株式投資

【2026年10月発表・第1四半期決算】ドーン(2303)営業利益27%増の6〜8月は何が増え、何が後ろにずれただけなのか――会社予想が残り9か月に置いた「前年割れ」をどう読むか

本記事は2026年10月9日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ドーン(2303、東証スタンダード、5月決算)が2026年10月8日14時00分に、2027年5月期の第1四半期(2026年6〜8月)決算を発表しました。売上高は前年同期比7.4%増、営業利益は27.0%増、四半期純利益は22.8%増です。通期の会社予想(営業利益6億70百万円)は据え置かれ、会社は「想定どおりに進捗」と書いています。

見出しの「27%増益」は、実は前年の6〜8月が過去3年で最も弱い3か月だったことの裏返しでもあります。2年前の6〜8月と比べると、売上は8.6%少なく、営業利益は15.3%少ない水準です。さらに、粗利率が4ポイント近く上がった理由の一部は、費用が「まだ損益計算書に出てきていない」ことにあります。

この記事では、6〜8月の増益の中身を「本当に増えたもの」と「後ろにずれただけのもの」に分け、そのうえで会社予想が残り9か月に何を置いているかを確かめます。

この記事でわかること

  • ドーンは「119番や防災の道具を、自治体ごとに作り直す代わりに1つ作って全国に月額で貸している会社」で、売上の約6割が毎月積み上がる利用料・保守料であること
  • 6〜8月のクラウド利用料(2億42百万円)は、同じ3か月の売上原価と販管費の合計(2億24百万円)を上回ったこと。利用料だけで3か月分の費用をまかなえた計算になること
  • 粗利率が69.3%から73.2%に上がった一方、仕掛品(作りかけのシステムに積まれた費用)を足し戻した「3か月に実際に使った原価」は前年比+1.1%で、粗利率の改善の一部は費用が年度末の納品まで繰り延べられた結果であること(筆者の概算)
  • 会社予想は残り9か月の営業利益に前年同期間比△1.2%を置いていること。過去3年、同じ時点で予想が置いた残り9か月に対する実際の達成率は109.4%・103.2%・108.5%で、3年とも上振れていること
  • 純利益予想4億85百万円は、第1四半期の見積税率(31.5%)より低い税負担率(29.4%)を置いた形で、第1四半期の税率のままだと約14百万円届かない計算になること(筆者の試算)
  • 累進配当(12期連続増配予想)、2年続けて1〜3月に行われた自己株式取得、そして資本業務提携先tiwakiの子会社化計画の現在地

1. ドーンはどんな会社か:119番の道具を「1つ作って全国に貸す」会社

軸となる例え

耳や言葉に障害のある人が、声を出さずにスマートフォンの画面操作だけで119番通報できる仕組みがあります。通報者がスマートフォンのカメラで現場を映し、消防の指令員がその映像を見ながら救急車を出す仕組みもあります。こうした「通報を受ける道具」は、本来なら消防本部や自治体が一つひとつ業者に発注し、自前のシステムとして持つものでした。

ドーンは、この道具を自治体ごとに作り直す代わりに、自分で1つ作ってクラウドに置き、全国の消防・警察・自治体に月額で貸している会社です。主な道具は、NET119(聴覚・言語障害者向けの緊急通報)、Live119(映像通報)、Live-X(民間向けの映像通話)、DMaCS(災害情報共有)、警察の防犯アプリ「Digi Police」や自治体の防災アプリなどです(2026年5月期決算短信、招集通知)。創業期は地図を扱うGIS(地理情報システム)の会社で、今もGISの受託開発とライセンス販売を続けています。

つまりこの会社には、2つの稼ぎ方があります。

  • 貸し道具の使用料:道具を一度作れば、貸す先が増えるほど毎月の利用料が積み上がる(クラウド利用料・保守)
  • 年度末の特注品:既存の道具の機能追加や、電力会社向けのGISなど、個別に作って納める仕事(クラウド初期構築・SI初期・ライセンス販売)

この例えで、強みと弱みが同じ一文から出てきます。

  • 強み:使用料は毎月入ってくるので、貸し先が積み上がるほど会社の固定費(ほぼ人件費)を早く回収できる
  • 弱み①(時期と量):特注品の納期と量は、お客さんである役所の年度末(3月)と予算が決める。自分では決められない
  • 弱み②(偏り):貸し道具の中では、NET119の利用料の割合が大きい。また、売上の7%程度にすぎないGISソフトのライセンス販売に、利益面ではまだ大きく頼っている(有価証券報告書「事業等のリスク」)

事業の構造(2026年5月期・品目別)

品目中身売上高構成比前期比区分
クラウド利用料NET119・Live119・各種アプリ等の月額利用料9億07百万円52.3%+10.0%ストック
クラウド初期構築クラウドサービスの導入・機能追加3億72百万円21.5%+19.7%フロー
SI保守受託開発したシステムの保守77百万円4.5%△10.1%ストック
SI初期GIS等の受託開発2億27百万円13.1%△30.1%フロー
その他保守(ライセンス、商品)ライセンスの保守39百万円2.3%△1.7%ストック
その他初期(ライセンス、商品)GISソフトのライセンス販売、機器等1億10百万円6.3%+89.0%フロー
合計—17億34百万円100%+5.3%—

出典:2026年5月期決算短信・決算説明資料の品目別売上高。「ストック」「フロー」の区分は会社の説明資料の分類。セグメントは情報サービス事業の単一。株主優待:制度なし(§6で詳述)。

この表のポイントは2つです。

1つ目は、ストック型(利用料+保守)が売上の59.1%を占めることです。会社は決算説明会で「ゆくゆくは全体の70〜75%程度まで引き上げていけられれば」と話しています(2026年7月21日の決算説明会の書き起こし)。収益認識の注記でも、一定の期間にわたって認識する売上が59.1%(前期57.8%)です。

2つ目は、フロー型は年によって品目の中身が大きく入れ替わることです。前期はSI初期が3割減った代わりに、クラウド初期構築とライセンス販売が増えました。前々期(2025年5月期)には大型のSI初期開発があり、株式会社STNet向けの売上が2億30百万円(売上の14.0%)ありましたが、2026年5月期は売上の10%を超える顧客はいません(決算短信の主要な顧客ごとの情報)。

用語メモ:顧客名と案件を結びつけない 会社は「前期に大型のSI初期開発売上があった反動」と説明していますが、その案件の相手先は名指ししていません。主要な顧客ごとの情報に載っている会社名と、この説明の「大型案件」を結びつける記述は会社の開示にはないので、本記事でも結びつけていません。

