本記事は2026年10月7日時点の公開情報に基づく個人の分析メモです。執筆には生成AIを利用していますが、数値は筆者が一次情報と照合しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
エヌ・ピー・シー(6255、東証グロース、8月決算)が2026年10月7日15時30分に、2026年8月期の通期決算を発表しました。売上高は前期比37.3%減の58億11百万円、営業利益は55.9%減の8億46百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は63.7%減の4億81百万円です。
同じ時刻に、2027年8月期から2031年8月期までの5か年の中期経営計画も公表しました。来期(2027年8月期)の会社予想は売上高98億95百万円(+70.3%)、営業利益13億80百万円(+62.9%)です。この会社は1年前の2025年10月9日に、前の中期経営計画の数値目標を「妥当性や正確性を担保することが困難」として取り下げていました。
数字だけを並べると「大幅減収減益の翌年に急回復を見込む」という話に見えます。ところが中身を分けると、減った売上の大半は消えたのではなく「来期に回った」もので、利益率はむしろ上がっていました。この記事では、①今期の売上と利益がどの3か月で生まれたか、②来期予想が上期と下期に何を置いているか、③会社自身が開示した「粗利率の予算と実績の差」をどう読むか、の3段階で数字を追います。
この記事でわかること
- 今期の営業利益8億46百万円のうち95.3%(8億07百万円)が6〜8月の3か月で出ていたこと。9〜5月の9か月の粗利率は48.8%、6〜8月は28.3%だったこと(筆者の差し引き)
- 営業利益の減少10億73百万円を「数量」「粗利率」「販管費」に分けると、ほぼ全額が売上の減少(△11億58百万円)で、粗利率はむしろ+82百万円の押し上げだったこと
- 第3四半期の時点で会社予想が6〜8月に置いていた売上61億54百万円に対し、実際は39億51百万円(達成率64.2%)、営業利益は112.1%だったこと。過去3期とも「売上は届かないか届く程度、営業利益は上回る」形だったこと
- 期末の受注残高74億21百万円は来期売上予想の75.0%に当たり、来期の増収は上期(+349.6%)に集中していること。下期の営業利益予想は今期の下期より18.4%少ないこと
- 来期予想の粗利率は27.4%で、今期の34.8%より7pt以上低い。会社自身が「売上総利益率は予想を上振れる傾向」と書き、過去4期の予実差(+4.1〜+10.4pt)を開示していること
- 来期の純利益予想8億26百万円は、経常利益予想に対して税負担率41.7%に相当し、直近3期(30.9〜31.5%)より約10pt高いこと(筆者の逆算)
- 新しい配当方針(配当性向25%・下限DOE2%)、5億円の自己株式取得、主要顧客First Solar社への売上依存度77.8%(前期)と中計の「FS社以外60%以上」という目標
1. エヌ・ピー・シーはどんな会社か:「太陽電池工場の“ライン大工”」
軸となる例え
アメリカのサウスカロライナ州に、太陽電池メーカーの新しい工場ができる場面を想像してください。建屋はできた。次に必要なのは、パネルを組み立てる生産ラインです。マレーシアとベトナムの工場で動いていた設備を取り外し、運び、据え付け直し、新しい製品向けに一部を作り替える。この「引っ越し」と「リフォーム」を、元の設備を作った会社に頼む。
エヌ・ピー・シーは、この仕事を請け負う会社です。1992年に真空包装機のメーカーとして設立され、1994年に太陽電池業界向けの真空ラミネーター(パネルを貼り合わせる装置)を売り始めました(有価証券報告書の沿革)。今は愛媛県の松山工場で、太陽電池の製造装置を注文に合わせて一品ずつ組み立てています。
この記事では、この会社を**太陽電池工場の「ライン大工」**と呼びます。大工の仕事は3種類あります。
- 新築:新しい製造装置・製造ライン(国内のペロブスカイト太陽電池メーカー向けの大型案件など)
- リフォーム:既存設備の改造(新製品に合わせた作り替え)
- 引っ越し:設備の移設(工場から工場への移動・据え付け直し)
そして大工の代金は、施主が完成を確認して鍵を受け取った日(検収)に立ちます。この1文から、強みと弱みが同じように出てきます。
- 強み(自分が建てた家):リフォームと引っ越しは、自分が作った設備を一番よく知っている大工にしかできない。だから利益率が高い。会社自身も「利益率の高い案件(移設・改造)」と書いています
- 弱み①(鍵の受け渡し日を決められない):装置を出荷しても、客先の工場で調整が終わり検収されるまで売上は立たない。決算期末を1日でも越えれば、売上は翌期に回る
- 弱み②(施主が1社に偏っている):最大の施主は米国のFirst Solar社で、前期の売上の77.8%を占めました(有報の「主要な顧客ごとの情報」から筆者の計算)。施主の工場計画が、そのまま大工の仕事量になる
この3つを、この記事の中で順番に回収していきます。
事業の構造(製品カテゴリ別の売上)
| 製品カテゴリ | 主な中身 | 2025年8月期 | 2026年8月期 | 前期比 | 構成比(2026年8月期) |
|---|---|---|---|---|---|
| 太陽電池製造装置 | 新規装置・ライン、改造、移設 | 71億59百万円 | 44億94百万円 | △37.2% | 77.3% |
| FA装置 | 電子部品・自動車業界向けの自動化装置、真空ラミネーター | 7億72百万円 | 67百万円 | △91.2% | 1.2% |
| 太陽光パネルリサイクル装置 | フレーム・J-Box分離装置、ガラス分離装置、EVAスクレーパー | 2億28百万円 | 3億23百万円 | +41.9% | 5.6% |
| 部品 | 納入済み装置の交換部品・消耗品 | 9億71百万円 | 7億91百万円 | △18.5% | 13.6% |
| 環境関連サービス | 太陽光発電所の検査、パネルのリユース・中間処理、植物工場 | 1億41百万円 | 1億34百万円 | △5.0% | 2.3% |
| 合計 | 装置関連事業の単一セグメント | 92億72百万円 | 58億11百万円 | △37.3% | 100% |
出典:2026年8月期・2025年8月期決算短信の「販売実績」。前期比・構成比は筆者の計算。株主優待:制度なし(§6で詳述)。
この表のポイントは2つです。
1つ目は、売上の8割近くが太陽電池製造装置で、その増減が全社の増減をほぼ決めることです。
2つ目は、伸びたのは太陽光パネルリサイクル装置だけだったことです。今期は国内・海外の企業向けにフレーム・J-Box分離装置5台、ガラス分離装置3台、EVAスクレーパー1台を売り上げました(短信)。一方、前の中期経営計画で「第二の主要顧客」と位置付けていた電子部品業界向けのFA装置は、7億72百万円から67百万円に減りました。
直近の業績推移:売上が1年で4割動く会社
| 決算期 | 売上高 | 前期比 | 経常利益 | 純利益 | EPS | ROE | 1株配当 | 配当性向(連結) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021年8月期 | 78億23百万円 | — | 11億51百万円 | 7億78百万円 | 35.54円 | 11.7% | 2円 | 5.6% |
| 2022年8月期 | 43億79百万円 | △44.0% | 6億17百万円 | 3億79百万円 | 17.60円 | 5.4% | 2円 | 11.4% |
| 2023年8月期 | 93億20百万円 | +112.8% | 9億63百万円 | 9億93百万円 | 46.16円 | 13.1% | 6円 | 13.0% |
| 2024年8月期 | 107億97百万円 | +15.8% | 24億26百万円 | 16億76百万円 | 77.81円 | 18.9% | 10円 | 12.9% |
| 2025年8月期 | 92億72百万円 | △14.1% | 19億22百万円 | 13億25百万円 | 61.36円 | 12.9% | 10円 | 16.3% |
| 2026年8月期 | 58億11百万円 | △37.3% | 8億80百万円 | 4億81百万円 | 22.84円 | 4.5% | 10円 | 43.8% |
| 2027年8月期(会社予想) | 98億95百万円 | +70.3% | 14億17百万円 | 8億26百万円 | 39.44円 | — | 11円 | 27.9% |
