株式投資

モバイルファクトリー(3912) 駅に着くたびハンコが押せる旅帳を配り、旅の道具をアプリという“駅ナカ”の店で売ってきた会社 なぜ売上6.6%増で営業利益は23.7%も増えたのか?【2026年10月発表・第3四半期決算】

本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。**執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。**特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 7〜9月の営業利益の増加62百万円は、ほぼ全額(筆者の試算で約94%)が「アプリストアに払う手数料の比率が下がったこと」で説明できる。売上の伸びの分は、広告と人件費の増加でほぼ相殺されている
  • 粗利率は前年同期比で+7.3ポイントなのに、営業利益率は+5.1ポイントにとどまる。手数料の一部が「売上原価」から「販管費」へ移っただけの部分があり、粗利率は改善を大きく見せる
  • 会社の通期予想が10〜12月に置いている営業利益は約2億83百万円で、前年同期比△8.7%。過去3年、同じ時点の予想が置いた10〜12月の営業利益は毎年上回ってきたが、売上は前期に届かなかった
  • 10月1日の和解で、2026年12月期に特別利益(前期純利益の30%超=1億46百万円超)が出る見込み。通期予想には入っていない。「その他の影響は精査中」の中身は未開示
  • 総還元性向60%・累進配当・配当性向40%以上またはDOE7%以上という方針の下で、今期の配当予想51円は「配当性向40%」側にぴったり張り付いている
  • 株主優待(1,000株以上・1年以上保有で年2万円分のデジタルギフト)は、会社IRサイトには載っているが、有価証券報告書の「株主に対する特典」欄は「該当事項はありません」。いま買った場合、最初に受け取れるのは2028年3月末基準の分になる

1. 前提知識:どんな会社か

1-1. 軸となる例え:駅ナカの店で「旅の道具」を売ってきた会社

鉄道の駅には、昔から記念スタンプの台が置いてあります。旅行好きは駅に降りるたびにスタンプ帳にハンコを押し、集めた駅の数を眺めて楽しみます。

モバイルファクトリーの主力「駅メモ!(ステーションメモリーズ!)」は、このスタンプ帳をスマートフォンの中に作ったものです。全国9,000か所以上の駅で位置情報を登録すると、その駅を「取った」ことになり、キャラクター(でんこ)を育てながら記録が積み上がっていきます。ゲーム自体は無料で、収益は旅のおともの道具の販売です。1日の登録回数の制限を外す定期券のような商品、離れた駅も取れるレーダー、キャラクターを引くガチャなどがあります。

ここからが軸です。この会社は、旅の道具を自前の店ではなく、アプリストアという“駅ナカ”の店先で売ってきました。駅ナカのテナントが駅の持ち主に家賃を払うように、アプリ内で売れた代金からはGoogleやAppleに手数料が差し引かれます。家賃の額は大家が決め、テナントは決められません。

この一文から、強みと弱みが同じ理由で出てきます。

  • 強み:旅帳は長く使うほど手放しにくくなります。会社の説明資料では、駅メモ!ネイティブ版のアクティブユーザーのうち約54%がインストールから5年以上たった人です。鉄道会社・自治体・アニメ作品とのコラボも、駅という現実の場所があるから成り立ちます(2026年9月時点で、自治体10件以上、鉄道事業者20件以上、IP30件以上)
  • 弱み①:家賃を自分で決められない。有価証券報告書の「主要な顧客ごとの情報」では、2025年12月期の売上のうちGoogle経由が16億55百万円、Apple経由が11億56百万円で、合わせて全社売上の82.0%です(有報の注記によれば、相手先は決済代行業者で、ユーザーからの代金回収を代行している)。売上のほとんどが大家の店先を通っています
  • 弱み②:店がほぼ1軒しかない。今期9か月の売上の93.2%がモバイルゲーム事業で、その中心が駅メモ!です。もう1つのコンテンツ事業(着信メロディ等)は四半期ごとに売上が少しずつ減っています

そして2026年1月21日、この会社は駅ナカの外に自前の売り場を開きました。名前は「駅メモ!公式車内販売Webショップ」です。駅の店ではなく、列車の中で売り子から買う形にしたわけです。今回の第3四半期決算は、この“車内販売”が通期の3四半期すべてに効いた最初の決算でした。

1-2. 事業の構造

区分中身9か月の売上9か月のセグメント利益利益率
モバイルゲーム事業位置情報連動型ゲーム「駅メモ!」シリーズ等2,387百万円760百万円31.8%
コンテンツ事業着信メロディサービス、スタンプ素材等174百万円130百万円74.9%
その他Suishow事業(位置情報共有SNS「NauNau」等)—△3百万円—
連結2,562百万円887百万円34.6%

(2026年12月期第3四半期決算短信。百万円未満切り捨て。セグメント利益の合計は連結営業利益と一致)

この表のポイントは2つです。1つ目は、利益の大半がモバイルゲーム事業から出ていること。2つ目は、コンテンツ事業は利益率が7割を超えるものの、売上は前年同期比△9.3%で縮んでいることです。

1-3. 直近5期の業績

項目2021年12月期2022年12月期2023年12月期2024年12月期2025年12月期
売上高(百万円)2,8973,1443,3703,3173,427
営業利益(百万円)—8649451,0581,121
経常利益(百万円)8538659401,0571,145
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)538558△0699488
1株当たり当期純利益(円)64.6969.70△0.1292.2067.66
自己資本利益率(%)19.518.9—21.815.1
自己資本比率(%)86.986.377.680.777.5
1株配当(円)——83744

(有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」、2022年以降の営業利益は決算説明資料の参考数値。2021年12月期の営業利益は本稿で確認した資料に載っていないため空欄)

2023年12月期の純損失と2025年12月期の純利益の落ち込みは、どちらも子会社Suishowにかかわる一過性の項目です(2023年はのれんの減損、2025年は繰延税金資産の取り崩し)。営業利益は5期とも増えています。

用語メモ:繰延税金資産は「将来払う税金が減る分」を前もって資産に載せたもの。将来その減額を使えないと判断すると取り崩し、その期の税金費用が増える。現金は出ていかない。2025年12月期は313百万円を取り崩し、税負担率が57.3%に跳ね上がった(取り崩しを除くと29.9%)。

