本記事は2026年10月12日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。**執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。**特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
ローツェは2026年10月8日(木)15時30分、2027年2月期の上半期決算(2026年3〜8月)と同時に、通期の業績予想と配当予想の上方修正を発表しました。売上高の予想は1,590億円から1,800億円へ、営業利益は381億円から530億円へ、期末配当は20円から28円へ引き上げています。翌営業日の10月9日(金)、株価はストップ高の5,134円(前日比+15.79%)で取引を終えました。
数字の大きさに目が行きやすい決算ですが、この記事でいちばん丁寧に見たいのは「受注」です。上半期の6か月で受けた注文は1,285億円。前の期の1年分(1,133億円)をすでに超えています。この注文が「いつ」「どれだけ」売上と利益になるのか。会社の上方修正はそのうちどこまでを置いたのか。そして、作る側に制約はないのか。決算書と説明資料の数字だけで、順番に追っていきます。
この記事でわかること
- ローツェが何をしている会社なのか(ウエハを箱から出して装置に差し出す「手」をロボットにして売る会社)と、強みと弱みが同じ一文から出てくる理由
- 上半期の受注1,285億円・受注残高1,114億円という数字の読み方。6〜8月の3か月だけで820億円の注文が入り、受注残高は前年同期の2.2倍になった
- 上方修正後の予想が下期(2026年9月〜2027年2月)に置いたもの。営業利益率は29.9%で直近の6〜8月(30.3%)並み、ハードルは「売上を前年下期比+58.7%にできるか」の側にあること
- 作る側の制約。棚卸資産が半年で59億円増え、借入金が78億円増えた。ベトナムと中国の新工場の稼働前倒し
- 経常利益が+68.4%と営業利益(+42.4%)より大きく伸びた理由(前年の為替差損23.7億円が今年は為替差益15.9億円に)
- 純利益の伸び(+45.7%)を押し下げた特許訴訟の和解金21.6億円。前期の引当金74.3億円と合わせて、この訴訟で損益に計上された額は計95.9億円
- 米国の連結子会社Nanoverse社の費用。上半期だけで営業利益を31.4億円押し下げ、会社は今期62億円のマイナスを見込んでいる
- 配当は28円に増配予定でも配当性向は12.9%、配当利回りは0.55%。株主優待はない
1. ローツェはどんな会社か
他社の装置の前に立つ「手」
半導体はシリコンの円盤(ウエハ)の上に回路を何層も積み上げて作ります。ウエハは「FOUP(フープ)」と呼ばれる密閉箱に25枚ずつ入れて工場内を運ばれ、成膜・露光・エッチング・検査といった装置に1枚ずつ入れられては、また箱に戻されます。昔は人がピンセットやカセットで扱っていた「箱から出して、装置に差し出し、終わったら箱に戻す」作業を、ゴミを一切出さずに行う機械がローツェの主力製品です。
主力は3つあります(有価証券報告書「事業の内容」より)。
- EFEM(イーフェム):製造装置や検査装置の「前面」に取り付ける搬送装置。中のロボットがFOUPからウエハを取り出して装置に渡し、戻ってきたウエハを箱に収める。買うのは主に装置メーカー(他社の装置の一部として組み込まれる)
- ウエハソータ:ウエハのロット番号を読み取って、箱から箱へ仕分ける装置。買うのは半導体工場(エンドユーザー)
- N2パージ対応ウエハストッカ:ウエハを1枚ずつ窒素で満たした棚に保管し、表面の酸化を防ぐ装置。買うのも半導体工場
軸として、この記事では次の一文を使います。
ローツェは、他社の製造装置の前に立ち、ウエハを1枚ずつ箱から出して差し出す「手」を、ロボットにして売っている会社です。
この一文から、強みと弱みが同時に出てきます。
- 強み:成膜でもエッチングでも検査でも、ウエハを扱う装置には必ず「手」が要る。どの工程の装置が売れても、手の注文は入る。6〜8月の半導体関連装置の売上のうち66%が装置メーカー向け(EFEM・真空プラットフォーム)、34%がエンドユーザー向け(ソータ・ストッカ)でした(2026年10月8日の決算説明資料7ページの図から筆者が読み取り)
- 弱み①(いくつ必要かは自分で決められない):手がいくつ要るかは、顧客の設備投資で決まる。注文は顧客の投資が増えれば一気に増え、減れば一気に減る
- 弱み②(手を作るには工場と部品が要る):注文が一気に増えても、手を作るのは自社の工場。工場の床面積と人と部品が足りなければ、注文はすぐには売上にならない
今回の決算は、弱み①が追い風に変わり、弱み②が試される局面です。深掘り(3章)はこの順番で読んでいきます。
用語メモ:装置メーカーとエンドユーザー 装置メーカーは、成膜装置やエッチング装置などを作って半導体工場に売る会社(米国のApplied Materials等)。エンドユーザーは、装置を買って実際に半導体を作る会社(TSMCやメモリメーカー等)。ローツェはその両方に売っています。上半期の販売先で売上の10%を超えたのは、Applied Materials(売上の21.7%)とTSMC(同14.6%)の2社でした(決算短信の補足情報)。
事業構造
| 区分 | 上半期売上高 | 前年同期比 | 主な製品 |
|---|---|---|---|
| 半導体関連装置 | 671億38百万円 | +22.8% | EFEM、ウエハソータ、ストッカ、真空プラットフォーム、ロボット単体 |
| 分析装置 | 13億04百万円 | △9.4% | ウエハの金属汚染を分析する前処理装置(子会社ローツェイアス) |
| FPD関連装置 | 39億36百万円 | +20.8% | 大型ガラス基板の搬送装置(韓国子会社) |
| 部品・修理 他 | 69億77百万円 | +18.5% | 保守部品・修理 |
| ライフサイエンス事業 | 3億76百万円 | +2.8% | 細胞培養装置 |
| 合計 | 797億33百万円 | +21.5% | — |
この表のポイントは1つです。売上の84%が半導体関連装置で、会社の業績は実質的に「半導体工場の手」の売れ行きで決まります。セグメント利益も半導体・FPD関連装置事業が239億69百万円、ライフサイエンス事業は1億47百万円の赤字でした。
用語メモ:海外子会社の「3か月ずれ」 ローツェの海外子会社(台湾・ベトナム・中国・米国・韓国等)はすべて12月決算で、連結にはそのままの期間で取り込まれています(有価証券報告書「連結子会社の事業年度等に関する事項」)。決算説明資料2ページの表では、連結の第2四半期(6〜8月)に対し、海外子会社の分は4〜6月です。この記事で「6〜8月」と書くときは、親会社・国内子会社は6〜8月、海外子会社は4〜6月の数字の合計であることに注意してください。