出典:2021〜2025年8月期は有報「主要な経営指標等の推移」、2026年8月期と予想は決算短信。前期比・配当性向は筆者の計算(有報の配当性向は単体ベースのため、連結EPSで計算し直しています)。
この6年で、売上が前年から4割以上動いた年が3回あります(△44.0%、+112.8%、△37.3%)。新しい中期経営計画の資料も、現状の課題の筆頭に「業績の変動大」を挙げ、「短期業績の見通しが不透明」「投資や株主還元に踏み切りにくい」と自ら書いています。大型案件の検収がどの期に入るかで、年の数字が決まる会社です。
会社予想の達成履歴:売上は外れ、営業利益は上振れる
| 決算期 | 期初予想(売上/営業利益) | 期中の修正(開示日) | 実績 | 期初予想比(売上/営業利益) |
|---|---|---|---|---|
| 2024年8月期 | 103億84百万円/15億84百万円 | 109億95百万円/21億49百万円(2024年4月10日、上期決算と同日) | 107億97百万円/24億36百万円 | +4.0%/+53.8% |
| 2025年8月期 | 109億25百万円/20億69百万円 | 92億94百万円/19億04百万円(2025年4月10日、上期決算と同日) | 92億72百万円/19億20百万円 | △15.1%/△7.2% |
| 2026年8月期 | 80億14百万円/7億60百万円 | 上期決算・第3四半期決算では据え置き→58億11百万円/8億46百万円(2026年9月30日、決算期末後) | 58億11百万円/8億46百万円 | △27.5%/+11.3% |
| 2027年8月期 | 98億95百万円/13億80百万円 | — | — | — |
出典:各期の決算短信、業績予想の修正(2024年4月10日・2025年4月10日・2026年9月30日)。予想比は筆者の計算。
この表のポイントは2つです。
- 3期のうち2期で売上は期初予想に届かず、営業利益は3期のうち2期で期初予想を上回りました。売上が15%外れた2025年8月期でも、営業利益の外れは7%にとどまっています
- 今期は、上期決算(4月8日)でも第3四半期決算(7月10日)でも通期予想を据え置き、決算期末を過ぎた9月30日に修正しました。期中の据え置きは「予想どおり」を意味しなかったことになります(理由は§2)
「予想が置いていた6〜8月」と「実際の6〜8月」
第3四半期決算の時点で、通期予想から9か月の累計実績を引くと、会社予想が最後の3か月(6〜8月)に置いていた数字が出ます。
| 決算期 | 予想が置いた6〜8月の売上 | 実際 | 達成率 | 予想が置いた6〜8月の営業利益 | 実際 | 達成率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年8月期 | 60億39百万円 | 58億41百万円 | 96.7% | 11億82百万円 | 14億69百万円 | 124.3% |
| 2025年8月期 | 52億63百万円 | 52億41百万円 | 99.6% | 12億38百万円 | 12億54百万円 | 101.3% |
| 2026年8月期 | 61億54百万円 | 39億51百万円 | 64.2% | 7億21百万円 | 8億07百万円 | 112.1% |
筆者の計算。「予想が置いた6〜8月」=第3四半期決算時点の通期予想−第3四半期累計実績。
3期とも、最後の3か月の売上は予想以下、営業利益は予想以上でした。今期は売上の外れが特に大きく(21億円強)、それでも営業利益は予想を上回りました。§1の軸で言えば、「鍵の受け渡し日」は外れやすいが、「引き渡した仕事の利益率」は会社の想定より高く出やすい、という形です。この形が来期予想の読み方を決めます(§5)。
中期経営計画の変遷:取り下げから1年で、5年計画へ
| 公表日 | 内容 | 2026年8月期の目標 | 2027年8月期の目標 |
|---|---|---|---|
| 2024年10月15日 | 3か年計画(2025〜2027年8月期) | 売上120億円/営業利益22億円 | 売上130億円/営業利益26億円 |
| 2025年10月9日 | 上記の数値目標を取り下げ、中期的な数値目標の公表を見送り | — | — |
| 2026年10月7日 | 5か年計画(2027〜2031年8月期) | — | 売上98億95百万円/営業利益13億80百万円(今期予想と同じ) |
| 実績 | — | 売上58億11百万円/営業利益8億46百万円 | — |
出典:中期経営計画に関するお知らせ(2024年10月15日)、中期経営計画の取り下げ及び公表見送りに関するお知らせ(2025年10月9日)、中期経営計画の策定に関するお知らせ(2026年10月7日)。
2年前の計画が置いていた今期の数字に対して、実績は売上で△51.6%、営業利益で△61.5%でした。来期の数字も、2年前の計画から売上で23.9%、営業利益で46.9%低い水準に置き直されています(筆者の計算)。1年前の取り下げの理由として、会社は次の3つを挙げていました。
会社は次のように書いています(2025年10月9日「中期経営計画の取り下げ及び公表見送りに関するお知らせ」より要旨) 米国の関税や再生可能エネルギー政策の見直しで、主要顧客である米国太陽電池メーカーがサプライチェーンの見直しを進め、設備投資動向の予測が不確定になった。ペロブスカイト太陽電池は将来の市場規模や拡大のタイミングの予測が困難。第二の主要顧客と位置付けた国内の電子部品業界の顧客は、半導体市場の影響で設備投資が停滞し、代替となる安定顧客の獲得も十分な成果を得られていない。
今回の策定理由は「事業環境が好転し、中期的な業績の見通しが立てられるようになった」です。新しい中計の中身は§4で見ます。
2. 通期決算のハイライト
損益計算書
| 科目 | 2025年8月期 | 2026年8月期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 92億72百万円 | 58億11百万円 | △37.3% |
| 売上原価 | 61億70百万円 | 37億85百万円 | △38.6% |
| 売上総利益 | 31億01百万円 | 20億25百万円 | △34.7% |
| 売上総利益率 | 33.4% | 34.9% | +1.4pt |
| 販売費及び一般管理費 | 11億80百万円 | 11億78百万円 | △0.2% |
| 営業利益 | 19億20百万円 | 8億46百万円 | △55.9% |
| 営業外収益(うち受取利息) | 21百万円(13百万円) | 43百万円(33百万円) | — |
| 営業外費用(うち為替差損) | 19百万円(14百万円) | 9百万円(3百万円) | — |
| 経常利益 | 19億22百万円 | 8億80百万円 | △54.2% |
| 特別損失(投資有価証券評価損) | — | 1億77百万円 | — |
| 税金等調整前当期純利益 | 19億22百万円 | 7億02百万円 | △63.5% |
| 法人税等合計 | 5億96百万円 | 2億21百万円 | — |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 13億25百万円 | 4億81百万円 | △63.7% |
| 1株当たり当期純利益 | 61.36円 | 22.84円 | △62.8% |
出典:2026年8月期決算短信(百万円未満切捨て)。増減率・粗利率は筆者の計算。
この表のポイントは3つです。
- 売上総利益率は33.4%から34.9%に上がりました。会社は「利益率の高い案件(移設・改造)があったことに加え、新技術や開発要素を含む案件において原価に占める割合の高い材料費を削減した」と説明しています
- **販管費はほぼ横ばい(11億78百万円)**です。売上が37%減っても、設計者・技術者などの人と拠点の費用は減りません。営業利益の減り方(△55.9%)が売上の減り方より大きいのはこのためです
- 純利益の減り方(△63.7%)がさらに大きいのは、特別損失1億77百万円(投資有価証券評価損)があったためです。EPSの減少率(△62.8%)が純利益より小さいのは、自己株式取得で期中平均株式数が2,160万株から2,108万株に減ったためです
修正の理由(2026年9月30日の開示)