直近5期の業績推移

決算期売上高経常利益純利益EPSROE1株配当(分割後換算)配当性向従業員数
2022年5月期12億22百万円4億04百万円2億83百万円44.26円14.1%7円15.8%60名
2023年5月期13億68百万円4億51百万円3億21百万円50.56円14.7%8円15.8%61名
2024年5月期15億00百万円5億47百万円3億88百万円62.54円16.5%10円16.0%63名
2025年5月期16億46百万円5億84百万円4億18百万円68.33円16.0%12円17.6%65名
2026年5月期17億34百万円6億72百万円4億71百万円78.02円16.4%14円17.9%66名

出典:2026年5月期有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」(非連結)。EPSは2026年6月1日付の株式分割(1株→2株)を遡って調整した値。1株配当は分割前の実績(14円・16円・20円・24円・28円)を筆者が2で割って換算したもの。配当性向は有報の値。

会社は11期連続の増収増益と説明しています(説明資料)。この5期で従業員は60名から66名にしか増えていないのに、売上は約1.4倍になりました。「1つ作って貸す」型の売上が積み上がると、人を増やさなくても売上が伸びることが、この表にそのまま出ています。

中期経営計画:最終年度の利益目標を2年目で追い越した

会社は2025年7月に第2次中期経営計画(2026年5月期〜2028年5月期)を出し、2026年7月に数値を更新しました。

項目2026年5月期 当初予想→実績2027年5月期 旧目標→新予想2028年5月期 旧目標→新目標
売上高17億00百万円→17億34百万円17億90百万円→18億00百万円18億80百万円→18億80百万円
営業利益6億10百万円→6億55百万円6億40百万円→6億70百万円6億70百万円→6億70百万円+α
経常利益6億17百万円→6億72百万円6億47百万円→6億87百万円6億77百万円→6億87百万円+α
純利益4億35百万円→4億71百万円4億56百万円→4億85百万円4億77百万円→4億85百万円+α

出典:2026年5月期決算説明・中期経営計画進捗説明資料(2026年7月)。「+α」は会社の表記(資料上は「+@」)。

会社は説明資料に次のように書いています(原文)。

第2次中期経営計画の最終年度である2028年5月期の当期純利益目標477百万円について、2026年5月期に約99%を達成したことを受け、2027年5月期、2028年5月期の目標を更新いたしました。しかしながら、受託開発の受注について一定の不確実性があること、及び物価高の先行きを明確に見通すことが困難であること等の理由により、2028年5月期の営業利益、経常利益、当期純利益は2027年5月期と同数値を用いております。

ここから読めるのは、最終年度の利益目標は今期予想と同額で、売上だけが+4.4%伸びる形になっているということです。社長は決算説明会で「3年目はその先を見据えた『+α』の数値として、保守的に見込んでおります」と話しています(書き起こしベース)。

会社予想の達成履歴:3年続けて期中修正なし、3年とも上振れ

決算期期初予想(開示日)期中の修正実績期初予想比
2024年5月期売上14億60百万円・営業4億93百万円・純利益3億43百万円(2023年7月)なし売上15億00百万円・営業5億33百万円・純利益3億88百万円売上+2.8%・営業+8.1%・純利益+13.2%
2025年5月期売上15億80百万円・営業5億60百万円・純利益3億95百万円(2024年7月11日)なし売上16億46百万円・営業5億74百万円・純利益4億18百万円売上+4.2%・営業+2.5%・純利益+6.0%
2026年5月期売上17億00百万円・営業6億10百万円・純利益4億35百万円(2025年7月10日)なし売上17億34百万円・営業6億55百万円・純利益4億71百万円売上+2.0%・営業+7.4%・純利益+8.4%
2027年5月期売上18億00百万円・営業6億70百万円・純利益4億85百万円(2026年7月9日)第1四半期時点でなし——

出典:各期の決算短信(2024年5月期の期初予想は第3四半期短信で「修正の有無:無」とされた数値)。期初予想比は筆者の計算。

3年とも期中に一度も予想を修正せず、3年とも期初予想を上回って着地しています。社長は2026年7月の決算説明会で、予想について「意図してそのような考え方を採っています」「まずは着実に達成できる目標を掲げ、その目標を一つひとつ積み重ねていくことを基本方針としております」と説明しています(書き起こしベース)。

この「保守的に置く」という方針を前提に置くと、今期の予想の読み方が変わります。§4で、予想が残り9か月に何を置いているかを過去3年と並べます。

用語メモ:書き起こしと短信の数字が違う箇所 決算説明会の書き起こしでは、社長が2026年5月期の営業利益予算を「6.19億円」と話していますが、決算短信と説明資料の期初予想は6億10百万円です。本記事では短信の数字を使っています。


2. 第1四半期決算のハイライト

今回の短信の表紙は「決算補足説明資料作成の有無:無」「決算説明会開催の有無:無」です。第1四半期についての会社の説明は短信の本文だけで、以下の会社説明のうち第1四半期以外の部分は2026年7月の資料・説明会に基づきます。

損益計算書(6〜8月)

科目2026年5月期 第1四半期2027年5月期 第1四半期増減率
売上高3億03百万円3億25百万円+7.4%
売上原価93百万円87百万円△6.2%
売上総利益2億10百万円2億38百万円+13.3%
売上総利益率69.3%73.2%+3.9pt
販売費及び一般管理費1億30百万円1億36百万円+5.0%
営業利益80百万円1億01百万円+27.0%
営業利益率26.4%31.2%+4.8pt
営業外収益(受取利息+有価証券利息)4百万円(3百万円)4百万円(4百万円)—
経常利益84百万円1億06百万円+26.2%
法人税等24百万円33百万円—
四半期純利益59百万円72百万円+22.8%
1株当たり四半期純利益9.75円12.22円+25.3%

出典:2027年5月期第1四半期決算短信(百万円未満切捨て)。率・増減率は千円単位から筆者が計算。EPSは株式分割後の基準。

この表のポイントは3つです。

  • 売上が増えたのに、売上原価は減っています(△6.2%)。粗利率が3.9pt上がったことが、営業利益+27.0%の最大の理由です。この「原価が減った」理由は§3で分解します
  • 純利益の伸び(+22.8%)が経常利益(+26.2%)より小さいのは、税負担率が29.6%から31.5%に上がったためです。四半期の税金は「通期の見積実効税率」を掛けて計算しているので(短信注記)、31.5%は会社が見込む今期の負担率です。この点は§4で扱います
  • EPSの伸び(+25.3%)が純利益の伸びより大きいのは、2026年1〜3月の自己株式取得で期中平均株式数が6,071,588株から5,945,388株に減ったためです(72,662千円÷5,945,388株=12.22円)

