本記事は2026年10月29日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事でわかること
- 上半期の営業利益2億41百万円(前年同期比△79.9%)のうち、前年同期にだけ入っていた「材料費の後払い精算」5億73百万円を除くと、減益率は△61.6%。8割減の半分強は前年の一過性の上乗せがはがれた分、残りは今期の採算悪化
- 減益の中身は、売上の量ではなく「粗利率」。筆者の差し引きでは、粗利率は前年上期の14.5%(特殊要因除き)から12.4%に下がり、営業利益を約4億71百万円押し下げた
- 7〜9月だけを取り出すと、営業利益は4〜6月の7百万円から2億35百万円に戻っている。会社は「値上げの一部は第3四半期以降」と書いており、修正後の通期予想8億円は、下期に上期の約2.3倍(5億58百万円)を置いている
- この会社は過去3期、上期決算の時点で下期の利益を置き直してきた。そのとき置いた下期と実際の下期を並べると、178%(2025年3月期)・ほぼゼロ(2026年3月期、一時費用除きで135%)と、どちらにも大きく外れている
- 純利益予想1億40百万円は、下期の経常利益3億34百万円に対して下期の純利益をマイナス1億85百万円と置いている。米国子会社の事業停止に伴う費用など、下期の特別損失を織り込んだ計算になる
- 配当は年25円で据え置き。修正後の予想EPSで割ると配当性向は76.4%、PERは29倍台、PBRは0.29倍
1. 前提知識:金属の粉を「焼き固めて」部品にする会社
1-1. 何をしている会社か
ファインシンターは、鉄や銅などの金属の粉を金型に入れて高い圧力で押し固め、炉で焼いて固める「粉末冶金(ふんまつやきん)」で部品を作る会社です。溶かした金属を流し込む鋳物や、金属の塊を削り出す切削と違い、最初から部品の形に近いものができるので、削りくずが少なく、同じ形を大量に作るのが得意です。
この記事では、この会社を次の一文で捉えます。
「金属の粉を型で押し固めて焼き、車の部品の形にして自動車メーカーに納める会社。材料と電気の値段が上がった分は、あとから客と話し合って精算するまで、いったん自分で抱えている会社」
前半が強みです。エンジン・変速機・ショックアブソーバー(車の揺れを吸収する部品)の小さな精密部品や、ハイブリッド車のインバーター(電気を制御する装置)に使う磁性部品を、決まった形で大量に作れます。後半が弱みで、粉の材料(鉄・銅など)と焼結炉を動かす電気・ガスの値段は自分では決められず、値上がりした分を部品の値段に乗せるには自動車メーカーとの交渉を経ます。交渉が終わるまでの間、利益は削られます。今回の決算は、この後半の「時間差」が数字にそのまま出た決算です。
用語メモ:粉末冶金(焼結) 金属の粉を型で押し固め、溶ける温度より低い温度で焼いて粉どうしをくっつける製法。形がそのまま製品になるので加工の手間が少ない一方、焼結炉を長時間動かすためエネルギーを多く使う。
1-2. 事業の形
| 事業 | 主な製品 | 上半期売上 | 上半期セグメント利益 |
|---|---|---|---|
| 自動車焼結 | エンジン・変速機・ショックアブソーバー部品、ハイブリッド車用インバーター部品 | 211億58百万円 | 11億69百万円 |
| 鉄道焼結 | 新幹線用ブレーキライニング、パンタグラフのすり板 | 9億56百万円 | 2億16百万円 |
| 油圧機器製品 | 歯科用チェアなどに使う小型油圧ポンプ | 9億98百万円 | 2億18百万円 |
| その他 | 発電・売電、食品 | 5百万円 | △7百万円 |
| 全社費用(調整額) | — | — | △13億55百万円 |
| 連結 | — | 231億19百万円 | 営業利益2億41百万円 |
この表のポイントは2つです。1つ目は、売上の9割超が自動車焼結であること。2つ目は、各事業が合計で約16億円稼いでも、本社の管理費などの全社費用13億55百万円でほとんどが消えることです。事業の利益が少し落ちるだけで、連結の営業利益は大きく振れます。
1-3. 誰に売っているか
会社の「支配株主等に関する事項」(2026年6月24日)によると、トヨタ自動車が議決権の21.5%を持つ「その他の関係会社」で、トヨタ自動車とその海外法人向けの売上は91億60百万円、連結売上の19.8%です(2026年3月期)。トヨタ自動車からは社外取締役が1名就いており、社長もトヨタ自動車の出身です。会社は「製品の販売については総原価を勘案して希望価格を提示し、一般的取引条件と同様に決定する」と書いています。
軸の後半(値上がり分をあとから精算する)は、この「主要顧客との価格交渉」から出てきます。
1-4. 直近の業績推移
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | 経常利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 423億90百万円 | 4億13百万円 | 1.0% | 3億69百万円 | △5億93百万円 | 20円 |
| 2025年3月期 | 427億20百万円 | 6億83百万円 | 1.6% | 4億72百万円 | △2億06百万円 | 20円 |
| 2026年3月期 | 462億06百万円 | 11億95百万円 | 2.6% | 7億54百万円 | △24億14百万円 | 25円 |
| 2027年3月期(修正後予想) | 460億円 | 8億円 | 1.7% | 3億60百万円 | 1億40百万円 | 25円(予想) |
会社は2026年5月27日の開示で、親会社株主に帰属する当期純損失を「6期連続で計上」したと書き、役員賞与を減額しています。営業段階では黒字でも、工場の再編や子会社の減損・撤退などの特別損失で最終赤字が続いてきた会社です。2026年3月期の最終赤字24億14百万円の主因は、米国子会社アメリカンファインシンター(AFS)の事業停止に伴う減損損失と棚卸資産評価損です。
