株式投資

亀田製菓(2220) 新潟で柿の種を焼く米菓屋が、アメリカの煎餅工場も丸ごと買い取った会社 上半期は増益なのに、なぜ1年間の利益予想を3割以上も削ったのか?【2026年11月発表・上半期決算】

本記事は2026年11月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 上半期(4〜9月)は営業利益+24.1%なのに、同じ日に通期の営業利益予想を33.7%も引き下げた理由を、上期と下期に分けて読みます
  • 累計では増益の上半期の内側で、7〜9月の3か月だけ海外事業が5億円超の赤字になっていたこと
  • 下方修正2,800百万円のうち、上期の計画未達はいくらで、下期の見通しの引き下げはいくらか
  • 純利益が△93.4%になった本当の理由(前年の段階取得差益206億円)と、修正後の予想が下期に置いた「重い負担」
  • 「前年同期比+24.1%」と「当初の発表値と比べると+13.0%」という、前年の数字が2通りある理由(企業結合の暫定処理の確定)
  • 予想を削っても配当24円を据え置いたことで、配当性向が35.3%から60.7%に上がった意味と、9月から変わった株主優待

この決算をひとことで言うと

上半期(4〜9月)は、日本のおせんべい事業が値上げの効果でよく稼ぎ、会社全体の本業の儲けは前年より2割多い25億円でした。ところが7〜9月の3か月だけを見ると、昨年買い取ったアメリカの工場で働く人が想定以上に辞めて作れる量が減り、アメリカを含む海外の事業は5億円の赤字になりました。会社は10月から3月までの見通しも引き下げ、1年間の本業の儲けの予想を83億円から55億円へと3分の1ほど減らしました。日本では10月にもう一度値上げをしましたが、その後に買われる量が減っていることも理由に挙げています。ただし、上半期の最終的な儲けが前年の15分の1になったのは、前年にアメリカの会社を買い取ったときの帳簿上の一度きりのお金(約206億円)がなくなったためで、稼ぐ力が15分の1になったわけではありません。配当は1株24円の予定をそのまま据え置きました。次に見るのは、1年でいちばん稼ぐ10〜12月に、アメリカの工場の作れる量が戻ったかどうかと、値上げ後の日本でどれだけ買われる量が減ったかです。


1. 亀田製菓はどんな会社か

軸となる例え:新潟で柿の種を焼く米菓屋が、アメリカの煎餅工場も丸ごと買った

亀田製菓は、お米を仕入れ、生地をつくり、焼いて味をつけ、袋に詰めてスーパーやコンビニの棚に並べるところまでを自分の工場でやっている会社です。「亀田の柿の種」「ハッピーターン」「つまみ種」「無限」シリーズ「こつぶっこ」「技のこだ割り」の重点6ブランドが看板で、国内の米菓の販売金額シェアは2025年度で32.3%と、2位(19.7%)を大きく引き離しています(第1四半期決算補足資料、出所はインテージSRI+)。

そしてこの会社は2025年6月、アメリカで30年以上一緒にやってきた米菓メーカーTH FOODS, INC.(以下THF)を完全子会社にしました。ネバダ州とイリノイ州に工場を持つ、会社の説明では「北米唯一の大規模米菓製造会社」です。それまで持分法(持ち株の割合に応じて利益だけを取り込む方法)で取り込んでいた会社を、売上も費用も丸ごと連結するようになりました。

この記事では、亀田製菓を次の1文で読みます。

「新潟で柿の種を焼く米菓屋が、アメリカの煎餅工場も丸ごと買い取った会社。ただし、原料とエネルギーの値段は自分で決められず、買い取った工場で働く人までは買えない」

強みは、自前の焼き場(工場)と看板ブランドです。国内で3割を超える棚を押さえ、値上げをしても看板ブランドが売れ続けるなら、そのまま利益率が上がります。

弱みは2本あり、層が違います。

弱み数字のどこに出るか
弱み①原料(米・ピーナッツ・油・包装資材)とエネルギーの値段は自分で決められない。値上げで追いかけると、買われる量が減る国内米菓の「率」と「量」のせめぎ合い(今回の修正理由の前半)
弱み②工場の建物と機械は買えても、そこでラインに立つ人までは買えない海外事業の7〜9月の赤字(今回の修正理由の後半)

今回の決算は、弱み①と弱み②がそれぞれ別の事業で同時に顔を出した決算です。この軸は、深掘り・セグメント・株価の見方で回収していきます。

事業の形(2026年3月期・通期)

セグメント外部売上高(百万円)構成比セグメント利益(百万円)利益率中身
国内米菓事業72,30952.4%5,1397.1%亀田製菓単体の米菓と、百貨店・土産物向けのグループ会社
海外事業49,47735.8%1,7923.6%THF(米国)、タイ・カンボジアのOEM、ベトナム・中国の自社ブランド、国内の輸出入
食品事業8,8206.4%4515.1%長期保存食(尾西食品)、植物性乳酸菌、米粉パン、プラントベースフード
その他7,4455.4%1431.9%貨物運送等
連結138,052100.0%7,5285.5%

出所:2026年3月期決算短信の補足情報。「その他」の利益は、短信本文の補足表の値(セグメント間取引の消去を含む)です。

この表のポイントは2つです。1つ目は、THFを丸ごと連結したことで海外事業が売上の3分の1を超えたこと(前の期は17,239百万円で全体の17%)。2つ目は、海外事業の利益率3.6%が、THFを買い取ったときに生まれた「のれん」や「顧客関係資産」などの償却費を差し引いた後の数字だということです。

用語メモ:調整後営業利益 亀田製菓が自社で使っている物差しで、営業利益に、THFの完全子会社化に伴う「のれん償却額等」を足し戻した利益です。買収の会計処理で毎年出てくる償却費を除いて、事業そのものの稼ぎを見るための指標とされています。2026年3月期は営業利益7,528百万円に対し調整後営業利益9,934百万円で、差は2,406百万円でした(短信の「今後の見通し」の表から筆者が差し引き)。決算短信の損益計算書に出てくる数字ではありません。

THFの買収で何が生まれたかは、有価証券報告書の企業結合注記に書かれています。取得原価63,104百万円(もともと持っていた50%の時価31,552百万円+追加取得の対価31,552百万円)、のれん13,827百万円(20年で均等償却)、顧客関係資産16,925百万円(加重平均34年)、商標資産9,845百万円(同37年)です。

業績の推移(有価証券報告書の5期表+短信)