1-4. 会社予想の達成履歴

この会社の予想がどう外れてきたかを、先に並べておきます。

期期初予想(開示日)期中の修正(開示日)実績実績÷期初予想期初予想の前期比実績の前期比
2023年12月期 営業利益896(2023/1/27)920(2023/12/15)945+5.5%+3.7%+9.4%
2024年12月期 営業利益1,060(2024/1/30)1,011(2024/10/25)1,058△0.2%+12.2%+12.0%
2025年12月期 営業利益1,020(2025/1/30)1,089(2025/12/12)1,121+9.9%△3.6%+6.0%
2026年12月期 営業利益1,170(2026/1/29)なし(10/23時点)——+4.3%—
2023年12月期 売上高3,2703,3673,370+3.1%
2024年12月期 売上高3,5703,2763,317△7.1%
2025年12月期 売上高3,4703,3933,427△1.2%
2026年12月期 売上高3,500なし——+2.1%—

(単位:百万円。決算短信と業績予想の修正の適時開示)

この表のポイントは2つです。

1つ目は、売上と営業利益で外れ方の向きが違うことです。売上は直近2期とも期初予想に届かず、営業利益は直近2期のうち1期は期初予想とほぼ同じ、1期は約1割上回りました。

2つ目は、2025年12月期の上振れの中身です。12月12日の修正理由を、会社は次のように書いています(原文)。

広告宣伝費の予算消化が当初の計画よりも緩やかに推移したこと等により、販管費が想定を下回る見通しとなりました。

つまり前期の営業利益の上振れは、売上の上振れではなく、使う予定だった広告費を使わなかったことから来ています。広告宣伝費は会社が時期と量を決められる費用なので、「予想を上回る会社」という前提を今期にそのまま当てはめられるかは、広告の使い方しだいです(4章で回収します)。


2. 決算ハイライト(2026年10月23日13時00分発表)

2-1. 9か月累計

項目2025年1〜9月2026年1〜9月前年同期比通期予想進捗率
売上高2,4782,562+3.4%3,50073.2%
売上総利益1,2751,448+13.5%——
販管費464560+20.8%——
営業利益811887+9.4%1,17075.8%
経常利益826890+7.8%1,18075.4%
親会社株主に帰属する四半期純利益579615+6.2%81975.2%
1株当たり四半期純利益(円)80.0393.65+17.0%126.56—

(単位:百万円。決算短信。百万円未満切り捨て。売上総利益と販管費の増減率は千円単位から筆者が計算)

前年の同じ時点の営業利益の進捗率は、期初予想(1,020百万円)に対して79.5%、12月の修正後予想(1,089百万円)に対して74.5%、実績(1,121百万円)に対して72.3%でした。今期の75.8%は、前年の修正後予想ベースとほぼ同じ水準です。分母の性質が違う(今期は会社予想、前年の3本目は実績)点にご注意ください。

EPSの伸び(+17.0%)が純利益の伸び(+6.2%)を大きく上回るのは、期中平均株式数が7,247,440株から6,576,396株に9.3%減ったためです(2月の自己株式取得。6章)。式で書くと、615,902千円÷6,576,396株=93.65円で、短信の数字と一致します。

用語メモ:会社予想EPS(126.56円)の分母は期末近くの想定株数、実績EPSの分母は期中平均株式数。自己株式取得を続けている会社では、両者の株数がずれる。今期の予想EPSは、純利益予想819百万円を6,471,239株で割った値に当たり、9月末の自己株式控除後の株数(6,493,838株)で割ると126.12円になる。差の理由は開示されていない。

2-2. 7〜9月の3か月(単独)

項目2025年7〜9月2026年7〜9月前年同期比
売上高821875+6.6%
売上原価400362△9.5%
販管費156187+19.9%
営業利益263325+23.7%
売上総利益率51.3%58.6%+7.3pt
営業利益率32.0%37.1%+5.1pt

(単位:百万円。決算説明資料の参考数値「四半期推移(連結)」。営業利益の前年同期比は会社表記。百万円単位の表から計算すると+23.6%)

会社は短信で、モバイルゲーム事業の売上・営業利益が「当第3四半期連結累計期間及び会計期間で過去最高」と書いています。ここは読み方に注意が要ります。7〜9月の営業利益325百万円は、全四半期の中の最高ではありません(2025年4〜6月は368百万円、2026年4〜6月は352百万円)。駅メモ!は6月(誕生記念)と11月(アプリ版の周年)に記念施策があり、4〜6月の売上が1〜3月・7〜9月より高く出る形は5年、10〜12月が7〜9月より高く出る形は4年続いています。「過去最高」は7〜9月どうしで比べた最高と読むのが正確です。

2-3. 財政状態とキャッシュ・フロー

項目2025年12月末2026年9月末増減
現金及び預金3,1492,588△561
売掛金566442△124
総資産3,9793,222△756
未払金480413△66
未払法人税等21784△132
前受金6669+2
負債合計895657△238
純資産3,0832,565△517
自己資本比率77.5%79.6%+2.1pt

(単位:百万円。決算短信。有利子負債はゼロ)

現預金が5億61百万円減った主因は、2月の自己株式取得(7億99百万円)と配当の支払い(3億33百万円)です。自己資本比率が上がったのは、分子(自己資本)が減った以上に分母(総資産)が減ったためで、財務が強くなったという意味ではありません。

第3四半期は四半期キャッシュ・フロー計算書が作成されていません。9か月の減価償却費は298千円で、利益とキャッシュの差はほぼ税金と運転資金の動きだけです。EBITDA(887,637千円)が営業利益(887,338千円)とほぼ同じなのはこのためです。


3. 深掘り①:増えた62百万円は、どこから来たのか

3-1. 売上原価と販管費の中身を5四半期並べる

説明資料の後半に、売上原価と販管費の内訳を積み上げたグラフがあります。数値はグラフに書かれたラベルを筆者が読み取ったものです。

項目2025年7〜9月2025年10〜12月2026年1〜3月2026年4〜6月2026年7〜9月
売上高821949749937875
うちモバイルゲーム事業758887690878819
PF手数料(売上原価)229265180199168
回収代行手数料(販管費)710182425
変動費の合計236275198223193
変動費÷モバイルゲーム売上31.1%31.0%28.7%25.4%23.6%
広告宣伝費(販管費)6677718083
その他の売上原価(人件費等)133156141146152
営業利益263310209352325

