株式投資

太陽化学(2902) 食品の裏ラベルに並ぶ「乳化剤」や「食物繊維」を、自分の名前を出さずに作っている会社 なぜ上期は計画を1割以上上回ったのに、通期予想は下期の利益を前年より少なく置いたままなのか?【2026年11月発表・上半期決算】

本記事は2026年11月時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

この記事でわかること

  • 上期(4〜9月)の営業利益が会社の上期予想を13.1%上回ったのに、通期予想を変えなかったことで、下期(10〜3月)の予想がどんな形になっているか
  • 上期の増益が、どの四半期・どの事業から来ていて、7〜9月の3か月だけで見ると何が起きていたか
  • 粗利益は11億円増えたのに、営業利益は3.5億円しか増えなかった理由(販管費の17.5%増)
  • 「上期で据え置き→2月に上方修正」が2期続いた会社の、過去の予想の置き方
  • 配当方針(配当性向35%目処)を今期の数字に当てたときの配当の目安と、自己株式が発行済株式の約3割ある会社の時価総額・PERの見方

この決算をひとことで言うと

この上半期は、海外向けの健康素材がよく売れて、半年の儲けが会社自身の見込みを1割以上上回った決算でした。茶の成分や食物繊維を米国・欧州・アジアの飲料や健康食品の会社が多く買い、作る量が増えたことと、1個あたりの儲けが厚くなったことが両方効きました。それでも会社は1年間の見込みを変えず、計算すると残り半年の儲けを前年の同じ時期より1割少なく見込んだ形になっています。ただし、7〜9月の3か月だけを見ると、健康素材の儲けは前年とほぼ同じで、春先の勢いは続いていません。会社の経費も半年で8億円近く増えており、その中身は説明されていません。次に見るのは、2027年2月の決算で会社が1年の見込みを引き上げるかどうかと、10〜12月に健康素材の儲けが前年を上回るかどうかです。


1. 前提知識:太陽化学はどんな会社か

軸となる例え:裏ラベルの原材料欄にだけ名前が出る材料を作る会社

スーパーで飲料やパン、即席めんの裏ラベルを見ると、原材料欄に「乳化剤」「卵」「食物繊維」「緑茶抽出物」といった言葉が並んでいます。太陽化学(三重県四日市市)は、こうした原材料欄の一語になる材料を作り、食品・飲料・化粧品のメーカーに売っている会社です。店頭の商品に「太陽化学」の名前は出ません。名前が出るのは、買い手のメーカーのブランドです。

この位置にいる会社には、強みと弱みが同じ理由から出てきます。

  • 強み:材料の中でも「テアニン(茶のうまみ成分のアミノ酸)」「水溶性食物繊維」「カテキン」のように、健康機能を名乗れる素材は、他社が簡単に置き換えられず、値段を自分で付けやすい。有価証券報告書は、これらの機能性素材が米国のサプリメント市場などで評価されていると書いています
  • 弱み①(原料):材料の原料は天然産物の割合が高く、天候・相場・地域情勢で仕入れ値が動く(有報「事業等のリスク」)。卵や茶葉の値段は自分で決められない
  • 弱み②(量):何個売れるかは、買い手のメーカーがどれだけ商品を売るかで決まる。とくに海外の健康食品・サプリメント向けは、米国の関税政策のような買い手側の事情に左右される

弱み①は損益の「1個あたりの儲け(率)」に、弱み②は「売れた数(数量)」に対応します。記事の後半では、この2つの物差しで上期の増益と下期の予想を読みます。

事業は3つ、利益の半分超は「名前を名乗れる素材」から

セグメント何を作っているか上期売上(百万円)上期営業利益(百万円)営業利益率海外売上比率
ニュートリションカテキン、テアニン、水溶性食物繊維、ミネラル製剤、ビタミン製剤9,2632,15623.3%64.5%
インターフェイスソリューション乳化剤などの品質改良剤(食品・化粧品・トイレタリー向け)7,7941,10014.1%18.3%
ナチュラルイングリディエント鶏卵加工品、たん白素材、即席食品用素材、安定剤10,5946766.4%15.7%
その他料理飲食等902528.2%11.3%
連結27,7423,95914.3%32.7%

(出典:2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信のセグメント情報。金額は百万円未満切り捨て。海外売上比率は短信の地域別売上(日本以外)から筆者算出)