決算期売上高営業利益経常利益純利益EPS(円)ROE自己資本比率1株配当(分割後換算)
2022年3月期85,163—6,0684,41969.887.3%61.3%—
2023年3月期94,992—5,2151,89229.933.0%58.3%18.33円
2024年3月期95,534—6,7982,25735.693.3%58.0%18.67円
2025年3月期103,2625,5006,9165,41785.667.4%61.0%19.00円
2026年3月期138,0527,5287,50124,647389.6927.6%54.7%22.00円
2027年3月期(修正後予想)142,0005,5005,1002,50039.53——24.00円

単位:百万円。売上高〜純利益・EPS・ROE・自己資本比率は2026年3月期の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」。EPSは2026年4月1日の1株→3株の株式分割を遡って反映した値です。営業利益は短信から転記し、2024年3月期以前は今回確認した一次情報で取れていないため空欄にしました。配当は第1四半期決算補足資料の分割調整後の値です。

この表のポイントは、2026年3月期の純利益24,647百万円とROE27.6%が、THFを子会社にしたときの段階取得差益20,598百万円で大きく膨らんでいることです。会社自身も、差益を除いたROEは4.5%と示しています(第1四半期決算補足資料)。有価証券報告書の株価収益率が3.7倍と極端に低いのも同じ理由で、3.7倍×389.69円から逆算した期末株価は約1,442円(分割後換算)です。

連結の「月」の対応表

海外子会社の決算日はそろっていません。有価証券報告書によると、KAMEDA USA、Singha Kameda(タイ)、青島亀田(中国)、LYLY KAMEDA(カンボジア)は12月決算で、その決算日の財務諸表をそのまま使って連結しています。THFとTHIEN HA KAMEDA(ベトナム)は3月決算です。

連結上の期間亀田製菓本体・THF・ベトナムタイ・中国・カンボジア・KAMEDA USA
第1四半期(4〜6月)4〜6月1〜3月
第2四半期(7〜9月)7〜9月4〜6月
上半期4〜9月1〜6月

読み方メモ:今回の主役のTHFは「同じ月」 今回の下方修正の中心であるTHFは3月決算なので、連結上の7〜9月はTHFの7〜9月そのものです。一方、「タイ法人が米国向け輸出の増加とバーツ安で増益」という短信の説明は、タイ法人の1〜6月の数字を指しています。第1四半期決算補足資料の換算レートも、THFは4〜6月の1ドル159.49円、タイは1〜3月の1バーツ4.97円と、月がずれています。

会社予想の達成履歴

決算期開示日区分売上高営業利益経常利益純利益
2026年3月期2025年5月13日期初予想101,0005,5006,9004,000
2026年3月期2025年6月27日修正(THF連結化)137,5007,0007,20024,200
2026年3月期2026年5月13日実績138,0527,5287,50124,647
2027年3月期2026年5月13日期初予想143,0008,3007,7004,300
2027年3月期2026年11月2日修正(今回)142,0005,5005,1002,500
決算期区分上期の売上高上期の営業利益上期の経常利益上期の純利益
2026年3月期期初の上期予想(2025年5月13日)47,0008001,300600
2026年3月期修正後の上期予想(2025年6月27日)64,5001,5001,40020,800
2026年3月期上期実績(2025年10月30日の当初発表)65,7672,1902,18322,283
2027年3月期期初の上期予想(2026年5月13日)69,0003,0002,7001,400
2027年3月期上期実績(2026年11月2日)69,0032,4742,4011,480

単位:百万円。2027年3月期の上期予想は中間決算短信には載っていないため、2026年3月期決算短信の「第2四半期(累計)」欄から取りました。

この2つの表のポイントは2つです。1つ目は、前の期(2026年3月期)は、THFの連結化による修正を除けば、上期も通期も予想を上回って着地していたこと(通期の営業利益は修正後予想7,000百万円に対し7,528百万円)。2つ目は、今期は上期の売上がほぼ計画どおり(+3百万円)なのに、営業利益は計画を526百万円(17.5%)下回ったことです。売上は計画どおりで利益だけが届かなかった、という形です。なお、2025年3月期以前の予想の推移は今回確認できていません。


2. 決算ハイライト(2026年11月2日14時00分発表)

上半期の損益

項目前年上期(確定後)当上期前年比上期予想予想比
売上高65,76769,003+4.9%69,000+3
売上総利益17,95318,641+3.8%——
販管費15,95916,166+1.3%——
営業利益1,9942,474+24.1%3,000△526
経常利益1,9862,401+20.9%2,700△299
特別利益21,1420———
親会社株主に帰属する中間純利益22,2971,480△93.4%1,400+80
1株当たり中間純利益352.53円23.41円—22.13円—

単位:百万円(百万円未満切り捨て)。前年上期は分割後換算のEPSです。

この表のポイントは2つです。1つ目は、営業利益は前年より増えたのに、会社自身の計画には届いていないこと(前年比+24.1%、計画比△17.5%)。2つ目は、純利益だけが計画を上回っていることです。経常利益は計画に299百万円届かないのに純利益が80百万円上回っているのは、税金と非支配株主の取り分が計画より小さかったことを意味します(計画の内訳は開示されていないので、どの項目が小さかったかは分かりません)。

前年の数字が2通りある

用語メモ:企業結合の暫定的な会計処理の確定 会社を買ったとき、買った資産や負債の値打ちの見積もり(取得原価の配分)は、最長1年まで暫定のまま決算に使うことができます。見積もりが固まったら、前年の数字にさかのぼって反映します。亀田製菓は2026年3月期末にTHFの見積もりを確定させ、のれんの一部を顧客関係資産などに組み替えました。

この結果、前年上期の営業利益は、2025年10月30日の当初発表の2,190百万円から1,994百万円に修正されています(売上原価+429百万円、販管費△233百万円)。会社が書いている「前年比+24.1%」は確定後の1,994百万円が分母です。当初発表の2,190百万円と比べると+13.0%です。

前年上期の営業利益値今期2,474百万円との比較
当初発表(2025年10月30日)2,190+13.0%
確定後(今回の短信の前年同期欄)1,994+24.1%

どちらが正しいということではなく、比べる相手が違います。本記事では、会社の開示に合わせて確定後の値を使い、四半期の差し引きもできる範囲で確定後の値で行います。確定による前年の修正は海外事業のセグメント利益だけに出ていて、前年第1四半期で△168百万円、前年上期で△196百万円です(短信の新旧の補足表から筆者が差し引き)。

通期予想の修正(同日14時00分の別開示)

項目期初予想(5月13日)修正後(11月2日)増減増減率前期実績
売上高143,000142,000△1,000△0.7%138,052
営業利益8,3005,500△2,800△33.7%7,528
経常利益7,7005,100△2,600△33.8%7,501
純利益4,3002,500△1,800△41.9%24,647
EPS67.99円39.53円——389.69円

