本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事でわかること
- 日創グループ(3440)の2026年8月期は、売上高215億12百万円(前期比△6.6%)、営業利益6億20百万円(同△55.1%)。ただし粗利益は前期より1億49百万円増えています。営業利益を半分にしたのは売上ではなく販管費(+9億13百万円)でした
- 7月の下方修正に対して営業利益は3億20百万円上振れたのに、純利益は24百万円下振れました。税金等調整前当期純利益15億68百万円に対して法人税等は10億50百万円で、税負担率は67.0%です
- 子会社(ダイリツ)の売却益は連結では9億84百万円ですが、親会社単体では17億15百万円(6月時点の見込み)。税金は単体の売却益にかかるので、連結の利益より大きな利益に税金がかかる形になります
- 2027年8月期の会社予想は、経常利益7億30百万円に対し純利益2億60百万円。特別損益がゼロなら暗黙の税負担率は64.4%です。営業利益9億円のうち89%を下期に置いていることも合わせて、予想の読み方を整理します
- 有利子負債は1年で67億円増えて169億円に。マンション分譲会社の買収で、販売用不動産と仕掛販売用不動産が41億92百万円、新たに貸借対照表に載りました。来期予想の営業外損益は△1億70百万円です
- 配当は今期42円、来期予想40円。来期予想EPSは40.49円で、**配当性向は98.8%**になります
1. 前提知識:日創グループはどんな会社か
1-1. 軸となる例え:後継ぎのいない町工場を、屋号も職人も残したまま束ねている会社
福岡の金属加工会社(旧社名:日創プロニティ)が、2016年ごろから後継ぎのいない中小の製造業を次々に買い取り、2025年6月に持株会社「日創グループ」になりました。会社自身の説明資料によれば、2016年8月期に売上高の97.6%を占めていた金属加工事業の割合は、2026年8月期には35.8%まで下がっています。
この会社を理解するには、**「後継ぎのいない町工場を一軒ずつ引き取り、屋号も職人もそのまま残して束ねている親方」**を思い浮かべると近いと思います。ゴム工場、タイル工場、精密切削の工場、防音箱を作る工場、木材加工の老舗。買い取った会社の名前は変えず、親方(持株会社)は帳簿と段取りと営業の横串を引き受けます。
この例えには、強みと弱みが同じ一文に入っています。
| 例えの部分 | 決算書で何に対応するか |
|---|---|
| 町工場を引き取る(強み) | 自社で一から作るより早く売上を増やせる。会社資料では、2016〜2026年8月期の純投資金額の累計82.1億円に対し、回収したEBITDA(会社定義)の累計は81.0億円 |
| 引き取るときに払う「のれん代」と仲介料(弱み①) | 買った年に取得関連費用が出て、その後も毎年のれん償却が出る。どちらも営業利益を削り、しかも税金の計算では費用にならない |
| 借金で引き取る(弱み②) | 借入が増え、支払利息が経常利益を削る |
| 屋号を残したまま束ねる | 子会社ごとに損益と税金が出る。赤字の店と黒字の店がそれぞれ別に並ぶ |
今期はこの4行すべてが数字に出た年でした。本記事はこの順番で、利益が「営業→経常→純利益」の各段でどこに消えたかを追っていきます。
1-2. 事業構造:4つのセグメントと全社調整
2026年8月期から、マンション分譲会社の買収に合わせてセグメントが組み替えられ、「タイル事業」と「その他」の一部が「ライフスタイル事業」にまとめられました(前期の数字も新区分で組み替えて開示されています)。
| セグメント | 主な子会社 | 外部売上高 | 前期比 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金属加工 | 日創プロニティ、ワタナベテクノス(データセンター向け防音筐体)、綾目精機、天神製作所 | 7,697 | △3.8% | 698 | 9.1% |
| 化成品 | 吾嬬ゴム工業、大鳳、泉製作所 | 4,869 | +78.0% | 284 | 5.8% |
| 建設 | 日創エンジニアリング(内外装パネル工事・太陽光発電設備工事) | 2,554 | △62.4% | 38 | 1.5% |
| ライフスタイル | ニッタイ工業(タイル)、マルトク、カナエテ、ベルフラッツ(マンション分譲)、ビーズネクサス | 6,368 | +16.0% | △299 | △4.7% |
| その他(太陽光発電) | 東北クリーンエネルギー02合同会社 他 | - | - | △4 | - |
| 調整額(全社費用・取得関連費用等) | 22 | △96 | |||
| 連結 | 21,512 | △6.6% | 620 | 2.9% |
(単位:百万円。決算短信のセグメント情報。利益率は筆者が外部売上高で計算)
この表のポイントは2つです。
1つ目は、建設事業の利益が7億53百万円から38百万円に消えたことです。前期は東京の再開発案件(内外装パネル工事)が集中し、大林組向けの売上が31億68百万円(連結売上の13.8%)ありました。今期は10%未満となり、主要顧客の表から外れています。
2つ目は、調整額が△5億20百万円から△96百万円に縮んだことです。持株会社化で、子会社から受け取る経営管理料が「全社収益」として調整額に入るようになりました。セグメント利益の合計(7億17百万円)は前期(19億03百万円)の4割以下ですが、調整額の縮小が連結営業利益の落ち方を和らげています。
用語メモ:調整額 セグメント利益の合計と連結の営業利益の差。どのセグメントにも属さない本社費用(全社費用)や、セグメント間の取引の消去、M&Aの取得関連費用が入ります。この会社では持株会社が子会社から受け取る経営管理料(全社収益)もここに入るので、プラスにもマイナスにも動きます。
1-3. 直近3期の業績推移
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 | 2026年8月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 17,694 | 23,037 | 21,512 |
| 営業利益 | 1,275 | 1,383 | 620 |
| 営業利益率 | 7.2% | 6.0% | 2.9% |
| EBITDA(会社定義) | 1,901 | 2,144 | 1,648 |
| 経常利益 | 1,362 | 1,401 | 605 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,094 | 917 | 517 |
| EPS(円) | 167.33 | 141.88 | 80.58 |
| ROE | 9.4% | 7.4% | 4.0% |
| 自己資本比率 | 53.8% | 46.9% | 36.9% |
| 1株配当(円) | 35 | 40 | 42 |
| 期末受注残高 | 8,780 | 5,589 | 5,146 |
(単位:百万円。決算短信・決算説明資料。EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却額(会社定義)。2024年8月期の配当は株価情報サイトの配当履歴によるもので、短信原文では確認していません)