この表のポイントは2つです。

  1. 売上は3事業でほぼ3等分なのに、営業利益の54.5%はニュートリション1事業が稼いでいます。 健康機能を名乗れる素材ほど利益率が高く、卵や安定剤のような「原料に近い材料」ほど利益率が低い。軸の「強み」と「弱み①」が、そのまま事業の利益率の差になっています
  2. ニュートリションは売上の64.5%が海外です。会社全体の利益の過半を、海外の買い手の注文量(弱み②)が左右する構造です

用語メモ:セグメント利益は、事業ごとに区切った営業利益です。太陽化学はセグメント利益の合計が連結の営業利益と一致する開示(全社費用を各事業に配った後の数字)で、「調整額」の行がありません。

直近3期の業績推移

項目2024年3月期2025年3月期2026年3月期
売上高(百万円)47,66550,04452,484
営業利益(百万円)4,5126,2127,078
経常利益(百万円)2,9546,5737,823
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)2,4114,6245,215
1株当たり当期純利益(円)142.36273.18309.43
自己資本当期純利益率(ROE)5.2%9.5%9.9%
自己資本比率78.2%81.4%79.4%
1株当たり配当(円)5582109
配当性向(連結)38.6%30.0%35.2%

(出典:各期の決算短信。2024年3月期は2025年3月期短信の前期欄)

2024年3月期は営業利益45億円に対し経常利益が30億円で、短信の参考欄に持分法投資損益△2,080百万円が載っています。この期の経常の落ち込みは本業ではなく持分法適用会社の損失によるもので、今期の論点とは別です。

会社予想の達成履歴:2期続けて「上期で据え置き→2月に上方修正」

決算期期初予想(営業利益)期初予想の前期実績比上期予想 → 上期実績(営業利益)上期決算時修正の開示日と修正後実績期初予想比
2024年3月期4,500——据え置き2024年3月18日(営業4,500据え置き、経常4,500→2,800)4,512+0.3%
2025年3月期4,600+1.9%未取得 → 2,963据え置き2025年2月10日(4,600→6,000)6,212+35.0%
2026年3月期6,000△3.4%3,000 → 3,608(120.3%)据え置き2026年2月2日(6,000→7,000)7,078+18.0%
2027年3月期7,000△1.1%3,500 → 3,959(113.1%)据え置き(2026年11月2日)———

(単位:百万円。出典:各期の決算短信・業績予想の修正に関するお知らせ。修正履歴の照合に株予報の修正履歴表を使用。2025年3月期の上期予想は前々期の通期短信を取得していないため空欄。2025年3月期は上期決算と同日に「中間期連結業績予想との差異に関するお知らせ」が出ている)

この表のポイントは2つです。

  1. 直近3期の期初の営業利益予想は、前期実績に対して+1.9%、△3.4%、△1.1%と、ほぼ横ばいに置かれています。そして直近2期は、上期決算では通期を据え置き、第3四半期決算の日(2月)に上方修正しました
  2. 2026年3月期の上方修正のとき、会社は修正理由で、下期に原料費・運送コストを中心とした経費の増加が想定され、米国の関税政策の影響も不透明だったため、と書いたうえで、当初は「保守的に予想しておりました」と述べています(2026年2月2日「通期業績予想及び期末配当予想の修正に関するお知らせ」)。2025年3月期の修正理由も、原料費・運送コストの増加を「予想しておりました」が販売が堅調、という同じ構文でした

ただし、過去2期の形が今期も繰り返されるとは書けません。今期の期初予想は前期実績(営業70.78億円)に対して△1.1%で、2026年3月期の期初予想(前期比△3.4%)より前期実績に近い位置に置かれています。置き方の水準が違う以上、「過去と同じだけ上振れする」とは言えません。

読み方メモ:業績予想の修正の適時開示は、売上高で10%、利益で30%以上ずれる見込みになったときに義務づけられます。開示が出ていないことは「予想どおり進んでいる」ことを意味しません。太陽化学の過去2期の上方修正は、いずれも第3四半期決算と同じ日でした。


2. 決算ハイライト:上期は計画比で利益が大きく上振れ、売上だけ計画にわずかに届かず

2026年11月2日(月)15時40分発表。決算補足説明資料・決算説明会はいずれも「無」です。

損益

項目前上期当上期前年比上期予想(2026年5月11日)上期予想比
売上高26,02327,742+6.6%28,00099.1%(△257)
売上総利益7,9109,016+14.0%——
販売費及び一般管理費4,3025,057+17.5%——
営業利益3,6083,959+9.7%3,500113.1%(+459)
経常利益3,8764,131+6.6%3,600114.8%(+531)
親会社株主に帰属する中間純利益2,3912,881+20.5%2,400120.1%(+481)
1株当たり中間純利益(円)141.72172.09+21.4%143.41—

