株式投資

櫻島埠頭(9353) 大阪市から借りた岸壁で、電力会社や化学メーカーの荷を船から降ろして預かっている会社 上半期の営業利益が400万円まで減ったのに、なぜ通期の予想は変わらないのか?【2026年10月発表・上半期決算】

本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。**執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。**特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。


この記事でわかること

  • 2026年10月23日(金)14時00分発表の上半期決算は、売上高20億81百万円(前年同期比△6.4%)に対し営業利益4百万円(同△98.0%)。数字自体は4日前の10月19日に出た上期予想の修正と同じで、7〜9月の3か月だけを切り出すと営業損益は約△47百万円、粗利率は9.4%と、筆者が並べた14四半期で最も低い水準です
  • 7〜9月の悪化は、液体貨物(タンク)の利益がほぼゼロになったこと(前年同期比△89百万円)と、ばら貨物(石炭など)の荷が下期にずれたこと(同△79百万円)で大半が説明できます。会社は「特別作業の外注費が上期に先に出て、その作業料の売上は下期にずれた」と説明しています
  • 通期予想(営業利益2億50百万円)は据え置かれました。上期実績を差し引くと、予想は下期に営業利益約2億46百万円を置いている計算で、前年下期(約39百万円)の約6.2倍、過去3年のどの下期(39〜104百万円)よりも大きい。過去3年はいつも「下期を小さく置いて大きく上回る」形でしたが、今期は置き方そのものが逆向きです
  • 上半期の経常利益1億02百万円は、受取配当金1億05百万円とほぼ同額でした。会社が持つ投資有価証券は9月末で81億円、時価総額(約44億円)の約1.85倍で、その約9割は大手銀行2社の株式です(3月末の有報)。「本業」と「本業の外」の重さがこれほど違う会社の数字の読み方を整理します
  • 配当は「(営業利益+受取配当金−支払利息)×(1−税率)の30%以上」と「累進配当(中計期間中)」の2本立て。今期は第4次中計の最終年度で、予想54円は前期と同額です
  • 個人株主の山本裕治氏が2025年12月から市場で買い続け、2026年9月の変更報告書で株券等保有割合17.53%に。会社は9月24日に「主要株主の異動」を開示しました。保有目的は「純投資」で、重要提案行為の記載はありません

1. 前提知識:大阪市から借りた岸壁で、他人の荷を降ろして預かる会社

1-1. 何をしている会社か

櫻島埠頭は大阪市此花区、大阪港の一角に岸壁(船を着ける場所)と倉庫・タンクを持ち、船で運ばれてきた他社の荷物を降ろし、預かり、陸へ送り出す会社です。1948年設立、東証スタンダード上場、3月決算。報告セグメントは扱う荷物の種類で3つに分かれています。

区分何を扱うか(短信の定義)前期売上高前期セグメント利益
ばら貨物石炭・コークス・塩等の原材料を、大型クレーンで船から降ろし、野積場・倉庫で預かる23億12百万円39百万円
液体貨物石油化学品・石油燃料等をタンクで預かり、入庫から出庫まで中継する13億86百万円4億34百万円
物流倉庫危険物・冷凍食品等の製品を保管・受け払いする5億41百万円2億23百万円
その他太陽光発電の売電20百万円5百万円
セグメント利益の合計——7億03百万円
全社費用(調整額)各セグメントに配分しない一般管理費—△4億52百万円
連結営業利益—42億60百万円2億51百万円
受取配当金保有する投資有価証券からの配当—1億61百万円
連結経常利益——4億04百万円

出所:2026年3月期決算短信のセグメント情報・連結損益計算書(千円から百万円未満を切り捨て)。

この表のポイントは2つです。1つは、稼いでいるのは液体貨物と物流倉庫で、売上の過半を占めるばら貨物の利益は年によってゼロ前後を行き来していること。もう1つは、全社費用を差し引いた営業利益(2億51百万円)と、受取配当金(1億61百万円)がほぼ同じ桁にあることです。後者は第5章で回収します。

前期の連結従業員は89名(有報)。株主優待制度はありません(有報「株主に対する特典」欄に「なし」と記載。会社IRサイトにも優待の案内は見当たりません)。

1-2. 軸となる例え:「借りた岸壁で、他人の荷を降ろして預かる」

この会社の仕事を一言で言うと、大阪市から借りた岸壁で、電力会社や化学メーカーの荷を船から降ろして預かっていることです。船が着き、クレーンで石炭を降ろし、野積場に積み、トラックで出す。タンクに油や化学品を受け入れ、預かり、出荷する。仕事の風景は単純です。

この一文には、強みと弱みが両方入っています。

  • 強み:場所と設備は簡単に真似できない。 大型船が着ける岸壁、クレーン、45基・約13万2千kLのタンク、倉庫6棟(有報)。荷主(荷物の持ち主)が工場や発電所を大阪湾に持つ限り、ここで降ろす理由があります。タンクや倉庫は長期の利用契約で預かるので、保管料は安定しやすい
  • 弱み①:荷の量とタイミングは荷主が決める。 石炭がいつ・何隻入るかは電力会社の発電計画と船の都合で決まります。前期の売上高のうち約16%(6億78百万円、ばら貨物の約29%)は電源開発向けでした(短信の「主要な顧客ごとの情報」)
  • 弱み②:岸壁は借り物で、手は外にある。 事業所の用地は(子会社分を除き)大阪市からの借地で、単体の借地料は年5億38百万円、売上高の約12.6%です(有報)。クレーンやタンクの減価償却費も荷の量に関係なく出ます。そして構内の荷役作業は、大株主でもある協力会社に委託しています(第7章)。量が減っても、借地料・償却・委託の費用は簡単には減りません

この「弱み②」が、今回の上半期で営業利益が98%減った理由をそのまま説明します(第3章)。

1-3. 業績推移(5期)

決算期売上高営業利益営業利益率経常利益純利益EPS1株配当ROE自己資本比率
2023年3月期38億65百万円1億57百万円4.1%2億43百万円1億93百万円128.64円30円(うち記念10円)3.9%62.5%
2024年3月期41億12百万円2億35百万円5.7%3億35百万円2億11百万円140.13円30円3.8%62.2%
2025年3月期43億38百万円2億03百万円4.7%2億99百万円2億32百万円153.77円40円3.5%62.8%
2026年3月期42億60百万円2億51百万円5.9%4億04百万円2億90百万円190.81円54円3.9%66.2%
2027年3月期(予想)42億80百万円2億50百万円5.8%4億00百万円2億60百万円170.47円54円——

出所:各期の決算短信・有報「主要な経営指標等の推移」(連結)。営業利益率は筆者の計算。

売上は40億円前後で横ばい、営業利益率は4〜6%、ROEは3%台で推移しています。経常利益が営業利益の1.5倍前後あり、その差の大半が受取配当金です(前期は経常利益の39.9%が受取配当金。筆者の計算)。

