株式投資

【2026年10月発表・第1四半期決算】サカタのタネ(1377)増収なのに営業24%減益――円安で膨らんだのは売上だけではなかった。会社予想は残り9か月に何を置いているのか?

本記事は2026年10月7日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

サカタのタネ(1377、東証プライム、5月決算)が2026年10月6日15時30分に、2027年5月期の第1四半期(2026年6〜8月)決算を発表しました。売上高は前年同期比7.2%増の246億70百万円、営業利益は24.1%減の33億87百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は38.4%減の22億39百万円です。

「増収減益」と一言でまとめると、売上は伸びたがコストが重くなった、という話に見えます。ところが会社の補足資料を読むと、売上の増加16億64百万円は、為替換算による押し上げ17億76百万円より小さい。つまり現地通貨ベースでは、売上はわずかに減っています。そして同じ円安は、販管費も10億73百万円押し上げていました。

この記事では、この3か月の数字を「為替」「前年の第1四半期が特別に強かったこと」「会社予想が残り9か月に置いている前提」の3つに分けて読んでいきます。

この記事でわかること

  • 売上+7.2%は為替換算の押し上げ(+17億76百万円)で説明でき、それを除くと売上は約0.5%減、販管費は約4.5%増であること(会社開示から筆者が計算)
  • 営業利益の減少10億75百万円を「数量」「粗利率」「販管費」に分けると、粗利率の低下(△6億39百万円)と販管費の増加(△15億97百万円)が増収の効果(+11億61百万円)を上回ったこと
  • 13四半期を並べると、前年の第1四半期(営業利益率19.4%)が13四半期で最も高い突出した3か月だったこと。2年前の第1四半期と比べると営業利益は+24.1%であること
  • 海外卸売事業のセグメント利益率は、前年同期比で4四半期続けて下がっていること(筆者の差し引き)
  • 会社予想(営業利益135億円)は残り9か月に前年同期間比+16.8%の増益を置き、その中身は「売上+5.0%・粗利率61.2%・販管費+1.2%」であること。第1四半期の販管費は+13.8%(為替を除いても約+4.5%)だったこと
  • 長期経営計画「PASSION2035」の株主還元方針(総還元性向60%目安)と、今期の自己株式取得枠が「株数上限」で先に止まる計算になること、2025年10月の自己株式公開買付けの相手が会長の資産管理会社だったこと

1. サカタのタネはどんな会社か:「設計図は日本で描き、種は1年半前から作り置き、売る先は世界の畑」

軸となる例え

スペインのトマト農家が、来シーズンに植える種を選ぶ場面を想像してください。農家が気にするのは「暑さに強いか」「病気に強いか」「市場が欲しがる形と味か」です。種の袋に書かれているのは、その性質を決めた品種、つまり植物の設計図の名前です。

サカタのタネは、この設計図(品種)を描き、その設計図どおりの種を畑で育てて採り、世界中の種苗会社や農家に卸す会社です。創業は1913年、横浜の坂田農園から始まりました(有価証券報告書の沿革)。今では売上の約8割が海外です。

この会社の仕事の流れを、強みと弱みが同じ一文から出る形で書くとこうなります。

  • 強み(設計図の価値):同じブロッコリーの種でも、性質の良い品種なら農家は高くても買う。だから売上総利益率(粗利率)は6割を超える。種苗業は「設計図を売る商売」に近い
  • 弱み①(時間):種は売る直前に作れない。採種地で育て、収穫し、検査し、倉庫で保管してから売る。だから1年半分ほどの在庫を先に抱えている。読みを外して売れ残れば、帳簿価額を切り下げる(評価損)
  • 弱み②(通貨):売る先の8割は海外で、海外子会社は現地通貨で稼ぎ、現地通貨で人を雇っている。円安は売上を膨らませるが、同じだけ現地の費用も膨らませる。しかも海外子会社の多くは3か月ずれた決算期で連結されている

この3つを、決算の数字で順番に回収していきます。

事業の構造(2026年5月期・通期)

セグメント主な中身外部売上高売上構成セグメント利益利益率
国内卸売事業国内の種苗会社等への野菜・花の種子、苗木、農園芸資材の卸131億93百万円12.7%48億35百万円36.6%
海外卸売事業本社と海外子会社による海外向けの種子・苗木の卸828億62百万円79.5%209億81百万円25.3%
小売事業ホームセンター向け・通信販売の家庭園芸40億62百万円3.9%△4億40百万円—
その他造園緑花(官公庁・民間の植栽工事、維持管理)、人材派遣41億61百万円4.0%1億84百万円4.4%
セグメント計—1,042億80百万円100%255億60百万円24.5%
調整額研究部門・サプライチェーン部門・本社管理部門の費用、未実現利益の消去——△124億37百万円—
連結営業利益—1,042億80百万円—131億22百万円12.6%

出典:2026年5月期決算短信のセグメント情報。売上構成・利益率は筆者の計算(利益率は外部売上高に対する比率)。株主優待:制度あり(§7で詳述)。

この表のポイントは2つです。

1つ目は、稼ぎの中心は海外卸売で、売上の約8割、セグメント利益の約8割を占めることです。

2つ目は、セグメント利益255億円のうち約124億円が「調整額」で消えることです。会社の注記によると、その大半(120億59百万円)は親会社の研究部門・サプライチェーン部門・本社管理部門の費用です。設計図(品種)を描く研究費が、どのセグメントにも配分されずにここに入っています。§1の軸で言えば、設計図を描くコストは本社がまとめて持ち、設計図で稼ぐのは各セグメントという形です。

用語メモ:セグメント利益と調整額 事業ごとの利益(セグメント利益)を足しても、連結の営業利益にはなりません。どの事業にも配分しない本社側の費用と、グループ内の取引で生じた在庫の利益(未実現利益)の消去が「調整額」として引かれます。サカタのタネの場合、研究部門の費用がここに入るので、調整額が営業利益とほぼ同じ大きさになっています。

直近5期の業績推移

決算期売上高経常利益純利益EPSROE1株配当配当性向
2022年5月期730億49百万円121億14百万円122億56百万円276.02円10.4%45円16.3%
2023年5月期772億63百万円123億04百万円94億89百万円213.98円7.2%55円25.7%
2024年5月期886億77百万円111億24百万円161億62百万円365.22円10.9%65円17.8%
2025年5月期929億20百万円123億11百万円97億11百万円222.58円6.0%75円33.7%
2026年5月期1,042億80百万円142億78百万円121億63百万円284.46円7.2%85円29.9%

出典:2026年5月期有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」(連結)。配当性向は長期経営計画資料に記載の連結配当性向。

売上は5年で約1.4倍になりましたが、経常利益は111億〜143億円の範囲で推移しています。純利益は年によって大きく振れており、2024年5月期の161億円には横浜市内の遊休地の売却益(固定資産売却益)が入っています(2024年2月16日の業績予想修正の開示)。純利益とROEは特別損益で上下しやすいので、本業の流れは営業利益で追うのがこの会社を見るときの前提です。