営業利益の増減を3つに分ける

要因計算金額
数量効果(売上の増加)売上増加額22百万円 × 前年粗利率69.3%+15.5百万円
率効果(粗利率の改善)当期売上3億25百万円 × 粗利率の差3.86pt+12.6百万円
販管費の増加1億36百万円−1億30百万円△6.5百万円
合計—+21.6百万円(実際の増加と一致)

筆者の計算。千円単位で計算し、四捨五入して表示しています。

増益21.6百万円のうち、約4割(12.6百万円)が粗利率の改善によるものです。

品目別の売上(6〜8月)

品目前年同期当期増減額前年比
クラウド利用料2億18百万円2億42百万円+23.9百万円+10.9%
クラウド初期構築18百万円37百万円+19.6百万円+108.2%
SI保守18百万円20百万円+1.7百万円+8.9%
SI初期—1百万円+1.7百万円—
その他保守(ライセンス、商品)9百万円9百万円+0.2百万円+2.2%
その他初期(ライセンス、商品)38百万円13百万円△24.7百万円△64.3%
合計3億03百万円3億25百万円+22.3百万円+7.4%
うちストック型(利用料+保守)2億47百万円2億72百万円+25.8百万円+10.4%
うちフロー型(初期・ライセンス)56百万円53百万円△3.4百万円△6.1%

出典:決算短信の品目別売上高(当期の金額と前年同期比)。前年同期の金額は2026年5月期第1四半期短信。増減・区分の合計は筆者の計算。

会社は、増収の理由を「ストック型売上であるクラウド利用料の順調な増加」と「クラウド初期構築において既存アプリの機能追加等」、減収要因を「前年同四半期にライセンス販売において消防防災を中心に新規・更新受注があった反動」と説明しています(短信)。

増収分はすべてストック型から来ており、フロー型はむしろ減っています。フロー型の中では、ライセンス販売の反動(△24.7百万円)をクラウド初期構築の倍増(+19.6百万円)がほぼ埋めた形です。§1の軸で言えば、貸し道具の使用料が着実に積み上がり、特注品は中身が入れ替わっただけ、という3か月でした。

2年前の6〜8月と比べると

決算期6〜8月の売上高営業利益営業利益率
2025年5月期3億56百万円1億20百万円33.7%
2026年5月期3億03百万円80百万円26.4%
2027年5月期3億25百万円1億01百万円31.2%

出典:各期の第1四半期決算短信。率は筆者の計算。

**2年前と比べると、売上は△8.6%、営業利益は△15.3%**です。2年前の6〜8月には「大型のSI初期開発売上」(2025年5月期第1四半期短信)がありました。今回の+27.0%は、谷だった前年からの戻りを含んだ数字です。前年比・2年前比のどちらも事実で、どちらか一方だけでは6〜8月の実力は見えません。


3. 深掘り①:6〜8月は「使用料だけで全費用をまかなえた3か月」――ただし費用の一部は後ろにずれている

ここからの深掘りは、一つの問いを3段階で追います。「6〜8月の27%増益のうち、本当に増えたものは何で、後ろにずれただけのものは何か。そして会社予想は残り9か月に何を置いているか」。まず、この会社の1年がどういう形をしているかを確認します。

5月決算なので、第1四半期=6〜8月、第2四半期=9〜11月、第3四半期=12〜2月、第4四半期=3〜5月です。短信は累計で開示されるので、各四半期の数字は筆者が累計から差し引いて出しました。

用語メモ:累計からの差し引き 決算短信は「第1四半期累計」「中間累計」「第3四半期累計」のように期首からの累計で数字を出します。3か月単独の数字を知るには「中間累計−第1四半期累計=第2四半期の3か月」のように自分で引き算する必要があります。

13四半期の推移(百万円)

決算期四半期売上高粗利率販管費営業利益営業利益率
2024年5月期6〜8月252.270.1%110.965.926.1%
2024年5月期9〜11月299.170.0%109.3100.033.4%
2024年5月期12〜2月413.567.2%112.9165.039.9%
2024年5月期3〜5月535.966.0%151.5202.237.7%
2025年5月期6〜8月356.466.9%118.3120.033.7%
2025年5月期9〜11月279.368.9%120.871.625.6%
2025年5月期12〜2月417.868.1%121.5163.139.0%
2025年5月期3〜5月593.360.8%141.2219.437.0%
2026年5月期6〜8月303.569.3%130.380.026.4%
2026年5月期9〜11月343.073.1%124.5126.236.8%
2026年5月期12〜2月443.775.7%129.7206.146.4%
2026年5月期3〜5月644.562.7%160.9242.937.7%
2027年5月期6〜8月325.873.2%136.8101.631.2%

筆者の差し引き(千円単位で計算し、百万円未満を四捨五入)。各年度の4四半期合計は通期の開示値と一致することを確認しました。

この表のポイントは3つです。

  1. 3〜5月の売上が年間の35.7%・36.0%・37.2%を占め、3年とも最大です。会社も短信の注記で「顧客の決算期が集中する3月末にかけて売上計上される案件が多いため、第3又は第4四半期会計期間に売上高が偏重する傾向」と書いています。3年とも同じ形なので、季節性と言ってよい形です
  2. 販管費は四半期あたり1億09百万〜1億61百万円で、売上ほどは動きません。3〜5月だけ販管費が膨らむ理由は、四半期では開示されていません
  3. 3〜5月は3年とも粗利率が年間で最も低い(66.0%・60.8%・62.7%)。売上が最も大きい四半期なのに粗利率が下がるのは、次に見る「仕掛品」の動きと関係しています

6〜8月は、使用料だけで費用をまかなえた

6〜8月のクラウド利用料(2億42百万円)と、同じ3か月の売上原価+販管費(2億24百万円)を並べると、利用料が費用を108.0%カバーしています。前年の6〜8月は97.7%、2年前は85.6%でした。

§1の軸で言えば、貸し道具の使用料だけで、店の家賃も職人の給料も払えた3か月です。特注品の売上は、その上に乗る利益になります。これは「1つ作って貸す」型の売上が積み上がった結果であり、この会社の一番の強みが数字に出ている部分です。