1-5. 会社予想の達成履歴
この会社の予想は、上にも下にもよく動きます。営業利益の推移を並べます(修正の開示日つき)。
| 決算期 | 期初予想 | 期中の修正(開示日) | 実績 | 期初予想比 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 10億円 | 2億円(2022年10月27日)→△11億30百万円(2023年2月2日) | △10億40百万円 | — |
| 2024年3月期 | 8億円 | 修正なし | 4億13百万円 | 51.6% |
| 2025年3月期 | 7億円 | 3億円(2024年11月14日) | 6億83百万円 | 97.6% |
| 2026年3月期 | 9億円 | 15億円(2025年11月5日)→11億95百万円(2026年5月8日、期末後) | 11億95百万円 | 132.8% |
| 2027年3月期 | 12億円 | 8億円(2026年10月28日) | — | — |
2026年3月期は期初比132.8%で着地していますが、このうち5億73百万円は、後で説明する「過年度の材料費の後払い精算」という一度きりの上乗せでした。これを除いた6億22百万円で比べると、期初予想比は69.1%です(筆者の試算)。期初予想に届いた年は、一過性の要因を除くと見当たりません。
1-6. 中期経営計画との距離
2026年5月14日に公表した新中期経営計画「Vision2030」(2027年3月期〜2031年3月期)は、最終年度に売上高450億円、営業利益22億50百万円(営業利益率5.0%)、ROE8.0%を掲げています。
| 時点 | 2027年3月期の営業利益 | 2031年3月期の目標 | 必要な年率の伸び |
|---|---|---|---|
| 中計公表時(2026年5月) | 12億円(期初予想) | 22億50百万円 | +17.0%/年 |
| 今回(2026年10月) | 8億円(修正後予想) | 22億50百万円 | +29.5%/年 |
初年度の予想が3分の1下がったことで、残り4年に求められる伸びは年17%から年29.5%に上がりました(筆者の計算)。会社は今回の修正開示で「5月に公表しました新中期経営計画に沿った取組みを計画的に推進」と書いており、目標の見直しには触れていません。
2. 決算ハイライト(2026年10月28日16時00分発表)
2-1. 損益
| 項目 | 2026年3月期上半期 | 2027年3月期上半期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 230億39百万円 | 231億19百万円 | +0.3% |
| 売上総利益 | 38億25百万円 | 28億75百万円 | △24.8% |
| 売上総利益率 | 16.6% | 12.4% | △4.2pt |
| 販売費及び一般管理費 | 26億22百万円 | 26億34百万円 | +0.5% |
| 営業利益 | 12億02百万円 | 2億41百万円 | △79.9% |
| 経常利益 | 10億03百万円 | 26百万円 | △97.4% |
| 特別利益 | 1億70百万円 | 4億81百万円 | — |
| 特別損失 | — | 1億05百万円 | — |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 9億25百万円 | 3億24百万円 | △64.9% |
売上はほぼ横ばいなのに営業利益は8割減。この食い違いの理由は、売上総利益率が4.2ポイント下がったことにあります(3章で分解します)。
経常利益がほぼゼロまで落ちたのは、営業外で支払利息2億13百万円(前年同期比+14.5%)と為替差損32百万円が出たためです。それでも純利益が3億24百万円残ったのは、特別利益が4億81百万円あったからで、内訳は政策保有株式の売却益3億58百万円(4〜6月)と、タイ子会社の未使用の土地(21,000㎡)の売却益1億23百万円(7〜9月)です。特別損失1億05百万円は、米国子会社の事業停止に向けた特別退職金のうち上半期に帰属する分です。
用語メモ:「会社は次のように書いています(原文)」 利益面については、原材料・エネルギー等の高騰が見込まれるなか、価格適正化の一部が翌期以降となる影響や、米国子会社の事業停止に向けた準備に伴う一時的費用の発生等に加え、本日公表の「特別利益(固定資産売却益)及び特別損失(事業構造改善費用)の計上に関するお知らせ」の影響等も考慮し、下方修正することといたしました。
上は通期予想の修正理由の原文です。決算短信の自動車焼結事業の説明には「コスト上昇分の販売価格への反映の一部が第3四半期以降となった」とあり、修正開示では「価格適正化の一部が翌期以降」とあります。値上げの一部は下期に、さらに一部は来期にずれる、と読めます。
2-2. 通期予想の修正
| 項目 | 期初予想(2026年5月14日) | 修正後(2026年10月28日) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 445億円 | 460億円 | +3.4% |
| 営業利益 | 12億円 | 8億円 | △33.3% |
| 経常利益 | 8億円 | 3億60百万円 | △55.0% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 5億円 | 1億40百万円 | △72.0% |
| 1株当たり当期純利益 | 116円84銭 | 32円72銭 | — |
売上を上げたのは、ハイブリッド車向けなど国内・アジア向けの販売が好調なことと、想定より円安になって海外子会社の売上の円換算が膨らんだためです。利益を下げた理由は上の原文のとおりです。