(単位:百万円。売上高・営業利益は説明資料の参考数値、費目は説明資料の図から筆者が読み取った値。各四半期の費目の合計は、参考数値の売上原価・販管費と±2百万円の範囲で一致することを確認した。会社の定義では、変動費=PF手数料+回収代行手数料)

この表のポイントは2つです。

1つ目は、変動費の比率が4四半期続けて下がっていることです。モバイルゲーム事業の売上に対して31.1%だったものが、23.6%になりました。PF手数料(プラットフォーム手数料。アプリストアに払う分)は229百万円から168百万円に減り、代わりに回収代行手数料(Webショップの決済会社に払う分)が7百万円から25百万円に増えています。

2つ目は、下がり始めた時期が2つの出来事と重なることです。2025年12月18日にスマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)が全面施行され、報道によればAppleは日本のApp Storeの手数料を原則30%から26%に引き下げました(報道ベース)。そして2026年1月21日に自前のWebショップが開きました。会社は説明資料で増益の理由を「アプリ外課金の利用拡大とAppleの手数料減額の影響」と書いていますが、2つの効果をそれぞれいくらと分けた数字は開示していません。

駅ナカの例えで言えば、家賃の引き下げと、駅の外の車内販売への客の移動が、同じ時期に起きたことになります。

3-2. 前年同期比の増益を項目別に分ける

項目前年同期からの増減営業利益への影響
売上高+54+54
PF手数料△61+61
回収代行手数料+18△18
広告宣伝費+17△17
その他の売上原価(人件費・許諾料等)+19△19
サーバー費用・外注費+4△4
その他の販管費△4+4
合計+61(実際の増加は+62、差は百万円単位の丸め)

(単位:百万円。2025年7〜9月と2026年7〜9月の比較。費目は説明資料の図から筆者が読み取った値。サーバー費用・外注費とその他の販管費は、合計から読み取った費目を引いた残差)

これを別の角度から確かめます。2025年7〜9月の変動費率(変動費÷全社売上=28.75%)を、2026年7〜9月の売上875百万円にそのまま当てると、変動費は約251.5百万円になります。実際は193百万円なので、差は約58.5百万円です(筆者の試算)。営業利益の増加62百万円のうち約94%が、変動費率の改善だけで説明できる計算です。

逆に言えば、売上の伸び(+54百万円)が生んだ利益は、広告宣伝費(+17百万円)と人件費・許諾料等(+19百万円)の増加でほぼ打ち消されています。会社自身も、増加要因に「アプリ外課金の利用率拡大に伴う変動費の減少」、減少要因に「広告宣伝費への積極投資、その他売上原価(人件費及び許諾料等)の増加」を挙げており、数字はこの説明と整合します。

3-3. 粗利率は、改善を大きく見せる

ここが今回の決算で最も誤読しやすいところです。

指標2025年7〜9月2026年7〜9月差
売上総利益率51.3%58.6%+7.3pt
販管費率19.0%21.4%+2.4pt
営業利益率32.0%37.1%+5.1pt

粗利率の改善(+7.3pt)と営業利益率の改善(+5.1pt)の間に約2pt の差があります。理由の1つは、同じ「代金を回収してもらう手数料」が、アプリストア経由だと売上原価に、Webショップ経由だと販管費に入ることです。客がアプリ内からWebショップに移ると、売上原価のPF手数料が減り、販管費の回収代行手数料が増えます。手数料の総額が変わらなくても粗利率は上がり、販管費率は上がります。

7〜9月で言えば、回収代行手数料の増加18百万円は売上の約2.1%に当たり、粗利率と営業利益率の改善幅の差のかなりの部分がこれで説明できます(残りは広告宣伝費の増加など)。

用語メモ:売上原価と販管費の境界をまたいで費用が移ると、粗利率と販管費率は動くが営業利益は変わらない。こういう会社では、改善の大きさは営業利益率で測るほうが正確。

ここで軸を回収します。 駅ナカの家賃は売上原価、車内販売の決済手数料は販管費、と帳簿の置き場所が違うだけで、どちらも「売った代金のうち自分の手に残らない分」です。残る分が増えたかどうかは、営業利益率で見るのが筋です。

3-4. 9か月累計で見ても同じ形

9か月の累計でも、粗利率は51.5%→56.5%(+5.0pt)、販管費率は18.7%→21.9%(+3.2pt)、営業利益率は32.7%→34.6%(+1.9pt)です(千円単位の短信の数字から計算)。1〜3月はまだWebショップが立ち上がったばかりで、変動費率の改善が小さかったため、累計の営業利益率の改善は7〜9月単独より小さく出ています。


4. 深掘り②:予想は10〜12月に何を置いているか

前章で、営業利益の増加は「家賃の比率が下がったこと」でほぼ説明できると見ました。ではその改善を、会社の通期予想はどこまで織り込んでいるのでしょうか。

4-1. 予想が置いた10〜12月

通期予想は1月29日のまま据え置かれています。〈通期予想−9か月累計〉で10〜12月を出すと次のとおりです。

項目予想が置いた2026年10〜12月2025年10〜12月の実績前年同期比
売上高937.6949.2△1.2%
営業利益282.7310.4△8.9%
営業利益率30.2%32.7%△2.5pt
経常利益289.7319.5△9.3%
親会社株主に帰属する純利益203.1△91.5—

(単位:百万円。筆者の差し引き。累計は千円単位の短信の値、前年は通期と9か月累計の差)

予想は、10〜12月の売上を前年並み、営業利益率を7〜9月の37.1%から30%程度まで下げる形になっています。

用語メモ:予想を据え置いたまま累計が進むと、残り期間の予想は自動的に決まる。上の数字は会社が10〜12月だけの予想を発表したものではなく、通期予想から累計を引いた計算上の値。