業績の推移(5期)
有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」から抜き出しました。1株当たりの数字は2024年9月の1対10の株式分割を反映した後の値です。
| 決算期 | 売上高 | 経常利益 | 純利益 | EPS | ROE | 1株配当 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年2月期 | 670億円 | 178億円 | 128億円 | 74.21円 | 33.7% | 6.5円 | 8.8% |
| 2023年2月期 | 945億円 | 303億円 | 214億円 | 123.74円 | 37.7% | 13.5円 | 10.9% |
| 2024年2月期 | 932億円 | 271億円 | 196億円 | 111.11円 | 24.4% | 13.5円 | 12.2% |
| 2025年2月期 | 1,244億円 | 355億円 | 236億円 | 134.08円 | 22.5% | 17円 | 12.7% |
| 2026年2月期 | 1,288億円 | 326億円 | 190億円 | 109.33円 | 15.4% | 17円 | 15.5% |
| 2027年2月期(修正後予想) | 1,800億円 | 549億円 | 378億円 | 217.84円 | — | 28円 | 12.9% |
(億円は四捨五入。配当性向は1株配当÷EPSで筆者計算。2027年2月期の配当性向は予想ベース)
この表のポイントは2つです。1つ目は、前期(2026年2月期)に売上が伸びたのに純利益が19.4%減ったこと。後で触れる訴訟の引当金74億円と、Nanoverse社の費用が理由です。2つ目は、ROEが3期続けて下がっていたこと。修正後予想の純利益378億円は、前期の約2倍です。
会社予想の達成履歴
ローツェは、少なくとも直近2期、期中に業績予想を修正していませんでした。今期の10月8日の上方修正は、この3期で初めての期中修正です。
| 決算期 | 期初の売上高予想 | 期初の営業利益予想 | 期中の修正 | 実績の営業利益 | 期初予想比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 1,207億84百万円 | 316億17百万円 | なし | 320億24百万円 | 101.3% |
| 2026年2月期 | 1,281億90百万円 | 303億45百万円 | なし(期末後の2026年3月25日に純利益のみ修正) | 311億54百万円 | 102.7% |
| 2027年2月期 | 1,590億21百万円 | 381億12百万円 | 2026年10月8日に上方修正(530億78百万円へ) | — | — |
2026年2月期の3月25日の修正は、決算期末(2月28日)の後に、訴訟の引当金を特別損失に計上したことによる純利益だけの修正でした(営業利益の修正は、すでに着地していた実績に合わせたもの)。
この表のポイントは、過去2期は「期初予想をほぼそのまま、わずかに上回って着地する会社」だったことです。上期決算の時点で通期予想が下期に置いていた営業利益と、実際の下期を並べると次のとおりです。
| 決算期 | 上期決算時点で予想が置いた下期の営業利益 | 実際の下期 | 達成率 | 予想が置いた下期の売上高 | 実際の下期 | 達成率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 144億71百万円 | 148億78百万円 | 102.8% | 605億55百万円 | 641億77百万円 | 106.0% |
| 2026年2月期 | 141億31百万円 | 149億40百万円 | 105.7% | 625億88百万円 | 631億92百万円 | 101.0% |
| 2027年2月期(修正後) | 299億82百万円 | — | — | 1,002億74百万円 | — | — |
(〈通期予想−上期実績〉で筆者が差し引き)
今期の修正後予想が下期に置いた営業利益は、前の2期の約2倍です。過去2期と同じ「わずかに上回る」型が今期も続くかどうかは、置いた水準そのものが過去と違うので、この表からは言えません(3-2で詳しく見ます)。
2. 決算ハイライト
損益
| 項目 | 2026年2月期上半期 | 2027年2月期上半期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 656億02百万円 | 797億33百万円 | +21.5% |
| 売上総利益 | 262億69百万円 | 343億71百万円 | +30.8% |
| 売上総利益率 | 40.0% | 43.1% | +3.1pt |
| 販売費及び一般管理費 | 100億55百万円 | 112億74百万円 | +12.1% |
| 営業利益 | 162億14百万円 | 230億96百万円 | +42.4% |
| 営業利益率 | 24.7% | 29.0% | +4.3pt |
| 経常利益 | 145億72百万円 | 245億38百万円 | +68.4% |
| 特別損失(うち訴訟和解金) | 3百万円 | 21億72百万円(21億58百万円) | — |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 108億72百万円 | 158億39百万円 | +45.7% |
| 1株当たり中間純利益 | 62.13円 | 91.33円 | +47.0% |
(売上総利益率・営業利益率・1株当たり中間純利益の増減率は筆者計算)
この表のポイントは3つです。
- 売上の伸び(+21.5%)より、営業利益の伸び(+42.4%)がはるかに大きい。 粗利率が3.1pt上がり、販管費の伸びが売上より小さかったためです(下の「営業増益の3分解」)
- 経常利益の伸び(+68.4%)は、さらに大きい。 前年の上半期は為替差損が23億68百万円出ていたのに対し、今年は為替差益が15億89百万円出ました
- 純利益の伸び(+45.7%)は、経常利益より小さい。 特許訴訟の和解金21億58百万円を特別損失に計上したためです
上期予想(2026年4月9日公表)との比較では、売上高は102.7%、営業利益は121.0%、経常利益は128.0%、純利益は114.7%の達成でした。売上の上振れは小さく、利益の上振れが大きかった、という形です。
6〜8月の3か月の数字