この表で見てほしいのは、自己資本比率が2年で53.8%から36.9%に下がったことです。純資産はほぼ横ばい(120億→129億円)なので、比率を下げたのは分母の総資産(224億→351億円)の膨張です。買収と借入で総資産が増えた、という意味です。
1-4. 会社予想の達成履歴:上にも下にも動く予想
| 期 | 予想(時点) | 修正後 | 実績 | 予想比 | 修正の開示日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年8月期 | 580(2023年4月14日公表) | - | 312 | △46.2% | 決算日(2023年10月13日)に差異を開示 |
| 2024年8月期 | 1,180(2024年4月時点) | - | 1,275 | +8.1% | - |
| 2025年8月期 | 1,281(期初) | 1,281(売上のみ上方修正) | 1,383 | +8.0% | 2025年7月15日 |
| 2026年8月期 | 900(期初) | 300 | 620 | 期初比△31.1%、修正後比+106.7% | 2026年7月15日 |
| 2027年8月期 | 900(期初) |
(単位:百万円。営業利益。各期の業績予想の修正・差異の開示、決算短信、報道ベースの決算記事。2023年・2024年8月期は期初予想を一次情報で確認できなかったため、確認できた時点の予想を載せています)
この表のポイントは2つです。
1つ目は、この会社の予想は上振れも下振れもすることです。2023年8月期は△46.2%、2024・2025年8月期は+8%前後、今期は期初から△31.1%でした。「控えめに出して上振れする会社」とも「強気に出して下振れする会社」とも言えません。
2つ目は、今期は第3四半期(7月15日)の修正のあと、実際の第4四半期が修正の想定を大きく上回ったことです。修正後予想が第4四半期(6〜8月)に置いていた営業利益は△2億14百万円(300−514)でしたが、実際は+1億06百万円でした。この上振れの中身は第3章で見ます。
なお、第2四半期の時点でも会社は「上期の経常利益は予想を上回った」と差異を開示し、通期予想については「B SLASH HOLDINGSの株式取得の影響を精査中」として据え置いていました。
1-5. 第4次中期経営計画との距離
第4次中期経営計画(2024年10月公表)の最終年度は2027年8月期です。今回の決算説明資料で、目標は次のように見直されました。
| 項目 | 当初目標 | 修正目標 | 2026年8月期実績 | 2027年8月期会社予想 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 300億円 | 270億円 | 215億円 | 270億円 |
| EBITDA | 27億円 | 20億円 | 16億円 | 20.2億円 |
| ROE | 8% | (ROE目標8%は資料に残っている) | 4.0% | 約2.0%(筆者の概算) |
| M&A投資枠(3年) | 50億円 | - | 29.1億円を投資(進捗58.2%) |
(決算説明資料。2027年8月期のROEは、予想純利益2億60百万円を期末自己資本の概算(今期末129.58億円+予想純利益−配当総額)で割った筆者の概算)
売上高とEBITDAの修正目標は、2027年8月期の会社予想とぴったり同じ値です。一方、ROE目標8%に必要な純利益は、今期末の自己資本で計算すると約10.4億円です。会社予想の純利益2億60百万円とは4倍の距離があり、中計期間中のROE目標の達成は会社予想の上では見込まれていません。会社は資料で資本コストを8〜9%と推定し、「ROEは資本コストを下回っている」と自ら書いています。
説明資料の図から筆者が読み取ったセグメント別の売上目標(億円)は、次のとおりです。合計は各年度の連結売上(215億・230億・270億・300億円)と±1億円で一致しました。
| 区分 | 2025年8月期実績 | 2026年8月期実績 | 2027年8月期 当初目標 | 2027年8月期 修正目標 |
|---|---|---|---|---|
| 金属加工 | 80 | 77 | 85 | 65 |
| 化成品(既存) | 9 | 10 | 12 | 11 |
| 建設 | 68 | 26 | 45 | 29 |
| ライフスタイル(既存) | 55 | 54 | 68 | 55 |
| M&Aで加わった会社 | 18 | 49 | 90 | 110 |
(説明資料の図から筆者が読み取った値。M&Aの区分には大鳳・泉製作所・ベルフラッツ等が入る)
来期の増収は、ほぼすべてが「M&Aで加わった会社」の+61億円です。金属加工はダイリツの売却(会社資料では△14.6億円)などで△12億円を見込んでいます。既存の事業だけで見た3年間の売上の年率は△3.1%と、会社自身が資料に書いています。
2. 決算ハイライト:2026年8月期
2026年10月15日(木)15時30分に、決算短信、決算説明資料、業績予想と実績値との差異、資本コストに関する開示(アップデート)、関係会社株式の減損(個別決算)、連結子会社からの配当金受領が同時に開示されました。
2-1. 損益計算書
| 項目 | 2025年8月期 | 2026年8月期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 23,037 | 21,512 | △1,525 |
| 売上総利益 | 5,622 | 5,771 | +149 |
| 粗利率 | 24.4% | 26.8% | +2.4pt |
| 販売費及び一般管理費 | 4,238 | 5,151 | +913 |
| 営業利益 | 1,383 | 620 | △762 |
| 営業外損益(純額) | +18 | △16 | △34 |
| うち支払利息 | 76 | 172 | +96 |
| 経常利益 | 1,401 | 605 | △796 |
| 特別利益 | 193 | 1,111 | +918 |
| うち関係会社株式売却益(ダイリツ) | - | 984 | |
| うち投資有価証券売却益 | - | 120 | |
| 特別損失 | 97 | 148 | +51 |
| 税金等調整前当期純利益 | 1,497 | 1,568 | +71 |
| 法人税等合計 | 579 | 1,050 | +471 |
| 税負担率 | 38.7% | 67.0% | +28.3pt |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 917 | 517 | △400 |
(単位:百万円。決算短信。粗利率・税負担率は筆者の計算。営業利益の増減は短信の開示どおり△762百万円)
この表には、利益の段ごとに別々の話が入っています。
- 営業利益:粗利は増えたのに、販管費が9億13百万円増えて半減した(第3章)
- 経常利益:支払利息が2倍以上になった(第4章)
- 純利益:税引前利益は前期より増えたのに、税金が4億71百万円増えて純利益は減った(第5章)