(単位:百万円。百万円未満切り捨て。出典:2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信、2026年3月期 決算短信の「2027年3月期の連結業績予想(第2四半期(累計))」)

この表のポイントは3つです。

  1. 売上は計画に2.6億円届かず、利益だけが計画を4〜5億円上回りました。 売れた量ではなく、1個あたりの儲け(率)が計画を上回ったことになります
  2. 粗利益は11.06億円増えたのに、営業利益の増加は3.51億円です。差の7.55億円は販管費の増加で、販管費は前年比+17.5%と売上の伸び(+6.6%)の2.6倍で増えました。中間短信には販管費の内訳がなく、会社は増加の理由を書いていません
  3. 純利益の+20.5%は、営業利益の+9.7%より大きく見えますが、主因は前年の上期にあった特別損失「役員退職慰労金」2.40億円がなくなったことと、税負担率の低下です(後述)

計算メモ:営業利益の増減3.51億円を3つに分けると、〈数量効果〉売上増17.19億円×前年の粗利率30.40%=+5.23億円、〈率効果〉粗利率の改善(30.40%→32.50%)×当期売上=+5.84億円、〈販管費〉△7.55億円で、合計+3.51億円が実際の増益額と一致します(筆者の算出)。

経常利益と純利益の伸びが違う理由

項目前上期当上期
営業外収益322301
 うち為替差益69—
 うち受取利息2679
営業外費用54129
 うち為替差損—58
特別利益—50(固定資産売却益)
特別損失244(うち役員退職慰労金240)54(固定資産除売却損)
税金等調整前中間純利益3,6314,127
法人税等1,1001,108
税負担率30.3%26.9%
非支配株主に帰属する中間純利益139137

(単位:百万円。税負担率は〈法人税等÷税金等調整前中間純利益〉で筆者算出)

為替が前年の差益0.69億円から差損0.58億円に変わり、経常の伸び(+6.6%)は営業(+9.7%)より小さくなりました。一方で、前年の役員退職慰労金2.40億円を足し戻すと、税引前利益の伸びは+6.6%で経常と同じです。**純利益の+20.5%のうち、本業の伸びで説明できるのは経常と同じ+6.6%程度で、残りは前年の一度きりの費用がなくなったことと税負担率の低下(30.3%→26.9%)**です。

用語メモ:太陽化学は中間期の税金を「見積実効税率」で計算しています。通期の税引前利益に対する実効税率を会社が見積もり、それを中間期の税引前利益に掛ける方法です。中間期の税負担率26.9%は、会社が今期1年について見込んだ負担率に近い数字です(短信の注記)。

財政状態

項目2026年3月末2026年9月末増減
現金及び預金13,87913,655△224
受取手形及び売掛金11,13312,043+909
商品及び製品6,7937,548+754
原材料及び貯蔵品4,1283,951△177
投資有価証券6,7547,477+723
総資産69,59971,526+1,927
長期借入金383376△6
純資産56,85158,710+1,859
自己資本比率79.4%79.6%+0.2pt

(単位:百万円)

借入金は長期借入金3.76億円だけで、現預金136.55億円との差(ネット現金)は約132.8億円です。商品及び製品が半年で7.54億円増えていますが、中間短信に理由の記載はありません。

注記:中間決算短信にはキャッシュ・フロー計算書が載っていません。上期の営業キャッシュ・フローは、半期報告書(短信表紙の提出予定日は2026年11月4日)で確認が必要です。


3. 深掘り①:上期の増益は、4〜6月とニュートリションに偏っていた

ここからが本記事の問いです。上期が計画を1割以上上回ったのに、通期予想が下期を前年より少なく置いたままなのはなぜか。 その前に、上期の上振れが「どこで」起きたかを確かめます。

10四半期の差し引き

太陽化学の短信は累計値でしか損益を開示しません。各四半期の累計から前の四半期の累計を引いて、3か月ごとの数字を出しました。

四半期売上高営業利益経常利益純利益営業利益率
2025年3月期 4〜6月12,4611,4151,53698211.4%
7〜9月12,5251,5481,5041,26912.4%
10〜12月12,9381,6191,8421,26512.5%
1〜3月12,1181,6281,6901,10713.4%
2026年3月期 4〜6月12,7791,6581,7601,03813.0%
7〜9月13,2441,9492,1151,35314.7%
10〜12月13,5531,8682,1101,41313.8%
1〜3月12,9061,6021,8361,41012.4%
2027年3月期 4〜6月13,6181,9222,1181,43614.1%
7〜9月14,1242,0362,0121,44414.4%

