株式投資

【2026年10月発表・上半期決算】フジ(8278)上期の営業利益は半減、それでも通期予想は「5割増益」のまま。下期に置かれた“2.2倍”をどう読むか

本記事は2026年10月9日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。**執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。**特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • フジの上半期(2026年3〜8月)は営業利益22億91百万円(前年同期比△49.1%)と半減したのに、通期予想(営業利益170億円、+51.5%)は据え置かれたこと。その結果、予想が下期に置いている営業利益は147億09百万円で、前年下期の2.19倍になっていること
  • 既存店売上高の前年割れ(99.3%)は、ほぼ全額が「米」の反動で説明でき、米を除くと既存店はほぼ横ばい(+0.08%)だったこと
  • 上期の減益22億円を「売上の減少」「粗利率の低下」「テナント収入の減少」「販管費の削減」の4つに分けると、6〜8月は3〜5月より減益幅が小さくなっていること
  • 過去2期も、上期決算の時点で予想が置いていた下期は実際には届かず(達成率75.3%、61.1%)、今期はその置き方がさらに大きいこと
  • 純利益予想70億円を逆算すると、下期に80〜95億円規模の特別損失(主に店舗の減損)が置かれている計算になること。中間期の純利益の増益は、退職給付制度の移行に伴う特別利益33億86百万円によるものであること
  • 株主優待は「値引券」中心で、100株で年6,000円分(1,000円の買物ごとに1枚)。1株当たりでは配当(30円)の2倍だが、使い方で価値が大きく変わること

1. 前提知識:フジとはどんな会社か

1-1. 4つの屋号の店を、1つの帳場にまとめ直している最中の会社

愛媛県松山市に本社を置くフジは、中国・四国・兵庫の10県で475店のスーパーマーケットとディスカウントストアを運営しています。店の看板は1つではありません。「フジ」「フジグラン」に加えて、「マックスバリュ」「マルナカ」「ザ・ビッグ」と、もともと別々の会社が育ててきた屋号が並んでいます。2023年2月期にマックスバリュ西日本を完全子会社化し、その後の合併で、親会社イオン(議決権51.49%)のもとに中四国のスーパーが1社に集まった、という成り立ちです。

この記事では、フジを**「4つの屋号の店を、1つの帳場(帳簿・仕入れ・物流・システム)にまとめ直している最中の会社」**として読みます。昔の商家でいえば、のれんの違う4軒の店の帳場を1か所に寄せ、仕入れ先と蔵と配達を共通にしていく作業の途中にいる会社です。この例えには、強みと2つの弱みが入っています。

  • 強み:帳場を1つにすれば、仕入れ・物流・システムが1本になり、規模の効果(イオングループの「トップバリュ」の調達を含む)が効く。会社はこれを「統合シナジー」と呼んでいます
  • 弱み①(今の数字):まとめ終わるまでは、費用が先に出て効果は後から来る。今期は2026年3月からシステム統合が順次始まった年で、会社の通期予想は「効果が下期に出る」前提に見えます
  • 弱み②(予想の作り方):店の数が多いほど、古い店の修繕・建て替え・閉店と、帳簿価額の見直し(減損)が毎年出る。純利益の予想は、この「年度末の帳簿の見直し」をどれだけ置くかで大きく変わります

今回の中間決算は、弱み①と②がそのまま数字に出た半期でした。そして、もとは別々の会社が持っていた企業年金を1つにまとめた結果として、33億円の特別利益が出ています。帳場をまとめる作業は、利益の下にも上にも数字を動かしています。

1-2. 事業構造

フジは単一セグメント(小売事業)で、セグメント別の利益は開示されていません。その代わり、決算補足資料に業態別・県別の売上高(単体)が載っています。

区分2027年2月期上期 売上高(単体)構成比店舗数(8月末)
スーパーマーケット3,126億円85.5%424
ディスカウントストア(ザ・ビッグ等)519億円14.2%43
その他(パルティ・カジュアル・マルシェ)4億円0.1%8
合計(単体の直営)3,656億円100.0%475
参考:連結の営業収入(テナント賃料等)143億円——
親会社イオン㈱(議決権51.49%、2026年2月末)——
株主優待制度あり(値引券ほか。§6-6)——

(出所:2027年2月期中間期決算補足資料、支配株主等に関する事項について。構成比は補足資料の値)

この表のポイントは2つです。1つ目は、売上の85%は食品スーパーで、商品の約9割は食品だということ(部門別売上で食品合計89.9%)。2つ目は、県別では兵庫(17.7%)、愛媛(16.6%)、広島(15.7%)、岡山(13.7%)、香川(13.0%)と5県がほぼ同じ大きさで、特定の県に偏っていないことです。

用語メモ:営業収益は「売上高(自社の店で売った金額)」と「営業収入(テナントからの賃料など)」の合計です。フジのような商業施設を持つスーパーでは、営業収入が営業利益の何倍もの大きさになります(今期上期:営業収入143億円、営業利益23億円)。

1-3. 直近3期の業績推移

決算期営業収益営業利益営業利益率親会社株主に帰属する当期純利益EPS(円)ROE自己資本比率1株配当(円)
2024年2月期8,010億円151億10百万円1.9%74億36百万円85.803.5%50.5%30
2025年2月期8,089億円129億53百万円1.6%38億18百万円44.061.8%52.9%30
2026年2月期8,142億円112億17百万円1.4%81億76百万円94.363.7%54.7%30
2027年2月期(会社予想)8,250億円170億00百万円2.1%70億00百万円80.76——30

(出所:各期の決算短信、2026年6月23日「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について(アップデート)」。営業利益率は営業収益に対する比率で筆者が計算)

この表のポイントは2つです。

1つ目は、営業利益が3期連続で減ってきた(151億→130億→112億円)のに、今期の予想だけが170億円と急に戻っていることです。売上は毎年1%前後伸びていますが、賃上げ・物流費・修繕費などの費用がそれ以上に伸びてきました。

2つ目は、純利益が営業利益とまったく違う動きをしていることです。2025年2月期は減損48億円などで38億円、2026年2月期は投資有価証券の売却益(持分法適用関連会社レデイ薬局の株式売却を含む)104億円と減損119億円がほぼ相殺し、さらに税金が戻ったことで82億円でした。フジの純利益は、本業よりも「年度末の特別損益と税金」で決まる年が続いています(深掘り③)。