2-2. 業績予想と実績の差異(原文)
7月15日の修正予想(売上高205億円、営業利益3億円、経常利益2億68百万円、純利益5億42百万円)に対し、実績は営業利益で+106.9%、経常利益で+125.9%でした。会社は差異の理由を次のように書いています(原文)。
営業利益、EBITDA、経常利益につきましては、主に、金属加工事業において金属サンドイッチパネルの納期が顧客要請により一部早まったこと、また、大型データセンタ向け非常用発電装置の防音・消音筐体についても、同じく顧客要請により納期が一部早まったこと、更に、化成品事業における駆け込み需要や値上げ効果も加わり、前回発表予想を上回りました。
ここで注目したいのは、上振れの理由が**「納期が早まった」「駆け込み需要」**という、来期の売上を前に持ってきた性質のものだという点です。会社は来期への影響には触れていませんが、早まった分だけ来期の同じ案件の売上が減る、という読み方は成り立ちます(筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません)。
なお、差異の理由に純利益への言及はなく、純利益は修正予想を24百万円下回りました(△4.5%)。
2-3. 貸借対照表:1年で総資産が81億円増えた
| 項目 | 2025年8月末 | 2026年8月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 7,752 | 10,982 | +3,229 |
| 販売用不動産 | - | 1,003 | +1,003 |
| 仕掛販売用不動産 | - | 3,189 | +3,189 |
| 売掛金・契約資産・電子記録債権 | 4,845 | 2,938 | △1,907 |
| のれん | 2,059 | 2,368 | +309 |
| 無形固定資産(その他) | 96 | 1,327 | +1,231 |
| 総資産 | 26,948 | 35,104 | +8,155 |
| 短期借入金 | 4,150 | 7,579 | +3,429 |
| 長期借入金(1年内返済予定を含む) | 5,942 | 9,250 | +3,307 |
| 純資産 | 12,648 | 12,958 | +309 |
| 自己資本比率 | 46.9% | 36.9% | △10.0pt |
(単位:百万円。決算短信。増減は短信の文中の値、または筆者の差し引き)
増えた資産は大きく3つです。①マンション分譲会社(ベルフラッツ等)の買収で載った販売用不動産・仕掛販売用不動産41億92百万円、②太陽光発電の合同会社35社などの連結で増えた無形固定資産、③現金です。
用語メモ:販売用不動産・仕掛販売用不動産 分譲マンション会社にとっての「在庫」です。完成して売り出している物件が販売用不動産、建設中・用地取得済みの物件が仕掛販売用不動産。引き渡して初めて売上になるので、引き渡しの時期によって四半期の売上と利益が大きく振れます。
2-4. キャッシュ・フロー
| 項目 | 2025年8月期 | 2026年8月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるCF | 2,920 | 2,402 |
| 投資活動によるCF | △3,931 | △901 |
| うち子会社株式の取得(連結範囲の変更を伴う) | △2,793 | △1,040 |
| うち子会社株式の売却(ダイリツ) | - | +1,363 |
| うち無形固定資産の取得 | △44 | △1,314 |
| 財務活動によるCF | 2,547 | 2,206 |
| うち短期借入金の純増 | 1,580 | 2,807 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 7,060 | 10,769 |
(単位:百万円。決算短信)
営業CFと投資CFの合計は+15億01百万円ですが、ダイリツの売却収入13億63百万円を除くと+1億38百万円にとどまります(筆者の計算)。事業で稼いだ現金と投資がほぼ釣り合い、配当(2億56百万円)と現金の積み増しは借入でまかなった形です。
3. 深掘り① 営業利益:粗利は増えたのに、なぜ半分になったのか
ここからは、利益が「営業→経常→純利益」の各段でどこに消えたかを、1段ずつ追います。最初は営業利益です。
3-1. 3つに分けると、減益はすべて販管費で説明できる
営業利益の減少(△7億62百万円)を、売上の量・粗利率・販管費の3つに分けます。
| 要因 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 数量効果(売上が減った分) | 売上の増減 △1,525 × 前期の粗利率 24.4% | △372 |
| 率効果(粗利率が変わった分) | 当期売上 21,512 × 粗利率の差 +2.4pt | +521 |
| 販管費の増減 | 4,238 → 5,151 | △913 |
| 合計 | △764 | |
| 実際の営業利益の増減(開示) | △762 |
(単位:百万円。筆者の計算。差の2百万円は百万円未満切り捨ての開示による丸め)
この表のポイントは、売上の減少(△3億72百万円)は粗利率の改善(+5億21百万円)で十分に打ち消されていて、減益の全額は販管費の増加で説明できることです。粗利率が上がったのは、利益率の低い建設事業(材料と工事を一括で請け負う)が大きく減り、事業の構成が変わったことが大きいと考えられます(構成変化の寄与は開示から切り分けられないため、筆者の推測です)。
3-2. 販管費が増えた中身:「引き取る費用」と「引き取った店の費用」
販管費の増加9億13百万円のうち、開示から特定できるものを並べます。
| 項目 | 2025年8月期 | 2026年8月期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 子会社株式の取得関連費用(調整額の内訳) | 153 | 241 | +88 |
| のれん償却額 | 120 | 305 | +185 |
| 給料及び手当 | 932 | 1,121 | +189 |
| その他の販管費 | 1,820 | 2,450 | +630 |
(単位:百万円。決算短信の販管費の内訳・セグメント情報の注記・CF計算書。取得関連費用とのれん償却額が販管費の「その他」等のどこに含まれるかは短信に明記がないため、この表の行は重複しうる参考値です)
ここで軸の例えが効きます。町工場を引き取るときに払う仲介料(取得関連費用2億41百万円)と、引き取った値段のうち帳簿の純資産を超えた分を毎年少しずつ費用にする「のれん償却」(3億05百万円)。この2つだけで5億46百万円あり、今期の営業利益6億20百万円に近い大きさです。
用語メモ:のれん償却 会社を買った値段が、その会社の純資産(資産−負債)を上回った部分を「のれん」として資産に計上し、日本の会計基準では最長20年で毎年少しずつ費用(のれん償却額)にします。現金は買ったときに出ていて、償却のときには出ていきません。EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)は、この償却を足し戻した指標です。