修正の理由は次のとおりです。会社は次のように書いています(原文、「通期業績予想の修正に関するお知らせ」より抜粋)。

国内米菓事業においては、市況は底堅く推移しているものの、中東情勢に端を発した原材料・エネルギー価格の高騰が継続しております。2026 年 10 月より重点ブランドを中心とした価格改定を実施し収益性の改善に取り組んでおりますが、足元では価格改定に伴う数量の減少が見られており、本格的な改定効果の発現は第 4 四半期以降を見込んでおります。

今回は生産効率の低下および追加コストの発生により、TH FOODS,INC.の収益が悪化する結果となりました。一方で、商品に対する需要は引き続き堅調に推移しているものの、供給能力の制約により販売機会の逸失が発生しております。

このほか、THFの生産効率低下の背景として、夏の気温上昇に伴う労働環境の悪化や、周辺企業の賃金上昇などによる採用・定着環境の変化を挙げています。アジアの子会社は「概ね計画通り」、食品事業は「営業利益は計画を上回って推移」とされています。配当予想は修正していません。

なお、2026年5月13日の決算短信は、通期予想について「中東情勢の影響については(中略)本業績見通しには織り込んでおりません」と書いていました。今回の修正理由の国内部分は、期初に織り込んでいなかった要因が現実になった、という形です。

財政状態とキャッシュ・フロー

項目2026年3月末2026年9月末増減
総資産188,223185,124△3,099
現金及び預金20,61218,191△2,421
のれん16,38015,681△699
顧客関係資産19,02118,410△611
借入金(短期+長期)47,22542,416△4,809
純資産106,466106,130△335
自己資本比率54.7%55.5%+0.8pt
キャッシュ・フロー前年上期当上期
営業CF7,0887,149
投資CF△22,148△2,760
財務CF22,956△6,464
減価償却費4,7995,016
のれん償却額439469

単位:百万円。純資産の増減△335は短信本文の記載どおりで、表の2時点の差し引き(△336)とは百万円未満の切り捨てで1ずれます。借入金は短期借入金と長期借入金の合計で、リース債務は含めていません(筆者の合算)。

この2表のポイントは2つです。1つ目は、利益が計画に届かなくても、本業で入ってきた現金(営業CF7,149百万円)は前年並みで、そこから借入を約48億円返したこと。ネットの借入(借入金−現金及び預金)は26,613百万円から24,225百万円に減っています(筆者の差し引き)。2つ目は、純資産が減ったのは利益が出なかったからではなく、海外子会社の純資産を円に換算したときの差額を表す為替換算調整勘定が704百万円(短信本文の記載。2時点の差し引きでは705百万円)減ったためだということです。中間純利益1,480百万円から配当1,075百万円を払い、利益剰余金は405百万円増えています。

一方で、支払利息は上期304百万円で、前年上期の160百万円のほぼ2倍です。7〜9月だけでも159百万円(前年同期99百万円)でした。THFの取得資金の借入は2026年3月に260億円のシンジケートローンへ借り換えられていますが、支払利息が増えた理由(金利か残高の期中平均か)は短信に書かれていません。営業利益より経常利益の伸びが小さい(+24.1%に対し+20.9%)のは、この支払利息の増加が主な理由です。


3. 深掘り:上半期は増益なのに、なぜ1年間の予想を3割以上も削ったのか

上半期の営業利益は前年比+24.1%です。それなのに同じ日に、通期の営業利益予想を8,300百万円から5,500百万円へ33.7%引き下げました。この食い違いを、①上期の内側、②修正額の内訳、③最終利益の段、の3段階で読みます。

3-1. 累計の増益の下に、7〜9月の海外の赤字が埋まっていた

亀田製菓の四半期決算は累計で開示されるので、7〜9月の3か月の数字は、上半期の累計から第1四半期の累計を引いて自分で出すしかありません。

連結上の四半期売上高営業利益営業利益率経常利益
2025年3月期 第1四半期(4〜6月)24,0661,0744.5%2,044
2025年3月期 第2四半期(7〜9月)24,4946942.8%△207
2025年3月期 第3四半期(10〜12月)28,7422,5408.8%4,091
2025年3月期 第4四半期(1〜3月)25,9601,1924.6%988
2026年3月期 第1四半期(確定後)33,8731,4364.2%1,330
2026年3月期 第2四半期(確定後)31,8945581.7%656
2026年3月期 第3四半期(暫定)38,5443,99610.4%4,186
2026年3月期 第4四半期(※)33,7411,3424.0%1,132
2027年3月期 第1四半期35,3702,0615.8%2,108
2027年3月期 第2四半期33,6334131.2%293

単位:百万円。各期の短信の累計値から筆者が差し引き。2026年3月期は第1四半期と上半期だけ確定後の値が開示されています。第3四半期は暫定処理のままの累計どうしの差、第4四半期(※)は確定後の通期から暫定の第3四半期累計を引いた値で、第1〜第3四半期の確定による修正がまとめて入っています。確定後の値で揃えた2026年3月期の下期(10〜3月)合計は、営業利益5,534百万円です。2025年3月期はTHFが持分法の時期で、経常利益に持分法の損益が入っています。

この表のポイントは2つです。

1つ目は、7〜9月は2年続けて1年でいちばん営業利益率が低い四半期で、10〜12月がいちばん高い四半期だということ(今期も7〜9月は4〜6月を大きく下回りました)。7〜9月が弱いのは、夏場はおせんべいが売れにくく、年末に向けて在庫を積む時期だからだと考えられますが、これは筆者の推測で、会社はこの季節性を短信で説明していません。いずれにしても、今期の7〜9月413百万円が小さいこと自体は季節どおりです。

2つ目は、それでも今期の7〜9月は前年の7〜9月(558百万円)を26.0%下回り、会社自身の計画も大きく下回ったことです。上期予想3,000百万円から、第1四半期決算補足資料に載っていた第1四半期の計画1,600百万円を引くと、7〜9月の計画は約1,400百万円です。実績は413百万円でした。

第1四半期(4〜6月)第2四半期(7〜9月)上半期
計画1,6001,400(筆者の差し引き)3,000
実績2,0614132,474
計画との差+461△987△526

4〜6月は計画を461百万円上回り、7〜9月は987百万円下回りました。上半期の「計画比△526百万円」は、この2つの差し引きです。

では、7〜9月に何が起きたのか。セグメント別に引き算します。

セグメント(7〜9月)前年の売上高当期の売上高増減率前年の利益当期の利益
国内米菓事業16,50717,813+7.9%331842
海外事業11,62111,637+0.1%184△538
食品事業1,9692,374+20.6%11134
その他1,7971,808+0.6%33△24
連結31,89433,633+5.5%558413