(単位:百万円。各期の決算短信の累計値から筆者が差し引き。千円単位で差し引いた後に百万円未満を切り捨て。2025年3月期・2026年3月期は4四半期の合計が通期の開示値と一致することを確認済み)

読み方メモ:累計しか開示しない会社では、3か月ごとの数字は自分で引き算するしかありません。たとえば今期の7〜9月の営業利益は、上期累計3,959百万円から4〜6月の1,922百万円を引いた2,036百万円(千円単位で計算して切り捨て)です。

この表のポイントは2つです。

  1. 営業利益の前年比は、4〜6月が+15.9%、7〜9月が+4.5% です。上期合計の+9.7%は、伸びの大半が4〜6月で出た結果です
  2. 7〜9月の営業利益率14.4%は、前年の7〜9月(14.7%)を下回りました。経常利益は7〜9月だけで見ると前年比△4.9%(2,115→2,012)で、為替差損が効いています

過去2年で「7〜9月が上期の山」という形は2回出ています(2025年3月期・2026年3月期とも7〜9月の利益が4〜6月を上回る)。今期も7〜9月が4〜6月を上回りましたが、2年分の形しか確かめられないので、季節性とまでは書けません。

事業別に割ると、ニュートリションの7〜9月はほぼ横ばい

セグメント営業利益前年4〜6月当年4〜6月前年比前年7〜9月当年7〜9月前年比
ニュートリション7831,063+35.7%1,0871,093+0.6%
インターフェイスソリューション574542△5.6%521557+6.8%
ナチュラルイングリディエント287305+6.2%327371+13.5%
セグメント売上高前年4〜6月当年4〜6月前年比前年7〜9月当年7〜9月前年比
ニュートリション3,8494,592+19.3%4,4074,671+6.0%
インターフェイスソリューション3,6543,776+3.3%3,4694,017+15.8%
ナチュラルイングリディエント5,2345,204△0.6%5,3225,389+1.3%

(単位:百万円。前年比は千円単位の値で計算。第1四半期短信と中間短信のセグメント情報から筆者が差し引き。セグメント売上は地域別外部売上の合計)

この表が今回の決算で一番大事な数字です。上期の増益3.51億円のうち2.86億円はニュートリションですが、そのほとんどは4〜6月の+2.80億円で、7〜9月のニュートリションは前年比+0.6%(+0.06億円)にとどまりました。 前年の7〜9月(1,087百万円)は、今期の7〜9月を含む10四半期の中で2番目に大きいニュートリションの四半期で、比べる相手が高かったことも、伸びが小さく見える理由の一つです。

7〜9月に伸びたのは、むしろ利益率の低い2事業(インターフェイスソリューション+6.8%、ナチュラルイングリディエント+13.5%)でした。インターフェイスソリューションは7〜9月の売上が+15.8%なのに利益は+6.8%で、上期の営業利益率は15.4%→14.1%に下がっています。

軸に戻すと、上期の上振れは「名前を名乗れる素材(強み)」が4〜6月に海外でよく売れたことによるもので、7〜9月はその勢いが止まり、原料に近い材料の側で利益を積んだ形です。

ニュートリションの地域別:米国より欧州・アジア

ニュートリションの地域別売上(上期)前上期当上期前年比
日本3,1153,287+5.5%
アジア654855+30.9%
アメリカ3,5283,873+9.8%
欧州9591,247+30.0%

(単位:百万円。中間短信の収益の分解情報)

会社は品目別に、水溶性食物繊維は国内・アジア・欧米で増加、カテキンは米国が減少し国内・アジアが増加、ミネラル製剤はアジア・欧米で増加、テアニンは米国が増加し国内が減少、と書いています(中間短信の定性的情報)。品目別の金額は開示されていません。

注記:当四半期について、決算補足資料・決算説明会はありません。本文の会社の説明はすべて中間短信の定性的情報によるもので、7〜9月にニュートリションの伸びが止まった理由を会社は説明していません。理由について筆者は推測しません。


4. 深掘り②:据え置いた通期予想は、下期にどんな形を置いているか

前の章で、上期の上振れは4〜6月とニュートリションに偏っていたことを確かめました。次は、会社が通期予想を据え置いたことで、下期(10〜3月)にどんな数字が残ったかです。