1-4. 会社予想の達成履歴:上期決算の時点で、予想は下期に何を置いていたか

フジは期初に通期予想だけを出し、上期予想は出していません。そこで、上期決算の時点で「通期予想−上期実績」が下期に置いていた営業利益を、過去2期について並べます。

決算期期初の通期予想(営業利益)上期実績上期進捗率上期決算時点で予想が置いた下期期中の修正(開示日)実際の下期下期達成率通期実績(期初予想比)
2025年2月期155億00百万円51億68百万円33.3%103億32百万円なし77億85百万円75.3%129億53百万円(83.6%)
2026年2月期155億00百万円45億01百万円29.0%109億99百万円106億円へ下方修正(2026年1月8日、第3四半期決算と同日)67億16百万円61.1%112億17百万円(72.4%)
2027年2月期170億00百万円22億91百万円13.5%147億09百万円中間決算で据え置き?——

(出所:各期の決算短信、業績予想の修正・差異の適時開示。「予想が置いた下期」と達成率は筆者の計算)

この表のポイントは3つです。

1つ目は、過去2期とも、上期決算の時点で予想を据え置き、下期に置いた利益に届かなかったことです。2025年2月期は期中の修正をせずに期末後に差異を開示し、理由に「エネルギー価格や物流費の増加が当初想定よりも大きかった」ことを挙げています。2026年2月期は第3四半期決算と同日に下方修正し、理由に賃上げ・物流費・老朽店舗の修繕費を挙げました。

2つ目は、今期の上期進捗率13.5%は、過去2期(33.3%、29.0%)の半分以下で、予想が置いた下期は過去2期の実際の下期(78億円、67億円)の約2倍だということです。

3つ目は、2026年2月期に第3四半期で修正したとき、修正後予想が置いた12〜2月期(57億88百万円)に対して、実際は64億05百万円と上回って着地したことです。修正後の予想は保守的に作られた年もあります。会社の予想は「期初は強め、修正後は届く水準」という形が2期続いている、というのが表から読める範囲の事実です。

用語メモ:業績予想の修正の適時開示は、売上高で10%、利益で30%以上のずれが見込まれるときに義務づけられます。今期の上期は営業利益が前年同期比で半減しましたが、会社が修正の必要はないと判断した場合、開示は出ません。開示が出ていないことは、予想どおりであることを意味しません。

1-5. 中期経営計画(2024〜2026年度)の最終年度

今期(会社の呼び方で2026年度)は、3か年中期経営計画の最終年度です。

項目中計の目標(2026年度)今期の会社予想・実績
営業収益8,250億円8,250億円(予想)
営業利益率2%超(連結)2.06%(予想:170億円÷8,250億円)
ROE4.1%約3.1%(予想純利益70億円÷自己資本の期首・中間期末平均。筆者の計算)
ROIC3.7%上期0.18%(補足資料)
3年間の投資額860億円478億67百万円(2025年2月期199.5億円+2026年2月期193.0億円+今期上期86.2億円。取得ベース)

(出所:決算説明会資料、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について(2026年6月23日)、各期の決算補足資料。2030年度の目標は営業収益1兆円・営業利益率3.0%・ROE5.8%)

この表のポイントは、通期予想の営業利益170億円は、中計の「営業利益率2%超」をちょうど満たす水準に置かれていることです。一方、純利益予想70億円ではROE4.1%には届きません。会社は2026年6月の資料で、株主資本コストを4.4%程度と推計し、直近3年のROEがそれを下回っていると自ら書いています。投資額は2年半で計画の55.7%で、計画どおり使うには下期に381億円の投資が必要な計算です(筆者の計算)。次の中期経営計画の公表時期は、筆者が読んだ開示では確認できませんでした。


2. 決算ハイライト(2026年10月8日15時00分発表)

2-1. 損益

項目2026年2月期上期2027年2月期上期前年同期比
営業収益4,085億42百万円3,980億69百万円△2.6%
売上高3,932億76百万円3,837億50百万円△2.4%
売上総利益(粗利率)1,100億24百万円(27.98%)1,054億84百万円(27.49%)△4.1%
営業収入152億65百万円143億19百万円△6.2%
販売費及び一般管理費1,207億88百万円1,175億12百万円△2.7%
営業利益45億01百万円22億91百万円△49.1%
経常利益53億56百万円25億18百万円△53.0%
特別利益9億48百万円35億47百万円—
特別損失28億64百万円11億43百万円—
親会社株主に帰属する中間純利益26億45百万円31億09百万円+17.6%
1株当たり中間純利益30.53円35.89円+17.6%

(出所:2027年2月期第2四半期(中間期)決算短信。粗利率は売上総利益÷売上高で筆者が計算)

この表のポイントは2つです。1つ目は、売上は2.4%しか減っていないのに、営業利益は半分になったことです。フジは粗利率27〜28%に対して販管費が売上の30%強を占め、営業利益率は1%前後しかありません。売上と粗利率がわずかに動くだけで、営業利益は大きく振れます(§3で4つに分けます)。2つ目は、経常利益の減益率(△53.0%)が営業利益(△49.1%)より大きいことです。前年同期は持分法による投資利益6億93百万円がありましたが、レデイ薬局の株式を2025年度に売却したため、今期はゼロです。

2-2. 会社は何が効いたと説明しているか

短信と説明会資料の説明を要約すると、次の4点です。

  • 売上:EDLP(毎日の低価格)とトップバリュの拡大で客数の伸長を図ったが、衣料品の不調、昨年の米特需の反動、建て替え・改装による休業と閉店で前年を下回った。閉店3店・休業9店による単体の売上減は△41億円
  • 粗利:仕入原価の上昇で値入(仕入値と売値の差)が圧迫された。第1四半期の結果を受けて、第2四半期からは品揃えの見直しや値引き削減で粗利率の改善に注力し、改善基調にある
  • 販管費:自動発注・電子棚札による作業効率の改善、電気使用量の削減、経費の見直しで前年比2.7%減
  • 純利益:2026年6月1日に、合併前から各社が別々に加入していた確定給付企業年金を統合するため一部の制度を終了し、退職給付制度移行益33億86百万円を特別利益に計上。通期予想の修正はなし

決算説明会は機関投資家・アナリスト向けで、説明会資料(10月8日公開)は読みましたが、質疑応答の内容は公開されておらず反映していません。

2-3. 見え方が誤解を生む数字①:既存店99.3%の「ほぼ全部」が米

補足資料では、上期の既存店売上高(単体)は前年同期比99.3%、前年差△25億55百万円でした。客数98.1%、客単価101.2%です。素直に読むと「客が離れている」ように見えますが、部門別に分けると見え方が変わります。

部門(既存店)前年差前年比
加工食品△24億88百万円96.9%
うち米△28億66百万円—
うち米を除く加工食品+3億78百万円—
リカー(酒類)△13億36百万円93.8%
衣料△3億47百万円96.7%
水産・デリカ・デイリー等(生鮮・日配)プラス(水産+5億98百万円、デリカ+5億11百万円、デイリー+4億43百万円など)100〜102%
既存店合計△25億55百万円99.3%
既存店合計から米を除くと+3億11百万円約100.1%