単位:百万円。外部売上高とセグメント利益(短信の補足表)を、上半期累計から第1四半期累計を引いて筆者が算出。前年は確定後の値です。「その他」の利益はセグメント間取引の消去を含みます。

国内米菓と食品は、7〜9月も前年を大きく上回っています。 国内米菓の利益は331百万円から842百万円へ、利益率は2.0%から4.7%に上がりました。会社は理由を、前期に行った値上げの効果、重点6ブランドへの集中による商品構成の改善、販促費の効率化、生産効率の向上と説明しています。

海外事業だけが、7〜9月に538百万円の赤字になりました。 第1四半期は556百万円の黒字だったので、上半期の累計は18百万円の黒字に残りましたが、3か月で見ると前年の184百万円の黒字から722百万円悪化しています。売上は前年とほぼ同じ(+0.1%)で、会社によるとTHFは上半期に現地通貨(ドル)では減収、円換算では増収です。

ここで軸に戻ります。弱み②「工場の建物と機械は買えても、そこでラインに立つ人までは買えない」が、そのまま数字になったのが7〜9月の海外事業です。会社の説明では、需要は堅調なのに人が辞めて作れる量が減り、売る機会を逃し、限られた生産能力の中で売る商品の構成も変わった。売上が横ばいのまま利益だけが7億円落ちる形は、作れなかった分の売上を他で埋めた一方で、工場の人件費などの固定的な費用と、追加の採用・賃金のコストが乗ったことと整合します(この結びつけは筆者の推測で、会社は7〜9月の費用の内訳を開示していません)。

計算メモ:海外の7〜9月を「調整後」で見ると 海外事業のセグメント利益には、THF買収に伴うのれん・無形資産の償却費などが含まれています。第1四半期決算補足資料によると、第1四半期のその金額は640百万円で、海外事業の調整後の利益は1,196百万円でした。7〜9月も同じ640百万円程度だったと仮定すると、7〜9月の海外事業の調整後の利益は約100百万円になります(△538+640)。これは筆者の試算で、7〜9月の償却額は開示されていません。償却を除いても、4〜6月の約12億円から約1億円に落ちた、という読み方になります。

注記:第1四半期の資料にあった一文 2026年8月7日の第1四半期決算補足資料は、THFについて、想定を上回る需要への増産対応で人件費関連のコストが先行し、製造原価を圧迫していると書いていました。この時点の第1四半期のTHFは増収増益です。今回の修正理由と同じ「人」の論点が、3か月前の資料にも出ていたという事実だけを並べておきます。

3-2. 修正額2,800百万円は「上期の未達」と「下期の取り下げ」に分かれる

前節で、上半期の計画未達は526百万円だと分かりました。では、通期の修正額2,800百万円の残りはどこから来たのか。通期予想から上期を引いて、予想が下期(10〜3月)に置いている数字を出します。

下期(10〜3月)売上高営業利益経常利益純利益営業利益率
期初予想が置いた下期(143,000−上期予想)74,0005,3005,0002,9007.16%
修正後予想が置いた下期(142,000−上期実績)72,9973,0262,6991,0204.15%
前年の下期(確定後)72,2855,5345,5152,3507.66%
前々年の下期54,7023,7325,0794,6236.82%

単位:百万円。筆者の差し引き。前々年(2025年3月期)はTHFが持分法の時期です。2024年3月期以前の下期は今回取れていないため、2期分の比較です。

ここから、修正額は次のように分かれます。

営業利益の修正△2,800の内訳金額割合
上期の計画未達(2,474−3,000)△52619%
下期の見通しの引き下げ(3,026−5,300)△2,27481%
合計△2,800100%

修正額の約8割は、まだ来ていない下期の分です。 上期の未達をそのまま通期に持ち越しただけなら修正は526百万円で済みました。会社は、7〜9月に起きたことが10〜3月にも続く(あるいは10月の値上げで新しく起きる)と見て、下期を2,274百万円引き下げたことになります。

修正が置いた下期を、3つの物差しで過去と比べます。

物差し前々年の下期前年の下期期初予想の下期修正後予想の下期
下期÷上期(営業利益)2.11倍2.78倍1.77倍1.22倍
下期の営業利益率6.82%7.66%7.16%4.15%
下期の売上の前年比——+2.4%+1.0%

この表のポイントは2つです。

1つ目は、修正後の下期は、売上は前年並み(+1.0%)を置いたまま、営業利益率を前年の7.66%から4.15%に落としていることです。売上を大きく減らす見通しではなく、同じくらい売っても利益が残らない、という置き方です。

2つ目は、下期の営業利益3,026百万円は、前年の10〜12月の3か月(暫定の値で3,996百万円)よりも小さいことです。3-1で見たとおり、この会社は10〜12月に1年でいちばん稼ぎます。修正後の予想は、その10〜12月を含む6か月の合計で、前年の10〜12月1四半期分にも届かない数字を置いています。ちなみに前年の下期の営業利益5,534百万円に対しては△45.3%です。

軸で読むと、この下期の置き方には2つの弱みが重なっています。

  • 弱み①(原料とエネルギーの値段を自分で決められない):国内米菓は10月から重点ブランドを中心に値上げしましたが、会社は足元で数量が減っていると書いています。10月は1年で最も稼ぐ四半期の初月です。値上げで1袋あたりの儲けを戻そうとした月から、買われる量が減り始めた、という形です。会社は値上げの本格的な効果は第4四半期(1〜3月)以降としています
  • 弱み②(工場の人までは買えない):THFの対策(賃金水準の見直し、採用の強化、人材育成、ライン全体の効率化)の効果は、会社によると第4四半期以降に段階的に出る見込みです。つまり10〜12月は、まだ人が戻りきっていない工場で年末商戦を迎える前提です

セグメント別の修正後の通期予想は開示されていないため、下期の2,274百万円の引き下げを国内米菓と海外にどう割り振っているかは分かりません。修正理由の文章が国内米菓と海外の両方を挙げ、食品は計画を上回っているとしていることから、引き下げは国内米菓と海外に置かれていると読めますが、配分は11月13日の決算説明会資料を待つ必要があります。

読み方メモ:「進捗率45.0%」は分母が縮んだだけ 上期の営業利益2,474百万円は、修正後の通期予想5,500百万円に対して45.0%です。前年の上期の進捗率26.5%(1,994÷7,528)、前々年の32.1%(1,768÷5,500)より高く見えますが、これは分母の通期予想が小さくなったためです。期初予想8,300百万円に対しては29.8%で、前年とほぼ同じ水準でした。