累計から第1四半期を差し引くと、6〜8月の3か月は売上高425億27百万円(前年同期比+30.7%、前四半期比+14.3%)、営業利益128億66百万円(同+65.5%、+25.8%)、営業利益率30.3%でした。決算説明資料は「2四半期連続で過去最高を更新」と書いています。
営業増益の3分解
上半期の営業利益の増加68億82百万円を、売上の増減による分(数量効果)、粗利率の変化による分(率効果)、販管費の増減による分の3つに分けます。
| 要因 | 上半期(前年同期比) | 6〜8月(前年同期比) |
|---|---|---|
| 数量効果(売上の増減×前年の粗利率) | +56億58百万円 | +39億40百万円 |
| 率効果(当期の売上×粗利率の差) | +24億44百万円 | +15億52百万円 |
| 販管費の増減 | △12億19百万円 | △3億97百万円 |
| 合計 | +68億83百万円 | +50億95百万円 |
| 実際の営業利益の増減 | +68億82百万円 | +50億93百万円 |
(筆者の計算。合計と実際の差は百万円未満切り捨ての端数)
この表のポイントは、増益の大半は数量効果、つまり「手がたくさん売れたこと」によるものですが、率効果も上半期で24億円あったことです。粗利率は前年同期の40.0%から43.1%へ上がりました。会社は粗利率の上昇理由を短信で個別に説明していませんが、上半期の期中平均為替レートが1ドル158円(前年同期149円)と円安だったことは説明資料に書かれています。
用語メモ:為替は2か所に効く 円安は、ドル建ての売上を円に直したときに金額を膨らませます(売上高・粗利に効く)。これとは別に、外貨建ての売掛金や預金を期末のレートで評価し直した差額が「為替差益・差損」として営業外に出ます(経常利益に効く)。決算説明資料の第1四半期から第2四半期への営業利益の増減の図では、「為替影響」は+1億73百万円とされていました。
第1四半期から第2四半期へ(会社の説明資料)
決算説明資料9ページの図は、第1四半期の営業利益102億30百万円から第2四半期の128億66百万円への増加を、次のように分けています(図から筆者が読み取り、描画して項目の割り当てを確認)。
| 要因 | 金額 |
|---|---|
| 売上変動 | +21億17百万円 |
| 為替影響 | +1億73百万円 |
| 人件費 | △53百万円 |
| 研究開発費 | +32百万円 |
| のれん償却額 | △12百万円 |
| その他販管費 | +3億78百万円 |
合計は+26億35百万円で、実際の増加(26億36百万円)と1百万円の差です。売上変動と為替影響の合計(22億90百万円)は売上総利益の増加(22億93百万円)と、販管費4項目の合計(3億45百万円の改善)は販管費の減少(3億44百万円)と、それぞれほぼ一致しました。
財政状態
| 項目 | 2026年2月末 | 2026年8月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 743億41百万円 | 863億78百万円 | +120億37百万円 |
| 受取手形及び売掛金 | 324億13百万円 | 368億11百万円 | +43億98百万円 |
| 棚卸資産(3科目合計) | 454億82百万円 | 513億52百万円 | +58億70百万円 |
| のれん | 63億32百万円 | 48億26百万円 | △15億06百万円 |
| 借入金(短期+長期) | 237億81百万円 | 315億54百万円 | +77億73百万円 |
| 訴訟損失引当金 | 74億29百万円 | — | △74億29百万円 |
| 自己資本比率 | 66.0% | 67.2% | +1.2pt |
現金から借入金を引いたネットキャッシュは、505億60百万円から548億24百万円に増えています(筆者計算)。
キャッシュ・フロー
中間決算短信にはキャッシュ・フロー計算書が載っていません。決算説明資料14ページの図によると、上半期の営業キャッシュ・フローは87億30百万円、投資キャッシュ・フローは△20億06百万円、財務キャッシュ・フローは+45億85百万円でした(図から筆者が読み取り、期首残高からの合計が期末残高86,328百万円と一致することを確認)。営業キャッシュ・フローの内訳(和解金の支払額、棚卸資産の増加額等)は、2026年10月14日提出予定の半期報告書で確認できます。
3. 深掘り:注文の急増は、いつ・どれだけ売上と利益になるのか
この章は1つの問いを3段階で追います。3-1で「どれだけ注文が入ったか」を受注の三点セットで確かめ、3-2で「会社の上方修正がそのうちどれだけを今期の売上に置いたか」を残り期間の数字で見て、3-3で「作る側がそれに追いつけるか」を貸借対照表と説明資料から確かめます。
3-1. 受注の三点セット
工場で作る受注生産の会社は、受注高・売上高・受注残高の3つで読みます。基本の式は次のとおりです。
期首の受注残高+その期の受注高−その期の売上高=期末の受注残高
ローツェの決算短信の「受注実績」の表には、「部品・修理 他」の行がありません。売上高から部品・修理を除いて当てはめると、直近5四半期はいずれも差が2億円以内に収まりました(たとえば6〜8月:期首687億36百万円+受注820億17百万円−部品除きの売上394億64百万円=1,112億89百万円、開示は1,114億85百万円)。差の理由(為替換算等)は会社が説明していないので、ここでは「部品・修理を除けば三点セットがほぼ成り立つ」ところまでを確認しておきます。
用語メモ:受注統計に部品・修理は入っていない 決算短信の受注実績は「半導体関連装置・分析装置・FPD関連装置・ライフサイエンス事業」の4品目で、販売実績にある「部品・修理 他」(上半期69億77百万円)は受注の表にありません。受注高と売上高を比べるときは、売上高から部品・修理を除いたほうが正確です。この記事のブックトゥビル(受注÷売上)は全売上で割った値で、部品・修理を除けば少し高くなります。
四半期ごとの受注と売上(10四半期)
| 四半期 | 受注高 | 売上高 | 受注÷売上 | 期末受注残高 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年3〜5月 | 249億43百万円 | 292億88百万円 | 0.85倍 | 613億74百万円 |
| 2024年6〜8月 | 271億27百万円 | 309億41百万円 | 0.88倍 | 597億23百万円 |
| 2024年9〜11月 | 294億92百万円 | 290億07百万円 | 1.02倍 | 626億52百万円 |
| 2024年12月〜2025年2月 | 285億19百万円 | 351億70百万円 | 0.81倍 | 588億63百万円 |