4-2. 過去3年の同じ時点と比べる

期第3四半期時点の通期予想(営業)予想が置いた10〜12月の売上(前年比)同 営業利益(前年比)同 営業利益率実際の10〜12月 売上/営業利益達成率(売上/営業)その後の修正
2023年12月期896828(△9.7%)213(△30.6%)25.7%925/260111.7%/122.1%12/15 上方修正
2024年12月期1,011928(+0.3%)308(+18.5%)33.2%967/353104.2%/114.6%なし(第3四半期決算と同日に下方修正済み)
2025年12月期1,020992(+2.6%)209(△40.8%)21.1%949/31095.7%/148.3%12/12 営業上方・売上下方
2026年12月期1,170938(△1.2%)283(△8.7%)30.2%———

(単位:百万円。四半期の数字は説明資料の参考数値〈百万円単位〉、累計は短信。筆者の差し引き)

この表のポイントは3つです。

1つ目は、営業利益は3年とも予想が置いた10〜12月を上回ったことです(122.1%、114.6%、148.3%)。

2つ目は、売上は直近の2025年に届かなかったことです(95.7%)。前期の営業利益の大幅な上振れは、1章で見たとおり広告費を使わなかったことによるものでした。

3つ目は、今期の置き方が過去と違うことです。2023年と2025年は前年比△3割〜△4割という低い置き方でしたが、今期は△8.7%です。過去ほど余裕を残した置き方ではないので、「過去と同じだけ上振れする」とは書けません。

4-3. 10〜12月の売上と利益率を動かすと

10〜12月の売上(前年比)\10〜12月の営業利益率28%32%36%
△5%(902百万円)1,1401,1761,212
±0%(949百万円)1,1531,1911,229
+5%(997百万円)1,1661,2061,246

(単位:百万円。表の値は通期営業利益。9か月累計887.338百万円に、10〜12月の売上×営業利益率を足した筆者の試算で、将来の見通しではない。前年の10〜12月売上949.16百万円を基準にした。過去4年の10〜12月の営業利益率は33.5%・28.1%・36.5%・32.7%)

会社予想(1,170百万円)に届くのは、営業利益率が32%以上の6マスです。売上が前年並みでも、利益率が28%なら届きません。

結局、10〜12月を決めるのは2つです。

  • 家賃の比率がどこまで下がったままか:変動費率は7〜9月に23.6%まで下がりました。この水準が続けば、利益率は前年の10〜12月(32.7%)より上に出やすくなります。10月22日には、Webショップで買った人に「無償メロン」(おまけのゲーム内通貨)を付ける仕組みも始まりました。会社は導入の理由を「アプリ外課金の利用拡大に向けて」と書いています
  • 広告宣伝費をどれだけ使うか:会社は「広告宣伝費への積極投資」を短期方針に掲げ、11月1日からアプリ版12周年のキャンペーンを始めます。前期は広告費を使い残して利益が上振れました。今期、予算どおりに使えば上振れは小さくなり、使い残せば大きくなります。どちらになるかは開示からは分かりません

ここでも軸を回収します。 駅ナカの家賃が下がった分を、会社は広告(新しい旅人を呼ぶ費用)に回すこともできるし、利益として残すこともできます。予想の置き方は、家賃の改善分をある程度広告に回す前提とも読めますし、単に控えめに置いただけとも読めます。会社はどちらとも説明していません。


5. イベント解説:和解と特別利益、無償メロン

5-1. Suishowをめぐる経緯

2023年にこの会社は、位置情報共有SNS「NauNau」を運営するSuishow株式会社を子会社にしました。駅ナカの店1軒に頼る形から抜け出そうとした、2軒目の店だったと言えます。経緯を時系列で並べます。

日付出来事
2023年6月12日・21日株式取得と簡易株式交換でSuishowを完全子会社化。取得原価985百万円(現金〈未払金を含む〉821百万円、交付した自己株式180,000株の時価163百万円)、のれん999百万円
2023年10月NauNauで、少なくとも200万人以上のユーザーの位置情報やチャットが外部から閲覧可能な状態が生じていたとの報道。第三者機関による調査を開始
2023年12月15日のれんの減損損失899百万円を計上する見込みと開示。通期純利益予想を621百万円から△67百万円に修正
2024年3月18日元株主で子会社代表の片岡夏輝氏を相手に、損害補償等請求訴訟を提起(請求額6億円)。株式譲渡契約の表明保証に重大な違反があったとして、支払済みの約3.9億円の譲渡対価の返金等を求めた
2024年8月13日片岡氏が、株式譲渡契約に基づく追加対価の支払いを求めて反訴(請求額2億61百万円)。会社は当時「支払条件を満たしていないため支払い義務を負っていない」との立場
2025年12月12日子会社に対する投資に係る繰延税金資産313百万円の取り崩しを開示
2026年10月1日裁判外で和解契約を締結

(出典:2023年12月期有価証券報告書の企業結合注記、各適時開示)

5-2. 和解の内容と、まだ分からないこと

10月1日の開示と第3四半期短信の後発事象注記で分かっているのは次のことです。

  • 片岡氏が会社に解決金を支払う
  • 片岡氏が保有する同社株式は「所定の方法により処分」され、会社が保有するSuishowの全株式は片岡氏に譲渡される
  • 解決金の受領後に会社が本訴を取り下げ、引き換えに片岡氏も反訴を取り下げる
  • 反訴の取下げ後に「追加対価として計上済みの未払債務」が戻し入れられる
  • 解決金と未払債務の戻し入れによる利益の合計を、2026年12月期に特別利益として計上する予定。その額は前期の親会社株主に帰属する当期純利益の30%を上回る見込み

前期の純利益は488百万円なので、その30%は約1億46百万円です。発行済株式(自己株式を除く)で割ると1株あたり約22.6円になります(筆者の計算。税金を考慮する前の額で、会社が開示したのは「上回る」という下限だけ)。

一方、分かっていないことも多くあります。

  • 解決金の額、計上済みの未払債務の額(反訴の請求額は2億61百万円だが、帳簿上の額は本稿で確認した資料に記載がない)
  • 特別利益に税金がかかるか
  • 会社が「その他の和解契約に基づく権利行使又は義務の履行に伴う当社の連結業績への影響」と書き、精査中としている部分の中身。Suishow株式の譲渡、片岡氏の保有株式(2026年6月末で172,800株、議決権比率2.66%)の処分の方法も、具体的には開示されていません