海外子会社は「3か月ずれて」連結されている

ここが、この会社の四半期決算を読むうえで最初に押さえるべき点です。有報の「連結子会社の事業年度等に関する事項」には次のように書かれています。

会社は次のように書いています(2026年5月期有価証券報告書) 連結子会社の決算日は、Sakata Seed Chile S.A.及び坂田種苗(蘇州)有限公司並びに坂田花彩園芸(嘉興)有限公司が12月末日、Sakata Seed America,Inc.及びSakata Ornamentals Europe A/S他25社が3月末日、その他の子会社は当社と同一です。

12月決算の3社も3月末で仮決算をしているので、主要な海外子会社はすべて「3月末」を区切りにした数字で連結されています。これを四半期に置き直すと次のようになります。

連結上の四半期親会社・国内子会社主要な海外子会社換算レート
第1四半期6〜8月4〜6月6月末の直物レート
第2四半期9〜11月7〜9月9月末の直物レート
第3四半期12〜2月10〜12月12月末の直物レート
第4四半期3〜5月1〜3月3月末の直物レート

出典:有報の上記注記と、決算短信の「財務諸表項目を各四半期決算日末(3、6、9、12月末)の直物為替レートで換算し、その都度洗替を行っております」という記載から筆者が整理。

つまり今回の「第1四半期」の海外の数字は2026年4〜6月の3か月分で、6月末の米ドル162.45円・ユーロ185.44円で円に直されたものです。前年同期は144.82円・169.64円でした。決算発表の時点(10月)の為替は、この数字にはまだ入っていません。

用語メモ:「洗替」の意味 累計の数字を、毎四半期末のレートで丸ごと換算し直す方法です。たとえば中間決算では、海外の4〜9月の6か月分が9月末のレートで換算し直されます。第1四半期に162円で換算した分も、9月末のレートで計算し直されるので、累計から差し引いた「単独の3か月」には、レート変更による調整が混ざります。本記事の四半期の差し引きはこの影響を含んだままの数字です。

長期経営計画「PASSION2035」(2026年7月13日公表)

項目2026年5月期実績2027年5月期会社予想2031年5月期目標2036年5月期目標
売上高1,043億円1,100億円1,400億円2,000億円
営業利益131億円135億円195億円350億円
営業利益率12.6%12.3%13.9%17.5%
当期純利益122億円100億円155億円280億円
ROE7.2%—8%以上10%以上
自己資本比率82.3%—60%台—
前提の為替レート—155円/米ドル・180円/ユーロ150円/米ドル・160円/ユーロ同左

出典:長期経営計画「PASSION2035」策定に関するお知らせ・同資料、2026年5月期決算短信。2026年5月期実績は億円未満四捨五入(会社表記)。

今期予想から2031年5月期目標までは、売上で年率+6.2%、営業利益で年率+9.6%が必要です(筆者の計算)。目標の前提為替(150円・160円)は、今期予想の前提(155円・180円)より円高です。為替前提が違うので、今期予想と2031年目標をそのまま比べると、必要な伸びは実際より小さく見えます。

会社はこの計画で初めて長期経営計画を公表し、5年間で約500億円の成長投資(うち費用計上分120億円)、借入と自己株式取得による財務レバレッジの引き上げ、棚卸資産回転率の改善を掲げました。§1の弱み①(在庫)に、会社自身が手を付けると宣言した形です。

今期予想のROEは、純利益予想100億円を期首と第1四半期末の自己資本の平均で割ると約5.5%です(筆者の計算)。前期の7.2%から下がる予想で、2031年5月期の8%以上とは距離があります。

会社予想の達成履歴:3年続けて、営業利益は期初予想「110億円」から始まっていた

決算期期初予想(営業利益)上期予想→上期実績期中の修正(開示日)通期実績期初予想比期初予想(純利益)→実績
2024年5月期110億円—純利益のみ80億→155億円(2024年2月16日、遊休地売却)104億95百万円△4.6%80億円→161億62百万円
2025年5月期110億円52億→56億72百万円(109.1%)純利益のみ80億→90億円(2025年1月14日)122億57百万円+11.4%80億円→97億11百万円
2026年5月期110億円50億→68億95百万円(137.9%)営業125億円・純利益100億円に上方修正(2026年1月13日)131億22百万円+19.3%90億円→121億63百万円
2027年5月期135億円60億円→(未発表)第1四半期時点でなし——100億円→(未発表)

出典:各期の決算短信、2024年2月16日・2025年1月14日・2026年1月13日の業績予想修正の開示。予想比・達成率は筆者の計算。2024年5月期の上期予想は本記事では確認していません。

この表のポイントは3つです。

  1. 営業利益の期初予想は3年続けて110億円で、実績は104億95百万円・122億57百万円・131億22百万円でした。直近2年は期初予想を上回り、その幅は+11.4%・+19.3%と広がっていました
  2. 修正のタイミングは毎回、上期決算と同じ日(1月中旬)です。期中の早い時点で予想を動かす会社ではありません
  3. 今期は期初予想そのものを135億円に引き上げ、過去3年の「110億円」の型から外れています。過去2年の上振れは「控えめな予想」から生まれたものでしたが、今期は同じ前提で読めるかどうかが論点になります(§4)

2. 第1四半期決算のハイライト

損益計算書(6〜8月)

科目2026年5月期 第1四半期2027年5月期 第1四半期増減率
売上高230億05百万円246億70百万円+7.2%
売上原価69億59百万円81億03百万円+16.4%
売上総利益160億45百万円165億67百万円+3.2%
売上総利益率69.7%67.2%△2.6pt
販売費及び一般管理費115億83百万円131億80百万円+13.8%
営業利益44億62百万円33億87百万円△24.1%
営業外収益6億30百万円6億62百万円—
営業外費用(うち為替差損)2億25百万円(94百万円)3億79百万円(1億47百万円)—
経常利益48億66百万円36億71百万円△24.6%
特別利益(受取和解金)5億50百万円——
特別損失(減損損失)9百万円20百万円—
税金等調整前四半期純利益54億06百万円36億50百万円△32.5%
法人税等17億55百万円14億02百万円—
親会社株主に帰属する四半期純利益36億37百万円22億39百万円△38.4%
1株当たり四半期純利益84.09円53.03円△36.9%

出典:2027年5月期第1四半期決算短信(百万円未満切捨て)。売上原価・税前利益・EPSの増減率は筆者の計算。

この表のポイントは3つです。

  • 売上+7.2%に対して営業利益△24.1%。粗利率が2.6pt下がり、販管費が13.8%増えたことが重なりました
  • 経常利益の減り方(△24.6%)が営業利益とほぼ同じなのは、営業外の動きが小さかったためです。為替差損は94百万円から1億47百万円に増えました
  • 純利益の減り方(△38.4%)が大きいのは、前年同期に受取和解金5億50百万円(特別利益)があったことと、税負担率が32.5%から38.4%に上がったことです。EPSの減少率(△36.9%)が純利益より小さいのは、自己株式取得で株数が減ったためです(期中平均株式数4,325万株→4,223万株)