ただし、この「108.0%」には注意が必要です。売上原価には、その3か月に実際に使った費用がすべて入っているわけではないからです。

費用の一部は「仕掛品」として後ろにずれている

ドーンの売上原価の6割近くは労務費(エンジニアの人件費)です(2026年5月期の製品売上原価明細書で労務費56.3%)。エンジニアが年度末に納める特注品を作っている間、その人件費は売上原価ではなく「仕掛品」(作りかけの製品)として貸借対照表に積まれます。そして納品して売上が立ったときに、まとめて売上原価に出てきます。

時点仕掛品の残高
2024年5月末36百万円
2024年8月末44百万円
2024年11月末73百万円
2025年2月末57百万円
2025年5月末2百万円
2025年8月末29百万円
2025年11月末70百万円
2026年2月末75百万円
2026年5月末3百万円
2026年8月末37百万円

出典:各期の決算短信の貸借対照表(百万円未満切捨て)。

仕掛品は年度の途中で積み上がり、5月末にはほぼゼロに戻ります。年度末に納品がまとまって、積まれていた費用が一気に売上原価に出てくるので、3〜5月の粗利率は年間で最も低くなります。逆に6〜8月は、費用の一部が仕掛品に積まれるので、粗利率が高く見えやすい四半期です。

そこで、仕掛品の増加分を売上原価に足し戻して、「その3か月に実際に使った原価」を概算すると次のようになります。

決算期の6〜8月売上原価仕掛品の増加3か月に使った原価(概算)+販管費売上に対する比率仮の粗利率
2025年5月期118.08.3126.3244.768.7%64.5%
2026年5月期93.127.4120.5250.882.6%60.3%
2027年5月期87.434.4121.8258.679.4%62.6%

単位:百万円。筆者の概算。「3か月に使った原価」=売上原価+仕掛品の増加額。商品・貯蔵品の動きは無視しており、会計上の数字ではありません。

この表のポイントは2つです。

  1. **仕掛品を足し戻すと、3か月に使った原価は前年比+1.1%、販管費を足しても+3.1%**です。会社の費用(ほぼ人件費)は、売上ほどは増えていません。これは「人を増やさずに売上を伸ばす」構造の確認になります
  2. 一方で、損益計算書の粗利率の改善(+3.9pt)のうち、仕掛品の積み増しが前年より7.1百万円多かった分は、年度末の納品まで費用が繰り延べられただけです。仮の粗利率で見ると、改善幅は2.3ptにとどまります(60.3%→62.6%)

「使った費用」ベースで見ても、6〜8月のストック型売上(2億72百万円)は3か月に使った費用(2億58百万円)を105.5%カバーしています(前年98.5%)。クラウド利用料だけだと93.7%(前年87.1%、2年前82.7%)です。「使用料だけで全費用」は、使った費用で数えるとまだ届いていません。ただし3年で約11pt近づいています。

用語メモ:仕掛品と売上原価 システム開発の会社では、納品前の案件にかかった人件費や外注費を「仕掛品」として資産に計上し、納品して売上を計上したときに売上原価へ振り替えます。四半期の粗利率は、この振り替えのタイミングで上下します。仕掛品が増えた四半期は粗利率が高く見え、仕掛品が売上原価に出ていく四半期(ドーンでは3〜5月)は低く見えます。

クラウド利用料の9四半期

四半期クラウド利用料前年同期比前四半期比
2025年5月期 6〜8月202.2——
2025年5月期 9〜11月202.1—△0.1%
2025年5月期 12〜2月203.8—+0.9%
2025年5月期 3〜5月216.8—+6.4%
2026年5月期 6〜8月218.4+8.0%+0.7%
2026年5月期 9〜11月222.2+10.0%+1.7%
2026年5月期 12〜2月230.5+13.1%+3.7%
2026年5月期 3〜5月236.4+9.0%+2.6%
2027年5月期 6〜8月242.2+10.9%+2.5%

単位:百万円。各期の短信の品目別売上高(累計)から筆者が差し引き。

利用料は前年同期比で5四半期続けて+8〜13%、前四半期比でも直近4四半期は毎回増えています。2025年5月期の6〜2月にほぼ横ばいだった時期と比べると、伸び方が一段上がっています。会社は伸びを牽引したサービスとして、Live119(導入消防の人口カバー率が2026年5月末で57.7%)と防犯アプリ(47都道府県警察のうち21県警で導入、2026年6〜7月の入札で全国の半数を超える県警で利用の見込み)を挙げています(説明資料、書き起こしベース)。警視庁の防犯アプリに2025年12月に追加した「国際電話ブロック機能」は、社長の説明では「進行期から収益への寄与が始まっています」とされています(書き起こしベース)。

6〜8月の利用料を単純に4倍すると9億68百万円で、前期の通期実績(9億07百万円)を6.8%上回ります。利用料は季節性が小さいので、4倍することにある程度の意味がある数字です。ただし売上全体は季節性が大きいので、売上や利益を4倍しても通期の見通しにはなりません。


4. 深掘り②:会社予想は残り9か月に「前年割れ」を置いている

前の章で、6〜8月の増益には「本当に増えたもの」(利用料)と「後ろにずれたもの」(仕掛品に積まれた費用)があることを確認しました。では、据え置かれた通期の会社予想は、残り9か月(9〜5月)に何を置いているのでしょうか。

「予想が置いていた残り9か月」と「実際の残り9か月」

決算期第1四半期時点で予想が置いた残り9か月の営業利益前年同期間の実績予想の前年比実際の残り9か月達成率
2024年5月期4億27百万円——4億67百万円109.4%
2025年5月期4億40百万円4億67百万円△5.8%4億54百万円103.2%
2026年5月期5億30百万円4億54百万円+16.7%5億75百万円108.5%
2027年5月期5億68百万円5億75百万円△1.2%——

筆者の計算。「予想が置いた残り9か月」=通期の期初予想−第1四半期実績。いずれの期も期中に予想は修正されていません。2024年5月期の前年同期間は本記事では計算していません。

この表から読めることは3つです。

  1. 今期の予想は、残り9か月の営業利益を前年同期間より1.2%少なく置いています。売上は残り9か月で14億74百万円と前年同期間比+3.0%を置いているので、営業利益率は前年同期間の40.2%から38.6%に下がる前提です
  2. 過去3年、同じ時点で予想が置いた残り9か月に対し、実際は103.2〜109.4%で着地しています。予想が残り9か月に置いた伸びが△5.8%だった年(2025年5月期)も、+16.7%だった年(2026年5月期)も、結果は上振れでした
  3. 予想が置く「残り9か月の前年比」は、その年の6〜8月の強弱で大きく動きます。6〜8月が強かった2025年5月期は△5.8%、弱かった2026年5月期は+16.7%でした。会社は第1四半期の結果を見て予想を動かさないので、6〜8月が強いほど、残り9か月の予想は控えめに見える計算になります