2-3. 財政状態
| 項目 | 2026年3月末 | 2026年9月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 58億51百万円 | 51億60百万円 | △6億90百万円 |
| 棚卸資産(3科目合計) | 65億63百万円 | 64億71百万円 | △92百万円 |
| 短期借入金 | 82億28百万円 | 64億29百万円 | △17億98百万円 |
| 長期借入金(1年内返済予定を含む) | 90億90百万円 | 109億35百万円 | +18億44百万円 |
| 借入金合計 | 173億18百万円 | 173億64百万円 | +46百万円 |
| 流動負債の「その他」 | 18億62百万円 | 7億71百万円 | △10億91百万円 |
| 純資産 | 150億51百万円 | 146億67百万円 | △3億83百万円 |
| 自己資本比率 | 30.9% | 31.1% | +0.2pt |
ポイントは2つです。
1つ目は、借入金の合計はほとんど変わらず、短期借入金を約18億円減らして、同じくらい長期借入金を増やしたことです。期間の短い借金を長い借金に借り換えた形です。
2つ目は、流動負債の「その他」が約11億円減ったことです。2026年3月期の短信は、この科目が前の期に増えた理由を「中国の連結子会社である精密焼結合金(無錫)有限公司の持分取得により未払債務が増加した」と書いていました。今回の減少がその支払いかどうかは、中間短信にキャッシュ・フロー計算書が載っていないため確かめられません。半期報告書(11月5日提出予定)で確認する点として、カレンダーに入れておきます。
純資産が減ったのは、利益剰余金が2億64百万円増えた一方で、円高寄りへの為替の戻りで為替換算調整勘定が3億35百万円、政策保有株式の売却などでその他有価証券評価差額金が1億87百万円減ったためです。
3. 深掘り:下期に上期の2.3倍を置く予想は、何を前提にしているのか
この記事の問いは1つです。修正後の通期予想(営業利益8億円)は、上期実績2億41百万円に対し、下期に5億58百万円を置いています。この5億58百万円は、どこから来る前提なのか。 3段階で読みます。①前年の数字に入っていた一過性を取り除く、②今期の四半期の動きを見る、③予想が置いた下期を過去の下期と並べる、です。
3-1. 前年同期の12億円には「後払い精算」5億73百万円が入っていた
前年上半期の営業利益12億02百万円について、会社は前年の決算説明で次のように説明しています(書き起こしベース)。過年度に材料の単価が変動した分を販売価格に反映した「特殊要因」が5億73百万円あり、これがなければ上半期の営業利益は「6億円強の実力であった」というものです。2025年11月5日の通期予想の修正開示にも「新たに調整対象となった原材料に係る過年度における単価変動に伴う販売価格への反映」とあります。
つまり前年上期には、過去の材料値上がり分を自動車メーカーから後でまとめて精算してもらったお金が入っていました。軸の後半「値上がり分はあとから客と精算する」が、前年は利益を押し上げる方向に働いたわけです。
| 項目 | 前年上期 | 今期上期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業利益(開示値) | 12億02百万円 | 2億41百万円 | △79.9% |
| 特殊要因5億73百万円を除いた前年 | 6億29百万円 | 2億41百万円 | △61.6% |
前年の特殊要因を除いても、営業利益は6割減っています。8割減のうち、前年の上乗せがはがれた分を差し引いても、今期そのものの採算が大きく悪化したことは変わりません。
用語メモ:特殊要因5億73百万円の扱い 金額は会社の前年の決算説明(書き起こしベース)によるもので、決算短信には金額が書かれていない。今回の決算補足説明資料の増減要因の図にも同じ「573」という数字が出てくるが、図の項目名と数値の対応を文字情報から確定できなかったため、本記事では書き起こしの金額だけを使っている。
3-2. 9四半期を並べると、季節性ではなく「精算の時期」で利益が振れている
累計の決算から筆者が四半期ごとに差し引いた数字です(百万円、四捨五入)。
| 四半期 | 売上高 | 粗利 | 粗利率 | 販管費 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年4〜6月 | 10,465 | 1,136 | 10.9% | 1,256 | △120 | △1.1% |
| 2024年7〜9月 | 10,390 | 1,160 | 11.2% | 1,232 | △71 | △0.7% |
| 2024年10〜12月 | 10,596 | 1,331 | 12.6% | 1,275 | 56 | 0.5% |
| 2025年1〜3月 | 11,269 | 2,126 | 18.9% | 1,307 | 818 | 7.3% |
| 2025年4〜6月 | 10,975 | 1,536 | 14.0% | 1,311 | 225 | 2.1% |
| 2025年7〜9月 | 12,065 | 2,289 | 19.0% | 1,311 | 978 | 8.1% |
| 2025年10〜12月 | 11,702 | 1,544 | 13.2% | 1,279 | 265 | 2.3% |
| 2026年1〜3月 | 11,465 | 1,180 | 10.3% | 1,452 | △272 | △2.4% |
| 2026年4〜6月 | 11,401 | 1,367 | 12.0% | 1,360 | 7 | 0.1% |
| 2026年7〜9月 | 11,718 | 1,509 | 12.9% | 1,274 | 235 | 2.0% |