3-3. 最終利益の段:前年の206億円と、下期に置かれた「重い負担」

前節までは営業利益の話でした。最後に、純利益(親会社株主に帰属する中間純利益)の段を見ます。ここには「見え方が誤解を生む数字」が2つあります。

1つ目は、純利益△93.4%の正体です。 前年の上半期には、THFを完全子会社にしたことによる段階取得差益20,598百万円と、米国子会社Mary's Gone Crackersの株式売却益543百万円が特別利益に入っていました。

用語メモ:段階取得に係る差益 持分法で持っていた会社を買い増して子会社にするとき、もともと持っていた分の株式を、その時点の時価で売って買い直したものとみなして会計処理します。そのときの帳簿価額と時価の差額が「段階取得に係る差益」です。THFでは、もともと持っていた50%の時価31,552百万円と帳簿価額の差20,598百万円がこれに当たります。現金が入ってくる利益ではありません。

この2つの一度きりの利益を前年の上半期から除くと、純利益は約1,156百万円です(22,297−20,598−543。特別利益に係る税金や非支配株主の取り分の調整はしていない、筆者の粗い差し引きです)。今期の1,480百万円は、これと比べれば増えています。会社の第1四半期決算補足資料も、第1四半期について「一過性の影響を除くと実質増益」と書いていました。

2つ目は、修正後の予想が下期に置いた「重い負担」です。 純利益を経常利益で割ると、税金と非支配株主の取り分、特別損益がどれだけ差し引かれているかが分かります。

期間経常利益純利益経常から純利益までに差し引かれる割合
今期の上期実績2,4011,48038.4%
期初予想の通期7,7004,30044.2%
修正後予想の通期5,1002,50051.0%
修正後予想が置いた下期2,6991,02062.2%
前年の下期(確定後)5,5152,35057.4%
前年の通期(段階取得差益を除く)7,5014,04946.0%
前年の通期(段階取得差益と株式売却益535を除く)7,5013,51453.2%

単位:百万円。筆者の差し引き。前年の通期は純利益24,647百万円から段階取得差益20,598百万円だけを除いた値です。法定実効税率は30.4%(2026年3月期有価証券報告書)。

この表のポイントは2つです。1つ目は、修正後の予想が下期の経常利益2,699百万円のうち62.2%が純利益に残らない、と置いていることです。2つ目は、前年の下期も57.4%と高かったことです。前年の下期は減損損失(通期で1,011百万円)などの特別損失が入っていました。

なぜ下期にこれほど重い負担を置いているのかは、会社は説明していません。考えられる読み方は2つあります(どちらも筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません)。

  • 固定的な費用が税金の計算で引けない読み方:のれんの償却費は、多くの場合、税務上の費用になりません。利益が小さくなると、こうした固定的な項目の重みが相対的に大きくなり、税負担率が上がります
  • 特別損失を置いている読み方:前年の下期と同じように、減損や固定資産の処分損などの特別損失を、予想の中にある程度置いている可能性です。9月16日に開示したインドの持分法適用会社(KAMEDA LT FOODS)の全株式の譲渡(10月下旬に実行予定)について、会社は業績への影響を「軽微」としています

どちらの読み方でも、修正後の純利益2,500百万円には、営業利益の引き下げに加えて、下期の最終利益の段で慎重な前提が置かれている、という点は共通です。

読み方メモ:純利益が経常利益の半分を下回る会社のPER 修正後の純利益予想は経常利益予想の49%しかありません。このような会社では、会社予想EPSで計算したPERだけを見ると割高に見えやすくなります。株価の見方の節で、会社予想EPSのPERと、経常利益に法定実効税率を当てたPERを並べます。

3-4. 3つの段をつなぐと

ここまでの3段階をつなぐと、次のようになります。

  • 上期の内側:4〜6月は計画を上回ったが、7〜9月に海外が赤字になり、上期の営業利益は計画を526百万円下回った(弱み②)
  • 修正額の内訳:通期の修正2,800百万円の約8割は、まだ来ていない下期の引き下げ。1年で最も稼ぐ10〜12月を含む下期に、前年の10〜12月にも届かない営業利益を置いた(弱み①と②が同時に効く前提)
  • 最終利益の段:純利益の△93.4%は前年の206億円の反動で、稼ぐ力の低下を示す数字ではない。一方で修正後の予想は、下期の経常利益の6割以上を税金などで差し引く慎重な置き方をしている

「上期は増益なのに、なぜ3割以上削ったのか」への答えは、上期の増益は前年の低い7〜9月と国内米菓の値上げ効果に支えられたもので、会社は下期に、海外の生産の回復の遅れと国内の値上げ後の数量減が、年末商戦に重なると見た、ということになります。


4. セグメント別の解説

国内米菓事業:値上げの効果が出た上期と、もう一度値上げした下期

国内米菓事業前年上期当上期増減率
外部売上高34,15636,048+5.5%
セグメント利益1,3272,289+72.6%
利益率3.9%6.3%+2.5pt

上期の国内米菓は、前期の値上げの効果と、重点6ブランドへの集中、販促費の効率化、生産効率の向上で、利益を7割以上伸ばしました。重点6ブランドのうち「亀田の柿の種」「ハッピーターン」「技のこだ割り」が前年を上回り、「つまみ種」「無限」シリーズ「こつぶっこ」が下回りました。今期は「亀田の柿の種」が発売60周年、「ハッピーターン」が50周年で、周年施策に力を入れています。

軸の強み「焼き場と看板」が数字に出たのがこの上期です。値上げをしても看板ブランドが売れ続け、1袋あたりの儲けが戻りました。

ところが下期は、原料・エネルギー価格の上昇が続き、10月にもう一度値上げをしたところで、買われる量が減り始めています。値上げで率を取り戻すと量が減る、というのが弱み①の本体です。前回の値上げでは、量の減りを看板ブランドが吸収しました。今回も同じように吸収できるかが、下期の国内米菓の焦点です。

第1四半期決算補足資料には、通期の調整後営業利益の増減要因として、原材料単価で△1,290百万円、物流費で△260百万円などのコスト増を、増収効果+2,000百万円などで吸収する計画が載っていました。今回の修正で、この計画のどこが崩れたかは、決算説明会資料(11月13日掲載予定)で確認する必要があります。