残り9か月の「前年割れ」はどこから来るのか

会社の説明資料には、今期の売上総利益(12億48百万円)と販管費(5億78百万円)の計画も載っています。ここから第1四半期の実績を引くと、残り9か月の内訳が出ます。

項目残り9か月の計画前年同期間の実績前年比
売上高14億74百万円14億31百万円+3.0%
売上総利益10億09百万円9億90百万円+2.0%
売上総利益率68.5%69.2%△0.7pt
販管費4億41百万円4億15百万円+6.3%
営業利益5億68百万円5億75百万円△1.2%

筆者の計算。今期の売上総利益・販管費は説明資料の計画値(百万円単位)、第1四半期と前年は短信の千円単位の値を使っています。

**前年割れの中身は、販管費の+6.3%**です。会社は今期の見通しで「人的資本の強化に伴う採用活動費、人件費等の増加を見込んでおります」と書いています(2026年5月期決算短信)。第1四半期の販管費は+5.0%だったので、残り9か月はそれより少し強い伸びを置いていることになります。

もう一つ、前年の残り9か月が特に強かったことも効いています。前期の12〜2月の営業利益率46.4%は、13四半期で最も高い数字です。会社は前期第3四半期の短信で「クラウド利用料・クラウド初期構築をはじめとした高収益売上高の堅調な推移により利益率が良化」と説明していました。前年並みの高収益案件が今期も同じ時期に来るかどうかは、会社が自分で決められない部分です(§1の弱み①)。

2つの読み方

この「前年割れ」は、強気・弱気どちらにも読めます。

  • 保守的な置き方として読む:会社は予想を「意図して」控えめに置くと説明しており、過去3年は残り9か月で3〜9%上振れた。6〜8月の増益分を予想に上乗せしなかったぶん、残り9か月の置き方が前年割れになっているだけ
  • 費用の先行として読む:残り9か月の販管費+6.3%は、採用・人件費の増加という会社自身の説明と一致する。さらに§3で見たとおり、6〜8月に仕掛品に積まれた費用(前年より7.1百万円多い)は、納品のタイミングで売上原価に出てくる

どちらの読み方でも、使う数字は同じです。仮に残り9か月が過去3年の達成率(103.2〜109.4%)と同じ形になった場合の通期営業利益は、6億88百万〜7億23百万円です(筆者の試算。会社予想6億70百万円に対し+2.7〜+7.9%)。前年同期間と同額なら6億76百万円です。将来の業績を予測するものではなく、過去の形を当てはめた場合の幅として示しています。

純利益予想は、第1四半期の税率より低い税率を置いている

最後に、経常利益から純利益までの間を見ます。

比べる数字税負担率
会社予想(経常利益6億87百万円・純利益4億85百万円からの逆算)29.4%
第1四半期の見積実効税率(会社が見込む今期の負担率)31.5%
法定実効税率(今期から)31.47%
2026年5月期の実績29.8%
2025年5月期の実績28.3%

出典:短信、有価証券報告書の税効果会計注記。予想からの逆算は特別損益ゼロを前提とした筆者の計算。

有報の注記によると、防衛特別法人税の導入で、2026年6月1日以降に始まる事業年度(今期)から法定実効税率が30.58%から31.47%に上がります。過去2年の実績が法定税率を下回ったのは、主に税額控除(△2.16pt・△0.96pt)によるものです。

第1四半期の見積税率31.5%が通期にも当てはまると、経常利益が予想どおり6億87百万円でも、純利益は約4億70百万円になり、予想(4億85百万円)に約14百万円届きません(筆者の試算)。7月の予想は、過去と同じ程度の税額控除を見込んでいた可能性がありますが、会社は予想の税率を説明していないので、この点は筆者の推測です。逆に、経常利益が過去3年と同じように上振れれば、この差は埋まる規模です。

3つの段階をつなぐと

  • 6〜8月の増収はすべて貸し道具の使用料から来ており、使用料だけで3か月分の費用をまかなえた(§2・§3)
  • ただし粗利率の改善の一部は、年度末に納める特注品の費用が仕掛品に積まれて後ろにずれただけ(§3)
  • 会社予想は、残り9か月の営業利益に前年割れ(△1.2%)を置き、純利益には第1四半期より低い税率を置いている。過去3年は、同じ時点の予想を3年とも上回ってきた(§4)

§1の軸で言えば、ドーンの1年は「使用料で固定費を払い、年度末の特注品で利益を上乗せする」形をしています。6〜8月はその前半がうまくいったことを示す3か月で、後半(特注品)の出来は、役所の年度末に当たる3〜5月まで分かりません。


5. 8月末の貸借対照表:現預金と有価証券が総資産の8割

科目2026年5月末2026年8月末増減
現金及び預金18億01百万円17億13百万円△88百万円
売掛金1億72百万円1億83百万円+10百万円
有価証券49百万円19百万円△29百万円
仕掛品3百万円37百万円+34百万円
投資有価証券9億11百万円9億35百万円+23百万円
関係会社株式74百万円74百万円—
関係会社社債1億53百万円1億53百万円△0百万円
総資産33億43百万円32億75百万円△67百万円
未払法人税等1億29百万円37百万円△92百万円
固定負債「その他」42百万円84百万円+41百万円
負債合計3億55百万円2億83百万円△72百万円
純資産29億87百万円29億92百万円+4百万円
自己資本比率89.4%91.4%+2.0pt

出典:第1四半期決算短信の四半期貸借対照表(百万円未満切捨て)。

ポイントは4つです。

  1. **現預金・有価証券・投資有価証券の合計は26億68百万円で、総資産の81.5%**です。借入金はありません(招集通知「主要な借入先:該当事項はありません」)。現預金の減少88百万円は、主に法人税の納付(未払法人税等△92百万円)と配当金の支払い(83百万円)によるものです
  2. 投資有価証券の増加23百万円は、買い増しではなく値上がりと読めます。その他有価証券評価差額金が15.6百万円増えており、これを税効果(31.47%)で割り戻すと約22.7百万円で、投資有価証券の増加額(23.4百万円)とほぼ一致します(筆者の検算)。有報によると、投資有価証券の中身は社債・国債等の債券と投資信託で、株式の保有はありません。会社は「個別株式への投資は考えておりません」と説明しています(書き起こしベース)
  3. 自己資本比率の上昇(+2.0pt)は、自己資本が増えたからではなく、分母の総資産が減ったからです。純資産はほぼ横ばい(+4百万円)でした
  4. 固定負債の「その他」が41百万円増えています。前期末の固定負債の内訳は長期前受収益34百万円・預り保証金8百万円・長期未払金11百万円で(通期短信)、第1四半期の短信には増加の内訳が書かれていません。複数年分の利用料を前受けした場合に計上される長期前受収益が増えた可能性はありますが、確認できていないので筆者の推測にとどめます

tiwakiへの出資:株式と転換社債で2億27百万円

関係会社株式74百万円と関係会社社債1億53百万円は、いずれもエッジAI(カメラ側でAI処理を行う技術)を持つ株式会社tiwaki(滋賀県草津市)への投資です。有報の関連当事者情報によると、ドーンはtiwakiの議決権の19.9%を直接保有し、さらに2025年5月期に転換社債型新株予約権付社債を引き受けています(8月末の貸借対照表計上額1億53百万円)。