会社は次のように書いています(2026年9月30日「通期業績予想の修正に関するお知らせ」より) 売上高の差異につきましては、第4四半期に売上計上を予定していた国内向けの大型案件について、出荷までは予定通り完了していたものの、その後の客先工場における現地調整に時間を要し2026年8月末までに一部装置の検収が完了しなかったことを主な要因として、減収となる見通しです。それに加え、米国主要顧客向け太陽電池製造装置の改造案件の一部において、並行して行われている大規模な装置の移設作業を優先したことから、2027年8月期への期ずれが発生したことも要因となっています。なお、前述した国内向けの大型案件の一部に関しては、2027年8月期上期に検収が完了する予定であり、期ずれした売上高は同上期に計上される見込みです。
§1の軸の弱み①そのものです。装置は出荷済みでも、客先の工場で鍵(検収)が渡らなければ売上にならない。もう1つの理由も、施主(米国主要顧客)が「引っ越し」を「リフォーム」より優先した、という施主側の都合でした。
用語メモ:検収と「期ずれ」 注文生産の装置メーカーは、装置を出荷しただけでは売上を計上しないことが多く、客先で据え付け・調整が終わり、仕様どおり動くことを客先が確認した時点(検収)で売上を立てます。検収が決算期末を越えると、売上と利益はまるごと翌期に移ります。これを「期ずれ」と呼びます。会社が消えた売上ではなく翌期に移った売上だと説明するのはこのためですが、翌期に検収が終わるかどうかは、翌期の決算で確認するまで分かりません。
特別損失:Gosan Tech社への出資の評価損
2026年3月31日、会社は韓国のインクジェット塗布装置メーカーGosan Tech社への出資を発表しました。ペロブスカイト太陽電池の「前工程」(発電層を塗る工程)に入るための提携で、2025年9月の業務提携から資本提携に進めたものです。
- 第3四半期末の投資有価証券は2億03百万円(キャッシュ・フロー計算書の「有価証券の取得による支出」も2億03百万円)
- 期末の投資有価証券は25百万円で、差額の1億77百万円が評価損として特別損失に計上されました。取得額の87.4%を評価損として落とした計算です(筆者の計算)
- 会社は「この特別損失は出資者側である当社に適用される会計ルールに基づく処理によるもの」とし、「既に投資額を上回る受注を獲得しており、事業は順調に推移」と書いています。中計資料には、Gosanの装置で「既に3.5億円規模の受注獲得済み」とあります
用語メモ:市場価格のない株式の評価損(一般論) 上場していない会社の株式は、市場価格がありません。日本の会計ルールでは、発行会社の財政状態が悪化して1株当たりの純資産(実質価額)が取得価額より著しく下がった場合、回復の見込みが裏付けられない限り評価損を計上します。成長段階のスタートアップに出資した直後でも、相手の純資産が出資額に見合わなければ評価損が出ることがあります。会社は今回どの基準を当てたのかを具体的には書いていないので、この用語メモは一般的な説明で、今回の処理の理由を会社の開示から確認したものではありません。
貸借対照表とキャッシュ・フロー:現金が半分になった
| 科目 | 2025年8月末 | 2026年8月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 64億21百万円 | 35億97百万円 | △28億24百万円 |
| 売掛金 | 19億55百万円 | 41億01百万円 | +21億45百万円 |
| 仕掛品 | 10億44百万円 | 26億37百万円 | +15億93百万円 |
| 前受金 | 2億87百万円 | 15億60百万円 | +12億72百万円 |
| 買掛金 | 6億35百万円 | 1億32百万円 | △5億03百万円 |
| 有利子負債 | なし | なし | — |
| 純資産 | 108億35百万円 | 106億66百万円 | △1億68百万円 |
| 自己資本比率 | 83.9% | 76.8% | △7.1pt |
| キャッシュ・フロー | 2025年8月期 | 2026年8月期 |
|---|---|---|
| 営業活動 | +14億77百万円 | △18億94百万円 |
| 投資活動 | △64百万円 | △6億62百万円(うち定期預金の預入△4億11百万円、Gosan株式△2億03百万円) |
| 財務活動 | △2億18百万円 | △7億18百万円(うち自己株式取得△5億円、配当△2億15百万円) |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 64億21百万円 | 31億86百万円 |
出典:2026年8月期決算短信。
営業キャッシュ・フローが△18億94百万円になったのは、売上債権の増加(△21億31百万円)と棚卸資産の増加(△15億79百万円)が、前受金の増加(+12億72百万円)を大きく上回ったためです。§3と§5でこの意味を見ます。
3. 深掘り①:今期の利益は、どの3か月で生まれたか
ここからの深掘りは、1つの問いを3段階で追います。「売上が37%減った今期の数字は、来期の予想とどうつながっているのか」。最初の段階は、今期の売上と利益がどの3か月で生まれたかです。
この会社は累計の数字しか開示しないので、各四半期の数字は筆者が累計から差し引いて出しました。第1四半期=9〜11月、第2四半期=12〜2月、第3四半期=3〜5月、第4四半期=6〜8月です。
12四半期の推移(百万円)
| 決算期 | 四半期 | 売上高 | 売上総利益 | 粗利率 | 販管費 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年8月期 | 9〜11月 | 646 | 257 | 39.8% | 215 | 41 | 6.4% |
| 2024年8月期 | 12〜2月 | 2,860 | 915 | 32.0% | 301 | 614 | 21.5% |
| 2024年8月期 | 3〜5月 | 1,449 | 592 | 40.9% | 282 | 310 | 21.4% |
| 2024年8月期 | 6〜8月 | 5,841 | 1,814 | 31.1% | 344 | 1,469 | 25.2% |
| 2025年8月期 | 9〜11月 | 1,588 | 631 | 39.8% | 258 | 373 | 23.5% |
| 2025年8月期 | 12〜2月 | 1,533 | 587 | 38.3% | 304 | 282 | 18.4% |
| 2025年8月期 | 3〜5月 | 909 | 299 | 33.0% | 289 | 9 | 1.1% |
| 2025年8月期 | 6〜8月 | 5,241 | 1,582 | 30.2% | 327 | 1,254 | 23.9% |
| 2026年8月期 | 9〜11月 | 368 | 171 | 46.6% | 260 | △88 | △24.1% |
| 2026年8月期 | 12〜2月 | 755 | 413 | 54.7% | 318 | 95 | 12.6% |
| 2026年8月期 | 3〜5月 | 735 | 322 | 43.9% | 289 | 32 | 4.5% |
| 2026年8月期 | 6〜8月 | 3,951 | 1,117 | 28.3% | 309 | 807 | 20.4% |
筆者の差し引き(千円単位で差し引いてから百万円未満を切り捨て)。各年度の4四半期の合計が通期の開示値と一致することを確認しました。
この表のポイントは3つです。
- 3期続けて、6〜8月が年間で最も大きな3か月です。通期売上に占める6〜8月の比率は54.1%→56.5%→68.0%、営業利益に占める比率は60.3%→65.3%→95.3%でした。3年とも同じ形なので、これはこの会社の決算の季節性と言えます(大型案件の検収を期末に合わせる工程になっていると読めますが、会社がそう説明しているわけではありません)
- 今期の9〜5月の9か月は、売上18億59百万円・営業利益39百万円でした。販管費は四半期あたり2億6千万〜3億2千万円でほとんど動かないので、売上が小さい四半期はそのまま赤字か薄利になります
- 粗利率は、売上が小さい四半期ほど高く、6〜8月が毎年最も低い。今期は9か月の粗利率が48.8%、6〜8月が28.3%で、差は20pt以上ありました
粗利率の差は、仕事の種類の差
会社の説明を並べると、9〜5月の売上の中身は「米国主要顧客のサウスカロライナ新工場向けの東南アジアの工場からの設備移設案件や改造案件、国内企業向けのペロブスカイト用開発装置、国内外の既存顧客向けの改造案件」、そして部品とリサイクル装置でした(第3四半期決算短信)。上期の差異の開示でも「利益率が高い移設作業や部品の売上増」と書いています。一方、6〜8月には「国内メーカー向けの大型案件」(の検収できた部分)が入りました。