為替を除くと、売上は横ばい、販管費は+4.5%

会社は短信と補足資料で、為替の影響額を売上高と販管費について開示しています。これを差し引くと、次のようになります。

項目前年同期当期(開示)うち為替換算の影響当期(為替影響を除く)前年比(為替影響を除く)
売上高230億05百万円246億70百万円+17億76百万円228億94百万円約△0.5%
販管費115億83百万円131億80百万円+10億73百万円121億07百万円約+4.5%

出典:為替の影響額は決算短信(売上高)と決算短信補足説明資料(販管費)。「為替影響を除く」は筆者の計算。

ここで§1の弱み②(通貨)が回収できます。円安は売上を17億76百万円押し上げましたが、同時に販管費も10億73百万円押し上げました。売上原価への為替の影響は開示されていないので、営業利益への為替の正味の影響は分かりません。仮に為替で増えた売上に当期の粗利率67.2%をそのまま当てると、粗利の押し上げは約11億93百万円、販管費の押し上げを引くと約1億20百万円のプラスにとどまります(筆者の粗い試算。海外の粗利率は連結と同じではないので、目安にすぎません)。

つまり、円安は「売上」の見た目を大きく変えるが、「営業利益」はあまり変えない、というのがこの会社の構造です。現地で稼ぎ、現地で払っているからです。

販管費の内訳では、人件費が71億10百万円(前年同期比+7億36百万円、うち為替+5億13百万円)でした。為替を除いた販管費の増加約5億24百万円の内訳を地域別に見ると、北中米・EMEA・南米が大きく、日本は+79百万円にとどまります(補足資料の「前期比増減」の地域別内訳。地域別の数値は為替影響を含みます)。

営業利益の減少を3つに分ける

要因計算金額
数量効果(売上の増加)売上増加額16億64百万円 × 前年粗利率69.7%+11億61百万円
率効果(粗利率の低下)当期売上246億70百万円 × 粗利率の差△2.59pt△6億39百万円
販管費の増加131億80百万円−115億83百万円△15億97百万円
合計—△10億75百万円(実際の減少と一致)

筆者の計算。百万円単位の開示値から計算しています(会社表記の減少額は△10億74百万円で、千円単位の内部値との差です)。

減益の主因は販管費の増加(△15億97百万円)で、その3分の2は為替換算によるものです。そして見落とせないのが、粗利率の低下による△6億39百万円です。会社は短信で「売上総利益率の低下」を減益理由に挙げていますが、低下の内訳(品目構成、評価損、採種コストなど)は説明していません。

セグメント別(6〜8月)

セグメント外部売上高前年比セグメント利益前年利益の増減
国内卸売事業44億41百万円+2.2%24億53百万円22億98百万円+1億55百万円
海外卸売事業180億35百万円+7.5%38億13百万円52億34百万円△14億20百万円
小売事業9億32百万円△1.0%△1億53百万円△2億10百万円+57百万円
その他(造園緑花等)12億60百万円+33.5%64百万円20百万円+43百万円
調整額——△27億90百万円△28億80百万円+89百万円
連結営業利益246億70百万円+7.2%33億87百万円44億62百万円△10億74百万円

出典:決算短信のセグメント情報、決算短信補足説明資料。

減益はほぼ海外卸売事業の1セグメントで説明できます(△14億20百万円)。国内卸売はトマト・キャベツの野菜種子、資材、花が伸びて増収増益、小売は赤字幅が縮小、造園緑花は河川敷の維持管理業務の新規受注などで増収でした。

海外卸売の外部売上高は+12億61百万円ですが、為替の押し上げ17億76百万円がすべて海外に入っていると仮定すると、為替を除いた海外の売上は約△3.1%です(筆者の概算)。会社も短信で「現地通貨ベースでは前年同期比で減収」と書いています。

地域別:現地通貨で見ると伸びたのはEMEAだけ

地域通貨2027年5月期 第1四半期前年比(現地通貨)会社が挙げた主な品目
日本円66億35百万円+6.5%トマト・キャベツ(新品種導入・再評価)、資材、パンジー・ビオラ
アジア・太平洋円32億92百万円△17.0%ネギ・ニンジンが販売時期の変更などで低調
うち韓国ウォン41億63百万ウォン△8.9%—
うちインドルピー2億84百万ルピー△21.7%—
北中米米ドル24,640千ドル△3.1%ペッパー・メロン好調、スイカ・トマト減少
EMEAユーロ43,554千ユーロ+8.9%トマトが大きく伸長、キャベツ・ペッパー・トルコギキョウ
南米レアル84,819千レアル△4.2%カボチャ・スカッシュ、ブロッコリー、トマト、ヒマワリが減少

出典:決算短信補足説明資料「販売先別外部売上高」、決算短信の地域別の説明。日本には造園緑花などの「その他」を含みます。

前年同期はこの逆で、北中米+21.3%・EMEA+13.8%・南米+33.4%と、各地域が大きく伸びた3か月でした(前年の補足資料。EMEAは今期の地域区分に組み替えた値)。前年同期の伸びが大きかった地域ほど、今期は現地通貨で減っています。

用語メモ:地域区分の変更 今期から、売上の分解が「品目別」から「野菜・花・環境の事業別」に、地域が「欧州・中近東+アフリカ→EMEA」「アジア+オセアニア→アジア・太平洋」に組み替えられました(補足資料p.12)。前期以前の資料と比べるときは、区分の違いに注意が必要です。

上期予想の「前年比」の分母が少し違う

細かい点ですが、記録しておきます。今回の第1四半期短信に載っている上期の会社予想(営業利益60億円)の前年比は△12.8%です。7月の通期短信では同じ予想が△13.0%と書かれていました。前年の上期実績68億95百万円で計算すると△13.0%なので、今回の△12.8%は約68億81百万円を分母にしていることになります(筆者の逆算)。前期に取得したブラジルのAgritu社の企業結合の会計処理が確定し、前年の数字が遡って修正された可能性がありますが、会社は理由を書いていません。確定値は半期報告書で確認できます。


3. 深掘り①:前年の第1四半期は「13四半期で一番強い3か月」だった

ここからの深掘りは、一つの問いを3段階で追います。「今回の24%減益は、通期の会社予想にとって何を意味するのか」。まずは、比べる相手(前年の第1四半期)がどういう3か月だったかを確認します。

累計しか開示されないので、各四半期の数字は筆者が累計から差し引いて出しました。第1四半期=6〜8月(海外は4〜6月)、第2四半期=9〜11月(同7〜9月)、第3四半期=12〜2月(同10〜12月)、第4四半期=3〜5月(同1〜3月)です。

単独四半期の推移(百万円)