会社の説明では、

  • 過半数の株式取得については「既に先方と合意」
  • tiwakiが補助金を活用した事業を行っている要件から、現時点では保有比率を19.9%にとどめており、「この制約は進行期までとなる予定」
  • 第2次中期経営計画の期間中(最終年度は2028年5月期)の子会社化を見込む

とされています(書き起こしベース、説明資料)。tiwakiはセルフ式ガソリンスタンド向けのAI給油監視システムのコア技術を持ち、2026年2月の法改正で導入が始まったと説明されています。

この投資には2つの見方があります。強気側では、中計の「新規分野の開拓」の中核で、ドーンの防災・防犯の顧客にAIカメラの技術を組み合わせられます。弱気側では、有報で会計監査人が「関係会社株式の評価」を監査上の主要な検討事項(KAM)に挙げており、会社自身も「重要な会計上の見積り」で、評価の主要な仮定を「製品・サービスの導入数量等」とし、「翌事業年度の財務諸表に重要な影響を与える可能性があります」と書いています。株式と社債を合わせた2億27百万円(8月末)は、純資産の7.6%です。

なお、子会社化が実現すると、ドーンは連結決算を作る会社になります。前年との比較の仕方が変わるので、その期の記事では比較の前提を確認する必要があります。


6. 資本政策と株主還元

株主優待:制度なし

有価証券報告書(2026年8月21日提出)の「株主に対する特典」欄は「該当事項はありません」です。会社の株主還元は、配当と自己株式取得の2本です。

配当方針:累進配当、今期は12期連続増配の予想

会社は2024年4月8日に配当方針を変更し、累進配当を導入しました。有報の配当政策は次のとおりです(原文)。

当社は、利益配分につきましては将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、累進配当を継続して実施することを基本方針としております。

累進配当は「原則として減配せず、配当の維持もしくは増配を行う配当政策」と説明されています(配当関連の適時開示)。

決算期1株配当(分割前)分割後換算増配率配当性向配当の決め方当初予想→実績
2022年5月期14円(記念1円含む)7円—15.8%安定配当—
2023年5月期16円8円+14.3%15.8%安定配当—
2024年5月期20円10円+25.0%16.0%累進配当(期中に導入)17円→20円(2024年4月8日)
2025年5月期24円12円+20.0%17.6%累進配当22円→24円(2025年4月10日)
2026年5月期28円14円+16.7%17.9%累進配当26円→28円(2026年4月9日)
2027年5月期(予想)—16円+14.3%19.6%累進配当—

出典:有報、各期の決算短信、配当予想の修正に関する適時開示。分割後換算は筆者の計算。

この表のポイントは2つです。

  1. 3年続けて、期初の配当予想を4月の第3四半期決算と同時に引き上げています。3年とも、利益も期初予想を上回って着地した年でした
  2. 配当性向は2割弱と低い水準です。社長も決算説明会で「まだ配当性向は十分高い水準ではありませんが、継続的な増配を行いながら」と話しています(書き起こしベース)。今期予想の16円を8月末の1株当たり純資産(約503円)で割ると、DOE(純資産配当率)は約3.2%です

権利確定日

権利基準日権利付き最終日
期末配当(予想16円)2027年5月31日(月)2027年5月27日(木)
中間配当(予想0円)2026年11月30日(月)2026年11月26日(木)

権利付き最終日は基準日の2営業日前(筆者の計算)。

定款上は11月30日を基準日とする中間配当ができますが、過去5年の実績は期末配当のみで、今期も中間配当は0円の予想です。11月30日に株主でも、今期の予想では配当はありません。

用語メモ:権利付き最終日 配当を受け取るには、基準日に株主名簿に載っている必要があります。株の受け渡しは売買の2営業日後なので、基準日の2営業日前までに買っておく必要があり、その日を「権利付き最終日」と呼びます。

株式分割:2026年6月1日に1株→2株

2026年5月31日を基準日として、1株を2株に分割しました(効力発生日2026年6月1日)。目的は「投資単位当たりの金額を引き下げる」「流動性の向上と投資家層の拡大」と説明されています(短信の後発事象)。2026年5月期の期末配当28円は分割前の株数が基準で、今期の16円は分割後の株数が基準です。分割前の基準に直すと今期予想は32円で、前期の28円から4円の増配です。

自己株式取得:2年続けて1〜3月に実施

決議日上限取得期間実績平均取得単価(分割後換算)
2025年1月9日—2025年1〜3月45,100株(分割前)・99百万円—
2026年1月8日100,000株(分割前)・2億円2026年1月9日〜3月31日73,700株(分割前)・1億99百万円約1,356円

出典:自己株式取得に関する適時開示、有報、説明資料。平均単価は筆者の計算(取得価額の総額199,814,600円÷73,700株÷2)。2025年1月決議分の上限は本記事では確認していません。

2026年の枠は、株数では26.3%が未使用のまま、金額では99.9%を使い切って終了しました(有報の未行使割合:株数26.3%・金額0.1%)。取得の目的は「株主の皆様への利益還元と資本効率の向上」に加え、「M&A及び資本提携を遂行するための対価としての活用」「譲渡制限付株式報酬への将来的な活用」と書かれています。

2026年5月期を基準日とする配当(83百万円)と期中の自己株式取得(2億円)の合計は、純利益の60.0%です(筆者の計算)。2026年10月9日時点で、今期の自己株式取得は発表されていません。過去2年はいずれも第2四半期決算(1月上旬)と同時に決議されていますが、今期も同じ形になるかは開示されていません。