製品カテゴリ別に6〜8月を差し引くと、太陽電池製造装置は36億76百万円で、通期の太陽電池製造装置の81.8%がこの3か月に入っています(筆者の差し引き)。
§1の軸で言えば、9か月は「リフォームと引っ越し」と部品の売上で高い粗利率を取り、6〜8月に「新築」の大型案件が入って粗利率が下がった、という形です。ただし会社は案件別の粗利率を開示していないので、「新築の大型案件の粗利率が低い」という読みは四半期の数字からの筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません。
補足:2026年8月期の12〜2月のFA装置の売上は、累計の差し引きで△24千円(ほぼゼロ)になります(上期累計8,543千円、第1四半期8,567千円)。返品や計上区分の調整と考えられますが、会社は説明していません。
営業利益の減少を3つに分ける
| 要因 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 数量効果(売上の減少) | 売上減少額34億60百万円 × 前期粗利率33.4% | △11億58百万円 |
| 率効果(粗利率の上昇) | 当期売上58億11百万円 × 粗利率の差+1.4pt | +82百万円 |
| 販管費の増減 | 11億78百万円−11億80百万円 | +2百万円 |
| 合計 | — | △10億73百万円(実際の減少と一致) |
筆者の計算(千円単位の開示値から計算し、百万円未満で表示)。
営業利益の減少は、ほぼ全額が売上の減少で説明できます。粗利率は下がっておらず、販管費も増えていません。「売上が減ったぶん、売上が持っていたはずの粗利が消えた」というだけの1年でした。
ここで修正の理由を思い出すと、減った売上の主因は「国内大型案件の一部の検収未了」と「米国主要顧客の改造案件の期ずれ」でした。売上の減少が期ずれなら、営業利益の減少の大半も期ずれということになります。次の段階では、それが来期の予想にどう入っているかを見ます。
4. 深掘り②:受注残高と、来期予想の「上期」と「下期」
前の章で、今期の減益は売上の減少でほぼ説明でき、その売上の減少は主に期ずれだったことを確認しました。では、来期の予想はその期ずれをどう取り込んでいるのでしょうか。
受注高・受注残高(百万円)
| 決算期 | 四半期 | 受注高(3か月) | 期末の受注残高 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 9〜11月 | 535 | 7,026 |
| 2025年8月期 | 12〜2月 | 523 | 6,017 |
| 2025年8月期 | 3〜5月 | 5,185 | 10,293 |
| 2025年8月期 | 6〜8月 | 1,670 | 6,723 |
| 2026年8月期 | 9〜11月 | 2,431 | 8,786 |
| 2026年8月期 | 12〜2月 | 1,142 | 9,173 |
| 2026年8月期 | 3〜5月 | 774 | 9,212 |
| 2026年8月期 | 6〜8月 | 2,160 | 7,421 |
出典:各四半期の決算短信の「受注状況」。3か月の受注高は累計からの筆者の差し引き。
検算:前期末の受注残高67億23百万円+今期の受注高65億09百万円−今期の売上高58億11百万円=74億21百万円で、期末の受注残高と一致します(千円単位で一致)。
この表のポイントは3つです。
- 前期の3〜5月に受注が51億85百万円と突出しています。会社は2025年3月に「ペロブスカイト関連案件を含め、4,810,336千円の受注」をしたと開示しており(2025年8月期中間決算短信)、これが今期の国内大型案件の中心と読めます
- 今期の受注高は65億09百万円で、売上高(58億11百万円)を上回りました。受注高÷売上高は1.12倍です(前期は0.85倍)
- 期末の受注残高74億21百万円は、来期の売上予想98億95百万円の75.0%に当たります(筆者の計算)。残り24億73百万円は、これから受注して来期中に売上まで持っていく必要がある金額です
来期予想を上期と下期に分ける
会社は来期の上期(9〜2月)の予想も出しています。
| 項目 | 2026年8月期 上期(実績) | 2027年8月期 上期(予想) | 2026年8月期 下期(実績) | 2027年8月期 下期(予想) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 11億24百万円 | 50億55百万円 | 46億86百万円 | 48億40百万円 |
| 前年比 | — | +349.6% | — | +3.3% |
| 営業利益 | 6百万円 | 6億94百万円 | 8億40百万円 | 6億86百万円 |
| 前年比 | — | — | — | △18.4% |
| 営業利益率 | 0.6% | 13.7% | 17.9% | 14.2% |
出典:2026年8月期決算短信の業績予想(上期・通期)。下期予想=通期予想−上期予想、前年比・利益率は筆者の計算。
この表で最も大事なのは、来期の増収・増益は、ほぼ上期だけに置かれていることです。
- 上期の売上予想50億55百万円は、今期の上期の約4.5倍です。会社の修正理由どおり、国内大型案件の期ずれ分が「2027年8月期上期」に検収される前提です
- 下期の営業利益予想6億86百万円は、今期の下期(8億40百万円)より18.4%少ない。下期の売上はほぼ横ばい(+3.3%)で、利益は減る置き方です
- 過去3期は、6〜8月が年間で最大の3か月でした(§3)。来期は上期と下期の売上がほぼ半々の予想で、例年の形とは違います
つまり、来期の予想は「期ずれした売上が上期に入る」ことを最大の前提にしています。§1の軸で言えば、今期に渡せなかった鍵を、来期の前半に渡す計画です。上期決算(例年4月上旬)の時点で、この前提が実現したかどうかがほぼ分かります。
運転資金:大工が材料代を立て替えている
ここで§2の貸借対照表に戻ります。期末の売掛金41億01百万円と仕掛品26億37百万円を足すと67億39百万円で、前受金15億60百万円を差し引いても、約52億円が売上の回収待ち・検収待ちの資産として積み上がっています。
| 時点 | 現金及び預金 | 売掛金等 | 仕掛品 | 前受金 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年8月末 | 6,421 | 1,962 | 1,044 | 287 |
| 2025年11月末 | 7,097 | 138(電子記録債権を含まない) | 2,388 | 730 |
| 2026年2月末 | 5,291 | 514 | 3,180 | 1,148 |
| 2026年5月末 | 4,306 | 488 | 4,071 | 1,216 |
| 2026年8月末 | 3,597 | 4,135 | 2,637 | 1,560 |
出典:各四半期の決算短信(百万円未満切捨て)。売掛金等は売掛金(または受取手形、売掛金及び契約資産)と電子記録債権の合計。
5月末まで仕掛品が40億円台まで積み上がり、6〜8月に検収された分が売掛金(41億円)に振り替わった、という動きがはっきり出ています。期末の仕掛品26億37百万円の中には、出荷済みで検収待ちの国内大型案件の一部が含まれていると読めます(会社は仕掛品の内訳を開示していないので、これは修正理由の記述と貸借対照表を突き合わせた筆者の読みです)。
会社は有報の「事業等のリスク」で、この構造を自ら書いています。
会社は次のように書いています(2025年8月期有価証券報告書「事業等のリスク」より) ペロブスカイト太陽電池向けの製造装置は国内向けが多い中で、国内企業からの受注においては前受金を受領できず、検収後一括支払いとなるケースがほとんどであります。その場合仕入れなどに係る出費が先行するため、特に大きな規模の案件では、当社グループの資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
§1の軸で言えば、新築の施主(国内メーカー)は鍵を受け取るまで1円も払わず、大工が材料代と職人代を立て替えている状態です。今期の営業キャッシュ・フローが△18億94百万円になったのはこのためです。
ただし、財務の余力は残っています。有利子負債はなく、現金及び預金は35億97百万円、流動比率は約3.5倍、金融機関2行と計10億円の当座貸越契約があります(有報)。期末の売掛金41億円が回収されれば、現金は大きく戻る計算です。来期の第1四半期(11月末)の現金と売掛金の残高が、その確認になります。
5. 深掘り③:来期予想の粗利率27.4%と、会社自身が開示した「予算と実績の差」