(出所:決算補足資料の部門別売上高(既存店)、決算説明会資料の部門別売上前年差の図。米と米を除く加工食品の内訳は説明会資料の図から筆者が読み取った値で、合計が補足資料の加工食品△24億88百万円と一致することを確認。米を除いた合計は筆者の計算)

この表のポイントは、米の反動△28億66百万円が既存店の前年差△25億55百万円より大きいことです。米を除けば既存店は前年並みで、生鮮・デリカ・デイリーは前年を上回っています。前年の上期(2025年3〜8月)は、米の価格高騰と政府備蓄米の販売で加工食品の既存店が106.4%と膨らんでいた期でした(前期の補足資料)。

ただし、米を除いて前年並みというのは「伸びていない」ということでもあります。酒類(93.8%)と衣料(96.7%)は米と関係なく落ちており、買上点数は99.8%でした。

2-4. 見え方が誤解を生む数字②:純利益+17.6%は、本業の増益ではない

項目2026年2月期上期2027年2月期上期
経常利益53億56百万円25億18百万円
特別利益の主なもの投資有価証券売却益9億11百万円退職給付制度移行益33億86百万円
特別損失の主なもの店舗閉鎖損失引当金繰入額17億94百万円、減損4億20百万円減損4億73百万円、店舗閉鎖損失3億99百万円
税金等調整前中間純利益34億40百万円49億22百万円
移行益を除いた税金等調整前中間純利益(参考)—15億36百万円
法人税等(負担率)7億93百万円(23.1%)18億08百万円(36.7%)
親会社株主に帰属する中間純利益26億45百万円31億09百万円

(出所:決算短信。移行益を除いた値と負担率は筆者の計算)

この表のポイントは、移行益33億86百万円を除くと、税引前の利益は15億円で前年の半分以下になることです。移行益は、終了した年金制度の積立と退職給付債務の差などを会計上精算した結果で、現金が入ってくる利益ではありません。貸借対照表では、退職給付に係る負債が16億09百万円→1億89百万円、純資産の退職給付に係る調整累計額が40億55百万円→11億93百万円に減っています。

用語メモ:退職給付制度間の移行は、確定給付型の企業年金(将来の給付額が決まっている年金)の一部を終了したり別の制度に移したりすることです。移行した部分について、それまで会計上積み残していた差額をまとめて損益に計上するため、大きな特別利益や特別損失が一度に出ることがあります。

2-5. 見え方が誤解を生む数字③:営業キャッシュ・フローが「△5億円」

上期の営業キャッシュ・フローは△5億86百万円で、前年同期の+369億52百万円から大きく変わりました。会社は、前期末(2026年2月28日)が土曜日で金融機関の休業日だったことの影響を挙げています。期末日が休日だと、その日に払うはずの仕入代金が翌営業日に回り、期末の現金と買掛金が両方膨らみます。今期は膨らんだ状態から始まって平日(8月31日は月曜日)で終わったので、仕入債務が87億30百万円減りました。前期の通期の営業CF377億40百万円も、仕入債務の増加153億33百万円で膨らんでいた数字です。期末日の曜日で営業CFが数百億円振れる会社なので、半期の営業CFで稼ぐ力を判断しないほうがよい、というのが読み方の結論です。

財政状態では、長期借入金の返済で有利子負債が441億円→361億円に減り、自己資本比率は57.5%に上がりました。現金及び預金は204億77百万円で、有利子負債から差し引いた純有利子負債は156億57百万円です(筆者の計算)。前期末に親会社イオンへ預けていた関係会社預け金50億円は、中間期末にはゼロになっています。


3. 深掘り①:上期の減益は、どの3か月で、何によって生まれたか

ここからが本題です。問いは1つ、**「上期に半減した営業利益に対して、据え置かれた通期予想は何を前提にしているのか」**です。まず上期の減益がどの3か月で、何によって生まれたかを確かめます(§3)。次に、予想が下期に置いている数字を過去の下期と比べます(§4)。最後に、純利益予想が年度末の帳簿の見直しをどれだけ置いているかを逆算します(§5)。

3-1. 11四半期を並べる

フジは四半期ごとの損益を単独では開示していません。各四半期の決算短信の累計値(当期と前年同期の欄)から筆者が差し引いて並べます。2025年2月期・2026年2月期は4四半期の合計が通期の開示値と一致することを確認済みです。

期四半期(月)売上高粗利率営業収入販管費販管費率営業利益営業利益率
2024年2月期4Q(12〜2月)1,987億27.76%73億546億27.5%78億47百万円3.81%
2025年2月期1Q(3〜5月)1,884億27.77%78億586億31.1%14億35百万円0.73%
2025年2月期2Q(6〜8月)1,979億28.08%76億595億30.1%37億33百万円1.82%
2025年2月期3Q(9〜11月)1,888億28.01%77億596億31.6%9億54百万円0.49%
2025年2月期4Q(12〜2月)2,031億28.57%76億588億29.0%68億31百万円3.24%
2026年2月期1Q1,937億27.82%77億597億30.8%18億99百万円0.94%
2026年2月期2Q1,996億28.13%76億611億30.6%26億02百万円1.26%
2026年2月期3Q1,901億27.77%73億597億31.4%3億11百万円0.16%
2026年2月期4Q2,009億28.35%75億580億28.9%64億05百万円3.07%
2027年2月期1Q1,908億27.06%72億585億30.6%3億91百万円0.20%
2027年2月期2Q1,929億27.91%71億591億30.6%19億00百万円0.95%

(出所:各四半期の決算短信から筆者が差し引き。2024年2月期の1〜3Qは第3四半期累計しか取得しておらず、4Qのみ記載。粗利率は売上総利益÷売上高、販管費率は販管費÷売上高、営業利益率は営業利益÷営業収益)

この表のポイントは3つです。

1つ目は、12〜2月(4Q)が3年続けて年間で最も利益の出る四半期だということです。4Qの営業利益は年間の52〜57%を占めています(2024年2月期52%、2025年2月期53%、2026年2月期57%)。年末年始の需要で売上が膨らみ、販管費率が28〜29%台まで下がるためです。ここまでは3年分の形がそろっているので、季節性と書けます。

2つ目は、9〜11月(3Q)が2年続けて最も利益の出にくい四半期だということです(2025年2月期0.49%、2026年2月期0.16%)。2024年2月期の3Qは単独では取得できていないため、3年続けてとは書けません。

3つ目は、今期の1Q(3〜5月)の粗利率27.06%は、並べた11四半期で最も低いことです。2Q(6〜8月)は27.91%まで戻りましたが、前年の2Q(28.13%)はまだ下回っています。