| 2025年3〜5月 | 242億20百万円 | 330億61百万円 | 0.73倍 | 533億00百万円 |
| 2025年6〜8月 | 260億88百万円 | 325億41百万円 | 0.80倍 | 497億72百万円 |
| 2025年9〜11月 | 248億55百万円 | 288億81百万円 | 0.86倍 | 482億62百万円 |
| 2025年12月〜2026年2月 | 382億08百万円 | 343億11百万円 | 1.11倍 | 554億08百万円 |
| 2026年3〜5月 | 465億29百万円 | 372億06百万円 | 1.25倍 | 687億36百万円 |
| 2026年6〜8月 | 820億17百万円 | 425億27百万円 | 1.93倍 | 1,114億85百万円 |
(各四半期の短信の累計値から筆者が差し引き。海外子会社は3か月前の期間)
この表のポイントは2つです。
- 受注÷売上は、2024年3月から2025年11月まで7四半期のうち6四半期で1倍を下回っていた。 この間、受注残高は2024年9〜11月に一度増えたのを除いて減り、613億円から483億円まで縮みました。ローツェは「手持ちの注文を食いつぶしながら売上を立てていた」期間があったということです
- 2025年12月から流れが変わり、6〜8月の3か月で820億円の注文が入った。 1四半期の受注としては、この10四半期で最大だった直前の四半期(465億円)の1.76倍です。受注残高は1,114億85百万円で、前年同期(497億72百万円)の2.24倍になりました
半導体関連装置だけで見ると、6〜8月の受注は785億10百万円で、前年同期(246億99百万円)の3.2倍でした。決算説明資料は増加の要因を「北米メモリメーカーからのソータやストッカの受注急増および中国装置メーカー向けEFEMの受注増」と書いています。ソータとストッカはエンドユーザー向けの製品です。前期の決算説明資料5ページの売上構成比の図では装置メーカー向け73%・エンドユーザー向け27%、今回の資料7ページでは6〜8月の売上で66%・34%だったので、受注の中身もエンドユーザー側に寄った可能性があります。ただし受注の顧客別の構成比は開示されていないので、ここは筆者の推測にとどめます。
用語メモ:受注残高は「まだ売上になっていない注文の帳簿」 受注残高は、注文は受けたが、まだ納品・検収が終わっていないものの合計です。受注残高が売上高の何か月分あるかで、先々の売上の見通しがどれだけ固いかを測ります。ローツェの1,114億85百万円は、直近12か月の売上高(1,429億25百万円)の0.78年分、約9か月分に当たります(筆者計算)。
ここまでで分かったこと:注文の量は、前年の2倍を超える水準まで一気に積み上がりました。弱み①(いくつ必要かは顧客が決める)が、今は追い風として出ています。次に問うべきは、会社がこの注文をどれだけ今期の売上に置いたか、です。
3-2. 上方修正が下期に置いたもの
10月8日の修正後予想から上半期の実績を引くと、下期(2026年9月〜2027年2月)に置かれた数字が出ます。
| 項目 | 修正後の通期予想 | 上半期実績 | 下期に置かれた数字 | 前年下期の実績 | 前年下期比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,800億07百万円 | 797億33百万円 | 1,002億74百万円 | 631億92百万円 | +58.7% |
| うち半導体関連装置 | 1,529億70百万円 | 671億38百万円 | 858億32百万円 | 516億95百万円 | +66.0% |
| 営業利益 | 530億78百万円 | 230億96百万円 | 299億82百万円 | 149億40百万円 | +100.7% |
| 営業利益率 | 29.5% | 29.0% | 29.9% | 23.6% | — |
| 経常利益 | 548億89百万円 | 245億38百万円 | 303億51百万円 | — | — |
| 純利益 | 377億79百万円 | 158億39百万円 | 219億40百万円 | — | — |
(半導体関連装置の通期予想は決算説明資料18ページ。下期と前年下期は筆者の差し引き)
この表のポイントは、利益率の要求と売上の要求の重さが違うことです。
- 利益率:下期に置かれた営業利益率29.9%は、上半期(29.0%)と6〜8月(30.3%)の間にある。直近の実績の範囲内です
- 売上:下期の売上1,002億74百万円は、前年下期の1.59倍。直近の6〜8月の売上(425億27百万円)を2倍した850億54百万円と比べても、さらに17.9%多い。下期の売上は、6〜8月の水準からもう一段伸びる前提になっています
つまり、修正後予想を達成できるかどうかの分かれ目は「利益率を保てるか」ではなく、**「下期に1,000億円分の手を作って、納めて、検収してもらえるか」**の側にあります。
注文の裏付けはあります。受注残高1,114億85百万円は、下期の売上予想の111.2%に当たります。半導体関連装置だけなら、受注残高1,038億63百万円は下期の予想858億32百万円の121.0%です(筆者計算)。ただし、受注残高のうちいくらが下期中に納期を迎えるかは開示されていません。受注残高が下期の売上予想を上回っていることは、「下期の売上がすべて受注済み」であることを意味しません。
下期の売上と営業利益率を置き換えたときの通期営業利益(筆者の試算)
| 下期の売上高 | 利益率26.0% | 利益率29.0%(上半期並み) | 利益率29.9%(会社予想並み) | 利益率30.3%(6〜8月並み) |
|---|---|---|---|---|
| 850億54百万円(6〜8月の2倍、前年下期比+34.6%) | 452億円 | 478億円 | 485億円 | 489億円 |
| 920億円(前年下期比+45.6%) | 470億円 | 498億円 | 506億円 | 510億円 |
| 1,002億74百万円(会社予想、前年下期比+58.7%) | 492億円 | 522億円 | 531億円 | 535億円 |
(通期営業利益=上半期実績230億96百万円+下期の売上高×営業利益率。億円未満四捨五入。筆者の試算で、将来の見通しではありません)
この表のポイントは、会社予想(530億78百万円)に届くのは、売上が会社予想どおりで利益率が29.9%以上のマスだけだということです。売上が6〜8月の2倍にとどまれば、利益率が6〜8月並みでも489億円、期初予想(381億12百万円)は大きく上回りますが、修正後予想には約42億円届きません。