各期の4四半期の合計は、2025年3月期・2026年3月期の通期の開示値と1百万円以内で一致することを確認しています。
この表のポイントは3つです。
1つ目は、売上高は1四半期あたり104億〜121億円の狭い範囲に収まっているのに、営業利益は△2.7億円から+9.8億円まで動くことです。動いているのは粗利率で、10.3%〜19.0%と9ポイント近い幅があります。販管費は12億〜14億円台でほぼ一定です。この会社の営業利益は、売上の量ではなく粗利率で決まります。
2つ目は、粗利率が跳ねた四半期が2回あることです。2025年1〜3月(18.9%)と2025年7〜9月(19.0%)です。後者は前年の会社説明どおり、5億73百万円の後払い精算が入った四半期です。これを除くと7〜9月の粗利率は約14.9%、営業利益は約4億05百万円になります(筆者の試算)。2025年1〜3月の跳ねについて会社が四半期の理由を示した資料は確認できていないため、ここでは理由を書きません。
3つ目は、同じ月どうしで形がそろっていないことです。1〜3月は2025年に営業利益8億18百万円、2026年に△2億72百万円で、7〜9月も年によって大きく違います。3年並べても毎年同じ四半期が強いという形は出ていないので、季節性とは書けません。 利益が振れているのは、季節ではなく、値上げや精算がいつ入るかのほうだと見るのが自然です。
なお2026年1〜3月の赤字には、中国子会社の機械設備の残存価額(耐用年数の終わりに残ると見込む価値)を取得価額の10%から1%に見直したことによる減価償却費の追加4億08百万円が入っています(2026年3月期短信の注記)。これを除いた1〜3月の営業利益は約1億36百万円です(筆者の試算)。
3-3. 減益は「率」でほぼ説明できる
営業利益の前年差を、①売上の増減(数量効果)、②粗利率の変化(率効果)、③販管費の増減の3つに分けます(筆者の計算)。
| 比べ方 | 数量効果 | 率効果 | 販管費 | 合計=実際の増減 |
|---|---|---|---|---|
| 上期・前年比(開示値) | +13 | △963 | △12 | △961 |
| 上期・前年比(前年の特殊要因を除いた場合) | +95 | △471 | △12 | △388 |
| 7〜9月・前年比(前年の特殊要因を除いた場合) | +34 | △241 | +37 | △170 |
| 7〜9月・前四半期比 | +38 | +104 | +86 | +228 |
単位は百万円。前年の特殊要因5億73百万円は、売上と粗利の両方に入っていたと仮定して除いています(会社は計上科目を開示していないため、筆者の仮定です)。
用語メモ:数量効果・率効果 数量効果=売上の増減×前年の粗利率(売上が増えた分だけ粗利が増える効果)。率効果=今期の売上×粗利率の変化(同じ売上でも粗利率が下がった分だけ粗利が減る効果)。この2つと販管費の増減を足すと、営業利益の増減とぴったり一致する。
この表のポイントは2つです。
1つ目は、前年の特殊要因を除いても、減益のほぼすべてが率効果であることです。売上は増えていて(数量効果はプラス)、販管費もほぼ横ばいです。会社の説明の「原材料価格やエネルギー価格の高騰、労務費の上昇に対して、販売価格への調整…に取り組んだものの、コスト上昇分の販売価格への反映の一部が第3四半期以降となった」と、数字の形は合っています。
2つ目は、7〜9月を4〜6月と比べると、率効果がプラス1億04百万円に転じていることです。粗利率は12.0%から12.9%へ0.9ポイント戻りました。販管費も4〜6月より86百万円少なく、営業利益は7百万円から2億35百万円に戻っています。ただし前年の7〜9月(特殊要因除きで約4億05百万円)にはまだ届いていません。
軸に戻すと、「値上がり分を自分で抱えている期間」の長さが、上期の粗利率の下げ幅になって表れています。値上げが通れば粗利率は戻り、通らなければ戻らない。下期の予想はこの一点にかかっています。
3-4. 自動車焼結の四半期:前年の跳ねを除いても利益率は下がっている
セグメント別も四半期に差し引きます(百万円、筆者の差し引き)。
| 四半期 | 自動車焼結 売上 | 自動車焼結 利益 | 利益率 | 鉄道焼結 利益 | 油圧機器 利益 | 全社費用 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025年4〜6月 | 9,902 | 653 | 6.6% | 198 | 102 | △728 |
| 2025年7〜9月 | 11,048 | 1,436 | 13.0% | 150 | 104 | △713 |
| 2025年10〜12月 | 10,550 | 634 | 6.0% | 140 | 144 | △653 |
| 2026年1〜3月 | 10,395 | 219 | 2.1% | 159 | 103 | △754 |
| 2026年4〜6月 | 10,386 | 444 | 4.3% | 102 | 132 | △672 |
| 2026年7〜9月 | 10,773 | 726 | 6.7% | 115 | 86 | △684 |
各時点で、セグメント利益の合計と調整額(全社費用)を足すと連結営業利益と2百万円以内で一致することを確認しています。
2025年7〜9月の自動車焼結の利益14億36百万円から、特殊要因5億73百万円をすべて自動車焼結のものとして除くと約8億63百万円、利益率は約8.2%です(筆者の試算。会社は特殊要因のセグメント別の内訳を開示していません)。今期の7〜9月は7億26百万円・6.7%なので、前年の跳ねを除いてもなお下にあります。