通期予想(純利益819百万円)は1月29日のまま据え置かれており、この特別利益は含まれていません。経常利益予想1,180百万円と純利益予想819百万円から逆算した税負担率は30.6%で、9か月累計の実績(31.0%)とほぼ同じです。予想は特別損益をほとんど置いていない作り方と読めます。

事実を2つ並べておきます。 前期に取り崩した繰延税金資産は「子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の将来減算一時差異」についてのもので、取り崩しの理由は「解消される見込みが低下した」ことでした。そして今回の和解には、その子会社の全株式の譲渡が含まれます。この2つが会計上どう結びつくのか、結びつくのかどうかを会社は説明しておらず、筆者にも判断できません。続報か通期決算で確認する事項です。

軸の回収です。 2軒目の店を出そうとした試みは、のれんの減損、訴訟、税金の取り崩しを経て、店ごと元の持ち主に返す形で閉じることになりました。会社は駅ナカの店1軒に戻ります。今回の車内販売(Webショップ)は、店を増やすのではなく、同じ商品を売る場所を変えることで手元に残る額を増やす試みです。

5-3. 無償メロン

10月22日から、Webショップで対象商品を買うと、おまけとして「無償メロン」が付きます。従来のメロン(ゲーム内通貨)は「有償メロン」と呼び名が変わりました。無償メロンには有効期限(最後に付与または消費した日から180日)があり、有償メロンにはありません。

会社は導入の目的を「アプリ外課金の利用拡大」と書いています。駅ナカから車内販売に客を移すための、おまけの増量です。

おまけの通貨を付けることが売上の計上の時期にどう影響するか(おまけ分を前受金として繰り延べるのか等)は、会社が開示していません。貸借対照表の前受金(9月末69百万円)の動きを、次の決算で見ておく材料になります。


6. 資本政策と株主還元

6-1. 方針

会社の株主還元方針は2024年7月26日に変わりました(それまでは総還元性向30%目標)。現在の方針は次のとおりです(会社IRサイト・決算短信)。

  • 総還元性向60%を目標
  • 累進配当(減配なし)を前提に、配当性向40%以上またはDOE(株主資本配当率)7%以上の、いずれか高い水準で配当
  • 配当総額との差分は、業績・財政状態・株価水準等を総合的に勘案して自己株式を取得
  • 事業活動に直接影響しない非定常的な特殊要因で当期純損益が大きく変動する場合は、その影響を除いて株主還元金額を決める
  • 2025年12月期から中間配当(6月30日基準)を実施

方針の最後の注記が今期は効きます。和解の特別利益は「非定常的な特殊要因」に当たると読むのが自然で、方針どおりなら還元額の計算から除かれます。ただし、会社が今回の特別利益をそう扱うと明言したわけではありません。前期の繰延税金資産の取り崩しについては、会社はこの注記を適用し、取り崩しの影響を除いて配当を決めたと明言しています(2025年12月12日の配当予想の修正)。

6-2. 今期の配当は、どちらの物差しに張り付いているか

物差し計算1株配当
配当性向40%予想EPS126.56円×40%50.62円
DOE7%9月末の1株当たり純資産394.92円×7%27.64円
DOE7%(期首)2025年12月末の1株当たり純資産431.90円×7%30.23円
会社予想中間25円+期末26円51円

(筆者の計算。9月末の1株当たり純資産は、自己資本2,564,550千円÷自己株式控除後の株数6,493,838株)

配当予想51円は、配当性向40%の下限(50.62円)にぴったり張り付いています(配当性向40.3%)。DOEの物差しは大きな自己株式取得で純資産が減ったため下がっており、今期の配当を支えているのは利益側の物差しです。

ここから2つのことが言えます。

  • 強気側:利益が予想を上回れば、方針上は配当の下限も上がる
  • 弱気側:配当が「方針の下限」で決まっているので、上乗せの余地を会社が残しているとは読めない。また、純資産が減り続ける形の還元なので、DOE7%の下限は年々下がる

6-3. 配当と自己株式取得の推移

期1株配当配当の決め方配当性向(連結)自己株式取得
2022年12月期0円総還元性向30%目標(2018年方針)——
2023年12月期8円同上—(純損失)—
2024年12月期37円総還元性向60%・累進配当・配当性向40%以上またはDOE7%以上(2024年7月変更)40.1%249百万円(2024年1〜3月)
2025年12月期44円(中間20円・期末24円)同上65.0%390百万円(2025年2〜8月)
2026年12月期(予想)51円(中間25円・期末26円)同上40.3%799百万円(2026年2月)

(決算短信・有価証券報告書・自己株式取得の適時開示。2022年・2023年の自己株式取得額は本稿で確認していないため空欄)

2025年12月期の配当は、期初予想40円→12月に43円→1月に44円と2回引き上げられました。配当性向65.0%は、繰延税金資産の取り崩しで純利益が減った結果で、取り崩しを除いた純利益(約801百万円)で計算すると約39%です(筆者の計算)。

会社は、2026年2月に行った7億99百万円の自己株式取得を2025年12月期の還元として数えており、上限まで取得した場合の総還元性向を228.2%と開示しています(〈配当314百万円+自己株式取得800百万円〉÷純利益488百万円)。目標の60%を大きく超えているのは、5月15日の資本コストに関する開示にある「事業運営に不可欠な必要資金を超える過剰な現預金は、原則保有せず株主還元と成長投資に充当する」という方針によるものです。

同じ開示には、2026年の資金配分の目安として、保有現預金約22億円(2025年末の現預金から、2026年1月以降に支払う約10億円の還元を差し引いた額)と営業CF約8億円を、成長投資約14億円・必要資金約11億円・株主還元約5億円に振り分ける図が載っています。今期の配当総額は筆者の概算で約3億31百万円(51円×6,493,838株)なので、約5億円の還元目安との差は約1.7億円です。

軸の回収です。 店が1軒で、2軒目の試みも閉じた会社にとって、稼いだ現金の使い道は限られます。成長投資に約14億円を充てるとしていますが、その中身(新規事業・M&A・システム基盤等)は具体的な案件として開示されていません。使い道が見つからない現金を株主に返す、という形が還元方針の背景にあると読めます。