1-4. 会社予想の達成履歴:上にしか動いてこなかった予想

決算期期初予想(営業利益)修正(開示日と時期)実績期初予想比(売上/営業/純利益)
2024年3月期1億70百万円2024年4月25日(期末後)に2億35百万円へ2億35百万円+2.8%/+38.7%/+51.2%
2025年3月期1億70百万円2025年1月24日(第3四半期決算と同日)に2億00百万円へ2億03百万円+5.8%/+19.5%/+45.6%
2026年3月期2億00百万円2025年10月20日(上期決算の4日前)に2億30百万円、2026年5月7日(期末後)に2億51百万円へ2億51百万円+3.9%/+25.5%/+31.9%
2027年3月期2億50百万円2026年10月19日に上期予想だけ下方修正、通期は据え置き——

出所:各期の決算短信と業績予想の修正の適時開示。期初予想比は筆者の計算。

この表のポイントは2つです。

1つ目は、直近3期の通期予想は、営業利益で毎年2〜4割上振れて着地し、修正はすべて上方向だったこと。修正のタイミングは「第3四半期決算と同日」「上期決算の数日前」「期末後」とばらばらで、期中に一度しか動かさない年もあれば二度動かす年もあります。

2つ目は、上期予想も、決算発表の数日前に実績へ合わせて修正する形が2年続いていることです。前期は2025年10月20日に上期予想を営業利益90百万円→2億11百万円(実績と同額)へ引き上げ、今期は2026年10月19日に1億40百万円→4百万円(実績と同額)へ引き下げました。向きは逆ですが、修正の時期と形は同じです。

配当予想も同じ向きに動いてきました。前々期は期初30円→40円(2025年2月21日)、前期は期初40円→45円(2025年10月20日)→54円(2026年5月7日)。「控えめに置いて、決算が見えてから上げる」が、利益と配当の両方でこの会社の予想の作り方だったと言えます。今期の据え置きをどう読むかは、この前提の上で第4章で扱います。


2. 上半期決算のハイライト

2-1. 損益

項目前年上期(2025年4〜9月)今期上期(2026年4〜9月)増減率期初の上期予想上期予想比
売上高22億24百万円20億81百万円△6.4%21億00百万円△0.9%
売上総利益5億03百万円3億17百万円△37.1%——
販管費2億92百万円3億12百万円+7.0%——
営業利益2億11百万円4百万円△98.0%1億40百万円△97.1%
受取配当金82百万円1億05百万円+28.5%——
経常利益2億91百万円1億02百万円△64.9%2億20百万円△53.6%
中間純利益2億36百万円78百万円△67.0%1億60百万円△51.3%
1株当たり中間純利益155.67円51.19円—104.99円—

出所:2027年3月期上半期決算短信、2026年3月期決算短信の「第2四半期(累計)」予想。金額は百万円未満切り捨て。増減率は短信の表記(売上総利益・販管費・受取配当金は千円単位から筆者が計算)、上期予想比は10月19日の修正開示の増減率をそのまま使用。

会社は10月19日(月)15時00分に上期予想の修正を開示しており、上の実績は修正後の上期予想(売上20億81百万円・営業利益4百万円・経常利益1億02百万円・純利益78百万円)と完全に同じです。修正理由を会社は次のように書いています(原文)。

第2四半期連結累計期間の売上高につきましては、ばら貨物セグメントにおける一部貨物の入着や液体貨物セグメントにおけるタンク運営に係る特別作業料の収受が下半期にずれ込んだことなどにより、期初予想を下回る見込みとなりました。一方、前述の液体貨物セグメントにおける特別作業に係る外注費は作業日程の関係から上半期での計上となったことなどから、損益面につきましては、営業利益は当初予想を下回る見込みとなり、経常利益、親会社株主に帰属する中間純利益につきましても、営業利益の減少に伴いそれぞれ期初予想を下回る見込みとなりました。

なお、通期の連結業績予想につきましては、ばら貨物の年間取扱予定数量など、下半期の業務計画を再点検した結果、2026 年5月 14 日に公表した予想値を据え置くことといたします。

営業利益が△98.0%なのに経常利益は△64.9%にとどまったのは、受取配当金が前年より23百万円増えたからです。上期の経常利益1億02百万円に対し、受取配当金は1億05百万円。経常利益は、ほぼ全額が受取配当金でできています(第5章)。

純利益の減り方(△67.0%)が経常(△64.9%)より大きいのは、前年上期に特別利益の受取和解金57百万円(賃料増額請求訴訟の和解)があったためです。一方で税負担率は22.3%(法人税等22百万円÷税引前利益1億00百万円)と、前期通期の29.2%より低く出ています。

用語メモ:受取配当金は、会社が保有する他社の株式から受け取る配当で、損益計算書では「営業外収益」に入ります。本業の利益である営業利益には含まれず、経常利益には含まれます。この会社では、受取配当金が4〜6月と10〜12月の四半期に集中し(第3章の表)、その2つの四半期の経常利益が膨らみやすい形になっています。

2-2. 売上原価と販管費の中身(会社の説明)

会社は上半期の費用を次のように説明しています(短信)。

  • 売上原価:17億64百万円(+43百万円、+2.5%)。修繕費は前期までのメンテナンスで減ったが、設備投資に伴う減価償却費の増加と、液体貨物のタンク運営に係る特別作業による荷役関係諸払費の増加で増えた
  • 販管費:3億12百万円(+20百万円、+7.0%)。新システム稼働に伴うランニングコストや減価償却費が増えた

売上が1億43百万円減ったのに、売上原価は43百万円増えています。売上と費用が逆方向に動いたことが、営業利益の98%減の正体です。数字での分解は第3章で行います。

減価償却費は上半期で2億16百万円(前年同期1億95百万円)。CF計算書の数字です。

2-3. 財政状態とキャッシュ・フロー

項目2026年3月末2026年9月末増減
現金及び預金6億17百万円9億07百万円+2億90百万円
流動資産「その他」(借地料の前払い等)77百万円3億46百万円+2億69百万円
有形固定資産36億59百万円40億45百万円+3億85百万円
投資有価証券59億43百万円81億22百万円+21億79百万円
短期借入金—6億50百万円+6億50百万円
長期借入金(1年内返済分を含む)13億30百万円15億80百万円+2億49百万円
繰延税金負債15億53百万円22億43百万円+6億90百万円
その他有価証券評価差額金35億06百万円49億99百万円+14億93百万円
純資産80億73百万円95億80百万円+15億06百万円
自己資本比率66.2%62.9%△3.3pt

出所:短信の中間連結貸借対照表(百万円未満切り捨て)。

この表のポイントは2つです。

1つ目は、純資産が半年で15億円増えたが、そのほぼすべて(14億93百万円)は保有株式の値上がりによる評価差額金だということ。利益剰余金は34億53百万円→34億49百万円とほぼ横ばいです(中間純利益78百万円に対し、配当支払い81百万円)。