用語メモ:フジは累計の数字しか開示しないので、「6〜8月の3か月だけの営業利益」は、中間期の累計から第1四半期の累計を引き算するしかありません。本記事の四半期の数字はすべてこの方法で筆者が出しています。

3-2. 減益を4つに分ける

上期の営業利益の減少(△22億10百万円)を、食品スーパーの読み方の型に沿って4つに分けます。

要因(百万円)上期合計1Q(3〜5月)2Q(6〜8月)
数量効果(売上の増減×前年の粗利率)△2,665△793△1,877
率効果(今期売上×粗利率の変化)△1,875△1,440△430
営業収入(テナント賃料等)の増減△946△518△428
販管費の削減(減少をプラスで表示)+3,276+1,243+2,033
合計(=実際の営業利益の増減)△2,210△1,508△702

(出所:決算短信から筆者が計算。各要因は四捨五入。合計は表示値ベースの実際の増減と一致。会社開示の上期の減益額は△22億09百万円で、百万円未満の切捨てによる1百万円の差があります)

この表のポイントは3つです。

1つ目は、**1Qの減益の主因は粗利率(率効果△14億40百万円)、2Qの減益の主因は売上の減少(数量効果△18億77百万円)**だということです。1Qは「安さ」の訴求を強めた結果、粗利率が0.76ポイント下がりました。2Qは粗利率の低下が0.22ポイントに縮まった一方、売上の減少率が1Qの△1.5%から△3.3%に広がっています。改装・建て替えの休業店が2Qに集中したことと、前年の米特需のピーク(前年2Qの加工食品は6月108.0%、7月105.5%)の反動が重なったためと読めます。

2つ目は、**販管費の削減は2Qのほうが大きい(+20億33百万円)**ことです。単体の販管費の内訳では、上期の減少33億15百万円のうち、設備費が△16億95百万円(うち電気料金△9億77百万円)、人件費が△8億92百万円、一般費が△7億81百万円でした。会社は、賃上げを続けながら、作業効率の改善や働き方の多能化で人件費を抑えたと説明しています。

3つ目は、2Qの減益幅(△7億02百万円、△27.0%)は1Q(△15億08百万円、△79.4%)より小さくなっていることです。会社が第2四半期以降を改善基調と説明しているのは、この数字の動きと整合します。ただし2Qも前年を下回っており、「回復」ではなく「減益幅の縮小」です。

用語メモ:数量効果・率効果は、粗利の増減を「売上が増えた・減ったから」と「1円あたりの儲けが変わったから」に分ける方法です。フジのようにテナント賃料(営業収入)がある小売では、これに営業収入と販管費の増減を足すと、営業利益の増減とぴったり一致します。

3-3. 弱み①「費用が先、効果は後」はどこに出ているか

§1-1の例えに戻ると、帳場をまとめる作業の効果は、販管費の削減(自動発注・電子棚札・物流の統合)としてはすでに出ています。上期の販管費△2.7%は、前年の上期(+2.3%)と比べて明らかに違う動きです。一方で、「まとめた帳場で、まとめた仕入れから粗利をどれだけ増やせるか」という効果は、まだ粗利率の上には出ていません。会社は1Qに値入れが圧迫されたことを認め、SKU(取扱品目数)をスーパーで約10%削減するなど、2Qから粗利率の改善策を打っています。


4. 深掘り②:据え置かれた通期予想は、下期に何を置いているか

前章で、上期の減益は「1Qの粗利率」と「2Qの売上減少」で生まれ、2Qは減益幅が縮まったことを確かめました。では、据え置かれた通期予想は、残りの下期(2026年9月〜2027年2月)に何を置いているのでしょうか。

4-1. 予想が置いている下期

項目通期予想上期実績予想が置いた下期前年下期前年下期比2年前の下期
営業収益8,250億00百万円3,980億69百万円4,269億31百万円4,057億18百万円+5.2%4,072億30百万円
営業利益170億00百万円22億91百万円147億09百万円67億16百万円+119.0%(2.19倍)77億85百万円
営業利益率2.06%0.58%3.45%1.66%—1.91%
経常利益172億00百万円25億18百万円146億82百万円71億71百万円+104.7%82億39百万円

(出所:決算短信から筆者が計算)

この表のポイントは3つです。

1つ目は、下期の営業利益を前年の2.19倍、2年前の1.89倍に置いていることです。

2つ目は、下期の営業利益率3.45%は、過去2年のどの下期(1.91%、1.66%)よりも高く、年間で最も利益の出る12〜2月の3か月だけの利益率(3.07〜3.81%)に近い水準だということです。仮に9〜11月期が前年並み(3億11百万円)なら、12〜2月期だけで143億98百万円が必要で、前年の4Q(64億05百万円)の2.2倍になります。

3つ目は、売上の側も下期に+5.2%を置いていることです。上期は△2.6%でした。下期には建て替え店4店のオープン(9月にマルナカ檀紙店、11月にマルナカ市場店・マックスバリュ新宮店・ザ・ビッグ五日市店の予定)と、改装の残り(期初計画50店のうち上期16店で、残り34店)がありますが、月次の全店売上高は3〜8月の6か月すべてで前年を下回っています(94.2〜99.9%)。

用語メモ:予想が置いた下期は、通期予想から上期の実績を引いた残りです。会社が下期の予想を開示しているわけではありませんが、通期予想を据え置いた以上、下期にこれだけ稼ぐ前提になっている、という計算上の数字です。

4-2. 年間の利益のうち、下期で稼ぐ割合

決算期上期の営業利益下期の営業利益年間に占める下期の割合
2025年2月期51億68百万円77億85百万円60.1%
2026年2月期45億01百万円67億16百万円59.9%
2027年2月期(予想)22億91百万円(実績)147億09百万円(予想が置いた値)86.5%

(出所:決算短信から筆者が計算)

この表のポイントは、過去2期の下期の割合は60%で安定していたのに、今期の予想は86.5%を下期に置いていることです。フジは下期(特に12〜2月)に稼ぐ会社ですが、その季節の形をそのまま今期の上期に当てはめると、通期の営業利益は60億円前後(22億91百万円÷0.4)という計算になります。もちろん、季節の形どおりにしかならないという意味ではありません。会社が予想を据え置いたのは、上期にはまだ出ていない効果(粗利率の改善、改装・建て替えの寄与、システム統合)が下期に出るという前提を置いているから、と読むのが自然です(筆者の解釈で、会社は据え置きの理由を短信で説明していません)。