決算期四半期売上高粗利率販管費販管費率営業利益営業利益率
2024年5月期6〜8月19,16361.7%9,48349.5%2,33512.2%
2024年5月期9〜11月21,70960.2%10,12046.6%2,95713.6%
2024年5月期12〜2月18,84466.3%9,75151.7%2,74914.6%
2024年5月期3〜5月28,96157.2%14,12348.8%2,4548.5%
2025年5月期6〜8月20,98866.3%11,18453.3%2,72913.0%
2025年5月期9〜11月21,33763.3%10,56049.5%2,94313.8%
2025年5月期12〜2月24,08462.5%11,75848.8%3,30413.7%
2025年5月期3〜5月26,51160.4%12,72648.0%3,28112.4%
2026年5月期6〜8月23,00569.7%11,58350.3%4,46219.4%
2026年5月期9〜11月24,74160.7%12,57450.8%2,4339.8%
2026年5月期12〜2月24,92363.5%13,41053.8%2,4289.7%
2026年5月期3〜5月31,61161.5%15,64549.5%3,79912.0%
2027年5月期6〜8月24,67067.2%13,18053.4%3,38713.7%

筆者の差し引き。2024年5月期の6〜8月の営業利益は短信の開示値(2,335)を使っています。各年度の4四半期合計は通期の開示値と一致することを確認しました。単独四半期の売上高・営業利益は、補足資料の「連結業績(四半期推移)」のグラフの数値とも一致します。前記の「洗替」の影響を含みます。

この表のポイントは3つです。

  1. 前年の6〜8月は、粗利率69.7%・営業利益率19.4%と、13四半期で最も高い3か月でした。2位(12〜2月の14.6%、2024年5月期)を5pt近く上回っています。今回の△24.1%は、この突出した3か月との比較です
  2. 2年前の6〜8月(2025年5月期、営業利益27億29百万円)と比べると、今回は+24.1%の増益です。3年前(23億35百万円)と比べると+45.1%です
  3. 一方で、前年は好調な6〜8月のあと、**9〜11月・12〜2月の営業利益がそれぞれ前年比△17.3%・△26.5%**と落ちていました。通期の最高益は、突出した6〜8月と、3〜5月(+15.8%)で作られた形です

「第1四半期は毎年強い」と言えるかどうかも確認しておきます。6〜8月の粗利率は61.7%・66.3%・69.7%・67.2%です。2025年5月期と2026年5月期は6〜8月が年間で最も高い四半期でしたが、2024年5月期は12〜2月のほうが高い年でした。営業利益率で見ても、6〜8月が年間で一番高かったのは4年のうち1年(前年)だけです。4年分を並べる限り、「6〜8月が毎年突出する」という季節性とは言えません。前年の6〜8月は、季節の形ではなく、その年に固有の強さだったと読むのが自然です。

海外卸売事業の利益率は、前年同期比で4四半期続けて下がっている

減益の中心だった海外卸売事業を、同じように四半期に割ってみます。

決算期6〜8月9〜11月12〜2月3〜5月通期
2024年5月期22.6%29.7%29.5%25.5%26.8%
2025年5月期23.8%28.7%23.3%33.8%27.8%
2026年5月期31.2%23.3%19.3%27.6%25.3%
2027年5月期21.1%————

筆者の差し引き。セグメント利益÷外部顧客への売上高(セグメント間の売上は分母に含めていません)。

2026年5月期の9〜11月から、海外卸売のセグメント利益率は前年同期を4四半期続けて下回っています(△5.4pt、△4.0pt、△6.2pt、△10.1pt)。前期は通期で見れば最高益でしたが、海外の利益率は前々期の27.8%から25.3%に下がっていました。今回の第1四半期の21.1%は、6〜8月としては4年で最も低い水準です。

ここで§1の軸の弱み②を、もう一度回収しておきます。海外子会社は現地で人を雇い、販売網を広げています。会社は前期の短信で「給与水準の上昇や海外での事業拡大に伴う人員増加により人件費が大きく伸びた」と書いています。売上が現地通貨で伸びた年はその費用を吸収できますが、今回のように現地通貨で売上が減った3か月には、費用の増加がそのまま利益率に出ます。


4. 深掘り②:会社予想は残り9か月に何を置いているか

前の章で、今回の減益は「突出した前年同期との比較」の面が大きいことを確認しました。それなら通期は心配ない、と言えるでしょうか。それを判断するには、通期の会社予想(営業利益135億円)が残り9か月(9〜5月)に何を置いているかを見る必要があります。

「予想が置いていた残り9か月」と「実際の残り9か月」

決算期第1四半期時点で予想が置いた残り9か月の営業利益前年同期間の実績必要だった前年比実際の残り9か月実際の前年比達成率
2025年5月期82億71百万円81億60百万円+1.4%95億28百万円+16.8%115.2%
2026年5月期65億38百万円95億28百万円△31.4%86億60百万円△9.1%132.5%
2027年5月期101億13百万円86億60百万円+16.8%———

筆者の計算。「予想が置いた残り9か月」=通期の期初予想−第1四半期実績。いずれの期も、第1四半期決算の時点では予想は修正されていません。

この表のポイントは2つです。

  1. 過去2年は、第1四半期の時点で予想が残り9か月に求めていたのは「前年並み」(+1.4%)や「前年から3割減」(△31.4%)で、実際にはそれを15〜33%上回りました。これが§1の「期初予想を上回る」の中身です
  2. 今期は残り9か月に前年同期間比+16.8%の増益を置いています。過去2年とは置き方が逆で、「控えめな予想を上回る」という前提は今期にはそのまま使えません

残り9か月の中身:売上+5.0%、粗利率61.2%、販管費+1.2%

会社は通期の売上総利益(688億円)と販管費(553億円)の予想も出しています(補足資料)。ここから第1四半期実績を引くと、残り9か月の中身が分かります。

項目予想が置いた残り9か月前年の同じ9か月(実績)前年比
売上高853億30百万円812億75百万円+5.0%
売上総利益522億33百万円502億89百万円+3.9%
粗利率61.2%61.9%△0.7pt
販管費421億20百万円416億29百万円+1.2%
営業利益101億13百万円86億60百万円+16.8%

筆者の計算。通期予想(売上1,100億円、売上総利益688億円、販管費553億円、営業利益135億円)−第1四半期実績。

残り9か月の増益の源泉は、販管費の伸びを+1.2%に抑えることです。粗利率は前年よりやや低く置かれているので、粗利の伸び(+3.9%)が販管費の伸び(+1.2%)を上回る分が増益になる、という組み立てです。

ここで第1四半期の販管費を思い出すと、開示ベースで+13.8%、為替を除いても約+4.5%でした。残り9か月の為替前提(155円/米ドル・180円/ユーロ)は、前期の第2〜第4四半期の換算レート(米ドル148.89円・156.54円・159.93円、ユーロ174.51円・184.26円・183.44円)と比べて大きくは違いません(筆者の比較)。つまり残りの9か月は、為替の押し上げがほとんどない中で、販管費をほぼ前年並みに抑える前提です。

仮に販管費が違う伸びになったら(筆者の試算)

残り9か月の販管費の前提残り9か月の販管費通期営業利益会社予想比前期比
会社予想どおり(+1.2%)421億29百万円134億91百万円ほぼ±0%+2.8%
+3.0%428億78百万円127億42百万円△5.6%△2.9%
第1四半期の為替を除いた伸びと同じ(+4.5%)435億02百万円121億18百万円△10.2%△7.7%