6-4. 自己株式取得の相手先

2年続けて、取得の大半がToSTNeT-3(東証の立会外で、前日終値で買い付ける仕組み)でした。

取得日方法株数価格相手先の開示
2025年2月6日ToSTNeT-3217,500株997円(2月5日終値)有報の関連当事者情報:代表取締役の宮嶌裕二氏から取得(取引金額216,847千円)
2026年2月5日ToSTNeT-3641,000株1,244円(2月4日終値)2026年12月期の有報で開示される見込み(本稿執筆時点で未開示)
2026年2月市場買付2,200株平均約1,164円—

(自己株式取得の適時開示、2025年12月期有価証券報告書)

宮嶌氏の保有株数を大株主表で並べると、次のとおりです。

時点宮嶌裕二氏の保有株数議決権比率(自己株式を除く)
2024年9月30日3,842,300株50.96%
2024年10月25日3,767,300株49.97%
2025年12月31日3,549,800株49.74%
2026年6月30日3,069,800株47.27%

(2024年は「親会社以外の支配株主の異動に関するお知らせ」、2025年・2026年は有価証券報告書・半期報告書の大株主の状況)

2024年10月25日から2025年12月31日までの減少217,500株は、2025年のToSTNeT-3の取得株数と一致し、相手先も有報で開示されています。2026年1月から6月までの減少は480,000株で、同氏の変更報告書の提出日は2026年2月5日(ToSTNeT-3の取得日と同じ日)です。ただし2026年のToSTNeT-3の相手先は、会社がまだ開示していないので、本稿では断定しません。

用語メモ:大量保有報告書の「株券等保有割合」と、大株主表の「議決権比率」は分母が違う。前者は自己株式を含む発行済株式総数(新株予約権等を持っていればその分も加える)、後者は自己株式を除いた議決権の総数。同氏の変更報告書(2026年2月5日提出)の保有割合は35.61%で、大株主表の47.27%とは一致しない。本稿では報告書本体は読んでおらず、データ提供サービス経由で数字を確認した。

分母の話をもう1つ。 自己株式取得が続くと、宮嶌氏が売らなくても同氏の議決権比率は上がります。2026年6月末の保有株数(3,069,800株)のまま、自己株式控除後の株数が354,238株減ると、比率はちょうど50%になります(筆者の計算)。同氏は2024年10月、保有株の売却で比率が50%を下回り、「親会社以外の支配株主」に該当しなくなっています。今後の自己株式取得の規模と、筆頭株主の比率の関係は、取得の開示のたびに確認しておく材料です。片岡氏の保有株172,800株が「所定の方法」で処分される点も、方法によってはこの計算に影響します(方法は未開示)。

6-5. 株数・潜在株式

  • 発行済株式総数:7,925,495株(2026年3月31日に自己株式1,000,000株を消却)
  • 自己株式:1,431,657株(発行済の18.06%)
  • 自己株式控除後:6,493,838株
  • 潜在株式:2025年12月期末で新株予約権2種類(2,176個)があるが、希薄化効果がないため潜在株式調整後EPSは記載なし
  • 株式分割・併合:直近5期なし(調整不要)

6-6. 株主優待

最初に1つ断っておきます。この優待の存在そのものについて、開示どうしが食い違っています。

  • 会社IRサイト「株主還元・株式情報」(2026年10月23日確認):株主優待制度を導入している、と記載
  • 2025年12月期の有価証券報告書(2026年3月13日提出)「株主に対する特典」欄:「該当事項はありません」

制度の新設は2024年10月25日に適時開示され、初回の基準日は2026年3月末とされていました。有報は2025年12月期についての書類で、初回の基準日より前の期のものです。ただし、記載が「該当なし」になっている理由は開示されていないので、本稿では推測しません。以下は会社IRサイトと新設時の適時開示の内容に基づきます。最新の状況は会社IRで確認してください。

内容

項目内容
対象3月末日・9月末日の株主名簿に記載された、1,000株以上を1年以上継続保有する株主
1年以上継続保有の定義基準日(3月末日・9月末日)の株主名簿に、1,000株以上の保有を同一株主番号で連続3回以上記載されること
優待各基準日ごとにデジタルギフト1万円分(年間2万円分)
交換先(新設時の開示)Amazonギフトカード、QUOカードPay、PayPayマネーライト、dポイント、au PAYギフトカード、Visa eギフト vanilla、図書カードNEXT、Uber Taxi・Uber Eatsギフトカード、Google Playギフトコード、PlayStation Storeチケット、DMMプリペイドカード、JALマイレージバンク(今後変更の可能性あり)
贈呈時期各基準日から3か月以内をめど
目的(会社の説明)市場での認知度を高め、個人投資家の取引を活性化し、出来高・流動性を高めること

保有株数別の名目価値

保有株数年間の優待1株当たり優待額名目の優待利回り年間の配当(予想51円)
100株0円0円0%5,100円
900株0円0円0%45,900円
1,000株20,000円20.0円1.84%51,000円
2,000株20,000円10.0円0.92%102,000円
5,000株20,000円4.0円0.37%255,000円

(名目利回りは2026年10月23日終値1,085円で筆者が計算。1年以上継続保有の条件を満たした場合)

この表のポイントは2つです。1つ目は、1,000株未満では優待はゼロで、900株持っていても受け取れないこと。2つ目は、1,000株を超えて持っても優待は増えないことです。1,000株保有の場合、1株当たりの優待(20円)は1株配当(51円)の約4割に当たり、配当と合わせた名目利回りは6.54%になります(1,000株の買付代金は約108.5万円)。

名目と実質

交換先にAmazonギフトカード、QUOカードPay、PayPayマネーライトなどが並んでおり、多くの人にとって現金に近い使い勝手です。自社サービスの割引券ではないので、駅メモ!を遊ばない株主でも価値がゼロになりにくい設計です。一方で、案内に沿ってWeb上で交換先を選ぶ手続きが要り、選択期間を過ぎると受け取れなくなると会社は注意しています。