4-3. 下期の売上と利益率をいくつか置いてみる

会社予想に近づくには、売上と利益率がどれだけ必要かを、筆者の試算で示します。

下期の営業収益(前年下期比)利益率1.66%(前年下期並み)利益率1.91%(2年前の下期並み)利益率2.50%利益率3.45%(予想が置いた水準)
98%(3,976億円)通期 89億円通期 99億円通期 122億円通期 160億円
100%(4,057億円)通期 90億円通期 100億円通期 124億円通期 163億円
102%(4,138億円)通期 92億円通期 102億円通期 126億円通期 166億円
105.2%(予想が置いた4,269億円)通期 94億円通期 104億円通期 130億円通期 170億円

(筆者の試算。通期の営業利益=上期実績22億91百万円+下期の営業収益×営業利益率。会社は下期の売上・利益率の前提を開示していません)

この表のポイントは、通期予想に届くかどうかは、売上よりも利益率で決まることです。売上が予想どおり+5.2%伸びても、利益率が前年下期並みなら通期は94億円です。逆に売上が前年並みでも、利益率が2.5%まで上がれば124億円になります。下期の利益率が上期の0.58%から何ポイント上がるか、が今期を読む中心の数字です。

4-4. 強気と弱気、どちらにも置ける数字

同じ数字が、強気と弱気の両方に置けます。

  • 強気の読み:2Qの減益幅は縮小し、粗利率の低下も0.76→0.22ポイントに縮まった。販管費の削減は2Qで加速している。改装店の売上は前年比105.2%で、下期に改装34店・建て替え4店が加わる。米の反動は前年の下期には小さかった(前期下期の加工食品の既存店は102.6%)ので、下期は比較のハードルが下がる
  • 弱気の読み:過去2期、同じ時点で予想が置いた下期の達成率は75.3%と61.1%だった。今期の置き方はさらに大きく、下期の利益率3.45%は過去2年の下期の2倍近い。3〜8月の月次の全店売上は6か月すべて前年割れで、売上+5.2%の前提も遠い

どちらの読みも、使っている数字は同じです。違うのは、2Qの改善がどこまで続くかの見立てだけです。


5. 深掘り③:純利益予想70億円に置かれている「年度末の帳簿の見直し」

ここまでは営業利益の話でした。最後に、§1-1の弱み②、「店の数が多いほど、帳簿価額の見直し(減損)が毎年出る」が、純利益の予想にどう入っているかを逆算します。

5-1. 経常利益172億円から純利益70億円までの距離

通期予想では、経常利益172億円に対して純利益は70億円です。会社は純利益が前期比で減る理由として、前年に減った法人税等が増える見込みを挙げています。法人税等の負担率を3通り置いて、予想が特別損益をどれだけ置いているかを逆算します。

税負担率の置き方純利益70億円に必要な税引前利益通期の特別損益(逆算)上期の特別損益(実績)下期に置かれた特別損益(逆算)
法定実効税率30.4%100億72百万円△71億28百万円+24億04百万円△95億32百万円
上期の負担率36.7%110億74百万円△61億26百万円+24億04百万円△85億30百万円
40%116億83百万円△55億17百万円+24億04百万円△79億21百万円

(筆者の試算。非支配株主に帰属する利益は約10百万円と置きました。会社は特別損益・税負担率の前提を開示していません)

この表のポイントは、純利益予想70億円は、下期に80〜95億円規模の特別損失(純額)を置かないと成り立たないことです。これは「下期に大きな損失が出る」という意味ではなく、「経常利益の予想が達成された場合に、純利益の予想がそれだけの特別損失を見込んでいる計算になる」という意味です。

5-2. 過去2期の「年度末の見直し」

決算期減損損失(年間)うち第4四半期対象下期の特別損失(総額)
2025年2月期48億39百万円43億19百万円スーパー92店など102件59億93百万円
2026年2月期118億80百万円110億68百万円スーパー127件・ディスカウントストア12件など160件120億09百万円(同期に特別利益95億48百万円)

(出所:特別損失の計上に関するお知らせ(2025年4月10日、2026年4月7日)、決算短信。下期の特別損失は通期から上期を引いて筆者が計算)

この表のポイントは2つです。

1つ目は、減損は2年続けて、ほぼ全額が第4四半期(年度末)に計上されていることです。フジは店舗ごとに将来の稼ぎを見積もり、帳簿価額を回収できない店の資産を減額しています。年度末にまとめて見直すため、上期の決算には減損がほとんど出ません(今期上期は4億73百万円)。

2つ目は、純利益予想が置いている下期の特別損失(80〜95億円)は、2025年2月期(60億円)と2026年2月期(120億円)の間の水準だということです。会社が減損の見込額を開示しているわけではないので、筆者がこれ以上の推測をすることはしません。

有価証券報告書の「重要な会計上の見積り」には、減損の対象となる有形固定資産等が2,578億92百万円(2026年2月末)あること、将来キャッシュ・フローの見積りに店舗ごとの成長率・需要予測・競争環境の変化や販管費の改善策を織り込んでいることが書かれています。また、回収可能価額の算定に使う割引率は、前期の3.43%から当期は4.75%に上がっています。割引率が上がると、同じ将来の稼ぎから計算される店舗の価値は小さくなります。

用語メモ:減損損失は、店舗などの資産が将来の稼ぎで回収できないと判断したときに、帳簿上の金額を切り下げる処理です。現金は出ていきませんが、純資産と純利益は減ります。フジは店舗を1つの単位として判定しているので、店の数が多いほど、毎年どこかの店で減損が出やすい構造です。

5-3. 特別利益33億86百万円を計上しても「修正なし」の意味

中間期に退職給付制度移行益33億86百万円が出ましたが、会社は通期予想を修正しないと明記しました。この33億円が期初の予想にもともと含まれていたのか、含まれていなかったものを他の要因で相殺するつもりなのかは、開示からは判断できません。前者なら予想に変化はなく、後者なら、営業利益が予想に届かない分や特別損失の増加を、この利益で埋める余地を残したと読めます。どちらの読みかは、1月上旬の第3四半期決算か、4月の通期決算で初めて分かります。

5-4. 税金の行も年によって大きく動く

前期の法人税等の負担率は△0.3%(税金がマイナス)、前々期は48.7%でした。有価証券報告書の税率差異の注記を並べると、理由が見えます。

項目2025年2月期2026年2月期
法定実効税率30.4%30.4%
受取配当金等永久に益金に算入されない項目△0.3%△33.9%
住民税均等割5.6%5.1%
評価性引当額の増減△23.8%2.0%
持分法投資損益△4.1%△3.6%
のれん償却5.4%5.0%
連結子会社の吸収合併に伴う税率変更等による影響38.7%—
税率変更による影響額—△5.6%
その他△3.2%0.3%
税負担率(合計)48.7%△0.3%