残り期間の含み

項目通期予想上期実績予想が置いた下期前年の下期前年下期比
売上高55,00027,74227,25726,460+3.0%
営業利益7,0003,9593,0413,470△12.4%
経常利益7,2004,1313,0693,948△22.3%
親会社株主に帰属する当期純利益4,8002,8811,9192,824△32.1%
営業利益率12.7%14.3%11.2%13.1%—

(単位:百万円。〈通期予想−上期実績〉で筆者算出。前年の下期は2026年3月期の通期実績から上期実績を引いた値)

読み方メモ:この「予想が置いた下期」は、会社が下期の予想を発表したものではありません。会社が通期予想を変えずに上期実績が出たので、引き算をするとこうなる、という計算上の結果です。会社は「2026年5月11日公表の通期予想に変更はありません」とだけ書いています(中間短信)。

この表のポイントは2つです。

  1. 予想が置いた下期は、売上は前年の下期より+3.0%増えるのに、営業利益は△12.4%減る形です。下期の営業利益率11.2%は、前年の下期13.1%、2025年3月期の下期13.0%を下回ります
  2. 経常利益・純利益の下期はさらに大きく減る形で、純利益は△32.1%です。下期の〈1−純利益÷経常利益〉は37.5%で、上期実績の30.3%、前年下期の28.5%より大きい控除を置いた計算になります

過去2期、同じ時点の「予想が置いた下期」と実際の下期

決算期上期決算時点の予想が置いた下期(営業利益)実際の下期達成率予想が置いた下期の売上実際の下期の売上
2025年3月期1,6363,248199%24,01325,057
2026年3月期2,3923,470145%24,97626,460
2027年3月期3,041——27,257—

(単位:百万円。各期の期初通期予想から上期実績を引いた筆者の算出)

過去2期は、上期決算時点の予想が置いた下期を、実際の下期が1.5〜2倍で上回りました。ただし、置き方の厳しさは年によって違います。2026年3月期の予想が置いた下期(2,392)は前年の下期実績(3,248)より△26%低い置き方でしたが、今期の置き方(3,041)は前年の下期実績(3,470)に対して△12%です。 過去2期ほどの低さではないので、「過去と同じ倍率で上振れする」とは書けません。

予想の下期は「表のどこ」に置かれているか

下期の営業利益は、〈下期売上×粗利率−販管費〉です。売上を予想どおり27,257百万円とし、粗利率と販管費を変えて下期の営業利益を出しました。

下期の粗利率 \ 下期の販管費4,626(前年下期並み)5,058(今期上期並み)5,300(今期上期の約+5%)5,500
30.6%(前年下期並み)3,7153,2833,0412,841
31.5%(中間)3,9603,5283,2863,086
32.5%(今期上期並み)4,2323,8013,5593,359

(単位:百万円。筆者の試算で、将来の見通しではありません。固定した前提:下期売上=会社予想が置いた27,257百万円。販管費の4,626は2026年3月期の下期実績、5,058は今期上期実績。会社は下期の粗利率・販管費の計画を開示していません)

この表のポイントは、会社予想の下期(3,041)が、「粗利率が前年下期の水準まで戻り、販管費が上期よりさらに増える」マスに位置していることです。上期並みの粗利率(32.5%)が続く場合、予想に届くには下期の販管費が5,818百万円(上期比+15%)まで増える必要があります。

これをどう読むかは、2通りに分かれます。

  • 強気の読み:予想は「原料高が戻り、経費も増え続ける」という厳しい前提の組み合わせに置かれている。過去2期と同じく控えめな置き方で、上期の粗利率が少しでも残れば予想を上回る余地がある
  • 弱気の読み:上期の販管費はすでに前年比+17.5%で増えていて、その理由が開示されていない。7〜9月のニュートリションは前年並みで、上期の上振れを生んだ4〜6月の勢いは続いていない。前年の下期の粗利率(30.6%)に戻ることは、2025年3月期の下期(29.4%)も含めて過去の範囲内の出来事で、予想の下期は「ありえない低さ」ではない

同じ表の同じ数字が、両方の読みの根拠になります。

税金の行で見た予想の下期

物差し〈1−純利益÷経常利益〉
今期の通期予想(2026年5月11日)33.3%
今期上期の実績30.3%
予想が置いた下期37.5%
2026年3月期の通期実績33.3%
2026年3月期の下期実績28.5%

(筆者算出。税金・非支配株主の取り分・特別損益をまとめた控除の割合)

今期の通期予想の控除割合33.3%は、前期の通期実績と同じ数字です。一方、上期の税負担率は見積実効税率で26.9%でした。仮に経常利益が予想どおり72億円でも、上期と同じ税負担率(26.9%)と非支配株主の取り分(税前の3.3%)を当てると、純利益は約50億円になり、予想の48億円を上回ります(筆者の試算。特別損益ゼロを前提)。