筆者の試算。粗利は会社予想が置いた残り9か月の522億33百万円で固定し、第1四半期実績33億87百万円に足しています。将来の業績を予測するものではありません。

この表で伝えたいのは、販管費の伸びが1.8pt違うだけで、通期の営業利益は前期比で減益に変わるということです。利益の小さい会社ではなく、営業利益率12%台の会社ですが、販管費が売上の5割前後を占めるので、販管費の伸び率の小さな差が利益に大きく効きます。

逆側の材料もあります。過去2年は、会社自身の予想よりも粗利率が高く着地してきました(2026年5月期は1月修正時の予想63.0%に対し実績63.6%、補足資料)。残り9か月の粗利率61.2%が前年並みの61.9%になれば、粗利は約6億円増える計算です(筆者の試算)。今期の予想を読む分かれ目は、「販管費の伸びをどこまで抑えられるか」と「粗利率がどこまで戻るか」の2つです。

上期予想から逆算した9〜11月

会社は上期(6〜11月)の予想も出しています。上期の営業利益予想60億円から第1四半期実績を引くと、9〜11月の3か月に置かれている営業利益は26億13百万円です。前年の9〜11月は24億33百万円(前述の分母の修正を反映すると約24億19百万円)なので、次の3か月には約+7〜8%の増益が置かれています。

さらに、通期予想から上期予想を引くと、下期(12〜5月)に置かれている営業利益は75億円で、前年の下期62億27百万円から+20.4%です。過去2年、期初の時点で予想が下期に置いていたのは58億円・60億円で、実際は65億85百万円・62億27百万円でした(筆者の計算)。今期の予想は、過去2年の下期の実績をいずれも上回る水準を下期に置いています。


5. 深掘り③:純利益予想100億円と、第1四半期の税負担率38.4%

2つ目の深掘りでは営業利益を見ました。最後の段階として、経常利益から純利益までを見ます。

第1四半期の税負担率は毎年高く、通期では下がってきた

第1四半期の税負担率(法人税等÷税金等調整前四半期純利益)は38.4%でした。短信の注記によると、当社と主な国内子会社の税金費用は「通期の見積実効税率」を当てて計算しています。ただし過去の数字を並べると、第1四半期の負担率は毎年、通期より高く出ています。

決算期第1四半期の税負担率通期の税負担率
2024年5月期35.3%28.0%
2025年5月期50.3%28.0%
2026年5月期32.5%24.3%
2027年5月期38.4%—

筆者の計算(各期の短信)。2024年5月期の通期は、有報の遡及適用後の数値。

見積実効税率で計算するのは国内の会社だけで、海外子会社は実際の税金が乗ります。第1四半期の負担率がそのまま通期の負担率になるわけではないことは、過去3年の数字が示しています。

予想が置いている税負担率

会社予想は、経常利益135億円に対して純利益100億円です。特別損益がゼロだとすると、税金等の負担率(非支配株主利益を含む)は約25.9%です。

税負担率の前提純利益100億円に必要な税前利益経常利益予想135億円との差
38.4%(第1四半期の実績)約162億82百万円約+27億82百万円
30.6%(法定実効税率)約144億52百万円約+9億52百万円
28.0%(2024年・2025年5月期の実績)約139億31百万円約+4億31百万円
24.3%(2026年5月期の実績)約132億50百万円約△2億50百万円

筆者の試算。非支配株主に帰属する利益を年30百万円(前期31百万円)と置いています。

この表から言えるのは、純利益予想100億円は、前期と同じくらい低い税負担率(24〜26%)を前提にしているということです。前期の24.3%は、法定実効税率30.6%から「法人税額の特別控除」(△7.0pt)や「連結子会社の税率差異」(△3.1pt)などで下がり、「関係会社の留保利益」(+3.8pt)などで一部押し戻された結果でした(有報の税率差異の注記)。研究開発を続ける会社なので同程度の控除が続く可能性はありますが、海外の利益が減れば国ごとの税率の構成も変わります。

会社は7月の短信で、純利益の減益(△17.8%)を「前期に計上した特別利益の剥落」と説明しています。前期の特別利益は投資有価証券売却益16億90百万円と受取和解金5億50百万円でした。今期は特別利益を置いていない予想と読めます(筆者の解釈)。

3つの深掘りをつなぐと

  • 今回の24%減益は、13四半期で突出していた前年の6〜8月との比較で、2年前と比べれば増益(深掘り①)。ただし海外卸売の利益率は4四半期続けて前年を下回っている
  • 通期予想は、残り9か月に前年同期間比+16.8%の増益を置いており、その中身は「販管費を+1.2%に抑える」こと。第1四半期の販管費は為替を除いても+4.5%だった(深掘り②)
  • 純利益予想は、前期並みの低い税負担率を前提にしている(深掘り③)

§1の軸に戻ると、サカタのタネは「設計図(品種)」で高い粗利を取る会社です。ただしその設計図を世界で売るための人と拠点の費用は、現地通貨で毎年積み上がります。今期の予想は、その積み上がりを9か月間ほぼ止める前提に立っています。止められるかどうかは、1月の上期決算で9〜11月の販管費を見ると分かります。


6. 8月末の貸借対照表:在庫と借入

「1年半分の在庫」は、さらに積み上がった

§1の弱み①(種は作り置き)を、貸借対照表で確認します。

時点商品及び製品仕掛品現金及び預金短期借入金長期借入金ネット現金
2024年8月末468億59百万円53億55百万円344億62百万円23億74百万円8億03百万円312億85百万円
2025年5月末452億97百万円67億03百万円295億25百万円22億81百万円5億87百万円266億57百万円
2025年8月末492億04百万円36億42百万円276億21百万円16億06百万円6億09百万円254億06百万円
2026年5月末555億45百万円68億45百万円301億60百万円40億30百万円15億52百万円245億78百万円
2026年8月末590億68百万円47億82百万円290億08百万円81億89百万円15億92百万円192億27百万円

出典:各期の決算短信。ネット現金=現金及び預金−短期借入金−長期借入金(筆者の計算。リース債務は含めていません)。

この表のポイントは3つです。

  1. **商品及び製品は前年同月末比+20.0%(2年前比+26.1%)**で、第1四半期の売上の伸び(+7.2%)を大きく上回っています。海外子会社の在庫は円安で円換算額が膨らむので、すべてが数量の増加ではありません。為替の影響額は在庫については開示されていません
  2. 前期末の有報によると、棚卸資産の合計は637億57百万円で、うち野菜種子が490億19百万円(76.9%)です。前期の売上原価379億46百万円と比べると、棚卸資産は売上原価の約1.5年分です(筆者の計算)
  3. 短期借入金は5月末の40億30百万円から81億89百万円に倍増し、ネット現金は2年前の8月末から約120億円減りました。前年・前々年の第1四半期は短期借入金が減っていたので、今期の増え方は季節的な動きとは違います