上期合計で見ると、自動車焼結の利益は前年比△44.0%、特殊要因を除いた前年と比べても△22.8%です。鉄道焼結は、新幹線用ブレーキライニングの前年度の特需の反動で上期△37.6%。油圧機器は上期+6.2%ですが、7〜9月単独では4〜6月の1億32百万円から86百万円に下がっています。4〜6月について会社は「特定の北米顧客が新機種を市場投入開始し、在庫確保のために売上が増加した」と書いており、4〜6月に先行した分が7〜9月に戻った形とも読めますが、7〜9月について会社は理由を書いていないため、ここは筆者の推測にとどめます。
3-5. 予想が置いた下期を、過去の下期と並べる
ここで問いに戻ります。修正後の通期予想から上期実績を引くと、予想が置いた下期が出ます。
| 項目 | 予想が置いた下期 | 前年下期(実績) | 前年下期(償却追加4.08億円除き) | 2年前の下期(実績) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 228億80百万円 | 231億67百万円 | 231億67百万円 | 218億64百万円 |
| 営業利益 | 5億58百万円 | △7百万円 | 4億00百万円 | 8億74百万円 |
| 営業利益率 | 2.44% | △0.03% | 1.73% | 4.00% |
予想は、下期の売上を前年下期より1.2%少なく置き、営業利益率を2.44%に置いています。この利益率は、前年下期(一時的な償却追加を除いて1.73%)よりは高く、2年前の下期(4.00%)よりは低い位置です。今期7〜9月の実績2.0%との比べでは、残り2四半期の平均を7〜9月より約19%高くする置き方です。
下期の利益率を変えたときに通期の営業利益がどうなるかを並べます(筆者の試算)。
| 下期の営業利益率の置き方 | 下期の営業利益 | 通期の営業利益 |
|---|---|---|
| 上期平均並み(1.05%) | 約2億39百万円 | 約4億81百万円 |
| 前年下期並み(償却追加除き1.73%) | 約3億96百万円 | 約6億38百万円 |
| 7〜9月並み(2.00%) | 約4億58百万円 | 約7億00百万円 |
| 会社予想(2.44%) | 約5億58百万円 | 8億円 |
| 2年前の下期並み(4.00%) | 約9億15百万円 | 約11億57百万円 |
下期の売上は会社予想の228億80百万円で固定し、営業利益率だけを動かしています。筆者の試算で、将来の見通しではありません。
この表から読めるのは、会社予想が「7〜9月の利益率に、さらに値上げの効果が少し上乗せされる」ところに置かれていることです。7〜9月並みでとどまれば7億円前後、値上げがまとめて通って2年前の下期の水準まで戻れば11億円台、という幅の中にあります。
3-6. 過去に上期決算で置き直した下期は、どれだけ当たったか
この会社は、2025年3月期・2026年3月期とも、上期決算と同じ日に通期予想を修正しています。そのとき予想が置いた下期と、実際の下期を並べます。
| 決算期 | 上期決算時の通期予想(開示日) | 予想が置いた下期 | 実際の下期 | 達成率 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 3億円(2024年11月14日) | 4億91百万円 | 8億74百万円 | 178.0% |
| 2026年3月期 | 15億円(2025年11月5日) | 2億97百万円 | △7百万円 | — |
| 同(償却追加を除いた場合) | — | 2億97百万円 | 4億00百万円 | 134.9% |
| 2027年3月期 | 8億円(2026年10月28日) | 5億58百万円 | — | — |
2025年3月期は、下方修正で置いた下期を大きく上回りました。2025年1〜3月の粗利率18.9%の四半期が入った年です。2026年3月期は、上方修正で置いた下期に対し、一時的な償却追加を除けば上回りましたが、開示上はほぼゼロで、5月8日(期末後)に通期を11億95百万円へ下方修正しています。
強気の読み方:過去2回とも、上期決算時に置いた下期を、本業の数字では上回っています。今回も値上げが第3四半期以降に入ると会社が明言しており、7〜9月にはすでに粗利率が戻り始めています。
弱気の読み方:過去2回は、置いた下期の水準そのものが2〜5億円と低めでした。今回は5億58百万円と、過去2回より高い位置に置いています。また会社は値上げの「一部が翌期以降」になるとも書いており、下期にすべてが入るわけではありません。2026年3月期のように、期末に一時的な費用が入って着地が下に外れた年もあります。
同じ数字が、強気にも弱気にも置けます。決め手になるのは、10〜12月の粗利率が7〜9月の12.9%からどこまで戻るかです。
3-7. 純利益予想は、下期の特別損失を置いている
最後に純利益です。予想が置いた下期は、経常利益が3億34百万円、親会社株主に帰属する純利益が△1億85百万円です。下期に経常利益が黒字なのに純利益が赤字という置き方なので、下期に特別損失を置いていることになります。
上期の特別損益は差し引き3億76百万円のプラスでした。非支配株主に帰属する利益を通期で上期の2倍(約1億19百万円)と仮置きし、税負担率を3通り置いて、純利益予想に届くために必要な下期の特別損益を逆算します(筆者の試算)。
| 税負担率の置き方 | 必要な通期の税引前利益 | 下期の特別損益(逆算) |
|---|---|---|
| 上期の実績(4.6%) | 約2億71百万円 | 約△4億65百万円 |
| 30% | 約3億70百万円 | 約△3億67百万円 |
| 40% | 約4億31百万円 | 約△3億05百万円 |
非支配株主の取り分と税負担率は筆者の仮置きで、会社が開示した数字ではありません。