譲渡制限付株式報酬:今日(10月9日)が処分日

2026年9月14日の取締役会で、取締役3名に14,400株、従業員18名に8,000株、計22,400株の自己株式を譲渡制限付株式として処分することが決議されました。処分価額は1株1,350円(9月11日の終値)、処分期日は2026年10月9日、譲渡制限の解除は2029年11月16日です。新株の発行ではなく自己株式の処分なので発行済株式数は増えませんが、配当の対象となる株数は22,400株増えます。

株数と自己株式

項目株数
発行済株式総数6,600,000株
自己株式(2026年8月末)654,653株(9.92%)
自己株式控除後(2026年8月末)5,945,347株
譲渡制限付株式の処分後(筆者の計算)5,967,747株
潜在株式なし

出典:第1四半期決算短信、譲渡制限付株式に関する適時開示。

会社予想のEPS81.58円は、純利益予想4億85百万円を約594.5万株で割った値で、8月末の自己株式控除後の株数とほぼ一致します。新株予約権はなく、潜在株式もありません(短信・招集通知)。

大株主(2026年5月31日時点)

株主持株数(分割前)比率
宮崎 正伸(代表取締役社長)230,300株7.75%
株式会社ディキャピタル219,800株7.39%
近藤 浩代203,500株6.85%
光通信KK投資事業有限責任組合194,200株6.53%
株式会社サンセイエンジニアリング139,000株4.68%
UHPartners2投資事業有限責任組合72,400株2.44%
徳永 道太44,400株1.49%
成沢 政明38,900株1.31%
MSIP CLIENT SECURITIES34,900株1.17%
枝松 禄34,200株1.15%
上位10名計1,211,600株40.76%

出典:有報「大株主の状況」。比率は自己株式を除く発行済株式総数に対する割合。

有報の役員の略歴によると、取締役兼管理部長の岩田潤氏は2010年3月から株式会社ディキャピタルの代表取締役を務めています。ただし、ディキャピタルの株主構成や岩田氏との資本関係は有報に書かれていないので、本記事では岩田氏個人の持株(分割後33,600株)とディキャピタルの持株を合算していません。同様に、他の個人株主どうしの関係も確認できないため合算していません。役員6名の持株は合計560,000株(分割後)で、自己株式控除後の株式数の9.4%です。

所有株式数の78.9%を「個人その他」(自己株式を含む)が占め、株主数は4,356名です(招集通知)。2026年8月26日の定時株主総会では、剰余金処分議案が98.63%、取締役選任議案が98.89〜99.24%の賛成で可決されています(臨時報告書)。

信用取引は買残95,500株・売残0株(2026年10月2日時点、Yahoo!ファイナンス、報道ベース)。2026年9月8日〜10月7日の1日平均出来高は約1万2千株で、流動性は高くありません。


7. 株価の見方

株価の基準点(2026年10月8日終値1,333円)

指標数値計算
終値(2026年10月8日)1,333円Yahoo!ファイナンス
時価総額(自己株式控除後)約79億円1,333円×5,945,347株
時価総額(発行済ベース)約88億円1,333円×6,600,000株
予想PER16.3倍1,333円÷予想EPS81.58円
PBR2.65倍1,333円÷8月末BPS約503円
予想配当利回り1.20%16円÷1,333円
現預金+有価証券+投資有価証券−負債合計23億85百万円(1株約401円)8月末の貸借対照表

筆者の計算。株価情報サイトの時価総額は、自己株式を含む発行済株式数で計算されていることが多い点に注意してください。

決算発表は10月8日14時00分でした。この日の終値は1,333円(前日比△7円、△0.5%)、高値1,391円・安値1,300円、出来高は80,700株で、直近1か月の1日平均(約1万2千株)の約6.7倍でした。14時の発表後には90分の取引時間がありましたが、高値・安値を付けた時刻は確認できていないので、発表の前後どちらで生じた値動きかは書けません。翌10月9日は前場の途中(10時54分)で1,355円(前日比+22円)でした。

一次情報から拾える株価の履歴

時点株価(分割後換算)出所
2026年5月期の最高・最低1,550円・1,109円有報(分割前は3,100円・2,218円)
2026年1〜3月平均約1,356円自己株式取得の実績(取得総額÷株数)
2026年5月末約1,365円有報の株価収益率17.5倍×EPS78.02円
2026年9月11日1,350円(終値)譲渡制限付株式の処分価額
2026年10月8日1,333円(終値)Yahoo!ファイナンス

2026年に入ってからの一次情報の株価は、1,333〜1,365円の範囲に集まっています。年初来高値は1,550円(2026年4月22日、配当予想の修正と株式分割の発表の後)、年初来安値は1,197円(2026年6月16日)です(Yahoo!ファイナンス、報道ベース)。

有報の株主総利回り(5年前の期末を100とした配当込みの指数)は2026年5月期で100.4、同じ期間の配当込みTOPIXは232.4でした。この5年でEPSは44.26円から78.02円へ約1.8倍になりましたが、株価収益率は21.5倍から17.5倍に下がり、配当込みの株主の取り分は5年前とほぼ同じです。会社も説明資料で、資本コストを意識した経営としてROE(16.4%)と株主資本コスト(約6%)、PBR・PERの推移を示しています。

金融資産を差し引いた見方(筆者の試算)

自己株式控除後の時価総額約79億円から、8月末の金融資産(現預金・有価証券・投資有価証券)から負債を引いた23億85百万円を差し引くと、事業そのものの値段は約55億円です。今期の会社予想の営業利益6億70百万円の約8.3倍、法定実効税率を当てた税引後の営業利益の約12.1倍になります(tiwakiへの投資2億27百万円は差し引いていません)。

ただしこれは、金融資産が株主に返される場合に限って意味を持つ計算です。会社は手元資金を「今後のM&Aをはじめとする成長投資に備え、必要な資金を確保しつつ」運用すると説明しており(書き起こしベース)、還元を約束しているわけではありません。

強気の見方

  • 増収分はすべてストック型(利用料+保守)から来ており、利用料は5四半期続けて前年同期比+8〜13%で伸びている
  • 6〜8月の利用料は、同じ3か月の売上原価+販管費を上回った。使った費用ベースでもストック型で105.5%をカバーしている
  • 会社予想は残り9か月に前年割れ(△1.2%)を置いており、過去3年は同じ時点の予想を3〜9%上回ってきた。会社自身が予想を「意図して」控えめに置くと説明している
  • 防犯アプリの導入県警が全国の半数を超える見込みで、国際電話ブロック機能も今期から収益寄与が始まると説明されている
  • 借入金はなく、金融資産から負債を引いた額は時価総額の約3割。累進配当で12期連続増配の予想
  • tiwakiの子会社化が進めば、中計の「新規分野の開拓」が業績に乗ってくる可能性がある