会社がEBITDAを重視する指標に掲げているのは、この「買った年に費用が先に出る」構造があるからだと考えられます。今期のEBITDAは16億48百万円(△23.1%)で、営業利益(△55.1%)より落ち方は小さくなっています。会社は今期から、取得関連費用も足し戻した「調整後EBITDA」(18億90百万円)も示しています。
3-3. 4つの四半期に分けると:第3四半期の赤字と第4四半期の上振れ
この会社の短信は累計(9か月、12か月)でしか損益を開示しないので、四半期ごとの数字は前の累計を引き算して自分で出すしかありません。3年分を差し引きました。
| 期 | 第1四半期(9〜11月) | 第2四半期(12〜2月) | 第3四半期(3〜5月) | 第4四半期(6〜8月) | 通期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年8月期 売上 | 3,721 | 4,697 | 4,734 | 4,542 | 17,694 |
| 2024年8月期 営業利益 | 339 | 475 | 355 | 106 | 1,275 |
| 2025年8月期 売上 | 5,620 | 6,569 | 6,080 | 4,768 | 23,037 |
| 2025年8月期 営業利益 | 384 | 478 | 555 | △34 | 1,383 |
| 2026年8月期 売上 | 5,516 | 5,076 | 4,884 | 6,036 | 21,512 |
| 2026年8月期 営業利益 | 293 | 277 | △56 | 106 | 620 |
(単位:百万円。各四半期の決算短信の累計値から筆者が差し引き。4四半期の合計が通期の開示値と一致することを確認済み。決算説明資料の四半期グラフの値とも一致)
この表から読めることは3つあります。
1つ目は、第4四半期(6〜8月)が年間で最も低い営業利益になる形が、2024年・2025年8月期と続いたことです。今期は第3四半期のM&A手数料2億39百万円を足し戻すと、第3四半期は1億83百万円、第4四半期は1億06百万円で、やはり第4四半期が最も低くなります。ただし2024年8月期の第4四半期は黒字、2025年8月期は赤字と水準は違い、毎年同じ理由で低いのかは開示から分かりません。
2つ目は、今期の第3四半期(3〜5月)の営業赤字△56百万円は、B SLASH HOLDINGSの買収に伴うM&A手数料2億39百万円を一括で計上した結果だということです。
3つ目は、今期の第4四半期の売上60億36百万円が、前年同期(47億68百万円)を12億68百万円上回ったことです。ここに5月に買収したマンション分譲会社の3か月分が入っています(みなし取得日を5月31日としているため、第3四半期までは貸借対照表だけを連結し、損益は第4四半期から連結しています)。
用語メモ:累計しか開示されない会社の四半期 決算短信は「第1四半期(3か月)」「中間(6か月)」「第3四半期(9か月)」「通期(12か月)」の累計で数字を出します。第3四半期の3か月だけの利益を知りたければ、9か月累計から6か月累計を引くしかありません。この記事の四半期の数字はすべてこの引き算によるものです。
3-4. 第4四半期をセグメントに分けると:上振れは金属加工、赤字はライフスタイル
修正予想が置いていた第4四半期の営業利益△2億14百万円に対し、実際は+1億06百万円でした。セグメント別に第4四半期を差し引きます。
| セグメント | 第4四半期の外部売上 | 前年同期 | 第4四半期のセグメント利益 | 前年同期 |
|---|---|---|---|---|
| 金属加工 | 1,787 | 1,862 | 224 | 85 |
| 化成品 | 1,248 | 817 | 64 | 35 |
| 建設 | 690 | 780 | △7 | 32 |
| ライフスタイル | 2,305 | 1,298 | △163 | △84 |
| その他 | - | - | 0 | - |
| 調整額 | △10 | △102 | ||
| 合計 | 108 | △34 |
(単位:百万円。通期と第3四半期累計のセグメント情報から筆者が差し引き。合計108百万円と連結の第4四半期営業利益106百万円の差は、百万円未満切り捨ての開示による丸め)
この表のポイントは2つです。
1つ目は、**第4四半期の利益を支えたのは金属加工(2億24百万円)**だということです。会社が差異の理由に挙げた「金属サンドイッチパネルとデータセンター向け防音筐体の納期の前倒し」と一致します。売上は前年同期を下回っているのに利益が2.6倍になっているので、前倒しになった案件の採算が高かった可能性がありますが、案件別の損益は開示されていません。
2つ目は、ライフスタイル事業の第4四半期は、売上が10億07百万円増えたのに赤字が1億63百万円に広がったことです。7月の修正開示で会社は、買収したマンション分譲会社4社について「引渡し物件が少ない時期」で、取り込む3か月の計画が「営業赤字となる見通し」と書いていました。さらに通期決算では、ベルフラッツで「来期以降の竣工物件に対する広告宣伝費が先行して計上された」と説明しています。売上は先に立つが、広告費はもっと先に出る——マンション分譲という「新しく引き取った店」の費用の出方が、第4四半期の数字に表れています。
4. 深掘り② 経常利益:借金で引き取ることのコスト
営業利益の段で消えたのが「引き取る費用」だとすれば、次の経常利益の段で消えるのは「借金で引き取る費用」です。
4-1. 有利子負債は1年で67億円増えた
| 項目 | 2025年8月末 | 2026年8月末 |
|---|---|---|
| 短期借入金 | 4,150 | 7,579 |
| 長期借入金(1年内返済予定を含む) | 5,942 | 9,250 |
| リース債務 | 117 | 84 |
| 有利子負債合計 | 10,209 | 16,913 |
| 現金及び預金 | 7,752 | 10,982 |
| ネット有利子負債(有利子負債−現預金) | 2,457 | 5,931 |
| 支払利息(通期) | 76 | 172 |
(単位:百万円。決算短信から筆者が集計)
ネットの借金は1年で24.6億円から59.3億円へ、2.4倍になりました。短期借入金の増加34億29百万円は、マンション分譲会社の不動産在庫41億92百万円とほぼ同じ規模です。分譲マンションの用地取得・建設資金は、物件ごとの短期借入でまかない、引き渡しの代金で返すのが一般的な形ですが、この会社の借入のうちどれだけが不動産の事業資金かは短信に書かれていません(両者の結びつきは筆者の推測です)。
4-2. 来期予想の営業外損益は△1億70百万円
今期の営業外損益は△16百万円でした(受取家賃・売電収入・保険金などの収益1億60百万円が、支払利息1億72百万円をほぼ打ち消した)。来期の会社予想では、営業利益9億円に対して経常利益は7億30百万円で、営業外損益に△1億70百万円を置いています。
| 2026年8月期実績 | 2027年8月期予想(上期) | 2027年8月期予想(通期) | |
|---|---|---|---|
| 営業利益 | 620 | 100 | 900 |
| 経常利益 | 605 | 30 | 730 |