待ち時間:「1年以上」と実際の待ち時間

名簿は3月末と9月末の年2回で、連続3回の記載が条件です。2026年9月末の名簿はすでに締まっているので、いまから買った場合の流れは次のとおりです。

名簿の日権利付き最終日回数優待
2027年3月31日(水)2027年3月29日(月)1回目なし
2027年9月30日(木)2027年9月28日(火)2回目なし
2028年3月31日(金)2028年3月29日(水)3回目1万円分(2028年6月ごろまでに発送の見込み)

(権利付き最終日は基準日の2営業日前で筆者が計算。2027年9月・2028年3月の日付は、祝日の配置を個別に確認していないので、その時点で取引所のカレンダーで確かめてください)

最初の受け取りは約1年5か月先です。「同一株主番号」が条件なので、証券会社の移管などで株主番号が変わると、回数が途切れる可能性があります。

優待と配当の基準日は別

権利基準日直近の権利付き最終日
期末配当(予想26円)12月31日2026年12月28日(月)
株主優待(1,000株以上・継続保有)3月31日・9月30日2027年3月29日(月)
中間配当6月30日2027年6月28日(月)ごろ

(12月31日は取引所の休業日なので、直前の営業日12月30日(水)から2営業日さかのぼって計算した)

12月末に株主でも優待はもらえず、3月末に株主でも配当はもらえません。会社IRサイトの株式情報欄は「剰余金配当の基準日:毎年6月30日、12月31日」と書いており、優待の基準日とは別に読む必要があります。

参考までに、2026年9月30日の優待の権利付き最終日は9月28日(月)で、この日の終値は1,060円(前日比△51円、出来高99,400株)、翌29日(権利落ち日)は1,092円でした(Yahoo!ファイナンスの時系列。報道ベース)。値動きと権利の関係は分からないので、因果は書きません。

継続性

優待費用の見込みは開示されていません。制度は「対象となる株主1人につき年2万円」の定額なので、1,000株以上を長く持つ株主が増えるほど費用が膨らむ設計です。初回の基準日(2026年3月)の対象は、2025年3月末から1,000株以上を持ち続けた株主に限られるため、制度が始まったばかりの今期の費用は小さい可能性がありますが、確認はできていません。通期決算で費用の計上額が分かるかを確認する事項です。

「優待目当てで1,000株を買うか」については、判断軸だけ示します。約108.5万円の株価変動リスクを1年5か月以上負って、年2万円(1.84%)の上乗せを得る形です。1,000株に満たない保有なら、優待は計算に入りません。


7. 株価の見方

7-1. 株価の基準点と決算発表日の値動き

項目値
2026年10月23日終値1,085円(前日比+7円)
当日の始値・高値・安値始値1,065円(9時00分)、高値1,095円(13時04分)、安値1,058円(13時00分)
当日の出来高75,400株(直近5営業日は3,500〜7,600株)
年初来高値・安値1,298円(2026年2月2日)、1,018円(2026年1月9日)

(Yahoo!ファイナンス。報道ベース)

決算は10月23日13時00分(後場の取引時間中)に発表されました。当日の高値と安値はいずれも13時00分以降に付いていますが、時刻別の約定は確認していないので、値動きと決算の因果は書きません。同じ日の15時00分には、アプリ版12周年キャンペーンの開示も出ています。

一次情報から復元できる株価の基準点も並べておきます。

経路出所株価
ToSTNeT-3の取得価格2025年2月6日の取得結果997円(2025年2月5日終値)
有報の株価収益率×EPS2025年12月期有報 16.3倍×67.66円約1,103円(2025年12月末)
時価ベースの自己資本比率×総資産÷株数2025年12月期短信 198.4%×3,979百万円÷7,137,038株約1,106円(2025年12月末)
ToSTNeT-3の取得価格2026年2月5日の取得結果1,244円(2026年2月4日終値)

(筆者の計算。2025年12月末の2経路は丸めの範囲で一致)

7-2. 指標

指標値計算
時価総額(自己株式を除く)約70億円1,085円×6,493,838株
時価総額(発行済ベース)約86億円1,085円×7,925,495株
予想PER8.57倍1,085円÷予想EPS126.56円
PBR2.75倍1,085円÷9月末1株当たり純資産394.92円
予想配当利回り4.70%51円÷1,085円
現預金÷時価総額36.7%9月末現預金2,588百万円÷約7,046百万円

(筆者の計算。株価は2026年10月23日終値)

予想PERは和解の特別利益を含まない純利益予想に基づいています。特別利益が開示の下限(約1億46百万円)ちょうどだった場合、1株あたりの上乗せは税金を考慮する前で約22.6円です。税金の扱いと「その他の影響」が分からないので、特別利益込みのPERは計算していません。

7-3. 強気の読み方

  • 家賃の比率は構造的に下がった可能性がある。変動費率は4四半期連続で下がり、7〜9月は23.6%。Appleの手数料引き下げとWebショップは、どちらも一度きりの施策ではなく続く仕組みで、10月には無償メロンで客を車内販売へ誘導する手も打った
  • 予想が10〜12月に置いた営業利益率30.2%は、7〜9月の37.1%より低い。過去3年、同じ時点の予想が置いた10〜12月の営業利益は毎年上回ってきた
  • 和解の特別利益は予想の外側。少なくとも1億46百万円超
  • 還元方針がはっきりしている。累進配当・配当性向40%以上・総還元性向60%。有利子負債はなく、現預金は時価総額の約37%

7-4. 弱気の読み方

  • 店が1軒しかない。売上の93%がモバイルゲーム事業、前期の売上の82%がGoogleとApple経由。2軒目の試み(Suishow)は和解で手放す
  • 家賃の条件は大家が決める。会社自身が有報の事業等のリスクで、アプリマーケット運営会社の「手数料率の変更」等を対策優先度「高」に挙げている。今回の改善は制度変更の追い風によるところがあり、条件は今後も変わりうる
  • 売上の予想は2期続けて届かなかった。前期の営業利益の上振れは広告費の使い残しによるもので、売上の強さではなかった。今期の予想は過去ほど余裕を残した置き方ではない
  • 広告を増やすほど上振れは小さくなる。会社は広告宣伝費への積極投資を短期方針に掲げており、予算どおり使えば10〜12月の利益率は下がる
  • 長く遊ぶ人が多いことの裏返し。アクティブユーザーの約54%がインストールから5年以上。新しい旅人を呼ぶには広告が要る
  • 和解の「その他の影響」が未開示。特別利益の額だけでなく、Suishow株式の譲渡や片岡氏の保有株の処分が業績に与える影響は精査中
  • 流動性が低い。筆頭株主が47.27%を持ち、決算発表日以外の出来高は1日数千株の日が多い。売買したいときに思った値段で売買できない可能性がある