前の章で、来期の増収は上期の期ずれ分の検収にかかっていることを見ました。最後の段階として、来期の利益の予想そのものを分解します。
来期予想が置いている粗利率
会社は中計資料で、来期の売上総利益率(27.4%)と販管費(13億29百万円)を示しています。
| 項目 | 2026年8月期(実績) | 2027年8月期(会社予想) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 58億11百万円 | 98億95百万円 | +70.3% |
| 売上総利益率 | 34.9% | 27.4% | △7.5pt |
| 売上総利益 | 20億25百万円 | 約27億11百万円 | +約34% |
| 販管費 | 11億78百万円 | 13億29百万円 | +12.8% |
| 営業利益 | 8億46百万円 | 13億80百万円 | +62.9% |
出典:2026年8月期決算短信、中期経営計画資料。来期の売上総利益は売上高×粗利率から筆者が計算(98億95百万円×27.4%−13億29百万円=約13億82百万円で、営業利益予想と丸めの範囲で一致)。
来期予想は、売上が7割増える一方で、粗利率は7.5pt下がる前提です。来期の売上の中心が「新築」の大型案件(期ずれした国内大型案件、ペロブスカイト向けインクジェット塗布装置、電子部品・自動車業界向けのFA装置など)になると会社が見ているためと読めます。§3で見たとおり、今期の6〜8月(大型案件が入った3か月)の粗利率は28.3%でした。
会社が開示した「粗利率の予算と実績」
ここで重要なのは、会社自身が中計資料で、過去4期の粗利率の予算と実績を並べていることです。
| 決算期 | 予算 | 実績 | 差異 |
|---|---|---|---|
| 2023年8月期 | 14.3% | 20.9% | +6.6pt |
| 2024年8月期 | 25.2% | 33.1% | +7.9pt |
| 2025年8月期 | 29.3% | 33.4% | +4.1pt |
| 2026年8月期 | 24.4% | 34.8% | +10.4pt |
| 2027年8月期 | 27.4% | — | — |
出典:中期経営計画資料「利益の予算と実績の差異が発生する主な要因」(会社表記。2026年8月期の実績は短信の数値から計算すると34.85%で、本記事の他の箇所では34.9%と表記しています)。2026年8月期の予算24.4%は、期初予想(売上80億14百万円、売上総利益19億52百万円)と一致します(2026年8月期第2四半期決算説明会資料)。
会社は次のように書いています(中期経営計画資料より要旨) 材料費は予算段階では価格交渉前・概算段階を含む「合理的な見込み金額」で置いており、期中の価格交渉・ボリュームディスカウント・グローバル調達・新規仕入先の獲得で下がる傾向がある。材料費が5%下がれば売上総利益率は2%、10%下がれば4%上がる。労務費・経費はほぼ予算どおり。売上総利益率は予想を上振れる傾向があり、今期も原価低減に向けた取り組みを継続する。
有報によると、製造原価に占める材料費の割合は60〜70%程度です。会社は予算の材料費を「交渉前の見積もり」で置いていると明言しており、4期連続で粗利率が予算を4〜10pt上回りました。§1の「予想の達成履歴」で、売上が外れても営業利益が上振れてきた理由は、この1点でほぼ説明できます。
粗利率が予算からずれた場合(筆者の試算)
| 粗利率の前提 | 来期の営業利益 | 会社予想比 |
|---|---|---|
| 27.4%(会社予想) | 約13億82百万円 | ±0% |
| 30.0%(中計の目標水準) | 約16億40百万円 | +約19% |
| 33.0% | 約19億36百万円 | +約40% |
| 34.9%(今期実績) | 約21億19百万円 | +約54% |
筆者の試算。売上高98億95百万円・販管費13億29百万円は会社予想のまま固定。将来の業績を予測するものではありません。
逆に、売上が届かなかった場合も計算しておきます。粗利率27.4%のまま売上が90億円なら営業利益は約11億37百万円、80億円なら約8億63百万円です(同じく販管費は固定)。
売上の外れと粗利率の上振れは、過去3期では互いに打ち消し合ってきました。来期も同じ形になるかどうかは分かりませんが、少なくとも「粗利率27.4%」は、会社自身が「上振れる傾向がある」と書いた方法で作られた数字です。
この点は、強気・弱気のどちらにも読めます。強気側では「利益の予想には余裕がある」、弱気側では「売上の予想には余裕がなく、過去3期の売上は期初予想に対して+4.0%・△15.1%・△27.5%だった」となります。数字は同じです。
純利益予想の税負担率は41.7%
もう1つ、来期の予想で確認しておく数字があります。経常利益予想14億17百万円に対し、純利益予想は8億26百万円です。特別損益がないとすると、**税負担率は約41.7%**になります(上期予想でも39.2%)。
| 決算期 | 税負担率(法人税等÷税金等調整前当期純利益) |
|---|---|
| 2024年8月期 | 30.9% |
| 2025年8月期 | 31.0% |
| 2026年8月期 | 31.5% |
| 2027年8月期(会社予想から逆算) | 約41.7% |
筆者の計算。
直近3期は31%前後でした。仮に来期も31.0%なら、純利益8億26百万円に必要な税前利益は約11億97百万円で、経常利益予想との差は約2億20百万円です(筆者の逆算)。つまり来期の純利益予想は、「約2億円の特別損失」か「通常より10pt高い税負担」のどちらか(または両方)を織り込んだ数字に見えます。中計資料の2028年8月期以降は、純利益÷営業利益が約69%で、税負担率はおおむね31%前後に戻っています。
会社は来期の純利益予想の前提を説明していません。繰延税金資産の取り崩し、Gosan株式の追加の評価損、その他の損失の見込みなどが考えられますが、どれも筆者の推測で、会社の開示に基づくものではありません。来期のEPS予想39.44円は、この保守的に見える税負担率の上に置かれていることだけを記録しておきます。
3つの深掘りをつなぐと
- 今期の営業利益の95%は6〜8月の3か月で出ており、減益の理由は「売上の減少」だけで、粗利率はむしろ上がっていた(深掘り①)
- 減った売上は主に期ずれで、来期予想はその検収を上期に置いている。下期の営業利益は今期の下期より少なく置かれている(深掘り②)
- 来期予想の粗利率27.4%は、会社が「上振れる傾向がある」と書く方法で作られた数字で、純利益予想は税負担率41.7%相当の保守的な置き方に見える(深掘り③)
§1の軸に戻ると、この会社は「鍵の受け渡し日」を自分で決められない大工です。だから売上の予想は外れやすく、利益率の予想は控えめに作られている。来期の予想を読むときは、「売上が上期に入るか(4月の上期決算)」と「粗利率が27.4%からどれだけ上振れるか」の2つを分けて見るのが、この会社の過去の数字に沿った読み方です。
6. 新しい中期経営計画(2027〜2031年8月期)
数値目標とKPI
| 項目 | 2027年8月期 | 2028年8月期 | 2029年8月期 | 2030年8月期 | 2031年8月期 | 5年平均 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 98億95百万円 | 108億円 | 118億円 | 124億50百万円 | 155億50百万円 | 120億99百万円 |
| 太陽電池製造装置 | 58億37百万円 | 47億円 | 60億円 | 80億円 | 98億円 | 68億67百万円 |
| 太陽光パネルリサイクル装置 | 8億31百万円 | 15億円 | 20億円 | 24億円 | 30億円 | 19億46百万円 |
| FA装置 | 23億84百万円 | 38億円 | 30億円 | 12億円 | 17億円 | 24億17百万円 |
| 部品 | 7億17百万円 | 6億円 | 6億円 | 6億50百万円 | 8億50百万円 | 6億83百万円 |
| 環境関連サービス | 1億25百万円 | 2億円 | 2億円 | 2億円 | 2億円 | 1億85百万円 |
| 売上総利益率 | 27.4% | 28.6% | 29.1% | 31.0% | 31.0% | 29.6% |
| 営業利益 | 13億80百万円 | 17億14百万円 | 20億09百万円 | 23億85百万円 | 32億95百万円 | 21億56百万円 |
| 当期純利益 | 8億26百万円 | 11億83百万円 | 13億86百万円 | 16億46百万円 | 22億74百万円 | 14億63百万円 |