2つ目は、自己資本比率が下がったのは、借入と株式の値上がりで総資産(分母)が膨らんだからです。純資産(分子)は増えています。

投資有価証券の増加21億79百万円は、評価差額金の増加(14億93百万円)と繰延税金負債の増加(6億90百万円)の合計21億83百万円とほぼ一致します(差は△4百万円)。株を買い増したのではなく、持っている株が値上がりしたことがこの検算で分かります。

キャッシュ・フローは、営業CF+1億12百万円、投資CF△6億30百万円(有形固定資産の取得5億35百万円)、財務CF+8億08百万円(短期借入6億50百万円・長期借入4億20百万円)でした。営業CFが小さいのは、毎年9月に大阪市への借地料の下半期6か月分(10〜3月分)を前払いするためで(前払費用の増加2億50百万円)、前年上期も同じ形です(同2億39百万円)。

用語メモ:自己資本比率=自己資本÷総資産。分子(自己資本)が増えても、分母(総資産)がそれ以上に増えれば比率は下がります。今回は借入(設備投資の資金)と保有株の値上がりで総資産が30億円増えました。


3. 深掘り①:7〜9月の3か月に何が起きたか

ここからの3章は、1つの問いの3つの段階です。「上期にあいた穴は、下期に何で埋まる前提なのか」。まず穴の形を、累計の開示から3か月ずつ切り出して確かめます。

3-1. 14四半期を並べる

短信は累計(4〜6月、4〜9月、4〜12月、4〜3月)でしか開示されないので、引き算で3か月ずつに戻します。

3か月売上高粗利率販管費営業利益営業利益率受取配当金経常利益
2023年4〜6月959.617.1%127.936.43.8%38.172.3
2023年7〜9月1,076.620.9%129.595.48.9%2.095.1
2023年10〜12月1,011.417.1%130.642.64.2%46.0105.8
2024年1〜3月1,064.820.4%155.861.45.8%2.062.3
2024年4〜6月924.819.1%152.024.82.7%48.071.4
2024年7〜9月1,063.920.0%133.878.57.4%2.076.9
2024年10〜12月1,217.721.5%136.8125.510.3%57.5178.0
2025年1〜3月1,131.813.2%174.5△25.7△2.3%2.0△26.5
2025年4〜6月1,037.423.1%147.592.08.9%67.8157.2
2025年7〜9月1,186.722.3%144.7119.710.1%14.5134.0
2025年10〜12月984.518.0%142.335.23.6%77.5110.7
2026年1〜3月1,052.116.9%173.24.10.4%2.03.1
2026年4〜6月988.421.7%162.751.45.2%103.8153.2
2026年7〜9月1,092.69.4%150.1△47.1△4.3%2.0△51.0

単位:百万円。各四半期の短信の累計値(千円)から筆者が差し引き、百万円の小数第1位で四捨五入。2024年3月期〜2026年3月期の各3年は、4四半期の合計が通期の開示値と千円単位で一致することを確認済み。

この表のポイントは3つです。

  1. 2026年7〜9月の粗利率9.4%は、14四半期で最も低い。これまでの最低は2025年1〜3月の13.2%でした
  2. 営業赤字の四半期は14四半期中2回目。前回の2025年1〜3月は、会社が第4四半期に「設備メンテナンスによる修繕費や業務改善に伴うコンサルティング費用」を見込むと書いていた時期です(2025年1月24日の修正開示)
  3. 過去3年の7〜9月の営業利益率は7.4〜10.1%で、いずれも年間で上位2つに入る四半期でした。今年はその四半期が赤字になった。季節の形が崩れた、というより、例年は稼ぎやすい3か月に、費用と売上の時期のずれが重なった、という形です

1〜3月は、販管費が3年とも年間で最も多い四半期です(156〜175百万円)。営業利益率は直近2年続けて年間で最も低く(△2.3%、0.4%)、2024年1〜3月(5.8%)は4四半期中2番目でした。3年のうち1年は形が違うので、1〜3月の弱さを「季節性」とまでは書けませんが、販管費が年度末に膨らむ形は3年続いています。 下期の予想を読むときに、この点が効きます(第4章)。

3-2. 7〜9月の営業利益の悪化を3つに分ける

固定費の大きい会社では、売上が少し減っただけで利益が大きく減ります。営業利益の増減を、売上の量(数量効果)・粗利率(率効果)・販管費の3つに分けます。

期間数量効果率効果販管費合計(=営業利益の増減)粗利率
4〜6月△11.3△14.1△15.2△40.623.1%→21.7%
7〜9月△21.0△140.5△5.4△166.822.3%→9.4%
上半期△32.4△154.4△20.6△207.422.7%→15.2%

単位:百万円(前年同期比)。数量効果=売上の増減×前年の粗利率、率効果=今期の売上×粗利率の差、販管費=販管費の増減(符号を反転)。筆者の計算で、3項目の合計は実際の営業利益の増減と一致。

上半期の減益2億07百万円のうち、1億54百万円は率効果、つまり「売上に対して原価が重くなった」ことで、その9割(1億40百万円)が7〜9月に集中しています。 売上の減少そのもの(数量効果)は△32百万円にすぎません。

これは軸の「弱み②」そのものです。荷が減っても、借地料・減価償却・委託作業の費用は減らない。そこに「作業の費用だけが先に出て、作業料の売上は後に来る」という時期のずれが重なると、粗利率が一気に崩れます。

3-3. セグメント別に見た7〜9月

7〜9月の3か月2023年2024年2025年2026年前年同期比
ばら貨物 売上613.2547.4692.5589.3△103.2
ばら貨物 利益19.9△29.882.64.1△78.5
液体貨物 売上325.0377.0352.8357.8+5.0
液体貨物 利益137.5146.591.62.2△89.4
液体貨物 利益率42.3%38.9%25.9%0.6%—
物流倉庫 利益27.058.248.063.8+15.8
全社費用(調整額)△92.1△99.4△105.7△119.4△13.7

単位:百万円。各期の上半期と第1四半期のセグメント情報から筆者が差し引き(四捨五入)。「その他」(売電)は省略。

この表のポイントは2つです。

液体貨物は、売上が前年より増えたのに利益がほぼゼロになりました。 利益率は42.3%→38.9%→25.9%→0.6%。会社の説明どおり「特別作業の外注費が上期に計上され、その作業料の収受は下期にずれた」のであれば、この3か月は費用だけが乗り、売上は乗っていない状態です。外注費の金額そのものは開示されていません。前年同期比の悪化額(△89百万円)や、2年前との差(△144百万円)が外注費の額を示すわけではない点に注意してください(前年の7〜9月の利益率25.9%自体が、2年前より低い水準です)。

ばら貨物は、前年7〜9月が「荷の入着が上期に集中した」特殊な年でした(前期の上期短信に会社がそう書いています)。今期の7〜9月の利益4百万円は、2年前(△30百万円)や3年前(20百万円)と比べると極端に悪いわけではありません。会社は今期、石炭やイルメナイト(チタンの原料鉱石)の取扱数量の減少を挙げています。前年が上に振れていた分、前年比の悪化が大きく見えている面があります。