在庫の評価損:前期の粗利率改善の中身

有報の「重要な会計上の見積り」で、会社は棚卸資産の評価を最初に挙げています。

会社は次のように書いています(2026年5月期有価証券報告書「重要な会計上の見積り」より要旨) 生産後一定の年数を経過した種子の帳簿価額を切り下げ、販売用野菜種子については、販売予測数量に基づいて一定の年数以内に販売が見込まれないものを識別して帳簿価額を切り下げている。販売予測数量の見積りは需要予測に影響を受けるため高い不確実性を伴う。

そして損益計算書の注記には、売上原価に含まれる棚卸資産評価損の金額が載っています。

決算期棚卸資産評価損(売上原価に含む)売上高に対する比率粗利率(開示)評価損を足し戻した粗利率
2025年5月期25億51百万円2.75%62.9%65.7%
2026年5月期9億04百万円0.87%63.6%64.5%

出典:有報の連結損益計算書関係の注記。比率と足し戻した粗利率は筆者の計算(会計上の数字ではない参考値)。

前期の粗利率の改善(+0.7pt)は、評価損が16億47百万円減ったことで説明でき、評価損を足し戻すと粗利率はむしろ1.2pt下がっています。§1の軸で言えば、前期は「作り置きの読み外れ」が小さかった年でした。第1四半期の評価損の金額は開示されていないので、今回の粗利率の低下(△2.6pt)に評価損がどれだけ関わっているかは分かりません。

会社がPASSION2035で「棚卸資産回転率の改善」を成長投資と株主還元の原資に挙げているのは、この在庫の大きさが資本効率を押し下げているからだと読めます。今期の第1四半期は、その方向とは逆に在庫が積み上がった3か月でした。

借入の増加は、計画どおりの方向でもある

一方で、借入の増加は会社の方針とも一致しています。PASSION2035の資料は「借入等での資金調達と自己株式の取得により財務レバレッジを引き上げる」「31/5期時点はネットデット状態」と書いており、自己資本比率を82.3%から60%台に下げる計画です。8月末の自己資本比率は82.1%で、まだ計画の入口です。

ただし、第1四半期の短期借入金の増加(+41億59百万円)は、同じ期間の自己株式取得(5億21百万円)や配当の支払いよりずっと大きく、会社は短信で「短期借入金が増加した」と書くだけで用途を説明していません。仕入債務の減少(△39億26百万円)と在庫の増加が同じ期間に起きているので、運転資金に回った可能性がありますが、これは筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません。


7. 資本政策と株主還元

株主優待:100株以上・1年以上の保有で商品カタログ

有価証券報告書の「株主に対する特典」欄と会社ウェブサイトの株主優待ページの内容は一致しています。

保有株数1年未満1年以上5年未満5年以上
100〜299株対象外1,500円相当3,000円相当
300〜999株対象外3,000円相当4,500円相当
1,000株以上対象外4,500円相当6,000円相当

出典:会社ウェブサイト「株主優待」、有報「株主に対する特典」。いずれも商品カタログから1品を選ぶ形式。

  • 基準日:毎年5月31日(年1回)。カタログの発送は8月下旬頃
  • 保有期間の判定:会社サイトによると「株主名簿に同一株主番号で初めて登録されてからの期間が、5月末日時点で1年以上」
  • 今から買った場合:名簿に初めて載るのは早くて2026年11月30日(中間配当の基準日)です。2027年5月31日時点では1年未満なので、最初の優待は**2028年5月31日基準(2028年8月頃発送)**になります(会社サイトの記載から筆者が整理)。貸株などで株主番号が変わると、期間が途切れる可能性があります

1株当たりで見ると、100株の1,500円相当は15円/株、1,000株の4,500円相当は4.5円/株で、保有株数が増えるほど1株当たりの優待額は下がる設計です。100株・1年以上の場合、優待の名目利回りは約0.36%(1,500円÷42万2千円)、配当と合わせた名目利回りは約2.49%です(10月6日終値ベース、筆者の計算)。株主数は39,259名(2026年5月末)で、全員が対象と仮定しても優待費用は年5,900万〜2億3,600万円程度(営業利益の0.45〜1.8%)の上限計算になります(筆者の試算。実際の費用は開示されていません)。

配当方針:DOE2.5%以上、配当性向35%目安

PASSION2035で配当方針が改められました。

会社は次のように書いています(長期経営計画「PASSION2035」策定に関するお知らせ) 配当還元率は、株主資本配当率2.5%以上としつつ、配当性向は35%を目安とし、安定的な株主還元を実施いたします。また、自己株式の取得を適切に行い、今後5年間における総還元性向は60%を目安としております。

決算期中間期末年間EPS配当性向配当方針
2022年5月期18円27円45円276.02円16.3%長期安定方針・株主資本配当率(当面2.5%目標)
2023年5月期20円35円55円213.98円25.7%同上
2024年5月期25円40円65円365.22円17.8%同上
2025年5月期30円45円75円222.58円33.7%同上(実績2.3%)
2026年5月期35円50円85円284.46円29.9%同上(実績2.5%)
2027年5月期(予想)40円50円90円236.63円38.0%株主資本配当率2.5%以上・配当性向35%目安

出典:有報「主要な経営指標等の推移」(提出会社の1株配当)、長期経営計画資料(連結配当性向)、決算短信、配当に関する適時開示。「株主資本配当率 当面2.5%」の方針がいつ導入されたかは本記事では確認していないため、2022〜2024年5月期の行は2026年5月期の有報の記載をそのまま当てています。

この表のポイントは2つです。

  1. 6期連続の増配で、今期予想どおりなら7期連続です。前期は期末配当を予想の40円から50円に引き上げています(2026年7月13日の開示)
  2. 今期の90円を2つの物差しで確認すると、配当性向35%なら約83円、株主資本配当率2.5%なら約88円(第1四半期末の株主資本148,585百万円で計算)です。実際の90円は、株主資本配当率の下限の少し上に置かれています(筆者の計算)。純利益が減益予想でも配当が増えるのは、純資産側の物差しが下限になっているからです

用語メモ:株主資本配当率 配当総額÷株主資本で計算する物差しで、DOE(純資産配当率)の一種です。サカタのタネの場合、分母は「株主資本」(資本金・剰余金・自己株式の合計)で、為替換算調整勘定などの「その他の包括利益累計額」を含みません。前期の配当総額36億33百万円÷期首と期末の株主資本の平均1,462億59百万円=約2.48%で、会社が言う「2.5%」と一致します(筆者の検算)。円安で純資産が膨らんでも、この物差しの分母は増えません。

前期の配当総額は再現できます。期末配当50円×(発行済45,410,750株−自己株式3,074,495株)=21億16百万円で、開示の2,116百万円と一致します。株式給付信託(BBT)の76,580株は会計上は自己株式ですが、配当は支払われるので分母に含めています。

権利基準日権利付き最終日
中間配当(予想40円)2026年11月30日(月)2026年11月26日(木)
期末配当(予想50円)・株主優待2027年5月31日(月)2027年5月27日(木)