| ROE | 7.5% | 10.0% | 10.8% | 11.7% | 14.5% | 10.9% |
出典:中期経営計画資料「5年間の中期業績見通し」。2027年8月期の製品別の合計(98億94百万円)は売上高と丸めの範囲で一致。
| KPI | 目標 | 会社の見込み |
|---|---|---|
| 年平均売上高成長率 | 10%以上 | 12.0% |
| FS社(First Solar社)以外の売上高比率 | 60%以上 | 70〜75% |
| 売上総利益率 | 30%程度を維持 | 29.6%(5年平均) |
| 投資額 | 5年間で約40億円 | — |
| 配当性向 | 25%(下限DOE2%) | — |
出典:中期経営計画資料。
この表のポイントは3つです。
- 年平均成長率12.0%は2027年8月期を起点にした数字です(98億95百万円→155億50百万円、4年で年率12.0%)。今期の58億11百万円を起点にすると5年で年率21.8%になります(筆者の計算)。起点がすでに今期比+70%の予想であることに注意が必要です
- 5年目(2031年8月期)に伸びが集中しています。2030年8月期から売上+24.9%、営業利益+38.2%で、営業利益32億95百万円は過去最高(2024年8月期の24億36百万円)を約35%上回る水準です。会社も「5年目で過去最高益の獲得(営業利益30億円以上)」と書いています
- FA装置は2028年8月期に38億円まで増え、2030年8月期に12億円まで減る置き方です。会社は国内電子部品メーカーの投資再開(「2026年8月期に一部受注済み」)と自動車業界の実績増を挙げ、FA装置の売上(スタンダード装置を含む)は過去5年に比べて今後5年で約3倍と書いています。一方で、1年前の取り下げの理由には「電子部品業界の設備投資の停滞」が入っていました
First Solar社への依存度と「FS社以外60%以上」
| 決算期 | First Solar社への売上高 | 連結売上高に対する比率 |
|---|---|---|
| 2024年8月期 | 78億48百万円 | 72.7% |
| 2025年8月期 | 72億16百万円 | 77.8% |
| 2026年8月期 | 未開示(有報は2026年11月25日提出予定) | — |
出典:有報「主要な顧客ごとの情報」。比率は筆者の計算。
会社は有報で「現時点における依存度は非常に高いことから、仮にリスクが顕在化した場合は当社の業績に大きな影響を与える可能性があります」と書いています。中計のKPIはこの比率を40%以下に下げることで、会社の見込みはFS社以外が70〜75%(=FS社が25〜30%)です。§1の軸の弱み②(施主が1社)に、会社自身が数値目標を置いた形です。
ただし、依存度が下がることは「FS社向けの売上が減る」ことでも起き得ます。中計資料は部品について「First Solar社向けの部品販売は横ばいの想定(米国への生産体制集約による在庫管理状況の変化)」と書いています。また、First Solar社は「次期製品(ペロブスカイト関連製品)」の開発を進めており、中計資料はこれを「当社にとって大型案件獲得の機会」としています。FS社以外の比率の上昇が、他の顧客の増加によるものか、FS社向けの減少によるものかは、売上の絶対額と並べて見る必要があります。
ペロブスカイトとリサイクル:会社が示した「5年の売上見込み」
| 分野 | 今後5年の売上見込み(国内) | (海外) | 会社が挙げた根拠 |
|---|---|---|---|
| ペロブスカイト太陽電池向け装置 | 160億円 | 110億円 | 国内の後工程で複数社に納入済み、2026年8月期に大型案件の実績。前工程はGosanの装置で3.5億円規模を受注済み |
| 太陽光パネルリサイクル装置 | 85億円 | 15億円 | 太陽光パネルのリサイクルの法制度化(2027年末までに施行)、ホットナイフ分離法などの特許、AGC・セントラル硝子プロダクツでの水平リサイクル |
出典:中期経営計画資料。
ペロブスカイト向けの「270億円」は、中計の太陽電池製造装置の5年合計343億37百万円の約8割に当たる規模です(筆者の計算)。ただし資料上の位置付けは「装置ニーズポテンシャル」「売上見込み」で、会社自身も国内市場について「現状量産には至っておらず、装置ニーズはこれから」と注記しています。リサイクル装置の「100億円」も、中計のリサイクル装置の5年合計97億31百万円とほぼ同じ規模です。
キャッシュアロケーション
| 資金の源泉 | 金額 | 資金の使途 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 2026年8月期末の現金 | 約36億円 | 投資 | 約40億円 |
| 今後5年の営業キャッシュ・フロー | 約73億円 | 株主還元 | 約20億円 |
| — | — | 手元確保資金 | 約49億円 |
出典:中期経営計画資料。
投資約40億円の内訳は、①R&D・マーケティング・新市場への戦略的投資やM&Aで10億〜15億円、②同業の自動機メーカーや金属加工関連企業のM&A、協力工場の強化、松山工場の設備投資で20億〜25億円、③人材とITで5億〜10億円です。M&Aが2つの区分に明記されているのが、この中計の特徴です。株主還元約20億円は、5年間の純利益合計73億15百万円の25%(約18億円)と近い規模で、配当性向25%の方針から積み上げた数字と読めます(筆者の計算)。自己株式取得の計画は示されていません。
手元確保資金の約49億円について、会社は「月次累計CFにおけるピークからの最大減少幅の実績を参照し、FY2031の想定売上高に応じて調整」と書いています。§4で見た「大工の立て替え」を、会社自身が手元資金の水準の根拠にしている形です。
7. 資本政策と株主還元
株主優待:制度なし
有価証券報告書(2025年8月期、2025年11月28日提出)の「株主に対する特典」欄は「該当事項はありません」です。会社IRサイトの株主還元のページにも優待の記載は見当たりませんでした(2026年10月7日時点)。当期(2026年8月期)の有報は11月25日提出予定のため、本記事では確認していません。
配当:新しい方針は「配当性向25%、下限DOE2%」
| 決算期 | 1株配当 | 配当性向(連結) | 配当の決め方 |
|---|---|---|---|
| 2021年8月期 | 2円 | 5.6% | 安定的な利益配分の継続・各期の業績等を総合勘案 |
| 2022年8月期 | 2円 | 11.4% | 同上 |
| 2023年8月期 | 6円 | 13.0% | 同上 |
| 2024年8月期 | 10円 | 12.9% | 同上(予想7円から期末に3円増配) |
| 2025年8月期 | 10円 | 16.3% | 同上(下方修正後も10円を維持) |
| 2026年8月期 | 10円 | 43.8% | 同上(減収・特別損失は一時的として10円を維持) |
| 2027年8月期(予想) | 11円 | 27.9% | 配当性向25%を基本、DOE2%程度を下限 |
出典:有報「主要な経営指標等の推移」、各期の決算短信、剰余金の配当(増配)に関するお知らせ(2024年10月15日)、業績予想の修正(2025年4月10日・2026年9月30日)、中期経営計画資料。配当性向は筆者の計算(連結EPSで計算)。いずれも期末配当のみ。
この表のポイントは2つです。
- これまでの配当方針は数式を持たず、「総合的に勘案」でした。2024年8月期以降は10円で据え置かれ、利益が半分以下になった今期も10円を維持したので、配当性向は43.8%に上がりました
- 新しい方針を来期に当てると、配当性向25%なら9.86円、DOE2%なら期末の自己資本ベースで約10.2円、来期末の自己資本を概算すると約10.8円です(筆者の計算。会社がDOEを期首・期末・期中平均のどれで計算するかは開示されていません)。来期の11円は、純資産側の下限(10.2〜10.8円)の少し上に置かれています。利益が予想どおりでも配当性向25%では10円に届かないので、今の利益水準では「DOE2%」の方が配当を支える形です
| 権利 | 基準日 | 権利付き最終日 |
|---|---|---|
| 2026年8月期 期末配当(10円) | 2026年8月31日(確定済み) | — |
| 2027年8月期 期末配当(予想11円) | 2027年8月31日(火) | 2027年8月27日(金) |