全社費用は△119百万円と、4年で最も大きくなりました。 新システムの稼働に伴う費用です。

上半期全体の営業利益の悪化△2億07百万円をセグメント別に分けると、ばら貨物△99百万円、液体貨物△88百万円、物流倉庫+20百万円、その他△1百万円、全社費用△39百万円で、合計は実際の増減と一致します(筆者の計算)。

用語メモ:ばら貨物は、石炭・鉱石・塩のように袋や箱に詰めずに「ばら」で運ぶ荷物のことです。船倉からクレーンでつかんで降ろします。


4. 深掘り②:据え置きが下期に置いたもの

前章で見た穴は、上期だけで見れば「費用が先、売上が後」の時期のずれです。では、通期予想を据え置いたことで、下期にはどれだけの回復が置かれているのか。

4-1. 期初の下期計画と、据え置き後の下期

項目期初の下期計画(通期予想−期初の上期予想)据え置き後の下期(通期予想−上期実績)前年下期の実績据え置き後の下期の前年比
売上高21億80百万円21億99百万円20億37百万円+8.0%
営業利益1億10百万円2億46百万円39百万円約6.2倍
費用(売上−営業利益)20億70百万円19億53百万円19億97百万円△2.2%
営業利益率5.0%11.2%1.9%—
経常利益1億80百万円2億98百万円1億14百万円約2.6倍
純利益1億00百万円1億82百万円54百万円約3.4倍

筆者の計算(百万円単位の予想と千円単位の実績から計算し、百万円未満を四捨五入)。前年下期は2026年3月期の通期実績から上期実績を差し引いた値。

この表のポイントは3つです。

  1. 据え置き後の下期の費用(19億53百万円)は、期初の下期計画(20億70百万円)より1億17百万円少ない。 この1億17百万円は、上期の費用が期初の上期計画(19億60百万円)を上回った額とほぼ同じです(上期の実際の費用は20億77百万円)。つまり据え置きは、「上期に前倒しで出た費用は、下期から同じだけ消える」という前提を置いた計算になっています
  2. 売上の下期計画は、期初より19百万円多いだけです。上期の売上の未達(△19百万円)が、そのまま下期に乗った形です
  3. 結果として、下期は売上を前年比+8.0%伸ばしながら、費用を前年比△2.2%減らすことが求められています。前年下期の営業利益率1.9%に対し、要求は11.2%です

会社の説明(費用の前倒し・売上の後ずれ)が文字どおりなら、この組み合わせは「年間の作業と費用の総量は変わらず、計上される半期が入れ替わっただけ」という読み方になります。反対に、上期に出た外注費が当初の見込みより膨らんでいた場合や、下期に予定していた別の費用(修繕・システム・人件費)が残っている場合は、下期の費用は減りません。どちらなのかは、短信の開示からは判断できません。

4-2. 過去3年の「下期の置き方」と比べる

上期決算の時点で、通期予想が下期に置いていた営業利益と、実際の下期を並べます。

決算期上期決算時点の予想が置いた下期の営業利益実際の下期達成率下期の売上(置いた/実際)
2024年3月期38百万円1億04百万円272%19億64百万円/20億76百万円
2025年3月期67百万円1億00百万円150%21億11百万円/23億49百万円
2026年3月期18百万円39百万円215%19億76百万円/20億37百万円
2027年3月期2億46百万円——21億99百万円/—

筆者の計算。2024年3月期は上期決算時点(2023年10月)の通期予想4,000/170百万円、2025年3月期は4,100/170百万円、2026年3月期は2025年10月20日修正後の4,200/230百万円を使用。

この表が、今回の決算で一番大事な点だと筆者は考えます。

過去3年、この会社は上期決算の時点で下期を小さく置き(18〜67百万円)、実際の下期はそれを1.5〜2.7倍で上回ってきました。 第1章の「控えめに置いて、後から上げる」予想の作り方は、下期の置き方にそのまま表れています。

今期は逆です。下期に置いた2億46百万円は、過去3年の実際の下期(39〜104百万円)のどれよりも2倍以上大きい。 過去の「上振れ実績」は、小さく置いた下期を上回ってきた実績であって、大きく置いた下期を達成してきた実績ではありません。「過去と同じだけ上振れする」とは書けない、というのが筆者の読み方です。

もう1つ、第3章で見たとおり、1〜3月は販管費が3年とも年間で最も多く、営業利益率は直近2年続けて年間最低でした(5.8%、△2.3%、0.4%)。据え置き後の下期は、その1〜3月を含む6か月で営業利益率11.2%を求めています。過去3年の下期の営業利益率は5.0%、4.2%、1.9%でした。

4-3. 下期の売上と費用の組み合わせ(感応度表)

下期の売上と費用を、前年下期の実績を起点に動かしたときの、下期の営業利益と通期の営業利益です。

下期の費用(前年下期比) \ 下期の売上(前年下期比)売上 ±0%売上 +4%売上 +8%
費用 △2.2%83/88165/169246/250
費用 ±0%39/44121/125202/207
費用 +3%△21/△1661/65142/147

各セルは「下期の営業利益/通期の営業利益」(百万円)。前年下期の売上20億37百万円・費用19億97百万円を起点にし、通期は上期実績4百万円を加えた値。筆者の試算で、将来の見通しではありません。

通期予想(2億50百万円)に届くのは、9マスのうち右上の1マスだけです。売上が前年比+8%伸び、かつ費用が前年より減る組み合わせです。費用が前年並み(±0%)なら、売上が+8%でも通期は2億07百万円にとどまります。

ただし、この表には限界があります。下期には、上期にずれ込んだ「特別作業料」と「ばら貨物の入着」が売上として乗る予定です。特別作業料の金額は開示されていないので、売上の+8%のうちどれだけが「ずれ込み分」で確実性が高いのかは分かりません。また、ばら貨物の新倉庫は2027年2月に稼働予定(短信)、有報では完了予定2027年1月・投資予定額7億51百万円とされており、建設中は荷さばきスペースが限られることを会社は期初から減収要因に挙げていました。

4-4. 経常利益と純利益の置き方は、営業利益ほど重くない

科目ごとに見ると、予想の重さは違います。

  • 営業外(経常利益−営業利益):据え置き後の下期は52百万円。過去3年の下期は64百万円、52百万円、74百万円で、下期の営業外は過去並み〜控えめに置かれています。下期に受け取る配当(前年下期は79百万円、ほぼ10〜12月)は、保有株を売らない限り大きくは変わりにくい収入です
  • 税金:通期予想の純利益÷経常利益から逆算すると、特別損益をゼロとしたときの税負担率は35.0%(下期だけなら38.9%)。上期実績22.3%、前期通期29.2%、法定実効税率31.5%(有報)より高く置かれています

用語メモ:予想を据え置くと、上期の営業外損益や税金が予想の前提とずれても、その差は機械的に下期に押し込まれます。今回の「下期の税負担率38.9%」は、会社が下期に高い税金を見込むと発表したわけではなく、据え置きの計算上の結果です。