| 営業外損益(差) | △16 | △70 | △170 |
(単位:百万円。決算短信。営業外損益は筆者の差し引き)
支払利息の内訳の予想は開示されていませんが、借入残高が期末時点で前期末より67億円多いことを考えると、通年で利息が増える形の予想になっていると読めます。営業利益が45.0%増えても、経常利益は20.6%増にとどまる予想です。
用語メモ:インタレスト・カバレッジ・レシオ 営業CF(会社の定義)が支払利息の何倍あるかを示す指標で、会社は短信に毎年載せています。2025年8月期の38.1倍から、2026年8月期は12.2倍に下がりました。利息を払う余力は十分ありますが、余裕の幅は1年で3分の1になっています。
5. 深掘り③ 純利益:利益の3分の2が税金になった理由
最後の段は純利益です。今期は税引前利益15億68百万円のうち10億50百万円(67.0%)が税金になりました。来期予想も同じ形をしています。
5-1. 子会社の売却益は「連結9.84億円・単体17.15億円」
6月26日、2018年に買収した空調用ダンパーメーカーのダイリツを、空研工業へ18億円で売却しました。ダイリツの直近の純資産は8億19百万円(2025年6月期)、純利益は1億25百万円でした。
ここで、同じ売却から出る売却益が2つあります。
| 連結決算 | 親会社の個別決算 | |
|---|---|---|
| 売却益の計算 | 18億円 −(ダイリツの純資産+残っていたのれん) | 18億円 − 2018年に買ったときの取得価額 |
| 売却益 | 9億84百万円(短信) | 17億15百万円(6月23日の開示時点の見込み) |
税金は親会社の個別決算(税務上の所得)に対してかかります。買収後にダイリツが稼いで貯めた利益は、連結ではすでに毎年の利益に入っているので売却益には含まれませんが、個別決算では売却益として一度に出てきます。差額7億31百万円に法定実効税率30.5%を当てると、約2億23百万円です(筆者の試算)。つまり連結の損益計算書から見ると、売却益の大きさの割に税金が重く見える形になります。
用語メモ:連結と個別で売却益が違う理由 子会社を買ってから売るまでの間に子会社が稼いだ利益は、連結決算では毎年の利益としてすでに計上されています。親会社の個別決算では、その分は子会社の中に残っていて、売却したときに売却益としてまとめて出てきます。税金は個別決算をもとに計算されるので、連結の売却益より大きな利益に税金がかかります。
5-2. 売却益を除いた残りの利益にかかる税金(筆者の試算)
売却益に対応する税金をおおまかに取り除くと、残りの事業の利益にかかった税金が見えてきます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 税金等調整前当期純利益 | 1,568 |
| 売却益(関係会社株式984+投資有価証券120)を除いた税引前利益 | 464 |
| 法人税等合計 | 1,050 |
| 売却益に対応する税金(個別ベースの売却益1,715+120に30.5%を当てた試算) | 約560 |
| 残りの税金 | 約490 |
| 残りの税引前利益に対する負担率 | 約106% |
(単位:百万円。筆者の試算で、会社の開示に基づくものではありません。個別ベースの売却益は6月時点の見込額で、確定額・税務上の所得とは異なりうるため、幅を持って読んでください)
前提の置き方によって数字は動きますが、売却益を除いた事業の利益に対しては、税金がほぼ同額かそれ以上かかっている計算になります。なぜそうなるのかは、前期(2025年8月期)の有価証券報告書の税率差異の注記がヒントになります。
| 項目 | 2025年8月期 |
|---|---|
| 法定実効税率 | 30.5% |
| 交際費等の損金不算入 | +0.5pt |
| 住民税均等割 | +0.7pt |
| 評価性引当額の増減 | △0.2pt |
| 取得関連費用 | +3.7pt |
| のれん償却額 | +2.5pt |
| 子会社との税率差による影響 | +3.7pt |
| その他 | △2.7pt |
| 税効果会計適用後の負担率 | 38.7% |
(前期の有価証券報告書の税効果会計関係の注記。項目の積み上げが38.7%と一致することを筆者が確認)
ここでも軸の例えが効きます。町工場を引き取るときの仲介料(取得関連費用)と、のれん償却は、決算書では費用なのに、税金の計算では費用として認められない項目として、前期だけで合わせて6.2pt負担率を押し上げていました。今期は取得関連費用が2億41百万円、のれん償却が3億05百万円と前期より大きく、税引前利益から売却益を除いた残り(4億64百万円)に対する比率はさらに大きくなります。加えて、屋号を残して束ねている子会社の中には赤字の会社(新規事業のカナエテ、広告費を先に積んだベルフラッツ等)があり、その損失が他の子会社の税金をどれだけ減らせているかは開示から分かりません。
今期の税率差異の内訳は、11月25日提出予定の有価証券報告書で開示されます。上の試算はその時点で確かめる必要があります。
5-3. 来期予想:経常利益7億30百万円で純利益2億60百万円
来期の会社予想は、経常利益7億30百万円、純利益2億60百万円です。特別損益をゼロと置くと、**暗黙の税負担率は64.4%**です(1−260÷730)。上期だけでも経常利益30百万円に対して純利益10百万円(同66.7%)です。
会社は純利益の減益理由を「2026年8月期に特別利益(関係会社株式売却益)等の影響がないため」と説明していますが、税負担率の前提は説明していません。4本の物差しと並べます。
| 物差し | 税負担率 | その負担率なら純利益は | 純利益予想に届くのに必要な税引前利益 |
|---|---|---|---|
| 来期予想に置かれた暗黙の負担率(特別損益ゼロの場合) | 64.4% | 260 | 730 |
| 法定実効税率(防衛特別法人税の上乗せ後、2026年9月以後開始の期) | 31.4% | 501 | 379 |
| 前期(2025年8月期)の実績 | 38.7% | 447 | 424 |
| 今期(2026年8月期)の実績(売却益込み) | 67.0% | 241 | 788 |
(単位:百万円。決算短信、前期有価証券報告書。表は筆者の試算で、将来の見通しではありません。法定実効税率31.4%は前期有報の注記による)
この表の読み方は2通りあります。
- 予想は特別損失を置いている:法定実効税率なら、純利益予想に届く税引前利益は3億79百万円で、経常利益予想との差3億51百万円が特別損失(減損等)に相当します。前期は91百万円、今期は98百万円の減損損失が出ています
- 予想は税負担そのものを重く置いている:取得関連費用・のれん償却・赤字子会社の損失が税金を減らさない構造が来期も続き、今期と同じ6割台の負担率を見込んでいる、という読み方です。来期ののれん償却額の予想は開示されていませんが、今期の3億05百万円が続けば、その税効果だけで約96百万円(経常利益予想の13.1pt分)になります(筆者の試算)
どちらの読み方が正しいかは開示から判断できません。ただ、純利益の予想が経常利益の予想より大きく下に置かれ、そのことが配当性向98.8%に直結している(第7章)ことは数字のとおりです。