海外事業:THFの「作れない」問題

海外事業前年上期当上期増減率
外部売上高23,77124,921+4.8%
セグメント利益36218△95.0%

上期の海外事業は、売上は増えたものの利益はほぼゼロでした。3-1で見たとおり、7〜9月だけで538百万円の赤字です。

会社の説明を整理すると、次のようになります。

  • THF(米国):クラブストア(会員制の倉庫型店舗)向けや自社ブランド「CRUNCHMASTER」の需要は堅調。ただし工場で人が想定以上に辞め、生産効率が落ちて作れる量が制約され、販売機会を逃した。限られた生産能力の中で販売構成も変わり、収益性に影響した。上期は現地通貨で減収、円換算で増収
  • アジア:中国法人は国内販売が計画を下回り減益。タイ法人は米国向け輸出の増加とバーツ安で増益。地域全体では増益(タイは12月決算なので、連結上の上期はタイの1〜6月)

注記:「需要は堅調」をどう読むか 会社は、今回の影響は主に供給能力の制約によるもので、需要は堅調だと書いています。需要が落ちたのではなく作れなかった、という説明です。作れる量が戻れば売上と利益も戻る、という読み方ができる一方で、人を集めるための賃金の引き上げは、作れる量が戻った後も費用として残ります。どちらの面が大きいかは、第3四半期以降の海外事業の利益で確かめるしかありません。

中長期成長戦略2030 Update(2025年11月10日)では、THFの売上高を2025年度252百万ドル→2027年度280百万ドル→2030年度360百万ドル、営業利益を28百万ドル→36百万ドル→41百万ドルとする計画が示されていました。なお、インドの米菓事業(KAMEDA LT FOODS、49%出資の持分法適用会社)は、9月16日に全株式を合弁相手のLT Foodsに譲渡すると発表しています。

食品事業:計画を上回る唯一のセグメント

食品事業前年上期当上期増減率
外部売上高4,1554,400+5.9%
セグメント利益152230+51.1%

長期保存食(尾西食品)は個人需要・官公需ともに高水準で売上が前年を上回りましたが、利益は減益でした。植物性乳酸菌の増益と、米粉パン・プラントベースフードの収益改善で、全体では増益です。修正の開示でも、食品事業は営業利益が計画を上回って推移しているとされています。規模はまだ小さく、全社の下期の引き下げを埋めるほどではありません。

中長期成長戦略との距離

指標2024年度実績2025年度2026年度(今期)2027年度目標2030年度目標
連結売上高1,032億円1,381億円(実績)1,420億円(修正後予想)1,470億円1,600億円
営業利益55億円75億円(実績)55億円(修正後予想)90億円120億円
調整後営業利益55億円99億円(実績)開示なし115億円145億円

出所:中長期成長戦略2030 Update(2025年11月10日)の表、2026年3月期決算短信。億円未満は四捨五入。この会社の「2026年度」は2027年3月期(今期)です。

修正後の営業利益55億円から、2027年度(2028年3月期)の目標90億円に届くには、来期1年で+63.6%が必要です(筆者の計算)。今回の修正では調整後営業利益の予想は開示されていません。のれん償却等が期初予想と同じ約24億円(期初予想の調整後107億円−営業利益83億円)だと仮定すると、修正後の調整後営業利益は約79億円で、2027年度目標の115億円まで+45.6%です(筆者の試算で、会社の開示ではありません)。

中計は、今期を「北米構造改革」と「国内米菓事業の持続成長」の時期と位置付けていました。今回の修正は、その両方で計画より遅れが出たことを示しています。中計の目標を見直すかどうかについて、今回の開示は触れていません。


5. 資本政策・株主還元

配当:予想を削っても24円を据え置いた

決算期1株配当(分割後換算)配当性向配当の決め方(会社の方針)
2023年3月期18.33円61.3%安定配当、連結配当性向30%目安
2024年3月期18.67円52.3%同上
2025年3月期19.00円22.2%同上
2026年3月期22.00円5.6%(段階取得差益を除くと34.4%)2025年11月から「連結配当性向35%を目安に累進配当」
2027年3月期(予想)24.00円期初予想ベース35.3% → 修正後予想ベース60.7%同上

出所:第1四半期決算補足資料(配当と配当性向)、中長期成長戦略2030 Update(方針)。修正後の配当性向は筆者の計算(24÷39.53円)。

この表のポイントは2つです。

1つ目は、配当方針が2025年11月に「累進配当」に変わっていたことです。中長期成長戦略2030 Updateは、累進配当を「1株当たり配当金について、前年度実績に対して配当維持又は増配を行う」ものと説明しています。今期の24円は前期の22円(分割後換算)から+9.1%で、今回の下方修正でも据え置かれました。累進配当の方針のもとでは、利益が減っても前年の22円を下回らないことが方針上の下限になります。

2つ目は、据え置いた結果、配当性向が35.3%から60.7%に上がったことです。同じ数字は強気にも弱気にも置けます。強気の側に置けば、方針どおり配当を守った、という事実です。弱気の側に置けば、目安の35%を大きく超えた配当を、来期以降も累進配当で維持し続けるには、利益の回復が必要だという事実です。どちらの読みも、数字は24円と60.7%で同じです。

読み方メモ:段階取得差益は配当の計算から外されている 2026年3月期の期末配当を43円から51円(分割前)に引き上げたとき、会社は、1株当たり配当金を段階取得差益の影響を含まない2025年5月13日公表の1株当たり当期純利益(189.72円、分割前)を基に算出したと書いています。2025年6月に純利益予想を4,000百万円から24,200百万円に引き上げたときも、差益は現金を伴わないとして配当予想を変えませんでした。一度きりの帳簿上の利益を配当に回さない、という扱いが一貫しています。

なお、会社IRサイトの「配当情報」のページ(2026年11月4日に筆者が確認)は、2026年3月期の期末配当を「43(予定)」のまま掲載しており、2月18日の増配(51円)と、2025年11月の累進配当の方針が反映されていませんでした。本記事は決算短信と適時開示の値を使っています。

中間配当5円は2026年12月2日に支払開始の予定です。期末配当19円の基準日は2027年3月31日(水)で、権利付き最終日は2027年3月29日(月)です(受渡しが2営業日後となる現在の決済ルールでの筆者の計算)。

株式分割:比べるときは3で割る

2026年4月1日に1株を3株に分割しました(発行済株式数22,318,650株→66,955,950株)。短信の前年の1株当たりの数字はすべて分割後に換算されています。配当でいえば、分割前の年66円は分割後の22円です。今期の予想24円は分割前の72円に当たり、短信にもその旨の注記があります。分割の前後で株数以外の資本の構成は変わっていません。自己株式は2026年9月末で3,706,890株(発行済の5.5%)です。期首から90株増えていますが、自己株式の取得に関する適時開示は出ておらず、単元未満株の買取りの範囲とみられます。短信の潜在株式調整後1株当たり中間純利益は「-」です。