弱気の見方

  • 6〜8月の粗利率の改善の一部は、仕掛品に積まれた費用が年度末まで繰り延べられただけ(筆者の概算)。3〜5月は3年とも粗利率が最も低い
  • 2年前の6〜8月と比べると、売上は△8.6%、営業利益は△15.3%で、まだ戻り切っていない
  • 中計の最終年度(2028年5月期)の利益目標は今期予想と同額で、会社自身が「受託開発の受注について一定の不確実性がある」と書いている
  • 純利益予想は第1四半期の見積税率より低い税率を置いた形で、税率がこのままだと約14百万円届かない(筆者の試算)
  • 特定サービス(NET119)とライセンス販売への利益面の依存、官公庁への依存が、有報のリスクに明記されている
  • tiwakiへの投資2億27百万円は、会計監査人のKAMで、評価は「導入数量」の仮定に左右される
  • 1日の出来高は平均1万株強で、売買したいときに思った値段で売買できない可能性がある

同じ「残り9か月の前年割れ」も、強気側では「控えめな置き方」、弱気側では「採用・人件費の先行」と読めます。数字は同じで、どちらの読み方を取るかは読者に委ねます。


8. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るポイント
2026年10月9日譲渡制限付株式の処分(22,400株)—
2026年11月26日(木)中間配当の権利付き最終日(基準日11月30日)今期は中間配当0円の予想
2027年1月上旬(例年)第2四半期(中間)決算、半期報告書9〜11月の単独営業利益(前期1億26百万円)、仕掛品の残高(前期11月末70百万円)、自己株式取得の決議の有無(過去2年は1月)
2027年4月上旬(例年)第3四半期決算12〜2月の単独営業利益率(前期46.4%)、配当予想の修正の有無(過去3年は4月に増配)
2027年5月27日(木)期末配当の権利付き最終日(基準日5月31日)予想16円
2027年7月上旬(例年)通期決算、2028年5月期の予想3〜5月の粗利率、通期の税負担率、中計最終年度の予想
2027年5月期〜2028年5月期tiwakiの保有比率の制約が外れる時期と、子会社化子会社化の時期・取得価額、連結決算への移行
2028年5月期中計最終年度、新リース会計基準・新後発事象会計基準の適用開始(有報)営業利益6億70百万円+α
2029年11月16日今回の譲渡制限付株式の譲渡制限解除—

決算発表日は、過去の発表日(中間:2025年1月9日・2026年1月8日、第3四半期:2025年4月10日・2026年4月9日、通期:2025年7月10日・2026年7月9日)からの推定です。

見るべきKPI

  1. クラウド利用料の四半期の伸び(前年同期比で+8〜13%の伸びが続くか、前四半期比で増え続けるか)
  2. 仕掛品の残高(年度末の特注品の仕込み具合と、3〜5月の粗利率の手がかり)
  3. 単独四半期の販管費(残り9か月の計画は前年比+6.3%)
  4. 防犯アプリの導入県警数と、国際電話ブロック機能の他県警への展開
  5. tiwakiの子会社化の進捗と、関係会社株式の評価
  6. 自己株式取得の決議と、期末配当予想の修正の有無

9. 3行まとめ

  • 6〜8月は売上+7.4%・営業利益+27.0%。増収分はすべて利用料・保守のストック型で、利用料だけで同じ3か月の売上原価+販管費(2億24百万円)を上回った。ただし2年前の6〜8月にはまだ届いていない
  • 粗利率の改善(+3.9pt)の一部は、年度末に納める特注品の費用が仕掛品に積まれて後ろにずれただけで、使った費用は前年比+1.1%(筆者の概算)。3〜5月は3年とも粗利率が最も低い
  • 会社予想は残り9か月の営業利益に前年割れ(△1.2%)を置き、純利益は第1四半期より低い税率を置いた形。過去3年は同じ時点の予想を3〜9%上回っており、その形が続くかは3〜5月の特注品の出来で決まる

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・助言を目的としたものではありません。数値の出典は、ドーンの決算短信(2027年5月期第1四半期、2026年5月期・2025年5月期の各四半期・通期、2024年5月期の第2四半期・第3四半期・通期)、有価証券報告書(2026年8月21日提出)、臨時報告書(2026年8月27日提出)、第35期定時株主総会招集ご通知、2026年5月期決算説明・中期経営計画進捗説明資料(2026年7月)、「2026年5月期決算説明会」要旨(書き起こし、2026年7月29日公表)、配当予想の修正・配当方針の変更・剰余金の配当・自己株式取得・譲渡制限付株式報酬に関する適時開示です。株価・出来高・信用残・年初来高値安値はYahoo!ファイナンス(報道ベース)です。四半期の単独数値、増減の分解、仕掛品を足し戻した原価の概算、残り期間の計算と試算、税負担率の逆算、金融資産を差し引いた事業価値の試算は筆者の計算・試算です。

次の点にご注意ください。今回の第1四半期は決算補足説明資料・決算説明会がなく、本文中の会社の見通し・説明のうち第1四半期以外の部分は、2026年7月の決算短信・説明資料・決算説明会の書き起こしに基づくもので、第1四半期についての会社の追加説明や質疑応答は反映していません。決算説明会の書き起こしは会社が公表した要旨であり、発言の全文ではありません。書き起こしで社長が述べた2026年5月期の営業利益予算(6.19億円)は短信の期初予想(6億10百万円)と一致しないため、短信の数字を使っています。§3の「3か月に使った原価」は売上原価に仕掛品の増加額を足した筆者の概算で、商品・貯蔵品の動きを含まず、会計上の数字ではありません。§4の「予想は過去と同じ程度の税額控除を見込んでいた可能性」、§5の固定負債「その他」の増加が長期前受収益による可能性に関する記述は筆者の推測であり、会社の開示に基づくものではありません(確認先は会社IRと次回以降の決算)。説明資料のストック型・フロー型売上の四半期推移グラフの数値は、短信の品目別売上高から差し引いた値と照合できた範囲(クラウド利用料)だけを使っています。株式会社ディキャピタルと取締役岩田潤氏の資本関係、大株主どうしの関係は確認できておらず、持株比率は合算していません。大株主である光通信KK投資事業有限責任組合の大量保有報告書は確認していません。会社が名指ししていない「大型のSI初期開発」の相手先は特定していません。決算発表(14時00分)当日の高値・安値の時刻は確認できておらず、当日の値動きが発表の前後どちらで生じたかは分かりません。2025年1月決議の自己株式取得枠の上限は確認していません。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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