下期に3〜4億円台の特別損失を置いた計算です。会社は修正理由に「米国子会社の事業停止に向けた準備に伴う一時的費用の発生等」を挙げていますが、下期に見込む特別損失の金額は開示していません。米国子会社の事業停止は2028年3月末の予定で、2026年4月28日の開示で会社は「来期以降につきましては、割増退職金等の費用が発生する見込み」と書いていました。今期は4〜6月に52百万円、7〜9月に53百万円の特別退職金を計上しています。
用語メモ:上期の税負担率4.6% この会社は中間期の税金を「通期の見積実効税率×税引前利益」で計算している。7〜9月単独の法人税等は約△73百万円(マイナス)で、通期の見積税率を下げ直した結果、4〜6月に計上した税金の一部が戻った形になっている。上期の税負担率4.6%は、会社が今の時点で見込む通期の負担率に近いと読めるが、内訳は開示されていない。
3-8. 3つの段階をつなぐ
ここまでを1本の線にします。前年上期の12億円には、材料の値上がり分を後から精算してもらった5億73百万円が入っていました(3-1)。今期はその逆で、材料と電気の値上がり分を、値上げが通るまで自分で抱えている期間に当たり、粗利率が下がりました(3-2・3-3)。7〜9月には粗利率が戻り始め、会社は下期に7〜9月より約2割高い利益率を置いています(3-5)。
軸の後半「値上がり分は、あとから客と話し合って精算するまで自分で抱えている」は、前年は利益を押し上げ、今年は押し下げました。同じ仕組みが、時期によって逆向きに数字に出ている、というのが今回の決算の読み方です。
4. セグメント・イベント
4-1. 米国子会社の事業停止
2026年4月28日、会社は米国オハイオ州の連結子会社AFSの生産事業を段階的に停止し、他の拠点に移管すると決めました。事業停止は2028年3月末の予定です。AFSの直近5期の業績は次のとおりです(2026年4月28日の開示)。
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 |
|---|---|---|---|
| 2021年3月期 | 47億79百万円 | △1億60百万円 | △2億71百万円 |
| 2022年3月期 | 49億50百万円 | △5億20百万円 | △3億04百万円 |
| 2023年3月期 | 58億27百万円 | △4億12百万円 | △6億59百万円 |
| 2024年3月期 | 70億62百万円 | 1億90百万円 | △27百万円 |
| 2025年3月期 | 59億88百万円 | △1百万円 | △2億31百万円 |
2026年3月期は、有価証券報告書の関係会社の注記によると、売上高56億28百万円、経常損失5億78百万円、当期純損失28億31百万円でした(減損損失を含む)。連結売上の約12%を占める子会社で、5期のうち営業黒字は1期だけです。
強気の読み方:赤字の拠点がなくなれば、連結の利益率は上がる方向に働きます。2026年3月期に機械装置を中心に約18億円を減損しているので、AFSの減価償却費も減っています(4〜6月の連結の減価償却費は6億33百万円で、前年同期の7億73百万円より約1億40百万円少ない)。
弱気の読み方:停止までの2年間は、特別退職金などの費用が続きます。また、AFSで作っていた製品を他の拠点に移す間、移管先の立ち上げ費用や、移管しきれない製品の売上の減少が出る可能性があります。4〜6月の自動車焼結の説明には「米国子会社の主要製品の一部生産打ち切りに伴う減益影響」とあります。
4-2. 資産の売却
今期は、政策保有株式2銘柄の売却(6月、売却益3億58百万円)と、タイ子会社の第2工場用地のうち未使用部分21,000㎡の売却(売却益1億23百万円)が出ています。中計の資本配分では「保有資産の活用」で5年間に38億円を生み出す計画を掲げており、その一部と位置づけられます。どちらも一度きりの利益で、来期以降には続きません。
4-3. 過去の不適切会計とガバナンス
2024年、インドネシア子会社の棚卸資産の架空計上と、国内工場での棚卸資産の廃却先延ばしが明らかになり、2021年3月期〜2024年3月期の決算が訂正されました。名古屋証券取引所は2024年11月22日に改善報告書の提出を求めています。新中計の冒頭で社長は「一昨年発生した不祥事を厳粛に受け止め」と書いています。今回の決算に新たな訂正は出ていません。
5. 資本政策・株主還元
5-1. 配当
| 決算期 | 中間 | 期末 | 年間 | 配当の決め方 | 親会社株主に帰属する当期純利益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | — | — | 40円 | 長期安定配当を基本、業績連動を総合勘案 | 赤字(ROE△3.0%) |
| 2023年3月期 | — | — | 10円 | 同上 | △27億32百万円 |
| 2024年3月期 | — | — | 20円 | 同上 | △5億93百万円 |
| 2025年3月期 | 10円 | 10円 | 20円 | 同上 | △2億06百万円 |
| 2026年3月期 | 10円 | 15円 | 25円 | 同上 | △24億14百万円 |
| 2027年3月期 | 10円(実施) | 15円(予想) | 25円(予想) | 同上 | 1億40百万円(予想) |
2022年3月期〜2024年3月期の年間配当と2022年3月期のROEは新中計の資料の数字で、中間・期末の内訳は本記事では確認していません。
会社の配当方針は「⻑期安定配当を基本⽅針とし、業績連動を総合的に勘案して決定」(会社IRサイト)で、配当性向やDOE(純資産配当率)の数値目標はありません。最終赤字の年にも配当を出してきた会社です。
今期の年間25円を修正後の予想EPS32円72銭で割ると、配当性向は76.4%です。配当総額は自己株式を除いた株数(427万8,573株)×25円で約1億07百万円、9月末の自己資本140億18百万円に対するDOEは約0.76%です(筆者の計算)。
