257円前日終値265円

出所:各開示書類と筆者の計算。

7-3. 指標

指標(10月28日終値307円)値計算の前提
時価総額約18.6億円自己株式を除く6,056,173株
予想PER24.6倍会社予想EPS 12.50円
経常利益予想を法定実効税率で割り戻したPER23.7倍113百万円×(1−30.5%)÷株数=12.97円
直近4四半期の純利益によるPER7.7倍2025年第4四半期166百万円+今期9か月74百万円=241百万円
PBR0.64倍9月20日の自己資本28.89億円
予想配当利回り0.98%年3円

出所:筆者の計算。

予想PERと直近4四半期のPERが3倍以上離れているのは、会社予想(第4四半期を損益ほぼゼロで置いた計算)と、前期の第4四半期の大きな利益という、どちらも極端な数字を分母にしているからです。どちらか一方だけを見ると、この会社の割安・割高は大きく違って見えます。

7-4. 強気と弱気

強気の材料

  • 粗利率の改善は「自社工場で作る割合」という構造的な理由で説明でき、販管費は希望退職後の水準で安定している(第3章)
  • 9か月で営業利益は通期予想を超えており、第4四半期が損益ゼロでも通期は予想を上回る計算(第5章の感応度表)
  • 時価総額は現預金とほぼ同じで、PBRは0.64倍
  • 前期は第4四半期に1億75百万円の営業利益を出しており、テストシステムの検査装置の検収がまとまれば、同じ形が再び起こる余地がある
  • 中期経営計画で配当を3円→6円→8円に引き上げる計画を示している

弱気の材料

  • 売上の実績は3期続けて期初予想を12〜18%下回り、第4四半期の売上は毎年予想の6割前後で着地してきた。会社予想は業績の物差しとして使いにくい(第4章・第5章)
  • 前期の第4四半期の大きな利益は、2023年・2024年の第4四半期(いずれも赤字)には起きていない。季節性とは言えない
  • 今期の第3四半期単独の粗利率は前の四半期から4.2pt下がり、電子基板の利益率も第1四半期の水準から戻っている
  • 中期経営計画は2025年2月版から2026年3月版への作り直しで、営業利益の水準が下がり、目標の年が1年後ろにずれた
  • 時価総額と同じ規模の現預金があっても、退職給付などを含む負債合計を引くとマイナスになる
  • 流通株式時価総額は前回の判定で基準を1.8%上回っただけで、株価の水準によっては次の判定が近くなる。普段の出来高は1日数千〜4万株程度で、売買したいときに思った値段で売買できない可能性がある(9月の月間出来高293,900株を営業日19日で割ると1日約1万5千株、筆者の概算)

軸に戻すと、この会社の株価を考えるうえでの問いは、「工房の手で彫る割合が上がって残るようになったお金」が、客の試作の予定という自分では決められない量の上でどこまで続くか、ということになります。


8. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るポイント
2026年12月16日(水)期末配当(予想3円)の権利付き最終日基準日12月20日は日曜日
2026年12月20日(日)期末日/上場維持基準の基準日10〜12月の終値の平均
2027年1月下旬通期予想の修正の有無(過去3年は1月29日・30日)修正後の売上と営業利益
2027年1月下旬2026年12月期決算短信(過去3年は1月30日・31日)/2027年12月期の期初予想期初予想が中期経営計画の2027年(売上54億25百万円・営業利益2億30百万円)と同額かどうか
2027年1月下旬上場維持基準への適合状況の開示(前回は1月30日)流通株式時価総額
2027年2〜3月中期経営計画(資本コストの資料)の更新(前回は3月9日)計画の作り直しの有無と水準
2027年3月有価証券報告書・定時株主総会(前回は3月17日・18日)受注残高、収益の分解(自社製造と委託量産)、大株主、KAM
見るべきKPI今回の値物差し
第4四半期の売上予想の置き方1,985百万円前年1,133百万円、過去3年の達成率55〜62%
電子基板の第4四半期の売上計画の置き方1,001.7百万円前年701.9百万円、今期第3四半期703.3百万円
単独四半期の粗利率第3四半期28.0%今期33.4%→32.2%→28.0%
1四半期あたりの販管費第3四半期253.7百万円2025年第2四半期以降は227〜254百万円
電子基板の自社製造の比率2025年12月期94.0%2024年12月期90.1%(有報で年1回)
受注残高2025年12月期末618百万円有報で年1回

9. 3行まとめ

  • 9か月の営業利益1億39百万円はすでに通期予想を超えた。増益の約6割は粗利率の改善、セグメント別では4分の3が電子基板で、会社は自社製造品の増加を理由に挙げている
  • 会社の期初予想は中期経営計画の1年目の数字で、売上の実績は3期続けて期初予想を12〜18%下回り、通期は期中に据え置かれて期末後の1月下旬に直されてきた。今期の据え置きを第4四半期に引き直すと「売上+75%・営業損失19百万円」になるが、これは計算上の結果
  • 時価総額は現預金とほぼ同じ約18.6億円。追うべきは会社予想の利益ではなく、四半期ごとの売上・粗利率・販管費の3つ

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、太洋テクノレックス株式会社の決算短信(2024年12月期第1四半期〜2026年12月期第3四半期)、有価証券報告書(2025年12月期)、業績予想の修正に関するお知らせ(2024年1月〜2026年7月の各回)、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」(2025年2月7日・2026年3月9日)、上場維持基準への適合に関するお知らせ、立会外分売・株式贈与・譲渡制限付株式に関する各適時開示、会社IRサイトのQ&A・ニュースです。株価は東京証券取引所の終値(Yahoo!ファイナンスで確認)です。単独四半期・3分解・残り期間・感応度表・時価総額などの比率や金額は、開示値から筆者が算出したもので、感応度表と達成率を当てはめた試算は将来の見通しではありません。この会社は当四半期について決算補足説明資料を作成しておらず、決算説明会も開いていないため、本文の会社説明は決算短信の文章に基づき、会社の追加説明・質疑応答は一切反映していません。中期経営計画の数値(2025年2月7日の旧計画、2026年3月9日の資料の電子基板事業の計画)は資料のグラフのラベルから筆者が読み取ったもので、旧計画は要約を経由して読み、2025年12月期の値が期初予想と一致すること、電子基板の2024年・2025年の値が短信と一致することで裏を取っています。第3四半期の粗利率の低下の理由、第4四半期の不確定要素が電子基板以外の3事業にあるという読み方は筆者の推測・解釈で、会社の開示に基づくものではありません。株式会社細江ホールディングスと経営陣の関係、立会外分売の売出人は、本記事で読んだ書類では確認できず、合算・特定していません。上場維持基準の次回判定の試算は流通株式数を前回と同じと仮定したもので、規則の細部は原文で確認していません。10月8日の会社サイトのお知らせは掲載時刻を確認していません。2023年12月期の上期予想の修正の有無は確認していません。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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