権利付き最終日は基準日の2営業日前(筆者の計算)。

自己株式取得:今期の枠は「株数の上限」で先に止まる計算

決議日方法上限実績平均単価
2025年1月17日2025年1月20日に取得(方法は本記事では未確認)—600,200株・21億52百万円3,585円
2025年10月7日自己株式の公開買付け1,100,100株・36億14百万円1,000,000株・32億85百万円3,285円
2026年7月13日市場買付(ToSTNeT-3を含む)1,000,000株・50億円(2027年5月28日まで)9月末までに286,500株・12億51百万円4,366円

出典:自己株式の取得に関する各適時開示、公開買付けの結果の開示、有報。平均単価は筆者の計算(取得価額の総額÷株数)。

今期の枠は、9月末時点で**株数で28.7%、金額で25.0%**を消化しています。月別の平均単価は8月が約4,382円、9月が約4,348円です。

ここで確認しておきたいのは、株数の上限と金額の上限のどちらが先に効くかです。残りの株数は713,500株、残りの金額は37億49百万円で、金額を使い切るには平均約5,255円で買う必要があります。10月6日終値4,220円で残りの株数を買い切ると約30億11百万円で、金額上限より先に株数上限に達し、取得総額は約42億62百万円にとどまる計算です(筆者の試算。株価によって変わります)。

会社は資料で「今期の総還元性向は88%となる見込み」としていますが、これは50億円を使い切る前提です。株数上限で止まった場合、配当総額約38億円と合わせた総還元性向は約81%になります(筆者の試算。純利益予想100億円が分母)。残り期間の1日あたりの必要株数は約4,500株で、直近の出来高(1日7万〜18万株程度。9〜10月、Yahoo!ファイナンス)から見て、取得のペース自体に無理はない水準です。

2025年10月の公開買付けの相手は、会長の資産管理会社だった

2025年10月の自己株式の公開買付けについて、会社の開示は次のように経緯を説明しています。

会社は次のように書いています(2025年10月7日「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ」より要旨) 当社の筆頭株主であり代表取締役会長である坂田宏氏の資産管理会社である有限会社ティーエム興産(7,607,996株、所有割合17.56%)より、その一部である1,000,000株について、現金化を目的に売却する意向がある旨の連絡を受けた。

  • 買付価格は、決議前1か月の終値平均3,650円から10%ディスカウントした3,285円
  • 応募は1,000,000株で、買付予定数(1,100,000株)を下回ったので全数を取得(結果の開示)
  • ティーエム興産は残りの6,607,996株を「継続的に所有する方針」と回答
  • 坂田宏氏は、公開買付けの条件の協議と取締役会の審議・決議に参加していない

会社は利益相反への配慮(協議・決議への不参加)とディスカウント率の根拠(過去70件の事例)を詳しく開示しています。市場で売られれば需給の重しになり得た100万株を、市場価格より10%安く会社が引き取ったという事実だけを記録しておきます。

大株主(2026年5月31日時点)

株主持株数比率
有限会社ティーエム興産660万8千株15.60%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口)329万3千株7.77%
みずほ銀行150万株3.54%
三井住友銀行149万1千株3.52%
日本カストディ銀行(信託口)122万5千株2.89%
BNP PARIBAS LUXEMBOURG/2S/JASDEC/FIM/LUXEMBOURG FUNDS/UCITS ASSETS69万4千株1.63%
キッコーマン67万8千株1.60%
野村 絢63万7千株1.50%
東京青果56万4千株1.33%
横浜冷凍55万8千株1.31%
上位10名計1,724万9千株40.74%

出典:有報「大株主の状況」。比率は自己株式(3,074,495株)を除く発行済株式総数に対する割合。

筆頭株主のティーエム興産は15.60%で、単独で特別決議を否決できる3分の1には届いていません。所有株式数の37.0%が個人等、株主数は39,259名です。信用取引は買残47,300株・売残24,600株(2026年10月2日時点、Yahoo!ファイナンス、報道ベース)。

その他のイベント

  • 2025年11月から、当社サーバーと米国連結子会社のシステムへの不正アクセスについて開示が続き、2026年8月19日に最終報が出ています。業績への影響の金額は本記事では確認していません
  • 2025年7月に、ブラジルのタマネギ種子会社Agritu Sementes Ltda.を約17億78百万円で取得しました(のれん7億21百万円、10年償却)。連結に含まれたのは2025年7月〜2026年3月の9か月分です(有報の企業結合注記)。今期の第1四半期(海外は4〜6月)には、前年同期に含まれていなかったAgrituの3か月分が入っています。上乗せの金額は開示されていません

8. 株価の見方

株価の基準点(2026年10月6日終値4,220円)

指標数値計算
終値(2026年10月6日)4,220円Yahoo!ファイナンス
時価総額(自己株式控除後)約1,778億円4,220円×42,140,712株
時価総額(発行済ベース)約1,916億円4,220円×45,410,750株
予想PER17.8倍4,220円÷予想EPS236.63円
PBR0.98倍4,220円÷8月末BPS4,316.66円
予想配当利回り2.13%90円÷4,220円
年初来高値・安値4,715円(7月14日)・3,885円(1月14日)Yahoo!ファイナンス(報道ベース)

株価情報サイトの時価総額は、自己株式を含む発行済株式数で計算されています。潜在株式はありません(短信の「潜在株式調整後1株当たり四半期純利益」は記載なし)。

決算発表は10月6日15時30分、取引終了と同時刻でした。10月6日の終値と出来高(178,000株)は発表前の取引です。同日夜の夜間取引(PTS)では4,100円(東証終値比△2.84%、23時46分時点)が付いていました(Yahoo!ファイナンス、報道ベース。取引量が小さく、翌営業日の値動きと一致するとは限りません)。

年初来高値の4,715円は、通期決算とPASSION2035を発表した翌日(7月14日)の高値です。この日の終値は4,440円(前日比+1.3%)で、その後株価は高値から約10%下がった水準にあります。

一次情報から拾える株価の履歴

時点株価出所
2025年1月平均3,585円自己株式取得(取得総額÷株数)
2025年9月〜10月6日1か月の終値平均3,650円公開買付けの開示
2025年10〜11月3,285円公開買付価格(上記の10%ディスカウント)
2026年5月期の最高・最低4,630円・3,310円有報
2026年5月29日約4,130円有報の株価収益率14.52倍×EPS284.46円(筆者の逆算)
2026年8・9月平均約4,382円・約4,348円自己株式取得の状況報告
2026年10月6日4,220円Yahoo!ファイナンス

有報の株主総利回り(5年前を100とした配当込みの指数)は、2026年5月期で119.9です。同じ期間の配当込みTOPIXは232.4でした。配当は5年で45円から85円になりましたが、株価の上昇は市場全体に大きく遅れています。