用語メモ:配当総額の検算 前期(2026年3月期)の配当総額は、中間10円×427万923株=約42.8百万円と、期末15円の総額64,190,340円(招集通知)を足して約1億07百万円。短信の「配当金総額106百万円」と一致する(百万円未満切り捨て)。
強気の読み方:利益が予想の4分の1に減っても配当を据え置いています。最終赤字の年にも配当を続けてきた方針と合っています。
弱気の読み方:中計の資本配分では、5年間の株主還元を合計8億円としています。単純に5で割ると年1億60百万円、1株あたり約37円の水準です(筆者の計算)。今の年25円(約1億07百万円)はその範囲内ですが、還元の総枠は営業キャッシュ・フロー180億円の約4%と小さく、資金の大半は成長投資と借入金の返済に充てる計画です。
5-2. 配当の決め方が変わった
2026年6月25日の定時株主総会で定款が変わり、剰余金の配当を取締役会の決議で決められるようになりました(変更後の第40条)。中間配当の基準日は毎年9月30日、期末配当は3月31日と定款に明記されています。あわせて取締役の任期が2年から1年に短くなりました。会社は理由を「機動的な資本政策及び配当政策を図ること」と書いています。
強気の読み方:業績に合わせて配当をすばやく決められます。弱気の読み方:期末配当の議案が株主総会にかからなくなり、株主が配当について議決する機会がなくなります。
期末配当(基準日2027年3月31日(水))の権利付き最終日は、**2027年3月29日(月)**です。
5-3. 株主構成
- トヨタ自動車:議決権の21.5%(2026年3月31日現在、「支配株主等に関する事項」)
- 招集通知の大株主表から読み取れた範囲:カヤバ220千株(5.1%)、千住金属工業204千株(4.7%)、松井証券143千株(3.3%)、あいおいニッセイ同和損害保険56千株(1.3%)、ファインシンター取引先持株会55千株(1.2%)、アイシン52千株(1.2%)など
大株主表の上位の数行は、招集通知のPDFから文字を読み取れなかったため載せていません。自己株式は9月末で14万1,427株(発行済の3.2%)で、論点になる規模ではありません。カヤバ・アイシンはいずれも自動車部品メーカーで、販売先でもあります(2022年3月期の説明資料には主要顧客としてカヤバ・アイシンの名前があります)。
なお、デンソーについて、2023年3月期の有価証券報告書は「当社への出資比率4.57%」と書いていましたが、2025年3月期以降の有価証券報告書は「同社はファインシンターへの出資はなく」と書いています。いつ、どのように手放したかは本記事では確認していません。
5-4. 株主優待
会社は2025年11月の決算説明(書き起こしベース)で「株主優待制度の導入についても検討しており、確定しましたら別途公表します」と述べていました。その後、2026年10月28日までの適時開示の一覧に優待導入の開示は見当たらず、会社IRサイトの配当ページにも優待の記載はありません。本記事では「優待制度はない(導入の開示は確認できない)」と判断しています。会社が「制度がない」と明言したものではなく、当期の有価証券報告書の「株主に対する特典」欄も確認できていません。
5-5. 時価総額と手元資金
| 項目 | 金額 | 1株あたり |
|---|---|---|
| 時価総額(10月28日終値957円、自己株式を除く) | 約40億94百万円 | 957円 |
| 現金及び預金(9月末) | 51億60百万円 | 約1,206円 |
| 現金及び預金−借入金 | 約△122億04百万円 | 約△2,852円 |
| 1株当たり純資産(9月末) | — | 3,276円35銭 |
時価総額は手元の現預金を下回っています。ただし借入金が173億円あり、現預金から借入金を引くと約122億円のマイナスです。現預金は工場の運転資金でもあり、会社が株主に返すと約束しているものではありません。この表は、株主に返す場合に限って意味を持つ計算で、下値の目安と読むかどうかは、借入金の大きさとセットで考える必要があります。
6. 株価の見方
6-1. 株価の基準と発表時刻
決算は2026年10月28日(水)16時00分に発表されました。取引終了(15時30分)の後なので、28日の終値957円(前日比△2円)は決算への反応を含みません。最初に反応が出るのは10月29日(木)の取引です。28日夜の夜間取引(PTS)では18時49分時点で910円(東証終値比△4.91%)でしたが、これは報道ベースの参考値で、取引量が小さく、翌日の東証の値動きと一致するとは限りません。
本記事の株価に依存する数値は、すべて10月28日終値957円を基準にしています。公開前に10月29日以降の終値へ差し替える前提です。
6-2. 株価指標
| 指標 | 値 | 計算 |
|---|---|---|
| 予想PER(会社予想EPS) | 約29.2倍 | 957円÷32円72銭 |
| 予想PER(経常予想×(1−30%)のEPS) | 約16.2倍 | 957円÷約58.9円 |
| PBR | 約0.29倍 | 957円÷3,276円35銭 |
| 予想配当利回り | 約2.61% | 25円÷957円 |
| 時価総額(自己株式を除く) | 約40億94百万円 | 957円×427万8,573株 |
2本目のPERは、経常利益予想3億60百万円に税率30%を当て、特別損益と非支配株主の取り分をゼロとした場合のEPS(約58.9円)で計算した筆者の参考値です。会社予想EPSが小さいのは、下期に特別損失を置いているため(3-7)で、特別損失を置かない場合のPERは16倍台になります。どちらが実態に近いかは、米国子会社の撤退費用が来期以降も続くかどうかで変わります。
6-3. 強気・弱気の材料
強気の材料
- 7〜9月に粗利率が12.0%→12.9%、営業利益が7百万円→2億35百万円に戻り、会社は値上げの一部が第3四半期以降に入ると明言している