用語メモ:暗黙の税負担率 会社は経常利益と純利益の予想を出しますが、その間の特別損益と税金の内訳は出さないことがほとんどです。〈1−純利益予想÷経常利益予想〉は、特別損益がゼロだったとした場合に予想が置いている税負担率です。高すぎれば「特別損失を置いている」か「税金が重い前提」のどちらか(または両方)と読めます。
6. 来期予想の読み方:営業利益の89%を下期に置いている
3つの段を見てきたので、来期予想をもう一度、時間の軸で見ます。
6-1. 上期と下期の置き方
| 期 | 上期 営業利益 | 下期 営業利益 | 下期÷通期 | 下期の売上 | 下期の営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年8月期 | 814 | 461 | 36.2% | 9,276 | 4.97% |
| 2025年8月期 | 862 | 521 | 37.7% | 10,848 | 4.80% |
| 2026年8月期 | 570 | 50 | 8.1% | 10,920 | 0.46% |
| 2027年8月期(会社予想) | 100 | 800 | 88.9% | 15,500 | 5.16% |
(単位:百万円。決算短信から筆者が差し引き。2027年8月期は上期予想と通期予想の差)
この表のポイントは2つです。
1つ目は、過去2期は通期の営業利益の6割強を上期に稼いでいたのに、来期予想は9割近くを下期に置いていることです。上期予想は売上115億円(前年同期比+8.6%)、営業利益1億円(同△82.5%)、純利益10百万円です。
2つ目は、下期に置いた営業利益率5.16%そのものは、過去2期の下期(4.8〜5.0%)と大きくは違わないことです。ハードルは利益率よりも、下期の売上155億円(今期の下期109億20百万円の1.42倍)のほうにあります。
なぜ下期に偏っているのかについて、会社は来期の説明では触れていません。7月の修正開示で、買収したマンション分譲会社について「引渡し物件が少ない時期」と書いていたこと、説明資料に「来期以降の竣工物件に対する広告宣伝費」とあることから、マンションの引き渡しが下期に集中する計画である可能性があります(筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません)。分譲マンションは引き渡した時点で売上が立つので、竣工が数か月ずれれば、利益が期をまたいで動きます。
6-2. 上振れの「前借り」と、売却した店の穴
来期の売上・利益には、今期にはなかった逆風も入っています。
- ダイリツの売却:2025年6月期の売上11億87百万円・営業利益1億92百万円の会社が、来期は丸1年いなくなります(会社資料では売上△14.6億円)
- 納期の前倒し:今期の第4四半期に金属加工で前倒しになった案件は、本来なら来期に入るはずだった売上です(会社は来期への影響額を示していません)
- 建設事業の受注残:期末の受注残高は14億12百万円(前年比+10.0%)。中計の修正目標でも来期の建設の売上は29億円で、再開発案件が集中した前期(68億円)の水準には戻らない前提です
一方で強気側の材料もあります。
- 受注残高の合計は51億46百万円で、2025年8月期の第3四半期を底に増加に転じたと会社は書いています。ライフスタイル事業の受注残高は13億79百万円(同+59.2%)、化成品は3億97百万円(同+43.0%)です
- ベルフラッツの過去の利益水準:買収時の開示によれば、ベルフラッツの営業利益は2023年7月期3億54百万円、2024年7月期1億74百万円、2025年7月期2億53百万円でした。この水準が丸1年分乗れば、下期の数字は会社予想の射程に入ります(ただし年度によって振れが大きく、買収後の広告費の積み方も変わっています)
7. セグメント・イベント解説
7-1. マンション分譲会社(B SLASH HOLDINGS)の買収
2026年4月14日に取締役会で決議し、5月7日に株式を取得しました。B SLASH HOLDINGSは持株会社で、傘下にマンション開発分譲のベルフラッツ(東京・神奈川・千葉)、リノベーションのビーズネクサス、デザイン監修のビーズコンセプションがあります。
| 会社 | 直近決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純資産 | 総資産 |
|---|---|---|---|---|---|
| ベルフラッツ | 2025年7月期 | 4,632 | 253 | 768 | 5,227 |
| ビーズネクサス | 2025年2月期 | 1,273 | 42 | 214 | 1,160 |
(単位:百万円。株式取得の適時開示)
取得価額は「売主(個人株主2名)の要望により秘密保持契約を締結しているため非開示」とされ、連結純資産の15%を上回る金額であることだけが開示されています。短信の注記によれば、この買収で生じたのれんは6億14百万円です。
会社は買収の狙いとして、グループのタイル・内装木材・家具をマンションの企画に反映させることを挙げています。軸の例えで言えば、これまで「部品や建材を作る町工場」を引き取ってきた親方が、建材を最終的に使う側の店(マンションを建てて売る会社)を引き取ったことになります。在庫として土地と建物を抱え、引き渡しの時期で利益が振れ、借入で回すという点で、これまでの子会社とは資金の回り方が違う事業です。
7-2. ダイリツの売却:引き取った店を手放す
軸の例えでは「引き取って束ねる」側だけを見てきましたが、今期は初めて、引き取った店を同業大手に売ることをしました。2018年に引き取ったダイリツを18億円で売却し、売却額は直近の純資産の約2.2倍、直近の純利益の約14.4倍です(筆者の計算)。会社は理由を「同社が持つポテンシャルを最大限に発揮するためには、大手空調用ダンパーメーカーの空研工業株式会社と連携を深めることが望ましい」と書いています。
さらに9月28日には、事業承継のファンド(日創リフレイ1号投資事業有限責任組合、総額20億円、運用期間8年)の組成に、有限責任組合員として98.5%を出資することを決議しました。会社資料は狙いとして、従来のM&Aに加えて**「売却を前提とした『エグジット型M&A』を導入」**すると書いています。引き取って束ねるだけでなく、磨いて売ることも収益源にする方針です。来期の連結業績への影響は「軽微」とされています。
7-3. その他の開示
- 関係会社株式の減損(個別決算):綾目精機の株式について、個別決算で関係会社株式評価損3億12百万円を計上しました。連結決算では相殺消去されるため、連結業績への影響はないと会社は書いています。ただし、2017年に引き取った子会社の価値が個別の帳簿上で切り下げられたという事実は、引き取った店がすべて順調ではないことを示しています
- 子会社からの配当金受領:日創プロニティから5億円の配当を10月29日に受け取ります。親会社の個別決算の営業外収益になりますが、連結業績への影響はありません
- 公認会計士等の異動:会計監査人の如水監査法人が、2026年12月1日付でSCS国際有限責任監査法人と合併し、有限責任SCS如水監査法人となる予定です。業務執行社員は合併前と同じ2名の予定と開示されています。開示上は監査法人の合併に伴う異動です