つまり、通期予想の中で重いのは営業利益で、経常利益と純利益には営業外と税の側にいくらか余地がある、という形です。営業利益が下期に1億円程度にとどまっても、営業外が過去並みで税負担率が上期並みなら、純利益の目減りは営業利益ほどにはなりません。この点は配当の議論につながります(第7章)。


5. 深掘り③:本業の外にある、もう一つの稼ぎ

第4章で、通期予想の重さは営業利益にあり、経常利益には「配当収入」という別の柱があることを見ました。この章では、その柱の大きさを確認します。

5-1. 上期の経常利益は、受取配当金とほぼ同額

期間受取配当金経常利益受取配当金÷経常利益
2024年3月期(通期)88百万円3億35百万円26.2%
2025年3月期(通期)1億09百万円2億99百万円36.5%
2026年3月期(通期)1億61百万円4億04百万円39.9%
2027年3月期(上半期)1億05百万円1億02百万円103.4%

筆者の計算。

受取配当金は3年で約1.8倍になりました。株数は変わっていないので(有報:特定投資株式の株数は前期・当期で同じ)、保有先の会社の増配によるものです。

5-2. 何を持っているのか

有報(2026年3月末)の「株式の保有状況」によると、純投資目的以外の上場株式は9銘柄・貸借対照表計上額57億31百万円です。

銘柄株数2026年3月末の計上額保有目的(有報の要旨)相手先が当社株を保有
三菱UFJフィナンシャル・グループ1,577,100株41億00百万円資金調達等の取引・金融情報無(子会社の三菱UFJ銀行が保有)
三井住友フィナンシャルグループ201,900株10億10百万円同上無(三井住友銀行が保有)
大阪ソーダ136,000株2億32百万円ばら貨物の顧客有
SECカーボン59,500株1億56百万円ばら貨物の顧客有
AGC18,800株1億03百万円ばら貨物の顧客無
ニチレイ31,000株61百万円物流倉庫の顧客無(グループ会社が保有)
MS&ADインシュアランスグループHD9,300株37百万円取引先無
大和証券グループ本社11,000株16百万円取引先無(大和証券が保有)
テイカ8,000株13百万円ばら貨物の顧客有

出所:有報「株式の保有状況」(特定投資株式、百万円未満切り捨て)。

**大手銀行2社の株式が計51億11百万円で、9銘柄の合計の約89%**を占めます(3月末)。9月末の投資有価証券は81億22百万円で、半年でさらに21億79百万円増えましたが、銘柄別の9月末の内訳は開示されていません。3月末時点の取得原価は6億15百万円、評価益は51億15百万円です(有報「事業等のリスク」)。

会社は保有方針を「保有の必要性がないと判断された場合には、売却により縮減する方針」と書き、2025年7月の取締役会で全銘柄について保有目的と「配当利回りが当社の保有基準値を上回っているか」を検証し、保有を継続すると判断しています(有報)。また、保有意義のある株式も、大規模な設備投資の資金需要が発生した場合には売却を改めて検討する方針と書いています。第4次中計資料にも「政策保有株式の縮減による資金調達」の考え方が示されています。

5-3. 岸壁の会社の値段と、金庫の株券の値段

この会社のバランスシートを、「預かる仕事(本業)」と「持っている株券」に分けて並べます。

項目金額(2026年9月末)1株当たり
時価総額(10月23日終値2,881円×自己株式を除く1,527,820株)44億01百万円2,881円
投資有価証券81億22百万円5,317円
投資有価証券−繰延税金負債58億79百万円3,848円
ネット有利子負債(借入金合計22億30百万円−現金9億07百万円)13億22百万円866円
投資有価証券(税効果控除後)−ネット有利子負債45億56百万円2,982円
純資産95億80百万円6,270円
うち、評価差額金を除いた株主資本45億80百万円2,998円

筆者の整理・計算。繰延税金負債は全額を投資有価証券に対応させた簡易な控除で(有報によれば3月末の繰延税金負債の大半は評価差額金に対応)、売却時の実際の税額を示すものではありません。

この表は、保有株を売って株主に返す場合に限って意味を持つ計算です。 会社は保有の継続を判断しており、売却して還元すると約束しているわけではありません。売るとすれば、会社自身が書いているように、設備投資の資金に充てる可能性が高いと読めます。

そのうえで、事実として言えるのは次の2点です。

  • 時価総額(44億円)は、投資有価証券(81億円)の約54%。税効果を引き、借入を差し引いた後の株券の値打ち(45.6億円)と時価総額がほぼ同じ水準にあります
  • 評価差額金を除いた株主資本(45.8億円)で見ても、PBRは約0.96倍です。純資産全体で見たPBR(0.46倍)は、株券の値上がりで分母が膨らんでいる分だけ低く見えています

軸に戻ると、この会社は「他人の荷を預かる」仕事をしながら、自分の金庫には会社全体の値段を上回る株券をしまっています。そしてその株券の値動きが、半年で純資産を15億円動かしました。本業の営業利益(年2億円台)と、株券の評価の変動(半年で15億円)は、桁が1つ違います。

5-4. 3つの深掘りをつなぐ

  1. 上期の穴は、液体貨物の「費用が先・売上が後」とばら貨物の荷の後ずれで、7〜9月に集中して出た(第3章)
  2. 通期の据え置きは、上期に前倒しされた費用が下期から同額消え、ずれた売上が下期に来るという前提で、下期に過去のどの年より大きな営業利益を置いている(第4章)
  3. 経常利益以下には、営業利益とは別の柱(受取配当金)があり、その元になる株券は会社の時価総額を上回る(第5章)

「借りた岸壁で他人の荷を預かる」本業は、荷の量と時期を自分で決められず、費用は固定的です。今期の下期は、その本業に過去にない伸びを求めている一方、会社全体の利益と純資産は、本業の外にある株券に大きく左右される構造になっています。


6. セグメント別の状況(上半期)

セグメント売上高前年同期比セグメント利益前年同期会社の説明(要旨)
ばら貨物10億64百万円△14.2%△27百万円72百万円主に石炭・イルメナイトの取扱数量が減少
液体貨物7億26百万円+3.3%1億51百万円2億39百万円タンク稼働率は堅調、一部化学品の荷動きが活発。特別作業の外注費が上期に計上
物流倉庫2億77百万円+3.7%1億26百万円1億06百万円各倉庫が安定稼働、一部倉庫の料金改定
その他(売電)12百万円—5百万円6百万円前年同期並み