権利付き最終日は基準日の2営業日前(筆者の計算)。定款上は中間配当の制度がありますが(取締役会決議)、実績は期末配当のみです。期末配当の決定機関は株主総会です(有報)。
自己株式取得:5億円を市場で2か月で取得
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決議日 | 2025年10月9日(前期決算・中計取り下げと同日) |
| 上限 | 770,000株(自己株式を除く発行済株式の3.56%)・5億円 |
| 取得期間・方法 | 2025年10月10日〜12月23日、東京証券取引所での市場買付 |
| 実績 | 702,400株・4億99百万円(2025年12月16日で終了) |
| 平均取得単価 | 約711.8円(筆者の計算) |
出典:自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ(2025年10月9日)、自己株式の取得結果及び取得終了に関するお知らせ(2025年12月17日)。
**金額上限(5億円)で止まり、株数は上限の91.2%**でした。今期の総還元性向は、自己株式取得5億円と配当2億16百万円の合計を純利益4億81百万円で割ると約148.8%です(筆者の計算)。
期末の自己株式は1,103,450株(発行済株式22,052,426株の5.0%)です。取締役3名に譲渡制限付株式25,800株(処分価額686円、譲渡制限期間30年)を2026年1月に処分しています。潜在株式はありません(短信の「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」は記載なし)。証券情報サイトのEPS・PERはそのまま使えるタイプです。
大株主と株主構成(2025年8月31日時点)
| 株主 | 持株数 | 比率 |
|---|---|---|
| 伊藤 雅文(代表取締役社長) | 130万1千株 | 6.02% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 62万6千株 | 2.90% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505050 | 54万0千株 | 2.50% |
| 吉田 茂 | 43万0千株 | 1.99% |
| LIM JAPAN EVENT MASTER FUND | 33万7千株 | 1.56% |
| 三菱UFJ銀行 | 32万0千株 | 1.48% |
| 隣 良郎 | 28万2千株 | 1.31% |
| MLI FOR CLIENT GENERAL NON TREATY-PB | 26万5千株 | 1.23% |
| 廣澤 一夫(専務取締役) | 24万6千株 | 1.14% |
| 天野 謙二郎 | 20万0千株 | 0.92% |
| 上位10名計 | 454万9千株 | 21.04% |
出典:有報「大株主の状況」。比率は自己株式(426,820株)を除く発行済株式総数に対する割合。その後の自己株式取得(702,400株)により、現在の比率はこれより少し高くなっています。
- 個人その他の持株比率は83.47%、株主数は20,634名です(有報「所有者別状況」)。支配株主はおらず、筆頭株主の社長でも6%台です
- 個人株主が8割を超え、日々の出来高は10万〜80万株程度で推移しています(2026年9〜10月、Yahoo!ファイナンス、報道ベース)
グロース市場の時価総額基準
この会社は2007年に東証マザーズに上場しており、上場から5年以上が経過しています。グロース市場では、2030年3月1日以後に到来する基準日から、上場5年経過後の会社に時価総額100億円以上が求められます。自己株式を含む上場株式数22,052,426株で100億円に必要な株価は約453円で、10月7日終値756円から約40%下の水準です(筆者の試算)。現時点では距離があります。判定方法の細部(最初の判定基準日・経過措置)は本記事ではJPXの規則原文を確認していません。
8. 株価の見方
株価の基準点(2026年10月7日終値756円)
| 指標 | 数値 | 計算 |
|---|---|---|
| 終値(2026年10月7日) | 756円 | Yahoo!ファイナンス |
| 時価総額(自己株式控除後) | 約158億円 | 756円×20,948,976株 |
| 時価総額(発行済ベース) | 約167億円 | 756円×22,052,426株 |
| 実績PER | 33.1倍 | 756円÷22.84円 |
| 予想PER | 19.2倍 | 756円÷予想EPS39.44円 |
| PBR | 1.48倍 | 756円÷BPS509.18円 |
| 予想配当利回り | 1.46% | 11円÷756円 |
| 年初来高値・安値 | 890円(4月21日)・565円(7月29日) | Yahoo!ファイナンス(報道ベース) |
決算と中計の発表は10月7日15時30分、取引終了と同時刻でした。10月7日の終値756円と出来高(409,400株)は発表前の取引です。同日夜の夜間取引(PTS)では770円(東証終値比+1.85%、20時50分時点)が付いていました(Yahoo!ファイナンス、報道ベース。取引量が小さく、翌営業日の値動きと一致するとは限りません)。
実績PER33.1倍は、期ずれで利益が小さく出た年の数字です。予想PER19.2倍は、§5で見た「税負担率41.7%相当」の純利益予想の上に置かれています。仮に来期の税負担率が直近並み(31%)で特別損失がなければ、EPSは約46円、予想PERは約16倍になります(筆者の試算。会社予想ではありません)。
今期の開示と翌営業日の株価
| 開示日(いずれも15時30分) | 主な内容 | 開示日の終値 | 翌営業日の終値 | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年10月9日 | 前期決算、今期予想(営業利益60%減益)、中計取り下げ、自己株式取得 | 666円 | 602円(出来高340万株) | △9.6% |
| 2026年1月13日 | 第1四半期決算(営業赤字、受注残高125.0%) | 680円 | 719円 | +5.7% |
| 2026年3月31日 | Gosan Tech社への出資 | 694円 | 750円 | +8.1% |
| 2026年4月8日 | 上期決算(上期予想を上回る、通期据え置き) | 803円 | 785円 | △2.2% |
| 2026年7月10日 | 第3四半期決算(通期据え置き) | 703円 | 654円 | △7.0% |
| 2026年9月30日 | 通期予想の修正(売上△27.5%、利益+11〜15%)、来期の目安(売上約100億円・営業利益約13億円) | 711円 | 769円 | +8.2% |
出典:各開示(発表時刻はYahoo!ファイナンスの適時開示一覧)、株価はYahoo!ファイナンスの時系列(報道ベース)。変化率は筆者の計算。日足の値動きであり、開示以外の要因(市場全体の動き等)も含みます。
9月30日の修正は「売上の大幅下方修正」でしたが、翌営業日の株価は上昇しました。同じ開示に来期の目安(売上約100億円、営業利益約13億円)が書かれていたことが含まれています。今回の発表は、その目安を「売上98億95百万円・営業利益13億80百万円」に精査し、5年計画を加えたものです。
一次情報から拾える株価の履歴
| 時点 | 株価 | 出所 |
|---|---|---|
| 2025年8月末 | 約687円 | 有報の株価収益率11.2倍×EPS61.36円(筆者の逆算) |
| 2025年10〜12月 | 平均約711.8円 | 自己株式取得(取得総額÷株数) |
| 2025年12月23日 | 686円 | 譲渡制限付株式の処分価額(取締役会決議日の前営業日の終値) |
| 2026年8月末 | 約679円 | 短信の時価ベースの自己資本比率102.5%×総資産138億81百万円÷自己株式控除後の株数(筆者の逆算) |
| 2025年8月期の最高・最低 | 1,119円・587円 | 有報 |
2025年12月23日の686円と2026年8月末の679円は、Yahoo!ファイナンスの時系列の終値(686円・679円)と一致しました。有報の株主総利回り(5年前を100とした配当込みの指数)は2025年8月期で179.8、比較指標の東証グロース市場は84.5です。
強気の見方
- 今期の減益は、ほぼ全額が売上の減少(期ずれ)で説明でき、粗利率は33.4%から34.9%に上がった。販管費も増えていない
- 期ずれした国内大型案件は「2027年8月期上期に検収が完了する予定」と会社が明言している。期末の受注残高は来期売上予想の75%