用語メモ:検収と「立上げ」 ローツェは、据付・立上げが要る製品は「立上げに関連する役務の提供完了」の時点で売上を計上します(有価証券報告書の収益認識の注記)。作って出荷しただけでは売上にならず、顧客の工場で動くようにするまでが仕事に含まれます。顧客の工場の準備が遅れれば、出荷済みでも売上が後ろにずれることがあります。
会社自身も、売上の遅れが起きていることを書いています。分析装置について、決算説明資料は「顧客の装置検収時期のずれ込みや部品調達・生産リードタイムの長期化により減収」と説明し、通期の分析装置の売上予想を42億25百万円から34億90百万円に、FPD関連装置を100億90百万円から73億49百万円に引き下げました。今回の修正は全品目の上方修正ではなく、半導体関連装置(+204億90百万円)と部品・修理(+39億43百万円)を上げ、分析装置とFPD関連装置を下げた修正です。
ここまでで分かったこと:修正後予想は、利益率は直近並み、売上は直近よりもう一段上の水準を下期に置いています。ハードルは売上の側、つまり「作って納める量」にあります。次は、その作る側に何が起きているかを見ます。
3-3. 作る側の制約:弱み②
軸の弱み②は「手を作るには工場と部品が要る」でした。上半期の貸借対照表と説明資料には、その制約に向き合っている跡が出ています。
部品と仕掛品の積み上がり
| 項目 | 2026年2月末 | 2026年8月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 商品及び製品 | 67億65百万円 | 45億63百万円 | △22億02百万円 |
| 仕掛品 | 120億75百万円 | 142億48百万円 | +21億73百万円 |
| 原材料及び貯蔵品 | 266億42百万円 | 325億41百万円 | +58億99百万円 |
| 合計 | 454億82百万円 | 513億52百万円 | +58億70百万円 |
この表のポイントは、完成品が減り、部品と作りかけが増えたことです。会社は「受注増に伴う原材料・仕掛品の増加により棚卸資産は前期末比59億円増加」と説明資料に書いています。さらに今後の見通しのページで、調達面のリスクとして「メモリ価格の高止まりや調達部品の長納期化」「各社調達において部材確保のための先行手配競争が過熱化し始めている」を挙げ、対応として「部材の先行手配・在庫確保、代替部品・代替調達先の確保」を挙げています。
会社は次のように書いています(決算説明資料17ページ、原文)。 「メモリ価格の高止まりや調達部品の長納期化により、調達コストの上昇や必要部材の確保が遅れるリスク」
借入の増加
借入金は半年で77億73百万円増え、315億54百万円になりました(短期175億45百万円、長期140億09百万円)。同じ期間に現金も120億37百万円増えているので、財務の余力が損なわれているわけではありません。ただ、前期は長期借入金を81億円返済して借入を減らしていた会社が、今期は借入を増やす側に回ったことは事実として押さえておきます。借入の目的は短信に書かれていません。
工場の前倒し
決算説明資料19〜20ページは、生産能力の拡大施策を次のように並べています。
| 拠点 | 施策 | 時期 |
|---|---|---|
| ベトナム(既存工場) | 従業員の採用加速、8月に賃上げ、倉庫機能を外部の賃借工場へ移してクリーンルーム化 | 実施中 |
| ベトナム(新工場) | 稼働開始の前倒し | 2028年Q1予定→2027年Q4 |
| 中国・上海臨港(既存工場) | 2シフト勤務体制へ移行、近隣に新建屋を賃借して拡張 | 2027年春より稼働予定 |
| 中国・上海臨港(新工場) | 稼働開始の前倒し | 2028年Q1予定→2027年Q4 |
ベトナム新工場の床面積は、組立が既存の14,400㎡に対し60,000㎡(5.2倍)、部品製造が18,150㎡に対し53,200㎡(3.9倍)とされています(すべての新工場完成後の合計)。
この表のポイントは、新工場の稼働は早くても「2027年Q4」で、今期の下期(2026年9月〜2027年2月)には間に合わないことです。今期の下期の1,000億円は、既存工場の増員・2シフト化・倉庫の移設で作る計算になります。なお、資料の「2027年Q4」「2028年Q1」が暦年の四半期か会社の会計年度の四半期かは、資料からは確定できませんでした。
ここまでで分かったこと:会社は部品を先に買い、借入を増やし、工場を前倒しして、注文に追いつこうとしています。今期の下期は既存の工場の増強で乗り切る計画です。
3-4. 3つをつなぐ
1つの問いに対する答えを並べ直します。
- どれだけ注文が入ったか(3-1):6〜8月の3か月で820億円。受注残高は1,114億円で、前年同期の2.2倍。弱み①の「いくつ要るかは顧客が決める」が、今は追い風として出ている
- 会社はどれだけを今期に置いたか(3-2):下期の売上1,003億円。利益率は直近並みで、ハードルは売上の側
- 作る側は追いつけるか(3-3):部品の先行手配、借入、既存工場の増強。新工場は今期には間に合わない
「手」の注文は顧客が決め、「手」を作る量は自分の工場が決める。今回の決算は、その2つが同時に試される半年の入口にあります。受注残高が厚いことは強気の材料ですが、それが今期の売上になるか来期にずれるかは、弱み②の側の数字(棚卸資産、分析装置で起きた検収のずれ、工場の増強の進み方)で決まります。
4. 利益の段ごとの見え方
経常利益:為替の振れ
| 項目 | 2026年2月期上半期 | 2027年2月期上半期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 162億14百万円 | 230億96百万円 |
| 為替差益(差損は△) | △23億68百万円 | 15億89百万円 |
| デリバティブ利益(損失は△) | 3億83百万円 | △4億63百万円 |
| その他の営業外損益 | 3億43百万円 | 3億16百万円 |
| 経常利益 | 145億72百万円 | 245億38百万円 |
この表のポイントは、為替差損益とデリバティブ損益を合わせると、前年は△19億85百万円、今年は+11億26百万円で、差が31億円あったことです。経常利益の伸び(+68.4%)が営業利益の伸び(+42.4%)より大きいのは、この振れによるものです。
修正後予想が下期に置いた経常利益と営業利益の差は3億69百万円です(筆者の差し引き)。修正後予想の想定為替レートは1ドル158円(上半期実績も158円)で、下期の為替差損益をどう置いたかは開示されていません。
純利益:訴訟の和解金と税金
特許訴訟の経緯