株主優待:9月末基準から「通販クーポン」に変わった

亀田製菓は年1回、9月30日時点で100株以上を持つ株主に優待を贈っています。2026年2月18日の開示で、株式分割に合わせて内容が変わり、2026年9月30日基準の分から新しい制度になりました。有価証券報告書の「株主に対する特典」欄と会社IRサイトの株主優待ページは、新しい制度の内容で一致しています。

保有株式数旧制度(2025年9月基準まで)新制度(2026年9月基準から)
100〜299株製品1,000円相当(〜999株)通販クーポン500円相当
300〜499株同上通販クーポン1,000円相当
500〜999株同上通販クーポン2,000円相当
1,000〜2,999株製品3,000円相当(1,000株以上)通販クーポン3,000円相当
3,000株以上同上通販クーポン4,000円相当

新制度のクーポンは、会社の公式通信販売「通販いちば」で使えるもので、有効期限は発行から1年間、配送料は無料と会社IRサイトに書かれています。贈呈は12月中旬頃です。

読み方メモ:分割前から持っている人は同じ金額 分割前に100株を持っていた人は、分割後300株になります。旧制度では製品1,000円相当、新制度では300株の区分でクーポン1,000円相当で、金額は同じです。一方、分割後に新しく100株を買う人は500円相当です。中身は「製品の詰め合わせ」から「通販で使えるクーポン」に変わりました。

株価1,260円(2026年11月4日終値)で、区分ごとの名目の利回りを出すと次のとおりです。

保有株式数必要な金額優待1株あたり優待額優待の名目利回り配当を含めた名目利回り
100株126,000円500円5.00円0.40%2.30%
299株376,740円500円1.67円0.13%2.04%
300株378,000円1,000円3.33円0.26%2.17%
500株630,000円2,000円4.00円0.32%2.22%
1,000株1,260,000円3,000円3.00円0.24%2.14%
3,000株3,780,000円4,000円1.33円0.11%2.01%

筆者の計算。配当は修正後の年24円を使っています。

この表のポイントは2つです。1つ目は、1株あたりの優待額は100株が最も大きく(5.00円)、区分の境目の直前(299株、499株、999株など)で小さくなることです。100株から299株までは、買い増しても優待は500円のままです。2つ目は、優待の名目利回りは最大でも0.40%で、配当利回り1.90%のほうがずっと大きいことです。

「名目」と書いたのは、クーポンは「通販いちば」での買い物にしか使えず、有効期限が1年あるためです。もともと亀田製菓の商品を買う人には額面に近い価値がありますが、通販で買う予定がない人には、使い切るための買い物が必要になります。また、会社にとってのコストは、通販で売れた商品の原価に近い金額になると考えられ、額面の金額がそのまま会社の費用になるわけではありません(筆者の推測)。

次の基準日は2027年9月30日(木)で、権利付き最終日は2027年9月28日(火)です(筆者の計算)。保有期間の条件は、会社IRサイトと有価証券報告書のどちらにも書かれていません。

財務制限条項:純資産は基準を約316億円上回る

THFの取得資金の借入は、2026年3月に260億円・10年のシンジケートローン(アレンジャーは第四北越銀行とみずほ銀行)に借り換えられました。この契約には財務上の特約が付いています。

条項基準2026年9月末の実績
純資産の維持各本決算期末・中間期末の連結純資産が、直前の本決算期末または2025年3月期末の純資産の大きい方の70%以上基準74,526百万円(106,466×70%)に対し106,130百万円
営業損益本決算期の連結営業損益で、2期連続して営業損失を計上しない2027年3月期の修正後予想は営業利益5,500百万円

基準は筆者が条項の文言から計算しました。今回の下方修正の後でも、純資産は基準を約316億円上回っており、営業利益も黒字の予想です。条項に抵触する状況ではありません。

借入の構成

2026年9月末の借入は、短期6,981百万円、長期35,435百万円の計42,416百万円で、上期に4,809百万円減りました。上期の営業CF7,149百万円から投資CF2,760百万円を引いた4,389百万円(筆者の計算)を、ほぼそのまま借入の返済に回した形です。


6. 株価の見方

株価の基準点(2026年11月4日終値)

項目値
終値(11月4日)1,260円
時価総額約844億円(発行済株式数66,955,950株×1,260円)
予想PER(修正後のEPS 39.53円)31.9倍
予想PER(期初予想のEPS 67.99円、参考)18.5倍
予想PER(修正後の経常利益×(1−30.4%)÷期中平均株式数)22.5倍
PBR(9月末のBPS 1,623.10円)0.78倍
予想配当利回り(年24円)1.90%
年初来高値・安値1,538円(4月7日)・1,165円(6月2日)

株価はYahoo!ファイナンスと株探の公開ページ、PER等は筆者の計算です。経常利益を使ったPERは、修正後の予想が経常利益の51%を税金などで差し引いているため、法定実効税率30.4%だけを当てた場合の参考値として並べました。

発表日の値動き

決算と通期予想の修正は、2026年11月2日(月)の14時00分に同時に発表されました。この日の株価は、始値1,374円、高値1,470円、安値1,231円、終値1,304円で、前営業日(10月30日)の終値1,377円から73円(5.30%)下がりました。出来高は1,435,600株で、10月がおおむね十数万〜数十万株(10月29日の約112万株を除く)で推移していたのに比べて膨らんでいます。14時00分の発表は取引時間中で、この日の高値・安値がそれぞれ発表の前と後のどちらで付いたかは、筆者は確認できていません。翌3日は文化の日で休場、4日(水)の終値は1,260円(前日比△44円、3.37%)で、10月30日の終値からは8.5%の下落です。

複数の見方

強気の側に置ける材料

  • 国内米菓は上期に利益を7割以上伸ばし、7〜9月だけでも前年の331百万円から842百万円に増えた。値上げしても看板ブランドが売れ続けた上期の実績がある(軸の強み)
  • THFについて会社は、需要は堅調で、問題は作れる量だと説明している。作れる量が戻れば、販売機会の逸失も戻る余地がある
  • 本業で入ってくる現金(上期の営業CF7,149百万円)は前年並みで、借入を返しながら配当を出している。財務制限条項にも十分な余裕がある
  • 累進配当の方針のもと、予想を削っても配当24円(前期比+2円)を据え置いた
  • 修正後の予想は下期の経常利益の6割超を税金などで差し引く慎重な置き方で、PBRは0.78倍