- 来期予想の粗利率27.4%は、会社が「上振れる傾向」と書く方法で作られている。過去4期の予実差は+4.1〜+10.4pt
- 来期の純利益予想は税負担率約41.7%相当で、直近3期(約31%)より保守的な置き方に見える
- 有利子負債ゼロ、自己資本比率76.8%、10億円の当座貸越枠。5億円の自己株式取得を実施し、新しい配当方針で下限(DOE2%)を明示した
- 中計で「FS社以外60%以上」という依存度の数値目標を初めて置いた。リサイクル装置は法制度化を背景に今期+41.9%、ペロブスカイトは前工程(Gosan)での受注を獲得済み
弱気の見方
- 売上は過去3期のうち2期で期初予想を下回り(△15.1%・△27.5%)、今期は期末を過ぎてから修正した。期中の据え置きは予想どおりを意味しなかった
- 来期の増収は上期の検収にほぼ集中しており、下期の営業利益予想は今期の下期より18.4%少ない。上期の検収がまた期ずれすれば、来期予想の前提が崩れる
- 国内大型案件は前受金なし・検収後一括払いが多く、今期の営業キャッシュ・フローは△18億94百万円、現金は1年で約28億円減った
- 前期の売上の77.8%がFirst Solar社。同社は2026年の設備投資を前年比で減らす見込みを示していた(会社の第2四半期決算説明会資料に引用された同社のガイダンス)
- 中計の伸びは5年目に集中し、FA装置は2028年8月期に38億円まで増える置き方。1年前には同じ電子部品業界の投資停滞を理由に中計を取り下げている
- Gosan株式は取得から半年で87.4%を評価損として計上した。中計はM&Aを含む約40億円の投資を掲げており、投資の評価の仕方が今後も論点になる
- 予想PER19.2倍・PBR1.48倍は、利益が期ずれで小さく出た年の後とはいえ、予想配当利回りは1.46%にとどまる
同じ「粗利率は予算を上振れる傾向」という事実も、強気側では「利益予想には余裕がある」、弱気側では「売上の予想は外れやすく、利益率の上振れでそれを埋めてきただけ」と読めます。どちらの読み方を取るかは読者に委ねます。
9. 今後のカレンダーと見るべきKPI
| 時期 | イベント | 見るポイント |
|---|---|---|
| 2026年10月(日程未確認) | 2026年8月期決算説明会(機関投資家・アナリスト向け)・説明会資料 | 期ずれした国内大型案件の検収見通し、来期の受注の内訳 |
| 2026年11月25日(水) | 有価証券報告書の提出(予定) | First Solar社への今期の売上依存度、大株主、「重要な会計上の見積り」、Gosan株式の評価の説明 |
| 2026年11月27日(金) | 第34期定時株主総会 | 期末配当10円の決議 |
| 2026年11月30日(月) | 配当の支払開始(予定) | — |
| 2027年1月中旬(例年) | 第1四半期決算 | 期ずれ分の検収の進捗、11月末の現金・売掛金・仕掛品、受注高 |
| 2027年4月上旬(例年) | 上期決算 | 上期予想(売上50億55百万円・営業利益6億94百万円)の達成、粗利率(予想は通期27.4%)、通期予想の修正の有無(過去2期は上期決算と同日に修正) |
| 2027年7月上旬(例年) | 第3四半期決算 | 下期の受注と受注残高 |
| 2027年8月27日(金) | 期末配当の権利付き最終日(基準日8月31日) | 予想11円 |
| 2027年10月上旬(例年) | 通期決算・中計の初年度実績 | 粗利率の予実差、FS社以外の売上比率 |
決算発表日は過去の発表日(第1四半期:2025年1月10日・2026年1月13日、上期:2025年4月10日・2026年4月8日、第3四半期:2025年7月11日・2026年7月10日、通期:2025年10月9日・2026年10月7日)からの推定です。
見るべきKPI
- 上期の売上高(期ずれした国内大型案件の検収が入ったか)
- 四半期ごとの粗利率(来期予想27.4%との差。今期は9か月48.8%、6〜8月28.3%)
- 受注高と受注残高(来期売上予想に対する受注残高のカバー率75%から、受注の積み上げが続くか)
- 現金及び預金・売掛金・仕掛品・前受金の四半期末残高(立て替えの大きさ)
- First Solar社への売上依存度(有報・年1回)と、FS社以外の売上の絶対額
- リサイクル装置の受注・販売台数(法制度化の施行時期との関係)
10. 3行まとめ
- 売上37%減・営業56%減の理由は、ほぼ全額が売上の減少(国内大型案件の検収未了と米国主要顧客の改造案件の期ずれ)で、粗利率はむしろ上がった。営業利益の95%は6〜8月の3か月で出ている
- 来期予想(売上+70%)は、期ずれ分の検収を上期に置き、下期の営業利益は今期より少なく置いている。粗利率27.4%は会社自身が「上振れる傾向」と書く作り方で、純利益は税負担率41.7%相当の置き方
- 1年前に取り下げた中計を5年計画で出し直し、First Solar社への依存度を下げる目標と、配当性向25%・下限DOE2%の配当方針を示した。4月の上期決算で、期ずれ分の検収と粗利率を確かめたい
本記事は、決算短信等の公開情報をもとに、生成AIを執筆補助として用いて作成しています。論点の選定・構成の判断、および記載した数値と一次情報との照合は筆者が行っています。
本記事は投資勧誘・助言を目的としたものではありません。数値の出典は、エヌ・ピー・シーの決算短信(2026年8月期の各四半期・通期、2025年8月期の各四半期・通期、2024年8月期の第3四半期・通期)、中期経営計画の策定に関するお知らせと資料(2026年10月7日)、中期経営計画の取り下げ及び公表見送りに関するお知らせ(2025年10月9日)と同資料(2025年10月10日)、中期経営計画に関するお知らせ(2024年10月15日)、業績予想の修正・差異に関する開示(2024年4月10日・2025年4月10日・2026年4月8日・2026年9月30日)、2026年8月期第2四半期決算説明会資料(2026年4月10日)、Gosan Tech社への出資に関するお知らせ(2026年3月31日)、自己株式の取得・譲渡制限付株式の処分・配当に関する各適時開示、有価証券報告書(第33期、2025年11月28日提出)です。株価・出来高・年初来高値安値・夜間取引の価格・発表時刻はYahoo!ファイナンス(報道ベース)です。四半期の単独数値、増減の分解、予想が置いた残り期間、受注残高のカバー率、粗利率・売上の感応度、税負担率の逆算、配当方針の下限の試算、時価総額基準の必要株価、株価の逆算は筆者の計算・試算です。
次の点にご注意ください。2026年8月期の決算補足説明資料(短信表紙で「作成の有無:有」)は、執筆時点で会社IRサイトに掲載されておらず、本記事では反映していません。決算説明会(機関投資家・アナリスト向け)の内容・質疑応答も反映していません。第1四半期・第3四半期は決算補足説明資料・決算説明会がなく、当該四半期についての会社の追加説明は反映していません。2026年8月期の有価証券報告書は未提出のため、First Solar社への今期の売上依存度、2026年8月末時点の大株主、当期の「株主に対する特典」欄は確認していません。大量保有報告書は本記事では確認していません。「新築の大型案件の粗利率が低い」「期末の仕掛品に検収待ちの国内大型案件の一部が含まれる」「来期の純利益予想が特別損失または高い税負担を織り込んでいる」「株主還元約20億円が配当性向25%から積み上げた数字である」という記述は、開示値の整合から筆者が推し量ったもので、会社の開示に基づくものではありません(確認先は会社IR、次回の決算説明会資料・有価証券報告書)。投資有価証券評価損に関する用語メモは一般的な会計ルールの説明で、今回の処理の具体的な理由を会社の開示から確認したものではありません。中計資料の「売上見込み」「装置ニーズポテンシャル」は会社の見込みであり、受注・売上を約束するものではありません。グロース市場の時価総額基準の細部はJPXの規則原文で確認していません。決算発表は取引終了と同時刻(15時30分)で、10月7日の終値は発表前の取引によるものです。夜間取引の価格は取引量が小さく、翌営業日の値動きと一致するとは限りません。
記載内容の正確性・完全性には注意を払っていますが、誤りや情報の陳腐化が含まれる可能性があり、これを保証するものではありません。本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。投資の最終判断は、必ずご自身で一次情報(会社IRサイト・EDINET等)をご確認のうえ、自己責任で行ってください。