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年8月30日(米国時間) | 川崎重工業が、ローツェと米国子会社の製品が米国特許を侵害するとして提訴 |
| 2026年3月13日(米国時間) | 陪審評決。原告の主張を認め、損害賠償金は暫定的に48百万ドル |
| 2026年3月25日 | 2026年2月期に訴訟損失引当金繰入額74億29百万円を特別損失に計上すると発表。純利益予想を修正 |
| 2026年8月3日 | 和解契約を締結。和解の内容は秘密保持義務により非開示。引当金と支払額の差額を上半期に特別損失として計上する予定と発表 |
| 2026年10月8日 | 上半期決算で特別損失「訴訟和解金」21億58百万円を計上 |
この訴訟で損益に計上された額は、前期の引当金74億29百万円と今期の和解金21億58百万円の合計95億87百万円です(筆者の足し算)。会社は和解によって「当該訴訟は終局的に解決されることとなり、今後の事業活動への影響はございません」と書いています。期初の業績予想は「訴訟係属中につき、未確定の訴訟関連費用は期初計画に織り込まず」とされていたので(2026年4月9日の決算説明資料16ページ)、和解金21億58百万円は期初計画の外から出てきた費用です。
用語メモ:引当金の「使用」と追加の損失 引当金は、将来の支払いに備えて前もって費用にしておくお金です。実際に払ったときは引当金を取り崩す(使用する)ので、その期の利益には影響しません。払った額が引当金より多ければ、差額だけがその期の損失になります。ローツェの上半期では、引当金74億29百万円がなくなり、差額の21億58百万円が特別損失になりました。
和解金を除いた場合の純利益を、法定実効税率30.5%で粗く試算すると、和解金の税引後の影響は約15億円、1株当たり約8.6円です(筆者の試算。和解金の税務上の扱いは開示されていません)。
税金の行
上半期の税負担率(法人税等合計÷税金等調整前中間純利益)は28.9%で、前年同期(29.9%)とほぼ同じでした。ただし内訳を見ると、法人税等調整額が前年同期の△6億02百万円から今年は+13億80百万円に変わり、繰延税金資産は36億19百万円から22億75百万円に減っています。前期に訴訟の引当金を計上した際に繰延税金資産を積み、今期の和解で取り崩した可能性がありますが、短信に説明はなく、これは筆者の推測です。
修正後予想の純利益から逆算すると、下期に特別損益がなければ、下期の〈1−純利益÷経常利益〉は27.7%です。これを物差しと並べると次のとおりです。
| 物差し | 率 |
|---|---|
| 修正後予想が下期に置いた〈1−純利益÷経常利益〉(特別損益ゼロとした場合。非支配株主損益を含む) | 27.7% |
| 上半期の実績〈(法人税等+非支配株主損益)÷税引前〉 | 29.2% |
| 前期(2026年2月期)の税負担率 | 30.1% |
| 法定実効税率(前期の有価証券報告書の注記) | 30.5% |
この表のポイントは、修正後予想が下期に置いた税負担率は他の3本よりやや低く、下期に大きな特別損失を置く余地はほとんどない、ということです。ここには非支配株主に帰属する損益も含まれます(Nanoverse社の損失の67%は非支配株主の負担になる。次の項)。
Nanoverse社:「手」の外へ出る試み
有価証券報告書によると、ローツェは2024年6月に米国オレゴン州のNanoverse Technologies, Ltd.を第三者割当増資の引き受けで連結子会社にしました。議決権の所有割合は33.0%ですが、実質的に支配しているとして連結しています。連結開始時ののれんは91億12百万円でした。事業内容は「半導体製造工程における開発・製造・販売」と書かれています。
会社は2026年4月9日の決算説明資料で、Nanoverse社の連結業績への影響額を次のように開示していました。
| 項目 | 2025年2月期実績 | 2026年2月期実績 | 2027年2月期予想 |
|---|---|---|---|
| 営業利益への影響額 | △30億円 | △62億円 | △62億円 |
| うちのれん償却額 | 14億円 | 28億円 | 30億円 |
| うちNanoverse社の営業損失 | 16億円 | 34億円 | 32億円 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益への影響額 | △20億円 | △40億円 | △41億円 |
今期の上半期の影響額は、10月8日の説明資料の注記で人件費10億11百万円、研究開発費22百万円、のれん償却額14億89百万円、その他販管費6億14百万円、合計31億36百万円でした。年間予想62億円の50.6%で、ほぼ予想どおりのペースです。この費用を除いた上半期の営業利益は262億32百万円、営業利益率は32.9%になります(会計上の利益ではなく、筆者が足し戻した参考値です)。
のれんの残高は2026年8月末で48億26百万円です。年30億円のペースで割ると約1.6年分ですが、Nanoverse社ののれんの償却年数は開示されておらず(有価証券報告書には「効果の発現する期間を個別に見積り、合理的な年数で均等償却」とあるだけ)、この割り算は目安にすぎません。
会社の説明の文言は、4月と10月で次のように並びます。
2026年4月9日の決算説明資料(原文):「開発評価中装置は、2027年2月期中に売上計上見込み」 2026年10月8日の決算説明資料(原文):「Nanoverse社から顧客に納入した評価装置に対する評価継続中」「顧客から出ている課題についてのアプローチを継続している状況」「早期に顧客の評価が完了し、今期中の売上計上が可能となるよう交渉中」
2つの文言の違いをどう読むかは、ここでは解釈しません。今期中に売上が計上されるかどうかは、第3四半期・通期の決算で確認できます。
軸に戻すと、Nanoverse社は「手」の外、つまり装置そのものの側に踏み出す試みに見えます。ただし、Nanoverse社の装置が何をする装置なのかは開示資料から具体的に分からなかったので、これは筆者の推測です。確かなのは、その試みが今のところ年62億円の営業費用として出ていることです。
5. 資本政策と株主還元
配当
| 決算期 | 1株配当 | 配当性向 | 配当の決め方 |
|---|---|---|---|
| 2022年2月期 | 6.5円 | 8.8% | 安定配当を基本に総合勘案 |
| 2023年2月期 | 13.5円 | 10.9% | 同上 |
| 2024年2月期 | 13.5円 | 12.2% | 同上 |
| 2025年2月期 | 17円 | 12.7% | 同上 |
| 2026年2月期 | 17円 | 15.5% | 同上 |
| 2027年2月期(修正後予想) | 28円 | 12.9% | 同上 |