弱気の側に置ける材料

  • 7〜9月の海外事業は538百万円の赤字。人を集めるための賃金の引き上げは、作れる量が戻った後も費用として残る(軸の弱み②)
  • 国内米菓は10月の値上げ後に数量が減っており、会社は値上げの本格的な効果を第4四半期以降としている。1年で最も稼ぐ10〜12月がその前に来る(軸の弱み①)
  • 修正額の約8割は下期の見通しの引き下げで、下期に置いた営業利益は前年の10〜12月の3か月にも届かない
  • 修正後のEPSで見るとPERは31.9倍。配当性向は60.7%に上がり、目安の35%を大きく超えている
  • 支払利息は前年のほぼ2倍。中計の2027年度の営業利益目標90億円まで、来期に+63.6%が必要

両方に置ける材料

  • 配当性向60.7%:配当を守ったという事実(強気)と、利益の回復なしには目安から離れたままになる事実(弱気)は、同じ数字です
  • 下期の重い税負担の置き方:予想が慎重すぎるなら上振れの余地(強気)、特別損失などを見込んでいるならその中身が分からないこと(弱気)

株価は、修正の翌営業日を含めて10月末から8.5%下がりました。市場がこの修正を一時的な「作れない」問題と見るか、賃金と原料の構造的な上昇と見るかは、次の四半期の数字で分かれると考えます。


7. 今後のカレンダーと見るべきKPI

日付イベント
2026年10月下旬(予定)インドの持分法適用会社の全株式譲渡の実行(11月4日時点で完了の開示は確認できていない)
2026年11月10日(火)半期報告書の提出予定
2026年11月13日(金)機関投資家・アナリスト向け決算説明会(Zoom)。説明資料は当日開催前に会社サイトに掲載予定
2026年12月2日(水)中間配当(5円)の支払開始予定
2026年12月中旬頃株主優待(9月30日基準、新制度の初回)の贈呈
2027年1月下旬(例年)第3四半期決算。前期は1月30日13時30分
2027年3月29日(月)期末配当の権利付き最終日(筆者の計算)
2027年5月中旬(例年)通期決算と2028年3月期の予想

見るべきKPI

  • 10〜12月の海外事業のセグメント利益:7〜9月の△538百万円から黒字に戻るか。前年の10〜12月は暫定の値で982百万円の黒字でした
  • 10〜12月の連結営業利益:修正後の下期予想3,026百万円に対して、最も稼ぐ四半期でどこまで積むか。前年の10〜12月は3,996百万円(暫定)
  • 国内米菓の数量:10月の値上げ後の数量減がどの程度か。説明資料の重点ブランドの売上の前年比、インテージSRI+の市場と自社の販売の比較
  • THFの人員と生産の回復:会社が挙げた賃金見直し・採用強化・人材育成・ライン効率化の進み具合(説明資料・説明会で確認)
  • 調整後営業利益の修正後の予想:今回の短信と修正の開示には載っていません。説明資料に出るか
  • 下期の特別損益と税負担:修正後の予想が置いた下期の負担62.2%が、実績でどうなるか

8. 3行まとめ

  • 上半期の営業利益は前年比+24.1%だが、会社の計画には526百万円届かなかった。累計の内側では、7〜9月に海外事業が538百万円の赤字になっていた。工場の機械は買えても、ラインに立つ人までは買えなかった
  • 通期の営業利益予想の修正△2,800百万円のうち約8割は、まだ来ていない下期の引き下げ。1年で最も稼ぐ10〜12月を含む下期に、前年の10〜12月の3か月にも届かない利益を置いた
  • 純利益の△93.4%は前年の段階取得差益206億円の反動。配当は累進配当の方針で24円を据え置き、配当性向は60.7%に上がった。次の10〜12月で、海外の作れる量と国内の値上げ後の数量を確かめる

免責事項

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資の勧誘や助言を目的としたものではありません。数値は、亀田製菓の2027年3月期第2四半期(中間期)決算短信・通期業績予想の修正に関するお知らせ(いずれも2026年11月2日)、2027年3月期第1四半期決算短信(2026年7月31日)、2027年3月期第1四半期決算補足資料(2026年8月7日)、2026年3月期決算短信(2026年5月13日)、2026年3月期の各四半期決算短信、2026年3月期有価証券報告書(2026年6月19日提出)、中長期成長戦略2030アップデートに関するお知らせ(2025年11月10日)、株式分割・株主優待制度の変更・配当予想の修正・シンジケートローン契約・持分法適用関連会社の異動に関する各適時開示、会社IRサイトによります。株価はYahoo!ファイナンス・株探の公開ページ(2026年11月4日終値)によります。「筆者の差し引き」「筆者の計算」「筆者の試算」と記した数値は一次情報から筆者が算出したものです。以下の点にご留意ください。

  • 2027年3月期第2四半期の決算補足資料・決算説明会資料は、執筆時点(2026年11月4日)で会社サイトに掲載されておらず、本記事に反映していません。説明資料は11月13日の説明会当日に掲載予定とされています。当四半期についての会社の追加説明・説明会の質疑応答は一切反映していません
  • 中間決算短信の範囲で書いており、半期報告書(11月10日提出予定)は確認していません
  • 2026年3月期の第3四半期・第4四半期の単独の数字は、企業結合の暫定的な会計処理の確定前後の値が混在しており、本文の表の注記のとおり幅をもって見る必要があります。2025年3月期以前の会社予想の推移と、2024年3月期以前の営業利益・下期の数字は今回確認できておらず、比較は2期分にとどめています
  • 7〜9月の海外事業の調整後の利益(約100百万円)は、第1四半期ののれん・無形資産の償却額等640百万円が7〜9月も同額と仮定した筆者の試算で、会社の開示ではありません。修正後の調整後営業利益(約79億円)も、償却額等を期初予想の差(約24億円)と同額と仮定した筆者の試算です
  • 次の記述は筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません:7〜9月が季節的に弱い理由、7〜9月の海外事業の利益の落ち込みと固定費・追加コストの結びつき、修正後の予想が下期に置いた重い負担の理由(のれん償却の税務上の扱い、特別損失の見込み)、優待のクーポンの会社にとってのコスト。確認先は会社IR、決算説明会資料、次回の決算です
  • セグメント別の修正後の通期予想は開示されておらず、下期の引き下げの事業別の配分は推定していません
  • 2026年11月2日の株価の高値・安値の時刻は確認できておらず、値動きが14時00分の発表の前後どちらで生じたかは確認できていません
  • 優待の利回りは額面ベースの名目値で、クーポンの利用条件(通販いちばでの利用、有効期限1年)により受け取る人ごとの価値は異なります
  • 会社IRサイトの配当情報のページは、執筆時点で2026年3月期の期末配当の増配と現行の配当方針が反映されていませんでした。本記事は決算短信・適時開示の値を使っています

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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