強気の見方

  • 今回の減益は、13四半期で突出していた前年の6〜8月との比較。2年前と比べれば営業利益は+24.1%
  • 国内卸売は増収増益、小売は赤字縮小。減益は海外卸売の1セグメントに集中しており、その中でもEMEAは現地通貨で+8.9%と伸びている
  • 過去2年は、第1四半期時点の予想を残り9か月で15〜33%上回ってきた。粗利率も会社予想を上回って着地してきた
  • PASSION2035で、総還元性向60%目安・自己資本比率60%台という資本政策の数値目標が初めて示された。今期は配当7期連続増配の予想と最大50億円の自己株式取得
  • PBRは約1倍。自己資本比率82%、ネット現金約190億円に加え投資有価証券226億円を持つ
  • 会長の資産管理会社の売却希望株は、市場に出さず会社が10%ディスカウントで引き取った

弱気の見方

  • 売上の伸びは為替換算で説明でき、現地通貨では横ばい。為替を除いた販管費は+4.5%
  • 海外卸売のセグメント利益率は、前年同期比で4四半期続けて低下している
  • 通期予想は残り9か月に+16.8%の増益を置き、その源泉は販管費の伸びを+1.2%に抑えること。過去2年のような「控えめな予想」ではない。販管費が+4.5%なら営業利益は前期比で減益になる計算(筆者の試算)
  • 純利益予想は前期並みの低い税負担率を前提にしている
  • 商品及び製品は前年同月末比+20%。前期の粗利率改善は評価損の減少によるもので、足し戻せば粗利率は低下していた。在庫の読み外れは評価損として粗利を直撃する
  • 短期借入金が3か月で倍増し、ネット現金は2年で約120億円減った
  • 今期予想のROEは約5.5%(筆者の計算)。株主総利回りは5年で配当込みTOPIXの約半分
  • 自己株式取得は、現在の株価なら株数上限で止まり、会社が示す総還元性向88%には届かない計算(筆者の試算)

同じ「残り9か月に+16.8%の増益」という数字も、強気側では「会社が自信を持って予想を引き上げた」、弱気側では「過去2年のような上振れの余地を予想に残していない」と読めます。数字は同じで、どちらの読み方を取るかは読者に委ねます。


9. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るポイント
2026年11月上旬・12月上旬自己株式の取得状況の開示(毎月)月間の取得株数と平均単価。株数上限(残り713,500株)との距離
2026年11月26日(木)中間配当の権利付き最終日(基準日11月30日)予想40円。優待の保有期間の起算に関わる名簿でもある
2027年1月中旬(例年)上期(中間)決算9〜11月の営業利益(上期予想から逆算した26億13百万円)と販管費の伸び、海外卸売の利益率(前年同期23.3%)、通期予想の修正の有無(過去2年は1月に修正)
2027年3月〜GREEN×EXPO 2027(横浜)会社がPASSION2035で環境事業の契機として挙げている
2027年4月上旬(例年)第3四半期決算12〜2月の営業利益(前期24億28百万円)
2027年5月27日(木)期末配当・株主優待の権利付き最終日(基準日5月31日)予想50円
2027年5月28日自己株式取得の期限最終的な取得株数・金額と総還元性向
2027年7月中旬(例年)通期決算棚卸資産評価損(有報の注記)、通期の税負担率、PASSION2035の2年目の予想

決算発表日は、過去の発表日(中間:2025年1月14日・2026年1月13日、第3四半期:2025年4月8日・2026年4月7日、通期:2025年7月14日・2026年7月13日)からの推定です。

見るべきKPI

  1. 単独四半期の販管費の伸び(為替の影響額を除いた値。補足資料に毎回載っている)
  2. 海外卸売事業のセグメント利益率(前年同期比で4四半期連続の低下が止まるか)
  3. 現地通貨ベースの地域別売上(特に北中米・南米・アジア・太平洋)
  4. 単独四半期の粗利率(前期の9〜11月は60.7%)
  5. 商品及び製品の残高と短期借入金(同じ月末の前年と比べる)
  6. 四半期末の為替(9月末・12月末の米ドル・ユーロ。予想の前提は155円・180円)

10. 3行まとめ

  • 売上+7.2%は為替換算の押し上げでほぼ説明でき、円安は販管費も同じように膨らませた。営業24%減益は、13四半期で突出していた前年の6〜8月との比較で、2年前比では+24%
  • ただし海外卸売の利益率は4四半期続けて前年を下回り、通期予想は残り9か月に「販管費+1.2%」で+16.8%の増益を置いている。過去2年のような控えめな予想ではない
  • 配当は7期連続増配の予想、自己株式取得枠は最大50億円で、PASSION2035の総還元性向60%目安が始まった。1月の上期決算で9〜11月の販管費と海外の利益率を確かめたい

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・助言を目的としたものではありません。数値の出典は、サカタのタネの決算短信(2027年5月期第1四半期、2026年5月期・2025年5月期の各四半期・通期、2024年5月期の通期)、決算短信補足説明資料(2027年5月期第1四半期、2026年5月期通期)、有価証券報告書(2026年8月21日提出)、長期経営計画「PASSION2035」の開示と資料(2026年7月13日)、業績予想の修正(2024年2月16日・2025年1月14日・2026年1月13日)、自己株式の取得・公開買付け・配当に関する各適時開示、会社ウェブサイトの株主優待ページです。株価・出来高・信用残・年初来高値安値・夜間取引の価格はYahoo!ファイナンス(報道ベース)です。四半期の単独数値、増減の分解、為替影響を除いた数値、残り期間の試算、税負担率の逆算、ROE・配当の物差しの試算、自己株式取得の試算、優待費用の上限計算は筆者の計算・試算です。

次の点にご注意ください。今回の第1四半期は決算説明会がなく、会社の追加説明や質疑応答は反映していません。2026年5月期の決算説明会(機関投資家向け)の資料・質疑応答要旨も本記事では反映していません。海外子会社の決算期のずれと換算の「洗替」により、累計から差し引いた単独四半期の数字にはレート変更の調整が含まれます。為替を除いた売上・販管費は会社が開示した影響額を差し引いたもので、売上原価への為替の影響は開示されておらず、営業利益への為替の正味の影響に関する記述は筆者の粗い試算です。上期予想の前年比の分母が修正されている可能性、短期借入金の増加が運転資金に回った可能性に関する記述は筆者の推測であり、会社の開示に基づくものではありません(確認先は半期報告書と会社IR)。第1四半期の棚卸資産評価損の金額、Agritu社の第1四半期への寄与額、不正アクセスの業績への影響額は開示されておらず、本記事では確認していません。2024年5月期の上期予想、2025年5月期以前の配当方針の切り替え時期の細部、有報の「株式の保有状況」(政策保有株式の銘柄別明細)、定時株主総会の議決権行使結果(臨時報告書)は本記事では確認していません。株主優待の初回受取時期は会社サイトの記載から筆者が整理したもので、具体的な判定は会社にご確認ください。決算発表は取引終了と同時刻(15時30分)で、10月6日の終値は発表前の取引によるものです。夜間取引の価格は取引量が小さく、翌営業日の値動きと一致するとは限りません。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

-株式投資
-,