- 過去2回、上期決算時に置いた下期を、本業の数字では上回ってきた(3-6)
- 赤字続きの米国子会社が2028年3月末で停止し、減損で減価償却費もすでに減っている
- PBRは0.29倍で、純資産に比べた株価の水準は低い
- 最終赤字の年にも配当を続けてきた
弱気の材料
- 前年の特殊要因を除いても上期の営業利益は6割減で、減益のほぼすべてが粗利率の低下(率効果)
- 値上げの「一部が翌期以降」と会社自身が書いており、下期にすべてが入るわけではない
- 予想が置いた下期の営業利益率2.44%は、7〜9月の実績2.0%より高い
- 期初予想に届いた年が、一過性の要因を除くと見当たらない(1-5)
- 中計の最終年度目標まで、営業利益は年29.5%の伸びが必要になった
- 借入金173億円に対し、支払利息は7〜9月で前年同期比+25.9%(1億15百万円)
- 純利益予想は下期に3〜4億円台の特別損失を置いた計算で、撤退費用が来期以降も続く可能性がある
6-4. 流動性
信用買い残は15万4,200株(10月23日時点、Yahoo!ファイナンス)で、自己株式を除いた株数の約3.6%です。信用売り残はゼロです。日々の出来高は数千株の日が多く(9月18日は1,700株)、まとまった株数を思った値段で売買しにくい可能性があります。
7. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 見るポイント |
|---|---|---|
| 2026年10月29日(木) | 決算発表後の最初の取引日 | 終値と出来高(本記事の株価の差し替え) |
| 2026年10月30日(金)16時 | アナリスト・機関投資家向け決算説明会(オンライン) | 値上げの時期と規模、下期の特別損失の中身、為替前提 |
| 2026年11月5日(木) | 半期報告書の提出予定日 | キャッシュ・フロー計算書(流動負債「その他」の減少が無錫子会社の持分代金の支払いか)、大株主の状況 |
| 2026年12月2日(水) | 中間配当(10円)の支払開始 | — |
| 2027年2月頃 | 第3四半期決算 | 10〜12月の粗利率が12.9%からどこまで戻るか、特別損失の計上 |
| 2027年3月29日(月) | 期末配当(予想15円)の権利付き最終日 | 配当予想の据え置きが続くか |
| 2028年3月末(予定) | 米国子会社AFSの事業停止 | 撤退費用の総額、生産移管後の利益率 |
見るべきKPI
- 四半期の粗利率(7〜9月12.9%。下期の会社予想は営業利益率2.44%に相当)
- 自動車焼結の四半期のセグメント利益率(7〜9月6.7%)
- 特別損失の金額と内容(米国子会社関連)
- 支払利息と借入金の構成(短期から長期への借り換え)
- 中計の目標を見直すかどうか
8. 3行まとめ
- 上半期の営業利益は前年比△79.9%。前年同期に入っていた材料費の後払い精算5億73百万円を除いても△61.6%で、減益のほぼすべてが粗利率の低下によるものです。
- 7〜9月には粗利率が戻り始めており、修正後の通期予想は、下期に7〜9月より約2割高い利益率(2.44%)を置いています。値上げがどこまで下期に入るかで、通期は6億円台から11億円台まで振れうる位置にあります(筆者の試算)。
- 配当は年25円で据え置き、会社予想EPSでの配当性向は76.4%、PERは29倍台、PBRは0.29倍。純利益予想は下期に3〜4億円台の特別損失を置いた計算で、米国子会社の撤退費用の行方が次の焦点です。
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値は、株式会社ファインシンターの決算短信(2025年3月期第1四半期〜2027年3月期第2四半期)、適時開示(業績予想の修正、特別利益・特別損失の計上、連結子会社の事業停止、定款の一部変更、支配株主等に関する事項、新中期経営計画、業績連動報酬の減額ほか)、第77回定時株主総会招集ご通知、会社IRサイトの配当ページに基づき、四半期の数値・3分解・感応度表・逆算は筆者の差し引き・試算です。次の点にご注意ください。2027年3月期第2四半期の決算補足説明資料は文字情報の抽出で項目名と数値の対応を確定できなかったため、増減要因の内訳は使っていません。前年の特殊要因5億73百万円と、株主優待の導入検討の発言は、2025年11月の決算説明会の書き起こし(二次情報)によるもので、原資料をご確認ください。2026年10月30日の決算説明会は執筆時点で未開催で、その内容・質疑応答は一切反映していません。特殊要因が売上・粗利のどの科目に計上されたか、自動車焼結セグメントに帰属するか、油圧機器の7〜9月の減益理由、流動負債「その他」の減少の中身は、会社の開示に基づかない筆者の推測・仮定です。有価証券報告書は本文の直接確認ができず、関係会社の数値・役員関係の記載は有価証券報告書を転載したサイト経由で確認しています。大株主表の上位数行は招集通知から読み取れず、当期の有価証券報告書の「株主に対する特典」欄も未確認です。株価は2026年10月28日終値(東京証券取引所、Yahoo!ファイナンス表示)を基準とし、決算発表(同日16時00分)への反応は含みません。夜間取引(PTS)の価格は報道ベースの参考値で、翌営業日の値動きと一致するとは限りません。年初来高値・安値など株価情報サイトの値はキャッシュの日付が古い可能性があります。会社予想の達成履歴のうち、2023年3月期・2024年3月期の予想値と2025年3月期の期初予想は、株価情報サイト(株予報)の修正履歴で確認したもので、各期の原開示は確認していません。下期の特別損失の見込額は会社が開示しておらず、本文の逆算は筆者の試算であり、見込額や上限を示すものではありません。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。