(出所:2026年2月期有価証券報告書の税効果会計関係の注記。合計が開示の負担率と一致することを筆者が確認)

この表のポイントは2つです。1つ目は、**前期の税負担率がマイナスになった最大の理由は「受取配当金等永久に益金に算入されない項目」(△33.9ポイント)**で、前期だけの要因だということです。その中身は注記には書かれておらず、筆者は特定していません。2つ目は、住民税均等割(約5ポイント)とのれん償却(約5ポイント)は、利益の大きさにかかわらず毎年出ることです。475店を持つ会社では均等割が、合併で生じたのれん(中間期末208億98百万円、年間償却13億48百万円)は税務上の損金にならないため、利益が小さい年ほど負担率を押し上げます。今期の上期の負担率が36.7%と法定実効税率より高いのも、利益が小さいことと整合します。

5-5. 3つの深掘りをつなぐ

ここで3つの深掘りが1本の線になります。上期の営業利益は、帳場をまとめる効果のうち「費用の削減」は出たものの、「粗利の積み増し」はまだ出ず、売上の減少と重なって半減しました(§3)。通期予想は、その「粗利の積み増し」と改装・建て替えの効果を下期にまとめて置き、下期の利益を前年の2.2倍にしています(§4)。そして純利益の予想は、年度末に店の帳簿をまとめて見直す(減損)分として、80〜95億円規模の特別損失を見込んでいる計算になります(§5)。帳場をまとめ直している会社の予想は、「効果は後から来る」「見直しは年度末にまとめて来る」という2つの時間差の上に立っています。


6. 資本政策・株主還元

6-1. 配当方針と推移

フジの配当政策は、内部留保の充実を勘案しながら安定かつ永続的な利益還元に取り組む、というものです。配当性向やDOE(自己資本に対する配当の比率)の数値目標は示されていません。配当は中間・期末の年2回で、中間配当の基準日は8月31日、期末配当の基準日は2月末日です。

決算期1株配当配当総額連結配当性向配当の決め方
2024年2月期30円(中間15円・期末15円)26億04百万円35.0%安定配当(数値目標なし)
2025年2月期30円26億04百万円68.1%同上
2026年2月期30円26億04百万円31.8%同上
2027年2月期(予想)30円(中間15円は実施済み)約26億円37.1%同上

(出所:決算短信、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について(2026年6月23日)。2027年2月期の配当性向は会社予想EPS80.76円で筆者が計算。2023年2月期以前はマックスバリュ西日本の完全子会社化の前後で株数が大きく違うため、本記事では並べていません)

この表のポイントは、1株配当は純利益が38億円の年も82億円の年も30円で動いていないことです。配当性向は利益に合わせて35%→68%→32%と動きましたが、配当額は固定です。会社は同じ資料で、中長期的な利益拡大を通じて株主還元の充実を図るとも書いています。配当総額26億円は、自己資本(約2,269億円)の約1.1%にあたります(筆者の計算)。

中間配当15円の支払開始日は2026年10月27日です。期末配当の権利付き最終日は§6-6に書きます。

6-2. 資本コストと株価への意識

会社は2026年6月の資料で、PBRが1倍を下回り(2026年2月期末0.80倍)、ROE(3.7%)が株主資本コスト(4.4%程度と推計)を下回っていることを自ら書いています。そのうえで、中期経営計画の遂行、営業キャッシュ・フローの成長投資への配分、有利子負債の縮減、政策保有株の売却を取り組みとして挙げています。前期にレデイ薬局株式(190億05百万円、関連当事者情報)などを売却し、その資金で借入金を返済したのは、この方針どおりの動きです。一方で、自己株式取得や増配といった株主還元の上乗せは、資料にも今回の決算にも出てきません。

6-3. 株数と自己株式

潜在株式はありません(短信の潜在株式調整後EPSは記載なし)。中間期末の自己株式は175,167株で、そのうち146,900株は役員向け株式交付信託の保有分です(会社自身の保有は28,267株)。直近で自己株式の取得の決議はありません。株数はほぼ一定なので、EPSの伸びは純利益の伸びとほぼ一致します(上期:純利益+17.6%、EPS+17.6%)。

6-4. 親会社イオンとの関係

項目内容
議決権イオン㈱ 直接50.70%+合算対象0.79%=51.49%(2026年2月末)
大株主表の持株比率イオン50.6%、㈱アスティ3.9%、日本マスタートラスト信託銀行(信託口)3.0%、フジ共栄会2.9%、フジ親栄会1.9%、フジ社員持株会1.4%、伊予銀行・広島銀行・愛媛銀行 各1.3%(上位10名計68.9%)
役員の兼任取締役9名・監査役4名のうち3名がイオングループと兼務
主な取引(2026年2月期)イオン商品調達㈱からの商品仕入521億13百万円、イオントップバリュ㈱からの商品仕入439億32百万円(合計で売上原価の約17%)、イオンフィナンシャルサービス㈱へのクレジット手数料54億85百万円
資金の寄託イオン㈱への資金寄託50億円(2026年2月末)→中間期末は関係会社預け金ゼロ

(出所:支配株主等に関する事項について(2026年5月19日)、2026年2月期有価証券報告書の大株主の状況・関連当事者情報。売上原価に対する比率は筆者の計算)

この表のポイントは、トップバリュをはじめとするイオングループからの仕入れが売上原価の約17%を占め、帳場をまとめる「強み」の一部は親会社の調達網そのものだということです。会社は、親会社との重要な取引について独立役員のみで構成する特別委員会で公正性を検証すると説明しています。大株主の株式会社アスティ、フジ共栄会(取引先持株会と見られますが、性格は開示で確認していません)などとイオンとの関係は開示で確認できないため、持株比率を合算していません。

所有者別では、個人株主が63,413名で、株式の22.98%を持っています(1人あたり平均約315株。筆者の計算)。株主優待を目当てにした個人株主が多い構成と読めます。信用取引は、10月2日時点で信用買残20,900株に対して信用売残129,100株(信用倍率0.16倍)でした(Yahoo!ファイナンスの表示、報道ベース)。

6-5. 有利子負債

有利子負債は、2025年2月期末704億円→2026年2月期末441億円→中間期末361億円と、1年半で約343億円減りました。担保に供していた資産(前々期末70億円)も前期末にはなくなっています。会社は説明会資料で、金利上昇による支払利息の増加を環境認識の1つに挙げていますが、上期の支払利息は1億88百万円(前年同期2億26百万円)で、借入の減少で金利上昇の影響は打ち消されています。