ここも2通りに読めます。会社が下期に特別損失などを置いている可能性と、5月に置いた控除割合を見直していないだけの可能性です。会社は下期の特別損益の見込みを開示していないので、どちらかは判断できません。


5. 深掘りのまとめ:3つの数字を1本の線でつなぐ

ここまでの3つの数字を、軸の言葉でつなぎます。

  • **上期の上振れ(計画比+4.6億円)**は、「名前を名乗れる素材」が4〜6月に海外で売れ、1個あたりの儲けが計画を上回ったことによるものでした(強み)
  • 7〜9月のニュートリションは前年並みで、海外の買い手の注文量という「自分で決められないもの」(弱み②)の振れが、春先の勢いを止めた形に見えます。会社は理由を説明していません
  • 据え置いた予想の下期は、原料価格(弱み①)が前年下期の粗利率まで戻り、経費も増え続ける前提の位置にあります。会社が過去2期、原料費・運送コスト・関税を理由に下期を控えめに置き、2月に上方修正してきた事実と並べると、今期も同じ形になるかは、2027年2月の第3四半期決算で分かります

6. セグメント別の補足

ニュートリション(上期:売上+12.2%、営業利益+15.3%)

上期の営業利益率は22.7%→23.3%に上がりました。海外向けが売上の64.5%で、欧州(+30.0%)とアジア(+30.9%)の伸びが米国(+9.8%)を上回っています。2026年3月期の通期では、ニュートリションの米国向け売上は71.26億円(前期55.59億円、+28.2%)でした。

インターフェイスソリューション(上期:売上+9.4%、営業利益+0.3%)

乳化剤などの品質改良剤です。売上は伸びたのに利益はほぼ横ばいで、営業利益率は15.4%→14.1%に下がりました。会社は、一般食品用途と化粧品・トイレタリー用途が増え、飲料用途が減ったと書いています。利益率が下がった理由の説明はありません。

ナチュラルイングリディエント(上期:売上+0.4%、営業利益+10.1%)

鶏卵加工品・即席食品用素材・安定剤です。売上はほぼ横ばいで、利益率が5.8%→6.4%に上がりました。会社は、鶏卵加工品は乳製品・加工食品用途の液卵加工品・粉末卵が増えたがめん用途等の粉末卵が減って前年を下回り、即席食品用素材は国内・アジアで増え、安定剤は減った、と書いています。軸の弱み①(卵の値段)が一番効く事業で、上期は率で利益を積みました。

注記:海外の生産拠点として、有報には中国の開封(カイフォン)に鶏卵加工品等の工場、無錫(ウーシー)に緑茶抽出物の工場、インドに食物繊維の工場があると書かれています。連結子会社の決算日(海外子会社が12月決算で3か月ずれて連結されているかどうか)は、今回確認できていません。そのため、本記事の「4〜6月」「7〜9月」は親会社の月で表記しており、海外子会社分が何月の数字かは確定していません。


7. 資本政策・株主還元

株主優待:制度なし(会社IRサイトの株式情報に記載なし)

会社IRサイトの「株式の基本情報」に株主優待の記載はありません。当期(2026年3月期)の有価証券報告書の「株主に対する特典」欄は、今回確認できていません。「調べた範囲で見当たらない」という意味で、会社が制度がないと明言しているわけではありません。

配当方針と今期の配当予想

会社の配当方針は、2025年5月7日に変更されました。

項目2025年3月期まで2026年3月期以降
基準配当年間20円(中間10円・期末10円)年間40円(中間20円・期末20円)
配当性向の目処30%35%

(出典:2025年5月7日「2025年3月期剰余金の配当および2026年3月期以降の配当方針の変更に関するお知らせ」)

会社は、安定的な基準配当年間40円に業績に応じた利益還元分を加え、配当性向35%を目処とする、と書いています(2026年3月期決算短信)。

決算期修正前の配当予想修正後予想(2月)実績修正前予想比実績の配当性向配当の決め方
2024年3月期——55円—38.6%確認していない
2025年3月期57円75円82円+44%30.0%基準配当20円+性向30%目処
2026年3月期83円104円109円+31%35.2%基準配当40円+性向35%目処
2027年3月期101円(中間20円・期末81円)———予想35.2%同上

(出典:各期の決算短信・修正開示。「修正前の配当予想」は2月の修正開示に記載された前回予想。2026年3月期は期初予想と同額。配当性向は連結)