出所:短信(百万円未満切り捨て)。

  • ばら貨物:上半期の利益は△27百万円。前期は上期の利益72百万円に対し下期が△33百万円で、通期39百万円でした(筆者の差し引き)。今期の期初の見通しでは、新倉庫の建設で荷さばきスペースが限られ、燃料系貨物を中心に取扱数量が減ると書かれていました。電源開発への売上は前期6億78百万円で、ばら貨物の約29%(短信の主要顧客情報)。会社は有報で、エネルギー政策の変更や取引先の方針転換により取扱数量が減る可能性をリスクに挙げています
  • 液体貨物:4〜6月は前年並み(利益149百万円)、7〜9月に利益がほぼゼロ(第3章)。期初の見通しでは「タンク運営に係る特別作業料が発生」して増収、その一方で特別作業により荷役関係諸払費が増えるとしていました。作業料と費用の両方が期初から計画に入っていたことは、据え置きの根拠を読むうえで重要です。前々期(2025年3月期)にも特別作業料を収受し、前期はそれがなくなって減収になっています。特別作業は毎年発生するものではなく、年ごとの振れの原因になっています
  • 物流倉庫:料金改定もあって利益は+19.1%。軸の「強み」側、預かる仕事の安定性が出ているセグメントです
  • 全社費用:上半期△2億51百万円(前年△2億12百万円)。新システムのランニングコストと償却が増えました

用語メモ:イルメナイトはチタンの原料になる鉱石です。顔料の酸化チタンなどの原料として使われます。


7. 資本政策・株主還元

7-1. 配当方針:2本立ての物差し

有報の配当政策と第4次中期経営計画(2024〜2026年度)によると、配当は次の2つで決まります。

  • 累進配当(維持・増配):第4次中計の期間中に導入。期間は2026年度(2027年3月期)までです
  • 税引後本業利益の30%以上:税引後本業利益=(営業利益+受取配当金−支払利息)×(1−税率)

配当は期末の年1回、決定機関は株主総会です。中間配当の定めはありません。

この方針式を、実際の数字に当てはめて再現します。

決算期営業利益+受取配当金−支払利息×(1−法定実効税率)×30%(1株換算)実際の配当配当の決め方
2023年3月期———30円(うち記念10円)安定配当(前中計期間中に普通配当を20円→30円へ)
2024年3月期———30円同上
2025年3月期2億87百万円1億99百万円(30.6%)59.8百万円(39.4円)40円累進配当+税引後本業利益の30%以上
2026年3月期3億89百万円2億66百万円(31.5%)80.0百万円(52.6円)54円同上
2027年3月期(予想)———54円同上

筆者の計算。税率は有報の法定実効税率、株数は各期末の自己株式を除く株式数。会社が実際に使った税率は開示されていません。

2期とも、方針式の30%で計算した1株配当(39.4円、52.6円)を少し上回る水準で配当が決まっています(還元率は30.4%、30.8%)。配当総額は54円×1,521,755株=82,174千円で、有報の配当総額82,174千円と一致します。

この方針式の特徴は、受取配当金が分子に入っていることです。本業の営業利益が落ちても、保有株からの配当収入が配当の原資を下支えします。

今期の予想54円は、方針式では次のように読めます(筆者の試算で、将来の見通しではありません)。

今期の営業利益の仮定受取配当金の仮定方針式の30%(1株換算)
2億50百万円(会社予想どおり)1億85百万円(上期実績+前年下期並み)約54.8円
1億50百万円同上約41.3円
1億00百万円同上約34.6円

支払利息は28百万円、税率31.5%、株数1,527,820株で固定した筆者の試算。

会社予想どおりなら方針式でもほぼ54円。営業利益が予想を下回れば方針式の値は54円を割りますが、今期は累進配当の期間内なので、前期の54円が下限として働く、という関係です。強気に読めば「今期の配当は業績が下振れしても54円が守られる設計」、弱気に読めば「累進配当の約束は今期で区切りを迎え、来期以降は次の中計の方針次第」です。次期中計の発表時期は開示されていません(第4次中計は2024年6月18日に開示)。

配当利回りは1.87%(54円÷10月23日終値2,881円)、予想ベースの配当性向は31.7%(54円÷予想EPS 170.47円)です。

  • 権利付き最終日:2027年3月29日(月)。基準日の2027年3月31日(水)の2営業日前です(筆者の計算)
  • 株式分割・併合:直近5年はなく、調整は不要です
  • 潜在株式:なし(短信「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」の記載なし)。自己株式は9月末12,180株で、毎年の譲渡制限付株式報酬で少しずつ減っています(3月末18,245株)
  • 株主優待:なし(有報に「なし」と記載)

7-2. 株主構成:「その他の関係会社」と、市場で買い続けた個人株主

埠頭ジャスタック(その他の関係会社)

項目内容
議決権の所有割合(2026年3月末)直接19.1%、緊密な者等の合算2.9%、計22.0%(会社の「支配株主等に関する事項」)
有報の大株主表290千株、19.06%(自己株式を除く発行済株式に対する割合)
事業港湾運送事業・建設業。大阪市北区、資本金20百万円
当社との取引(前期)作業料6億27百万円、工事代他93百万円(税込。関連当事者情報)
取引条件作業料金は「港湾運送事業届出料金を基準に設定」、工事代金は「資材費等を勘案して決定」
役員の兼務なし(会社開示)

会社は「支配株主等に関する事項」で、同社が「当社の業務及び設備に精通しており、業務の効率性や設備の維持管理に重要な役割」を担い、荷役業務・構内作業の委託と設備修理を発注していると説明しています。これが軸の「手は外にある」の具体的な姿です。

「親会社等の決算に関するお知らせ」(2026年5月7日)によると、埠頭ジャスタックの2026年1月期は営業収益6億64百万円、当期純利益56百万円、純資産9億52百万円で、株主は代表取締役の原勝隆氏1名(100%)です。当社の大株主表には原伊都子氏(1.73%)と原勝隆氏(1.11%)も載っており、会社が開示する「合算2.9%」はこれに対応する範囲と読めますが、合算の内訳は開示されていません。

参考までに、当社から同社への前期の取引金額(税込7億20百万円)を消費税10%で割り戻すと約6億55百万円で、同社の営業収益6億64百万円とほぼ同じ規模です。両社の決算期は2か月ずれており(当社は3月期、同社は1月期)、取引金額には同社以外への支払いが含まれていないかも確認できないため、同社の売上の何割が当社向けかは開示からは確定できません(筆者の整理)。

今期上期の液体貨物の特別作業の外注先は開示されていません。上期の外注費の増加と、同社との取引を結びつける根拠は開示にないので、本記事では結びつけません。

山本裕治氏(個人、大量保有報告書の提出者)

会社は2026年9月24日(木)14時00分に「主要株主の異動に関するお知らせ」を開示しました。山本裕治氏から9月18日に提出された変更報告書を受けて、主要株主になったことを確認したという内容です。会社の開示では、議決権の割合は異動前0.09%(3月末の株主名簿で1,400株)→異動後17.80%(269,900株、3月末の総議決権15,167個に対する割合)。会社は「当社として当該株主名義の実質所有株式数の確認ができたものではありません」と注記しています。