- 資本業務提携:7月30日に、フランク・ロイド・ライト財団からライセンスを受けた住宅FC本部のJOA株式会社等と資本業務提携を結び、グループのタイル等の提案先として位置づけています
- 第1四半期のXBRLの訂正:4月21日に、第1四半期決算短信の数値データ(XBRL)の一部を訂正しています。短信本文(PDF)の数値の訂正ではありません
8. 資本政策・株主還元
8-1. 配当:来期予想の配当性向は98.8%
| 期 | 1株配当 | 配当の決め方 | 連結配当性向 | 配当総額 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 40円(うち記念配当10円) | 業績を勘案(総合勘案) | 28.2% | 256百万円 |
| 2026年8月期 | 42円 | 同上 | 52.1% | 269百万円 |
| 2027年8月期(予想) | 40円 | 同上 | 98.8% | (約257百万円) |
(決算短信・決算説明資料。2025年8月期の記念配当は同期の決算説明資料による。2027年8月期の配当総額は期末自己株式控除後の株数6,420,764株×40円の筆者の計算)
会社の基本方針は、「成長投資に振り向けていくことに力点を置きながら、各事業年度の経営成績を勘案して配当を行う」というもので、配当性向やDOE(純資産配当率)の数値目標は掲げていません。今期の配当総額を再現すると、6,420,764株×42円=約2億70百万円で、短信の開示値(2億69百万円)と一致します。
来期予想は2円の減配ですが、予想純利益2億60百万円に対し配当総額は約2億57百万円で、純利益のほぼ全額を配当に回す計画です。
この数字は両側に読めます。
- 強気:利益が大きく落ちる予想の年でも配当の水準をほぼ守る、という会社の姿勢として読めます。会社は資料で「積極的な成長投資と利益の最大還元を両立」と書いています。今期の純資産配当率(DOE)は2.1%で、来期も同程度の水準です
- 弱気:第5章で見たとおり、純利益予想は税負担率を6割台に置いた水準です。予想どおりなら利益剰余金はほとんど積み上がらず、借入で買収を続ける中で自己資本の厚みは増えません。また今期の配当性向52.1%も、ダイリツの売却益を除いた純利益(筆者の試算で約3億22百万円)で割ると約83%になります
用語メモ:配当性向とDOE 配当性向は「配当総額÷純利益」で、利益のうちどれだけを配当に回したか。DOE(純資産配当率)は「配当総額÷自己資本」で、株主の持ち分に対してどれだけ配当したかを示します。利益が大きく振れる会社では、配当性向は年によって跳ね上がりますが、DOEは比較的安定します。
8-2. 権利付き最終日
- 2026年8月期の期末配当(42円):基準日は2026年8月31日(月)で、権利付き最終日は8月27日(木)でした。権利落ち日の8月28日(金)の終値は888円で、前日(958円)から70円下がり、出来高は16万3,700株でした(報道ベース:株価情報サイトの時系列)
- 2027年8月期の期末配当(予想40円):基準日は2027年8月31日(火)、**権利付き最終日は2027年8月27日(金)**です(筆者の計算。基準日の2営業日前)
- 中間配当は実施していません(2026年8月期・2027年8月期予想とも第2四半期末は0円)
8-3. 株数・自己株式・潜在株式
- 発行済株式数6,832,500株、期末自己株式411,736株(発行済の6.0%)。今期は自己株式の取得はありませんでした(前期は1億41百万円を取得)
- 潜在株式はなく、潜在株式調整後EPSは記載されていません。EPSの検算:517百万円÷期中平均6,420,764株=80.5円(開示80.58円と一致)
- 株式分割・併合はなく、比較の調整は不要です
8-4. 大株主
前期末(2025年8月31日)時点の大株主上位は、NTi company株式会社(18.55%)、石田洋子氏(13.44%)、石田徹氏(代表取締役社長、7.99%)、井上亜希氏(5.79%)でした(有価証券報告書。比率は自己株式を除く発行済株式数に対する割合)。これらの株主の関係は筆者の確認した開示の範囲では明記されていないため、持株比率を合算していません。今期末の大株主は11月25日提出予定の有価証券報告書で確認できます。
8-5. 株主優待
前期の有価証券報告書の「株主に対する特典」欄は「該当事項はありません」です。会社IRサイトでも優待制度の案内は確認できませんでした(IRサイトのFAQは確認できていません。当期の有価証券報告書は未提出)。
9. 株価の見方
9-1. 株価の基準点
2026年10月16日(金)終値800円を基準にします(株価情報サイトの時系列。報道ベース)。決算は10月15日(木)15時30分の発表なので、15日の終値850円には決算は含まれず、最初の反応日は16日です。16日は△5.88%(△50円)、出来高7万3,000株で、普段(9月は1日5,000〜3万株程度)の数倍でした。16日の安値799円は2026年の年初来安値で、年初来高値は2月の1,054円です。
一次情報からの照合点として、短信の「時価ベースの自己資本比率」16.2%×総資産351億04百万円÷自己株式控除後の株数6,420,764株=約886円と、株価情報サイトの8月31日終値887円がほぼ一致しました。会社の資本コストの資料にも、8月期末の株価終値として887円が示されています。
| 指標 | 値 | 計算 |
|---|---|---|
| 時価総額(自己株式控除後) | 約51.4億円 | 800円×6,420,764株 |
| PBR | 約0.40倍 | 800円÷1株当たり純資産2,018.23円 |
| 予想PER(会社予想EPS) | 約19.8倍 | 800円÷40.49円 |
| 予想PER(経常利益予想×(1−31.4%)のEPS) | 約10.3倍 | 800円÷約78.0円 |
| 実績PER | 約9.9倍 | 800円÷80.58円(売却益込み) |
| 予想配当利回り | 5.0% | 40円÷800円 |
(筆者の計算。株価は報道ベース)
ここで見てほしいのは、同じ来期予想から、PERが約19.8倍にも約10.3倍にもなることです。会社予想EPSは税負担率64%台を置いた純利益から計算されていて、法定実効税率で計算し直すとほぼ半分の倍率になります。どちらの数字を「この会社のPER」とするかで、割安にも割高にも見えます。
9-2. 過去の決算発表の翌営業日
| 発表日(いずれも15時30分) | 決算 | 翌営業日の騰落率 |
|---|---|---|
| 2025年10月15日 | 2025年8月期通期 | △12.7% |
| 2026年1月14日 | 第1四半期 | △1.0% |
| 2026年4月14日 | 第2四半期 | △0.7% |
| 2026年7月15日 | 第3四半期(下方修正) | △8.4% |
| 2026年10月15日 | 2026年8月期通期 | △5.9% |
(報道ベース:株価情報サイトの時系列から筆者が計算。値動きの理由は書いていません)
9-3. 強気・弱気の材料
強気の材料