この表のポイントは2つです。

  1. 今期の予想101円は、予想EPS286.82円の35.2% です。配当は事実上「連結純利益の35%」で決まっていて、純利益の予想が動けば期末配当予想も動く形です
  2. 過去2期は、期末配当予想を2月の業績予想修正と同じ日に引き上げ、実績はさらにその上で着地しました

計算メモ:配当性向35%を前提に、純利益ごとの1株配当の目安を出すと、純利益48億円で約100円、52億円で約109円、56億円で約117円、60億円で約125円です(筆者の試算で、将来の配当予想ではありません。株数は2026年9月末の自己株式控除後16,750,841株で固定)。

中間配当20円の支払開始予定日は2026年12月1日(火)です。期末配当の基準日は2027年3月31日(水)で、権利付き最終日は2営業日前の2027年3月29日(月)です。

自己株式が発行済株式の28.8%

項目株数
発行済株式総数(自己株式を含む)23,513,701株
自己株式6,762,860株(28.76%)
自己株式控除後16,750,841株
中間期の期中平均株式数16,743,058株(前上期16,876,539株)

(2026年9月末。出典:中間短信)

自己株式が発行済株式の約3割あるため、時価総額は株数の取り方で大きく変わります(第8章)。

直近の自己株式取得は、2026年2月10日に名古屋証券取引所の自己株式立会外買付取引(N-NET3)で149,200株(1株2,794円、総額4.17億円)でした。取得枠(上限20万株・5.2億円)に対し株数で74.6%を取得して終了しています。2024年12月にも同じ方法で取得しています。一方で、取締役・執行役員への譲渡制限付株式の付与に自己株式を使っていて(2025年7月・2026年7月に処分の払込完了)、自己株式は取得と処分の両方で動いています。

計算メモ:1株当たり純利益の伸び(+21.4%)と純利益の伸び(+20.5%)の差は、期中平均株式数の減少(△0.8%)で説明できます。1.2047÷0.9921=1.2143で、EPSの実際の伸び(172.09÷141.72=1.2143)と一致します。

潜在株式調整後1株当たり当期純利益は「潜在株式が存在しない」ため記載がありません(2026年3月期短信)。株式分割は直近ありません(調整不要)。

手元資金と投資有価証券

借入は長期借入金3.76億円のみで、現預金136.55億円、投資有価証券74.77億円です。投資有価証券は半年で7.23億円増え、その他有価証券評価差額金は3.62億円増えました。2026年3月期は短期借入86億円を借りて返していて、年間を通じた資金の回し方は期末残高だけでは見えません。


8. 株価の見方

株価に依存する数字はこの章に集めます。株価は2026年11月4日(水)の終値2,729円(株探の時系列)です。

決算への反応

決算発表は11月2日(月)15時40分で、取引終了後です。11月2日の終値2,760円は発表前の値です。11月3日(火)は祝日で、発表後に最初に取引されたのは11月4日(水)で、終値2,729円(前営業日比△31円、△1.12%)、出来高9,200株でした(11月2日の出来高は5,300株)。値動きの理由は書きません。

太陽化学は名古屋証券取引所メイン市場の単独上場で、普段の出来高は1日数千株です。思った値段で売買できない可能性がある銘柄であることは、弱気側の材料として事実で置いておきます。

株数の取り方で変わる数字

指標自己株式控除後(16,750,841株)発行済株式ベース(23,513,701株)
時価総額457億円642億円
予想PER(会社予想EPS286.82円)9.5倍—
実績PER(2026年3月期EPS309.43円)8.8倍—
PBR(1株当たり自己資本3,401円)0.80倍—
予想配当利回り(101円)3.70%—

(筆者算出。株探の時価総額表示642億円は発行済株式ベース。1株当たり自己資本は2026年9月末の自己資本56,969百万円÷自己株式控除後株数)

時価総額は、株価情報サイトに表示される642億円と、自己株式を除いた457億円で、185億円の差があります。会社の予想EPS286.82円は、予想純利益48億円を2026年3月末の自己株式控除後株数(16,735,190株)で割った値とほぼ一致し、9月末の株数で割り直しても286.55円で、PERはどちらでも9.5倍です。

ネット現金(約133億円)は自己株式控除後の時価総額の約29%、投資有価証券を足すと約45%です。これは「現金や投資有価証券を株主に返す場合に限って意味を持つ計算」で、会社が還元を約束しているわけではありません。