山本氏の大量保有報告書・変更報告書をEDINETで時系列に並べると次のとおりです。

報告義務発生日提出日保有株数株券等保有割合提出事由
2025年12月19日2025年12月23日84,300株5.47%新規(大量保有報告書)
2025年12月19日2025年12月25日80,300株5.21%財務局の指示による訂正
2026年1月7日2026年1月13日100,600株6.53%1%以上の増加
2026年1月14日2026年1月16日117,100株7.60%同上
2026年1月16日2026年1月16日136,500株8.86%同上
2026年5月22日2026年6月1日157,900株10.25%1%以上の増加・担保契約等の変更
2026年6月4日2026年6月11日174,500株11.33%同上
2026年6月9日2026年6月16日191,500株12.44%同上
2026年6月17日2026年6月18日208,000株13.51%同上
2026年7月10日2026年7月14日224,000株14.55%同上
2026年7月22日2026年7月23日240,100株15.59%同上
2026年7月31日2026年8月7日255,900株16.62%同上
2026年9月16日2026年9月18日269,900株17.53%担保契約等重要な契約に関する変更

出所:EDINETの各報告書。株券等保有割合の分母は自己株式を含む発行済株式総数1,540,000株。

報告書に書かれている事実は次のとおりです。

  • 保有目的は「純投資」。重要提案行為等の欄に記載はありません
  • **取得資金は全額「自己資金」**で、借入金はゼロと記載されています。最新の報告書の取得資金は7億11百万円で、これは報告書の注記どおり「平均取得額×株数」(2,635.86円×269,900株)で計算された金額です
  • 「担保契約等重要な契約」の欄は**株券の貸借契約(貸株)**で、2026年8月の報告書までは楽天証券・SBI証券に保有株の全数を貸し出す契約が記載されていました。9月の報告書では、契約は残っているものの貸出株数が両社とも0株になっています。これが9月の報告書の提出事由です
  • 直近の報告書の「取得又は処分の状況」(2026年7月15日〜9月16日)には39日分の取得が並び、すべて市場内の取得、処分はありません。合計は43,400株(筆者の合計)で、同じ期間の当社株の出来高合計79,300株(株価時系列から筆者が合計)の約55%にあたります

有報の大株主表(2026年3月末)では、楽天証券が138千株・9.11%で3位に載っています。山本氏の報告書には、同じ時期に楽天証券への貸株が138,800株と記載されています。数字は近いですが、名簿上の株主と貸株の関係を会社が説明しているわけではないため、本記事ではこれ以上の推測はしません。

議決権の割合で見ると、**埠頭ジャスタックの19.1%(合算22.0%)に対し、山本氏は会社開示で17.80%**です。筆頭株主は引き続き埠頭ジャスタックです。3分の1(特別決議を単独で否決できる水準)には、どちらも届いていません。

用語メモ:大量保有報告書の「株券等保有割合」は、自己株式を含む発行済株式総数が分母です。会社の大株主表や「主要株主の異動」の議決権割合は、自己株式を除いた議決権の総数が分母です。同じ株数でも、後者のほうが少し高く出ます(山本氏:17.53%と17.80%)。

用語メモ:主要株主は、総株主の議決権の10%以上を持つ株主のことです。主要株主が変わると、会社は適時開示と臨時報告書を出します。

その他の大株主(2026年3月末、有報)は、セオ運輸11.51%、丸協産業8.54%、三菱UFJ銀行2.92%、日本生命保険2.53%、三井住友銀行2.53%など。上位10名で60.00%です。セオ運輸と丸協産業はいずれも本店が兵庫県尼崎市にありますが、両社の関係は開示で確認できないので合算しません。

2026年6月25日の定時株主総会では、剰余金の処分(54円)の賛成割合が99.82%、取締役選任議案は各候補99%台で可決されました(臨時報告書)。

7-3. 流動性

流通する株数が少ない銘柄です。2026年9月は、売買が成立した日が18日、1日の出来高は100〜1,500株でした(株価時系列から筆者が集計)。10月23日(決算発表日)の出来高は3,000株です。前述のとおり、7月中旬から9月中旬にかけては、同期間の出来高の半分強を1人の株主の買い付けが占めていました。大口の買い手が買い付けを止めた場合や、売りに転じた場合、出来高の薄い市場で値段がどう付くかは分かりません。 これは、強気(構造的な買い手がいた)と弱気(その買い手が消えたときの需給)の両側に置くべき事実です。


8. 株価の見方

8-1. 株価の基準点と発表時刻

日付・時刻出来事株価(東証終値)
2026年10月16日(金)—2,890円
2026年10月19日(月)15時00分上期予想の下方修正を開示2,888円(開示前の取引のみ)
2026年10月20日(火)修正開示後の最初の取引日2,933円(+1.56%)
2026年10月22日(木)—2,950円
2026年10月23日(金)14時00分上半期決算を発表2,881円(△2.34%、出来高3,000株)

10月19日の修正開示は15時00分で、当日の取引には発表後の30分が含まれます。最初に修正の内容を織り込んだ形の値が付いたのは翌20日で、前日比+1.56%でした。

10月23日は14時00分の発表です。Yahoo!ファイナンスの株価ページによれば、この日の高値2,933円は13時54分(発表前)、安値2,881円は14時23分(発表後)で、終値は安値と同じ2,881円でした。発表後に安値を付けたことは時刻で確認できますが、出来高3,000株の中で、何が値動きの理由だったかは分かりません。なお、決算の数字そのものは4日前の修正開示と同じでした。

年初来高値は3,085円(2026年7月24日)、年初来安値は2,231円(2026年3月31日)で、現在値は安値から+29.1%、高値から△6.6%の位置です。

8-2. 指標

指標値計算の前提
時価総額約44億01百万円2,881円×自己株式を除く1,527,820株(発行済1,540,000株ベースでは約44億37百万円)
予想PER16.9倍会社予想EPS 170.47円
PBR0.46倍9月末の1株当たり純資産約6,270円(筆者の計算)
PBR(評価差額金を除く株主資本ベース)約0.96倍株主資本45億80百万円
配当利回り1.87%予想54円

PER・PBRは筆者が計算し直した値です。

8-3. 強気の材料

  • 会社の予想は、過去3年いつも控えめで、上方向に着地してきた。 今期の据え置きも、会社が「下半期の業務計画を再点検した結果」と書いて据え置いたもので、費用と売上の時期のずれという説明は、期初の見通し(特別作業料と特別作業の費用の両方を計画に入れていた)とも整合します
  • 液体貨物の4〜6月は前年並みの利益(149百万円)を出していた。 7〜9月の利益ゼロが一度きりの時期のずれなら、下期には作業料の売上が乗ります
  • 物流倉庫は料金改定で増益。預かる仕事の安定性は数字に出ています
  • 経常利益以下には、受取配当金という本業と別の柱がある。 上期の受取配当金は前年比+28.5%。配当方針式にも受取配当金が入っているため、本業が振れても配当の原資は下支えされます。今期は累進配当の期間内で、54円が下限です
  • 保有株の時価(9月末81億円)は時価総額(44億円)の約1.85倍。会社は売却を約束していませんが、設備投資の資金需要があれば売却を検討するとしており、借入に頼らない資金源を持っています
  • 個人株主が市場で継続的に買い付け、主要株主になった事実(純投資目的、重要提案行為の記載なし)