6-6. 株主優待

フジの株主優待は、配当より金額の大きい株主還元になっています。

(1) 内容と区分

毎年2月末日現在で100株以上の株主に、所有株式数に応じてA〜Cのいずれか1つが贈られます(有価証券報告書「株主に対する特典」)。

所有株式数A:株主さまご優待券(値引券)1株当たり(A)B:ネットショップポイント/C:地域特産品1株当たり(B・C)1株当たり配当
100株100円券×60枚(6,000円分)60.0円3,000円分30.0円30円
299株同上20.1円同上10.0円30円
300株100円券×80枚(8,000円分)26.7円3,000円分10.0円30円
400株100円券×100枚(10,000円分)25.0円3,000円分7.5円30円
500株100円券×120枚(12,000円分)24.0円3,000円分6.0円30円
999株同上12.0円同上3.0円30円
1,000株100円券×200枚(20,000円分)20.0円10,000円分10.0円30円
2,000株100円券×400枚(40,000円分)20.0円10,000円分5.0円30円
5,000株以上(一律)100円券×1,000枚(100,000円分)20.0円(5,000株時)10,000円分2.0円30円

(出所:2026年2月期有価証券報告書。1株当たりの金額は筆者の計算。BとCは100〜999株で3,000円分、1,000株以上で10,000円分)

この表のポイントは3つです。

1つ目は、100株で値引券を選ぶと、1株当たり60円で配当(30円)の2倍になることです。1,919円(10月8日終値)で計算すると名目の優待利回りは3.13%で、配当利回り1.56%と合わせると名目で4.69%になります(筆者の計算)。

2つ目は、区分の境目のすぐ下で持つと、1株当たりが大きく下がることです。たとえば100株から299株までは同じ6,000円分なので、299株では1株当たり20.1円です。100株を200株に増やすと、優待は増えずに投資額だけが倍になります。1,000株以上はどの区分でも1株当たり20円で、比例する設計です。

3つ目は、BとCは100株時でAの半分の金額だということです。値引券を使えない地域に住む株主にとっては、100株での実質的な優待は3,000円分(1株当たり30円)になります。

(2) 名目と実質のギャップ

値引券は、1回の会計が1,000円(税込)以上のとき、1,000円ごとに1枚使えるものです。60枚をすべて使うには、有効期限(翌年6月30日)までに対象の店で合計6万円以上の買物が必要です。酒類・たばこ・商品券などには使えません。使える店はフジグループの店(フジ・フジグラン・マックスバリュ・マルナカ・ザ・ビッグ等)に加えて、全国のイオン・イオンスタイル・マックスバリュ・まいばすけっと等の直営売場です。日常的にこれらの店で食料品を買う人には名目に近い価値、買わない人には価値がほぼゼロ、という性格の優待です。イオン系の店が身近かどうかで、同じ100株の価値が大きく変わります。

(3) 長期保有株主優待(新米)

毎年8月末日の基準日に、300株以上を継続して1年以上、同一の株主番号で保有している株主に、新米が贈られます(300株以上2kg、500株以上5kg。500株は2期連続で500株以上の保有が条件)。贈呈は11月下旬〜12月上旬です。「継続して1年以上」をどの時点の株主名簿で判定するかは、筆者が読んだ開示には書かれていません。また、同一の株主番号が条件なので、証券会社を移したり貸株サービスを使ったりすると、継続が途切れる可能性があります。お米の金額は開示されていないので、利回りは計算していません。

(4) 優待の費用の目安

会社は優待の費用を開示していません。仮に株主64,424名(2026年2月末の株主数)全員が最低区分の6,000円分を受け取ったとすると、名目で約3億87百万円になり、前期の営業利益(112億17百万円)の約3.4%にあたります(筆者の粗い試算)。実際の費用は、値引券がどれだけ使われるか、上位区分の株主がどれだけいるかで大きく変わります。営業利益率が1〜2%の会社にとって、小さくない金額である可能性はあります。

(5) 権利日

権利基準日権利付き最終日
期末配当(15円予想)・株主優待(A〜C)2027年2月28日(日)→実質2月26日(金)2027年2月24日(水)
長期保有優待(新米)の次の判定2027年8月31日(火)2027年8月27日(金)

(筆者の計算。2月23日(火)は天皇誕生日で休場)

2027年2月28日は日曜日なので、実質的な基準日は直前の営業日の2月26日(金)、権利付き最終日はその2営業日前の2月24日(水)です。

用語メモ:権利付き最終日は、その日の取引終了時点で株を持っていれば配当・優待の権利が得られる最終日です。株の受け渡しは売買の2営業日後なので、基準日の2営業日前が権利付き最終日になります。

優待だけを目当てに買うかどうかは、「値引券を使える店で年6万円以上の食料品を買うか」と「株価の変動(年初来で2,305円〜1,873円、高値から安値まで約19%の幅)」を比べて考えるのが、判断の軸になると思います。


7. 株価の見方

7-1. 株価の基準点

基準点価格出所
2026年2月期末の終値2,094円(PBR0.80倍・PER22.2倍)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について(会社資料)
年初来高値2,305円(2026年4月9日。通期決算・今期予想の発表から2営業日後)Yahoo!ファイナンス(報道ベース)
年初来安値1,873円(2026年6月2日)Yahoo!ファイナンス(報道ベース)
決算発表前日の終値1,980円(2026年10月7日)Yahoo!ファイナンス
決算発表日の終値1,919円(2026年10月8日、前日比△3.08%、出来高285,100株)Yahoo!ファイナンス
翌日の前場1,947円(10月9日11時02分、前日比+1.46%)Yahoo!ファイナンス(取引時間中の値)

決算は10月8日15時00分の発表で、当日の終値1,919円と出来高285,100株には、発表後30分の取引が含まれます。出来高は直近19営業日の平均(約10.4万株)の約2.7倍でしたが、安値1,906円が発表の前か後かは、日足からは確認できません。翌9日は、日経平均が前場で大きく下げるなか、前場は1,947円で取引されています。

7-2. 1,919円での主な指標

指標値計算の前提
時価総額約1,667億円発行済株式86,856,954株
予想PER23.8倍会社予想EPS80.76円
参考:経常利益予想に法定実効税率を当てたEPSでのPER13.9倍172億円×(1−30.4%)÷期中平均株式数=138.2円(特別損益ゼロの場合)
参考:前期実績EPSでのPER20.3倍94.36円
PBR0.73倍中間期末の1株当たり純資産2,617.53円
予想配当利回り1.56%年30円
優待込みの名目利回り(100株・A)4.69%配当30円+値引券60円(§6-6)

(筆者の計算)

この表のポイントは、PERは「純利益予想にどれだけ特別損失が入っているか」で13.9倍から23.8倍まで変わることです。会社予想の純利益には、§5で逆算した下期の特別損失が入っている計算です。毎年のように減損が出る会社では、特別損失を除いたPERは実態より割安に見え、会社予想のPERは年度末の見直しの大きさに左右されます。