強気・弱気の材料

強気の材料

  • 上期は営業利益が計画を13.1%上回り、計画どおりなら下期は前年比△12.4%の減益を置いた形。予想の下期は、粗利率が前年下期並みに戻り販管費も増え続ける前提の位置にある(第4章の表)
  • 過去2期は上期で据え置き、2月に上方修正。会社自身が当初予想を「保守的」と書いた年がある
  • 配当は連結純利益の35%で決まる方針で、利益が予想を上回れば期末配当に反映されてきた
  • 自己資本比率79.6%、借入はほぼなし

弱気の材料

  • 7〜9月のニュートリション(利益の過半を稼ぐ事業)の営業利益は前年比+0.6%で、上期の増益は4〜6月に偏っていた
  • 販管費が前年比+17.5%(7〜9月は+20.0%)で、理由が開示されていない
  • 今期の期初予想は前期実績比△1.1%で、過去2期より前期実績に近い置き方。過去と同じ倍率の上振れは前提にできない
  • 海外売上比率32.7%(ニュートリションは64.5%)で、為替は上期に差損に転じた。米国の関税政策を会社は前期の修正理由で不透明要因に挙げていた
  • 名証単独上場で出来高が少ない

9. 今後のカレンダーと見るべきKPI

時期イベント見るところ
2026年11月4日半期報告書の提出予定日上期のキャッシュ・フロー、販管費の内訳の手がかり
2026年12月1日(火)中間配当20円の支払開始—
2027年2月上旬(前期は2月2日、前々期は2月10日)第3四半期決算通期予想・期末配当予想の修正の有無。10〜12月のニュートリションの営業利益(前年926百万円)
2027年3月29日(月)期末配当の権利付き最終日—
2027年3月31日(水)期末・配当基準日—
2027年5月中旬(前期は5月11日)通期決算・2028年3月期予想期初予想の前期実績比、上期予想の置き方

見るべきKPI

  • ニュートリションの単独四半期の営業利益(前年の10〜12月926百万円、1〜3月959百万円)
  • 単独四半期の粗利率(今期4〜6月32.3%、7〜9月32.7%。前年下期30.6%)と販管費(今期7〜9月2,588百万円)
  • 地域別売上の海外比率(上期32.7%)と為替差損益
  • 期末配当予想(81円)の修正の有無

10. 3行まとめ

  • 上期は営業利益が計画を13.1%上回ったが、増益は4〜6月とニュートリションに偏り、7〜9月のニュートリションは前年並みだった
  • 通期予想の据え置きで、下期は売上+3.0%・営業利益△12.4%の形が残った。この形は「粗利率が前年下期に戻り、販管費が上期より増える」前提の位置にある
  • 過去2期は2月に上方修正したが、今期は期初予想の置き方が違う。配当は純利益の35%で決まるので、2月の第3四半期決算が配当の目安も動かす

本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。

本記事は投資勧誘・投資助言を目的としたものではありません。数値の出典は、太陽化学の決算短信(2025年3月期〜2027年3月期第2四半期)、業績予想及び期末配当予想の修正に関するお知らせ(2025年2月10日・2026年2月2日)、配当方針の変更に関するお知らせ(2025年5月7日)、自己株式取得に関する開示(2026年2月2日・10日)、2026年3月期有価証券報告書(EDINETの記載のうち事業等のリスク・経営方針)、会社IRサイトの株式の基本情報です。株価・出来高は株探の時系列データ、修正履歴の照合には株予報の修正履歴表を使いました(いずれも照合・報道ベース)。四半期の差し引き、計画比、残り期間の含み、感応度表、配当の目安、時価総額・PER・PBRは筆者の算出・試算です。本記事で踏み込まなかった論点・確認できていない点は次のとおりです。当四半期については決算補足資料・決算説明会がなく、会社の追加説明・質疑応答は一切反映していません。7〜9月にニュートリションの伸びが止まった理由、販管費が増えた理由、インターフェイスソリューションの利益率が下がった理由は会社が説明しておらず、筆者も推測していません。中間決算短信にキャッシュ・フロー計算書がないため、上期のキャッシュ・フローは半期報告書で確認が必要です。2026年3月期有価証券報告書のPDFはテキスト層がなく、連結子会社の事業年度(決算日のずれ)、大株主の状況、株主に対する特典欄、税率差異の注記は確認できていません。株主優待の不在は会社IRサイトの記載によるもので、有報の特典欄とは突き合わせていません。2025年3月期の上期予想は取得していません。予想が置いた下期の特別損益・税負担について、会社は見込みを開示しておらず、本文の2通りの読みは筆者の整理です。

記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。

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