8-4. 弱気の材料

  • 据え置き後の下期は、過去3年のどの下期より2倍以上大きい営業利益を置いている。 過去の「上振れ実績」は小さく置いた下期を上回った実績で、今回のように大きく置いた下期の達成実績はありません。感応度表では、通期予想に届くのは「売上+8%かつ費用△2.2%」の1マスだけでした
  • 下期には、販管費が3年とも年間最大で、営業利益率が直近2年続けて年間最低だった1〜3月が含まれる。新倉庫の建設中は荷さばきスペースも限られます
  • 本業の利益は、荷の量と時期(荷主が決める)と、固定的な費用(借地料・償却・委託)の組み合わせで大きく振れる。 上期の減益の4分の3は率効果でした。売上の過半を占めるばら貨物の利益はゼロ前後で、最大顧客(電源開発)は燃料用の石炭の荷主です
  • 経常利益に占める受取配当金の比率が高いことは、裏返せば、保有株(9割が銀行2社)の配当と株価に会社の利益・純資産が左右されることを意味します。上期は株価上昇で純資産が15億円増えましたが、逆も起こり得ます
  • ROEは3%台で推移。純資産の半分は評価差額金で、自己資本の効率は低い水準にとどまっています
  • 累進配当の約束は今期(第4次中計の最終年度)までです
  • 出来高が少なく、大口の買い手の動向で需給が変わりやすい

8-5. 2つの読み方

この株価を説明する読み方は、少なくとも2つあります。

1つは、**「株券の値打ちで買われている会社」**という読み方です。時価総額が税効果・借入控除後の株券の値打ちとほぼ同じ水準にあるので、本業の評価はほぼゼロ、という見方です。この読み方では、下期の営業利益が予想に届くかどうかよりも、銀行株の値動きと会社の保有方針のほうが株価に効きます。

もう1つは、**「本業の利益と配当で評価されている会社」**という読み方です。予想PER16.9倍・配当利回り1.87%で、本業の下期の回復と配当の維持を前提にしているという見方です。この読み方では、下期の営業利益が置かれた2億46百万円にどこまで近づくかが焦点になります。

どちらの読み方が今の株価に近いのかは、筆者には判断できません。ただ、株券の評価の振れ(半年で15億円)が本業の営業利益(年2億円台)より1桁大きいことは、どちらの読み方を取るにしても前提として持っておく必要があると考えます。


9. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期予定見るポイント
2026年11月13日(金)半期報告書の提出予定9月末の大株主の状況(山本氏・埠頭ジャスタックの名簿上の株数)、投資有価証券の内訳
随時山本氏の変更報告書保有割合の推移、保有目的の文言、貸株契約の扱い
2026年10〜12月保有株からの配当の受け取り(例年この四半期に集中)10〜12月の受取配当金(前年同期77百万円)
2027年1月下旬第3四半期決算10〜12月の液体貨物の利益(特別作業料の売上が乗ったか)、ばら貨物の取扱数量、通期予想の扱い
2027年1〜2月ばら貨物の新倉庫の完成・稼働予定荷さばきスペースの制約が解けるか、減価償却費の増加
2027年3月29日(月)期末配当の権利付き最終日54円(予想)
2027年5月中旬通期決算下期の営業利益(置かれた2億46百万円との比較)、配当の確定額、方針式との関係
2027年5〜6月頃(時期未定)次期中期経営計画累進配当を続けるか、政策保有株式の方針、液体貨物のタンク新設の判断

見るべきKPI

  • 液体貨物の単独四半期の利益率(7〜9月は0.6%。過去は26〜42%)
  • 10〜12月・1〜3月の営業利益率(下期の要求は11.2%、過去3年の下期は1.9〜5.0%)
  • ばら貨物の売上(石炭・イルメナイトの取扱数量の説明)
  • 受取配当金と投資有価証券の残高
  • 有利子負債(9月末22億30百万円)と、中計の「ネット有利子負債の増加は10億円まで」との距離

10. 3行まとめ

  • 上半期の営業利益は4百万円(△98.0%)。7〜9月は営業損益約△47百万円、粗利率9.4%で14四半期の最低。液体貨物で「特別作業の費用が先、作業料の売上が後」になり、減益の4分の3は率効果でした
  • 通期予想の据え置きは、下期に営業利益約2億46百万円(前年下期の約6.2倍、過去3年のどの下期の2倍以上)を置いています。過去3年は下期を小さく置いて上回ってきましたが、今期は置き方が逆向きです
  • 経常利益は上期の受取配当金とほぼ同額で、保有株(9月末81億円、9割が銀行2社)は時価総額の約1.85倍。配当は方針式と累進配当で54円が今期の下限、株主構成では市場で買い続けた個人株主が17%台の主要株主になりました

免責事項

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。記載の数値は、櫻島埠頭の決算短信(2024年3月期〜2027年3月期上半期の各四半期・通期)、業績予想・配当予想の修正に関するお知らせ、主要株主の異動に関するお知らせ、親会社等の決算に関するお知らせ、支配株主等に関する事項、第4次中期経営計画に関するお知らせ、有価証券報告書(第84期)、臨時報告書(議決権行使結果)、山本裕治氏の大量保有報告書・変更報告書(EDINET)に基づきます。四半期の数値は累計値から筆者が差し引いたもので、感応度表・方針式の再現・株券と時価総額の比較は筆者の試算・整理であり、将来の見通しや保有株の売却額・還元額を示すものではありません。株価・出来高は東証の日次データ(2026年10月23日終値まで)とYahoo!ファイナンスの株価ページ(高値・安値の時刻)に基づきます。以下の点にご注意ください。

  • 当社は決算補足説明資料を作成しておらず、決算説明会も開催していません。本文中の会社の説明は決算短信と適時開示の記載によるもので、当四半期についての会社の追加説明・質疑応答は一切反映していません
  • 液体貨物の特別作業の外注費・作業料の金額、外注先は開示されておらず、筆者は推測していません。7〜9月の液体貨物の利益の悪化額は、外注費の金額を示すものではありません
  • 埠頭ジャスタックの営業収益に占める当社向け取引の割合は、決算期のずれ等により開示からは確定できず、本文の比較は筆者の整理です。同社と特別作業の外注を結びつける根拠は開示になく、結びつけていません
  • 楽天証券名義の株式と山本氏の貸株契約の関係、セオ運輸と丸協産業の関係は開示で確認できず、推測・合算していません
  • 山本氏の変更報告書は2026年9月18日提出分まで確認しています。公開までに新たな変更報告書が提出されている可能性があります
  • 10月23日の株価の値動きが、決算発表の前後どちらの取引で、何を理由に生じたかは確認できません。発表後に安値を付けた時刻のみ確認しています
  • 上半期の投資有価証券の銘柄別内訳(9月末)は開示されておらず、保有銘柄の構成は2026年3月末の有報に基づきます
  • 配当方針式の再現に使った税率は有報の法定実効税率で、会社が実際に使った税率は開示されていません

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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