- PBRは約0.40倍で、会社自身が資料で「PBR1倍を下回る0.4〜0.6倍で推移」と書き、PBR1倍以上・ROE8%を目指すと明言しています
- 税負担率を法定実効税率に置き換えた予想PERは約10.3倍で、純利益予想の税負担率が下がれば利益の見え方が大きく変わります
- 予想配当利回りは5.0%で、会社は利益が大きく減る予想でも配当をほぼ維持する計画を出しています
- 下期に置いた営業利益率5.16%は過去2期の下期と近い水準で、利益率の要求自体は無理のない範囲です。マンション分譲会社の過去の利益水準(営業利益1.7〜3.5億円)が乗れば、予想の射程に入ります
- ダイリツを純資産の約2.2倍で売却したことは、引き取った会社を高く売れることの一例です。ファンドを通じた「エグジット型M&A」を新たに収益源に加えようとしています
弱気の材料
- 来期の営業利益の88.9%を下期に置いた予想で、上期の営業利益は1億円です。マンションの引き渡し時期がずれれば、利益が期をまたいで動きます
- 今期の第4四半期の上振れは「納期の前倒し」「駆け込み需要」によるもので、来期の売上を前に持ってきた可能性があります
- ネット有利子負債は1年で2.4倍の59.3億円、自己資本比率は36.9%に下がりました。来期予想の営業外損益は△1億70百万円です
- 売却益を除いた事業の利益に対しては、税金がほぼ同額かそれ以上かかっている計算です(筆者の試算)。買収を続ける限り、取得関連費用とのれん償却が税金を減らさない構造は続きます
- 中計の目標は今回引き下げられ、ROE目標8%と来期予想ROE(約2.0%)には4倍の距離があります。既存事業の売上の3年間の年率は△3.1%で、増収はM&Aに頼っています
- 個別決算では、2017年に引き取った綾目精機の株式で3億12百万円の評価損を計上しました
10. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 見るポイント |
|---|---|---|
| 2026年10月29日 | 日創プロニティからの配当金5億円の受領(個別) | 連結には影響なし |
| 2026年11月25日(水) | 有価証券報告書の提出予定 | 税率差異の注記(取得関連費用・のれん償却・評価性引当額のpt数)、B SLASHの企業結合注記(取得原価・のれんの償却年数)、大株主の状況、ダイリツの売却益の個別ベースの確定額 |
| 2026年11月26日(木) | 定時株主総会 | 配当42円の決議(支払開始は11月27日) |
| 2026年12月1日(火) | 監査法人の合併(有限責任SCS如水監査法人へ) | |
| 2027年1月中旬(予定) | 第1四半期決算 | ライフスタイル事業の損益(マンションの引き渡し件数)、短期借入金と販売用不動産の残高、支払利息の四半期ペース |
| 2027年4月中旬(予定) | 第2四半期決算 | 上期予想(営業利益1億円・純利益10百万円)との差、下期の引き渡し計画の説明の有無 |
| 2027年8月27日(金) | 期末配当(予想40円)の権利付き最終日 | |
| 随時 | M&A・ファンドの投資先の開示 | M&A投資枠の残り約21億円、ファンドの出資(20億円の98.5%)の払い込みの進み方 |
見るべきKPI
- 税負担率:今期67.0%、来期予想の暗黙の負担率64.4%。四半期ごとの「法人税等合計÷税金等調整前四半期純利益」がこの水準に沿うか
- 営業外損益と支払利息:来期予想は△1億70百万円。有利子負債169億円の推移
- 販売用不動産・仕掛販売用不動産:41億92百万円。引き渡しで在庫が売上に変わっていくか
- ライフスタイル事業のセグメント損益:今期△2億99百万円(第4四半期だけで△1億63百万円)
- 金属加工の受注残高:期末19億56百万円(前年比△38.1%)。前倒しの反動が受注残に出ていないか
- EBITDA:来期予想20億20百万円(中計の修正目標と同額)
11. 3行まとめ
- 2026年8月期は営業利益6億20百万円(△55.1%)。粗利は増えたのに、町工場を引き取る費用(取得関連費用・のれん償却)と新しく引き取ったマンション分譲会社の先行費用で販管費が9億13百万円増え、借金の利息も2倍強になりました
- 税引前利益の67.0%が税金になりました。子会社の売却益は連結9.84億円・個別17.15億円で、税金は個別の大きい方にかかります。来期予想も経常利益7億30百万円に対し純利益2億60百万円で、暗黙の税負担率は64.4%です
- 来期予想は営業利益の88.9%を下期に置き、配当性向は98.8%。会社予想EPSのPERは約19.8倍、経常利益予想に法定実効税率を当てると約10.3倍で、どちらの物差しで見るかによって同じ会社がまったく違って見えます
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘や投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、日創グループの決算短信(2026年8月期および各四半期、2025年8月期)、適時開示(業績予想の修正・差異、子会社の異動、株式取得、関係会社株式の減損、配当金受領、公認会計士等の異動)、2026年8月期通期決算説明資料、2025年8月期の有価証券報告書です。株価・出来高、2024年8月期の1株配当、2023年・2024年8月期の業績予想の一部は株価情報サイト・報道記事によるもの(報道ベース)で、キャッシュの日付が古い可能性があります。比率・差し引き・試算は筆者の計算です。以下の点にご注意ください。説明資料の中期経営計画のセグメント別売上は図から筆者が読み取った値です(合計が連結売上と一致することは確認しています)。第5章の「売却益を除いた事業の利益に対する税負担率」は、個別ベースの売却益(2026年6月時点の見込額)に法定実効税率を当てた筆者の試算で、会社の開示に基づくものではありません。来期の税負担率の読み方(特別損失を置いている/税負担そのものを重く置いている)、短期借入金の増加と不動産在庫の結びつき、マンションの引き渡しが下期に集中する可能性、粗利率の改善が事業構成の変化によるとの見方、納期の前倒しが来期の売上を減らす可能性は、いずれも筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません。販管費の内訳表の取得関連費用・のれん償却額の行は、販管費の科目内訳との重複がありうる参考値です。2026年8月期の有価証券報告書は執筆時点で未提出のため、当期の税率差異の注記、企業結合の注記、大株主の状況は確認していません。決算説明会(オンラインQ&A)の質疑応答と、説明会の書き起こし・動画は一切反映していません。株主優待の不在は前期の有価証券報告書と会社IRサイトのトップページ等で確認したもので、当期の有価証券報告書と会社IRサイトのFAQは確認していません。株式取得の取得価額は会社が非開示としているため、記載していません。2026年2月・3月に開示された連結子会社での不正アクセスの件は本記事では扱っておらず、その業績への影響も推測していません。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。