どちらの読み方も、使っている数字は同じです。変動費率の改善を「続く構造」と読むか「制度変更による一度きりの段差」と読むか、広告費を「将来の旅人への投資」と読むか「利益の取り崩し」と読むかで、同じ決算の見え方が変わります。


8. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期出来事見るポイント
2026年11月1日〜駅メモ!アプリ版12周年キャンペーン10〜12月の売上(前年949百万円)
未定和解の続報(解決金の受領、反訴の取下げ、Suishow株式の譲渡、片岡氏の保有株式の処分)特別利益の額、「その他の影響」の中身、自己株式の変動
2026年12月28日(月)期末配当(予想26円)の権利付き最終日—
2026年12月31日(木)期末配当の基準日(取引所は休業日)—
2027年1月下旬(例年。前期は1月29日)2026年12月期通期決算10〜12月の変動費率と広告宣伝費、特別利益、来期予想、還元額と自己株式取得の有無、優待費用
2027年3月中旬(例年。前期は3月13日)2026年12月期有価証券報告書関連当事者情報(2026年2月のToSTNeT-3の相手先)、「株主に対する特典」欄、大株主の状況
2027年3月29日(月)優待(3月31日基準)の権利付き最終日新しく買う場合は継続保有のカウント1回目
2027年3月定時株主総会—

見るべきKPI

KPI直近の値なぜ見るか
変動費÷モバイルゲーム売上23.6%(2026年7〜9月)家賃の比率。車内販売への移行がどこまで進むか
PF手数料と回収代行手数料168百万円・25百万円内訳の入れ替わり。粗利率の見え方の歪みの大きさ
広告宣伝費83百万円家賃の改善分を利益に残すか、広告に回すか
10〜12月の営業利益率予想が置いたのは30.2%過去4年は28.1〜36.5%
前受金69百万円(9月末)無償メロン導入後の動き
コンテンツ事業の売上56百万円(7〜9月)縮小のペース
宮嶌氏の議決権比率47.27%(6月末)自己株式取得で分母が縮むと上がる

9. 3行まとめ

  • 7〜9月の営業利益+62百万円は、ほぼ全額がアプリストアへの手数料(駅ナカの家賃)の比率が下がったことで説明でき、粗利率(+7.3pt)は手数料の置き場所の違いで改善を大きく見せている。営業利益率(+5.1pt)で測るのが正確
  • 通期予想は10〜12月に営業利益約2億83百万円(前年比△8.7%、利益率30.2%)を置いている。過去3年は毎年これを上回ったが、前期の上振れは広告費の使い残しによるもので、今期は広告の使い方しだい
  • 和解で1億46百万円超の特別利益が出る見込みで予想には未反映。配当予想51円は配当性向40%の下限に張り付いている。優待は会社IRサイトと有報の記載が食い違っており、いま買うと最初の受け取りは2028年3月末基準

免責

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘や投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、モバイルファクトリーの決算短信(2026年12月期第3四半期、2025年12月期)、決算説明資料(2026年12月期第3四半期)、適時開示(業績予想の修正、配当予想の修正、株主還元方針の変更、株主優待制度の新設、自己株式の取得、訴訟・和解、親会社以外の支配株主の異動、無償メロン導入、Webショップ開設、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応)、有価証券報告書(2023年12月期・2025年12月期)、半期報告書(2026年12月期)、会社IRサイトです。「筆者の計算」「筆者の差し引き」「筆者の試算」と書いた数値は概算です。株価・出来高・年初来高値安値はYahoo!ファイナンスの表示(報道ベース)で、2026年10月23日終値を基準にしています。

以下の点にご注意ください。

  • 売上原価・販管費の内訳(PF手数料、回収代行手数料、広告宣伝費、その他の売上原価、サーバー費用)は、説明資料のグラフを描画して筆者が目視で読み取った値です。各四半期の合計が参考数値の売上原価・販管費と±2百万円の範囲で一致することは確認しましたが、個々の値には読み取り誤差の可能性があります。外注費とその他の販管費は残差として計算したもので、グラフのラベルとは一致しない場合があります
  • 四半期の数値は説明資料の参考数値(百万円単位)を使っており、4四半期の合計は通期の開示値と1〜3百万円ずれます
  • 決算説明会(機関投資家・証券アナリスト向け)の質疑応答は一切反映していません
  • 決算は取引時間中の13時00分に発表されました。当日の値動きが発表の前後どちらで生じたかは、時刻別の約定で確認していません
  • 和解について、解決金の額、計上済みの未払債務の額、特別利益にかかる税金、「その他の影響」の中身は開示されておらず、推測していません。前期の繰延税金資産の取り崩しと今回のSuishow株式の譲渡の関係も、会社は説明しておらず、本稿では判断していません
  • 無償メロンの会計処理は開示されていません。前受金との関係は筆者の着眼で、会社の開示に基づくものではありません
  • 2026年2月のToSTNeT-3による自己株式取得の相手先は、会社が開示していないため特定していません
  • 宮嶌氏の変更報告書(2026年2月5日提出)の数値は、データ提供サービス経由で確認したもので、報告書本体は読んでいません。2026年10月23日時点で、それ以降の変更報告書は確認していません
  • 株主優待は、有価証券報告書の「株主に対する特典」欄(「該当事項はありません」)と会社IRサイト(制度あり)の記載が食い違っています。食い違いの理由は推測していません。優待費用は開示されていないため計算していません
  • Appleの手数料引き下げの内容は報道で確認したもので、Appleの原文は確認していません
  • 2027年以降の権利付き最終日は、祝日の配置を個別に確認していない日付を含みます

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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