(1株配当は株式分割後の値。配当性向は1株配当÷EPSで筆者計算)
配当政策は有価証券報告書に次のように書かれています。
会社は次のように書いています(有価証券報告書「配当政策」、原文)。 「将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定的な配当の維持を基本とし、経営成績の推移及び財務状況等を総合的に勘案して利益還元を行う方針であります。」
配当性向やDOEといった数値の目標は書かれていません。実績の配当性向は5期で8.8〜15.5%の範囲にあり、今期の修正後予想でも12.9%です。期末配当の年1回が基本で、定款上は8月31日を基準日とする中間配当もできますが、少なくともこの5期は中間配当を行っていません。期末配当の決定機関は株主総会で、28円への増配は2027年5月の定時株主総会に付議される予定です。
権利付き最終日:期末の基準日は2027年2月28日(日)です。直前の営業日である2月26日(金)を起点に2営業日さかのぼると、権利付き最終日は**2027年2月24日(水)**です(筆者計算)。
配当総額は、自己株式を除いた株式数173,431,740株×28円=約48億56百万円になります(筆者計算)。
自己株式の取得
前期(2026年2月期)には、2025年4月14日の取締役会決議で上限530万株・50億円の自己株式取得を行い、7月31日までに2,934,400株・4,999百万円を取得して終了しました。1株当たりの平均取得価格は約1,703.6円です(筆者計算)。前期の総還元性向(配当総額+自己株式取得額÷純利益)は41.7%でした(筆者計算)。今期の上半期に自己株式の取得はありません。
株主構成
2026年2月末時点の上位株主は次のとおりです(有価証券報告書。自己株式を除く発行済株式に対する割合)。
| 株主 | 持株比率 |
|---|---|
| 崎谷文雄(創業者、取締役相談役) | 35.72% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.91% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.12% |
| バルンリバー合同会社 | 4.82% |
| 藤代祥之(代表取締役社長) | 3.04% |
有価証券報告書の役員の状況には「代表取締役社長 藤代祥之は、取締役相談役 崎谷文雄の娘婿であります」と書かれています。この開示に基づいて2人を合算すると38.76%で、株主総会の特別決議を単独で否決できる3分の1を超えます。バルンリバー合同会社と株式会社衣香園(1.21%)は大株主表の住所が創業者と同じ岡山県井原市ですが、関係を示す開示を確認できなかったので合算していません。
2026年5月28日の定時株主総会の取締役選任議案では、藤代社長の賛成割合が91.11%で、他の取締役(94.33〜95.89%)より低くなっていました(臨時報告書)。誰が反対したかは開示されていません。
株主優待
制度なしです。有価証券報告書「株主に対する特典」欄は「該当事項はありません」です(会社IRサイトの株主還元ページとの突き合わせは行っていません)。
資本政策から見えること
ローツェの株主還元は、「利益が伸びれば配当を上げるが、配当性向は1割台にとどめる」形が5期続いています。今期は増配幅(17円→28円)が大きく見えますが、配当性向で見れば前期より下がります。配当利回りは10月9日終値で0.55%です。軸の弱み②(作る側の制約)に対して部品の先行手配や工場の前倒しに資金を使っている局面であることと、配当性向の低さは、同じ方向を向いています。
6. 株価の見方
株価の基準:2026年10月9日(金)終値5,134円(ストップ高、前日比+700円・+15.79%)。10月12日(月)は祝日で休場です。
| 指標 | 値 | 計算 |
|---|---|---|
| 時価総額(発行済株式ベース) | 約9,056億円 | 5,134円×176,400,000株 |
| 時価総額(自己株式控除後) | 約8,904億円 | 5,134円×173,431,740株 |
| 予想PER | 23.6倍 | 5,134円÷修正後予想EPS217.84円 |
| PBR | 6.07倍 | 5,134円÷2026年8月末のBPS約845円 |
| 予想配当利回り | 0.55% | 28円÷5,134円 |
(筆者計算)
発表日と翌日の値動き:決算は10月8日(木)15時30分、取引終了と同時刻に発表されました。10月8日の終値4,434円と出来高221万株は、発表前の取引です。最初に反応が出たのは10月9日(金)で、始値4,634円、安値4,610円、終値5,134円(ストップ高)、出来高963万株でした。出来高は10月1日〜8日の1日平均(約180万株)の約5.3倍です。
一次情報から逆算できる株価の基準点
| 経路 | 出所 | 値 |
|---|---|---|
| 自己株式の平均取得単価 | 有価証券報告書(取得価額の総額÷総数) | 約1,703.6円(2025年4〜7月) |
| 有価証券報告書の株価収益率×1株当たり当期純利益 | 有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」 | 30.4倍×109.33円=約3,324円(2026年2月末) |
| 時価ベースの自己資本比率×総資産÷株式数 | 2026年2月期決算短信 | 292.6%×1,973億02百万円÷173,431,740株=約3,329円(2026年2月末) |
2026年2月末の2つの経路は、Yahoo!ファイナンスの月足(2026年2月終値3,329円)とほぼ一致しました。2026年2月末から10月9日までで、株価は約1.54倍になっています。
強気の材料
- 受注残高が厚い。 1,114億85百万円は下期の売上予想の111.2%、半導体関連装置だけなら121.0%。6〜8月の受注は前年同期の3.2倍
- 利益率の要求は直近並み。 下期の営業利益率29.9%は6〜8月の30.3%以下。売上が届けば利益はついてくる構図
- 期初予想の作り方は控えめだった。 過去2期は期中に修正せず、期初予想をわずかに上回って着地。今期の修正後予想も、利益率の前提だけ見れば無理のない置き方
- 一過性の費用が抜ける。 訴訟は和解で終結。Nanoverse社ののれん償却は残高48億円で、いずれ終わる(償却年数は非開示)
- 財務に余力がある。 ネットキャッシュ548億円、自己資本比率67.2%
弱気の材料
- ハードルは売上の側にある。 下期の売上は前年下期比+58.7%、6〜8月の2倍よりさらに17.9%多い。感応度表のとおり、売上が6〜8月の2倍にとどまれば、営業利益は修正後予想に約42億円届かない計算になる(筆者の試算)