7-3. 強気の材料

  • 6〜8月期は減益幅が縮小し、粗利率の低下も小さくなった(率効果は1Q△14.4億円→2Q△4.3億円)。会社は第2四半期以降の改善基調を説明している
  • 販管費は上期で2.7%減。賃上げを続けながら、電気代・修繕・作業効率で費用を削れている
  • 米を除けば既存店は前年並みで、生鮮・デリカ・デイリーは前年を上回っている。前年の下期は米の特需が小さかったので、下期は比較のハードルが下がる
  • 12〜2月期が3年続けて年間の利益の5割超を稼ぐ季節の形があり、改装34店・建て替え4店の効果が年末年始に乗る可能性がある
  • PBR0.73倍、自己資本比率57.5%、有利子負債は1年半で343億円減少。会社自身がPBR1倍割れを課題として明記している
  • 営業利益予想170億円は中計の「営業利益率2%超」に合わせた水準で、最終年度の目標として据え置いている

7-4. 弱気の材料

  • 予想が置いた下期の営業利益は前年の2.19倍、利益率3.45%。過去2年の下期は1.66〜1.91%で、12〜2月の3か月だけの利益率(3.07〜3.81%)に近い水準を半年で求めている
  • **過去2期、同じ時点で予想が置いた下期の達成率は75.3%と61.1%**で、2期とも期初予想に届かなかった
  • 売上も下期に+5.2%を置いているが、3〜8月の月次の全店売上は6か月すべて前年割れ。閉店・休業による売上減(単体△41億円)が続く
  • 純利益予想は、下期に80〜95億円規模の特別損失を置いている計算。減損の判定に使う割引率は3.43%→4.75%に上がっている
  • 持分法による投資利益(前期9.7億円)がなくなり、ROEは予想ベースで約3.1%と株主資本コスト(会社推計4.4%)を下回る。1株配当は30円のまま動いていない

8. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るポイント
2026年10月9日半期報告書の提出予定日退職給付制度の移行の詳細
2026年10月中旬〜下旬(見込み)9月の月次売上(会社IRサイト)既存店が100%を超えるか。9月にオープン予定のマルナカ檀紙店の寄与
2026年10月27日中間配当15円の支払開始—
2026年11月(予定)建て替え3店(マルナカ市場店・マックスバリュ新宮店・ザ・ビッグ五日市店)のオープン全店売上の前年割れが止まるか
2026年11月下旬〜12月上旬長期保有優待(新米)の贈呈(8月末基準)—
2027年1月上旬(例年)第3四半期決算9〜11月期の営業利益(前年3億11百万円)。通期予想の修正の有無(前期は第3四半期決算と同日に修正)
2027年2月24日(水)権利付き最終日(期末配当・優待)実質基準日は2月26日(金)
2027年4月上旬(例年)通期決算・特別損失(減損)の開示減損の金額と、純利益予想が置いていた特別損失との差。次期の中期経営計画
2029年2月期の期首新リース会計基準の適用予定店舗の賃借(借地借家料は前期190億円)が資産・負債に載る。影響額は会社が評価中

見るべきKPI

  1. 四半期の粗利率:2Qの27.91%が前年(9〜11月27.77%、12〜2月28.35%)を上回れるか。上期の減益の最大要因の1つ
  2. 月次の既存店・全店売上:既存店は米の反動が小さくなる下期に100%を超えるか。全店は建て替え店のオープンで前年割れが止まるか。なお、会社IRサイトの月次速報(3月99.5%・4月98.8%・5月103.3%)と、決算補足資料の月別既存店(98.7%・98.1%・102.5%)は3〜5月の値が一致しておらず、本記事は補足資料の値を使っています
  3. 販管費の前年比:上期△2.7%の削減が下期も続くか
  4. 第4四半期の減損損失:純利益予想が置いている特別損失(80〜95億円規模)との比較

9. 3行まとめ

  • 上期の営業利益は22億91百万円と半減しましたが、既存店の前年割れはほぼ全額が米の反動で、6〜8月期は3〜5月期より減益幅が縮まっています
  • それでも据え置かれた通期予想は、下期に前年の2.19倍(利益率3.45%)の営業利益を置いており、過去2期は同じ時点の置き方に届かず達成率は75%・61%でした
  • 純利益予想70億円は下期に80〜95億円規模の特別損失を置いた計算で、帳場をまとめ直している会社の予想は「効果は後から」「帳簿の見直しは年度末にまとめて」という2つの時間差の上に立っています

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、フジの決算短信(2025年2月期第3四半期・通期、2026年2月期各四半期・通期、2027年2月期第1四半期・中間期)、決算補足資料(2026年2月期通期、2027年2月期中間期)、決算説明会資料(2026年2月期、2027年2月期中間期)、適時開示(通期連結業績予想の修正、業績予想値と実績値との差異、特別損失・特別利益の計上、支配株主等に関する事項、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について)、2026年2月期有価証券報告書、会社IRサイトの株主優待制度ページ・月次売上ページです。株価・出来高・信用残はYahoo!ファイナンスの表示(報道ベース)で、10月9日の株価は取引時間中(11時02分)の値であり終値ではありません。四半期単独の数値、営業利益の4分解、予想が置いた下期、下期の感応度、純利益予想に置かれた特別損益の逆算、PER・PBR・優待利回り・優待費用の目安は筆者の計算・試算です。既存店の米と米を除く加工食品の内訳は、決算説明会資料の図から筆者が読み取った値です。2024年2月期の第1〜第3四半期は単独で取得しておらず、9〜11月期が年間で最も利益の出にくい形は2年分しか確認できていません。通期予想を据え置いた理由、退職給付制度移行益が期初の予想に含まれていたかどうか、2Qの売上減少の理由に関する記述は筆者の推測・解釈であり、会社の開示に基づくものではありません。2026年2月期の「受取配当金等永久に益金に算入されない項目」の中身、長期保有優待の「継続して1年以上」の判定方法、フジ共栄会・株式会社アスティとイオンとの関係は、筆者が読んだ開示では確認できていません。決算説明会は機関投資家・アナリスト向けで、質疑応答は一切反映していません。説明会資料のうち、販売費及び一般管理費の削減要因の表は画像のため読み取れず、反映していません。半期報告書(2026年10月9日提出予定)は本記事の執筆時点で確認していません。決算発表日の安値・出来高が発表の前後どちらで生じたかは確認できていません。減損損失・特別損失の見込額は会社が開示しておらず、本文の逆算は会社の予想の見込額や上限を示すものではありません。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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