- 作る側の制約。 新工場は今期に間に合わない。会社自身が部品の長納期化と先行手配競争の過熱をリスクに挙げている。分析装置ではすでに検収のずれと生産リードタイムの長期化で減収が出た
- 注文は顧客の投資で決まる。 受注の急増が北米メモリメーカーと中国の装置メーカー向けに集中している(会社の説明)。顧客の投資計画が変われば、受注は増えたときと同じ速さで減り得る
- Nanoverse社の費用。 今期も62億円のマイナスを見込む。評価装置の売上計上は、4月の「今期中に売上計上見込み」から10月は「今期中の売上計上が可能となるよう交渉中」という書き方になった
- バリュエーション。 PBR6.07倍、予想PER23.6倍は、受注が売上に変わっていくことをある程度前提にした水準とも読める。信用買残は341万7千株、信用倍率は30.32倍(10月2日時点。報道ベース)
同じ数字が両側に置けることにも注意してください。受注残高1,114億円は、強気側では「下期の売上の裏付け」ですが、弱気側では「作りきれなければ来期にずれる注文」でもあります。どちらの読みでも数字は同じです。
7. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 見るポイント |
|---|---|---|
| 2026年10月14日(水) | 半期報告書の提出予定日 | 中間キャッシュ・フロー計算書(和解金の支払額、棚卸資産の増加額)、半期末の大株主の状況 |
| 2027年1月上旬(例年) | 第3四半期決算 | 9〜11月の売上(下期1,003億円のうちどれだけ進んだか)、受注高と受注残高、棚卸資産、Nanoverse社の売上計上の有無 |
| 2027年2月24日(水) | 期末配当(28円予想)の権利付き最終日 | 基準日は2月28日(日) |
| 2027年4月上旬(例年) | 通期決算 | 修正後予想の達成、来期予想、配当の確定 |
| 2027年春 | 中国・上海臨港の賃借新建屋の稼働予定 | 生産能力の増強の進み方 |
| 2027年5月 | 第42期定時株主総会 | 期末配当28円の付議 |
| 2027年Q4(資料の表記) | ベトナム新工場・中国新工場の稼働開始予定 | 前倒しが維持されるか |
見るべきKPI
- 四半期の受注高と受注÷売上:6〜8月の1.93倍が続くか。1倍を割り込めば、受注残高の取り崩しが始まる
- 四半期の売上高:下期の予想1,003億円は、四半期あたり平均約501億円。9〜11月の売上がこの水準にどれだけ近いか
- 棚卸資産の内訳:原材料と仕掛品が増え続け、完成品と売上が増えないなら、作る側の制約が出ているサイン
- 品目別の売上と予想:分析装置・FPD関連装置で起きた検収のずれが、半導体関連装置にも出ないか
- Nanoverse社の影響額と売上計上の有無:年62億円の予想に対する進み方
8. 3行まとめ
- ローツェは、他社の製造装置の前でウエハを箱から出して差し出す「手」をロボットにして売る会社。6〜8月の3か月で820億円の注文が入り、受注残高は1,114億円と前年同期の2.2倍になった
- 修正後予想は下期に売上1,003億円(前年下期比+58.7%)・営業利益率29.9%を置いた。利益率は直近並みで、ハードルは「作って納めて検収してもらう量」の側にある
- 純利益は訴訟の和解金21.6億円、営業利益はNanoverse社の費用(上半期31.4億円)で押し下げられている。配当は28円に増配予定でも配当性向は12.9%、優待はない
免責事項
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値は、ローツェの決算短信(2027年2月期中間期・第1四半期、2026年2月期の通期・各四半期、2025年2月期の通期・各四半期、2024年2月期の通期)、業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ(2026年10月8日)、特別損失の計上及び業績予想の修正に関するお知らせ(2026年3月25日)、訴訟に関する各開示(2026年3月16日・8月3日)、熊本地震に関する開示(2026年7月30日・8月3日)、決算説明資料(2026年10月8日・7月9日・4月9日)、有価証券報告書(2026年5月22日提出)、臨時報告書(2026年4月6日・5月29日提出)に基づきます。比率・差し引き・試算は筆者の計算です。株価・出来高・信用残はYahoo!ファイナンスの表示によります(報道ベース)。以下の点にご注意ください。
- 中間決算短信にはキャッシュ・フロー計算書が載っておらず、本記事のキャッシュ・フローの数値は決算説明資料の図から筆者が読み取ったものです。営業キャッシュ・フローの内訳は2026年10月14日提出予定の半期報告書で確認が必要です
- 決算説明資料の図(営業利益の増減要因、キャッシュ・フロー、売上の顧客区分の構成比)から読み取った値は、描画して目視で確認し、合計を短信の数値と突き合わせていますが、読み取り誤差の可能性があります
- 決算説明会(機関投資家・アナリスト向け)の内容・質疑応答は反映していません
- 受注の中身がエンドユーザー側に寄った可能性、法人税等調整額の変化と訴訟の引当金の関係、Nanoverse社を「装置そのものの側に踏み出す試み」とした記述は、筆者の推測であり、会社の開示に基づくものではありません。確認先は会社IR・次回の決算資料です
- 訴訟の和解の内容(支払額等)は和解契約の秘密保持義務により開示されておらず、本記事は推測していません。95億87百万円は前期の引当金と今期の特別損失の合計で、支払額を示すものではありません
- Nanoverse社ののれんの償却年数は開示されておらず、残高を年30億円で割った年数は目安にすぎません
- 会社が名前を伏せた顧客(北米メモリメーカー、中国の装置メーカー等)を特定していません
- 株主優待の不在は有価証券報告書で確認しました。会社IRサイトの株主還元ページとの突き合わせは行っていません
- 大株主の大量保有報告書・変更報告書は確認していません。大株主の状況は2026年2月末時点の有価証券報告書によります
- 新工場の稼働時期の「2027年Q4」「2028年Q1」が暦年の四半期か会計年度の四半期かは、資料から確定できませんでした
- 決算は取引終了と同時刻(15時30分)の発表で、発表日の終値・出来高は発表前の取引です。決算への反応として記載したのは翌営業日の値動きであり、因果を示すものではありません
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。